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明細書 :植物の栄養成分増強方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5448043号 (P5448043)
公開番号 特開2010-220558 (P2010-220558A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成22年10月7日(2010.10.7)
発明の名称または考案の名称 植物の栄養成分増強方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
A01G   1/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 601C
A01G 1/00 301Z
A01G 7/00 604Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 11
出願番号 特願2009-071992 (P2009-071992)
出願日 平成21年3月24日(2009.3.24)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 中国・四国の農業気象 第21号記事2008年12月4日発行及び中国・四国の農業気象 第21号2008年12月4日開催にて文書をもって発表した。
審査請求日 平成24年1月11日(2012.1.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304020177
【氏名又は名称】国立大学法人山口大学
発明者または考案者 【氏名】執行 正義
【氏名】山内 直樹
【氏名】谷口 成紀
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 特開2008-86272(JP,A)
特開2006-20565(JP,A)
特開2008-79510(JP,A)
特開2004-121228(JP,A)
調査した分野 A01G 7/00
A01G 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
植物の育成時において所定時間だけ暗期に400~410nmの発光ダイオードによる光を植物に照射して植物中の還元型アスコルビン酸の含量を高めることを特徴とする植物の栄養成分増強方法。
【請求項2】
植物の育成時において所定時間だけ暗期に400~410nmの発光ダイオードによる光を植物に照射して植物中の還元型アスコルビン酸及び総フェノール物質の含量を高めることを特徴とする植物の栄養成分増強方法。
【請求項3】
前記植物が芽ネギであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の植物の栄養成分増強方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栄養成分増強方法に関し、特に光照射により植物の栄養成分を増強する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単子葉植物の代表である芽ネギは葉ネギを若取りしたものを総称し、スプラウトの1種である。スプラウトは一定の温度、光、栄養液がコントロールされた栽培施設で生育される栽培野菜である。スプラウトの芽ネギは古くから薬用植物としても用いられるネギの栄養成分を有し、日本人の食生活になじみの深いネギの食分野に広がりつつある。芽ネギの大きさは葉長約10cm、径が約2mmであり、寿司のネタとして利用されることが多い。スプラウトが注目されるようになったのは、アメリカでブロッコリーの新芽にがん予防効果をもつというスルフォラファンが多く含まれていると発表された後、ブロッコリーに限らずスプラウトには発がん抑制効果や抗酸化作用を有する物質等、機能性物質が多く含まれていることが判明したことによる。一般に多く栽培されているスプラウトにはもやし、大根、アルファルファ、ブロッコリー、クレソン、レッドキャベツ、小松菜、マスタード、豆苗等がある。
【0003】
