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明細書 :機械式自重補償装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5482983号 (P5482983)
公開番号 特開2010-188025 (P2010-188025A)
登録日 平成26年2月28日(2014.2.28)
発行日 平成26年5月7日(2014.5.7)
公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
発明の名称または考案の名称 機械式自重補償装置
国際特許分類 A61H   1/02        (2006.01)
A61H   3/00        (2006.01)
FI A61H 1/02 N
A61H 3/00 B
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2009-037380 (P2009-037380)
出願日 平成21年2月20日(2009.2.20)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成20年8月29日 World Scientific Publishing Co.Pte.Ltd.発行の「ADVANCES IN MOBILE ROBOTICS Proceedings of the Eleventh International Conference on Climbing and Walking Robots and the Support Technologies for Mobile Machines」に発表
審査請求日 平成24年2月8日(2012.2.8)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】藤本 英雄
【氏名】中山 学之
審査官 【審査官】鈴木 洋昭
参考文献・文献 特開平7-144007(JP,A)
特開2004-306224(JP,A)
特開平9-103443(JP,A)
特表平8-511975(JP,A)
特開平8-47885(JP,A)
特開昭63-221991(JP,A)
特開2003-181789(JP,A)
調査した分野 A61H 1/02
A61H 3/00
特許請求の範囲 【請求項1】
回転関節で接続されたリンクにより構成される下肢に取り付け可能な自重補償装置であって、関節の回転角速度を1/2に減速するギヤと、前記ギヤに固定された第1のプーリと、第1のプーリと同じ半径を有し、リンクに垂直に固定された軸に枢着される回転自在な第2のプーリと、前記第1・第2のプーリを交叉して連結するワイヤと、両端を前記第1・第2のプーリに自在継ぎ手を介して接続されたばね部材から構成され、前記関節の回転角度を前記ギヤを介して1/2の回転角度に変換し、前記第1のプーリを前記関節の回転角度の1/2の角度だけ回転させるとともに、前記第1・第2のプーリ間を交叉して連結する
ワイヤにより、前記第2のプーリを前記第1のプーリと逆方向に同じ角度だけ回転させることで、前記第1・第2のプーリ間に張られるばね部材を前記プーリの軸間を結ぶ直線と平行に伸張させ、ばね復元力と前記プーリ軸の間のモーメントアームをプーリ回転角の余弦で与えられる長さにするとともに、ばね部材の伸張量をプーリ回転角の正弦で与えられる長さにすることで、前記ばね部材の復元力により前記第1・第2のプーリの軸周りに各々のプーリの回転角の正弦で与えられるトルクを生成し、その発生トルクを前記ギヤと前記ワイヤを介して前記関節の回転軸に伝えることで、前記関節の回転軸周りに関節回転角の正弦関数で与えられるトルクを生成し、前記リンク及び装置装着者の自重により関節周りに生成されるトルクを任意の姿勢で誤差なく正確に打ち消す自重補償装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、下肢リハビリテーションにおいて、特別な動力源を用いずに、患者に装着して使用することのできる自重補償装置およびその機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ばね復元力を用いて自重を正確に補償する装置として、非特許文献1に変形プーリを用いることで姿勢に依存することなく、自重トルクを補償することのできる装置が、特許文献1、非特許文献2に鉛直軸とリンク間に自然長が0となるようにバネを張ることで複雑な構造を用いずに姿勢に依存することなく自重トルクを補償することのできる装置が、非特許文献3では、弾性を調整することのできる装置を組み込むことで、補償自重を装置装着者の体重に応じて任意に変更可能な自重補償装置がそれぞれ提案されている。また、リハビリテーションを目的とした自重補償装置として、非特許文献4では天井吊り下げ型
の自重補償装置が、非特許文献5、非特許文献6では、車椅子使用者の上腕の自重を補償するための装置として、車椅子装着型の自重補償装置がそれぞれ提案されている。また、非特許文献7では、背中に支柱を背負った形で装着する、下肢自重補償装置が提案されている。さらに、非特許文献8ではヒューマノイドの関節を駆動するモータにかかる負荷を低減化することを目的として、ばね部材を用いた自重補償装置が提案されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2003-181789号公報
【0004】

