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明細書 :CT装置、CT装置における画像再構成方法、及び電子回路部品

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5493072号 (P5493072)
公開番号 特開2010-136958 (P2010-136958A)
登録日 平成26年3月14日(2014.3.14)
発行日 平成26年5月14日(2014.5.14)
公開日 平成22年6月24日(2010.6.24)
発明の名称または考案の名称 CT装置、CT装置における画像再構成方法、及び電子回路部品
国際特許分類 A61B   6/03        (2006.01)
FI A61B 6/03 350P
請求項の数または発明の数 19
全頁数 18
出願番号 特願2008-317758 (P2008-317758)
出願日 平成20年12月13日(2008.12.13)
審査請求日 平成23年11月29日(2011.11.29)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020292
【氏名又は名称】国立大学法人徳島大学
発明者または考案者 【氏名】吉永 哲哉
【氏名】藤本 憲市
個別代理人の代理人 【識別番号】100121304、【弁理士】、【氏名又は名称】杢保 英治
審査官 【審査官】安田 明央
参考文献・文献 特開平08-117221(JP,A)
特開2000-215304(JP,A)
三浦由加利,連続CT画像再構成法の電子回路実装,[online],2006年 4月 3日,[検索日2013.08.06],URL,http://weblog.medsci.tokushima-u.ac.jp/miee/archives/study/2006040348.pdf
堀田奈保子,連続CT画像再構成法の性質,[online],2007年 4月 3日,[検索日2013.08.06],URL,http://weblog.medsci.tokushima-u.ac.jp/miee/archives/study/2007040389.pdf
調査した分野 A61B 6/00-6/14
特許請求の範囲 【請求項1】
対象物断層の画像を得るCT装置において、
投影データを取得する投影データ取得部と、
前記投影データ取得部が取得した投影データに基づいて、前記対象物断層の画像における画素ごとの画素値を得る画像再構成部とを備え、
前記画像再構成部は、
下記(数1)に示される微分方程式の解として画素ごとの画素値xを算出する
ことを特徴とするCT装置。
【数1】
JP0005493072B2_000011t.gif

【請求項2】
前記(数1)において、投影作用素Aは、投影データyの各々の要素(各行の値)に対応する画素それぞれに応じた値が付与され、投影データyの要素に対応しない画素については値を0とした行列である
ことを特徴とする請求項1に記載のCT装置。
【請求項3】
投影データyをy、y、・・yのM個(Mは、2以上、投影データyの要素数までの整数)に分割するとともに、投影作用素Aも、分割された投影データに対応させて分割し、下記(数2)の微分方程式の解として画素値を算出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のCT装置。
【数2】
JP0005493072B2_000012t.gif

【請求項4】
前記画像再構成部は、
上記(数2)のmの値を切り替える切替部を備えることを特徴とする請求項3に記載のCT装置。
【請求項5】
前記(数1)若しくは前記(数2)の微分方程式の解を、アナログ回路により算出する
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のCT装置。
【請求項6】
前記アナログ回路は、
各画素に対応した乗算器、及び前記乗算器の出力が入力される積分器を含み、前記積分器の出力の収束値として各画素の画素値を算出する
ことを特徴とする請求項5に記載のCT装置。
【請求項7】
前記CT装置は、
前記(数1)若しくは前記(数2)の微分方程式の解として得られた画素値を、CT値に変換する変換部を有する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のCT装置。
【請求項8】
対象物断層の画像を得るCT装置における画像再構成方法であって、
投影データを取得する投影データ取得ステップと、
取得された投影データに基づいて、前記対象物断層の画像における画素ごとの画素値を得る画像再構成ステップとを含み、
前記画像再構成ステップにおいて、下記(数3)に示される微分方程式の解として画素ごとの画素値xを算出する
ことを特徴とする画像再構成方法。
【数3】
JP0005493072B2_000013t.gif

【請求項9】
前記(数3)において、投影作用素Aは、投影データyの各々の要素(各行の値)に対応する画素それぞれに応じた値が付与され、投影データyの要素に対応しない画素については値を0とした行列である
ことを特徴とする請求項8に記載の画像再構成方法。
【請求項10】
投影データyをy、y、・・yのM個(Mは、2以上、投影データyの要素数までの整数)に分割するとともに、投影作用素Aも、分割された投影データに対応させて分割し、下記(数4)の微分方程式の解として画素値を算出する
ことを特徴とする請求項8又は9のいずれかに記載の画像再構成方法。
【数4】
JP0005493072B2_000014t.gif

