TOP > 国内特許検索 > 二重回転子構造磁気支持モータ及び該二重回転子構造磁気支持モータを搭載したターンテーブル > 明細書

明細書 :二重回転子構造磁気支持モータ及び該二重回転子構造磁気支持モータを搭載したターンテーブル

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5499549号 (P5499549)
公開番号 特開2011-024385 (P2011-024385A)
登録日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
公開日 平成23年2月3日(2011.2.3)
発明の名称または考案の名称 二重回転子構造磁気支持モータ及び該二重回転子構造磁気支持モータを搭載したターンテーブル
国際特許分類 H02K  21/14        (2006.01)
H02K   7/09        (2006.01)
FI H02K 21/14 M
H02K 7/09
請求項の数または発明の数 4
全頁数 16
出願番号 特願2009-169456 (P2009-169456)
出願日 平成21年7月17日(2009.7.17)
審査請求日 平成24年7月13日(2012.7.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】803000115
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
発明者または考案者 【氏名】大島 政英
【氏名】河野 達也
個別代理人の代理人 【識別番号】100105201、【弁理士】、【氏名又は名称】椎名 正利
審査官 【審査官】森本 哲也
参考文献・文献 特開2003-339136(JP,A)
特開2007-306785(JP,A)
特開昭54-071604(JP,A)
特開昭54-007904(JP,A)
調査した分野 H02K 21/14
H02K 7/09
特許請求の範囲 【請求項1】
固定子の外周側(若しくは内周側)に配設された複数の支持巻線を有し、径方向の磁気支持磁束を生成する磁気支持力発生手段と、
該磁気支持力発生手段により磁気支持される第1の回転子と、
前記支持巻線と同じ平面内で、かつ該支持巻線の前記固定子を隔てた内周側(若しくは外周側)に配設された電動機巻線を有し、径方向に電動機磁束を生成する電動機トルク発生手段と、
該電動機トルク発生手段により回転駆動される第2の回転子とを備え
該第2の回転子又は前記第1の回転子のいずれかは前記固定子の外側に配設されたことを特徴とする二重回転子構造磁気支持モータ。
【請求項2】
前記第1の回転子には永久磁石が配設されず、前記磁気支持力発生手段により生じた磁力により吸引されることを特徴とする請求項1記載の二重回転子構造磁気支持モータ。
【請求項3】
前記磁気支持力発生手段は、一方向を構成する複数の支持巻線の内、中央に位置する巻線のターン数が外側に位置する巻線のターン数より大きくされたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の二重回転子構造磁気支持モータ。
【請求項4】
請求項1~3に記載の二重回転子構造磁気支持モータを搭載したターンテーブル。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は二重回転子構造磁気支持モータ及び該二重回転子構造磁気支持モータを搭載したターンテーブルに係わり、特に支持力の低振動化を図った二重回転子構造磁気支持モータ及び該二重回転子構造磁気支持モータを搭載したターンテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ブラシレスDCモータは産業、情報機器類の数多くのドライブ装置として用いられている。ブラシレスDCモータとは、DCモータにおけるブラシと整流子を、永久磁石を用いた電気的な機構に置き換え、接触を無くしたものである。しかし、軸受部分が存在するため完全な非接触ではない。そのため、軸受のメンテナンスフリー、長寿命、高剛性が要求されている。
【0003】
そこで、かかる要求を満たすためベアリングレスドライブ技術を導入したベアリングレスブラシレスDCモータが開発されている。
ベアリングレスドライブとは、従来の機械的接触面をもつベアリングの代わりに磁気の力で回転軸を支持する磁気軸受を用い、さらに電動機の機構と一体化したドライブ装置である。
【0004】
ベアリングレスブラシレスDCモータは、例えば特許文献1に開示されている。図15に一般的なベアリングレスブラシレスDCモータの構成図を示す。
ベアリングレスブラシレスDCモータ100の回転子10は、鉄心3に対しその内側に永久磁石5が貼り付けて構成されている。
【0005】
図15中のN、Sは鉄心3に面する側の永久磁石5の極性を表している。固定子鉄心7の固定子歯9に巻かれた巻線の内、外側のU、V、Wで表記された巻線は三相電動機巻線11である。また、この三相電動機巻線11の内側には磁気支持巻線13が捲回されている。そして、このように構成されたベアリングレスブラシレスDCモータは機械的軸受がなく上記ブラシレスDCモータの要求を満たす可能性がある。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2007-306785号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、アプリケーションにより低トルクリプル・低支持力振動という要求がある場合、1つの回転子で電動機動作と磁気支持動作を行うベアリングレスブラシレスDCモータはある程度以下の低リプルを望めなかった。
