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明細書 :イオン伝導性配向セラミックスの製造方法およびそのイオン伝導体を用いた燃料電池

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5651309号 (P5651309)
公開番号 特開2011-037662 (P2011-037662A)
登録日 平成26年11月21日(2014.11.21)
発行日 平成27年1月7日(2015.1.7)
公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
発明の名称または考案の名称 イオン伝導性配向セラミックスの製造方法およびそのイオン伝導体を用いた燃料電池
国際特許分類 C03C  10/04        (2006.01)
H01M   8/12        (2006.01)
H01M   8/02        (2006.01)
C03B  32/02        (2006.01)
C03C   3/095       (2006.01)
FI C03C 10/04
H01M 8/12
H01M 8/02 K
C03B 32/02
C03C 3/095
請求項の数または発明の数 4
全頁数 10
出願番号 特願2009-185885 (P2009-185885)
出願日 平成21年8月10日(2009.8.10)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 社団法人ニューガラスフォーラム,「NEW GLASS」,第24巻,第2号,2009年6月1日
審査請求日 平成24年7月27日(2012.7.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592216384
【氏名又は名称】兵庫県
発明者または考案者 【氏名】嶺重 温
【氏名】矢澤 哲夫
【氏名】中尾 孝之
個別代理人の代理人 【識別番号】100082429、【弁理士】、【氏名又は名称】森 義明
【識別番号】100147706、【弁理士】、【氏名又は名称】多田 裕司
【識別番号】100162754、【弁理士】、【氏名又は名称】市川 真樹
審査官 【審査官】正 知晃
参考文献・文献 特開2004-244282(JP,A)
特開2003-277024(JP,A)
特開平08-208333(JP,A)
特開平11-071169(JP,A)
特開2007-091582(JP,A)
特開平09-142874(JP,A)
特開2004-327210(JP,A)
Christian van't HOEN et al.,Crystallization of oxyapatite in glass-ceramics,Journal of the European Ceramic Society,2006年 5月30日,Vol.27,pp.1579-1584
調査した分野 C03C 10/00
C03B 32/02
C03C 3/095
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
ランタノイドの酸化物粉末とSi又はGeの少なくとも一方の酸化物粉末とを含む酸化物原料を混合する酸化物原料混合工程と、
混合した前記酸化物原料を加熱溶融させて液体状態とし、これをキャストした後、急冷してガラス状物を得る溶融ガラス化工程と、
前記ガラス状物を800~1400℃で熱処理し、イオン伝導パスがc軸方向に配向したイオン伝導性配向セラミックスを結晶化させる結晶化工程とを有することを特徴とするイオン伝導性配向セラミックスの製造方法。
【請求項2】
前記酸化物原料が組成式(1)の組成を持つオキシアパタイトを生成するものであることを特徴とする請求項1に記載のイオン伝導性配向セラミックスの製造方法。
(RE9.33+x-αAEα)(T6.00-ym+y)O26.00+[3x-(4-m)y-α]/2 …(1)
(但し、RE;ランタノイドの中から選ばれる少なくとも一つの元素、AE;アルカリ土類金属の中から選ばれる少なくとも一つの元素、T;Si又はGeの少なくとも一方の元素、M;Mg,Al,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zn,Ga,Zr,Mo,Sn,Ta,W,P,Nbの中から選ばれる少なくとも一つの元素、-8.33≦x≦2.67、0.0≦y≦2.0、0.0≦α≦2.0)
【請求項3】
前記結晶化工程が酸素雰囲気規制下で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のイオン伝導性配向セラミックスの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載の方法で製造されたイオン伝導性配向セラミックスをイオン伝導体として固体電解質に用いたことを特徴とする燃料電池。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、高性能燃料電池を提供するための新規な固体電解質として利用可能なイオン伝導性配向セラミックスの製造方法およびこの方法で製造されたイオン伝導性配向セラミックスをイオン伝導体として用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の資源・エネルギー問題、環境問題を背景に、固体電解質を用いた燃料電池が注目されており、その実用化が期待されている。高分子電解質を用いる固体高分子形燃料電池(以下、「PEFC」と云う)や酸化物セラミックス電解質を用いる固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」と云う)がこの「固体電解質を用いた燃料電池」に該当する。これまでにこれらの燃料電池の効率向上と実用化をめざして様々な取組みが行われているが、現状では、まだ高性能且つ高耐久性を有する実用レベルの燃料電池が開発されているとは云い難い。
