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明細書 :難聴モデル動物及びその用途

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5531198号 (P5531198)
公開番号 特開2010-207097 (P2010-207097A)
登録日 平成26年5月9日(2014.5.9)
発行日 平成26年6月25日(2014.6.25)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 難聴モデル動物及びその用途
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
A01K  67/027       (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/02
C12Q 1/68 A
G01N 33/50 Z
G01N 33/15 Z
A01K 67/027 ZNA
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 7
全頁数 22
出願番号 特願2009-053481 (P2009-053481)
出願日 平成21年3月6日(2009.3.6)
審査請求日 平成24年2月26日(2012.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
発明者または考案者 【氏名】加藤 昌志
【氏名】大神 信孝
【氏名】高橋 雅英
【氏名】浅井 直也
【氏名】時々輪 真由美
個別代理人の代理人 【識別番号】100114362、【弁理士】、【氏名又は名称】萩野 幹治
審査官 【審査官】上條 肇
参考文献・文献 Mol.Cell.Biol.,2004年,Vol.24, No.18,p.8026-8036
ホルモンと臨床,2009年 3月 1日,Vol.57, No.3,p.241-247
調査した分野 G01N 33/15
G01N 33/50
A01K 67/027
JSTPlus/JMEDPlus(JDreamIII)
PubMed
特許請求の範囲 【請求項1】
以下のステップ(1)及び(2)を含む、加齢性難聴又は騒音性難聴の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法:
(1)Retタンパク質の活性化に必須のアミノ酸である1063番チロシン残基がフェニルアラニンに置換される点遺伝子変異によって片方のアレルのみ、Ret遺伝子が機能障害されており、加齢性難聴の表現型を示す、遺伝子改変マウスに被験物質を取り込ませるステップ;
(2)聴力の低下が抑制されたか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
【請求項2】
ステップ(1)後の前記遺伝子改変マウスを用い、以下の指標、即ち、(a)内耳らせん神経節の細胞数、(b)内耳らせん神経節でのRet遺伝子の発現レベル及び(c)内耳らせん神経節でのRetタンパク質の活性化レベル、からなる群より選択される一以上の指標について検出し、検出結果に基づいてステップ(2)の評価を行う、請求項に記載のスクリーニング法。
【請求項3】
聴性脳幹反応によってステップ(2)の評価を行う、請求項に記載のスクリーニング法。
【請求項4】
以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、先天性難聴の治療に有効な物質のスクリーニング法:
(1)Retタンパク質の活性化に必須のアミノ酸である1063番チロシン残基がフェニルアラニンに置換される点遺伝子変異によって片方のアレルのみ、Ret遺伝子が機能障害されており、先天性難聴の表現型を示す、遺伝子改変マウスに被験物質を取り込ませるステップ;
(2)聴力が回復したか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
【請求項5】
ステップ(1)後の前記遺伝子改変マウスを用い、(a)内耳らせん神経節の細胞数、(b)カルビンディン及び(c)シナプトフィジンからなる群より選択される一以上の指標について検出し、検出結果に基づいてステップ(2)の評価を行う、請求項に記載のスクリーニング法。
【請求項6】
聴性脳幹反応によってステップ(2)の評価を行う、請求項に記載のスクリーニング法。
【請求項7】
以下の(1)及び(2)を含むことを特徴とする、難聴の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法:
(1)RET遺伝子が発現している細胞であって、神経細胞及び神経芽細胞からなる群より選択される細胞を被験物質の存在下で培養するステップ;
(2)前記細胞における、RET遺伝子の発現レベル又はRETタンパク質の活性化レベルを検出し、検出結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は難聴モデル動物及びその用途に関する。詳しくは、加齢性難聴の表現型を示す齧歯類遺伝子改変動物、先天性難聴の表現型を示す齧歯類遺伝子改変動物、及びそれらを用いて難聴に有効な物質をスクリーニングする方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
過去20年間、ヒト及びマウスでいくつかの難聴遺伝子が発見されてきた(非特許文献1)。従来、一部特定の遺伝子を欠損させた遺伝子改変ノックアウトマウスが難聴の表現型を示すことは知られている。しかしながら、ヒトの先天性難聴では、遺伝子欠損よりもむしろ遺伝子内の点変異が原因になる場合が多く、特定の遺伝子が欠損したノックアウトマウスを用いて難聴の発症機序を探るのは、ヒトの本来の病態を反映していない可能性がある。
【0003】
ところで、ヒトは20歳を過ぎた頃より少しずつ聴力が低下し始め、70歳では約60%が加齢性難聴を発症することが報告されている。高齢化が進む中、加齢性難聴患者の数は今後さらに増加することが予想される。また、難聴は認知症を誘発する因子になるだけでなく、耳鳴りの直接的原因になる。このように、難聴は高齢者のQOL(Quality of Life:生活の質)に大きな影響を与える。来るべき超高齢化社会に向けて、加齢性難聴・耳鳴りを予防又は治療することはQOL向上につながるだけでなく、難聴の進行を予防することにより高齢者の認知症の発症や進行を遅らせる意味でも極めて重要な課題である。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Brown SD, Hardisty-Hughes RE, Mburu P. Quiet as a mouse: dissecting the molecular and genetic basis of hearing. Nat Rev Genet. 2008 Apr;9(4):277-90. Epub 2008 Feb 19. Review.
