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明細書 :イチゴ重要病害の病原菌検出方法および検出用プライマー

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5522820号 (P5522820)
公開番号 特開2010-046038 (P2010-046038A)
登録日 平成26年4月18日(2014.4.18)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成22年3月4日(2010.3.4)
発明の名称または考案の名称 イチゴ重要病害の病原菌検出方法および検出用プライマー
国際特許分類 C12Q   1/68        (2006.01)
C12Q   1/04        (2006.01)
C12N  15/09        (2006.01)
FI C12Q 1/68 ZNAA
C12Q 1/04
C12N 15/00 A
請求項の数または発明の数 5
全頁数 17
出願番号 特願2008-214831 (P2008-214831)
出願日 平成20年8月25日(2008.8.25)
審査請求日 平成23年8月19日(2011.8.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
【識別番号】592197108
【氏名又は名称】徳島県
発明者または考案者 【氏名】佐藤 征弥
【氏名】広田 恵介
【氏名】向井 真紀子
個別代理人の代理人 【識別番号】100088904、【弁理士】、【氏名又は名称】庄司 隆
【識別番号】100124453、【弁理士】、【氏名又は名称】資延 由利子
【識別番号】100135208、【弁理士】、【氏名又は名称】大杉 卓也
【識別番号】100152319、【弁理士】、【氏名又は名称】曽我 亜紀
審査官 【審査官】木原 啓一郎
参考文献・文献 徳島生物学会会報,2007年11月23日,Vol.60, No.2,p.9,URL,http://web.ias.tokushima-u.ac.jp/life/TBC/2007-2.swf
植物防疫,2008年 3月 1日,Vol.62, No.3,p.26-29
九州病害虫研究会報,2006年11月10日,Vol.52,p.11-17
調査した分野 C12Q 1/68
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
イチゴ組織または土壌を試料とし、試料中に混入可能性のある遺伝子を分析することによるイチゴの重要病害の検出方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする検出方法:
1)イチゴの重要病害に関連する少なくとも5種以上の病原菌の遺伝子配列を各々特異的に増幅しうる、以下のA)~E)の組み合わせからなるプライマーペアを含む、イチゴの重要病害の検出用キットを用いて遺伝子増幅処理を行う工程:
A)配列番号1に記載のオリゴヌクレオチド(GTAGGGTCTCCGCGACCCT)と、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド(TTCCTACCTGATCCGAGGTCA)の組み合わせ;
B)配列番号4に記載のオリゴヌクレオチド(GCCGGCCCCACCACGGGGA)と、配列番号5に記載のオリゴヌクレオチド(AAGGGCCCACGTGTGCCGTG)の組み合わせ;
C)配列番号2に記載のオリゴヌクレオチド(CCTAAACTCTGTTTCTATATGTAAC)もしくは配列番号10に記載のオリゴヌクレオチド(ctatatgtaacttctgagtaaaacc)と、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド(TTCCTACCTGATCCGAGGTCA)の組み合わせ;
D)配列番号8に記載のオリゴヌクレオチド(CAATAGTTGGGGGTCTTATTTGGC)と、配列番号9に記載のオリゴヌクレオチド(ATGCATACCGAAGTACACATTAAG)の組み合わせ;
E)配列番号6に記載のオリゴヌクレオチド(CTTCGGCCTGAGCTAGTAGCTTT)と、配列番号7に記載のオリゴヌクレオチド(ATGCATACCGAAGTACACACACAT)の組み合わせ;
2)上記遺伝子増幅処理工程により得られた増幅産物の分子量を測定する工程;
3)測定した分子量から、増幅産物に関連する病原菌を同定する工程。
【請求項2】
前記イチゴの重要病害が、炭疽病、疫病および/または萎黄病である請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記イチゴの重要病害に関連する病原菌が、糸状菌から選択される少なくとも種以上である、請求項1または2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記糸状菌が、グロメレラ(Glomerella)属、コレトトリカム(Colletotrichum)属、フィトフィトラ(Phytophthora)属、フザリウム(Fusarium)属のいずれかに属する請求項3に記載の検出方法。
【請求項5】