【0008】
例えば小さいベアリングレスブラシレスDCモータを用いて大きなトルクを得ようとする場合、ギャップを狭くする必要があるが、ギャップを小さくすると逆にリプルが増大してしまうおそれがあった。一方、リプルを抑えるためにギャップを大きくとると所望のトルクが得られなくなるおそれがあった。
【0009】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、支持力の低振動化を図った二重回転子構造磁気支持モータ及び該二重回転子構造磁気支持モータを搭載したターンテーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このため本発明(請求項1)の二重回転子構造磁気支持モータは、固定子の外周側(若しくは内周側)に配設された複数の支持巻線を有し、径方向の磁気支持磁束を生成する磁気支持力発生手段と、該磁気支持力発生手段により磁気支持される第1の回転子と、前記支持巻線と同じ平面内で、かつ該支持巻線の前記固定子を隔てた内周側(若しくは外周側)に配設された電動機巻線を有し、径方向に電動機磁束を生成する電動機トルク発生手段と、該電動機トルク発生手段により回転駆動される第2の回転子とを備え、該第2の回転子又は前記第1の回転子のいずれかは前記固定子の外側に配設されたことを特徴とする。
【0011】
二重回転子構造磁気支持モータは電動機機構と磁気支持機構が物理的に分かれているため、電動機側に対して低トルクリプル化を、磁気支持側に対して低支持力振動化をそれぞれ講じることができる。
また、本発明(請求項2)の二重回転子構造磁気支持モータは、前記第1の回転子には永久磁石が配設されず、前記磁気支持力発生手段により生じた磁力により吸引されることを特徴とする。
【0012】
第1の回転子に永久磁石が配設されていると、永久磁石の起磁力分布にむらがあるため、均一にできず、また、ギャップに空間高調波が発生して、支持力の脈動を生じてしまう。そこで、本発明の二重回転子構造磁気支持モータでは、磁気支持側の第1の回転子に永久磁石を使用しないことで支持力の脈動を軽減する。
【0013】
更に、本発明(請求項3)の二重回転子構造磁気支持モータは、前記磁気支持力発生手段は、一方向を構成する複数の支持巻線の内、中央に位置する巻線のターン数が外側に位置する巻線のターン数より大きくされたことを特徴とする。
【0014】
一方向を構成する複数の支持巻線は3本、4本、5本等であってもよい。3本の場合には真ん中の支持巻線のターン数を大きくする。4本の場合には、内側2本の支持巻線のターン数を大きくする。5本の場合には、真ん中の1本についてターン数を大きくしてもよいし、その両隣の支持巻線についてもターン数を大きくするようにしてもよい。
【0015】
ターン数を大きくした支持巻線は起磁力が大きいために、隣接の他方向を構成する支持巻線から生ずる漏れ磁束を減少させる構造にできる。このため、半径方向の非干渉化を実現できる。
一方向を構成する複数の支持巻線の内、外側の支持巻線のターン数は、真ん中若しくは内側の支持巻線のターン数に対し、1.5倍~2倍程度の比を有すれば十分である。
【0016】
更に、本発明(請求項4)のターンテーブルは、請求項1~3に記載の二重回転子構造磁気支持モータを搭載したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように本発明によれば、固定子の内周側と外周側とに電動機機構と磁気支持機構が物理的に分かれているため、電動機側に対して低トルクリプル化を、磁気支持側に対して低支持力振動化をそれぞれ講じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明である二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータの実施形態の構成図
【図2】磁気支持力の発生原理図
【図3】電動機電流の波形の一例
【図4】本実施形態の二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータの制御システムのブロック構成図
【図5】干渉原因を示す図(巻線パターン1)
【図6】干渉原因を示す図(巻線パターン2)
【図7】干渉補償後の磁気支持力の発生を示す図(巻線パターン1)
【図8】干渉補償後の磁気支持力の発生を示す図(巻線パターン2)
【図9】解析モデルの寸法を示す図
【図10】歯1本構造の磁束密度分布
【図11】歯2本構造の磁束密度分布
【図12】歯3本構造の磁束密度分布
【図13】ベアリングレスブラシレスDCモータの寸法を示す図
【図14】二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータをターンテーブルに適用した例
【図15】ベアリングレスブラシレスDCモータの構成図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明である二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータの実施形態の構成図を図1に示す。二重回転子構造とは図1のように固定子21を挟み内側に内側回転子23、外側に外側回転子25の2つの回転子を持つ構造である。