【非特許文献2】Jijiwa M, Fukuda T, Kawai K, Nakamura A, Kurokawa K, Murakumo Y, Ichihara M, Takahashi M.A targeting mutation of tyrosine 1062 in Ret causes a marked decrease of enteric neurons and renal hypoplasia. Mol Cell Biol. 2004 Sep;24(18):8026-36.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の背景に鑑み本発明は、難聴や耳鳴りの予防又は治療手段の確立を目指し、難聴の表現型を示すモデル動物及びその用途を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の通り、特定の遺伝子の欠損と難聴の関係についての研究報告は存在するものの、特定の遺伝子に点変異を導入することによって先天性又は加齢性難聴を解析した例は未だない。本発明者らは神経成長因子の受容体型チロシンキナーゼであるRET/Ret遺伝子に注目し(慣例に倣い、ヒトの遺伝子を大文字で表記する)、RET/Retの活性化レベルが難聴に影響するとの仮定を立てた。尚、RET/Retは、ヒトのヒルシュスプラング病(巨大結腸症)、多発性内分泌腺腫症(MEN)、甲状腺癌の原因遺伝子であることが現在までに知られている。また、しかしながら、RET/retが聴力に関係していることを示す報告は、ヒトレベルでも動物レベルでも全くない。
【0007】
上記仮定の下で本発明者らはまず、野生型マウスが正常聴力を獲得する生後18日までのRetタンパク質の発現レベル及び活性化レベルを解析した。その結果、Retタンパク質の活性化レベルが聴力の発達に重要な役割を果たすことが示唆された。次に、Retタンパク質の活性化に重要なアミノ酸が置換されるように点変異を導入したマウス(ノックインマウス)を作製した。具体的には、Retタンパク質の1063番目チロシンがフェニルアラニンに置換されるように遺伝子操作し、両方のアレルのRet遺伝子に点変異が導入されたホモ型のノックインマウス(ホモRet-Y1062F-ノックインマウス)と片方のアレルのRet遺伝子に点変異が導入されたヘテロ型のノックインマウス(ヘテロRet-Y1062F-ノックインマウス)を作製し、種々の検討を行った。その結果、ホモRet-Y1062F-ノックインマウスが先天性難聴の表現型を示し、当該マウスが先天性難聴モデルとして有用であることが判明した。また、ホモRet-Y1062F-ノックインマウスの内耳のらせん神経節は、生後の聴覚発達時期にアポトーシス陰性の重度の神経変性を示すことが明らかとなった。さらに、ヘテロRet-Y1062F-ノックインマウスでは、生後1月の時点において野生型マウスの聴力レベルと同等の聴力レベルを示す一方で、生後4月以降になると野生型マウスの聴力レベルと比較して高音域から聴力低下が加速し、生後10月ともなると高音域の聴力レベルが測定域外であった。即ち、加齢性難聴の表現型を示し、しかも非常に短期間で聴力レベルの低下が認められた。この事実は、加齢性難聴のモデルとして当該ヘテロRet-Y1062F-ノックインマウスが極めて有用であることを示す。尚、Retタンパク質の1063番目チロシンが腸神経系の形成及び腎形成に重要な役割を果たすことが報告されている(非特許文献2)。尚、ホモRet-Y1062F-ノックインマウスではヒルシュスプラング病が発症するが、ヘテロRet-Y1062F-ノックインマウスでは発症しない。
【0008】
一方、RET/Retと難聴との関係を更に検討するため、ヘテロRet-Y1062F-ノックインマウスと、恒常活性型RET遺伝子が導入された遺伝子改変マウス(242系:Kato M et al., Oncogene 18:837-42, 1999)とを交配した。交配によって得られたマウスの表現型を調べた結果、生後14月においても野生型と同等の聴力レベルを維持していた。つまり、恒常活性型RET遺伝子の導入によって、ヘテロRet-Y1062F-ノックインマウスに認められた加齢性難聴の表現型を改善する(加齢に伴う難聴を示さない)ことが示された。
【0009】
以上の成果より、次の知見、即ち(1)RET/Retタンパク質のリン酸化レベル、即ち活性レベルが聴覚の形成、発達に重要な役割を担うこと、(2)先天性難聴の表現型を示すモデル動物を作製するためには、Retタンパク質の活性化を妨げるように両方のアレルのRet遺伝子に変異を導入することが有効であること、(3)加齢性難聴の表現型を示すモデル動物を作製するためには、Retタンパク質の活性化を妨げるように片方のアレルのRet遺伝子に変異を導入することが有効であること、及び(4)RET/Retが難聴の予防・治療の標的分子になること、が導き出された。
本発明は主として以上の知見に基づく。以下、本発明を列挙する。
[1]Retタンパク質の活性化に必須のアミノ酸の置換を伴う点遺伝子変異によって片方のアレルのRet遺伝子が機能障害されており、加齢性難聴の表現型を示す、齧歯類遺伝子改変動物。
[2]前記齧歯類がマウスであり、
前記アミノ酸が、Retタンパク質の1063番チロシン残基である、[1]に記載の齧歯類遺伝子改変動物。
[3]前記点遺伝子変異が、前記1063番チロシン残基がフェニルアラニンに置換される点遺伝子変異である、[2]に記載の齧歯類遺伝子改変動物。
[4]前記齧歯類がマウス以外の齧歯類であり、
前記アミノ酸が、該齧歯類のRetタンパク質においてマウスRetタンパク質の1063番チロシン残基に相当するチロシン残基である、[1]に記載の齧歯類遺伝子改変動物。
[5]以下のステップ(1)及び(2)を含む、加齢性難聴又は騒音性難聴の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法:
(1)[1]~[4]のいずれか一項に記載の齧歯類遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ;
(2)聴力の低下が抑制されたか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
[6]ステップ(1)後の前記齧歯類遺伝子改変動物を用い、以下の指標、即ち、(a)内耳らせん神経節の細胞数、(b)内耳らせん神経節でのRet遺伝子の発現レベル及び(c)内耳らせん神経節でのRetタンパク質の活性化レベル、からなる群より選択される一以上の指標について検出し、検出結果に基づいてステップ(2)の評価を行う、[5]に記載のスクリーニング法。
[7]聴性脳幹反応によってステップ(2)の評価を行う、[5]に記載のスクリーニング法。
[8]Retタンパク質の活性化に必須のアミノ酸の置換を伴う点遺伝子変異によって片方のアレルのRet遺伝子が機能障害されており、先天性難聴の表現型を示す、齧歯類遺伝子改変動物。
[9]前記齧歯類がマウスであり、
前記アミノ酸が、Retタンパク質の1063番チロシン残基である、[8]に記載の齧歯類遺伝子改変動物。
[10]前記点遺伝子変異が、前記1063番チロシン残基がフェニルアラニンに置換される点遺伝子変異である、[9]に記載の齧歯類遺伝子改変動物。