プライマー機能を有する少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを1対とした、以下のA)~E)の組み合わせからなるプライマーペアを含む、請求項1~のいずれか1に記載の検出方法に使用する、イチゴ重要病害の検出用キット
A)配列番号1に記載のオリゴヌクレオチド(GTAGGGTCTCCGCGACCCT)と、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド(TTCCTACCTGATCCGAGGTCA)の、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
B)配列番号4に記載のオリゴヌクレオチド(GCCGGCCCCACCACGGGGA)と、配列番号5に記載のオリゴヌクレオチド(AAGGGCCCACGTGTGCCGTG)の、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
C)配列番号2に記載のオリゴヌクレオチド(CCTAAACTCTGTTTCTATATGTAAC)もしくは配列番号10に記載のオリゴヌクレオチド(ctatatgtaacttctgagtaaaacc)と、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド(TTCCTACCTGATCCGAGGTCA)の、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
D)配列番号8に記載のオリゴヌクレオチド(CAATAGTTGGGGGTCTTATTTGGC)と、配列番号9に記載のオリゴヌクレオチド(ATGCATACCGAAGTACACATTAAG)の、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
E)配列番号6に記載のオリゴヌクレオチド(CTTCGGCCTGAGCTAGTAGCTTT)と、配列番号7に記載のオリゴヌクレオチド(ATGCATACCGAAGTACACACACAT)の、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴ重要病害に係る病原菌の早期診断のために各病原菌を検出するための各病原菌特異的DNA配列を増幅しうるDNA増幅プライマーに関し、より詳しくは各種病原菌特異的DNA配列を増幅する工程を含むイチゴ重要病害に係る病原菌の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
イチゴの重要病害である炭疽病、疫病、萎黄病はいずれも糸状菌の感染により引き起こされ、初期症状が似ている。各重要病害に起因する病原菌を早期に同定し、適切な対策をとることが被害の拡大を防ぐことにつながる。しかしながら、従来は、病原菌を分離・培養して形態を比較することで、菌の同定が行われ、時間と熟練と菌の形態に関する深い知識が必要であった。
【0003】
近年では、種特異的なDNA情報に基づいた手法による病原菌等の同定が実施可能である。種特異的なDNA情報に基づいた遺伝子反応を用いた検査法は、1)操作が簡便であり、高度に専門的な知識を要しない、2)きわめて微量のDNAを対象とした検査ができ、培養法等と比較して病原菌をより高感度に検出できる、3)検査に要する時間が短い、などの利点があり、病原菌を同定する方法として幾つか報告されている。
【0004】
例えば非特許文献1には、イチゴ、キク病原菌の核rDNA-ITS領域のシークエンスと属特異的プライマーの設計について開示されており、非特許文献2には徳島県で最近話題になっているイチゴ炭疽病、キュウリ褐斑病における薬剤耐性菌の出現状況に関し、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の手法を用いてチトクロームb遺伝子変異の有無により検定を行ったことが開示されている。また、特許文献1には、真菌の病原体であるコレトトリカム・アクタツム、アルテナリア属、及びクラドスポリウム・カルポフィラムの検出のためのPCR分析方法について開示がある。
【0005】
しかしながら、複数の菌の由来する各種のイチゴの重要病害に関し、一度の検査で容易かつ正確に菌を検出し、同定しうる検出方法はなかった。なお、各重要病害に対し、とりうる対策が異なるので、その対策を誤ると被害の拡大を招くことになる(図1参照)。したがって、早期に病原菌を検出し、同定する方法が望まれている。

【非特許文献1】奈良県農業技術センター研究報告 第32号、9-18頁(2001年)
【非特許文献2】四国植物防疫研究 第41巻、49-50頁(2006年)
【特許文献1】特表2004-520843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、イチゴの重要病害で初期症状が似ている病原菌を早期に検出し、同定しうる検査方法を提供することを課題とする。より詳しくは、炭疽病、疫病および萎黄病等の病原菌の検出方法を提供することを課題とし、具体的には、検査に使用しうるオリゴヌクレオチド(プライマー)を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、各病原菌の遺伝子特異的に増幅し、増幅産物の分子量が異なるように設計された各プライマーを混合したプライマーミックスを用いて遺伝子増幅操作を行い、増幅産物の分子量を測定することにより、容易に病原菌を検出し、同定できることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は以下よりなる。