【0020】
二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200を構成する2つの回転子のうち内側回転子23は鉄心27の表面に永久磁石29が周状に貼り付けられ、8極構造である。固定子21の回転軸側は24スロット構造で、歯31に巻かれた巻線U,V,Wは電動機巻線33であり三相対称正弦波電流を流す。

【0021】
永久磁石界磁磁束と電動機巻線U,V,Wを励磁して発生する電動機磁束によってトルクを発生させる役割を担っている。また巻線は電流を正方向に流したときに45°毎に磁束が逆方向に発生するように巻かれている。

【0022】
なお、本実施形態では、電動機側での低トルクリプル化を図るため、永久磁石29と電動機巻線U,V,W間には図9で後述するように相応のギャップを設定している。

【0023】
一方、外側回転子25は鉄心のみで構成され、固定子21の外側は12スロット構造であり、歯35に巻かれた巻線A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1,C2,C3,D1,D2,D3は磁気支持巻線37であり、巻線A1,A2,A3は直列接続されている。同様に巻線B1,B2,B3と巻線C1,C2,C3と巻線D1,D2,D3はそれぞれ直列接続されている。

【0024】
各磁気支持巻線37には直流電流を流し、発生する磁気支持磁束によって外側回転子25を吸引し、磁気支持力を発生させる役割を担っている。巻線は電流を正方向に流したときに30°毎に磁束が逆方向に発生するように巻かれている。巻線A1,A2,A3はx軸負方向に電磁力を、また巻線C1,C2,C3はx軸正方向の力を、巻線B1,B2,B3はy軸負方向の力を、巻線D1,D2,D3はy軸正方向の力をそれぞれ発生する。

【0025】
なお、本実施形態では磁気支持巻線37を固定子21の外側に配設し、電動機巻線U,V,Wを固定子21の内側に配設するとして説明したが、これとは逆に固定子21の外側に電動機巻線U,V,Wを配設し、固定子21の内側に磁気支持巻線37を配設するようにしてもよい。

【0026】
次に、磁気支持力の発生原理について説明する。
図2に磁気支持力の発生原理図を示す。磁気支持力は磁気支持巻線A1,A2,A3と巻線B1,B2,B3と巻線C1,C2,C3と巻線D1,D2,D3の起磁力により外側回転子25を吸引することによって発生させる。ここでは例としてx軸正方向へ磁気支持力を発生させる場合について説明する。

【0027】
x軸正方向へ磁気支持力を発生させる場合、磁気支持巻線C1,C2,C3を励磁する。巻線C1,C2,C3に正方向の励磁電流を流すことにより磁束ψC1,ψC2,ψC3が図示の方向にそれぞれ発生し、外側回転子25を吸引する電磁力FC1,FC2,FC3が発生する。発生した電磁力FC1,FC2,FC3は磁束ψC1,ψC2,ψC3の向きに関係なく全て外側回転子25が固定子21に吸引する方向へ発生する。