[11]前記齧歯類がマウス以外の齧歯類であり、
前記アミノ酸が、該齧歯類のRetタンパク質においてマウスRetタンパク質の1063番チロシン残基に相当するチロシン残基である、[8]に記載の齧歯類遺伝子改変動物。
[12]以下のステップ(1)及び(2)を含んでなる、先天性難聴の治療に有効な物質のスクリーニング法:
(1)[8]~[11]のいずれか一項に記載の齧歯類遺伝子改変動物に被験物質を取り込ませるステップ;
(2)聴力が回復したか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
[13]ステップ(1)後の前記齧歯類遺伝子改変動物を用い、(a)内耳らせん神経節の細胞数、(b)カルビンディン及び(c)シナプトフィジンからなる群より選択される一以上の指標について検出し、検出結果に基づいてステップ(2)の評価を行う、[12]に記載のスクリーニング法。
[14]聴性脳幹反応によってステップ(2)の評価を行う、[12]に記載のスクリーニング法。
[15]以下の(1)及び(2)を含むことを特徴とする、難聴の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法:
(1)RET遺伝子が発現している細胞であって、神経細胞及び神経芽細胞からなる群より選択される細胞を被験物質の存在下で培養するステップ;
(2)前記細胞における、RET遺伝子の発現レベル又はRETタンパク質の活性化レベルを検出し、検出結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】先天性難聴の表現型を持つホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret機能高度障害マウス)の解析結果。(a)生後18日までの野生型マウスの内耳ラセン神経節におけるRet Y1062のリン酸化レベル(青線(◆))と聴力レベルの変化(赤線(●))。(b)生後18日のホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/YF)と野生型マウス(WT)の聴力レベル。(c-g)ホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/YF; d , f)と野生型マウス(WT; c, e)の内耳ラセン神経節におけるRetタンパク質(c, d)とRet Y1062のリン酸化(e, f)を検出した免疫組織染色。(g)Ret Y1062のリン酸化(e, f)を検出した免疫組織染色を半定量化したグラフ。(h-k)クリュー・バレラ染色による生後2.5日(P2.5 (h, i))と生後14日(P14 (j, k))におけるホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/YF; i , k)と野生型マウス(WT; h, j)の内耳ラセン神経節の形態解析。(l)生後2.5日(P2.5)と生後14日(P14)におけるホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/YF)と野生型マウス(WT)の内耳ラセン神経節の細胞密度の変化を示したグラフ。尚、「Y1062F」や「Y1062」等の表記は、ヒトRETでの対応アミノ酸残基の位置が1062番目であるという事実に基づいた当該研究分野の慣例に従ったものであり、変異位置のアミノ酸(即ち、置換対象のチロシン残基)は、実際は1063番目に位置する。
【図2】先天性難聴の表現型を持つホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret機能高度障害マウス)の解析結果。a-d, 透過電子顕微鏡解析による生後14日におけるホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/YF; b, d)と野生型マウス(WT; a, c)の内耳ラセン神経節の形態解析。(a, b) b中の赤矢印はホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウスにおいて、神経変性の指標の一つであるラセン神経節(SGN)とシュワン細胞(SC)の間に生じた隙間を指す。Nは核を表す。c, d, 不連続の核膜を持つ縮んだ核を持つ、ホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウスのラセン神経節(d中の赤矢印)と正常な形態を持つ野生型マウスのラセン神経節(c中の紫矢印)。d中の黄矢印はホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウスの核膜周辺に異常凝集したヘテロクロマチンを示す。スケールバー: 2μm (a, b)、 500 nm (c, d).
【図3】加齢性難聴の表現型を示す、ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret機能軽度障害マウス)の解析。a-c, 聴性脳幹反応(ABR)により測定した1ヶ月齢(a), 4ヶ月齢(b), および10ヶ月齢(c)のヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/+, 赤三角, n = 8) と野生型マウス(WT, 青丸, n = 8)の聴力レベル。S.O.は90-100 dB SPLの音量に全く反応しない聴力レベルを示す。d-h, 3ヶ月齢ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/+, e, g)と野生型マウス(WT, d, f)の内耳ラセン神経節におけるRetタンパク質(d, e)とRet Y1062のリン酸化(f, g)を検出した免疫組織染色。スケールバー: 20μm. h, Ret Y1062のリン酸化(e, f)を検出した免疫組織染色を半定量化したグラフ。i-m, クリュー・バレラ染色による1ヶ月齢(i, k)と10ヶ月齢(j, l)におけるヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret KIYF/+, k, l)と野生型マウス(WT, i, j)の内耳ラセン神経節の形態解析。(m)ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(YF/+, 赤棒, n=3)と野生型マウス(WT, 青棒, n=3)の内耳ラセン神経節の細胞密度の変化を示したグラフ。統計的な有意差は(*, P<0.01; †, P<0.05) Mann-Whitney U test により解析した。【0011】
1.加齢性難聴モデル動物及びその用途
本発明の第1の局面は、加齢性難聴の表現型を示す齧歯類遺伝子改変動物及びその用途に関する。本発明の齧歯類遺伝子改変動物は加齢性難聴のモデルとして有用である。本明細書では、説明の便宜上、加齢性難聴の表現型を示す本発明の齧歯類遺伝子改変動物のことを「本発明の加齢性難聴モデル動物」と呼ぶ。

