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明細書 :酸化亜鉛透明導電膜の製造方法及びこの方法を実施するための製造装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5507882号 (P5507882)
公開番号 特開2010-261084 (P2010-261084A)
登録日 平成26年3月28日(2014.3.28)
発行日 平成26年5月28日(2014.5.28)
公開日 平成22年11月18日(2010.11.18)
発明の名称または考案の名称 酸化亜鉛透明導電膜の製造方法及びこの方法を実施するための製造装置
国際特許分類 C23C  14/54        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
C23C  14/32        (2006.01)
C23C  14/08        (2006.01)
H05B  33/28        (2006.01)
H05B  33/10        (2006.01)
H01L  51/50        (2006.01)
H01L  21/363       (2006.01)
FI C23C 14/54 B
H01B 13/00 503B
C23C 14/32 A
C23C 14/54 F
C23C 14/08 C
C23C 14/32 B
H05B 33/28
H05B 33/10
H05B 33/14 A
H01L 21/363
請求項の数または発明の数 4
全頁数 12
出願番号 特願2009-113721 (P2009-113721)
出願日 平成21年5月8日(2009.5.8)
審査請求日 平成24年5月1日(2012.5.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
発明者または考案者 【氏名】佐藤 直幸
【氏名】池畑 隆
個別代理人の代理人 【識別番号】100093872、【弁理士】、【氏名又は名称】高崎 芳紘
【識別番号】100166132、【弁理士】、【氏名又は名称】木船 英雄
審査官 【審査官】安齋 美佐子
参考文献・文献 特表2003-518553(JP,A)
特開昭56-063821(JP,A)
佐藤直幸,他,質量選択的運動量制御に向けた亜鉛-酸素混合プラズマ中の透明導電膜合成,電気学会研究会資料,2008年,vol.PST-08-7~15,p.33-38
佐藤直幸,他,ZnO透明導電膜の抵抗率低減に向けた誘導結合型酸素プラズマ中Zn蒸気の観察,電気学会研究会資料,2008年,vol.PST-08-98~114・116~120,p.99-102
調査した分野 C23C 14/00-14/58
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
プラズマ用の閉空間部と、
上記閉空間部内部へ酸素ガスを導入するための導入手段と、
上記閉空間部内部にプラズマを生成させるための電源手段と、
シャッタ窓を有し、内部に絶縁性の透明基板を装填した基板保持具と、
蒸発口を有し、内部の加熱空間内に亜鉛ショット又は亜鉛成形物を搭載したバレットが載置されたオーブンと、
を備え、上記基板保持具のシャッタ窓と上記オーブンの蒸発口とが上記閉空間部内部で互いに対向するような位置関係となるように配置して、上記絶縁性の透明基板に酸化亜鉛透明導電膜を堆積させる製造方法であって、
バレットに載置した亜鉛ショット又は亜鉛成形物を加熱して亜鉛蒸気を発生させ且つこの亜鉛蒸気圧を導入酸素ガスの圧力よりも大きくなるように、上記オーブンを制御する第1のステップと、
酸素ガスを上記閉空間部へ導入させるように、上記導入手段を制御する第2のステップと、
上記閉空間部内部の酸素ガスのプラズマ化及び酸素-亜鉛プラズマ化を行わせるように、上記電源手段を制御する第3のステップと、
上記絶縁性の透明基板の縁に電極を設け、上記酸素-亜鉛プラズマ化の状態時に上記基板保持具のシャッタ窓を開いて絶縁性の透明基板上に上記電極をも覆う面積に亘って酸化亜鉛膜を形成した時点で、上記オーブンと透明基板との間のプラズマ空間に電圧を印加し、この空間電圧を制御しながら、上記絶縁性の透明基板上に酸化亜鉛透明導電膜を堆積させる第4のステップと、
を具えた酸化亜鉛透明導電膜の製造方法。
【請求項2】
上記第2のステップを上記第1のステップの後ではなく、上記第1のステップの前に上記第2のステップを実行させるものとした請求項1記載の酸化亜鉛透明導電膜の製造方法。