【非特許文献1】N. Ulrich et al.:PASSIVE MECHANICAL GRAVITY COMPENSATION FOR ROBOT MANIPULATORS, Proc. of the IEEE International Conference on Robotics and Automation, 1536/1541, 1991
【非特許文献2】J.L. Herder:Development of a Statically Balanced Arm Support: ARMON, Proc. of the 2005 IEEE 9th International Conference on Rehabilitation Robotics, 1114/1120, 2007
【非特許文献3】B. M. Wisse et al.:Energy-Free Adjustment of Gravity Equilibrators Using the Virtual Spring Concept, Proc. of the IEEE 10th International Conference on Rehabilitation Robotics, 742/750, 2007
【非特許文献4】A. H. A. Stienen et al.:Freebal: dedicated gravity compensation for the upper extremities, Proc. of the IEEE 10th International Conference on Rehabilitation Robotics, 804/808, 2007
【非特許文献5】森田他:バイオメカニズム学会誌, Vol. 30, No. 4, 200/204, 2006
【非特許文献6】B. Mastenbroek et al.:Development of a Mobile Arm Support (Armon): Design Evolution and Preliminary User Experience, Proc. of the 2007 IEEE10th International Conference on Rehabilitation Robotics, 1114/1120, 2007
【非特許文献7】S. K. Banala, S. K. Agrawal, A. Fattah, V. Krishnamoorthy, W. Hsu, J. Scholz and K. Rudolph:Gravity Balancing Leg Orthosis and Its Performance Evaluation, IEEE Transaction on Robotics, vol.22, no. 6, 1228/1238, 2006
【非特許文献8】S. Shirata et al.:Design and Evaluation of a Gravity Compensation Mechanism for a Humanoid Robot, Proc. of the IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, 3635/3640, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記の自重補償装置は、ワイヤやばね部材がリンク間に張られる、または鉛直方向を向いた基台が存在するなど、人に直接装着して使用するには指や服を挟まれる危険のある構造を有していた。 下肢リハビリ装置として人に装着することを前提とした自重補償装置では、安全性が最優先される。また、装着した際の違和感を低減化するためにコンパクトな構造であることも望まれる。そのため、ばね部材やワイヤがリンク間に張られた構造を有する従来の自重補償装置は安全面および装着性の観点からは十分なものとは言えなかった。
【0006】
このような問題を解決し、人に装着して安全に使用することのできる自重補償装置を構築するためには、従来技術に見られるようなリンク間に張られるワイヤやリンクを固定するための基台を必要とせず、自重補償機構全体をリンク内に内臓可能なコンパクトな自重補償装置を開発する必要がある。
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、下肢リハビリテーションを補助することを目的とし、人に装着して使用した際に人に与える危険の少ない、自重補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1記載の自重補償装置は、
回転関節で接続されたリンクにより構成される下肢に取り付け可能な自重補償装置であって、関節の回転角速度を1/2に減速するギヤと、前記ギヤに固定された第1のプーリと、第1のプーリと同じ半径を有し、リンクに垂直に固定された軸に枢着される回転自在な第2のプーリと、前記第1・第2のプーリを交叉して連結するワイヤと、両端を前記第1・第2のプーリに自在継ぎ手を介して接続されたばね部材から構成される。
本装置では前記関節を角度θ回転させたとき、前記ギヤにより前記第一のプーリがθ/2だけ前記関節と逆向きに回転し、さらに前記第1・第2のプーリ間を交叉して連結するワイヤにより前記第2のプーリは前記第1のプーリと逆方向に同じ角度だけ回転する。この結果、前記第1・第2のプーリ間に張られるばね部材は第1・第2のプーリの軸間を結ぶ直線と平行に

