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明細書 :色変換マトリクス作成方法を用いた色変換方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4806778号 (P4806778)
登録日 平成23年8月26日(2011.8.26)
発行日 平成23年11月2日(2011.11.2)
発明の名称または考案の名称 色変換マトリクス作成方法を用いた色変換方法
国際特許分類 H04N   1/46        (2006.01)
H04N   1/60        (2006.01)
G06T   1/00        (2006.01)
FI H04N 1/46 Z
H04N 1/40 D
G06T 1/00 510
請求項の数または発明の数 11
全頁数 23
出願番号 特願2007-546535 (P2007-546535)
出願日 平成18年11月28日(2006.11.28)
国際出願番号 PCT/JP2006/323741
国際公開番号 WO2007/061117
国際公開日 平成19年5月31日(2007.5.31)
優先権出願番号 2005342855
優先日 平成17年11月28日(2005.11.28)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成21年9月8日(2009.9.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】下平 美文
【氏名】伊藤 健
個別代理人の代理人 【識別番号】100088155、【弁理士】、【氏名又は名称】長谷川 芳樹
【識別番号】100108257、【弁理士】、【氏名又は名称】近藤 伊知良
【識別番号】100124800、【弁理士】、【氏名又は名称】諏澤 勇司
【識別番号】100124291、【弁理士】、【氏名又は名称】石田 悟
審査官 【審査官】豊田 好一
参考文献・文献 特開平09-130626(JP,A)
特開2000-188695(JP,A)
調査した分野 H04N 1/46-62
特許請求の範囲 【請求項1】
デバイスに依存しない第1の色空間の画像データを、予め定めた出力装置に対応する第2の色空間の画像データに変換するための色変換マトリクスを作成する方法であって、
前記第1の色空間を構成する3軸のそれぞれについて分割数を含む分割方法を設定し、設定された前記分割方法によって前記第1の色空間を複数の部分領域に分割する分割ステップと、
前記複数の部分領域のそれぞれについて、隣接する部分領域が所定割合で相互に重複するように、前記第1の色空間を構成する3軸のそれぞれの方向に前記部分領域を拡大した拡大部分領域を設定する設定ステップと、
前記複数の部分領域のそれぞれに対し、前記出力装置の色域内の複数の色についてのテストパターンを測色して得られた測色データのうちで前記拡大部分領域に含まれる測色データに基づいて、前記第1の色空間の画像データを前記第2の色空間の画像データに変換するための前記色変換マトリクスを前記部分領域毎に作成する作成ステップと
を含む色変換マトリクス作成方法を用い、前記色変換マトリクス作成方法により作成された前記部分領域毎の前記色変換マトリクスを用いた色変換方法であって、
入力された前記第1の色空間における入力画像データが属する前記部分領域を判定する判定ステップと、
前記色変換マトリクス作成方法により作成された前記部分領域毎の前記色変換マトリクスのうち、前記入力画像データが属する部分領域に対応した色変換マトリクスにより、前記入力画像データを、前記出力装置に対応する前記第2の色空間の画像データに変換する変換ステップと
を含み、
前記入力画像データに対応する前記色変換マトリクスが存在しない場合、前記第1の色空間において目標点を設定し、前記目標点の方向に向かって進み、色変換マトリクスが存在する最も近い部分領域の色変換マトリクスを、前記入力画像データに割り当てることを特徴とする色変換方法
【請求項2】
デバイスに依存しない第1の色空間の画像データを、予め定めた出力装置に対応する第2の色空間の画像データに変換するための色変換マトリクスを作成する方法であって、
前記第1の色空間を構成する3軸のそれぞれについて分割数を含む分割方法を設定し、設定された前記分割方法によって前記第1の色空間を複数の部分領域に分割する分割ステップと、
前記複数の部分領域のそれぞれについて、隣接する部分領域が所定割合で相互に重複するように、前記第1の色空間を構成する3軸のそれぞれの方向に前記部分領域を拡大した拡大部分領域を設定する設定ステップと、
前記複数の部分領域のそれぞれに対し、前記出力装置の色域内の複数の色についてのテストパターンを測色して得られた測色データのうちで前記拡大部分領域に含まれる測色データに基づいて、前記第1の色空間の画像データを前記第2の色空間の画像データに変換するための前記色変換マトリクスを前記部分領域毎に作成する作成ステップと
を含む色変換マトリクス作成方法を用い、前記色変換マトリクス作成方法により作成された前記部分領域毎の前記色変換マトリクスを用いた色変換方法であって、
入力された前記第1の色空間における入力画像データが属する前記部分領域を判定する判定ステップと、
前記色変換マトリクス作成方法により作成された前記部分領域毎の前記色変換マトリクスのうち、前記入力画像データが属する部分領域に対応した色変換マトリクスにより、前記入力画像データを、前記出力装置に対応する前記第2の色空間の画像データに変換する変換ステップと
を含み、
前記第2の色空間の画像データに変換後の画像データが所定範囲外の場合、前記第1の色空間において目標点を設定し、前記入力画像データを所定の移動方法で前記目標点の方向に移動することによって、前記変換後の画像データが前記所定範囲内となる画像データに変換することを特徴とする色変換方法。
【請求項3】
前記入力画像データと前記目標点との間の色空間上の距離に対して1回当たりの移動割合を1/x(xは2以上の整数)と設定し、設定された前記移動割合1/xで前記入力画像データが前記目標点に近づくように前記入力画像データを移動してから再度前記変換ステップを実行する処理を、前記変換ステップによる前記変換後の画像データが前記所定範囲内になるまで繰り返すことを特徴とする請求項記載の色変換方法。
【請求項4】
前記移動割合1/xを10≦x≦50として設定することを特徴とする請求項記載の色変換方法。
【請求項5】
前記第1の色空間における無彩色の点を、前記目標点に設定することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項記載の色変換方法。
【請求項6】