植物体内のビタミンやポリフェノール、ルチン等の機能性物質を特徴的に増加させる方法について特許文献に開示されている。特許文献1には、生育後の野菜類に特定の光を照射することにより、野菜類中のビタミンC等の量を増加させることについて記載されている。照射光は野菜の種類に応じて異なり、レタスに対して赤色または緑色の照射光、カイワレや白菜に対して青色または緑色の照射光、ピーマンやキュウリに対して青色または赤色の照射光、もやしに対して青色、緑色または黄色の照射光というように用いている。
【0004】
特許文献2には、スプラウトの生長段階に応じて放射スペクトル範囲の異なる可視光発光ダイオード照射しすることにより、スプラウトの生長・形態形成における徒長を抑制するとともにスプラウトのポリフェノール類等の特定成分の生成量を増加させるようにすることについて記載されている。照射光としては、発芽後子葉の開きと展開を遠赤色発光ダイオードの照射によって促進し、ついで赤色光、最後に青色光を照射している。
【0005】
特許文献3には、特に芽ネギのような単子葉栽培植物に人工紫外線UV-B照射を行い、アスコルビン酸、ポリフェノール等の機能性物質含量を増加させることについて記載されている。また、特許文献4には、収穫後植物に特定波長域の紫外線を照射することにより、収穫後植物のポリフェノール含有量を増加させることについて記載されている。紫外線としては近紫外線(300~400μm)、遠紫外線(200~300μm)が主として用いられる。
【0006】
特許文献1、2のように可視光の特定波長あるいはその組み合わせの照射光を用いるものでは、芽ネギでのアスコルビン酸を増加させる上で有効な手段とは言えない。また、特許文献3、4のように紫外線を照射する場合には、紫外線照射装置を扱う人の安全上への支障が考えられるとともに、植物に対しても遺伝子損傷の恐れから収穫後の植物を対象とすべきことになり、利用、用途面で限られ、簡易な手法とは言えない。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2007-267668号公報
【特許文献2】特開2007-75073号公報
【特許文献3】特開2008-86272号公報
【特許文献4】特開2004-121228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
植物に特定の光を照射することにより栄養成分を増強することについて従来実施されている。このうち特許文献1のように野菜をセロファンで包み光照射する方法、あるいは特許文献2のように照射光として赤色、青色等特定波長の通常の可視光あるいはその組み合わせを用いるものでは、ポリフェノール、還元型アスコルビン酸の含量増加には特に有効であるとは言えない。
【0009】
また、特許文献3、特許文献4に示されるように特定波長の照射光として近紫外線を用いるものでは、還元型アスコルビン酸の含量増加にある程度有効性があるが、植物遺伝子への影響や光照射装置を扱う人への影響、安全面上問題が生じると考えられる。
【0010】
このため、植物中における還元型アスコルビン酸のような抗酸化物質の含量をさらに有効に高めかつ植物、人体への悪影響を少なくする栄養成分の増強方法を得ることが課題とされていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は前述の課題を解決すべくなしたものであり、本発明による植物の栄養成分増強方法は、植物の育成時において所定時間だけ暗期に400~410nmの発光ダイオードによる光を植物に照射して植物中の還元型アスコルビン酸の含量を高めるものである。
【0012】
前記方法では、還元型アスコルビン酸及び総フェノール物質の含量を高めるようにしてもよい。また、前記植物が芽ネギであるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、芽ネギの生育時の所定期間暗期に400~410nmの単波長LEDの光を照射する処理をおこなうことにより、芽ネギの抗酸化成分である還元型アスコルビン酸含量を増強でき、人の健康に寄与する健康植物を安価に提供でき、生育時の植物や人体への悪影響を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明において用いる植物に照射光を与えるための人工気象器を概略的に示す図である。
【図2】本発明で用いる人工気象器における温白色LED、単波長LEDの発光スペクトルを示す図である。
【図3】芽ネギの播種から収穫までの処理過程を示す図である。
【図4】芽ネギの生育時3日間各LED光を照射した時の還元型アスコルビン酸含量を示す図である。