1.イチゴ組織または土壌を試料とし、試料中に混入可能性のある遺伝子を分析することによるイチゴの重要病害の検出方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする検出方法:
1)イチゴの重要病害に関連する少なくとも2種以上の病原菌の遺伝子配列を各々特異的に増幅しうる複数のプライマーを用いて遺伝子増幅処理を行う工程;
2)上記遺伝子増幅処理工程により得られた増幅産物の分子量を測定する工程;
3)測定した分子量から、増幅産物に関連する病原菌を同定する工程。
2.前記イチゴの重要病害が、炭疽病、疫病および/または萎黄病である前項1に記載の検出方法。
3.前記イチゴの重要病害に関連する病原菌が、糸状菌から選択される少なくとも2種以上である、前項1または2に記載の検出方法。
4.前記糸状菌が、グロメレラ(Glomerella)属、コレトトリカム(Colletotrichum)属、フィトフィトラ(Phytophthora)属、フザリウム(Fusarium)属のいずれかに属する前項3に記載の検出方法。
5.複数のプライマーが、各病原菌のリボソームRNA遺伝子のITS(internal transcribed spacer)領域の部分を含む塩基配列を検出しうるプライマーである、前項1~4のいずれか1に記載の検出方法。
6.前項1~5のいずれか1に記載の検出方法に使用する遺伝子増幅用プライマー。
7.前項6に記載のプライマーであり、以下の1)~10)のいずれかに示す塩基配列、並びに各塩基配列のうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなり、病原菌の遺伝子配列を特異的に増幅しうるプライマー機能を有するオリゴヌクレオチドから選択されるいずれかのオリゴヌクレオチドを含む、イチゴの重要病害検出用の遺伝子増幅用プライマー:
1)GTAGGGTCTCCGCGACCCT(配列番号1);
2)CCTAAACTCTGTTTCTATATGTAAC(配列番号2);
3)TTCCTACCTGATCCGAGGTCA(配列番号3);
4)GCCGGCCCCACCACGGGGA(配列番号4);
5)AAGGGCCCACGTGTGCCGTG(配列番号5);
6)CTTCGGCCTGAGCTAGTAGCTTT(配列番号6);
7)ATGCATACCGAAGTACACACACAT(配列番号7);
8)CAATAGTTGGGGGTCTTATTTGGC(配列番号8);
9)ATGCATACCGAAGTACACATTAAG(配列番号9);
10)ctatatgtaacttctgagtaaaacc(配列番号10)。
8.プライマー機能を有する少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを1対とし、以下のA)~E)のいずれかの組み合わせからなるオリゴヌクレオチドのセットであって、前項1~5のいずれか1に記載の検出方法に使用するイチゴの重要病害検出用の遺伝子増幅用プライマーセット:
A)配列番号1に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
B)配列番号4に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号5に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
C)配列番号2に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
D)配列番号8に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号9に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ;
E)配列番号6に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号7に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ。
9.前項8のA)~E)のいずれかのオリゴヌクレオチドの組み合わせからなる遺伝子増幅用プライマーセットを、少なくとも2セット以上含む、イチゴの重要病害の検出用キット。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検出方法によると、症状の似ているイチゴ重要病害について、簡便な操作で複数種の病原菌を同時に検査することができ、早期に検出し、同定することができる。検出に際し、従来の方法では病原菌を分離・培養することが必要であり、菌の形態を観察することを要するため、正確に判断するためには時間と熟練と菌の形態に関する深い知識が必要であったが、本発明の検出方法では、そのような経験が浅い場合でも、正確に検出し、同定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のイチゴの重要病害の検出方法は、イチゴ組織または土壌を試料とし、試料中に混入可能性のある遺伝子を分析することにより行われる。遺伝子の分析による検出方法は、少なくとも以下の工程を含む。