前記設定ステップにおいて、前記第1の色空間を構成する3軸のそれぞれについて、その軸方向の前記部分領域の長さIに対して所定割合r分だけ軸の両方向に領域を拡大することによって前記拡大部分領域を設定するとともに、前記所定割合rが0.1≦r≦0.3を満たすことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項記載の色変換方法
【請求項7】
前記設定ステップにおいて、前記部分領域を前記拡大部分領域へと拡大するための前記所定割合は、前記部分領域を拡大する方向毎に別個に設定可能であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の色変換方法
【請求項8】
前記第1の色空間は、CIELAB空間であると共に、前記第2の色空間は、RGB空間であり、
前記測色データは、前記テストパターンにおける前記複数の色のそれぞれを測色したときのRGBデータとLabデータとの対応関係を表すデータであることを特徴とする請求項1~のいずれか一項記載の色変換方法
【請求項9】
前記分割ステップにおいて、前記第1の色空間を構成する3軸のうちのL軸について、前記分割数Dを3以上の範囲で設定することを特徴とする請求項記載の色変換方法
【請求項10】
前記分割ステップにおいて、前記第1の色空間を構成する3軸のうちのa軸について、前記分割数Dを偶数に設定することを特徴とする請求項8または9記載の色変換方法
【請求項11】
前記分割ステップにおいて、前記第1の色空間を構成する3軸のうちのb軸について、前記分割数Dを3以上の範囲で設定することを特徴とする請求項8~10のいずれか一項記載の色変換方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、色変換マトリクス作成方法及び色変換方法に係り、特に、行列演算により色変換を行う際の色変換マトリクス作成方法、及び当該色変換マトリクス作成方法により作成した色変換マトリクスを用いて入力画像を色変換する色変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマテレビや液晶ディスプレイに代表される表示装置において、高解像度、広色域の表示装置が発売されている。また、カラー印刷においてもインクジェットプリンタの普及により、忠実な色再現に関する人々の関心が高まっている(例えば非特許文献1参照)。インクジェットプリンタは、機構が比較的単純で小型化が可能、プリンタ本体が低価格である、などの特徴を有し、インターネットで検索した画像や、デジタルカメラで撮影した画像、プレゼン資料などの印刷に多く利用されている。
【0003】
プリンタの色変換は、R(赤)、G(緑)、B(青)の加法混色に基づいて行うことが可能なディスプレイの色変換とは異なり、減法混色の原理や紙、インクなどの特性が非線形であるため、理論式を立てるのは困難である。これに対し、入出力機器の色変換として、機器の色情報を記述したICCプロファイル(ICC:InternationalColor Consortium)を用いた手法が標準化されている(例えば非特許文献2参照)。
【0004】
プリンタに対して適用されるICCプロファイルは、複数の入出力関係を対応づけたLUT(Look-uptable)によるものであり、LUTとテーブル補間法を組み合わせて色変換を行う(例えば非特許文献3参照)。しかしながら、画像に対する変換では1画素ずつ補間演算を行うため、高解像度の画像では非常に多くの変換時間を必要とする。
【0005】
また、インクジェットプリンタにおける高精度な色変換手法として、色空間を複数の部分領域に分割し、その部分領域ごと行列演算を行う手法が知られている(例えば非特許文献4、5参照)。しかしながら、これらの手法では、自然画像の再現において階調性の不連続が生じ、擬似輪郭が見られるなどの問題が発生する。
【0006】
また、特許文献1及び特許文献2には、各部分領域を相互に重複させて色変換テーブルや色変換マトリクスを作成する技術が開示されている。

【特許文献1】特開2002-112053号公報
【特許文献2】特開2000-188695号公報
【特許文献3】特開2004-266590号公報
【非特許文献1】田代耕二:"インクジェットプリンタで思い通りの色を出すには"、日本写真学会誌、vol.68、No.1、pp.70-72 (2005)
【非特許文献2】International Color Consortium:"ICC Profile Specification Version4.2.0.0" (2004)
【非特許文献3】Dawn Wallner:"Building ICC profiles-the Mechanics and Engineering" (2000)
【非特許文献4】小寺宏曄、石毛淳美、斎藤了一:"色空間の分割による入出力デバイスの高精度カラーマッチング"、画像電子学会誌、vol.29、pp.128-139 (2000)
【非特許文献5】石毛淳美、斎藤了一、小寺宏曄:"L*a*b*空間の極座標分割による高精度カラーマネージメント"、電子情報通信学会総合大会講演論文集、p.188 (1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術は、予め定めた一次色C(シアン)、M(マゼンダ)、Y(イエロー)に対応して色空間を3分割するものであり、分割方法や分割数の点で、上記の階調性の不連続の問題を効果的に解消できるとは限らない。
【0008】
また、上記特許文献2には、部分領域を重複させる点は記載されているものの、どの程度重複させるのか等については具体的に記載されておらず、上記の階調性の不連続の問題を効果的に解消できるとは限らない。以上のように、従来の方法では、インクジェットプリンタ等の出力装置に対する色変換手法について、高精度の色変換を実現するための検討が充分になされているとは言えない。
【0009】
本発明は上記課題を解決するために成されたものであり、部分領域の境界部分で階調が不連続になるのを抑制し高精度な色変換が可能な色変換マトリクスを作成する色変換マトリクス作成方法及び色変換方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明による色変換マトリクス作成方法は、第1の色空間を複数の部分領域に分割する分割ステップと、隣接する部分領域が所定割合で相互に重複するように各部分領域を拡大した拡大部分領域を設定する設定ステップと、予め定めた出力装置の色域内の複数の色のカラーパッチが印刷されたテストパターンを測色した測色データのうち拡大部分領域に応じた測色データに基づいて、第1の色空間の画像データを第2の色空間の画像データに変換するための色変換マトリクスを部分領域毎に作成する作成ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