【図5】芽ネギの生育時3日間各LED光を照射した時の総フェノール物質含量を示す図である。
【図6】より広い波長域の光を照射した場合を含む光照射による還元型アスコルビン酸含量への影響を比較して示す図である。
【図7】芽ネギ生育時で各LED光の照射が0日、1日、3日における総過酸化物含量の変化を示す図である。
【図8】芽ネギ生育時3日間各LED光を照射した時のクロロプラスト型APX活性の変化を示す図である。
【図9】芽ネギ生育時3日間各LED光を照射した時のサイトゾル型APX活性の変化を示す図である。
【図10】アスコルビン酸-グルタチオンサイクルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明では、単子葉植物、特に芽ネギの栽培において、可視光短波長側の光を照射することにより植物におけるアスコルビン酸、ポリフェノール等の抗酸化能を有する機能性物質含量を効果的に増加させられることを見出し、それに基づいて植物の栄養成分増強方法を与えるものである。

【0016】
本発明による栄養成分増強方法が実際に有効であることを示すための実施例について説明する。植物としては、ネギスプラウト(芽ネギ)を用い、照射光としては可視光短波長側から近紫外UV-Aの範囲の照射光の発光手段を備えた人工気象器内で育成し、ネギスプラウトの育成中に光照射し、その後栄養成分含量の測定を行う。

【0017】
人工気象器はLEDを2次元状に多数配列してなる光源パネルを試料に向けて設置して構成し、LEDの光を試料の芽ネギに照射できるようにしたものである。育成段階で所定期間光源パネルの光を照射した芽ネギについて還元型アスコルビン酸の含量を測定し、異なる波長の光を照射した場合の影響について対比し検証する。
【実施例】
【0018】
芽ネギを植物試料として、人工気象器を用い近紫外355nm、375nm、可視光短波長側405nmの照射光をそれぞれ照射した結果について対比する形で本発明の有効性を確認する。
〔人工気象器〕
人工気象器は図1に示されるように、温白色または特定波長のLEDを多数2次元状に配列したパネルを備えたものである。図1の人工気象器において、上側に水平方向に温白色LEDを配列した光源パネルWPが配設され、その側方に傾斜した形で単波長光LEDを配列した光源パネルMP(図では2枚)が配設されている。光源パネルWP、MPは下方に配置されるピートモス入りのトレイTR上で生育する植物SPを照射するように配設され支持部により固定支持されており、光源パネルにおける各LEDは電源回路に接続されている。
【実施例】
【0019】
使用したLEDは温白色LED、短波長光LEDは近紫外の355nm、375nmと、可視光域の405nmである。各LEDとしては次のものを用いた。
【実施例】
【0020】
(a)温白色 :NSPL500S(日亜化学)
(b)355nm:NS355L-5RLO(ナイトライドセミコンダクター)
(c)375nm:NS375L-5RLO(ナイトライドセミコンダクター)
(d)405nm:SL405AAUE(サンオプト)
各LEDに2次元状に多数配列して光源パネルを形成し、各光源パネルのLEDの光が植物SPに照射されるように人工気象器を構成している。各LEDの光の発光スペクトルは図2に示すようになっており、温白色LED(a)の発光スペクトル、それぞれ355nm、375nm、405nmにピークを有する単波長LED(b)、(c)、(d)の発光スペクトルを示している。
〔植物試料の生育・光照射処理の条件〕
植物試料として芽ネギを用いる。トレイ中のピートモスに450mlの水を含ませ、ネギの種子約5g分を播種し、恒温室内の暗所に3日間置いて発芽させ、その後に恒温室内に設置した人工気象器(25℃、12時間日長)中で育成させた。その際、2日おきにトレイ、ピートモス、芽ネギを合わせた重量が600gになるように潅水している。
【実施例】
【0021】
発芽後、芽ネギを人工気象器に移してからは温白色LEDを用いて生育させ、播種後17日から3日間(収穫まで)暗期(12時間)に近紫外~可視光短波長のLEDによる光照射を行った。温白色のLEDの照射はこの3日間にも引き続き行った。LED光の照射条件としては、温白色LEDによる対照区と、各単波長LEDとに関して次のような照射強度、照射量になるようにした。
対照区(温白色光):(a)
光合成有効光量子束密度 105.9μmolm-2-1
近紫外
<(b)355nm> <(c)375nm>