【0028】
よって電磁力FC1は-30°方向へ、FC2は0°方向へ、FC3は+30°方向へそれぞれ発生し、これらの合力によってx軸正方向への磁気支持力Fxを発生する。

【0029】
ここでx軸負方向へ磁気支持力を発生させる場合、磁気支持巻線A1,A2,A3を励磁することにより上述した原理と同様に磁気支持力を発生する。また、y軸正方向へ磁気支持力を発生させるとき磁気支持巻線D1,D2,D3を励磁し、y軸負方向へ磁気支持力を発生させるとき磁気支持巻線B1,B2,B3を励磁することにより磁気支持力を発生する。x軸、y軸方向への磁気支持力をベクトル的に合成し任意の方向への磁気支持力を発生させる。

【0030】
図15に示すベアリングレスブラシレスDCモータ100は回転子10の永久磁石5の界磁磁束と磁気支持磁束の強めあい弱めあいによって磁気支持力を発生させている。その磁気支持力を発生する際、固定子7の巻線起磁力分布やスロット開口部、回転子10の永久磁石起磁力分布によってギャップに空間高調波が発生して、支持力の脈動を生じてしまう。

【0031】
そこで、本実施形態の二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200では、磁気支持側の外側回転子25に永久磁石を使用しないことで上述した原因で発生する支持力の脈動を軽減している。

【0032】
次に、本実施形態である二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200の制御方法について説明する。

【0033】
本実施形態の二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200のトルク発生の原理は従来の永久磁石同期モータと同様であり、電動機巻線33を励磁して発生する電動機磁束と、内側回転子23に貼り付けられた永久磁石29の界磁磁束の相互作用によってトルクを発生する。

【0034】
電動機電流の周波数は8極モータなので機械角周波数の4倍になり、電動機電流はU,V,Wの三相対称正弦波電流で制御される。図3に電動機電流の波形の一例を示す。ここで、電流の定格値は巻線の直径をφ0.6mmとし、電流密度を8.5A/mm2として2.4Aとする。

【0035】
磁気支持力の発生原理は上述したように、外側回転子25を固定子21の外側12スロットの歯35に巻かれた巻線A1,A2,A3,B1,B2,B3,C1,C2,C3,D1,D2,D3の起磁力によって吸引することで発生する。

【0036】
磁気支持力は外側回転子25が偏心したとき中心に戻そうとする方向に発生させたいので、外側回転子25のx軸、y軸方向の変位に対し逆方向の磁気支持力を発生する巻線を選択し、磁気支持電流を指令する。また1巻線で1方向に力の発生を担っているので磁気支持電流は直流で制御する。

【0037】
図4に本実施形態の二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータの制御システムのブロック構成図を示す。制御システムは電動機制御系と磁気支持制御系から成る。以下、それぞれの制御系における制御信号について説明する。
電動機制御系において電流制御器51では、エンコーダ53により検出してきた回転角度θと電流の指令値im*から、U,V,Wの各相の正弦波電流iU,iV,iWを生成し、電動機制御を行う。

【0038】
磁気支持制御系おける制御信号の流れは以下の通りである。はじめにギャップセンサ55、56により外側回転子25のx軸,y軸上の位置(x,y)を検出し,誤差器57、58で位置の指令値(x*,y*)との誤差(Δx,Δy)を求め、PID制御59、60により位置の誤差(Δx,Δy)を増幅して電流指令値ix*,iy*を決定する。

【0039】
磁気支持力は変位、すなわち位置の誤差に対して逆方向へ発生させるため、誤差の値が負ならば電流指令値ix*,iy*は正、また、誤差の値が正ならばix*,iy*は負となるようにする。

【0040】
ここで決定した電流指令値ix*,iy*から巻線選択部61、62では、次のように磁気支持巻線ごとの電流指令値を生成する。すなわちΔxが正ならば磁気支持巻線A1,A2,A3の電流指令値iA*をiA*=|ix*|として、巻線C1,C2,C3の電流指令値iC*は0とする。一方、Δxが負ならば磁気支持巻線C1,C2,C3の電流指令値iC*をiC*=|ix*|として、巻線A1,A2,A3の電流指令値iA*は0とする。

