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明細書 :微小変位計測方法及び装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5036005号 (P5036005)
公開番号 特開2010-210399 (P2010-210399A)
登録日 平成24年7月13日(2012.7.13)
発行日 平成24年9月26日(2012.9.26)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 微小変位計測方法及び装置
国際特許分類 G01B  11/16        (2006.01)
G01B  11/00        (2006.01)
FI G01B 11/16 G
G01B 11/00 A
G01B 11/00 G
請求項の数または発明の数 11
全頁数 14
出願番号 特願2009-056600 (P2009-056600)
出願日 平成21年3月10日(2009.3.10)
審査請求日 平成22年12月24日(2010.12.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504190548
【氏名又は名称】国立大学法人埼玉大学
【識別番号】000151852
【氏名又は名称】株式会社東洋精機製作所
発明者または考案者 【氏名】門野 博史
【氏名】小林 幸一
【氏名】高原 正博
個別代理人の代理人 【識別番号】100100918、【弁理士】、【氏名又は名称】大橋 公治
【識別番号】100108729、【弁理士】、【氏名又は名称】林 紘樹
審査官 【審査官】有家 秀郎
参考文献・文献 特許第2817837(JP,B1)
特開2010-210700(JP,A)
特開平2-257005(JP,A)
特開平8-271231(JP,A)
特開2003-121120(JP,A)
調査した分野 G01B 11/00-11/30
特許請求の範囲 【請求項1】
コヒーレント光源の光を被測定物体に照射し、その散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求める微小変位計測方法であって、
被測定物体に照射する前記光線の位相を違えて第1の基準スペックル干渉画像と第2の基準スペックル干渉画像とを作成する基準画像作成ステップと、
測定対象のスペックル干渉画像を順次取得し、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を用いて、測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像または第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を統計的干渉計測法で求める対基準画像位相差算出ステップと、
それぞれの測定対象のスペックル干渉画像について求めた前記位相差から、測定対象のスペックル干渉画像間の変位を表す位相差を求める変位位相差算出ステップと、
前記対基準画像位相差算出ステップで求める前記位相差が所定値より小さくなる前に前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新する基準画像更新ステップと、
を備えることを特徴とする微小変位計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の微小変位計測方法であって、前記基準画像更新ステップが、
測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を閾値と比較するステップと、
前記位相差が前記閾値より小さいときに前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するステップと、
を備えることを特徴とする微小変位計測方法。
【請求項3】
請求項1に記載の微小変位計測方法であって、前記基準画像更新ステップが、
前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の作成時点または更新時点からの経過時間を閾値と比較するステップと、
前記経過時間が前記閾値を超えたときに前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するステップと、
を備えることを特徴とする微小変位計測方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の微小変位計測方法であって、前記基準画像作成ステップで、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の複数組を作成し、前記基準画像更新ステップで、前記複数組の中から、更新する前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を選択することを特徴とする微小変位計測方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の微小変位計測方法であって、コヒーレント光源の光を2つの平行な光線に分岐して被測定物体の2点に照射したときの散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求めることを特徴とする微小変位計測方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の微小変位計測方法であって、コヒーレント光源の光を2つの非平行な光線に分岐して被測定物体に照射したときの散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求めることを特徴とする微小変位計測方法。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の微小変位計測方法であって、コヒーレント光源の光を2つの被測定物体に照射したときの散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体間の相対変位を求めることを特徴とする微小変位計測方法。
【請求項8】
コヒーレント光源の光を被測定物体に照射し、その散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求める微小変位計測装置であって、
被測定物体に照射する前記光線の位相を可変する位相可変手段と、
前記スペックル干渉画像を撮影するCCDカメラと、
前記CCDカメラで撮影された前記スペックル干渉画像を解析するデータ処理手段と、を具備し、
前記データ処理手段が、
前記位相可変手段により被測定物体に照射する前記光線の位相を違えて作成された第1の基準スペックル干渉画像と第2の基準スペックル干渉画像とを用いて、測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像または第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を統計的干渉計測法で求める対基準画像位相差算出部と、
前記対基準画像位相差算出部がそれぞれの測定対象のスペックル干渉画像について求めた前記位相差から、測定対象のスペックル干渉画像間の変位を表す位相差を求める変位位相差算出部と、
前記対基準画像位相差算出部で求める前記位相差が所定値より小さくなる前に前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するための処理を行う基準画像更新部と、
を有することを特徴とする微小変位計測装置。
【請求項9】
請求項8に記載の微小変位計測装置であって、前記基準画像更新部は、前記対基準画像位相差算出部が求めた測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を閾値と比較して、前記位相差が前記閾値より小さいとき、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するための処理を行うことを特徴とする微小変位計測装置。