強度(水平面) 35.2μWcm-2 37.2μWcm-2
(正面) 197.3μWcm-2 103.8μWcm-2
照射量(水平面) 1.5Jcm-2-1 1.6Jcm-2-1
(正面) 8.5Jcm-2-1 4.5Jcm-2-1

可視光短波長側 <(d)405nm>
照射量(水平面) 137.2μmolm-2-1
(正面) 153μmolm—2-1
ここで、水平面はトレイが配置された水平面で上面側に配置された温白色光源パネルのLED光について測定する場合であり、正面は側方に傾斜して配置された単波長光の光源パネルのLED光について照射方向に垂直な面内で測定するものである。また、温白色LED光の照射は播種後4~20日の全体を通して105.9μmolm-2-1(光合成有効光量子束密度)で光照射を行った。
【実施例】
【0022】
生育させる芽ネギを4つの組に分けておき、播種後17日までは人工気象器内で温白色LEDの照射による同じ条件下で芽ネギを生育させ、播種後17日から3日間は温白色LEDを照射後、暗期にLED(a)~(d)の温白色、近紫外、可視光短波長側の光をそれぞれ照射した。播種から収穫までの処理過程をまとめると図3のようになる。
〔測定A〕
播種後20日に収穫したそれぞれの芽ネギのうち無作為に抜き取ったもののうち10本について葉重、葉長、クロロフィル含量、アスコルビン酸含量、総フェノール物質含量の測定を行った。
【実施例】
【0023】
クロロフィル含量の測定はモランの方法に従って行い、芽ネギをN、N-ジメチルホルムアミドに浸し暗所に放置した後、分光光度計(HITACHI330)により吸光度を測定することにより求めた。
【実施例】
【0024】
アスコルビン酸含量の測定は、芽ネギの抽出試料を磨砕し蒸留水を加え吸引ろ過し、ヒドラジン法により測定した。抽出液を総アスコルビン酸サンプル、ブランクと、酸化型アスコルビン酸サンプル、ブランクに分け、試薬の添加、混和、放置、冷却等の処理を行い、吸光度の測定により総アスコルビン酸含量、酸化型アスコルビン酸含量を求め、その差として芽ネギ100g当たりの還元型アスコルビン酸含量を求めた。(a)~(d)のLED光を3日間照射した時の測定された芽ネギ100g当たりの還元型アスコルビン酸含量は図4に示すようになった。
【実施例】
【0025】
総フェノール物質含量の測定(フォーリン・チオカルト法)は、エタノールを加水して加熱したものに芽ネギを加えて加熱した後冷却し、芽ネギを磨砕し吸引ろ過し、エタノール(70%)を用いて定容し、その抽出液を希釈したものを測定に用いた。試料にフェノール試薬を加え混合し、さらに炭酸ナトリウムを加え混合した後、分光光度計(Shimadzu UV-240)を用いて吸光度を測定し、その測定値から検量線の式を用いて総フェノール含量を求めた。(a)~(d)のLED光を3日間照射した時の測定された芽ネギ100g当たりの総フェノール物質含量は図5に示すようになった。
【実施例】
【0026】
測定結果として、葉重、葉長に関しては、3日間のLED光照射でいずれも葉重が0.03g程度、葉長が9cm程度となり、対照区(a)と(b)~(d)のLED光照射とでは実質的に相違がないと判断した。すなわち、3日間のLED光照射により芽ネギの生育には変化がなく、クロロフィルa、クロロフィルb含量を測定した結果について、対照区(a)と(b)~(d)のLED光照射とでは相違はないと判断した。
【実施例】
【0027】
還元型アスコルビン酸含量の測定結果については、図4に示すように、(a)対照区、(b)355nm、(c)375nm、(d)405nmの順に高い値になり、(d)405nmで最も高くなっている。このことから、近紫外~可視光短波長側の光の作用により、対照区での温白色光の作用に比較して芽ネギにおける還元型アスコルビン酸の量が高められ、特に405nmにピークを有する光では特に高くなると言える。
【実施例】
【0028】
総フェノール物質含量の測定結果については、図5に示すように、(a)対照区に比較して(b)355nm、(c)375nmでやや高い値になり、(d)405nmで最も高い値になった。このように、(d)405nmのLED光の照射により芽ネギにおける還元型アスコルビン酸含量、総フェノール物質含量が同時に高められることがわかる。
【実施例】
【0029】