【0041】
同様にΔyが正ならば磁気支持巻線B1,B2,B3の電流指令値iB*をiB*=|iy*|として、巻線D1,D2,D3の電流指令値iD*は0とする。一方、Δyが負ならば磁気支持巻線D1,D2,D3の電流指令値iD*をiD*=|iy*|として、巻線B1,B2,B3の電流指令値iB*は0とする。

【0042】
このように決定した磁気支持電流の指令値iA*,iB*,iC*,iD*と磁気支持電流の検出値iA,iB,iC,iDを比較し電流制御器63、64、65、66において電流追従制御を行う。

【0043】
次に、磁気支持力の干渉現象について説明する。外側回転子25を軸支持するために磁気支持力はあらゆる半径方向へ発生させる必要がある。しかし、x軸方向のみ、またはy軸方向のみに磁気支持力を発生する場合に比べて、x軸方向とy軸方向に同時に磁気支持力を発生、すなわち磁気支持力にx,y成分を含む場合は磁気支持力が増減してしまうことがある。この現象を磁気支持力の干渉と呼ぶ。

【0044】
二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200における磁気支持力の干渉の原因は、磁気支持巻線37の巻く方向によって次の2つが考えられる。まず、図5のような方向に巻線を巻いた場合(巻線パターン1)である。45°方向へ磁気支持するとき、x軸正方向とy軸正方向に磁気支持力をそれぞれ発生するため、磁気支持巻線C1,C2,C3と巻線D1,D2,D3を同時に励磁する。

【0045】
磁気支持巻線C1,C2,C3を励磁することによってx軸正方向への磁気支持力Fxを発生し、巻線D1,D2,D3を励磁することによってy軸正方向への磁気支持力Fyを発生する。さらにx軸方向とy軸方向への磁気支持力をベクトル的に合成し、45°方向へ支持力を発生している。ここで、45°方向へ発生する磁気支持力のうち、図5には磁束ψC1,ψC2,ψC3によって発生する力FC1,FC2,FC3のみを記した。

【0046】
図5のような方向に巻線を巻いた場合、磁気支持巻線C1,C2,C3と巻線D1,D2,D3を同時に励磁すると、図のように巻線C3が巻かれた歯と巻線D1が巻かれた歯を通る漏れ磁束が発生する。

【0047】
この漏れ磁束により磁束ψC3が増加し、巻線C3が巻かれた歯の磁束密度が高くなり、電磁力FC3が増加する。その結果、磁束ψC1,ψC2,ψC3によって発生する電磁力FC1,FC2,FC3の合力Fxはx軸正方向へ磁気支持力を発生するように指令しているのにも関わらず、僅かにy軸方向成分が発生してしまう。

【0048】
次に図6のような方向に巻線を巻いた場合(巻線パターン2)である。先程と同様に45°方向へ磁気支持するとき、磁気支持巻線C1,C2,C3と巻線D1,D2,D3を同時に励磁する。ここで、45°方向へ発生する磁気支持力のうち、図5と同様に図6には磁束ψC1,ψC2,ψC3によって発生する力FC1,FC2,FC3のみを記した。

【0049】
このとき巻線C3による磁束ψC3と巻線D1による磁束ψD1が同じ方向に発生するため互いに反発し図5のような漏れ磁束は発生しないが、図6のように巻線C2が巻かれた歯と巻線C3が巻かれた歯を通る磁路と、巻線D1が巻かれた歯と巻線D2が巻かれた歯を通る磁路がそれぞれ形成される。

【0050】
これらの磁路により磁束ψC2,ψC3が増加し、巻線C2が巻かれた歯と巻線C3が巻かれた歯の磁束密度が高くなり、電磁力FC2,FC3が増加する。その結果、磁束ψC1,ψC2,ψC3によって発生する電磁力FC1,FC2,FC3の合力Fxはx軸正方向へ磁気支持力を発生するように指令しているのにも関わらず、僅かにy軸方向成分が発生してしまう。