【請求項3】
上記第3のステップは、質量分析器を用いて上記亜鉛のファラデーカップ電流をモニタリングして、上記透明基板と上記蒸発口との距離を調整させ、又は上記電源手段の電力の周波数、電圧、電流を調整させるステップを具えるものとした請求項1又は2に記載の酸化亜鉛透明導電膜の製造方法。
【請求項4】
プラズマ用の閉空間部と、
上記閉空間部内部へ酸素ガスを導入するための導入手段と、
上記閉空間部内部にプラズマを生成させるための電源手段と、
シャッタ窓を有し、内部に絶縁性の透明基板を装填した基板保持具と、
蒸発口を有し、内部の加熱空間内に亜鉛ショット又は亜鉛成形物を搭載したバレットが載置されたオーブンと、
を備え、上記基板保持具のシャッタ窓と上記オーブンの蒸発口とが上記閉空間部内部で互いに対向するような位置関係となるように配置して、上記絶縁性の透明基板に酸化亜鉛透明膜を堆積させる製造装置であって、
バレットに載置した亜鉛ショット又は亜鉛成形物を加熱して亜鉛蒸気を発生させ且つこの亜鉛蒸気圧を導入酸素ガスの圧力よりも大きくなるようにするオーブン制御手段と、
酸素ガスを上記閉空間部へ導入させる導入手段の制御手段と、
上記閉空間部内の酸素ガスのプラズマ化及び酸素-亜鉛プラズマ化を行わせる電源手段の制御手段と、
上記絶縁性の透明基板の縁に電極を設け、上記酸素-亜鉛プラズマ化の状態時上記基板保持具のシャッタ窓を開いて絶縁性の透明基板上に上記電極をも覆う面積に亘って酸化亜鉛膜を形成した時点で、上記オーブンと透明基板との間のプラズマ空間に電圧を印加し、この空間電圧を制御しながら、上記絶縁性の透明基板上に酸化亜鉛透明導電膜を堆積させる制御手段と、
を具えた酸化亜鉛透明導電膜の製造装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池、TFTディスプレイ、有機ELパネル等にとって不可欠である透明導電膜の製造方法及びこれを実施するための製造装置に関し、特にドーピング処理のように多大のエネルギー消費を伴う工程を不要とする経済的な低温プロセスにより製造することができる、毒性のない準アンドープ酸化亜鉛透明導電膜のプラズマ合成方法及びこの方法を実施するための製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エネルギー分野で重要視されている太陽電池は、透明導電膜を透過して入射する太陽からの放射エネルギーを電気エネルギーに変換する素子である。また、情報通信分野において重要な役割を担っているTFTディスプレイや有機ELパネルにあっては、内部で発生する可視領域の光を高効率で透過させ、外部からの良好な視認性を確保するために透明導電膜が必要になる。また、局所暖房ビニールハウスに代わる農業向け大規模な透明発電発熱ウィンドウ(日中に透明太陽電池で蓄電したエネルギーを夜中に透明ヒーターに給電)や視認性のより高い電子レンジの電磁シールド窓への応用も期待されている。これらの用途では、可視光を主体とする電磁波の透過方向が外部から内部への導入か、内部から外部への放出かの違いはあっても、透明で耐久性に優れていて毒性のない透明導電膜がそれぞれの機能と使用環境を大きく左右する。
【0003】
この種の透明導電膜としてITO(インジウム-錫酸化物;In23 90wt%、SnO2 10wt%)が多用されている。また、酸化亜鉛を主体とするZnO系(ZnO、AZO、GZO)透明導電膜も試みられているが、現段階においては光透過率、抵抗率、価格、材料設計等の観点からITO薄膜が優位性を保っている。これらの各種材料の透明導電膜は、有機ELを日常生活に密接する面照明用光源として用いる場合の透明電極として試作されているが、今後の大面積化と経済性とを共に可能にする大量製造プロセスが不可欠となり、製造に伴う加工エネルギーを極力抑制する必要がある。特に、インジウムをはじめ希少金属を必要とする技術については資源枯渇に対する懸念も生じてくる。
【0004】
現段階でのITOを材料とする加工プロセスではスパッタ法が最も多く実用化されている。スパッタ法にあっては、所要電気エネルギーに対する原料粒子の放出エネルギー効率が低く、焼結体となっているターゲット材料の製造にも多くのエネルギーを必要とする。更に、抵抗率を下げるためのガリウムGaやアルミニウムAlが含浸されたターゲット(GZO、AZO)は極めて高価である。このような事情を考慮してガラス製板時の高温を利用することにより導電性素材を被着させようとする省エネルギーを指向する製法も実用化されている。しかし、使用可能な基板材料は耐熱ガラスに代表される高耐熱性素材に限られ、例えば、ポリカーボネートのようなエンジニアリングプラスチックのシートやその他の軽量化及びフレキシブル化に必要となる高分子透明材料等への適用は不可能である。