【請求項11】
前記画像再構成ステップにおいて、
上記(数4)のmの値を切り替えることを特徴とする請求項10に記載の画像再構成方法。
【請求項12】
前記(数3)若しくは前記(数4)の微分方程式の解を、アナログ回路により算出する
ことを特徴とする請求項8から11のいずれかに記載の画像再構成方法。
【請求項13】
対象物断層の画像を得るCT装置に用いられる電子回路部品であって、
投影データが入力される投影データ入力端子と、
入力された投影データに基づいて、前記対象物断層の画像における画素ごとの画素値を得る画像再構成部とを備え、
前記画像再構成部は、
下記(数5)に示される微分方程式の解として画素ごとの画素値xを算出する
ことを特徴とする電子回路部品。
【数5】
JP0005493072B2_000015t.gif

【請求項14】
前記(数5)において、投影作用素Aは、投影データyの各々の要素(各行の値)に対応する画素それぞれに応じた値が付与され、投影データyの要素に対応しない画素については値を0とした行列である
ことを特徴とする請求項13に記載の電子回路部品。
【請求項15】
投影データyをy、y、・・yのM個(Mは、2以上、投影データyの要素数までの整数)に分割するとともに、投影作用素Aも、分割された投影データに対応させて分割し、下記(数6)の微分方程式の解として画素値を算出する
ことを特徴とする請求項13又は14に記載の電子回路部品。
【数6】
JP0005493072B2_000016t.gif

【請求項16】
前記画像再構成部は、
上記(数6)のmの値を切り替える切替部を備えることを特徴とする請求項15に記載の電子回路部品。
【請求項17】
前記(数5)若しくは前記(数6)の微分方程式の解を、アナログ回路により算出する
ことを特徴とする請求項13から16のいずれかに記載の電子回路部品。
【請求項18】
前記アナログ回路は、
各画素に対応した乗算器、及び前記乗算器の出力が入力される積分器を含み、前記積分器の出力の収束値として各画素の画素値を算出する
ことを特徴とする請求項17に記載の電子回路部品。
【請求項19】
前記電子回路部品は、
前記(数5)若しくは前記(数6)の微分方程式の解として得られた画素値を、CT値に変換する変換部を有する
ことを特徴とする請求項13から18のいずれかに記載の電子回路部品。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物断層の画像を得るCT装置、CT装置における画像再構成方法、及び画像再構成に用いる電子回路部品に関する。
【背景技術】
【0002】
人体などの対象物に複数の角度から放射線(例えばX線)を照射し、対象物内で減衰した放射線を検出し、対象物断層の画像を得る透過型CT(コンピューテド・トモグラフィ)装置、や、体内等に放射性同位元素を投与し、放出された放射線(例えばγ線)の強度データを測定して、同様に対象物断層の画像を得る放射型CT装置(例えばSPECT、PET)は、既に広く実用に供されている。
【0003】
上記のようなCT装置においては、検出された放射線のデータ(投影データ)から対象物断層の画像を得るために画像再構成処理を行う。従来の画像再構成処理として、いわゆる解析的手法と逐次的手法とがある。
【0004】
解析的手法とは、投影データの1次元フーリエ変換が、対象物の2次元フーリエ変換における原点を通る同じ角度の1次元データと一致する、いわゆる投影切断面定理を利用したものであり、例えばフィルタ補正逆投影法(FBP法)、重畳積分法などが既に実用化されている。これらの方法では、高速フーリエ変換(FFT)を用いるため、専用のハードウェアも開発されており、非常に迅速な処理を行うことができる。
【0005】
しかしながら、解析的手法では、対象物内に金属など、放射線吸収率の高い物質が存在すると、放射状のアーチファクトが生じることが知られている。このようなアーチファクトが生じない画像再構成法が逐次的方法である。逐次的方法とは、初めに任意の画像(例えば画素値が均一な画像)を仮定し、仮定された画像からつくられる投影データを計算し、これを実測投影データと比較する。比較して差があれば、この差を小さくするように画像を逐次に修正していく方法である。逐次的方法の例として、ML-EM法やOS-EM法などが既に詳細に研究されている。
【0006】