1)イチゴの重要病害に関連する少なくとも2種以上の病原菌の遺伝子配列を各々特異的に増幅しうる複数のプライマーを用いて遺伝子増幅処理を行う工程;
2)上記遺伝子増幅処理工程により得られた増幅産物の分子量を測定する工程;
3)測定した分子量から、増幅産物に関連する病原菌を同定する工程。
【0011】
上記において、本発明の検出方法は、イチゴの重要病害に起因する病原菌を同定するものであり、細菌、糸状菌、真菌やウイルスなど、遺伝子を有する病原菌に起因する重要病害に対して本発明の検出方法を適用することができる。特に、初期症状の似ているイチゴ重要病害としては、炭疽病、疫病および萎黄病が挙げられる。これらの重要病害は、いずれも糸状菌に起因するものである。糸状菌として、具体的には、グロメレラ(Glomerella)属、コレトトリカム(Colletotrichum)属、フィトフィトラ(Phytophthora)属、フザリウム(Fusarium)属が挙げられ、より具体的には炭疽病菌であるGlomerella cingulataおよびColletotrichum acutatum、疫病菌であるPhytophthora nicotianaeおよびPhytophthora cactorum、並びに萎黄病菌であるFusarium oxysporumが挙げられる。
【0012】
本発明の検出方法に供する試料は、イチゴ組織または土壌から取得することができる。重要病害関連病原菌に感染可能性のあるイチゴ植物組織、またはイチゴ栽培に関連する土壌、例えばイチゴが過去、現在において栽培に供されている土壌若しくは今後供される可能性のある土壌を試料とし、これらの試料からDNAを抽出することで、本発明の検出方法に供することができる。試料からのDNAの抽出は、例えば、フェノール・クロロホルム法のような常法や、市販のDNA抽出キット(例えば、Nucleon PhytoPure TM(Nucleon Bioscience社))を用いることができる。試料から抽出したDNAを検体として、本発明のプライマーを用い、遺伝子を増幅することができる。
【0013】
本発明の検出方法は、上記の病原菌の遺伝子配列を特異的に増幅しうる遺伝子増幅処理工程を含む。本発明における遺伝子増幅方法は、遺伝子を増幅可能であればよく、自体公知の増幅方法のいずれであっても良いし、今後開発される新たな増幅方法であっても良い。遺伝子増幅方法の例として、具体的にはポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法、Science, 230:1350-1354,1985)やLAMP法(特開2001-242169号公報)等などと適用することができる。最も一般的で簡便な遺伝子増幅方法として、PCR法が挙げられる。
例えば、試料中に検出したい遺伝子の混入が極微量の場合は、微量の遺伝子であっても増幅可能な方法が好適である。PCR法の場合、例えばリアルタイムPCR法などの手法により、感度よく検出することができる。
【0014】
本発明の検出方法では、上記の病原菌のうち、2種以上の遺伝子配列を各々特異的に増幅しうる複数のプライマーを用いて、同時に遺伝子増幅処理を行うことを特徴とする。ここで、2種以上とは、少なくとも2種であればよく、それ以上であっても良い。つまり、各遺伝子の配列を個々に増幅処理するのではなく、一度の増幅処理において少なくとも2種以上の遺伝子を増幅処理でき、得られた増幅産物から遺伝子の種類を特定できることが必要である。そのような機能を有する複数のプライマーとは、各遺伝子特異的に増幅しうる複数のプライマーで、同様の増幅条件、例えば温度条件、時間条件等を共通にして各遺伝子の増幅処理可能な複数のプライマーであることをいう。また、本発明の検査方法に使用しうるプライマーを用いることにより得られた増幅産物は、遺伝子ごとに異なる分子量のものが検出されることが必要である。具体的には、例えばGlomerella cingulataColletotrichum acutatumPhytophthora nicotianaePhytophthora cactorumFusarium oxysporumなどから少なくとも2種、好ましくは5種の菌に各々特異的な遺伝子配列を増幅することができればよく、得られた増幅産物は、遺伝子の種類により分子量が各々異なればよい。
【0015】
ここで、増幅される各遺伝子は、各病原菌特異的な配列を有する部分であることが必要である。特異的な配列を有する遺伝子としては、各病原菌のリボソームRNA(以下単に、「rRNA」という。)遺伝子が挙げられる。rRNAの遺伝子は、そのコピー数の多さによって、分子プローブターゲットとして使用するのに好適である。糸状菌のrRNA遺伝子は、ユニットとして組織化され、各ユニットは18S、5.8Sおよび26Sの3つの成熟したサブユニットをコードする。これらのサブユニットは、2つの内部転写スペーサーであるITS(internal transcribed spacer)領域、すなわちITS IおよびITS IIに分離される。成熟したrRNA配列間の高い保存性にもかかわらず、非転写領域およびスペーサー領域の配列は、通常保存性が低いため、各菌種の検出のためのターゲット配列として好適である。本発明の検査方法に使用可能なプライマーは、特に各病原菌に特異的な配列を検出できればよく、具体的にはrRNA遺伝子のITS領域の部分を含む塩基配列を増幅できればよい。
【0016】