【請求項10】
請求項8に記載の微小変位計測装置であって、前記基準画像更新部は、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の作成時点または更新時点からの経過時間を閾値と比較し、前記経過時間が前記閾値を超えたときに前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するための処理を行うことを特徴とする微小変位計測装置。
【請求項11】
請求項8から10のいずれかに記載の微小変位計測装置であって、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するために、前記基準画像更新部が、予め作成された前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の複数組の中から、更新する前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を選択することを特徴とする微小変位計測装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の歪みや植物の日々の成長などの微小変位を計測する方法と、その方法を実施する装置に関し、統計的干渉計測法を利用して変位の計測を行うものである。
【背景技術】
【0002】
粗面にレーザ光線のようなコヒーレントな光を照射すると、粗面の凹凸で散乱したレーザ光線が不規則な位相で干渉し合うために「スペックルパターン」と呼ばれる粒状斑点模様が観察される。このスペックルパターンを利用して粗面物体の変位を検出する方法として、レーザースペックル干渉法や電子的スペックルパターン干渉法(ESPI)が知られているが、本発明者等は、先に、こうした方法とは発想を異にする、スペックルを利用した微小変位計測方法を下記特許文献1で提案している。
この方法は、統計的手法を導入して変位を求めているため「統計的干渉計測法」と名付けている。
【0003】
図10は、この方法で用いる装置を模式的に示している。この方法では、レーザ光源11からの光を2本の平行光線a1、a2に分けて、変位する粗面10に照射する。ここでは、粗面10が矢印A方向に変位(伸縮)しているものとする。
光線a1及び光線a2の散乱光は、偏光フィルタ15を通過してカメラ16に入射する。このとき、光線a1によるスペックルパターンと光線a2によるスペックルパターンとの重ね合わせによって生じたスペックル干渉画像だけが偏光フィルタ15を通過し、CCDカメラ16で撮影される。
CCDカメラ16は、所定の時間間隔でスペックル干渉画像を撮影し、その画像がフレームメモリ21に順次記録される。
データ処理装置22は、フレームメモリ21に記録された画像の中から3つのスペックル干渉画像を用いて、それらの画像が撮影される間に生じた粗面10の光線a1、a2により照射された2点間の変位を統計的干渉計測法により求める。
【0004】
ここでは、3つの画像の内、変位が最も小さい状態の画像を第1スペックル干渉画像、変位がそれより大きい状態の画像を第2スペックル干渉画像、変位が最も大きい状態の画像を第3スペックル干渉画像とする。
変位は、第1スペックル干渉画像及び第3スペックル干渉画像を基準画像として、第1スペックル干渉画像が撮影されてから第2スペックル干渉画像が撮影される間に生じた変位、及び、第2スペックル干渉画像が撮影されてから第3スペックル干渉画像が撮影される間に生じた変位が、その間の位相変化として算出される。
【0005】
図11のフロー図は、データ処理装置22での処理手順を示している。
まず、1番目の画素に着目して(ステップ1)、第1スペックル干渉画像、第2スペックル干渉画像及び第3スペックル干渉画像から着目する画素の画像強度(I1(x)、I2(x)、I3(x))を取得する(ステップ2)。
第1スペックル干渉画像、第2スペックル干渉画像及び第3スペックル干渉画像の画素xにおける画像強度(I1(x)、I2(x)、I3(x))は、次のように表すことができる。
I1(x)=I0(x)[1+α(x)cos(φ(x)+Ψ1)] (数1)
I2(x)=I0(x)[1+α(x)cos(φ(x))] (数2)
I3(x)=I0(x)[1+α(x)cos(φ(x)+Ψ3)] (数3)
ここで、I0(x)は、画素xにおける第1スペックル干渉画像、第2スペックル干渉画像及び第3スペックル干渉画像の平均強度、α(x)は画素xでのビジビリティ、φ(x)は画素xでのスペックル干渉画像の位相(光線a1によるスペックルパターンと光線a2によるスペックルパターンとの位相差。「スペックル位相」と言う。)であり、スペックル位相はランダムである。また、Ψ1、Ψ3は、求めるべき物体変位に対応する位相である。(数1)~(数3)において、I0(x)、α(x)、φ(x)、Ψ1及びΨ3は未知数であり、I1(x)、I2(x)及びI3(x)は、測定された値である。
【0006】
ここで、仮想位相量Ψが設定されているか否かを識別し(ステップ3)、設定されていない場合(x=1のときΨが設定され、x=2以降では、そのΨが使用される。)、Ψ1、Ψ3を求めるために仮想位相量Ψを設定する(ステップ4)。
Ψ1、Ψ3は、仮想位相量Ψからの偏差を対称位相項△Ψs及び反対称位相項△Ψaとして次式のように表すことができる。
Ψ1=-Ψ-ΔΨs+ΔΨa (数4)
Ψ3=Ψ+ΔΨs+ΔΨa (数5)
次に、仮想位相量Ψが、-Ψ13=Ψ(即ち、ΔΨs=0、ΔΨa=0)の関係にあるものと仮定して、設定した仮想位相量Ψを用いて、画素xでのスペックル位相(真のスペクトル位相φ(x)ではなく、仮想位相量Ψの下でのスペックル位相であるため「見掛上のスペックル位相φ'(x)」と言う。)を次式(数6)により算出する(ステップ5)。
φ'(x)=tan-1[{(I1(x)-I3(x))/(I1(x)+I3(x)-2I2(x))}{(cosΨ-1)/sinΨ}]
(数6)
こうした処理を、N個の画素における見掛上のスペックル位相φ'(x)が得られるまで繰り返す(ステップ6、ステップ7)。
N個の画素における見掛上のスペックル位相φ'(x)を求めた後、その見掛上のスペックル位相φ'(x)の確率密度分布Pφ'(φ')を算出する(ステップ8)。
【0007】
ランダムなスペックル位相の確率密度分布は、物体表面が光学的に粗く、十分多くの散乱が生じる場合に、-πから+πの範囲で1/2πになることが知られている。
そのため、Pφ'(φ')=1/2πとなるようにΔΨs、ΔΨaを決定する(ステップ9)。
次いで、決定したΔΨs、ΔΨaと、設定した仮想位相量Ψとを用いて、(数4)(数5)から位相差Ψ1、Ψ3を算出する(ステップ10)。
なお、確率密度分布Pφ'(φ')の算出式、及びPφ'(φ')=1/2πとなるΔΨs、ΔΨaを求めるための式は、特許文献1に詳述されている。
この統計的干渉計測法では、Nの値を大きくする程、確率密度分布の算出精度が向上し、より精確な物体変位を求めることができる。例えば、着目する画素数を数万点に設定すると、レーザ波長をλとして、λ/1000の精度で物体の変位を計測することが可能である。
【0008】
また、変位が進行する物体を所定の時間間隔で撮影したM枚のスペックル干渉画像がフレームメモリ21に記録されている場合、1枚目の画像を第1スペックル干渉画像に、また、M枚目の画像を第3スペックル干渉画像にそれぞれ設定し、2枚目から(M-1)枚目までの画像を、順次、第2スペックル干渉画像とすることにより、基準画像を固定した状態で、2枚目から(M-1)枚目までの画像における変位を求めることができる。
【0009】
また、統計的干渉計測法は、このように2本の平行光線を物体に照射して面内の微小歪みを測定する場合だけでなく、2本の非平行光線を物体に照射して得られるスペックル干渉画像から面内の変位を測定する場合や、近接する二つの物体に1本の光線を照射し、それらの物体のスペックルパターンの干渉画像から二つの物体間の変位を計測する場合にも用いることができる。
【先行技術文献】
【0010】