【非特許文献1】尾川浩一、「ECTにおける反復的画像再構成」、日本放射線技術学会雑誌、社団法人日本放射線技術学会、2000年7月、第56巻、第7号、p.890—894
【0007】

【非特許文献2】田中栄一、「PET画像の再構成法の現状と展望」、日本放射線技術学会雑誌、社団法人日本放射線技術学会、2006年6月、第62巻、第6号、p.771-777
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、解析的手法では処理は迅速であるが、金属などによる放射状アーチファクトが発生するという問題点がある。逐次的手法では、そのような問題がなく、高画質が得られるという利点があるが、上記ML-EM法、その改良であるOS-EM法を用いても、非常に長い処理時間を要し、特に画素数の多い透過型CT装置においては、事実上実用化は困難であるという問題点があった。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであって、より高速、高画質を実現することができるCT装置、CT装置における画像再構成方法、及び電子回路部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の問題点を解決するために、本発明に係るCT装置は、対象物断層の画像を得るCT装置において、投影データを取得する投影データ取得部と、前記投影データ取得部が取得した投影データに基づいて、前記対象物断層の画像における画素ごとの画素値を得る画像再構成部とを備え、前記画像再構成部は、下記(数1)に示される微分方程式の解として画素ごとの画素値xを算出することを特徴としている。
【0011】
【数1】
JP0005493072B2_000002t.gif

【0012】
本発明の構成では、上記(数1)の微分方程式の解として各画素値xを得る。このように微分方程式の解として画素値を得る手法の極めて有効な点は、微分方程式の解はアナログ電子回路を用いて求めることが可能なところにある。従って、従来のEM法等の逐次的手法、即ちデジタルコンピュータ上でソフトウェアを動作させる方法と比べれば、同等の画質を保持しながら、格段に高速に画素値の算出を行うことが可能となる。
【0013】
なお、前記(数1)において、投影作用素Aは、投影データyの各々の要素(各行の値)に対応する画素それぞれに応じた値が付与され、投影データyの要素に対応しない画素については値を0とした行列である。
【0014】
投影データyをy、y、・・yのM個(Mは、2以上、投影データyの要素数までの整数)に分割するとともに、投影作用素Aも、分割された投影データに対応させて分割し、下記(数2)の微分方程式の解として画素値を算出することもできる。
【0015】
【数2】
JP0005493072B2_000003t.gif