より具体的には、色変換マトリクス作成方法は、デバイスに依存しない第1の色空間の画像データを、予め定めた出力装置に対応する第2の色空間の画像データに変換するための色変換マトリクスを作成する作成方法であって、(1)第1の色空間を構成する3軸のそれぞれについて分割数を含む分割方法を設定し、設定された分割方法によって第1の色空間を複数の部分領域に分割する分割ステップと、(2)複数の部分領域のそれぞれについて、隣接する部分領域が所定割合で相互に重複するように、第1の色空間を構成する3軸のそれぞれの方向に部分領域を拡大した拡大部分領域を設定する設定ステップと、(3)複数の部分領域のそれぞれに対し、上記出力装置の色域内の複数の色についてのテストパターンを測色して得られた測色データのうち拡大部分領域に含まれる測色データに基づいて、第1の色空間の画像データを第2の色空間の画像データに変換するための色変換マトリクスを部分領域毎に作成する作成ステップとを含むことを特徴とする。
【0012】
この発明によれば、第1の色空間に対し、色空間を構成する3軸のそれぞれについて分割数を含む分割方法を設定して、第1の色空間を複数の部分領域へと分割している。これにより、第1の色空間を好適に複数の部分領域へと分割することができる。分割方法の設定については、分割数のみによって分割方法を設定することができる。あるいは、必要に応じて、分割数に加えて分割幅などの追加の条件を設定しても良い。
【0013】
また、第1の色空間を分割した複数の部分領域に対し、隣接する部分領域が所定割合で相互に重複するように各部分領域を拡大した拡大部分領域を設定する。すなわち、部分領域を所定の拡大率で拡大させ、隣接する部分領域と重複する重複領域を設定する。拡大部分領域は、この重複領域と元の部分領域とを併せた領域である。なお、所定割合は、色変換後の画像の部分領域の境界部分において階調が不連続にならないような割合に設定することができる。
【0014】
そして、予め変換対象として定められた出力装置の色域内の複数の色についてのテストパターン(例えば、出力装置の色域内の複数の色のカラーパッチが印刷されたテストパターン)を測色した測色データのうち拡大部分領域に応じた測色データに基づいて、第1の色空間の画像データを第2の色空間の画像データに変換するための色変換マトリクスを部分領域毎に作成する。
【0015】
これにより、部分領域毎の色変換マトリクスを作成する際に、部分領域内の測色データだけでなく、隣接する部分領域と重複する領域の測色データも考慮されて色変換マトリクスが作成されるため、部分領域同士の境界部分において階調が不連続になるのを抑制することができる。なお、予め定められる出力装置については、上記方法は、出力装置をプリンタとして適用することができる。このようなプリンタとしては、例えば、インクジェットプリンタがある。
【0016】
また、色変換マトリクス作成方法は、設定ステップにおいて、第1の色空間を構成する3軸のそれぞれについて、その軸方向の部分領域の長さIに対して所定割合r分だけ軸の両方向に領域を拡大することによって拡大部分領域を設定するとともに、所定割合rが0.1≦r≦0.3を満たすことが好ましい。このように、0.1~0.3の範囲から選択された値の割合rで拡大部分領域を設定することにより、拡大部分領域を用いた色変換マトリクスの作成を好適に行うことができる。
【0017】
また、設定ステップにおいて、部分領域を拡大部分領域へと拡大するための上記所定割合は、部分領域を拡大する方向毎に別個に設定可能であるものとしても良い。これにより、部分領域を拡大するそれぞれの方向について、領域の拡大範囲を好適に設定することができる。
【0018】
また、第1の色空間は、CIELAB空間であると共に、第2の色空間は、RGB空間であり、測色データは、テストパターンにおける複数の色のそれぞれを測色した時のRGBデータとLabデータとの対応関係(例えば、各カラーパッチを測色した時のRGBデータとLabデータとの対応関係)を表すデータであるものとすることができる。
【0019】
また、第1の色空間の複数の部分領域への分割については、分割ステップにおいて、第1の色空間を構成する3軸のうちのL軸について、分割数Dを3以上の範囲で設定することが好ましい。また、分割ステップにおいて、第1の色空間を構成する3軸のうちのa軸について、分割数Dを偶数に設定することが好ましい。また、分割ステップにおいて、第1の色空間を構成する3軸のうちのb軸について、分割数Dを3以上の範囲で設定することが好ましい。
【0020】
本発明による色変換方法は、上記の色変換マトリクス作成方法により作成された部分領域毎の色変換マトリクスを用いた色変換方法であって、入力された第1の色空間における入力画像データが属する部分領域を判定する判定ステップと、上記色変換マトリクス作成方法により作成された部分領域毎の色変換マトリクスのうち、入力画像データが属する部分領域に対応した色変換マトリクスにより、入力画像データを、出力装置に対応する第2の色空間の画像データに変換する変換ステップとを含むことを特徴とする。
【0021】
このように、部分領域内の測色データだけでなく、隣接する部分領域と重複する領域の測色データも考慮されて作成された色変換マトリクスにより入力画像データを変換することにより、変換後の画像の部分領域の境界部分において階調が不連続になるのを抑制することができる。
【0022】
また、色変換方法において、第2の色空間の画像データに変換後の画像データが所定範囲外の場合、入力画像データが所定変換割合で無彩色に近づくように入力画像データを変換してから再度変換ステップを実行する処理を、変換ステップによる変換後の画像データが所定範囲内になるまで繰り返すようにしてもよい。これにより、色域外の画像データが入力された場合でも適切に色変換することができる。
【0023】
また、色変換方法において、入力画像データに対応する色変換マトリクスが存在しない場合、第1の色空間において目標点を設定し、目標点の方向に向かって進み、色変換マトリクスが存在する最も近い部分領域の色変換マトリクスを、入力画像データに割り当てることが好ましい。これにより、色変換マトリクスが存在しない場合であっても、適切に色変換することができる。
【0024】
あるいは、第2の色空間の画像データに変換後の画像データが所定範囲外の場合、第1の色空間において目標点を設定し、入力画像データを所定の移動方法で目標点の方向に移動することによって、変換後の画像データが所定範囲内となる画像データに変換することが好ましい。これにより、色域外の画像データが入力された場合であっても、適切に色変換することができる。
【0025】