【特許文献1】特許第2817837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
統計的干渉計測法は、スペックル干渉画像の各画素におけるスペックル位相が-π~πの範囲で一様に分布する性質を利用して変位を計測している。しかし、第2スペックル干渉画像における変位が、基準画像である第1スペックル干渉画像または第3スペックル干渉画像の変位に近付くと、第2スペックル干渉画像と第1あるいは第3スペックル干渉画像との独立性が低下することにより、ノイズの影響が増大し、そのために精確な変位の測定ができなくなる。
【0012】
図12は、この統計的干渉計測法における測定上の制約を模式的に示している。
図12(a)に示すように、第1スペックル干渉画像と第2スペックル干渉画像との位相差Ψ1及び第2スペックル干渉画像と第3スペックル干渉画像との位相差Ψ3が大きい状態では、精確な変位の測定が可能であるが、図12(b)に示すように、第1スペックル干渉画像と第2スペックル干渉画像との位相差Ψ1が小さくなり、または、図12(c)に示すように、第2スペックル干渉画像と第3スペックル干渉画像との位相差Ψ3が小さくなると、精確な測定ができなくなる。従って、変位計測が可能な範囲は、用いる光の波長の約1/2よりも小さな領域に制限される。
【0013】
本発明は、こうした事情を考慮して創案したものであり、統計的干渉計測法の測定レンジの拡大を可能にする微小変位計測方法を提供し、また、その方法を実施する装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、コヒーレント光源の光を被測定物体に照射し、その散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求める微小変位計測方法であって、被測定物体に照射する前記光線の位相を違えて第1の基準スペックル干渉画像と第2の基準スペックル干渉画像とを作成する基準画像作成ステップと、測定対象のスペックル干渉画像を順次取得し、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を用いて、測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像または第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を統計的干渉計測法で求める対基準画像位相差算出ステップと、それぞれの測定対象のスペックル干渉画像について求めた前記位相差から、測定対象のスペックル干渉画像間の変位を表す位相差を求める変位位相差算出ステップと、前記対基準画像位相差算出ステップで求める前記位相差が所定値より小さくなる前に前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新する基準画像更新ステップと、を備えることを特徴とする。
この微小変位計測方法では、第1、第2の基準スペックル干渉画像を適宜更新しているため、統計的干渉計測法を用いて微小変位を計測する際の測定レンジを拡大することができる。
【0015】
また、本発明の微小変位計測方法では、前記基準画像更新ステップを、測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を閾値と比較するステップと、前記位相差が前記閾値より小さいときに前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するステップと、で構成することができる。
測定対象のスペックル干渉画像と第1、第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差が小さくなると、測定精度が低下するため、こうした状態に達することがないように、余裕を持たせて閾値を設定し、位相差が閾値より小さくなった場合に、基準画像の更新を行うようにすれば、測定精度の低下が避けられる。
【0016】
また、本発明の微小変位計測方法では、前記基準画像更新ステップを、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の作成時点または更新時点からの経過時間を閾値と比較するステップと、前記経過時間が前記閾値を超えたときに前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するステップと、で構成してもよい。
時間が経過すると、被測定物体の変位が進行し、当初設定した第1または第2の基準スペックル干渉画像と測定対象のスペックル干渉画像との間の位相差が縮小するため、これらの基準画像を作成または更新した時点からの経過時間を目途に、その更新時期を設定するようにしても良い。
【0017】
また、本発明の微小変位計測方法では、前記基準画像作成ステップで、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の複数組を作成し、前記基準画像更新ステップで、前記複数組の中から、更新する前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を選択するようにしても良い。
こうすることで、基準画像の更新に要する時間を短縮できる。
【0018】
また、本発明の微小変位計測方法では、コヒーレント光源の光を2つの平行な光線に分岐して被測定物体の2点に照射したときの散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求めることができる。
【0019】
また、本発明の微小変位計測方法では、コヒーレント光源の光を2つの非平行な光線に分岐して被測定物体に照射したときの散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求めることもできる。
【0020】