【0016】
上記(数2)において、M=1の場合は、上記(数1)と同様となる。前記画像再構成部は、Mが2以上の場合、取得した投影データに基づき、上記(数2)のmの値を切り替える切替部を備えることができる。
【0017】
前記(数1)若しくは前記(数2)の微分方程式の解の算出に用いるアナログ回路の一例として、各画素に対応した乗算器、及び前記乗算器の出力が入力される積分器を含み、前記積分器の出力の収束値として各画素の画素値を算出する構成とすることができる。なお、上記mの値を切り替える切替部については、デジタル回路を使用する構成とすることもできる。
【0018】
前記CT装置は、前記(数1)若しくは前記(数2)の微分方程式の解として得られた画素値を、CT値に変換する変換部を有する構成も可能である。
【0019】
本発明に係る画像再構成方法は、対象物断層の画像を得るCT装置における画像再構成方法であって、投影データを取得する投影データ取得ステップと、取得された投影データに基づいて、前記対象物断層の画像における画素ごとの画素値を得る画像再構成ステップとを含み、前記画像再構成ステップにおいて、上記(数1)に示される微分方程式の解として画素ごとの画素値xを算出することを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係る電子回路部品は、対象物断層の画像を得るCT装置に用いられる電子回路部品であって、投影データが入力される投影データ入力端子と、入力された投影データに基づいて、前記対象物断層の画像における画素ごとの画素値を得る画像再構成部とを備え、前記画像再構成部は、上記(数1)に示される微分方程式の解として画素ごとの画素値xを算出することを特徴とする。投影データは、従来のデータ取得システム(DAS)を経由したデータを用いても良いし、X線検出器で取得されたアナログデータを利用するような形態も可能である。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るCT装置等によると、例えば画素数の多い透過型CT装置においても、極めて高速、高画質の実現を図ることが可能になるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
(1)CT装置の全体概略構成
図1は、本発明の一つの実施の形態におけるCT装置の全体概略構成について説明するための図である。本実施の形態のCT装置は、X線発生管101とX線検出器102とを備えており、X線発生管101により発生したX線ビームXBをX線検出器102で検出して対象物の投影データを取得する。同図の例はX線ビームをコーンビームとする場合の例であるが、ファンビームやペンシルビームでも本願発明が適用可能であることは明らかである。
【0023】
X線発生管101のX線焦点FPから放射されたX線ビームXBは、ビーム形成X線フィルタ103によって、例えば再構成領域Pの中心では、より多くのX線が照射されるように、再構成領域Pの周辺部では、より少ないX線が照射されるように、X線線量が制御される。再構成領域P内に存在する対象物にX線が吸収され、対象物を透過したX線が、X線検出器102で検出される。なお、X線発生管101のX線焦点FPから放射されたX線ビームXBは、X線コリメータ104により、断層像のスライス厚方向に制御される。即ち、回転中心軸ICにおけるX線ビーム幅が制御されるように構成されている。
【0024】
なお、図1に示した例は、透過型CT装置の一例としての、いわゆるマルチスライス・ヘリカルスキャンの例であるが、下記に詳細に説明する本願発明の課題解決原理(投影データからの微分方程式の解として画素値を得る)に鑑みれば、適用され得るスキャンの方法は、全く限定されることなく、ステップスキャンや、シングルスライス・ヘリカルスキャンなどの場合においても、何ら問題なく適用することができる。ヘリカルスキャンの場合における補間方法は、180度補間、360度補間、高次補間などのいずれでも良い。また、マルチスライスの場合、ヘリカルピッチ、ビームピッチは何ら限定されず、180度補間、フィルタ補間など、補間方法にも何ら限定はされない。投影データが取得できれば画素値の算出は可能だからである。
【0025】
(2)画像再構成の手法
次に、本実施の形態における画像再構成の手法について詳細に説明する。図2は、本実施の形態の画像再構成について説明するための図である。
【0026】
周知の如く、画像再構成処理とは、X線検出器102で取得した投影データから、対象物断面の各画素値を得る処理である。図2の例では、画素数4、投影方向は6方向(P1からP6)であり、画素201の画素値が5、画素202の画素値が7、画素203の画素値が6、画素204の画素値が2とする。
【0027】
図2において、方向P1からのX線より、投影データyが得られる。同様に6方向からのX線より、合計6個の投影データy~yが得られる。画像再構成は、投影データの値及び投影作用素から得られる連立方程式の解を求めることに帰着する。もっとも、通常は画素数が膨大であり、連立方程式の解を求めることは現実的ではない。
【0028】
本願発明者らは、投影データから画像再構成を行う際に、各画素の画素値を微分方程式の解として求めることができることを発案した。具体的には、下記(数3)の微分方程式の解として、各画素の画素値を得ることができることを見出した。
【0029】
【数3】
JP0005493072B2_000004t.gif

【0030】
本実施の形態における投影作用素(投影オペレータ)Aとは、どの投影データがどの画素に対応するかを示す行列である。求めるべき画素数がJ、投影データがI個の場合、I行J列の行列とすることができる。下記(数4)は、上記した図2の場合の投影作用素Aの内容の一例である。
【0031】
【数4】
JP0005493072B2_000005t.gif

【0032】
上記図2の例は極めて単純な例であるが、結局必要な投影データを取得することができれば、画素数の多い場合や、ファンビーム、コーンビームを用いた場合でも、画像の再構成は可能である。上記の例では、説明の便宜のため、投影作用素の要素値を0又は1としているが、正の要素値は1に限られないことは勿論である。投影作用素の要素値は、非負の実数値であれば良く、ビームの形態、角度、その他の条件等により、適宜設定すれば良い。なお、投影作用素Aの「転置行列」は、図2示す例では、下記(数5)のような4行6列の行列となる。
【0033】
【数5】
JP0005493072B2_000006t.gif

【0034】
なお、投影データy(投影方向数I)及び画素値x(画素数J)は、それぞれ、例えば下記(数6)に示すような列ベクトルとして定義することができる。
【0035】
【数6】
JP0005493072B2_000007t.gif