また、(b)~(d)のLEDのほかに、別途同様にして、470nm(青色)のLEDを配列した光源パネルを用いて還元型アスコルビン酸含量を測定する実験を行ったが、この場合に405nmのLED光照射に比して還元型アスコルビン酸含量はずっと低い値になった(図6)。
【実施例】
【0030】
本発明で行った(b)355nm、(c)375nm、(d)405nmの単波長LED、470nmの単波長LED、(a)温白色LEDを照射した場合の還元型アスコルビン酸含量を示すと、図6のようになる。図6に示される結果からすれば、還元型アスコルビン酸含量は可視光短波長側の405nmの場合に特に高い値となる。
【実施例】
【0031】
405nmの光は植物や扱う人への危険性はなく、還元型アスコルビン酸含量を高める上では、405nmのLED光を用いるのが好適であると言える。ここでは405nmにピ—クを有する単波長LEDを用いているが、ピーク幅を考えれば、波長範囲としては400~410nm程度の範囲と言えよう。
〔測定B〕
測定Aの場合と同様の条件で芽ネギの生育を行い、播種後17日以降の芽ネギについて(a)~(d)のLED光の照射による芽ネギにおける総過酸化物含量、酵素活性の変化について測定し検証する。
【実施例】
【0032】
測定Aと同様の条件で生育を行い収穫した芽ネギを用いて、LED照射0日(播種後17日)、LED照射1日(播種後18日)、LED照射3日(播種後20日)の芽ネギについて測定を行った。
【実施例】
【0033】
主に過酸化水素を含む総過酸化物含量の測定については、フェリチオシアネート法に従い、トリクロロ酢酸を用いて芽ネギ試料を磨砕、ろ過し、遠心分離して得られた上澄み分に試薬を加え、吸光度を測定し、それにより芽ネギ100g当たりの総過酸化物含量を算出した。LED光照射日数による総過酸化物含量の変化は図7に示すようになった。この結果では、総過酸化物含量はLED光照射1日で(c)375nm、(d)405nmの場合に高くなり、LED光照射3日では375nm、405nmで同様の値になっている。
【実施例】
【0034】
酵素活性の測定に際し、芽ネギ試料から酵素を抽出する。芽ネギ試料にポリビニルポリピロリドン、ジチオスレイトール、アスコルビン酸ナトリウムを含むリン酸緩衝液を加え、磨砕、ろ過し、遠心分離する。アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)の場合、遠心分離した後の上澄み分にソルビトールを加えてカラムに通し、ソルビトール、エチレンジアミン四酢酸、アスコルビン酸ナトリウムを含むリン酸緩衝液を流し、溶出した液を粗酵素として用いる。
【実施例】
【0035】
モノデヒドロアスコルビン酸レダクターゼ(MDHAR)、デヒドロアスコルビン酸レダクターゼ(DHAR)、グルタチオンレダクターゼ(GR)の場合、遠心分離した後の上澄み分を低温下でカラムに通し、上澄みを流した後にリン酸緩衝液を流し、溶出した液を粗酵素として用いる。
【実施例】
【0036】
アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)活性の測定に関しては、アマコ・アサダの方法をもとにアイソザムのアスコルビン酸に対する安定性を利用して、サイトゾル型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(サイトゾル型APX)とクロロプラスト型アスコルビン酸ペルオキシダーゼ(クロロプラスト型APX)を分別測定した。
【実施例】
【0037】
全APX活性の測定では、ブランク側のセルにリン酸緩衝液、アスコルビン酸ナトリウム、粗酵素、蒸留水を加え混和し、サンプル側のセルにリン酸緩衝液、アスコルビン酸ナトリウム、粗酵素、蒸留水を加え、さらに過酸化水素を加えて反応を開始し、分光光度計(Hitachi U-2000)を用いてアスコルビン酸の減少による吸光度の減少を測定した。
【実施例】
【0038】
サイトゾル型APX活性の測定では、ブランク側のセルにリン酸緩衝液、粗酵素、蒸留水を加えてよく混和し、サンプル側のセルにリン酸緩衝液、粗酵素、蒸留水を加え、さらにアスコルビン酸オキシダーゼを添加して、分光光度計(Hitachi U-2000)を用いて吸光度の減少を測定した。吸光度減少がなくなった後放置してクロロプラスト型APXを完全に失活させ、サンプル側のセルにアスコルビン酸ナトリウム、過酸化水素を加えてサイトゾル型APXの反応を開始し、波長を切り換えてアスコルビン酸の減少による吸光度の減少を測定した(A)。これとは別に、アスコルビン酸オキシダーゼによるアスコルビン酸の酸化速度を測定した(B)。Aの値からBの値を差し引いたものをサイトゾル型APXによるアスコルビン酸酸化の吸光度減少とした。