【0012】
(1)加齢性難聴モデル動物
本発明の加齢性難聴モデル動物は、遺伝子変異によって片方のアレルのRet遺伝子が機能障害されている。即ち、本発明の加齢性難聴モデル動物はRet遺伝子に関してヘテロ変異体であり、この特徴によって加齢性難聴の表現型を示す。ここでの「遺伝子変異」は、Ret遺伝子がコードするタンパク質(即ちRetタンパク質)の活性化に必須のアミノ酸の置換を伴うものであり、障害されたRet遺伝子(以下、「変異型Ret遺伝子」と呼ぶ)は、活性化が抑制されたRetタンパク質をコードすることになる。

【0013】
齧歯類は特に限定されず、マウス、ラット、モルモット、ハムスター及びウサギを含む。好ましくはマウス(例えばC57BL/6J系統(日本チャールズリバーから入手可能))である。

【0014】
齧歯類がマウスの場合、好ましくは、1063番チロシン残基が欠失又は他のアミノ酸に置換されたRetタンパク質を変異型Ret遺伝子がコードする。1063番チロシン残基は自己リン酸化を受けてRetタンパク質を活性化する重要なアミノ酸残基である。1063番チロシン残基の置換を伴う場合の置換後のアミノ酸の種類は特に限定されない。好ましくは、置換後のアミノ酸はフェニルアラニンとする。この態様の加齢性難聴モデル動物(モデルマウス)は、片方のアレルのRet遺伝子が、1063番チロシン残基がフェニルアラニンに置換された変異型Retタンパク質をコードしており、加齢性難聴の表現型を示すことになる。尚、マウスRet遺伝子には二つのアイソフォーム(Ret9とRet51)が存在することが知られている。Ret9遺伝子の配列を配列番号1に、Ret51遺伝子の配列を配列番号3にそれぞれ示す。また、Ret9タンパク質の配列を配列番号2に、Ret51タンパク質の配列を配列番号4にそれぞれ示す。

【0015】
その置換を伴う変異が加齢性難聴の表現型をもたらす限りにおいて、変異に係るアミノ酸残基は1063番チロシン残基に限定されるものではない。変異に係るアミノ酸の候補として、906番チロシン残基、1016番チロシン残基を挙げることができる。変異に係るアミノ酸の数は典型的には1であるが、加齢性難聴の表現型がもたらされる限りにおいて、変異に係るアミノ酸の数は2以上であることを妨げない。

【0016】
齧歯類がマウス以外の場合には、好ましくは、当該齧歯類のRetタンパク質においてマウスRetタンパク質の1063番チロシン残基に相当するチロシン残基が他のアミノ酸に置換されたRetタンパク質を変異型Ret遺伝子がコードする。ここで、本明細書においてアミノ酸残基について使用する場合の用語「相当する」とは、比較されるタンパク質間においてその機能の発揮に同等の貢献をしていることを意味する。例えば、基準のアミノ酸配列に対して比較対象のアミノ酸配列を、一次構造(即ちアミノ酸配列)の部分的な相同性を考慮しつつ、最適な比較ができるように並べたときに(このときに必要に応じてギャップを導入し、アライメントを最適化してもよい)、基準のアミノ酸配列中の特定のアミノ酸に対応する位置のアミノ酸を「相当するアミノ酸」として特定することができる。BLASTやFASTAに代表される、容易に利用可能な配列アライメント用のソフトウエア又はアルゴリズムを利用することによって、「相当するアミノ酸」は容易に特定できる。

【0017】
変異型Ret遺伝子は、典型的には、同種動物のRet遺伝子に変異が導入されたRet遺伝子である。一方で、異種動物のRet遺伝子に変異が導入された点変異型Ret遺伝子を変異型Ret遺伝子として採用することもできる。このような変異型Ret遺伝子の一例を挙げると、マウスRetタンパク質の1063番チロシン残基に相当する、1062番チロシン残基が他のアミノ酸(例えばフェニルアラニン)に置換されたRETタンパク質をコードする変異型RET遺伝子である。尚、RETには二つのアイソフォーム(RET9とRET51)が存在することが知られている。RET9遺伝子の配列を配列番号5に、RET51遺伝子の配列を配列番号7にそれぞれ示す。また、RET9タンパク質の配列を配列番号6に、RET51タンパク質の配列を配列番号8にそれぞれ示す。

【0018】
本発明の加齢性難聴モデル動物は、例えば、ジーンターゲティングを利用してRet遺伝子に点変異を導入すること又は点変異を含む変異型Ret遺伝子を導入することによって作製できる。ジーンターゲティングは遺伝子の相同組換えを利用してゲノムに改変を加える技術である。ジーンターゲティングを利用すれば、特定の遺伝子が欠損した遺伝子改変動物(ノックアウト動物)、特定の遺伝子が導入された遺伝子改変動物(ノックイン動物)等を作製することができる。ジーンターゲティングを利用した遺伝子改変動物(ノックアウト動物、ノックイン動物)の作製法は、マウスの場合を例にとれば、大別して(a)ターゲティングベクターの構築、(b)ES細胞へのターゲティングベクターの導入及び相同組換え体の同定、(c)ブラストシストへの相同組み換え体の注入、(d)仮親の子宮内への胚移植及び出産(キメラ仔マウス)、(e)キメラ仔マウスと野生型マウスの交配(F1世代であるヘテロ接合体マウスの産出)、及び(f)F1世代同士の交配(F2世代であるホモ接合体マウスの産出)からなる。ラットなど、他の齧歯類を用いた場合も同様の手順で遺伝子改変動物を得ることができる。尚、ジーンターゲティングによる遺伝子改変動物の作製法については例えばJoyner, A. L.:Gene Targeting (IRL press)、Capeccchi, M. R., Science, 244, 1288-1292 (1989)、Hua Gu, et al., Science, 265, 103-106 (1994)、McHugh, T. J. et al., Cell, 87, 1339-1349 (1996)、Shibata, H. et al., Science, 278, 120-123 (1997)等が参考になる。