この場合、具体的な画像データの移動方法については、入力画像データと目標点との間の色空間上の距離に対して1回当たりの移動割合を1/x(xは2以上の整数)と設定し、設定された移動割合1/xで入力画像データが目標点に近づくように入力画像データを移動してから再度変換ステップを実行する処理を、変換ステップによる変換後の画像データが所定範囲内になるまで繰り返すことが好ましい。また、このとき、移動割合1/xを10≦x≦50として設定することが特に好ましい。
【0026】
また、入力画像データに対する目標点の設定については、入力画像データに対応する色変換マトリクスが存在しない場合、あるいは、第2の色空間の画像データに変換後の画像データが所定範囲外の場合のいずれにおいても、第1の色空間における無彩色の点を、目標点に設定することが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、部分領域の境界部分で階調が不連続になるのを抑制し高精度な色変換が可能な色変換マトリクスを作成する、という効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】図1は、カラーマネージメントシステムを示す模式図である。
【図2】図2は、色変換装置の概略ブロック図である。
【図3】図3は、色変換マトリクス作成部で実行される色変換マトリクス作成処理のフローチャートである。
【図4】図4は、Lab空間の分割について示す図である。
【図5】図5は、部分領域の拡大について示す図である。
【図6】図6は、プリンタの色域とSHIPPカラーチャートの色度を示す図である。
【図7】図7は、従来の色変換方法による色変換後の画像(a)、及び第1実施形態の色変換方法による色変換後の画像(b)を示す図である。
【図8】図8は、第1実施形態の色変換方法による色変換後の画像(a)~(d)を示す図である。
【図9】図9は、L軸の分割数を変化させたときの平均色差、最大色差、標準偏差を示す図である。
【図10】図10は、a軸の分割数を変化させたときの平均色差、最大色差、標準偏差を示す図である。
【図11】図11は、b軸の分割数を変化させたときの平均色差、最大色差、標準偏差を示す図である。
【図12】図12は、第2実施形態に係る色変換処理のフローチャートである。
【図13】図13は、入力画像データに対応する色変換マトリクスが存在しない場合の色変換方法の一例を示す模式図である。
【図14】図14は、第2の色空間の画像データに変換後の画像データが色域外の場合の色変換方法の一例を示す模式図である。
【図15】図15は、色域外のデータが入力された場合における第1実施形態の色変換方法による色変換後の画像(a)、及び色域外のデータが入力された場合における第2実施形態の色変換方法による色変換後の画像(b)を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
10…色変換装置、12…色変換マトリクス作成部、14…測色データ記憶部、16…色変換部、20…部分領域、21…拡大部分領域、50…部分領域。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の好ましい実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
まず、本発明の概要について説明する。カメラなどの入力装置から、プリンタやディスプレイなどの出力装置へと正確な色情報を伝達するための仕組みとしてカラーマネージメントシステムがある。図1は、カラーマネージメントシステムを概略的に示す模式図である。
【0032】
デバイス間での色情報の伝達には、図1に示すように、デバイスに依存しない色情報であるPCS(Profile Connection Space)が用いられている。すなわち、図1に示した例では、入力装置からの色信号は、変換C1によってデバイスに依存しないPCSでの色情報に変換される。さらに、この色情報を変換C2で変換することによって、出力装置に対する色信号が生成される。このようなPCSとしては、CIELAB空間、CIEXYZ空間などが用いられる。
【0033】
本発明は、これらの変換C1、C2のうちで、デバイスに依存しないPCSの色情報(第1の色空間の画像データ)を、出力装置に対応する色信号(第2の色空間の画像データ)に変換する後者の変換C2を対象とし、この変換C2に用いられる色変換マトリクス作成方法、及びそれによって得られる色変換マトリクスを用いた色変換方法を提供するものである。以下、本発明による色変換マトリクス作成方法、及び色変換方法について、具体的な実施形態及び実施例を用いて説明する。
【0034】
なお、以下の説明においては、上記した第1の色空間から第2の色空間への色変換について、CIELAB空間からRGB空間への色変換を中心に説明する。CIELAB色空間は、明度を表すLと、色合いを表すa、bとによる表色系であり、PCSとして広く用いられている。
【0035】
また、L色空間におけるL、a、bについてそれぞれ、Lが0~100、a、bが-127~127の範囲の立方体で定義する。また、このようなL色空間(第1の色空間)を構成する3軸(L軸、a軸、b軸)について、必要に応じて、上記した各軸の範囲を0~1に正規化した色空間を用いることとする。また、これに合わせて、RGB色空間についても、必要に応じて、0~255で与えられている階調値を同様に0~1に正規化した色空間を用いることとする。
【0036】
(第1実施形態)
図2には、本発明が適用された色変換装置10の概略ブロック図を示した。図2に示すように、色変換装置10は、色変換マトリクス作成部12、測色データ記憶部14、及び色変換部16を含んで構成されている。
【0037】
詳細は後述するが、色変換マトリクス作成部12は、測色データ記憶部14に記憶された測色データに基づいて色変換マトリクスの係数を算出する。色変換部16は、色変換マトリクス作成部12で作成された色変換マトリクスを用いて、入力されたデバイスに依存しない第1の色空間における画像データを、第1の色空間とは異なり、予め定めた出力装置に対応する色空間である第2の色空間における画像データに変換して出力する。
【0038】
本実施形態では、上記したように、第1の色空間をCIELAB表色系の色空間とし、また、第2の色空間をRGB表色系の色空間とした場合について説明する。すなわち、色変換部16は、入力されたLの画像データ(以下、Labデータという)を、RGBの画像データ(以下、RGBデータという)に変換する。
【0039】
測色データ記憶部14には、多数の色のカラーパッチが印刷されたテストパターン(色票)を測色した時のRGBデータとLabデータとの対応関係が学習データ(測色データ)として予め記憶されている。なお、カラーパッチの色は、使用する出力装置(図示省略)、すなわち色変換装置10により色変換された画像データに基づいて画像を出力する出力装置(プリンタ等)の色域(色再現域)全体からまんべんなく様々な色を含むように選択される。また、テストパターンとしては、一般には、予め変換対象として定められた出力装置の色域内の複数の色についてのテストパターンを用いることができる。