また、本発明の微小変位計測方法では、コヒーレント光源の光を2つの被測定物体に照射したときの散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体間の相対変位を求めることもできる。
【0021】
また、本発明は、コヒーレント光源の光を被測定物体に照射し、その散乱光により得られるスペックル干渉画像から被測定物体の変位を求める微小変位計測装置であって、被測定物体に照射する前記光線の位相を可変する位相可変手段と、前記スペックル干渉画像を撮影するCCDカメラと、前記CCDカメラで撮影された前記スペックル干渉画像を解析するデータ処理手段と、を具備し、前記データ処理手段が、前記位相可変手段により被測定物体に照射する前記光線の位相を違えて作成された第1の基準スペックル干渉画像と第2の基準スペックル干渉画像とを用いて、測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像または第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を統計的干渉計測法で求める対基準画像位相差算出部と、前記対基準画像位相差算出部がそれぞれの測定対象のスペックル干渉画像について求めた前記位相差から、測定対象のスペックル干渉画像間の変位を表す位相差を求める変位位相差算出部と、前記対基準画像位相差算出部で求める前記位相差が所定値より小さくなる前に前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するための処理を行う基準画像更新部と、を有することを特徴とする。
この微小変位計測装置は、基準画像を適宜更新しているため、統計的干渉計測法を用いて微小変位を計測する際の測定レンジを拡大することができる。
【0022】
また、本発明の微小変位計測装置では、前記基準画像更新部が、前記対基準画像位相差算出部が求めた測定対象のスペックル干渉画像と前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像との間の位相差を閾値と比較して、前記位相差が前記閾値より小さいとき、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するための処理を行うように構成することができる。
位相差が閾値より小さいとき、基準画像更新部は、位相可変手段に基準画像の更新指示を出し、位相可変手段が、被測定物体に照射する光線の位相を変える。このとき得られるスペックル干渉画像が、新たな基準画像となる。
【0023】
また、本発明の微小変位計測装置では、前記基準画像更新部が、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の作成時点または更新時点からの経過時間を閾値と比較し、前記経過時間が閾値を超えたときに前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するための処理を行うようにしても良い。
第1、第2の基準スペックル干渉画像を作成または更新した時点からの経過時間を目途にすることで、基準画像の更新時期の判別が容易となる。
【0024】
また、本発明の微小変位計測装置では、前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するために、前記基準画像更新部が、予め作成された前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の複数組の中から、更新する前記第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を選択するように構成しても良い。
こうすることで、基準画像の更新に要する時間を短縮できる。そのため、被測定物体での変位の進行が速い場合にも対応でき、また、リアルタイムでの処理が可能になる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の微小変位計測方法及び装置は、統計的干渉計測法を用いて微小変位を計測する際の測定レンジを拡大することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る微小変位計測装置の構成を示す図
【図2】本発明の第1の実施形態に係る微小変位計測方法を示すフロー図
【図3】図2の微小変位計測方法での基準画像の位相と閾値とを説明する図
【図4】図2の微小変位計測方法で求める計測画像間の位相差を説明する図
【図5】図2の微小変位計測方法を実施するときのフレームメモリの状態を示す図
【図6】図2の微小変位計測方法における基準画像の他の更新方法を説明する図
【図7】本発明の第2の実施形態に係る微小変位計測方法を示すフロー図
【図8】本発明を適用することができる面内変位計測用の他の光学系を示す図
【図9】本発明を適用することができる面外変位計測用の他の光学系を示す図
【図10】従来の微小変位計測装置の構成を示す図
【図11】統計的干渉計測法の手順を示すフロー図
【図12】統計的干渉計測法の制約を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る微小変位計測装置を示している。
この装置は、波長λのコヒーレントなレーザ光を出力するレーザ投光機11と、このレーザ光を集光するレンズ12と、集光された光束を2本の光線に分岐(分岐角度θ)するウォラストンプリズム13と、分岐された光線を2本の平行な光線a1、a2に変えるレンズ14と、光線a1、a2の位相を変える位相可変手段17と、被測定物体10での光線a1の散乱光と光線a2の散乱光とが干渉して得られるスペックル干渉画像のみを通過させる偏光フィルタ15と、偏光フィルタ15を通ったスペックル干渉画像を撮影するCCDカメラ16と、撮影された画像を記録するフレームメモリ21と、記録された画像を解析して被測定物体10の光線a1、a2が照射された2点間の変位を検出するデータ処理装置30とを備えている。