【0005】
特許文献1は、熱CVD法とプラズマCVD法との特徴を併有せしめることにより、カーボンナノチューブ等に代表されるナノ構造材料を高い生産性のもとに比較的大面積の基板上に製造することができるナノ構造材料製造装置及び製造方法を開示している。そして該ナノ構造材料装置及び製造方法は高品質の酸化亜鉛ZnOの薄膜やp型ZnOの製造にも適用可能である旨付言している。しかし、この特許文献1はカーボンナノチューブのようなナノ機能材料を主たる対象とするものである。ここでは、基板に500~1000℃のような高温加熱を実施することから適用基板は専ら耐熱性素材に限定され、低融点素材への適用は不可能であり、加えて省エネルギーの要請にも適うものとはいえない。
【0006】
特許文献2も、酸化亜鉛透明導電膜を対象とするものではあるが、酸化亜鉛層に対してn型ドーパントとp型ドーパントとをドーピングすることを前提としている。この際、n型ドーパントをp型ドーパントよりも多くし、かつ該n型ドーパントの不純物濃度が所定範囲となるように規定されるものであることを開示している。更にこれらのドーパントとして、n型ドーパントはIIIB族元素中から選択されたものとし、p型ドーパントはVB族元素中から選択されたものとする旨限定している。
【0007】
そしてこの特許文献2の酸化亜鉛透明導電膜は、このように処理された酸化亜鉛層により透明度が優れており抵抗率の小さいものとなる旨記載されている。しかしながら、この特許文献2による技術では処理に要するエネルギーが膨大であるドーピング法の適用が前提であり、省エネルギーの要請にも反している。また、このようなドーピング法にあっては、ドーパントの置換に伴い自由電子(キャリア)の放出が生じ、そのサイトは結晶の欠陥となるため、キャリアを放出すると同時にキャリアの散乱源ともなり、移動度を低下させることになる。また全てのドーパントが置換されるものでもなく、結晶粒内で格子間原子として存在したり、または結晶粒界や表面に偏析することがある。そのため、経時変化により色付いたりシート抵抗が変化する可能性がある等、材料機能としての寿命に関わることがある。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2006-89359号公報
【特許文献2】特開2002-50229号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、低抵抗率の酸化亜鉛透明導電膜を、製造過程における堆積速度を増大させると共に省エネルギー化を図りながら、スパッタ法と熱CVD以外の手段によって、大面積化を可能とするプラズマ合成法により製造する酸化亜鉛透明導電膜の製造方法及びこの方法を実施するための製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、
プラズマ用の閉空間部と、上記閉空間部内部へ酸素ガスを導入するための導入手段と、上記閉空間部内部にプラズマを生成させるための電源手段と、シャッタ窓を有し、内部に絶縁性の透明基板を装填した基板保持具と、蒸発口を有し、内部の加熱空間内に亜鉛ショット又は亜鉛成形物を搭載したバレットが載置されたオーブンと、を備え、上記基板保持具のシャッタ窓と上記オーブンの蒸発口とが上記閉空間部内部で互いに対向するような位置関係となるように配置して、上記絶縁性の透明基板に酸化亜鉛透明導電膜を堆積させる製造方法であって、
バレットに載置した亜鉛ショット又は亜鉛成形物を加熱して亜鉛蒸気を発生させ且つこの亜鉛蒸気圧を導入酸素ガスの圧力よりも大きくなるように、上記オーブンを制御する第1のステップと、
酸素ガスを上記閉空間部へ導入させるように、上記導入手段を制御する第2のステップと、
上記閉空間部内部の酸素ガスのプラズマ化及び酸素-亜鉛プラズマ化を行わせるように、上記電源手段を制御する第3のステップと、
上記絶縁性の透明基板の縁に電極を設け、上記酸素-亜鉛プラズマ化の状態時に上記基板保持具のシャッタ窓を開いて絶縁性の透明基板上に上記電極をも覆う面積に亘って酸化亜鉛膜を形成した時点で、上記オーブンと透明基板との間のプラズマ空間に電圧を印加し、この空間電圧を制御しながら、上記絶縁性の透明基板上に酸化亜鉛透明導電膜を堆積させる第4のステップと、を具えた酸化亜鉛透明導電膜の製造方法である。