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【0008】
に比例する長さだけ伸張させられることになる。一方、前記第1・第2のプーリの回転により、プーリとばね部材の取り付け位置も回転し、その結果、前記第1・第2のプーリにはそれぞれ

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【0009】
に比例する逆向きの弾性力が

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【0010】
に比例するモーメントアームをもって働くことになる。これにより、前記第1・第2のプーリには

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【0011】
に比例するトルクが、プーリの回転を戻す方向に働くことになる。前記第2のプーリに働くトルクは前記第1・第2のプーリ間を交叉して連結するワイヤにより前記第1のプーリに伝えられるので、これらのトルクの和として前記第1のプーリには

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【0012】
に比例するトルクが発生する。このトルクは前記ギヤを介して2倍され、前記関節に伝えられる。この結果、前記関節周りには

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【0013】
に比例するトルクが発生することになり、また本トルクはばね部材の弾性係数の大きさに比例する。
一方、前記関節を角度θ回転させたときに自重により関節周りに生成されるトルクも
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に比例する。
従って、適切にばね部材の弾性係数を設定することにより、自重により関節周りに生成されるトルクを任意の姿勢で誤差なく正確に打ち消す、自重補償装置が実現されることになる。
このように、本発明の請求項1記載の自重補償装置では、ばね部材を伸張させたときに生じる反力を用いて自重補償トルクを生成するので、従来技術のようにばね部材を張るための支柱を外部に設けることなく、リンク内に生じる内力のみを用いて自重補償を行うことができる。
また、支柱などの装置の動きと連動しない機構を配置する必要が無く,ばね部材がリンクと平行に配置されるため、装置全体をコンパクトに設計することができ、安全面のみならず、操作性の向上、装置の軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態1の1リンク自重補償装置の模式図である.
【図2】実施形態2の2リンク自重補償装置の模式図である.
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,発明を具体化した実施形態を,図面を参照しつつ説明する.
(第1実施形態)
図1は本発明の実施形態1の自重補償装置を概念的に示す図である。実施形態1の自重補償装置は体幹を伸ばしきった状態で前傾をしたときに自重による転倒を防ぐことのできる1自由度の自重補償装置である。
実施形態1の自重補償装置は基台となる足底1と、足底1に固定されたギヤ2、ギヤ2の径の2倍の径を持つギヤ3、ギヤ3と共通の回転軸を持ち、ギヤ3に固定されたプーリ4、プーリ4とワイヤで結合されたプーリ6、プーリ4とプーリ6に自在継ぎ手で接続されたばね部材5から構成される。
ばね部材5は直立姿勢にあるときに、自然長が0となるように接続されており、図1のように角度θ右側に倒れると、ギヤ3が右回りにθ/2回転し、ギヤ4がワイヤによって左回りにθ/2回転するので、このとき、ばね部材5は

【0016】
【数1】
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【0017】
だけ伸張する。従って、ばね部材5のばね定数をKとすると、ばね両端にはリンク中心線と平行に復元力

【0018】
【数2】
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【0019】
が働くことになる。一方、ばね復元力とプーリ4、プーリ6の間のモーメントアームは、図1より、

【0020】
【数3】
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【0021】
で与えられるから、プーリ4には紙面に対して下向きのトルク

【0022】
【数4】
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【0023】
が、プーリ6には紙面に対して上向きのトルク

【0024】
【数5】
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【0025】
が働くことになる。プーリ4とプーリ6がワイヤで結ばれており、プーリ6は自由関節でリンクに枢着されているので、ワイヤに働く張力によって、プーリ4に生成されるトルクは-M6になる。従って、ばね復元力がプーリ4に生成する全トルクは紙面に対して下向きのトルク

【0026】
【数6】
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【0027】
で記述される。ギヤ3はリンクと自由関節で枢着されているので、これは、ギヤ2からギヤ3に加えられるトルクと釣り合うはずである。従って、ギヤ2からギヤ3に加えられるトルクは、紙面に対して上向きのトルク

