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明細書 :排ガスの処理方法及び処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5499345号 (P5499345)
公開番号 特開2011-074867 (P2011-074867A)
登録日 平成26年3月20日(2014.3.20)
発行日 平成26年5月21日(2014.5.21)
公開日 平成23年4月14日(2011.4.14)
発明の名称または考案の名称 排ガスの処理方法及び処理装置
国際特許分類 F01N   3/023       (2006.01)
F01N   3/025       (2006.01)
F01N   3/029       (2006.01)
FI F01N 3/02 321B
請求項の数または発明の数 8
全頁数 14
出願番号 特願2009-228612 (P2009-228612)
出願日 平成21年9月30日(2009.9.30)
審査請求日 平成24年9月24日(2012.9.24)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】390033042
【氏名又は名称】ダイハツディーゼル株式会社
【識別番号】505127721
【氏名又は名称】公立大学法人大阪府立大学
発明者または考案者 【氏名】吉田 恵一郎
【氏名】花本 健一
【氏名】道本 修司
【氏名】大久保 雅章
【氏名】黒木 智之
【氏名】山本 俊昭
個別代理人の代理人 【識別番号】110000040、【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
審査官 【審査官】稲村 正義
参考文献・文献 国際公開第2007/046519(WO,A1)
特開2009-281154(JP,A)
特開2010-174858(JP,A)
特開2006-266142(JP,A)
調査した分野 F01N 3/00-3/38
特許請求の範囲 【請求項1】
排ガス中の粒子状物質を、前記排ガスの流路上に設置されたフィルタで捕捉する工程と、
前記排ガスの流路上に、前記フィルタに対して上流側に配置された複数のオゾン注入ポートからオゾンを放出し、前記フィルタに捕捉された前記粒子状物質を前記オゾンによって燃焼させて前記フィルタを再生する工程と
を備えた排ガスの処理方法であって、
前記複数のオゾン注入ポートは、互いに直交する2直線上に配置されており、
前記排ガスの上流側から前記フィルタを見たときオゾン濃度分布が不均一になるように前記オゾン注入ポートから前記排ガス中にオゾンを放出し、且つ、前記複数のオゾン注入ポートのうちオゾンを放出するオゾン注入ポートを経時的に変えることにより、前記オゾン濃度分布を経時的に変化させることを特徴とする排ガスの処理方法。
【請求項2】
前記排ガスの上流側から前記フィルタを見たとき、オゾンが高濃度に分布する領域で前記フィルタを選択的に再生する請求項1に記載の排ガスの処理方法。
【請求項3】
前記フィルタの直径をD、前記オゾン注入ポートと前記フィルタとの距離Lとしたとき、L/D≦0.37を満足する請求項1又は2に記載の排ガスの処理方法。
【請求項4】
前記オゾン注入ポートが設置された地点での前記排ガスの温度が220℃以上である請求項1~のいずれかに記載の排ガスの処理方法。
【請求項5】
排ガスの流路上に設置され、前記排ガス中の粒子状物質を捕捉するフィルタと、前記排ガスの流路上に、前記フィルタに対して上流側に配置された複数のオゾン注入ポートと、前記複数のオゾン注入ポートにオゾンを供給するオゾナイザとを備え、前記複数のオゾン注入ポートから放出されたオゾンによって前記フィルタに捕捉された前記粒子状物質を燃焼させて前記フィルタを再生する排ガス処理装置であって、
前記複数のオゾン注入ポートは、互いに直交する2直線上に配置されており、
前記オゾン注入ポートは、前記排ガスの上流側から前記フィルタを見たときオゾン濃度分布が不均一になるように前記排ガス中にオゾンを放出することができ、且つ、前記複数のオゾン注入ポートのうちオゾンを放出するオゾン注入ポートを経時的に変えることにより、前記オゾン濃度分布を経時的に変化させることができることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項6】
前記オゾン注入ポートは、前記排ガスの上流側から前記フィルタを見たとき、オゾンが高濃度に分布する領域で前記フィルタを選択的に再生させる請求項に記載の排ガス処理装置。
【請求項7】
前記フィルタの直径をD、前記オゾン注入ポートと前記フィルタとの距離Lとしたとき、L/D≦0.37を満足する請求項5又は6に記載の排ガス処理装置。
【請求項8】
前記オゾン注入ポートが設置された地点での前記排ガスの濃度が220℃以上である請求項5~7のいずれかに記載の排ガス処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や船舶に搭載されるディーゼルエンジン等の内燃機関やボイラ、ガスタービン等の燃焼装置の排気系から排出される排ガスの処理方法及び処理装置に関する。より詳しくは、排ガス中の粒子状物質(Particulate Matters:PM)をフィルタで捕捉するとともに、フィルタに捕捉された粒子状物質中の可燃性成分を燃焼させてフィルタを再生することができる排ガスの処理方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