【0028】
位相可変手段17は、光線a1の位相を光線a2の位相よりも約π/2遅らせするプリズムと、光線a2の位相を光線a1の位相よりも約π/2遅らせするプリズムと、これらプリズムの移動手段とを備えている。
この位相可変手段17は、統計的干渉計測法で用いる基準画像を得る際に使用され、光線a1、a2を一方のプリズムに通した状態でCCDカメラ16に撮影されるスペックル干渉画像が「第1の基準スペックル干渉画像」とされ、光線a1、a2を他方のプリズムに通した状態でCCDカメラ16に撮影されるスペックル干渉画像が「第2の基準スペックル干渉画像」とされる。そのため、第1の基準スペックル干渉画像と第2の基準スペックル干渉画像とは、凡そπの位相差を有している。
このように、基準画像間の位相差がπになるように設定することで、基準画像間の独立性は最も高くなる。

【0029】
また、データ処理装置30は、フレームメモリ21からスペックル干渉画像を取得する画像取得部31と、第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を基準画像に用いて、測定対象のスペックル干渉画像と基準画像との間の位相差を統計的干渉計測法で求める対基準画像位相差算出部32と、それぞれの測定対象のスペックル干渉画像と基準画像との間の位相差から、測定対象のスペックル干渉画像間の変位を表す位相差を求める変位位相差算出部33と、第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を更新するための処理を行う基準画像更新判定部34とを備えている。
なお、フレームメモリ21及びデータ処理装置30は、コンピュータの機構を用いて構成することができ、データ処理装置30の各部は、コンピュータプログラムを実行することで実現できる。