本発明の検出方法に使用可能な遺伝子増幅用プライマーは、具体的には以下の1)~10)のいずれかに示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。さらには、各塩基配列のうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなり、病原菌の遺伝子配列を特異的に増幅しうるプライマー機能を有するオリゴヌクレオチドであってもよい。
1)GTAGGGTCTCCGCGACCCT(配列番号1)
2)CCTAAACTCTGTTTCTATATGTAAC(配列番号2)
3)TTCCTACCTGATCCGAGGTCA(配列番号3)
4)GCCGGCCCCACCACGGGGA(配列番号4)
5)AAGGGCCCACGTGTGCCGTG(配列番号5)
6)CTTCGGCCTGAGCTAGTAGCTTT(配列番号6)
7)ATGCATACCGAAGTACACACACAT(配列番号7)
8)CAATAGTTGGGGGTCTTATTTGGC(配列番号8)
9)ATGCATACCGAAGTACACATTAAG(配列番号9)
10)ctatatgtaacttctgagtaaaacc(配列番号10)。
【0017】
反応系におけるプライマーの濃度は、所望のDNAが増幅しうる条件であれば良く、特に制限されないが、各プライマーは一般的には0.1~2μMで使用することができ、特に約0.25~0.75μMで使用することが好ましい。反応系に加えるTaqポリメラーゼは、たとえばタカラ社製 Ex taqのような、増幅効率の優れたものが望ましいが、通常のTaqポリメラーゼによっても遺伝子増幅反応のサイクルを増すことにより増幅されるDNA断片の量を増加させることができる。
【0018】
上記プライマーを用いた遺伝子増幅工程により得られた増幅産物は、上述したように病原菌由来の遺伝子ごとに分子量が異なるため、遺伝子断片の分子量を測定することにより遺伝子の種類を同定することができる。増幅産物としての遺伝子断片分子量の測定方法は、特に限定されないが、例えば電気泳動法を用いるのが好適である。具体的には、アガロースゲル電気泳動法により増幅産物を分離し、エチジウムブロマイド等DNA染色試薬により染色し、検出することができる。
【0019】
試料中に所望の病原菌由来の遺伝子が存在していれば、上記のようにして増幅された遺伝子断片が検出され得る。検出限界は、用いるプライマーの種類および組み合わせ、試料中の対象遺伝子の量、増幅反応条件、検出方法などの種々の要因によって異なり得る。適切な条件を選択すれば、微量の試料においても、高感度で遺伝子の存在を検出することができ、病原菌を検出し、同定することができる。
【0020】
本発明は、上記プライマーのほか、プライマー機能を有する少なくとも2種のオリゴヌクレオチドを1対としたプライマーセットにも及ぶ。ここでは、プライマーの組み合わせが2種のみのものをプライマーペアといい、2種以上のプライマーを含むものを包括的にプライマーセットという。
具体的には以下のA)~E)のいずれかの組み合わせからなるオリゴヌクレオチドのセットからなるイチゴの重要病害検出用の遺伝子増幅用プライマーセットが挙げられる。
【0021】
A)Glomerella cingulata特異的遺伝子検出用
配列番号1または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ。
【0022】
B)Colletotrichum acutatum特異的遺伝子検出用
配列番号4に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号5に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ。
【0023】
C)Fusarium oxysporum特異的遺伝子検出用
配列番号2に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号3に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ。
【0024】
D)Phytophthora nicotianae特異的遺伝子検出用
配列番号8に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号9に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ。
【0025】
E)Phytophthora cactorum特異的遺伝子検出用
配列番号6に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかと、配列番号7に記載のオリゴヌクレオチド、または前記オリゴヌクレオチドのうち、1~3個のヌクレオチドが置換、欠失、付加若しくは導入された塩基配列からなるオリゴヌクレオチドのいずれかから選択される、2種のオリゴヌクレオチドの組み合わせ。
【0026】