【0051】
ここに、どの程度干渉しているかを評価するため、干渉の割合を数1で定義した。

【0052】
【数1】
JP0005499549B2_000002t.gif

【0053】
ここに、Fxはx軸方向磁気支持力であり、Iyはy軸方向磁気支持電流である。数1において、分母のFx(Iy=0)はy軸方向へ力を発生する巻線B1,B2,B3と巻線D1,D2,D3の電流が0の場合のx軸方向の磁気支持力であり、分子のFx(Iy=定格)はy軸方向へ力を発生する巻線B1,B2,B3と巻線D1,D2,D3に定格電流が流れている場合のx軸方向の磁気支持力である。

【0054】
干渉が生じたとき、前述した原因でx軸方向の磁気支持力Fxに差が発生するため、数1において分母と分子に差が発生し、干渉の割合は100%から離れた値となる。よって干渉の割合は100%に近いほど干渉が少ないと言える。
このようにx,y方向の磁気支持力に干渉が生じると回転子の振れ回りは大きく不安定になる。したがって、数1で定義した干渉の割合が100%に近いモータ設計が必要である。

【0055】
次に、磁気支持巻線と支持力の非干渉化について説明する。
即ち、磁気支持巻線の巻数の変更による磁気支持力の干渉補償を提案し、電磁界解析によって非干渉化に最適な巻数を明らかにする。

【0056】
磁気支持力の干渉の発生原因は上述したように、磁気支持巻線を巻く方向によって図5の巻線パターン1と、図6の巻線パターン2のように2つの場合が考えられる。いずれの場合も、巻線C1,C2,C3と巻線D1,D2,D3を同時に励磁したとき、となり合う巻線C3とD1によって発生するそれぞれの磁束が強めあう、もしくは弱めあうことによって干渉が発生すると考えられる。

【0057】
よって干渉が生じないためには、x軸正方向へ磁気支持力を発生する巻線C1,C2,C3がそれぞれ巻かれた歯を通る磁路と、y軸正方向へ磁気支持力を発生する巻線D1,D2,D3がそれぞれ巻かれた歯を通る磁路が、独立して形成されるような設計が必要である。

【0058】
そこで巻数の変更による磁気支持力の干渉補償を提案する。図7に干渉補償後の磁気支持力の発生をそれぞれ示す。巻数の変更は以下のように行う。

【0059】
x軸正方向へ磁気支持力を発生する3つ巻線C1,C2,C3のうち、x軸方向に起磁力を発生する巻線C2の巻数に対して、その両端の巻線C1,C3の巻数を少なくする。また、y軸正方向に起磁力を発生する巻線D1,D2,D3についても同様に巻線D2に対して両端の巻線D1,D3の巻数を少なくする。

【0060】
図5の巻数が全て等しい場合は巻線C3により発生した磁束ψC3が巻線D1が巻かれた歯にも通り、漏れ磁束が発生していた。しかし、図7のように巻数を変更し、減少するとψC3は巻線C2の起磁力が巻線D1の起磁力より大きいため、巻線C2の起磁力の磁極に引かれ、巻線D1の歯の方にはいかず、巻線C2の歯を通る。

【0061】
ここで支持力のx軸方向成分に着目すると、図5では漏れ磁束よりFC3>FC1となり、合成した力Fxにはy軸方向成分を含んでしまう。しかし、図7ではFC3=FC1になり、合成した力Fxは正しくx軸正方向に発生する。すなわち、図5に示した磁路の漏れ磁束が発生しないためx,y軸方向の支持力の非干渉化が実現できると思われる。

【0062】
一方、図6の巻数が全て等しい場合は巻線C3により発生した磁束ψC3と巻線D1により発生した磁束ψD1が反発して1半径方向へ磁気支持力を発生する磁束密度分布がアンバランスになっていた。