【0040】
次に、色変換マトリクス作成部12において実行される色変換マトリクス作成処理について、図3に示すフローチャートを参照して説明する。
【0041】
まずステップ100では、色変換マトリクス作成部12は、Lab色空間を複数の部分領域に分割する(分割ステップ)。図4に示すように、第1の色空間であるLab色空間を構成する3軸(L軸、a軸、b軸)のそれぞれについて分割数を含む分割方法を設定し、設定された分割方法によってLab色空間を複数の部分領域に分割する。これにより、Lab色空間などの第1の色空間を、好適に複数の部分領域へと分割することができる。
【0042】
図4に示す例では、分割幅については等分とし、各軸の分割数について、L軸をD等分、a軸をD等分、b軸をD等分して(D、D、Dは自然数)、(D×D×D)個の部分領域20に分割する。具体的には、図4では、分割数の設定について(3×4×2)個に分割した例を示しているが、分割の仕方はこれに限られるものではない。なお、D、D、Dの値は、予め定めておいてもよいし、ユーザーによって設定可能な構成として、ユーザーが設定した値を用いてもよい。
【0043】
ここで、第1の色空間の各軸に対する分割方法の設定については、分割数のみによって分割方法を設定することができる。あるいは、必要に応じて、分割数に加えて分割幅などの追加の条件を設定しても良い。ただし、処理の簡単化の観点からは、上記した例のように分割幅等については一定とし、分割数のみを各軸で設定して色空間の分割を行うことが好ましい。
【0044】
また、色変換マトリクス作成部12は、Lab色空間をどのように分割したかを示す分割情報、例えば分割数D、D、D等の情報を色変換部16に出力する。このような分割情報は、色変換部16において画像データの色変換を行う際に用いられる。
【0045】
次に、ステップ102において、色変換マトリクス作成部12は、分割された複数の部分領域のそれぞれについて、各部分領域20を相互に重複させるべく、各部分領域20を所定の割合でLabの各軸の方向(第1の色空間を構成する3軸のそれぞれの方向)へ拡大させた部分領域(以下、拡大部分領域という)を設定する(設定ステップ)。
【0046】
例えば図5に示すように、L軸-a軸平面が3×3に分割されて、部分領域20A~20Iに分割された場合について説明する。この場合、中央の部分領域20Eについては、部分領域20Eのa軸方向の長さIに対して所定割合(拡大率)r分a軸方向両側に拡大させるとともに、部分領域20EのL軸方向の長さIに対して所定割合(拡大率)r分L軸方向両側に拡大させ、この領域を拡大部分領域21Eとして設定する。
【0047】
このとき、a軸方向については、図5中の左右両側において幅rIで部分領域20Eが拡大されている。これにより、拡大部分領域21Eのa軸方向の長さは(1+2r)Iとなっている。また、L軸方向については、上下両側において幅rIで部分領域20Eが拡大されている。これにより、拡大部分領域21EのL軸方向の長さは(1+2r)Iとなっている。以上により、拡大部分領域21Eは、L軸-a軸平面において、部分領域20Eに隣接する部分領域20A~20D、20F~20Iのそれぞれの一部を含む領域となる。
【0048】
一般には、この拡大部分領域の設定については、上記した例のように、第1の色空間を構成する3軸のそれぞれについて、その軸方向の部分領域の長さIに対して所定割合r分だけ軸の両方向に領域を拡大することによって拡大部分領域を設定することが好ましい。
【0049】
また、この領域の拡大における所定割合rは、自然画像の再現において部分領域間の境界付近の階調性の不連続が目立たなくなる値に設定される。このような割合rの値としては、例えば0.1≦r≦0.3を満たす範囲の値に設定することが好ましい。このように、0.1~0.3の範囲から選択された値の割合rで拡大部分領域を設定することにより、拡大部分領域を用いた色変換マトリクスの作成を好適に行うことができる。ただし、割合rの値については、このような範囲の値に限られるものではない。
【0050】
また、本実施形態では、L軸及びa軸方向にそれぞれ同じ割合rずつ拡大させているが、rの値をL軸、a軸のそれぞれで異ならせてもよい。さらに、例えば図5においてa軸の右方向に拡大する割合をa軸の左方向に拡大する割合と異ならせる等、各軸の拡大方向に応じてrの値を異ならせても良い。すなわち、拡大する方向毎にrの値を異ならせても良い。
【0051】
そして、L軸-b軸平面、a軸-b軸平面でも上記と同様に部分領域を拡大させることにより、各軸方向に相互に重複する拡大部分領域が設定される。
【0052】
ステップ104では、複数の部分領域のうちで色変換マトリクスが作成されていない部分領域を一つ選択し、その部分領域に対応した拡大部分領域に含まれる測色データ、すなわち、拡大部分領域に含まれるLabデータとこのLabデータに対応するRGBデータを測色データ記憶部14から読み込む。
【0053】
例えば図5に示す黒点を測色データとし、選択された部分領域が図5に示す部分領域20Eである場合について考える。このとき、これに対応する拡大部分領域21Eは部分領域20Eに隣接する部分領域20A~20D、20F~20Iの一部を含む領域となっている。このため、部分領域20E内の測色データ22に加えて、隣接する部分領域と重複した領域に含まれる測色データ24も同時に読み込まれる。
【0054】
ステップ106では、読み込んだ拡大部分領域内の測色データを用いて重回帰分析を実行することにより、選択された部分領域内のLabデータ(第1の色空間の画像データ)をRGBデータ(第2の色空間の画像データ)に変換するための次式(1)で示す色変換マトリクスの各係数を算出する(作成ステップ)。
【0055】
すなわち、この例では、次式(1)で示すように、Lの2次の項を用いて、色変換マトリクスの係数A11~A39を重回帰分析により求める。
【数1】
JP0004806778B2_000002t.gif
ここで、2次の項を用いたのは、1次の項による回帰係数では精度の良い色変換マトリクスを得ることができず、また3次以上の項を用いたのでは回帰分析を行うのに非常に多くの測色データ数(学習データ数)を必要とするためである。
【0056】