【0003】
上記燃料電池の効率向上と実用化において特に問題なのは固体電解質である。室温近辺で作動するPEFCの場合、現在主に研究されている電解質はパーフルオロ系のスルフォン酸基含有イオン交換膜(例えばDuPont社のNafion[登録商標])であるが、この材料は高いプロトン伝導性を有するものの、100℃を超える温度領域では含水率を高く保つことができず、結果としてプロトン伝導度の著しい減少を招くという問題がある。このため、燃料電池の自動車用或いは家庭用電源への適用を考えれば、100~300℃程度の中温領域で作動する燃料電池に適用可能な電解質を開発する必要があるが、上記パーフルオロ系のスルフォン酸基含有イオン交換膜ではこれに対応できない。
【0004】
一方、酸化物イオン(O2-)伝導性固体電解質と正負両電極とからなるSOFCは、1000℃近い高温下で作動させることが特徴である。これは電解質の内部抵抗を低減するため、換言すれば電解質内のイオンの移動を十分なものとするには高温を与えなければならないという理由であるが、このように高温作動であるが故に、SOFCは、発電効率が燃料電池の中で最も高く、又、種々の炭化水素(メタノール、天然ガス、石炭ガス化ガス等)を燃料として使用でき、更には、電極触媒として貴金属が不要であると云った特長を有する。しかしながら、その一方で、セル構成材料(インターコネクタ等)の材料選択の幅が狭く高コストにつながり、又、固体電解質にセラミックスを用いることから昇降温時の熱衝撃に弱く燃料電池セルの信頼性が市場導入レベルに達していない等の問題を有している。
【0005】
そこで最近は、このSOFCの作動温度を幾分低温化(500~800℃)させることでこれらの点を解決しようとの動きがある。このような中温作動型SOFCでは、セル周辺の耐熱部品にステンレス鋼を採用できる事や、固体電解質の受ける熱衝撃が軽減されると云ったメリットがあるが、その実現のためには、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)に代表される既存の固体電解質に代わり得る中温領域でもイオン伝導性に優れた電解質の開発が必須である。
【0006】
このような中温領域でイオン伝導性を発揮する固体電解質として、ランタンシリケート(LSO、組成式La9.33+xSi626+1.5x)が注目されている(例えば、特許文献1及び2参照)。この材料は、対称性の低い(つまり異方性の高い)アパタイト構造を有する新しいタイプのセラミックス電解質(イオン伝導性セラミックス)で、材料中でケイ素はSiO4四面体独立構造を取っており、アパタイト構造を保持する為の役割を担っている。そして、その四面体とランタン(La)との隙間にあるイオン伝導パスを介して酸化物イオンが高速に移動できるようになっている。更に、イオン伝導度の活性化エネルギーが低いことから、SOFCの固体電解質とした場合、低温作動化に有利であると云った特徴を有する。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開平8-208333号公報
【特許文献2】特開平11-71169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、LSOはそのイオン伝導性に異方性があることから、配向させることにより特性(すなわちイオン伝導性)の向上が見込める。このLSOからなるイオン伝導性配向体の製造方法としては、フローティングゾーン法(FZ法)等によってLSOの単結晶を作製する方法や、La23粉末とSiO2粉末とを混合した後、700~1200℃で熱処理して複合酸化物の多孔質体を生成し、この多孔質体を粉砕して粉体とした後、該粉体を溶媒に添加してスラリーとする。そして、このスラリーを磁場の存在下で固化させて成形体とした後、これを1400~1800℃で焼結させることにより、結晶の配向方向を概ね一致させたイオン伝導性配向セラミックスを得る方法などが提案されている。
【0009】
しかしながら、前者の方法では、イオン伝導性配向体として直径5~10mm×長さ50~60mm程度のものしか得られず、大型の単結晶を作ることは困難であり、後者の方法では、焼結体のスラリー化や磁場を与えるプロセスなどが必要であることから、作業工程が増えて製造プロセスが複雑になると共にコストが掛かるようになると云った問題があった。つまり、従来のイオン伝導性配向セラミックスの製造方法では、イオン伝導性を向上させた大型のものを低コストで簡単に製造することができなかった。
【0010】
それゆえに、本発明の主たる課題は、低コスト且つシンプルなプロセスであるにもかかわらず、大型のものを簡単に得ることができ、しかもイオン伝導性の向上が可能なイオン伝導性配向セラミックスの製造方法を提供することであり、更なる課題は、かかる製造方法で製造されたイオン伝導性配向セラミックスをイオン伝導体として固体電解質に使用した中温領域で作動する燃料電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、LSOがケイ素の酸化物(シリケート)であるということに注目して本発明を完成するに至ったのである。
【0012】
すなわち、「請求項1」に記載した発明は、
(1)ランタノイドの酸化物粉末とSi又はGeの少なくとも一方の酸化物粉末とを含む酸化物原料を混合する酸化物原料混合工程S1と、
(2)混合した前記酸化物原料を加熱溶融させて液体状態とし、これをキャストした後、急冷してガラス状物Gを得る溶融ガラス化工程S2と、
(3)前記ガラス状物Gを800~1400℃で熱処理し、イオン伝導パスがc軸方向に配向したイオン伝導性配向セラミックスを結晶化させる結晶化工程S3とを有する
(4)ことを特徴とするイオン伝導性配向セラミックスの製造方法である。