【0019】
本発明の加齢性難聴モデル動物は変異型Ret遺伝子をノックインした動物(ノックイン動物)として得ることができる。本発明の加齢性難聴モデル動物は、変異型Ret遺伝子に関してヘテロ接合体であることから、変異型Ret遺伝子を挿入可能に構築したターゲティングベクターを用い、(a)~(e)の工程を行うことによって作製できる(マウスの場合)。

【0020】
(2)加齢性難聴又は騒音性難聴を標的としたスクリーニング法
本発明の加齢性難聴モデル動物の用途の一つとして、加齢性難聴又は騒音性難聴の予防又は治療に有効な物質のスクリーニング法が提供される。本発明のスクリーニング法は以下のステップ(1)及び(2)を含む。
(1)本発明の加齢性難聴モデル動物に被験物質を取り込ませるステップ
(2)聴力の低下が抑制されたか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ

【0021】
ステップ(1)では、本発明の加齢性難聴モデル動物を用意し、当該動物に被験物質を取り込ませる。被験物質の取り込ませ方は特に限定されない。例えば被験物質を含む餌又は飲料水を用意し、これを摂取させる。或いは、被験物質又は被験物質を含む溶液を用意し、これを投与する。投与方法として経口投与、経鼻投与、経気管投与、静脈内、動脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内注射、標的組織又は器官への注入を例示することができる。被験物質を複数回投与することにしてもよい。その場合には各回の投与量は同一であっても異なっていても良い。

【0022】
被験物質としては様々な分子サイズの有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例として、核酸、ペプチド(ダイペプチド、トリペプチド等のオリゴペプチドやポリペプチド)、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミン(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、A、D、E等)を例示できる。被験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。尚、細胞抽出液、培養上清などを試験物質として用いてもよい。また、既存の薬剤を被験物質としてもよい。

【0023】
試験群及び対照群に含まれる個体数は特に限定されない。一般に使用する個体数が多くなるほど信頼性の高い結果が得られるが、多数の個体を同時に取り扱うことは使用する個体の確保や操作(飼育を含む)の面で困難を伴う。そこで例えば各群に含まれる個体数を1~50、好ましくは2~30、さらに好ましくは3~20とする。

【0024】
本発明のスクリーニング方法によって選択された物質が十分な薬効を有する場合には、当該物質をそのまま医薬の有効成分として使用することができる。一方で十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で、医薬の有効成分として使用することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。

【0025】
ステップ(2)では、被験物質の取り込みによって聴力の低下が抑制されたか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定する。具体的には、被験物質の取り込みによって聴力の低下が抑制された場合、即ち、被験物質に聴力低下抑制作用ないし効果を認めた場合、被験物質が有効であると判定する。有効性が認められた複数の被験化合物を用いて再度ステップ(1)及び(2)を行い、有効性の高い物質の絞り込みを行うことにしてもよい。聴力の低下が抑制されたか否かの評価には、例えば聴性脳幹反応を利用できる。「聴性脳幹反応」とは、聴覚神経系を興奮させることによって得られる脳幹部での電位(脳幹の反応)である。所定の音刺激を与えた時の聴性脳幹反応(脳波)を解析することによって、聴力のレベルを再現性良く調べることができる。聴性脳幹反応を利用した検査法は難聴の判定に広く利用されている。聴性脳幹反応を利用した検査法の詳細については例えばABRハンドブック(加我君孝 編(金原出版))を参照することができる。

【0026】
(a)内耳らせん神経節の細胞数、(b)内耳らせん神経節でのRet遺伝子の発現レベル及び(c)内耳らせん神経節でのRetタンパク質の活性化レベルからなる群より選択される一以上の指標について検出し、検出結果に基づき、聴力の低下が抑制されたか否かを評価してもよい。これらの指標は互いに排他的なものではなく、二つ以上の指標を併用することもできる。また、ここで挙げた指標による評価に加えて、上記の聴性脳幹反応を利用した評価を行った上で最終的な判定をしてもよい。尚、(a)の指標の検出には組織染色が好適である。(b)の指標については、Ret遺伝子のmRNAの量をRT-PCRで定量することや、Retタンパク質の量を免疫学的に測定することによって検出可能である。(c)の指標の検出には、活性化Retに特異的な抗体を用いた免疫組織化学が好適である。

【0027】
2.先天性難聴モデル動物及びその用途
本発明の第2の局面は、先天性難聴の表現型を示す齧歯類遺伝子改変動物及びその用途に関する。この局面の齧歯類遺伝子改変動物は先天性難聴のモデルとして有用である。本明細書では、説明の便宜上、先天性難聴の表現型を示す本発明の齧歯類遺伝子改変動物のことを「本発明の先天性難聴モデル動物」と呼ぶ。

【0028】
(1)先天性難聴モデル動物
本発明の先天性難聴モデル動物は、遺伝子変異によって両方のアレルのRet遺伝子が機能障害されている。即ち、本発明の先天性難聴モデル動物はRet遺伝子に関してホモ変異体であり(対立遺伝子の両方とも、活性化が抑制されたRetタンパク質をコードする変異型Ret遺伝子である)、この特徴によって先天性難聴の表現型を示す。

【0029】
上記の第1の局面における齧歯類の説明及び変異型Ret遺伝子の説明は、この局面の先天性難聴モデル動物にも当てはまる。但し、本発明の先天性難聴モデル動物は、本発明の加齢性難聴モデル動物と異なり、変異型Ret遺伝子に関してホモ接合体であることから、ジーンターゲティングを利用して作製する場合、第1の局面で説明した「遺伝子改変動物(ノックアウト動物、ノックイン動物)の作製法」における(a)~(f)の工程を行うことになる(マウスの場合)。

【0030】
(2)先天性難聴を標的としたスクリーニング法
本発明の先天性難聴モデル動物の用途の一つとして、先天性難聴の治療に有効な物質のスクリーニング法が提供される。本発明のスクリーニング法は以下のステップ(1)及び(2)を含む。
(1)本発明の先天性難聴モデル動物に被験物質を取り込ませるステップ
(2)聴力が回復したか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ

【0031】
ステップ(1)は、第1の局面におけるスクリーニング方法のステップ(1)と同様の方法及び条件で実施することができる。ステップ(2)では、被験物質の取り込みによって聴力が回復したか否か評価し、評価結果に基づき被験物質の有効性を判定する。具体的には、被験物質の取り込みによって聴力が回復した場合、即ち、被験物質に聴力回復作用ないし効果を認めた場合、被験物質が有効であると判定する。有効性が認められた複数の被験化合物を用いて再度ステップ(1)及び(2)を行い、有効性の高い物質の絞り込みを行うことにしてもよい。ステップ(2)の評価は例えば、聴性脳幹反応を利用して行えばよい。また、加齢性難聴を発症したマウス内耳ラセン神経節で発現レベルが上昇するカルビンディン、シナプトフィジン等の指標についてその特異抗体を用いて検出し、検出結果に基づいて評価してもよい。あるいは、内耳らせん神経節の細胞数を指標として評価してもよい。二つ以上の指標を併用可能なこと、これらの指標による評価と聴性脳幹反応を利用した評価を組み合わせた総合評価によって最終的な判定を下すことにしてもよいことは、第1の局面の場合と同様である。その他、ここで特に言及しない事項については第1の局面の対応する説明を援用することにする。

【0032】
3.RETを標的としたスクリーニング法
本発明の第3の局面は、難聴治療の新たな標的分子としてRETが有用であるとの知見に基づき、RETを標的分子としたスクリーニング法を提供する。この局面のスクリーニング法は以下のステップ(1)及び(2)を含む。このスクリーニング法によれば、難聴の予防又は治療に有効な物質をスクリーニングすることができる。
(1)RET遺伝子が発現している細胞であって、神経細胞及び神経芽細胞からなる群より選択される細胞を被験物質の存在下で培養するステップ
(2)前記細胞における、RET遺伝子の発現レベル又はRETタンパク質の活性化レベルを検出し、検出結果に基づき被験物質の有効性を判定するステップ

【0033】
ステップ(1)はではRET遺伝子が発現する細胞であって、神経細胞又は神経芽細胞に分類される細胞を用意する。使用可能な細胞の具体例を示すと、PC12細胞(理研細胞バンクから入手可能)、NB-1細胞(理研細胞バンクからから入手可能)である。

【0034】
被験物質の添加のタイミングは特に限定されない。従って、被験物質を含まない培養液で培養を開始した後、ある時点で被験物質を添加することにしても、予め被験物質を含む培養液で培養を開始することにしてもよい。培養条件は使用する細胞に標準的なものを採用すればよい。尚、ステップ(1)はin vitroで行われる。

【0035】
ステップ(2)では、被験物質存在下で培養した後の細胞におけるRET遺伝子の発現レベル又はRETタンパク質の活性化レベルを検出する。そして、検出結果に基づき被験物質の有効性を判定する。具体的には、被験物質の存在下で培養したことによってRET遺伝子の発現レベル又はRETタンパク質の活性化レベルが上昇した場合、即ち、被験物質にRET遺伝子の発現レベル上昇作用ないし効果、及び/又はRETタンパク質の活性化レベル上昇作用ないし効果を認めた場合、被験物質が有効であると判定する。有効性が認められた複数の被験化合物を用いて再度ステップ(1)及び(2)を行い、有効性の高い物質の絞り込みを行うことにしてもよい。

【0036】
RET遺伝子の発現レベルは、RET遺伝子のmRNA量をRT-PCRで定量することや、RETタンパク質の量を免疫学的に測定することによって検出可能である。一方、RETタンパク質の活性化レベルは、活性化RETに特異的な抗体を用いた免疫組織化学によって検出可能である。

【0037】
この局面のスクリーニング法によって選抜された物質を上記スクリーニング法(第1の局面のスクリーニング法又は第2の局面のスクリーニング法)の被験物質とすることもできる。即ち、このスクリーニング法を一次スクリーニングとして用い、その後、上記スクリーニング法を実施することも可能である。このように2段階のスクリーニングを実施すれば、一層効率的に目的の物質を見出すことが可能となる。