【0063】
しかし、図8のように巻数を変更し、減少すると巻線C3の起磁力と巻線D1の起磁力が減少するためψC3とψD1は反発しにくくなる。ここで支持力のx軸方向成分に着目すると、図6では磁束の反発によりFC3>FC1となり、合成した力Fxにはy軸方向成分を含んでしまう。

【0064】
しかし、図8ではFC3=FC1になり、合成した力Fxは正しくx軸正方向に発生する。すなわち、磁束密度分布が均一になることによりx,y軸方向の支持力の非干渉化が実現できると思われる。

【0065】
以上のように巻線パターン1,2両者において、巻線を変更し、減少すると磁気支持力の非干渉化が見込まれる。同様の干渉補償をその他の巻線A1,A2,A3、巻線B1,B2,B3についても同様に巻線を変更して、直交二軸の半径方向の非干渉化が実現できると思われる。

【0066】
次に、一方向を構成する磁気支持巻線が巻かれた歯の本数とトルク、磁気支持力の関係について考察した。

【0067】
磁気支持巻線が巻かれた歯の本数を変更した3モデル、このうち歯2本と歯3本モデルではそれぞれ巻線の巻き方を変えて2パターンずつ、合計5モデルについて電磁界解析を行った。

【0068】
図9には、本実施形態である一方向を構成する磁気支持巻線が歯の3本に対し巻かれた歯3本モデル(巻線A1,A2,A3、巻線B1,B2,B3、巻線C1,C2,C3、巻線D1,D2,D3のように一方向を構成する磁気支持巻線がそれぞれ3本)の寸法を示す。また表1、表2にこの歯3本モデルの材料と巻線の巻数をそれぞれ示す。

【0069】
【表1】
JP0005499549B2_000003t.gif

【0070】
【表2】
JP0005499549B2_000004t.gif

【0071】
表2に示すように、一方向を構成する巻線巻線(例えばA1,A2,A3)の中央に位置する巻線(A2)についてはそのターン数を外側に配置される巻線(A1,A3)のほぼ倍に設定をしている。しかしながら、本設定は一例を示すもので、外側の巻線のターン数に比べ、1.5倍~2倍であればよい。

【0072】
表3に5モデルのトルク、トルクリプル、磁気支持力、支持力振動の解析結果と干渉の割合をまとめて記した。

【0073】
【表3】
JP0005499549B2_000005t.gif

【0074】
表3よりまずトルクは5モデル全てでほぼ同じ値であり、磁気支持力は歯1本モデルが最も大きく、歯3本モデルが最も小さい。なお1半径方向当たりの支持巻線起磁力は5モデル全て同じである。

【0075】
しかし、歯1本モデルはx軸正方向に磁気支持力を発生するとき、x軸方向へのみ力を発生するのに対し、歯2本モデルは2方向への力を合成し、歯3本モデルは図7、図8に示したように、3方向への力を合成してx軸方向への力を発生するため、支持力が小さくなったと考えられる。

【0076】
また、トルクリプルと支持力振動ともに歯3本モデルが最も小さい。これは図10、図11にそれぞれ示した歯1本モデルおよび歯2本モデルの磁束密度分布より、漏れ磁束が発生しているのに対し、図12に示した歯3本モデルの磁束密度分布より、歯3本モデルは固定子鉄心や固定子ヨークに磁気飽和が生じにくいため、トルクリプルと支持力振動が小さいと考えられる。また、歯3本モデルは漏れ磁束が発生しないので干渉の割合も最も小さい。

【0077】
最後に最大磁束密度は歯1本モデルが最も大きく、歯3本モデルが最も小さい。1半径方向当たりの起磁力は5モデル全て同じであるが、1本の歯に巻かれた巻線の巻数は歯1本モデルが最も多く、歯3本モデルが最も少ないため、最大磁束密度に違いが表れたと考えられる。

【0078】
以上の電磁界解析の結果から歯3本モデル、すなわち本実施形態の非干渉化を実現したモデルが歯1本、歯2本モデルに比べてトルクリプル・支持力振動が小さく、かつ干渉が少ないと言える。