【0011】
第2の発明は、上記第2のステップを上記第1のステップの後ではなく、上記第1のステップの前に上記第2のステップを実行させるものとしたものである

【0012】
第3の発明は、上記第3のステップは、質量分析器を用いて上記亜鉛のファラデーカップ電流をモニタリングして、上記透明基板と上記蒸発口との距離を調整させ、又は上記電源手段の電力の周波数、電圧、電流を調整させるステップを具えるものである。

【0013】
第4の発明は、
プラズマ用の閉空間部と、上記閉空間部内部へ酸素ガスを導入するための導入手段と、上記閉空間部内部にプラズマを生成させるための電源手段と、シャッタ窓を有し、内部に絶縁性の透明基板を装填した基板保持具と、蒸発口を有し、内部の加熱空間内に亜鉛ショット又は亜鉛成形物を搭載したバレットが載置されたオーブンと、を備え、上記基板保持具のシャッタ窓と上記オーブンの蒸発口とが上記閉空間部内部で互いに対向するような位置関係となるように配置して、上記絶縁性の透明基板に酸化亜鉛透明膜を堆積させる製造装置であって、
バレットに載置した亜鉛ショット又は亜鉛成形物を加熱して亜鉛蒸気を発生させ且つこの亜鉛蒸気圧を導入酸素ガスの圧力よりも大きくなるようにするオーブン制御手段と、
酸素ガスを上記閉空間部へ導入させる導入手段の制御手段と、
上記閉空間部内の酸素ガスのプラズマ化及び酸素-亜鉛プラズマ化を行わせる電源手段の制御手段と、
上記絶縁性の透明基板の縁に電極を設け、上記酸素-亜鉛プラズマ化の状態時に上記基板保持具のシャッタ窓を開いて絶縁性の透明基板上に上記電極をも覆う面積に亘って酸化亜鉛膜を形成した時点で、上記オーブンと透明基板との間のプラズマ空間に電圧を印加し、この空間電圧を制御しながら、上記絶縁性の透明基板上に酸化亜鉛透明導電膜を堆積させる制御手段と、を具えた酸化亜鉛透明導電膜の製造装置である。

【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透明性導電材料の製造にあたり、使用材料として毒性がなく流通量の大きい非レアメタルである亜鉛Znが使用できる利点がある。また、プロセス中にドーピング処理等の高エネルギーイオンの照射を伴わないため、耐熱性の低い素材、例えば、低融点の透明基板材料であるエンジニアリングプラスチックシートやその他の高分子透明材料を基板として使用することができる。また得られる酸化亜鉛透明導電膜が、具体的には、例えば、400nmの膜厚のそれで10-4Ωcm台後半の低抵抗率が達成可能である。

【0017】
更に、本発明によれば、堆積レートを400nm/min程度以上に増大させることができる上、例えば、1m以上の大面積の酸化亜鉛透明導電膜を得ることもできる。このような方法によって合成された酸化亜鉛透明導電膜に関しては、使用後の原料元素の回収に高エネルギーを要しないことから、省エネルギーリサイクルが可能となる。また、本発明では、スパッタ法や熱CVD法のような格別の高温、高熱を要する処理が含まれていない。それ故、プロセス全般にわたり省エネルギー効果が達成できる。

【0019】
また、本発明によれば、その構成により、絶縁性基板の縁に形成された電極を介して酸化亜鉛試料への所要電位の印加が可能となる。該電極上も含めて酸化亜鉛試料の堆積が良好に行われることになる。

【0020】
本発明によれば、簡明な構成で透明基板上への酸化亜鉛試料の堆積量を正確に制御することが可能となる。

【0021】
本発明によれば、簡明な構成で酸化亜鉛透明導電膜の製造方法を適切に実施することが可能となる。

【0022】
本発明によれば、酸化亜鉛透明導電膜の製造装置において、透明基板上への堆積量をシャッタにより正確に制御し、均質の透明導電膜の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】酸化亜鉛透明導電膜の製造方法を実施する基本構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
発明を実施するための形態を図面を参照しつつ説明する。
図1に示すように、石英ガラス管内に閉じた空間の一端(図中左端)にこの実施形態では耐熱ガラス(非晶質ガラス:ホウケイ酸ガラス等)である透明基板1が配してあり、その一面に透明導電膜となる酸化亜鉛試料2が堆積するようになっている。同図には、該酸化亜鉛試料2が堆積した状態が示されている。この酸化亜鉛試料2に前記透明基板1の縁部に形成した電極3を介して所要の電位が付与可能であるようになっている。なお、該透明基板1は、背後から基板保持具15で支持されており、その前面側は開閉自在なシャッタ16により、後記酸素プラズマの生成される空間及び亜鉛蒸気ZVの導入方向に対して開閉自在にしてある。