【0030】
図2のフロー図は、この装置の動作手順を示している。
まず、位相可変手段17の一方のプリズムを光線a1、a2が通過する位置に配置して第1の基準スペックル干渉画像をCCDカメラ16で撮影し、フレームメモリ21に記録する。次に、他方のプリズムを光線a1、a2が通過する位置に配置して第2の基準スペックル干渉画像をCCDカメラ16で撮影し、フレームメモリ21に記録する(ステップ21)。
このとき、図3(a)に示すように、位相可変手段17のいずれのプリズムも光路上に存在しないときに得られるスペックル干渉画像40の位相に対して、第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像の一方の位相は、約π/2遅れたIの位置にあり、他方は、約π/2進んだIの位置にある。
次に、位相可変手段17を光路上から外して、計測すべきスペックル干渉画像(“計測画像”と呼ぶことにする。)をCCDカメラ16で撮影し、フレームメモリ21に記録する(ステップ22)。

【0031】
データ処理装置30の対基準画像位相差算出部32は、画像取得部31を通じてフレームメモリ21から、第1の基準スペックル干渉画像、計測画像及び第2の基準スペックル干渉画像を取得し、図11の手順により、統計的干渉計測法を用いて、第1の基準スペックル干渉画像に対する計測画像の位相差Ψ'1及び計測画像に対する第2の基準スペックル干渉画像の位相差Ψ'3を算出し、メモリ(不図示)に記録する(ステップ23)。
同じ第1の基準スペックル干渉画像及び第2の基準スペックル干渉画像を用いて算出された他の計測画像のΨ'1及びΨ'3がメモリ(不図示)に記録されていないときは(ステップ24でNo)、ステップ26に移行して、基準画像更新判定部34は、Ψ'1及びΨ'3と閾値Ψ0とを比較する。