【0013】
本発明は、シリケート材料の持つ構造の多様性という一つの重要な特長を利用したものである。具体的には、LSOは主成分の一つがケイ素であり、ガラス状態を採り易いと予想されることから、ガラス状態を媒体とし、そこを場とする配向性結晶成長を行わせるという方法、つまり、ガラス状態を一旦経由することにより、その後の結晶化工程で優先配向性を持たせたイオン伝導性配向セラミックスを形成させる新規な方法を見出したのである。
【0014】
すなわち、上述のようにランタノイドの酸化物粉末とSi又はGeの少なくとも一方の酸化物粉末とを含む酸化物原料を混合した後(酸化物原料混合工程S1)、加熱溶融させて液体状態とし、これを急冷してガラス状物Gを得る(溶融ガラス化工程S2)。そして、このガラス状物Gを800~1400℃で熱処理して結晶化させる(結晶化工程S3)ことにより、材料(LSO)のイオン伝導パスを一方向に揃えてイオン伝導性を向上させたイオン伝導性配向セラミックスを得ることができるのである。
【0015】
ここで、結晶化工程における熱処理温度が800℃未満の場合には、ガラス状物Gの結晶化が困難であり、逆に1400℃より高い場合には、ガラス状物Gの結晶化が一気に進んでイオン伝導パスの配向が見られないことに加えて、ガラス状物Gが形状を保つことができず、共にイオン伝導性配向セラミックスを得ることができなくなる。
【0016】
「請求項2」に記載した発明は、請求項1に記載の発明において、酸化物原料が組成式(1)の組成を持つオキシアパタイトを生成するものであることを特徴とする。
(RE9.33+x-αAEα)(T6.00-ym+y)O26.00+[3x-(4-m)y-α]/2 …(1)
(但し、RE;ランタノイドの中から選ばれる少なくとも一つの元素、AE;アルカリ土類金属の中から選ばれる少なくとも一つの元素、T;Si又はGeの少なくとも一方の元素、M;Mg,Al,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zn,Ga,Zr,Mo,Sn,Ta,W,P,Nbの中から選ばれる少なくとも一つの元素、-8.33≦x≦2.67、0.0≦y≦2.0、0.0≦α≦2.0)
【0017】
酸化物原料を組成式(1)の組成を持つオキシアパタイトを生成するものとすることにより、溶融ガラス化工程S2におけるガラス状物Gの作製、及びこれに続く結晶化工程S3におけるガラス状物Gの配向結晶化を容易に進めることができるようになる。
【0018】
「請求項3」に記載した発明は、請求項1又は2に記載の発明において、「結晶化工程が酸素雰囲気規制下で行われる」ことを特徴とするもので、これにより、特に酸素分圧が高い状態であれば、ガラス状物Gを結晶化させて得られるイオン伝導性配向セラミックスのc軸配向性(すなわち厚み方向に向けてのイオン伝導パスの配向性)がより一層促進され、イオン伝導性を向上させることができるようになる。
【0019】
「請求項4」に記載した発明は、「請求項1乃至3の何れかに記載の方法で製造されたイオン伝導性配向セラミックスをイオン伝導体として固体電解質に用いた」ことを特徴とする燃料電池で、これにより100~600℃程度の中温領域で作動可能な燃料電池を提供することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、「溶融ガラス作製」→「結晶化」というシンプルなプロセスで燃料電池(とりわけSOFC)用の固体電解質として利用可能なイオン伝導性配向セラミックスを大きな面積にて作製することができる。
【0021】
また、かかる製造方法で製造されるイオン伝導性配向セラミックスは、普遍元素Siをベースとしていることから資源的に有利な材料であり、上記シンプルな製造プロセスと相俟ってイオン伝導性配向セラミックスを低コストで提供することができる。
【0022】
つまり、本発明によれば、低コスト且つシンプルなプロセスであるにもかかわらず、大型のものを簡単に得ることができ、しかもイオン伝導性の向上が可能なイオン伝導性配向セラミックスの製造方法を提供することができる。
【0023】
更に、かかる製造方法で製造されたイオン伝導性配向セラミックスをイオン伝導体として固体電解質に使用すれば、中温領域で作動する燃料電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のイオン伝導性配向セラミックスの製造方法を示すフローチャートである。
【図2】結晶化工程で使用する装置の概要を示す説明図である。
【図3】各種雰囲気下でガラス状物を結晶化させて得たイオン伝導性配向セラミックスのX線回折パターンを示すグラフである。なお、(a)は結晶化前のガラス状物、(b)は空気中で結晶化させたもの、(c)は純酸素中で結晶化させたものである。
【図4】固体酸化物形燃料電池(SOFC)の概略を示す模式図である。
【図5】本発明の製造方法で製造したイオン伝導性配向セラミックスを用いて試作したSOFC単セルの出力特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図面に従って詳述する。図1は、本発明のイオン伝導性配向セラミックスの製造方法の一例を示すフローチャートである。この図が示すように、本発明のイオン伝導性配向セラミックスは、「酸化物原料混合工程S1」、「溶融ガラス化工程S2」及び「結晶化工程S3」がこの順で実行される。