【0028】
【数7】
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【0029】
で与えられることになる。
一方、角度θ右側に倒れた状態で、自重により関節周りに生成されるトルクは
装置装着者とリンクを含めた自重をm、その重心とギヤ2の回転中心までの距離をl、重力加速度をgとして、
Mgl・sin(θ)
で与えられるから、ばね定数を

【0030】
【数8】
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【0031】
のように選べば、

【0032】
【数9】
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【0033】
となって、自重により関節周りに生成されるトルクを任意の姿勢で誤差なく正確に打ち消すトルクが関節周りに生成されることになる。
(第2実施形態)
図2は本発明の実施形態2の自重補償装置を概念的に示す図である。実施形態2の自重補償装置は2リンクから構成され、人の下肢に装着することで、体重によって関節に生じるトルクを完全に補償することのできる自重補償装置である。
実施形態2の自重補償装置は基台となる足底1と、足底1に固定されたギヤ2、ギヤ2の径の2倍の径を持つギヤ3、ギヤ3と共通の回転軸を持ち、ギヤ3に固定されたプーリ4、プーリ4とワイヤで結合されたプーリ6、プーリ4とプーリ6に自在継ぎ手で接続されたばね部材5、第1関節と第2関節を結ぶタイミングベルト7、足底1に固定されたタイミングプーリ8、第2関節の回転軸とベアリングを介して回転自在に枢着されたタイミングプーリ9、タイミングプーリに固定されたギヤ10、ギヤ10の径の2倍の径を持つギヤ11、ギヤ11と共通の回転軸を持ち、ギヤ11に固定されたプーリ12、プーリ12とワイヤで結合されたプーリ13、プーリ12とプーリ13に自在継ぎ手で接続されたばね部材14から構成される。
ばね部材5とばね部材14は直立姿勢にあるときに、自然長が0となるように接続されている。
実施形態2の自重補償装置は図2のように第1リンクを角度θ1、第2リンクを角度θ2右側に倒した場合には、タイミングベルトにより、ギヤ10がギヤ8と同じ姿勢を維持するため、ギヤ11は第2リンクに対して(θ1+θ2)/2だけ右回りに回転することになる。これより、ばね部材14は

【0034】
【数10】
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【0035】
だけ伸張することになり、実施形態1の自重補償装置と同様にして、第2リンクに

【0036】
【数11】
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【0037】
のトルクが発生することがわかる。同様に、第1リンクに発生するトルクに関しても、実施形態1の自重補償装置と同じ解析を行うことができ、

【0038】
【数12】
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【0039】
のトルクが発生することが示される。
従って、装置装着者と自重補償装置を含めた第1リンクの自重をm1、その重心とギヤ2の回転中心までの距離をl1、装置装着者と自重補償装置を含めた第2リンクの自重をm2、その重心とギヤ10の回転中心までの距離をl2として、ばね定数をそれぞれ

【0040】
【数13】
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【0041】
に取ることで、自重により関節周りに生成されるトルクを任意の姿勢で誤差なく正確に打ち消す自重補償装置を構成することができることになる。

【0042】
(他の実施形態)
以上において,本発明を実施形態1,2に即して説明したが,本発明は上記実施形態に制限されるものではなく,その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の自重補償装置は,下肢リハビリに限らず、組立工場における作業アシスト装置や、重量の重い機械の動力補助にも利用可能である。また、ヒューマノイドロボットの駆動系の出力補助としても利用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1…基台となる足底
2…ギヤ
3…ギヤ2の径の2倍の径を持つギヤ
4…ギヤ3に固定されたプーリ
5…ばね部材
6…プーリ4とワイヤで結合されたプーリ
7…タイミングベルト
8…足底1に固定されたタイミングプーリ
9…第2関節に回転自在に枢着されたタイミングプーリ
10…第2関節に枢着されたギヤ
11…ギヤ10の径の2倍の径を持つギヤ
12…ギヤ11に固定されたプーリ
13…プーリ12とワイヤで結合されたプーリ
14…ばね部材
図面
【図1】
0
【図2】
1