本発明は、イチゴの重要病害の検出用キットにも及ぶ。具体的には、上記A)~E)のいずれかのオリゴヌクレオチドの組み合わせからなる遺伝子増幅用プライマーペアを、少なくとも2種以上含むキットが挙げられる。具体的には、上記A)~E)で特定される2種のオリゴヌクレオチドからなるプライマーペアを5種含んでいてもよいし、例えばGlomerella cingulataおよびFusarium oxysporumを検出するためのプライマーは、いずれも配列番号3に記載のオリゴヌクレオチドを用いることができるため、共用して用いることもできる。具体的には、配列番号1~9に示す塩基配列からなるオリゴヌクレオチドをプライマーセットのキットとして用いることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、実施例においては、プライマーの塩基配列が特定されて示されているが、その塩基配列からなるオリゴヌクレオチドに1もしくは複数個の塩基が置換し、欠失し、挿入し、あるいは付加されたオリゴヌクレオチドであって、DNA増幅反応に供されることによって、特定のイチゴ重要病害に係る菌のDNAを特異的に検出し得るプライマーもまた、本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。
【0028】
(実施例1)プライマーミックスの調製1
1)試料
試料としてイチゴに病原性を持つ培養菌株5種(Glomerella cingulataColletotrichum acutatumFusarium oxysporum, Phytophthora nicotianae, Phytophthora cactorum)および実験的にこれらの菌に病気に感染させたイチゴ苗を用いた。更に徳島県内のイチゴ栽培農家から病原菌に感染したと思われるイチゴ苗28株を入手し、実験に用いた。
【0029】
2)試料からのDNAの抽出
DNAの抽出に、植物DNA抽出キットNucleon PhytoPure TM(Nucleon Bioscience社)を用いた。操作はマニュアルに従って次のような手順で行った。
上記5種の病原菌の培養菌株を寒天プレート上に培養し、菌叢をヘラで約25mg掻き取り、乳鉢中で蒸留水1000μLを加え、氷温で組織をすり潰した。上記キットに含まれる試薬1(reagent1)を1500μL加え、乳鉢でさらにすり潰した後、700μLを採取し、マイクロチューブに移した。マイクロチューブ中の細胞破砕液に、上記キットに含まれる試薬2(reagent2)を200μL加え、上下をよく反転し混合後、アルミバス中65℃で20分間保温し、2-3分ごとによく振って撹拌した。その後、氷中で20分間静置し、-20℃の冷クロロホルム500μLと上記キットに含まれる上記キットに含まれる精製試薬(Nucleon PhytoPure resin)を100μL加え、室温で10分間上下を反転させながら混合した。5000rpmで遠心し、上層(DNA層)を滅菌済の新しい1.5mLチューブに移した。冷イソプロパノールを600μL加えて、撹拌してDNAを析出させた。DNAのペレットを得るため、12000rpmで10分間遠心し、上清を捨てた。70%エタノールを300μL加え、再び12000rpmで5分間遠心し、上清を廃棄した。沈殿物を真空ポンプで2分間真空状態に置き、DNAを含む沈殿物を乾燥させた。乾燥した沈殿物は50μLの×0.1 TE緩衝液を加えてピペッティングにより溶解した後、-20℃で保存した。
【0030】
イチゴ苗に関しては、苗の組織(葉、クラウン)0.15gをはさみで細かく切り、上述と同様の操作を行い、DNAを抽出した。
【0031】
3)プライマーの作製
上記5種の菌種の遺伝子を、一度の遺伝子増幅処理(マルチプルPCR)で検出しうるように、プライマーを設計した。各プライマーは、各菌種特異的な遺伝子の配列部分を増幅可能であり、かつ、得られた増幅産物の分子量が異なるように考慮して設計した(図2参照)。
【0032】
プライマーの設計にあたり、NCBIのデータベースに登録されている既知の配列を参考にした。1種類の菌につき、ヌクレオチド数が一番長い配列を抜粋し、解析ソフトウェアClustalXによりアライメントし、rRNA遺伝子のITS IおよびITS IIの2領域上に菌特異的プライマーを設計した(表1)。各菌種の遺伝子を検出するためのプライマーペアを表2に示した。このとき、フォワードプライマーとリバースプライマーとで挟まれた配列の長さが、個々に異なるよう留意した(表2、図2)。プライマーとして利用されるオリゴヌクレオチドは、日本遺伝子研究所(仙台市)に受託して合成した。
【0033】
【表1】
JP0005522820B2_000002t.gif

【0034】
【表2】
JP0005522820B2_000003t.gif

【0035】
4)DNA量の確認
上記2により抽出、精製したDNA溶液中のDNA収量を測定するため、既知濃度のマーカーDNAとともに電気泳動を行い、染色後のバンドの発色を比較して、DNA濃度を計算した。DNA溶液8μLに染色液(0.25%Bromphenol blue(BPB)、40%スクロース、100mM EDTA)を2μL加え、電気泳動を行った。マーカーDNAとして、制限酵素Hind IIIで消化したλDNA(0.25μL/10μL)を10μL添加した。電気泳動装置はMupid(R)-2(コスモ・バイオ、東京)を用い、2.0%のアガロースゲル、1×TAE緩衝液中を50Vで80分泳動することにより、DNA断片を展開した。アガロースは、核酸電気泳動用アガロース(Agarose for ≧1Kbp fragment(ナカライテスク、京都市))を使用した。泳動終了後、100mLの蒸留水に5mg/mLのエチジウムブロマイド(EB)を12μL加えた染色液にゲルを移し、30分おいて染色した。染色後、UVP Ultraviolet Transilluminator TDM-20(UVP, Inc., Uoland, CA, USA)により紫外線を照射し、写真撮影した。