【0026】
ここで、本発明のイオン伝導性配向セラミックスの製造方法は、先にも述べた通り、ランタンシリケート(LSO)がケイ素の酸化物(シリケート)であるということに注目し、シリケート材料の持つ構造の多様性という一つの重要な特長を利用したものである。すなわち、LSOは主成分の一つがケイ素であり、ガラス状態を採り易いと予想されることから、ガラス状態を媒体とし、そこを場とする配向性結晶成長を行わせるという方法、つまり、ガラス状態を一旦経由することにより、その後の「結晶化工程S3」で優先配向性を持たせたイオン伝導性配向セラミックスを形成させる新規な方法を見出したのである。

【0027】
この様なプロセスにおいては、複雑なコントロールや特殊な装置を必要とせず、従来からあるようなガラス製造炉と、その後に簡便・安価な結晶化プロセスをおこなうための電気炉10(図2参照)があればよい。以下、上記各工程の詳細について説明する。

【0028】
「酸化物原料混合工程S1」は、ランタノイドの酸化物粉末とSi又はGeの少なくとも一方の酸化物粉末とを含む酸化物原料を混合する工程である。

【0029】
この酸化物原料混合工程S1で混合する酸化物原料は、組成式(1)の組成を持つオキシアパタイトを生成するものであることが好ましい。
(RE9.33+x-αAEα)(T6.00-ym+y)O26.00+[3x-(4-m)y-α]/2 …(1)
(但し、RE;ランタノイドの中から選ばれる少なくとも一つの元素、AE;アルカリ土類金属の中から選ばれる少なくとも一つの元素、T;Si又はGeの少なくとも一方の元素、M;Mg,Al,Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zn,Ga,Zr,Mo,Sn,Ta,W,P,Nbの中から選ばれる少なくとも一つの元素、-8.33≦x≦2.67、0.0≦y≦2.0、0.0≦α≦2.0)

【0030】
酸化物原料を組成式(1)の組成を持つオキシアパタイトを生成するものとすることにより、溶融ガラス化工程S2におけるガラス状物の作製、及びこれに続く結晶化工程S3におけるガラス状物の配向結晶化を容易に進めることができるようになるからである。

【0031】
「溶融ガラス化工程S2」は、混合した酸化物原料を図示しないガラス製造炉の中で加熱溶融させて液体状態とし、これをガラス製造炉から取り出し急冷操作することにより、結晶体を形成させずに非平衡状態であるガラス状物を得る工程である。