ステップ108では、Lab色空間を分割した複数の部分領域に対し、全ての部分領域について色変換マトリクスを作成したか否か、すなわち色変換マトリクスの各係数を算出したか否かを判断する。そして、色変換マトリクスを作成していない部分領域が存在する場合には、ステップ104へ戻って上記と同様の処理を繰り返す。また、全ての部分領域について色変換マトリクスを作成した場合には、ステップ110へ移行し、作成した全部分領域の色変換マトリクスの係数を色変換部16へ出力して本ルーチンを終了する。
【0057】
色変換部16では、色変換部16に設けられた色変換情報記憶部において、色変換マトリクス作成部12から出力された各部分領域の色変換マトリクスの係数を記憶しておく。また、この色変換情報記憶部には、Lab色空間をどのように分割したかを示す分割情報などの色変換処理に必要な情報が格納される。色変換マトリクス作成が予め実行済みの場合には、色変換部16は、色変換情報記憶部に記憶された情報を読み出して、色変換を実行することができる。
【0058】
そして、画像データの変換時には、入力されたLabデータがLab空間内のどの部分領域に属するかを判定する(判定ステップ)。そして、入力されたLabデータが属する部分領域に対応する色変換マトリクスを用いて、上記(1)式により、プリンタなどの指定された出力装置に対応するRGBデータに変換する(変換ステップ)。
【0059】
このように、本実施形態では、各部分領域の色変換マトリクスを作成する際に、隣接する部分領域に含まれる測色データを一部利用して作成するため、隣接する部分領域の色情報も一部考慮した高精度な色変換が可能となる。従って、部分領域の境界付近において階調性の不連続が発生するのを抑えることができ、正確な色再現が可能となる。
【0060】
(実施例1-1)
以下、第1実施形態の実施例について説明する。なお、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0061】
本発明者は、本発明の変換精度、処理時間、及び自然画像に対する色再現性の3点について検証した。これらを調べるために、SHIPPのCIELAB標準画像5枚を使用した。今回は比較のために、プロファイル作成ソフトにより作成したICCプロファイルでも色変換を行った。なお、本実施例では、本発明を適用した印刷物をスキャナで取り込んだ画像を示す。
【0062】
検証には、広色域の色が再現可能な8色顔料インクタイプのプリンタを用いた。また、印刷には写真用紙を使用した。この時の色域を図6に示す。
【0063】
色変換マトリクスを作成するために、学習データ(測色データ)は11,281色の色票の測定値を用いた。また、測定器はGretagMacbethSpectroScanを用いた。
【0064】
Lab色空間の分割数はD=6、D=4、D=11に設定し、得られた6×4×11=264個の部分領域に対応して、264個の色変換マトリクスを作成した。また、拡大部分領域への領域の拡大については、部分領域の拡大率rは、0.1~0.3の範囲内の値である0.2とした。
【0065】
SHIPPのカラーチャートにおいて、使用したプリンタにおける色域内の161色に対する入力値との差をCIE2000色差式(下記非特許文献6参照)で求めた。161色の色度を図6に、結果を以下の表1に示す。また、表1には比較として、Adobe Photoshop 6.0でICCプロファイルを用いたときの色差の他に、ICCプロファイルデータをプリズム補間処理(下記非特許文献7参照)したときの結果も示す。
【表1】
JP0004806778B2_000003t.gif
表1より、本発明に係る色変換による平均色差は2.32となり、プリズム補間演算よりも色差は小さく、Photoshopを用いたときと同程度で3級色差(1.2~2.5)(下記非特許文献8参照)となり、高精度な色変換が可能となった。
【0066】
また、SHIPPの4枚の自然画像(3072×4096)に対して変換処理時間を測定した。また、ICCプロファイルデータをプリズム補間処理したときの変換処理時間も求めた。その結果、本発明の平均処理時間は、プリズム補間演算の67.2%となり、演算処理時間を大幅に短縮することができた。
【0067】
また、本発明をSHIPPの自然画像4枚に適用し、作成した画像を印刷した。部分領域の重複による影響を確認するために、Woolの画像を部分領域の拡大率r=0で変換した時の画像を図7の画像(a)に、本発明のように部分領域の拡大率r=0.2で変換した時の画像を図7の画像(b)に示す。この図7の画像(a)、画像(b)の楕円内を見比べればわかるように、画像(b)では、部分領域の重複によって擬似輪郭がなくなっていることが確認できる。
【0068】
その他の結果を図8の画像(a)~(d)に示す。ここで、画像(a)は女性の画像で、人肌の再現性評価用の "Bride"、画像(b)は細かな幾何学的構造を持つ画像で、画像処理手法の評価用の "Harbor"、画像(c)は高彩度の色情報を豊富に含む画像で、色再現性評価用の "Wool"、画像(d)は金属光沢感と中性色の再現性評価用の "Bottles" である。全ての画像において擬似輪郭もなく良好な画像が得られ、本発明の有効性を確認できた。
【0069】
(非特許文献6) G.Sharma、W.Wu、E.N.Dalal:"The CIEDE2000 Color-Difference Formula:Implementation Notes、 Supplementary Test Data、 and Mathematical Observations"、Color Research and Application、vol.30、No.1 (2005)
(非特許文献7) トリケップス:"実践 ディジタルカラー画像の設計と評価" (2000)
(非特許文献8) 日本色彩学会:"新編 色彩科学ハンドブック[第2版]"、東京大学出版会 p.290 (1998)
【0070】
(実施例1-2)
第1実施形態の第2の実施例について説明する。
【0071】
本実施例1-2では、上記実施例1-1と同様に、SHIPPのCIELAB標準画像5枚を使用した。また、検証には、プリンタとしてEPSON PX-G900を用いた。また、印刷には写真用紙を使用した。PX-G900は、sRGBよりもシアン、イエロー、レッド方向で色域が広く、彩度の高い色を印刷することができる。特に、シアン方向に対しては、Adobe RGBよりも広い色域を持っている。また、色材は顔料インクである。
【0072】
色変換マトリクスを作成するために用いられる学習データ(測色データ)については、11,284色の色票の測定値を用いた測定点が、上記プリンタの色域にまんべんなく分布するようにした。
【0073】
このような条件において、第1の色空間であるLab色空間を複数の部分領域に分割する際の分割数D、D、Dの好適な値について検討した。具体的には、L軸、a軸、b軸の3軸について、1つの軸のみを1~11分割し、他の2軸を分割しないときの色変換精度の分割数依存性を測定し、色域内の色161色の平均色差、最大色差、標準偏差を比較して、それぞれの軸に対して好適な分割数を検討した。