【0025】
前記閉じた空間には、これを包囲するようにICP(誘導結合型プラズマ)生成コイル(プラズマ生成手段)4が配され、酸化亜鉛試料2を堆積する透明基板1の前面と対面する空間に酸素プラズマを生成させるようになっている。透明基板1に酸素プラズマOPが触れる部位の面積をSTとする。該ICP生成コイル4には高周波電源5が接続されている。この閉じた空間には、図示しないノズルを介して該透明基板1と対面する側から酸素ガスが導入されるようになっており、図1中には、これがICP生成コイル4の作用を受けてプラズマ化した酸素プラズマOPが示されている。

【0026】
図1に示すように、閉じた空間の他端(図中右端)側には、酸化亜鉛試料2を堆積する透明基板1に対向する位置関係となる部位に、オーブン6で包囲された石英製のバレット(亜鉛蒸発手段)7が配置してある。バレット7は亜鉛ショット8を装填するようになっており、オーブン6の加熱によって亜鉛蒸気ZVを生成し、その蒸発口から酸素プラズマOPの生成領域内を経て透明基板1に向かうように噴射放出する。酸素プラズマOPがオーブン6の外面に触れる部位の面積をSOとする。

【0027】
また、プラズマ空間に於ける酸素プラズマOPの空間電位(プラズマ電位)を制御するために、直流電源9、出力周波数を50Hz~2.45GHzの範囲で制御できる交流電源10及びパルス電源11からなる複合電位付与手段が構成してあり、この複合電位付与手段の各々の電源9、10、11は、3段切替スイッチ17を介して前記オーブン6に切り換え可能に接続している。該3段切替スイッチ17の接点端子aと前記透明基板1の縁部に形成した電極3の接点端子bとは、透明基板1に酸素プラズマOPが触れる部位の面積STとオーブンの外面の酸素プラズマOPが触れる部位の面積SOとが、ST≪SOの関係を満たしていれば、交換しても良い。すなわち、オーブン6を接地して、該電極3に対し該3段切替スイッチ17を介して各々の電源9、10、11のいずれかを接続できるようにしても良い。

【0028】
前記のように、酸素プラズマOPが生成した透明基板1の前面領域には前記バレット7の蒸発口から噴射される亜鉛蒸気ZVが導入され、透明基板1の表面に入射するようになっている。このとき、酸素プラズマOP内で発生している各種粒子(高エネルギー電子や酸素原子のイオンとラジカル及び酸素分子のイオンとラジカル)、フォトン、高周波電磁場及び静電場が亜鉛Zn蒸気と相互作用して、亜鉛Znのイオンやラジカルが発生し,これらの粒子が若干の未反応の亜鉛蒸気と共に該透明基板1の表面に堆積して酸化亜鉛透明導電膜を形成することになる。

【0029】
こうして、透明基板1の前面に近い領域には酸素-亜鉛混合プラズマOZPが生成する。この酸素-亜鉛混合プラズマOZPの雰囲気の状態は、プラズマ中の電子の密度や温度、及びプラズマ電位を測定できるプローブ12によって適宜モニターされる。透明基板1の前面に近い部位の酸素-亜鉛混合プラズマOZPによるプラズマ領域の状態は、プラズマ発光分析装置13及び質量分析装置14によって適時監視可能に構成される。

【0030】
前記透明基板1の周辺の酸素原子、酸素分子及び亜鉛原子及びそれらのラジカルとイオンのそれぞれの量及び運動量状態は、前記プローブ12、前記プラズマ発光分析装置13及び前記質量分析装置14によって検出され、その検出結果に基づいて、前記オーブン6の三次元移動、酸素ガス質量流量及びプラズマ生成電源の波形を複合制御手段によって制御し、これによって前記酸素原子、酸素分子及び亜鉛原子の量及び運動量を制御する。具体的には、該複合制御手段を構成するオーブン移動手段及び制御コンピュータによって該オーブン6の三次元移動、特に対向する透明基板1側への進退移動を制御し、前記酸素ガス噴出用のノズルに配した流量調整弁及びその流量を制御する制御コンピュータによって酸素ガス質量流量を制御し、前記高周波電源5を制御する制御コンピュータによってプラズマ生成電力の波形を制御する。