【0032】
この閾値Ψ0は、図3(a)に示すように、統計的干渉計測法の制約により測定精度が低下する基準画像との位相差ΨLよりも大きく、且つ、ΨLとの間に十分な余裕がある値に設定されている。
Ψ'1及びΨ'3の絶対値が閾値Ψ0より大きい場合(ステップ27でYes)、対基準画像位相差算出部32は、CCDカメラ16で撮影された次の計測画像を取得し(ステップ29、ステップ22)、統計的干渉計測法を用いて、第1、第2の基準画像に対する計測画像の位相差Ψ'1、Ψ'3を算出し、メモリ(不図示)に記録する(ステップ23)。
変位位相差算出部33は、同じ第1、第2の基準画像を用いて算出された他の計測画像のΨ'1及びΨ'3がメモリ(不図示)に記録されている場合に(ステップ24でYes)、Ψ'1またはΨ'3同士の差分を取ることにより、計測画像間の位相差を算出する(ステップ25)。

【0033】
図4は、この模様を示している。計測画像1及び2の基準画像I(第1の基準スペックル干渉画像Iまたは第2の基準スペックル干渉画像I)に対する位相差をΨ'I(1)、Ψ'I(2)とすると、計測画像1と計測画像2との位相差は(Ψ'I(2)-Ψ'I(1))により算出される。算出された計測画像間の位相差は、計測画像間の変位を表しており、表示手段に適宜表示される。
基準画像更新判定部34は、計測画像のΨ'1及びΨ'3と閾値Ψ0とを比較する(ステップ26)。Ψ'1及びΨ'3の絶対値が閾値Ψ0より大きい場合は(ステップ27でYes)、ステップ29、22、23・・の手順が繰り返される。

【0034】
一方、計測画像(ここでは、計測画像(k)とする。)のΨ'1及びΨ'3の絶対値が閾値Ψ0未満の場合は(ステップ27でNo)、基準画像更新判定部34から位相可変手段17に更新指示が送られ、基準画像の更新が行われる(ステップ28)。
基準画像の更新は、基準画像の作成(ステップ21)の時と同様に、位相可変手段17の一方のプリズムを光線a1、a2が通過する位置に配置して第1の基準スペックル干渉画像が更新され、次に、他方のプリズムを光線a1、a2が通過する位置に配置して第2の基準スペックル干渉画像が更新される。
このとき、図3(b)に示すように、基準画像Iとの位相差が閾値Ψ0より小さくなった計測画像(k)40の位相に対して、約π/2遅れたIIの位置に第1の基準スペックル干渉画像が更新され、約π/2進んだIIの位置に第2の基準スペックル干渉画像が更新される。
対基準画像位相差算出部32は、更新された基準画像IIを用いて、計測画像(k)の基準画像IIに対する位相差Ψ'1、Ψ'3を再び算出し、メモリ(不図示)に記録する(ステップ23)。

【0035】
こうして、図4に示すように、基準画像Iから基準画像IIに更新されたときの計測画像3については、基準画像Iを用いた位相差の算出と、基準画像IIを用いた位相差の算出とが行われる。
そのため、例えば、計測画像1と計測画像4との間の位相差は、
{Ψ'II(4)- Ψ'II(3)}+{Ψ'I(3)- Ψ'I(1)}
によって求めることができる。
このように、この微小変位計測装置は、図2の手順を繰り返すことにより、統計的干渉計測法を用いて計測する微小変位の測定レンジを拡大することができ、被測定物体10の微小変位が進行する場合でも、高精度の計測を長時間に渡って継続することができる。

【0036】
また、図5は、フレームメモリ21でのスペックル干渉画像の記録状況を模式的に示している。第1の基準スペックル干渉画像、第2の基準スペックル干渉画像及び計測画像の3枚がフレームメモリ21に取り込まれ、計測画像が順次更新される。基準画像Iと計測画像との位相差が閾値Ψ0より小さくなると、基準画像Iが基準画像IIに更新され、計測画像の順次更新が続けられる。
このように、この装置では、フレームメモリ21を効率的に使用して、逐次更新される計測画像の変位を継続的に測定することができる。

【0037】
なお、ここでは、位相可変手段17として、プリズムを用いて位相を可変する例を説明したが、その他の方法で位相を変えても良い。例えば、レンズ14を光線a1、a2と直角方向に動かしたり、レンズ14を傾けたりしても光線a1、a2の位相を変えることが可能である。