【0032】
「結晶化工程S3」は、上記溶融ガラス化工程S2で得たガラス状物を、図2に示すような電気炉10を用いて800~1400℃で熱処理して結晶化させる工程である。

【0033】
ここで、ガラス状物Gの結晶化に使用する電気炉10は、アルミナなどの耐熱性材料からなる外囲器12,前記外囲器12の外周を囲繞してその内部を加熱するヒータH,外囲器12内に配置されたアルミナボート14aと、その表面に取着され、ガラス状物Gが載置される多孔質アルミナ14bとからなる載置台14,及び載置台14に載置したガラス状物Gに向けて酸素或いは酸素を含む混合ガスを供給するアルミナチューブ16で構成されている(図2参照)。

【0034】
なお、この電気炉10は、図2に示す横型のもののみならず、図示しないが、外囲器12やアルミナチューブ16などを鉛直方向に配置し、載置台14をアルミナチューブ16の先端(上端)に載せる縦型配置のものであってもよい。

【0035】
このような電気炉10を用いて結晶化工程を実行する際の温度範囲は、上述のように800~1400℃の範囲にするのが好ましい。結晶化工程における熱処理温度が800℃未満の場合には、ガラス状物Gの結晶化が困難であり、逆に1400℃より高い場合には、ガラス状物Gの結晶化が一気に進んでイオン伝導パスの配向が見られないのに加えて、ガラス状物Gが形状を保つことができず、共にイオン伝導性に優れたイオン伝導性配向セラミックスを得ることができなくなるからである。
【実施例】
【0036】
以下、実施例をあげて本発明のイオン伝導性配向セラミックスの製造方法と、当該方法によって得られたイオン伝導性配向セラミックスをイオン伝導体として固体電解質に採用したSOFCについて説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0037】
[イオン伝導性配向セラミックスの作製]
ガラス状物の組成として20CaO-10Al23-60SiO2-10La23(mol%)となるように各酸化物原料を調製し、白金るつぼ中で1400~1700℃の温度範囲で加熱して溶融させた状態から炭素板(グラファイト板)上にキャストして平板状に広げて急冷し、その後徐冷して目的とするガラス状物を作製した。ここで用いている酸化物原料から予想される完成したガラス状物の組成はCa1.5La1.5Si4.5Al1.515(或いはCa5La5Si15Al550)となり、イオン伝導体としての最適なセラミックス組成(一例としてLa10Si5.8Al0.226.9)とは異なっている。具体的にはLaが不足した組成となるが、これは一旦ガラス状物を経由する本プロセスを採用する以上、現状ではやむを得ない。
【実施例】
【0038】
そして、得られたガラス状物のTG/DTA測定結果から800~1000℃を結晶化の適正温度に決定すると共に、作製されたガラス状物を厚さ0.5mmにスライスした後、この薄片を電気炉に投入し、雰囲気規制(具体的には試料周辺の酸素濃度を規制)の下、950℃で10時間、当該ガラス状物の結晶化を行い、イオン伝導性配向セラミックスを得た。図3に結晶化前後のガラス状物のX線回折パターンを示す。なお、図3中(a)は結晶化前のガラス状物、(b)は空気中で結晶化させたもの、(c)は純酸素中で結晶化させたもののX線回折パターンである。
【実施例】
【0039】
図3の(a)及び(b)に示すように、ガラス状物を空気中で結晶化させた際に析出する結晶相は、高伝導性の酸化物イオン伝導体であるランタンシリケートと同じオキシアパタイト構造を持つ相であった。しかしながらLaが不足している事に起因して、Ca,Si,Alで構成された酸化物による不純相の析出も確認された。
【実施例】
【0040】
一方、図3の(c)に示すように、ガラス状物を純酸素中(より具体的には、常温の酸素を与え続けた酸素雰囲気中)で結晶化させた場合、オキシアパタイトの002面と004面の回折ピークが成長しており、ガラス状物の表面に平行な方向にc軸面が優先的に存在している様子が伺えた。なお、依然として僅かな不純相も見られるが、その寄与は非常に小さくなるように見受けられた。
【実施例】
【0041】
このように、純酸素中でガラス状物の結晶化を行うことでイオン伝導パスの優先配向がみられた。これは、オキシアパタイトのc軸に沿った酸化物イオンの拡散が他の方向に比べて格段に速いため、表面から内部に至る結晶化の際に、酸素の供給が速いc軸配向部分が優先的に成長を続けるためと考えられる。又、この傾向は、特に酸素分圧が高い場合や供給する酸素の温度が低い場合により優勢となる。この様にして結晶化時の酸素濃度や供給する酸素の温度をコントロールすることで、目的とするイオン伝導特性を有するイオン伝導性配向セラミックスの作製が狙い通りに行えるようになる。
【実施例】
【0042】
また、表1には、以上のようにして結晶化させて得たイオン伝導性配向セラミックスの酸素イオン輸率と800℃における伝導度を示す(なお、酸素イオン輸率については後述する)。
【実施例】
【0043】
【表1】
JP0005651309B2_000002t.gif
【実施例】
【0044】
この表が示すように、空気中結晶化試料では、800℃における伝導度が1.2×10-5S・cm-1であるのに対し、純酸素中結晶化試料では、9.0×10-5S・cm-1という値であった。つまり、酸素雰囲気で結晶化させることで、空気中での結晶化の場合に比べて7.5倍もの伝導度向上が見られた。先に示した図3のX線回折結果から考えてもこの伝導度向上は、イオン伝導パスの配向によるものと考えられる。
【実施例】
【0045】
ここで、結晶体のLa10Si627やLa10Si5.8Al0.226.9(同温度でそれぞれ2.9×10-2S・cm-1、及び6.3×10-2S・cm-1)と比較すれば、本実施例のイオン伝導性配向セラミックスの伝導度はかなり低い値ではあるが、上述のようにLaが不足している状況を考えれば、良好なイオン伝導性を示しているものと判断できる。(結晶体であってもランタンの量が少なくなるとイオン伝導度は急激に低下する。例えば同じ温度でもLa:Si比が9:6のLa9Si625.5では2×10-4S・cm-1となる。本実施例の酸化物原料から計算したLa:Si比はそれよりもかなり低いため、その組成を持つ結晶体であってもイオン伝導度はかなり低いと予想される。)