【0079】
次に、電磁界解析によってアウターロータ構造ベアリングレスブラシレスDCモータ100のトルク、トルクリプル、磁気支持力、支持力振動、最大磁束密度を求め、本実施形態の二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200との比較を行う。
図13にアウターロータ構造ベアリングレスブラシレスDCモータ100の巻線配置と寸法を、表4に巻線の巻数をそれぞれ示す。

【0080】
【表4】
JP0005499549B2_000006t.gif

【0081】
寸法や巻数はトルクリプルや支持力振動を比較するため、二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200と同じトルク、磁気支持力が発生するように決定した。また、各部の材料は表1と同様である。電動機巻線11には二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200と同様に三相対称正弦波電流を流し、磁気支持巻線13には正弦波の磁気支持電流を流す。磁気支持力はx軸正方向へ指令して解析を行う。

【0082】
以降に電磁界解析の結果を示す。表5にアウターロータ構造ベアリングレスブラシレスDCモータと二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータの解析結果を示す。

【0083】
【表5】
JP0005499549B2_000007t.gif

【0084】
二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200の解析結果は、前述した非干渉化を実現したモデルの解析結果である。表5より、トルクおよび磁気支持力は両者でほぼ同じ値であることが分かる。次にトルクリプルは二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200が0.46%であるのに対し、アウターロータ構造ベアリングレスブラシレスDCモータ100は17.27%と大きな値であることが分かる。

【0085】
これは二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200の内側のギャップが8.5mmであるのに対し、アウターロータ構造ベアリングレスブラシレスDCモータ100のギャップが2mmと狭くなっているため、トルクリプルに違いが表れたと考えられる。

【0086】
また、支持力振動は二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200が0.12%であるのに対し、アウターロータ構造ベアリングレスブラシレスDCモータ100は3.14%と大きくなっている。

【0087】
ベアリングレスブラシレスDCモータ100は磁束の強めあい弱めあいによって磁気支持力を発生させている。その磁気支持力を発生する際、固定子9の巻線起磁力分布やスロット開口部、回転子10の永久磁石起磁力分布によってギャップに空間高調波が発生して、支持力の脈動を生じてしまう。

【0088】
以上の結果から二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200はアウターロータ構造ベアリングレスブラシレスDCモータ100と比べて低トルクリプル・低支持力振動という点で優れていることが分かる。

【0089】
次に、本実施形態である二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ200をターンテーブルに適用した例を示す。図14に全体の構成図を示す。図14において、ターンテーブル300は、直結方式のターンテーブルなのでモータ回転軸101とプラッター103を直結している。

【0090】
プラッターとはレコード盤105を乗せて回転する部分である。固定子21の外側の歯35に巻かれた磁気支持巻線37は外側回転子25を吸引することで磁気支持力を発生する。

【0091】
磁気支持力の発生はギャップセンサ55、56により回転子25の位置を検出し、中心からのずれに比例した力を発生して中心に軸支持する。なお、ギャップセンサ55、56はx,y軸のそれぞれの方向に取り付けられ、磁気支持力は2軸で制御される。

【0092】
このとき磁気支持力はx,y軸方向、すなわちラジアル方向のみに発生するため、z軸方向、すなわちアキシャル方向の軸支持は軸受により機械的に行う。軸受にはピポット軸受107を用いているが、アキシャル方向の磁気軸受が配設されるようにされてもよい。
【符号の説明】
【0093】
21 固定子
23 内側回転子
25 外側回転子
27 鉄心
29 永久磁石
31、35 歯
33 電動機巻線
37 磁気支持巻線
51 電流制御器
53 エンコーダ
55、56 ギャップセンサ
57、58 誤差器
59、60 PID制御
61、62 巻線選択部
63、64、65、66 電流制御器
101 モータ回転軸
103 プラッター
105 レコード盤
107 ピポット軸受
200 二重回転子構造磁気支持ブラシレスDCモータ
300 ターンテーブル
A1、A2、A3、B1、B2、B3、C1、C2、C3、D1、D2、D3 磁気支持巻線
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12
【図14】
13
【図15】
14