【実施例】
【0039】
クロロプラスト型APX活性の値は、全APX活性からサイトゾル型APX活性を差し引いた値として求められる。(a)、(b)、(c)、(d)の各LEDで3日間照射した時のクロロプラスト型APX活性についての結果は図8に示すようになり、サイトゾル型APXについての結果は図9に示すようになった。
【実施例】
【0040】
図8、図9に示される結果から、クロロプラスト型APXについてはLED光照射3日において405nmの場合に活性が最大になり、375nmではやや増大している。クロロプラスト型APXはクロロプラストで発生する過酸化水素などの活性酸素種からクロロプラストを守る役割をもつ活性酸素種消去機構として作用すると考えられる。
【実施例】
【0041】
測定Bの結果において、総過酸化物が増加した後にAPXの活性が高まったことから、過酸化水素が特にクロロプラストにおいて光合成の作用により生成され、その後過酸化水素を消去するためAPX活性が増大するものと考えられる。
【実施例】
【0042】
MDHAR活性、DHAR活性についても測定を行っているが、APXのような傾向はみられず、照射波長により大きな変化は生じていない。GR活性については、LED光の照射3日間でやや増加を示し、405nmで活性が最大になるという結果になっている。
【実施例】
【0043】
植物への光照射により、植物生体内で有害な過酸化水素が生成される一方、植物生体内に還元型アスコルビン酸、総フェノール物質が増大して、過酸化水素を消去する。これはアスコルビン酸-グルタチオンサイクルと称する過程であり、図10に示されるようになる。
【実施例】
【0044】
アスコルビン酸-グルタチオンサイクルにおいて作用する抗酸化酵素にはアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)、モノデヒドロアスコルビン酸レダクターゼ(MDHAR)、デヒドロアスコルビン酸レダクターゼ(DHAR)及びグルタチオンレダクターゼ(GR)があり、APXはアスコルビン酸を電子供与体として過酸化水素を消去する作用をもつ。アスコルビン酸は酸化されてモノデヒドロアスコルビン酸に変わるが、これは不安定であって一部が酸化型アスコルビン酸に、他が非酵素的に還元されアスコルビン酸になる。
【実施例】
【0045】
アスコルビン酸はまたAPX以外にアスコルビン酸酸化酵素の作用によりあるいは非酵素的にモノデヒドロアスコルビン酸に変わるが、モノデヒドロアスコルビン酸と酸化型アスコルビン酸はそれぞれMDHARとDHARによって還元されて再びアスコルビン酸に戻る。その時DHARは還元型グルタチオン(GSH)によって酸化型アスコルビン酸を還元し、また、その際に還元型グルタチオンは酸化されて酸化型グルタチオン(GSSG)になるが、これをGRが還元して還元型グルタチオンになる。このようなアスコルビン酸-グルタチオンサイクルの過程において、光照射により生成した植物体に有害な過酸化水素の消去がなされる。
【実施例】
【0046】
前述したように、測定Aの結果から、405nmのLED光の照射により芽ネギにおける還元型アスコルビン酸含量、総フェノール物質含量が時に高められるものである。また、測定Bの結果から、405nmのLED光の照射により芽ネギにおけるAPX活性が特に高められることがわかる。このことから、このLED光の照射により過酸化水素の生成が促され、消去サイクルの活性化が起こり、その結果還元型アスコルビン酸含量が増大すると考えられる。
【実施例】
【0047】
このように、植物生育時暗期間に可視光短波長側のLED光を所定期間照射することにより植物中に還元型アスコルビン酸及び/または総フェノール物質の含量が高められるものである。可視光短波長側のLED光として405nmの例で説明したが、ピーク幅を考えると波長域としては400~410nmの範囲で有効であると言える。
【実施例】
【0048】
植物としては、芽ネギの例で説明したが、ユリ科植物のタマネギ、シャロット等のスプラウトについても有効であると考えられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
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【図10】
9