【実施例】
【0046】
上記の伝導度並びにその向上は、酸化物イオンの移動によるものと考えているが、これが仮に電子伝導によるものであれば、燃料電池の電解質としては使用できない。燃料電池の電解質はほぼ純粋なイオン伝導体である必要があり、電子伝導性が大きければ、発電時に両電極間で電子的に短絡を起こし、発電性能を大きく低下させる原因となるからである。
【実施例】
【0047】
そこで、次に、当該伝導度並びにその向上がイオン伝導によるものであるということの証明のために、酸素濃淡電池を組み、起電力測定を行った。O2,Pt/イオン伝導性配向セラミックス/Pt,H2:Ar(60:40)の800℃における起電力から求めた酸素イオン輸率(全伝導度に対するイオン伝導度の割合)を上記表1に併せて示すが、純酸素中、空気中結晶化試料のいずれも0.9程度であったことから、酸化物イオンが主な電荷担体である、すなわち、伝導度並びにその向上が酸化物イオン伝導によるものであることが判明した。
【実施例】
【0048】
[燃料電池(SOFC)の作製]
厚さ0.4mmのイオン伝導性配向セラミックスをイオン伝導体として固体電解質に採用すると共に、両電極に白金を用いて、図4に示すようなSOFC単セルを組み立てて発電特性の評価を行った。図5に当該SOFC単セルの出力特性を示す。
【実施例】
【0049】
この図(図5)が示すように、SOFC単セルの出力としてはかなり低いが、各端子電圧において電流を安定に取り出すことができ、燃料電池として安定に動作することが確かめられた。又、発電特性においても酸素中で結晶化した試料の方が、性能向上が見られる結果となった。
【産業上の利用可能性】
【0050】
上述の例では、本発明の製造方法で製造されるイオン伝導性配向セラミックスを燃料電池用の固体電解質として使用する場合を中心に説明してきたが、このイオン伝導性配向セラミックスは、燃料電池用の固体電解質以外にも酸化物イオン伝導体としての様々な用途、例えば、酸素センサなどにも利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
10…電気炉
12…外囲器
14…載置台
14a…アルミナボート
14b…多孔質アルミナ
16…アルミナチューブ
G…ガラス状物
H…ヒータ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図5】
3
【図4】
4