【0038】
尚、特に言及しない事項(被験物質の種類、対照群の利用、選抜された物質の改変など)については、第1の局面におけるスクリーニング法に関する記述が援用される。
【実施例】
【0039】
<聴力レベルを規定する分子の模索、及び難聴モデル動物の作製>
1.方法
(1)難聴モデル動物の作製
点変異によってRetの1063番目のチロシンをフェニルアラニンに置換したc-Ret Y1062Fホモ及びヘテロノックインマウス作製の方法を以下に記す。ネオマイシン耐性遺伝子を含むターゲティングベクターを129svjマウス由来のES細胞に挿入し、薬物でターゲティングベクターを含むES細胞を選択した。その後、ES細胞クローンをC57BL/6Jマウスに胚盤胞移植を行い、キメラマウスを作製した(参考文献6)。
【実施例】
【0040】
(2)聴力レベルを規定する分子の模索
得られたノックインマウスを聴性脳幹反応検査法(ABRハンドブック(加我君孝 編(金原出版))で聴力レベルを解析した。
【実施例】
【0041】
(3)内耳の形態解析
マウス内耳はブアン固定液を用いて灌流固定した。得られた凍結切片、あるいはパラフィン切片について、抗体を用いた免疫染色とクリュー・バレラ染色を行った。電子顕微鏡解析の際は、マウス内耳はグルタールアルデヒドとパラホルムアルデヒドの混合固定液を用いて灌流固定した。
【実施例】
【0042】
2.結果
(1)Retの1063番目のチロシンのリン酸化レベルと聴力の発達
神経成長因子の受容体型チロシンキナーゼであるRET/Retは、ヒトのヒルシュスプラング病(巨大結腸症)、多発性内分泌腺腫症(MEN)、甲状腺癌の原因遺伝子であることが現在までに知られている(参考文献2、3)。また、その1062番目(マウスRetでは1063番目)のチロシンは、RET/Retのキナーゼ活性及びシグナル伝達系に重要ないくつかの分子が結合する重要な部位であることが知られている(参考文献2~4)。事実、点変異によってRetの1063番目のチロシンをフェニルアラニンに置換したc-Ret Y1062Fホモノックインマウス(c-Ret KIY1062F/ Y1062F-mice)は、腸神経の顕著な減少、及び腎臓の形成不全を示すことが報告されている(参考文献6)。
【実施例】
【0043】
しかしながら、現時点において、RET/Retが聴力に関係していることを示す報告はない。そこで、まず野生型マウスが正常聴力を獲得する生後18日までのRetタンパク質の発現レベル及び活性レベル(1063番目のチロシンのリン酸化レベル)を免疫組織学的に解析した。その結果、生後14日のマウス内耳のらせん神経節、血管条、聴神経においてRetタンパク質およびRet1063番目のチロシンのリン酸化が検出された(結果を図示せず)。一方、Retは腸神経系の神経節の発達・維持に重要な役割を果たしていること(参考文献2、3)、さらに聴覚系の神経節は内耳から中枢神経系への音信号の伝達に重要な役割を果たしていること(参考文献5)が知られていることから、まず内耳聴神経節におけるRetの発現レベル及び活性レベル(1063番目のチロシンのリン酸化レベル)の経時的変化に焦点をおいて解析を行った。その結果、生後1-18日にかけて、Retタンパク質その自体はらせん神経節に常に発現しているのに対して(結果を図示せず)、Retの1063番目のチロシンのリン酸化レベルは、野生型マウスが聴力を獲得し始める二日前の生後6日以降に急激に上昇することが分かった(図1a)。このことから、らせん神経節におけるRetの1063番目のチロシンのリン酸化レベルが聴力の発達に重要な役割を果たしている可能性が出てきた。
【実施例】
【0044】
(2)ホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウスの表現型
上記可能性を個体レベルで検証する為に、Ret分子内の1063番目のチロシンに点変異を導入し、Ret分子内の1063番目のチロシンのリン酸化が殆ど検出されない(図1c~g)ホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret機能高度障害マウス)を作製した(参考文献6を参照)。このマウスを用いて聴性脳幹反応(ABR)閾値(聴力レベル)を調べた。その結果、低音から高音域(4-40 kHz)まで、生後18日のRet機能高度障害マウスの聴力は78-85dBで重度の障害(聾)を受けていることが分かった(図1b)。同じ日齢の野生型マウスの聴力は20-55dBで正常レベルであった(結果を図示せず)。このように、ホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウスは先天性難聴の表現型を持つことが判明した。
【実施例】
【0045】
(3)1063番目のチロシンのリン酸化とらせん神経節の発達
次に、生後2.5、8、14日における、らせん神経節の細胞数を測定したところ、生後2.5日では有意な差はみられないものの(図1h、i、l)、生後8、14日のホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret機能高度障害マウス)では、基底回転のらせん神経節が約20%あるいは35%と有意に減少していることが分かった(図1j、k、l)。この結果と対応して、らせん神経節におけるc-Ret Y1062のリン酸化は生後1-5日まではほとんど検出されないが(図1a)、生後6日以降に顕著に上昇することから、生後6日以降のらせん神経節におけるc-Ret Y1062のリン酸化がらせん神経節の発達に重要であることが示唆された。
【実施例】
【0046】
更に、らせん神経節減少が神経変性の原因となっているか否かについて検討する為に、らせん神経節に対する透過電子顕微鏡解析を行った。その結果、生後14日のホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret機能高度障害マウス)では、らせん神経節及びその核が明らかに縮んでいる形態変化を示した(図2b)。さらに、その核膜が不連続になっており、その周辺に高度に凝集した異質染色質が観察された(図2d)。一方、同じ日齢の野生型マウスのらせん神経節では、そのような形態変化は観察されず、核膜についてもはっきりした二重膜が観察された(図2a、c)。尚、野生型、ホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウスのいずれについても、らせん神経節にアポトーシスシグナルの表現型(タネル染色など)は検出されなかった。
【実施例】
【0047】
以上の結果より、ホモ型Ret-Y1062F-ノックインマウスのらせん神経節は、生後の聴覚発達時期にアポトーシス陰性の重度の神経変性を示すことが明らかになった。c-Retが細胞死に伴うアポトーシスに関与するか否かについては、複数の研究グループから異なる結果が報告されており、興味ある課題である。
【実施例】
【0048】
(4)ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスの表現型
次に、同様の実験をヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウス(Ret機能軽度障害マウス)を用いて行った。このマウスの寿命、体重、腸神経系、腎臓の発達については異常がないことが報告されている(参考文献6)。聴力測定(ABR)を行った結果、らせん神経節におけるRet-Y1062のリン酸化レベルが野生型よりも有意に減少しているヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスは、生後1ヶ月では野生型の聴力レベルと同等であるのに対して、生後4ヶ月以降、野生型と比較して高音域から聴力低下が加速し、10ヶ月に至っては、高音域の聴力レベルは測定域外(聾)であることが分かった(図3a~c)。更に、ヘテロ型Ret-ノックアウトマウスも同様に野生型マウスよりも加齢性難聴が進行(悪化)していることが分かった(結果を図示せず)。これらの結果と対応して、野生型マウスのらせん神経節の細胞数は加齢依存的に緩やかな減少を示したが、ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスのらせん神経節の細胞数は、野生型と比較して急激な減少することが分かった(図3d~m)。