【0036】
本実施の形態の画像再構成手法において、極めて特徴的な点は、微分方程式(数1)の解はアナログ電子回路で得ることができる点である。上記したように、従来の逐次的画像再構成手法では、デジタルコンピュータ等の情報処理装置においてソフトウェアを動作させて処理を行うため、特に画素数の多い透過型CT装置においては、実用に耐える処理時間内に画像再構成を行うことは事実上不可能であった。
【0037】
図3は、本実施の形態の画像再構成部300の構成の一例を示すブロック図である。同図に示されるように、画像再構成部300は、行列演算部301を備える。行列演算部301には、投影データy(y~yI)が入力され、上記(数1)の中の下記(数7)の部分の行列演算(加減算及び乗算、ただし減算は符号反転器を用いれば加算に変換できる)を実行する。本実施の形態では、行列演算を実行する部分をアナログ回路で構成する。
【0038】
【数7】
JP0005493072B2_000008t.gif

【0039】
行列演算部301の出力は、乗算器3021~302Jに入力される。前記したように、Jは画素値算出の対象となる画素数である。画素数は、X線CT装置などの透過型CT装置では一般的に10万画素以上といった非常に大きな値となり、従来の逐次的方法は、事実上実用は困難であった。なお、以下、各乗算器を区別する必要の無い場合は、単に乗算器302ともいう。
【0040】
図3に示されるように、画像再構成部300は、積分器3031~303Jを備えている。以下、各積分器を区別する必要の無い場合は、単に積分器303ともいう。乗算器302は、行列演算部301からの画素ごとの出力と、積分器303の出力とを乗算して、積分器303に対して出力する。積分器303の出力は、時間の経過後に画素値x(x~xJ)に収束する。
【0041】
積分器303は、例えばOPアンプなどの能動素子や、キャパシタ等の受動素子を用いて構成することができる。積分器303の出力値が収束するまでの時間は、積分器303の時定数を調整することで制御することが可能であるが、従来の逐次的方法と比較して極めて迅速である。なお、乗算器302も、OPアンプなどの能動素子を用いて構成することができる。乗算器302、積分器303とも、具体的な回路構成は公知であるから、詳細な説明は省略する。
【0042】
上記のような構成であるため、画像再構成部300は、電子回路部品として作製することが可能であり、投影データの入力を受けて画像再構成を行った結果(画素値)を出力する電子回路部品(例えば画像再構成用IC)も提供され得る。入力される投影データは、従来のデータ取得システム(DAS)を経過した投影データのみならず、X線検出器102の出力(アナログ投影データ)であっても良い。画像再構成部300を構成する電子回路部品は、アナログ投影データの前処理(X線出力変動に対する補正、検出器系誤差の補正)などを行う部分を含んでいても良い。
【0043】
なお、画像再構成部300は、図4に示すようなCT値変換部401を含むようにしても良い。CT値変換部401は、上記電子回路部品に含めても良いし、例えばCT画像を表示する部分に設けることもできる。上記(数1)の微分方程式の解は、任意の正の値を初期値として、最終的に正の値に収束するものであるところ、従来の、いわゆるCT値は、空気が-1000HU(ハンスフィールド値)、骨が+1000HU、水が0HUとされており、上記(数1)の微分方程式の解として得られた画素値を上記CT値に変換するCT値変換部401を備えることで、従来と同様の画像表示装置を利用することも可能となる。
【0044】
本実施の形態においては、例えば金属などのX線吸収率の高い物体が存在する場合にも高画質を実現するものであるが、例えば、上記(数1)微分方程式の解と、従来のCT値との対応関係を実験的に求めておき、当該対応関係に従ってCT値変換部401にて数値変換を行うことにより、任意のウィンドウ幅、ウィンドウレベルを実現することもできる。本実施の形態の手法では、金属などが存在する場合、その部分の画素値は0に収束することとなり、この場合には、例えば、収束した画素値が0であることが識別可能であるようなCT値に変換することが考えられる。
【0045】
(3)数値実験の結果
本願発明者らは、上記図3に示した電子回路について、デジタルコンピュータを用いてシミュレーションを行ったので、以下、その結果について説明する。
【0046】
図5は、図2に例示した画素数4、投影方向数6の場合について、シミュレーションを行った結果を示すグラフである。同図の例では、各画素の値として最初の値を「10」に設定した。この初期値は、正の値であれば何でも良い。時間の経過とともに、電子回路シミュレータの出力が各画素の値に収束し、画像の再構成が実現されることが明らかとなった。
【0047】
図6は、投影数4562、画素数87×87のSPECT・サイノグラムデータ(投影データ)を用いて、従来の逐次的方法と本願発明の方法との比較を示した再構成画像データである。同図の例は、本願発明の手法により、従来の逐次的方法と同等の画質が得られていることが示されている。なお、本願手法のtの値は、時間の経過とともに収束していることを表しており、従来の逐次法に示されているnの値は繰り返し回数である。実際に図3の電子回路を適用した場合、極めて短い時間で、従来の逐次法と同程度の高画質が実現できる。
【0048】
図7は、図6と同様の投影データを加工して欠損部分を生じさせたデータを用いて、従来の逆投影法、及び本願方法とを比較した再構成画像データである。従来の逆投影法では、欠損部分があると放射状のアーチファクトが生じるが、本願発明の方法では、そのようなアーチファクトが生じないことが示されている。
【0049】
(実施の形態2)
投影データyを分割し、それに併せて投影作用素も分割して画素値を算出するような実施の形態も可能である。図8は、本実施の形態の画像再構成部300の構成の一例を示すブロック図である。
【0050】
本実施の形態では、投影データyを複数のブロックに分割する。分割数をMとする。M=2とすると、投影データyは、下記(数8)に示すような二つの列ベクトルに分割される。
【0051】
【数8】
JP0005493072B2_000009t.gif