【0074】
図9は、L軸の分割数Dを変化させたときの平均色差、最大色差、標準偏差を示す図であり、グラフ(a)は平均色差及び最大色差のD依存性を示し、グラフ(b)は標準偏差のD依存性を示している。これらのグラフより、L軸については、分割数Dが3以上の範囲で平均色差の変化が小さくなっている。したがって、L軸については、分割数Dを3以上の範囲で設定することが好ましい。さらに、分割数Dが7以上になると平均色差の変化はさらに小さくなる。また、標準偏差は7、8分割で最も小さい。また、最大色差については、7分割のときに他と比較して著しく小さくなっている。
【0075】
図10は、a軸の分割数Dを変化させたときの平均色差、最大色差、標準偏差を示す図であり、グラフ(a)は平均色差及び最大色差のD依存性を示し、グラフ(b)は標準偏差のD依存性を示している。これらのグラフより、a軸については、平均色差、最大色差、標準偏差のすべてが、偶数個で分割する方が奇数個で分割するよりも値が小さくなっている。したがって、a軸については、分割数Dを偶数に設定することが好ましい。これは、偶数個で分割する場合、a軸の中心であるa=0(正規化した値で考えるとa=0.5)を通る面で領域が分割されているためだと考えられる。また、分割数Dを大きくすると、色差等の値は小さくなる。
【0076】
図11は、b軸の分割数Dを変化させたときの平均色差、最大色差、標準偏差を示す図であり、グラフ(a)は平均色差及び最大色差のD依存性を示し、グラフ(b)は標準偏差のD依存性を示している。これらのグラフより、b軸については、分割数Dが3以上の範囲で平均色差の変化が小さくなっている。したがって、b軸については、L軸と同様に、分割数Dを3以上の範囲で設定することが好ましい。また、標準偏差については、11分割のときに最も小さい値となっている。
【0077】
以上の図9~図11の結果に基づいて、暫定的な分割数をD=7、D=10、D=11に設定した。そして、L軸、a軸、b軸の3軸について、1つの軸のみで分割数を変化させ、他の2軸を上記の暫定分割数としたときの色変換精度の分割数依存性を測定した。このような測定の結果により、好適な分割数の設定の一例として、分割数をD=3、D=10、D=11に設定した。
【0078】
このような分割条件において、表1に示した場合と同様に、本発明を適用した場合の色差、ICC + Photoshop での色差、及び ICC + プリズム補間での色差を求めた結果を表2に示す。また、ここでは、参考としてプリンタドライバによる色補正を行ったときの精度も示している。
【表2】
JP0004806778B2_000004t.gif
表2より、本発明を適用した場合の色変換精度は、すべてにおいてプリズム補間よりも値が小さくなった。また、Photoshop と比較すると、最大色差は本発明の方が小さく、平均色差についても Photoshop とほぼ同程度となった。
【0079】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0080】
上記の第1実施形態の実施例1-1で示したように、SHIPP自然画像はすべて使用したプリンタの色域内の色であるため、第1実施形態で説明した色変換装置10では良好な画像を得ることができる。しかしながら、色域の境界付近の部分領域では,プリンタが忠実に再現できない色も行列演算し、正確な色変換ができない可能性がある。つまり、上記第1実施形態で説明した色変換では正規化したRGBを扱っているために解は0以上1以下となるはずが、負または1より大きくなることがある。また、上記第1実施形態で説明した色変換では、測色データ(学習データ)が存在しない領域(色域外)に対しては色変換マトリクスが作成されないため色変換できない。
【0081】
そこで、本実施形態では、色変換部16で実行される、色域外のデータが入力された場合に対応した色変換処理について、図12に示すフローチャートを参照して説明する。図12に示す色変換処理は、Labデータが入力される毎に実行される。
【0082】
まず、ステップ200では、入力されたLabデータを第1実施形態と同様の方法で色変換する。すなわち、入力されたLabデータがLab空間内のどの部分領域に属するかを判定し、入力されたLabデータが属する部分領域に対応する色変換マトリクスを用いて、上記(1)式によりRGBデータに変換する。
【0083】
ステップ202では、変換後のR,G,Bの各データ全ての値が0以上1以下であるか否かを判断し、全ての値が0以上1以下である場合にはステップ206へ移行して変換後のRGBデータを出力する。一方、R,G,Bの各データのうち一つでも0以上1以下でない値のデータが存在する場合は、ステップ204へ移行する。
【0084】
ステップ204では、入力されたLabデータを無彩色(正規化した値で考えてL,a,b=0.5)の方向に所定割合(例えば20分の1)だけ近づけた値に変換し、ステップ200へ戻って再度色変換を行う。
【0085】
このように、色変換後のR,G,Bの各データが全て0以上1以下であればその値を出力し、そうでなければR,G,Bの各データが全て0以上1以下になるまでステップ200~204の処理を繰り返す。これにより、出力装置の色域外のデータが入力された場合でも適切に色変換することができる。
【0086】
本実施形態における色変換方法について、さらに説明する。上記したように、第1実施形態の色変換方法においても、色域の境界付近の色、及び色域外の色については、高精度に色変換することができない場合がある。これに対して、本実施形態では、(1)色変換マトリクスが存在しない部分領域には、目標点の方向(例えば、無彩色方向)に向かって最も近くに存在する色変換マトリクスを割り当てる、及び(2)部分領域に対応する色変換マトリクスにより得られたRGBのうち、どれか1つでも0~1以外であったときに色域外処理を行う、という処理を行う。
【0087】
すなわち、入力画像データに対応する色変換マトリクスが存在しない場合、第1の色空間において目標点を設定し、目標点の方向に向かって進み、色変換マトリクスが存在する最も近い部分領域の色変換マトリクスを、入力画像データに割り当てることが好ましい。
【0088】
また、第2の色空間の画像データに変換後の画像データが所定範囲外、例えば上記した例のように変換後のRGBのうちでどれか1つでも0~1以外であった場合、第1の色空間において目標点を設定し、入力画像データを所定の移動方法で目標点の方向に移動することによって、変換後の画像データが所定範囲内となる画像データに変換することが好ましい。
【0089】