【0031】
より詳細には、前記複合制御手段を構成する制御コンピュータによってプラズマ生成電源である前記高周波電源5の周波数、電圧及び電流を制御し、前記オーブン移動手段を制御コンピュータで制御し、これによって前記オーブン6をこれを支持する支持体と共に三次元移動させ、該オーブン6を前記透明基板1に対して、主としてこれに接近する方向又は後退する方向に移動制御し、更に制御コンピュータによって前記流量調整弁の流量を制御し、これによって前記ノズルの流量を制御し、酸素ガス質量流量を制御する。また同時に前記オーブン6の加熱温度の制御も該制御コンピュータによって行い、亜鉛蒸気のバレット7からの噴出量を制御する。

【0032】
また前記プローブ12、前記プラズマ発光分析装置13及び前記質量分析装置14の検出結果に基づいて、前記複合電位付与手段の直流電源9、周波数が50Hz~2.45GHzである交流電源10及びパルス電源11のいずれかを選択し、更にその周波数、デューティ比、電圧及び電流を制御し、前記酸素プラズマOPの空間電位を制御する。

【0033】
また前記詳細なプラズマ生成電源電力の制御手段により、及び酸素流量と排気速度で決まる圧力によって、該酸素プラズマOPの電子速度分布を変えて、前記透明基板1上の酸化亜鉛試料2と酸素プラズマOPとの間に形成されるシース電圧を制御する。より具体的には、圧力を一定にしておき電力波形をバーストにすると、時間平均の電子温度がデューティ比の減少と共に減少し、それに伴いシース電圧が減少する。その結果、シース電圧で加速され透明基板1へ入射する高エネルギー正イオンの衝撃を軽減できる。一方、バースト波形のパルス周期を長くするとプラズマの発生時間と消滅時間を調整できるので、酸化亜鉛試料2へ入射する亜鉛と酸素に関するラジカルとイオンの量を制御できる。

【0034】
これらの制御は、透明基板1上に堆積する酸化亜鉛透明導電膜の全成分中、亜鉛と酸素とのいずれか低い存在量に対して、亜鉛と酸素及び水素を除く不純物元素の成分比が0.4%以下となるように行う。このような場合であっても、得られる酸化亜鉛透明導電膜の透明性及び低抵抗率がそれぞれ確保できる。

【0035】
この実施の形態に於いて、透明基板1の前面に堆積させ得る酸化亜鉛試料2は、10×10mm2で厚さが400nmの膜であり、準アンドープの酸化亜鉛(ZnO)透明導電膜となる。この酸化亜鉛透明導電膜は、抵抗率が10-4Ω・cm後半であり、可視光透過率は約85%となる。大面積の透明基板1をシャッタ16の下流の開口部に対して上下左右に掃引することによって、透明導電膜の大面積化が原理的に可能である。特に、四角形の透明基板1の対向する縁に電極3、3を設けておけば酸化亜鉛試料2にバイアスした状態で合成できる。