【0052】
分割数は2に限定されず、もっとも極端な例では、投影数ごとに分割するような形態も可能である。M=1の場合には、第1の実施の形態と同様となる。(数8)に示されるように投影データが分割されると、投影作用素も、それに対応して分割されることとなり、行列演算部301で実行される行列演算は、下記(数9)に示す如くとなる。
【0053】
【数9】
JP0005493072B2_000010t.gif

【0054】
本実施の形態では、微分方程式が複数となるため、どの微分方程式を用いるか(mの値)に応じて、行列演算内容を切り替える切替部3011を設けている(図8参照)。切替部3011はデジタル回路で構成することもできる。この切替は、行列演算に必要な投影データが取得できた場合に切り替えるようにしても良いし、全ての投影データが取得できた後に、適宜切り替えて行列演算を実行するようにしてもよい。CT値変換部401を設けても良い点は、第1の実施の形態と同様である。
【0055】
(変形例)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の内容が上記実施の形態において説明された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を実施することができる。
【0056】
即ち、上記実施の形態では、図1にて、透過型CT装置であるX線CT装置を示したが、上記本願発明の画像再構成原理の適用範囲は透過型CT装置に限定されず、SPECT、PETといった放射型CT装置に適用することも可能である。放射型CT装置は、透過型CT装置に比べて画素数が少なく、従って、画像再構成部300における乗算器302や積分器303の数も少なくて良いため、より低コストで電子回路部品を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、例えば、CT装置などに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一つの実施の形態におけるCT装置の全体概略構成について説明するための図である。
【図2】画像再構成について説明するための図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態における、画像再構成部300の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】CT値変換部401について説明するためのブロック図である。
【図5】図2に例示した画素数4、投影方向数6の場合について、シミュレーションを行った結果を示すグラフである。
【図6】投影数4562、画素数87×87のSPECT・サイノグラムデータ(投影データ)を用いて、従来の逐次的方法と本願発明の方法との比較を示した再構成画像データである。
【図7】図6と同様の投影データを加工して欠損部分を生じさせたデータを用いて、従来の逆投影法、及び本願方法とを比較した再構成画像データである。
【図8】本発明の第2の実施の形態における、画像再構成部300の構成の一例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
101 X線発生管
102 X線検出器
103 X線フィルタ
104 X線コリメータ
300 画像再構成部
301 行列演算部
3011 切替部
302 乗算器
303 積分器
401 CT値変換部
XB X線ビーム
FP X線焦点
IC 回転中心軸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図8】
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【図6】
6
【図7】
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