このような方法を用いることにより、色変換マトリクスが存在しない場合、あるいは色域外の画像データが入力された場合であっても、適切に色変換することができる。また、これにより、色変換マトリクスが存在しない場合、あるいは色域外の画像データが入力された場合であっても、不自然とならない色変換が可能となる。
【0090】
入力画像データに対して設定される目標点については、図12に関して上述したように、上記したいずれの場合でも、第1の色空間での無彩色の点(グレーの点)を目標点に設定することが好ましい。また、この目標点は、色空間での位置座標で設定しても良く、あるいは目標とする部分領域で設定しても良い。
【0091】
上記したLab色空間の場合、目標点として好適に用いられる無彩色の点は、(L,a,b)=(50,0,0)の点となる。また、この目標点は、正規化した値で考えると(0.5,0.5,0.5)の点となる。また、必要に応じてこれ以外の点、例えば無彩色の点の近傍にある所定の点、を目標点としても良い。
【0092】
図13は、入力画像データに対応する色変換マトリクスが存在しない場合の色変換方法の一例を示す模式図である。図13(a)においては、a軸-b軸平面を各軸で7分割したとし、得られた7×7の部分領域のうちで、色変換マトリクスa~oが存在する部分領域50A~50Oを実線で示し、色域外で色変換マトリクスが存在しない部分領域を破線で示している。また、ここでは、a軸-b軸平面の中心に位置する無彩色の部分領域50Gの中心点を目標点とする。
【0093】
このような入力色空間において、入力画像データが図中の左上にある色域外の領域50Pにあったとする。この場合、領域50Pには色変換マトリクスが存在しないので、図13(a)に矢印で示すように、入力画像データから、グレーに対応する部分領域50Gの目標点に向かって進む方向を想定する。
【0094】
そして、色変換マトリクスが存在する最も近い部分領域50B(図中、太線で示す)の色変換マトリクスbを、領域50Pの色変換マトリクス、すなわち入力画像データに対する色変換マトリクスとして割り当てる。これにより、色域外の入力画像データに対する色変換処理を、好適に実行することができる。さらに、このような割り当て処理を色変換マトリクスが存在しないすべての領域に対して行うことにより、図13(b)に示すように、色域外の領域を含むすべての部分領域に対して、色変換マトリクスが設定される。
【0095】
図14は、第2の色空間の画像データに変換後の画像データが所定範囲外(色域外)の場合の色変換方法の一例を示す模式図である。このような場合、色域外の入力画像データを目標点(移動目標点)の方向に所定の移動方法で移動する処理を行う。
【0096】
画像データの移動方法については、図14に示す例では、入力画像データと移動目標点との間をx分割(xは2以上の整数)する。そして、入力画像データと目標点との間の色空間上の距離に対して1回当たりの移動割合を1/xと設定するとともに、設定された移動割合1/xで入力画像データが移動目標点に近づくように入力画像データを移動してから再度変換ステップを実行する処理を、変換ステップによる変換後の画像データが色域内になるまで繰り返す方法を用いている。
【0097】
これにより、色域外の入力画像データの色域内への移動処理を、好適に実行することが可能となる。また、上記方法での移動割合1/xについては、移動割合1/xを10≦x≦50として設定することが好ましく、特に、図12に関して上述したように、x=20とすることが好ましい。
【0098】
ここで、正規化したL,a,bの値をCとし、設定された移動目標点での値をCとし、入力画像データと移動目標点との間の分割数をxとする。このとき、上記した移動処理をx回実行した後の画像データは、下記の式(2)で表される。
【数2】
JP0004806778B2_000005t.gif
ここで、入力画像データに対応するxの初期値は0で、移動処理毎にxに1を足していく。
【0099】
また、無彩色の点を移動目標点(C=0.5)とし、分割数をx=20と設定すると、上記の式(2)は下記の式(3)のようになる。
【数3】
JP0004806778B2_000006t.gif
入力画像データが色域外の場合、上記の式によってデータを移動して再度、色変換を行う。そして、RGBがすべて0~1の値であれば得られた値を出力し、そうでなければxに1を足してさらにデータを移動する。このような処理を行うことにより、色域外の入力画像データを色域内の画像データへと好適に変換することができる。
【0100】
(実施例2)
以下、第2実施形態の実施例について説明する。なお、本発明は下記実施例により限定されるものではない。
【0101】
本発明者は、広い色域を持つ被写体の正確なXYZ三刺激値が取得できるカメラ(下記非特許文献9参照)で撮影した広色域XYZ画像に対して本実施形態による色変換方法を適用した。
【0102】
図15の画像(a)は、色変換後のR,G,B各データ全てが0以上1以下でない場合、若しくは入力されたLabデータに対応する部分領域に学習データが存在しない場合に、黒色を印刷した画像である。この画像(a)に示すように、色域外の色は再現できていない。一方、図15の画像(b)は、本実施形態に係る色変換方法を適用して印刷した画像を示す。この画像(b)では、画像(a)の黒の部分も自然な色に変換されており、広色域画像に対しても良好な画像を得ることができた。
【0103】
(非特許文献9) 堀内智博、イジェッツターセン、大橋剛介、下平美文:"正確な色情報の取得を目指した撮像装置の開発"、第11回画像センシングシンポジウム、pp541-542 (2005)
(非特許文献10) 加藤直哉、"Corresponding Color Reproduction from Softcopy Images to Hardcopy Images"、千葉大学博士論文、2002年1月
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、部分領域の境界部分で階調が不連続になるのを抑制し、高精度な色変換が可能な色変換マトリクスを作成する色変換マトリクス作成方法及び色変換方法として利用可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図12】
9
【図13】
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【図14】
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【図7】
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【図8】
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【図15】
14