【0036】
現在、量産レベルに於いて、基板温度100~200℃で製造されたITO透明導電膜の最小の抵抗率は、1.5×10-4Ω・cmである。この発明の実施の形態に於いて、酸素-亜鉛混合プラズマOZPの制御により、基板温度100℃とした処理により現行技術レベルである10-4Ω・cm後半の抵抗率が達成可能である。なお、従来技術のAZO(Al、2~3wt%)とGZO(Ga、~0.5wt%)の相場は10~20万円/kgのように極めて高価であるのに対して、この実施の形態で使用した亜鉛Znは、純度99.99%であり、290~450円/kgと廉価であるため、大幅な原価低減が期待できる。したがって、このような透明導電膜が重要な構成要素となる太陽電池、TFTディスプレイ、有機EL等の改良、さらには増産を進める上で有力な決め手となる可能性がある。
【実施例】
【0037】
以下、先に説明し、図1に示した構成を採用して実施した実施例について説明する。
(0-1)準備過程1;
図1におけるオーブン6中に配したバレット7に亜鉛ショット(又は、成形Znロッド)8を大気圧下において装填する。
(0-2)準備過程2;
シャッタ16付きの基板保持具15内に装填した8枚の透明基板(ホウケイ酸ガラス)1と共に真空容器内に配置する。
(1)排気過程;
不純物を極力混入させないため、閉じた空間の気圧を10-4Pa前半まで排気する。
(2)不純物放出過程;
石英製のバレット7を内装したオーブン6の温度を約200℃に保持して約1時間の不純物放出を行う。
【実施例】
【0038】
(3)亜鉛蒸発過程;
その後、石英製のバレット7を内装したオーブン6の温度を上げる。亜鉛Znの真空蒸発量は、オーブン6の温度が約270℃を越えると、急激に増すことになる。従ってこの温度は、亜鉛Zn層が透明基板1の前面に初期成長をし始める目安となる温度であり、かつオーブン6のバレット7内で加熱されている亜鉛Znショット8が酸化されないように、亜鉛Zn蒸気が発生してからノズルを通じて酸素の導入を開始する目安となる温度でもある。
なお、この過程において、酸素ガスを先に導入している場合は、オーブン6内のバレット7の蒸発口を閉じておき、内部の圧力が酸素ガスの蒸気圧より高くなってから開口させるものとし、その後も亜鉛Znの蒸気圧を酸素ガスの蒸気圧より高く保持する必要がある。
【実施例】
【0039】
(4)6Nガス導入・プラズマ生成過程;
次いで前記ノズルを通じて6N酸素ガスを導入し(10~50sccm)、前記ICP生成コイル4を前記高周波電源5の高周波電力(周波数30~300MHz、好ましくは177MHzで、正味電力50~500W、好ましくは100W)で駆動して、黄色い酸素プラズマOPを約20分間にわたり生成する。
(5)再加熱過程;
更にオーブン温度を上昇させ,酸素プラズマOP中の電子が十分な亜鉛Znを励起した結果,酸素-亜鉛混合プラズマOZPが黄色からピンク色を呈するようになる400度位まで昇温する。
【実施例】
【0040】
前記発明を実施するための形態に示した各過程を実行することにより、前記オーブン6中に配したバレット7に装填された亜鉛ショット(又は成形Znロッド)8は、次第に蒸発して、前記透明基板1の前面に堆積して行くことになる。ここで、質量分析装置14でモニターできる亜鉛Znの蒸発量を所望の値(例えば、Zn[m/q=64]のピーク電流 0.7~0.8 pA(ピーク電流値))付近に設定した後、前記透明基板1の直前に配置されたシャッタ16を開き、亜鉛粒子(ラジカル、イオン)、酸素原子(ラジカル、イオン)と酸素粒子(ラジカル、イオン)とを該透明基板1表面に堆積させた。該透明基板1の直上での気相空間では酸化亜鉛ZnO化合物がほとんど検出されないことから、界面で酸化亜鉛ZnOとなって堆積すると推定される。なお実用的な堆積厚さが得られる標準時間は、約120秒間である。
【実施例】
【0041】
オーブン6の温度を約1.5℃/minの割合で上昇させると、亜鉛蒸気ZVの量が8分間で約0.1pAだけ上昇変動することになる。このように、オーブン6の温度TOVを上昇させ続けていかないと、亜鉛Znのファラデーカップ電流が減少する。逆に、酸素プラズマOP生成時に亜鉛Znの蒸発量を減少させてゆくと、亜鉛Znの蒸発口より上流で酸素ラジカルと亜鉛Znが反応して結晶化する場合もあるため、亜鉛Znの蒸気圧を酸素ガスの圧力より常に高めるように制御しておく必要がある。
【実施例】
【0042】