【0036】
5)遺伝子増幅(PCR法)
PCR法による遺伝子増幅はPuReTaq Ready-To-Go PCR Beads in strips(Amersham BioScience, Inc, Piscataway, NJ, USA)を使用し、サーマルサイクラーは、TaKaRa PCR Thermal Cycle Dice TP600 Gradient/TP650 Standard(タカラバイオ)を用いて行った。検体の調製は以下の手順で行った。
【0037】
上記3)で作製した各プライマーについて、各々2.5pmol/μL(2.5μM)に希釈したプライマー溶液を作製し、反応液中で1/10量となるようにした。ただし、CacuR1のみ他のプライマーよりも3倍の濃度にして混合した。プライマー溶液に滅菌水を加え、各プライマーの最終濃度が0.25μMとなるようにした。ただし、プライマーCacuR1のみ最終濃度0.75μMとなるようにした。
各菌に対応する1対のプライマーペアおよびすべてのプライマーを混合したプライマーミックス溶液を、上記濃度に従い作製した。
【0038】
PCR用マイクロチューブ(PuReTaq Ready-To-Goシリーズ、GEヘルスケア社)に、プライマー溶液、および上記2)で抽出したDNAを加え、さらに反応液が25μLとなるように滅菌水を加えて混合し、PCRを行った。
各菌種のDNAは、各々個別にPCRを行う他、5種をすべて混合したDNA溶液を作製してPCRを行った。
【0039】
サーマルサイクラーで変性過程を94 ℃で5分を1回、次に変性過程を94℃で30秒、アニーリングを55℃または53℃で30秒、伸長反応を72℃で30秒のサイクルを35回繰り返し、その後、伸長反応を72℃で7分を1回行った後4℃に冷却して終了させた。
【0040】
6)アガロース電気泳動
PCR後のアガロース電気泳動は、核酸電気泳動用アガロース(Agarose for 50~800bp fragment(ナカライテスク、京都市))を用い、1.0%の濃度で行った以外は4)と同手法により行った。電気泳動後、同様にEB染色し、写真撮影した。
【0041】
上記電気泳動の結果を図3に示した。各病原菌検出用のプライマーペアを単独で用いてPCRを行ったときに検出された位置と、プライマーミックスを用いてPCRを行った場合に、各病原菌由来遺伝子の増幅部位(バンド)は、各々同じ位置に認められた。このことから、プライマーミックスを用いた一度の増幅処理により、各病原菌の検出が可能であることが確認された。
【0042】
(実施例2)4種のイチゴ苗についての病原菌の検査
イチゴ栽培農家から得た重要病害の可能性がある28のイチゴの苗のうち4つ(苗番号3,27,9,11)について、実施例1で作製したプライマーミックスを用いて、PCR法により、5種(Glomerella cingulataColletotrichum acutatumFusarium oxysporum, Phytophthora nicotianae, Phytophthora cactorum)の病原菌の検出を行った。DNAの抽出、PCR条件および電気泳動の手法は、上記実施例1と同手法により行った。
【0043】
上記電気泳動の結果を図4に示した。苗番号3はFusarium oxysporum、株番号27はGlomerella cingulataに感染していることが確認された。苗番号9はFusarium oxysporumおよびGlomerella cingulataに感染していることが確認された。苗番号11については、Phytophthora nicotianaeGlomerella cingulataおよびColletotrichum acutatumに感染していることが確認された。
【0044】
(実施例3)土壌中の病原菌の検査
萎黄病を発病したイチゴ苗を栽培したときの土壌について、実施例1で作製したプライマーミックスを用いて、PCR法により、5種(Glomerella cingulataColletotrichum acutatumFusarium oxysporumPhytophthora nicotianaePhytophthora cactorum)の病原菌の検出を行った。
【0045】
土壌試料からのDNAの抽出は、以下のとおりに行った。土を0.2g秤量し、マイクロチューブに入れた。DNA抽出キットNucleon PhytoPure TM(Nucleon Bioscience社)に含まれる試薬1(reagent1)を600μL、試薬2(reagent2)を200μL加えてから超音波細胞破砕装置Bio-ruptor UCD-200TM(バイオラッド社)で10分処理して細胞を破砕した。その後、アルミバス中65℃で20分間保温し、実施例1に記載と同手法によりDNAを抽出した。
【0046】
PCR条件は、サイクルを100回繰り返したほかは、実施例1と同条件で行い、その後の電気泳動の手法も、実施例1と同様に行った。
【0047】
上記電気泳動の結果、土壌試料中に、萎黄病菌Fusarium oxysporumが検出され、イチゴ苗で発病した病原菌が土壌においても確認された。その他、Colletotrichum acutatumと不明のバンドが検出された(図5)。