【0038】
また、ここでは、基準画像と計測画像との位相差が閾値Ψ0より小さくなる度に、基準画像を作り直す例を説明したが、図2のフロー図の基準画像作成段階(ステップ21)で、図6に示すように、複数の第1及び第2の基準スペックル干渉画像の組を予め作成し、基準画像更新時(ステップ28)には、複数組の中から、更新する第1及び第2の基準スペックル干渉画像を選択するようにしても良い。
こうすることで、基準画像の更新に要する時間を大幅に短縮できる。そのため、被測定物体での変位の進行が速い場合にも対応でき、また、リアルタイムでの変位計測も可能になる。

【0039】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態では、基準画像の更新を、基準画像の作成時または更新時からの経過時間に基づいて行う微小変位計測方法について説明する。
被測定物体の変位は、時間の経過に伴って進行するため、計測画像と当初設定した基準画像との間の位相差は、時間が経過する程、縮小する。従って、基準画像の作成時点または更新時点からの経過時間を目途に、更新時期を設定することが可能である。
この方法を実施する微小変位計測装置の構成は、第1の実施形態(図1)と変わりがない。

【0040】
図7のフロー図は、この微小変位計測方法の手順を示している。
ステップ31からステップ35までの手順は、図2のステップ21からステップ25までと同じである。
基準画像と計測画像との間の位相差や、計測画像間の位相差の算出が終了すると、基準画像更新判定部34は、基準画像の作成時点または更新時点からの経過時間tと、予め設定された閾値t0とを比較する(ステップ36)。経過時間tが閾値t0を超えていなければ(ステップ37でNo)、次の計測画像を取得し(ステップ39、ステップ32)、ステップ33以降の手順を実行する。
一方、経過時間tが閾値t0を超えている場合は(ステップ37でYes)、基準画像更新判定部34から位相可変手段17に更新指示が送られ、基準画像の更新が行われる(ステップ38)。
基準画像の更新の動作は、図2のステップ28の場合と同じである。

【0041】
このように、この微小変位計測方法では、基準画像の更新時期を、被測定物体10の変位の状態とは切り離して、基準画像の作成時点または更新時点からの経過時間に基づいて決めているので、その更新時期が予測し易い。そのため、被測定物体10の微小変位を長時間に渡って継続的に測定する場合に、測定手順の管理が容易となる。

【0042】
第1及び第2の実施形態では、2本の平行光線を被測定物体10に照射して面内の微小歪みを測定する場合について説明した。この計測方法により、金属の熱膨張、接合金属間の熱による変形、植物の成長などの微小変位を測定することができる。
また、2本の平行光線を物体に照射する光学系に代えて、図8に示すように、レーザ投光機11からのレーザ光をプリズム50で2本の非平行光線に分岐し、これらの光線を被測定物体10に照射する光学系を備えた測定装置でも、統計的干渉計測法により、スペックル干渉画像から被測定物体10の面内の変位を計測する場合に、第1及び第2の実施形態と同様の方法を用いて測定レンジの拡大を図ることができる。
また、図9に示すように、近接するスリガラスのような半透明な基準物体51と被測定物体52とにレーザ投光機11からのレーザ光を照射し、基準物体51からの散乱光によるスペックルパターンと、基準物体51を透過して被測定物体52に照射したレーザ光の散乱光によるスペックルパターンとのスペックル干渉画像から被測定物体52と基準物体51と間の相対変位(面外変位)を計測する測定装置においても、第1及び第2の実施形態と同様の方法を用いて統計的干渉計測法での測定レンジの拡大を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の微小変位計測方法及び装置は、物体の歪みや植物の成長など、各種の微小変位を計測するために、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0044】
10 被測定物体
11 レーザ投光機
12 レンズ
13 ウォラストンプリズム
14 レンズ
15 偏光フィルタ
16 CCDカメラ
17 位相可変手段
21 フレームメモリ
30 データ処理装置
31 画像取得部
32 対基準画像位相差算出部
33 変位位相差算出部
34 基準画像更新判定部
40 スペックル干渉画像の位相
50 プリズム
51 基準物体
52 測定物体
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11