他方、オーブン6の加熱電力を下げた場合にも亜鉛Znの蒸発率が上昇してしまう、所謂、自己点火が生じ、亜鉛Znのファラデーカップ電流IZnの制御が困難な場合には、オーブン6の亜鉛Zn蒸発口と透明基板1の間の距離zs-dを変化させたり、プラズマ生成電力の周波数、電圧及び電流を調整することで、その制御を行うことができる。該距離zs-dを広げても、酸素のファラデーカップ電流IO2はほぼ一定で変化が少ないが、亜鉛Znのファラデーカップ電流IZnは指数関数的に減少する。こうしてオーブン6の亜鉛Zn蒸発口と透明基板1の間の距離zs-dを変化させることにより、亜鉛Znと酸素O2の組成比以外にその他の物理量をほとんど変更することなく、亜鉛Znのファラデーカップ電流IZnの制御が可能となる。
【実施例】
【0043】
堆積時間が短い場合は、酸素プラズマOP照射に伴う成長界面のアニール効果を無視できるが、オーブン6の亜鉛Zn蒸発口と透明基板1の間の距離zs-dの減少に伴い、アニール効果が利いてくる。
【実施例】
【0044】
亜鉛Znのファラデーカップ電流IZnをモニタリングして透明基板1に入射する亜鉛Zn粒子の数を制御することにより、得られる酸化亜鉛試料(透明導電膜)2の光透過率と基礎特性(膜厚ds、シート抵抗Rs、抵抗率ρ)が異なってくる。
バレット7の亜鉛Znの蒸発口と透明基板1の距離依存性は以下の通りであり、以下のように制御できる。すなわち、バレット7の亜鉛Znの蒸発口が透明基板1に近づくと、ファラデーカップ電流IZnが増加し、合成される酸化亜鉛試料2の光透過率が低下する。これは、酸素原子に対して亜鉛Znの原子が過剰になり、その際に発生しているキャリアの密度がプラズモン効果の臨界密度に近づいていくことを示している。同時にシート抵抗は減少し、膜厚は増加していく。
【実施例】
【0045】
前記透明基板1上に堆積する酸化亜鉛試料2の透明性は、具体的には、オーブン6の亜鉛Zn蒸発口と透明基板1の間の距離zs-d=10mmと15mmとの間で、不透明から透明に急激に変化している。この間のファラデーカップ電流IZn差は約8pAになっている。この間のファラデーカップ電流IZnの安定度を保ちながら0.1pA台の分解能で制御すれば(オーブン6の温度では、約1℃の分解能に相当)、更に光透過率が高く抵抗率の低い(10-4Ω・cm前半)の酸化亜鉛試料2が得られる可能性がある。
【実施例】
【0046】
前記シャッタ16を開いた後、前記透明基板1に入射する正イオンの質量スペクトルを質量分析装置14により調べると、亜鉛Zn同位体に対応する3つのピークの強度比は、ほぼ天然存在比を示し、酸素原子と酸素分子の正イオンに対応するピークも明瞭に表れている。これらのピークの強度比は、酸素流量とオーブン6の温度を一定に保持しても酸素プラズマOP発生の高周波電源5の正味電力により変化する。励起周波数を変えると電源の正味(入射-反射)電力も変わってくる。従って、現在の実験では、酸素流量が25sccm、周波数177MHzで正味電力が100Wを超えると、酸素分子に対する原子のピークの比が大きくなる。これは、透明基板1と気相空間との界面での解離が少なくて済むので、界面へのエネルギー注入が低い状態、すなわち、正味電力の増加で透明基板1の温度が低くともZnOの成長が促進されるものと考えられる。
【実施例】
【0047】
この実施例では、以上の過程に於いて、6N酸素による酸素プラズマOPのプラズマ空間の広がりが前記石英ガラス管内の閉じた空間内に限定され、不純物の少ないプラズマの密度が大きい条件(流量 27.5sccm、プラズマ生成の正味電力 70W、プラズマ生成電力の周波数 177MHz)を形成し、オーブン6に内装したバレット7に350mgの6Nの亜鉛Znを充填して、透明基板1と前記オーブン6の亜鉛蒸気ZVの蒸発口先端との間隔zs-dを20mmに保ち、オーブン6温度を440℃(Znイオン電流1pA)にして、堆積時間120秒で膜の合成を行ったところ、15mm四方で厚さ1mmのホウケイ酸ガラスの透明基板1上に、10mm四方で厚さ400nmの酸化亜鉛試料(透明導電膜)2が合成できた。得られた酸化亜鉛試料2の特性は、可視光平均の透過率85%、シート抵抗23.3Ω/□、抵抗率 9.3×10-4 Ωcmなる最良のそれとなった。
【符号の説明】
【0048】
1 透明基板
2 酸化亜鉛試料(透明導電膜)
3 電極
4 ICP(誘導結合型プラズマ)生成コイル
5 高周波電源
6 オーブン
7 バレット
8 亜鉛ショット
9 直流電源
10 交流電源
11 パルス電源
12 プローブ
13 プラズマ発光分析装置
14 質量分析装置
15 基板保持具
16 シャッタ
17 3段切替スイッチ
OP 酸素プラズマ
ZV 亜鉛蒸気
OZP 酸素-亜鉛混合プラズマ
T プラズマが試料前面に触れる部分の面積
O プラズマがオーブンソース外面に触れる部分の面積
a 3段切替スイッチの接点端子
b 電極の接点端子
図面
【図1】
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