【0048】
(実施例4)プライマーミックスの調製2
Fusarium oxysporumの検出のためのプライマーとして、FoxyF6(配列番号2)のかわりに以下に示すプライマー(FoxyF2)を用いたほかは、実施例1に記載の方法と同手法によりPCR法により病原菌の検出を行い、電気泳動を行った。本実施例で用いた各プライマーの位置を図6に示した。Fusarium oxysporumの検出のためのプライマーとして、FoxyF2およびFGC-Rを用いた場合の増幅産物の長さは368bpである。
FoxyF2 ctatatgtaacttctgagtaaaacc (配列番号10)
【0049】
上記電気泳動の結果を図7に示した。各病原菌検出用のプライマーペアを単独で用いてPCRを行ったときに検出された位置と、プライマーミックスを用いてPCRを行った場合に、各病原菌由来遺伝子の増幅部位(バンド)は、各々同じ位置に認められた。このことから、プライマーミックスを用いた一度のPCRにより、各病原菌の検出が可能であることが確認された。
【0050】
(実施例5)5種のイチゴ苗についての病原菌の検査
イチゴ栽培農家から得た重要病害の可能性がある28のイチゴの苗のうち5つ(苗番号22,23,1,9,6)について、実施例4で作製したプライマーミックスを用いて、5種(Glomerella cingulataColletotrichum acutatumFusarium oxysporum, Phytophthora nicotianae, Phytophthora cactorum)の病原菌の検出を行った。DNAの抽出、PCR条件および電気泳動の手法は、上記実施例1と同手法により行った。
【0051】
上記電気泳動の結果を図8に示した。苗番号22および23はFusarium oxysporum、苗番号1はGlomerella cingulataに感染していることが確認された。苗番号9は、実施例2の結果と同様に、Fusarium oxysporumおよびGlomerella cingulataに感染していることが確認されたほか、上記5種で検出される以外の場所にもバンドの検出が認められた。また、苗番号6については、Glomerella cingulataに感染しているほか、同様に上記5種で検出される以外の場所にも3種類のバンドの検出が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
以上詳述したように、本発明の検出方法によると、症状の似ているイチゴ重要病害について、簡便な操作で同時に検査することができ、早期に正確に病原菌を同定することができる。また、試料中に病原菌に起因する遺伝子が微量にしか混入していない場合であっても、本発明の方法によれば感度良く検出し、同定することができる。
【0053】
このため、イチゴの重要病害については、熟練を要することなく一度の検査で早期に病原菌の検出が可能となり、早期に病原菌を同定することにより、早期に各重要病害に対する対策を講じることができる。早期に対策を講じることにより、イチゴ農家の被害の拡大防止を早期に図ることができる。さらには、イチゴ栽培のための土壌についても本発明の検出方法を用いて病原菌の検査を行うことで、発病前や栽培前であっても病原菌の感染のリスクを排除することができる。さらには、イチゴを栽培した後に土壌を再利用する場合にも、重要病害の病原菌について評価することができ、経済的に非常に大きな効果が期待される。
【0054】
また、本発明の検出方法は、培養操作を要しないため、培養のための特別の実験施設も必要としないことから、汎用が可能である。このことからも、非常に経済効果が大きい。
【0055】
さらに、本発明の検出方法に使用可能なプライマーセットや検出キットを用いると、一定の基準に基づき菌の同定を行うことができ、より正確な検査が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】イチゴ栽培の流れと重要病害の防除方法を示す図である。
【図2】各病原菌の遺伝子を検出するために設計したプライマーの位置を示す図である。(実施例1)
【図3】設計したプライマーを、1種の菌検出用にプライマーペアとしたもの、または5種の菌検出用にプライマーミックスとしたものを用いてPCRを行ったときの増幅産物の電気泳動結果を示す図である。(実施例1)
【図4】実施例1で用いたプライマーミックスを用いて、農家からの持ち込みイチゴ株について分析した結果を示す図である。(実施例2)
【図5】実施例1で用いたプライマーミックスを用いて、土壌について分析した結果を示す図である。(実施例3)
【図6】各病原菌の遺伝子を検出するために設計したプライマーの位置を示す図である。(実施例4)
【図7】設計したプライマーを、1種の菌検出用にプライマーペアとしたもの、または5種の菌検出用にプライマーミックスとしたものを用いてPCRを行ったときの増幅産物の電気泳動結果を示す図である。(実施例4)
【図8】実施例4で用いたプライマーミックスを用いて、農家からの持ち込みイチゴ株について分析した結果を示す図である。(実施例5)
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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