【実施例】
【0049】
(5)加齢性難聴の回復実験
最後に、ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスの加齢性難聴の回復実験を試みた。恒常活性型RETを持つRET遺伝子機能亢進マウス(RET-Tg-mice 242系:文献15 Kato M et a al. Oncogene 1999)とヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスを交配させ、恒常活性型RET遺伝子を導入したc-Ret-KIY1062F/+;RET-Tg-miceを作製した。14ヶ月齢において、c-Ret-KIY1062F/+の聴力レベルは野生型と比較して顕著に低下したのに対して、c-Ret-KIY1062F/+;RET-Tg-miceは野生型マウスと同等の聴力レベルを示した(図4a)。c-Ret-KIY1062F/+;RET-Tg-miceのらせん神経節におけるRet-Y1062のリン酸化レベルはc-Ret-KIY1062F/+よりも有意に増加していた(図4b~j)。この結果と対応して、ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスと比較して、c-Ret-KIY1062F/+;RET-Tg-miceのらせん神経節の細胞数は有意に多いことがわかった(図4k~o)。以上の結果より、ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスの加齢性難聴の進行を恒常活性型RET遺伝子が部分的に阻止できる事が示唆された。
【実施例】
【0050】
一方、既知の情報として以下の論文が報告されている。即ち、(i)試験管内の実験によって、Retを介したシグナル伝達系は転写因子であるNF-κBの活性化に重要である事が報告されている(参考文献17)。また、(ii)転写因子NF-κBの構成分子の一つであるp50タンパク質欠損マウスでは、calbindin D28Kタンパク質及びsynaptophysinタンパク質などの異常増加を伴うらせん神経節の変性が起こり、加齢性難聴の進行が早まることが報告されている(参考文献16)。さらに、NF-κBの上流のシグナル伝達系が活性化すると、NF-κBは細胞質から核内に移行し、その転写因子としての機能を発揮することが知られている(参考文献18)。以上の文献情報を踏まえ、NF-κB p50がヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスの加齢性難聴の進行に機能的に関わっているかどうかを解析する為、NF-κB p50のらせん神経節の核移行の程度を免疫組織染色(参考文献19)により解析した。その結果、ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスのNF-κB p50とDAPIで染色した核との共局在の程度(57%:図5c, d, i)と比較して、c-Ret-KIY1062F/+;RET-Tg-miceの共局在の程度は野生型、あるいはRET-Tg-miceのレベルまで顕著に増加した(75%:図5e, f, i)。以上の結果より、恒常型RETトランスジーンはヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスのNF-κB p50の核移行の低下(機能低下)を正常化することが示唆された。
【実施例】
【0051】
更に、転写因子NF-κBの構成分子の一つであるp50タンパク質欠損マウスで報告されている、calbindin D28K(図5k,n)やsynaptophysin(図5p,s)などのマーカータンパク質などの異常増加もヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスで観察された。興味深いことに、これらの異常増加はc-Ret-KI Y1062F/+;RET-Tg-miceでは野生型、あるいはRET-Tg-miceのレベルまで有意に減少しており(図5j-s)、恒常型RETトランスジーンはヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスのマーカータンパク質などの異常増加も正常化することが示唆された。以上の結果より、NF-κB p50はRet-Y1062を介したシグナル伝達系の下流に位置する転写因子として、ヘテロ型Ret-Y1062F-ノックインマウスの加齢性難聴の進行に機能的に関わっていることが示唆された。
【実施例】
【0052】
(6)まとめ
Ret遺伝子機能低下マウス(Ret-Y1062F-ノックインマウス)を用いた以上の解析結果により、Retのリン酸化レベルが生後の内耳らせん神経節の発達と生存に重要な役割を担っており、そのリン酸化レベルが低下すると、その程度によって先天性難聴と加齢性難聴の原因になることが示唆された。また、恒常活性型RETによる加齢性難聴の回復実験により、難聴治療の新たな標的分子としてRETが有用であることが示唆された。
【実施例】
【0053】
3.考察
従来、先天性難聴と加齢性難聴は発症時期あるいは病態の明確な違いから、全く異なる疾患であるとみなされていた。本研究結果から、これら難聴も単一遺伝子により発症する可能性が示唆された。
【実施例】
【0054】
以上の実験結果より、以下の知見が得られた。
(1)RET/Retタンパク質のリン酸化レベル、即ち活性化レベルが聴覚の形成、発達に重要な役割を担う。
(2)先天性難聴の表現型を示すモデル動物を作製するためには、Retタンパク質の活性化を妨げるように両方のアレルのRet遺伝子に変異を導入することが有効である。
(3)加齢性難聴の表現型を示すモデル動物を作製するためには、Retタンパク質の活性化を妨げるように片方のアレルのRet遺伝子に変異を導入することが有効である。
(4)RET/Retが難聴の予防・治療の標的分子になる。
【実施例】
【0055】
<臨床症例におけるRET遺伝子の変異>
RETはヒルシュスプラング病(巨大結腸症)の原因遺伝子として知られているが、その一方でヒルシュスプラング病の患者は難聴のリスクが高まることが指摘されている。このことから、ヒルシュスプラング病の患者において、RETの点変異と難聴発症について関連する可能性がある。そこで、ヒルシュスプラング病とRET遺伝子の変異との関係を調べることにした。まず、ヒルシュスプルング病患児の内、全結腸型無神経節症(total colon aganglionosis)といわれる重症例(21例)についてRET遺伝子の全塩基配列を検索した。一方、聴覚検査を実施した結果、これら21例中、3例は「RET遺伝子変異に由来するヒルシュスプルング病における」聴覚障害であると確認された。これら3例には共通する特徴が認められた。即ち、全てが男児例であり、しかも重症例のなかでも特に重症とされる極型症例(全腸管型無神経節症)に集中していた。
【実施例】
【0056】
以上の検討より、ヒトにおいても、聴覚異常を規定する分子としてRETが重要であることが判明した。
【実施例】
【0057】
(参考文献)
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【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の齧歯類遺伝子改変動物は、難聴のメカニズムの研究、難聴に対する予防又は治療法の確立に有用である。
【0059】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
図面
【図1】
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【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4