排ガス処理装置では、フィルタを用いて排ガス中の粒子状物質を除去する。このような用途に用いられるフィルタとしてハニカムフィルタ(DPF(Diesel Particulate Filter)と呼ばれることもある)が知られている。ハニカムフィルタ80は、図8に示すように、隔壁81によって区画された複数のセル82を有している。複数のセル82は、互い違いに、その長手方向の両端の開口のうちの一方がプラグ83で封止されている。排ガス85は、複数のセル82のうち開口したセル82内に流入し、隔壁81を通過して隣のセル82に流入し、当該隣のセル82の開口から流出する。排ガス85が隔壁81を通過する際に排ガス中の粒子状物質が捕捉され除去される。このようなハニカムフィルタ80は、一般に耐熱性に優れたセラミックスの多孔質体からなる。
【0003】
フィルタに大量の粒子状物質が堆積するとフィルタでの圧力損失が高くなり、例えばエンジンにおいてはエンジンの性能が低下する。従って、フィルタに堆積した粒子状物質を定期的に除去してフィルタを再生する必要がある。
【0004】
フィルタを再生する方法としては、間欠的にフィルタを加熱して粒子状物質を燃焼して除去する方法が知られている。しかしながら、この方法は、フィルタを600℃以上に加熱する必要があるため、燃費悪化につながる。また、粒子状物質の局所的な自発的燃焼が生じやすく、フィルタがセラミックスからなる場合にはフィルタが割れるという問題がある。セラミックス多孔質体からなるフィルタは一般に高い粒子状物質の捕捉効率を有するため、これが使用できないことは大きなデメリットとなる。
【0005】
フィルタを再生する別の方法として、フィルタの上流に配置された酸化触媒で排ガス中の一酸化窒素(NO)を酸化力の強い二酸化窒素(NO2)に酸化し、この二酸化窒素でフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼して除去する方法がある。しかしながら、酸化触媒を活性化するためには300~400℃の高温を必要とするため、近年ますます多用される過給機付きディーゼルエンジンでは排ガス温度が低く、フィルタを十分に再生することができない。また、船舶用ディーゼルエンジンでは重油燃料を用いるため、排ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれ、これが酸化触媒を半永久的に劣化させるという問題がある。
【0006】
特許文献1には、プラズマ発生装置による低温プラズマによって生成したラジカルによって排ガス中の一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)に酸化し、この二酸化窒素でフィルタに堆積した粒子状物質を燃焼し除去してフィルタを再生する方法が記載されている。
【0007】
また、特許文献2には、ディーゼルエンジンからの排ガス中の粒子状物質をフィルタを用いて除去しながら、排ガス経路とは別の経路にて目詰まりしたフィルタにオゾンガスを通過させて、フィルタに堆積した粒子状物質を燃焼し除去する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2004-245091号公報
【特許文献2】特開2007-187136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1の方法によれば、ラジカルの生成は常温で行うことができ、また、ラジカルを用いて一酸化窒素を二酸化窒素に酸化させる反応も常温で可能である。従って、排ガス温度が250℃程度以上あれば二酸化窒素で粒子状物質を燃焼させることができ、フィルタの再生を行うことができる。また、酸化触媒を用いないので、排ガス中に硫黄酸化物(SOx)が含まれていてもフィルタの再生が可能である。
【0010】
しかしながら、粒子状物質の捕捉効率に優れたフィルタには大量の粒子状物質が堆積している。特許文献1の方法により、船舶用ディーゼルエンジンの排ガスに含まれるような大量の粒子状物質を燃焼させるためには、多くのラジカルを生成する必要であり、そのために消費エネルギーが増大し、また、装置が大型化してしまう。
【0011】
一方、特許文献2の方法では、排ガス経路とは別の経路にて高濃度のオゾンで粒子状物質を燃焼させることができるので、比較的少量のオゾンでフィルタの再生が可能である。
【0012】
しかしながら、高濃度のオゾンを使用すると、フィルタに堆積した粒子状物質の局所的な燃焼が生じやすく、フィルタがセラミックスからなる場合にはフィルタが割れるという問題がある。また、排ガス経路とは別の経路でフィルタを再生するので、排ガスやオゾンガスの経路が複雑である。
【0013】
本発明は、局所的な燃焼の発生を抑えながら、小型且つ簡単な構成で、更に、少ない消費エネルギーで、フィルタに堆積した粒子状物質を除去してフィルタを再生することができる排ガスの処理方法及び処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の排ガスの処理方法は、排ガス中の粒子状物質を、前記排ガスの流路上に設置されたフィルタで捕捉する工程と、前記排ガスの流路上に、前記フィルタに対して上流側に配置された複数のオゾン注入ポートからオゾンを放出し、前記フィルタに捕捉された前記粒子状物質を前記オゾンによって燃焼させて前記フィルタを再生する工程とを備える。前記複数のオゾン注入ポートは、互いに直交する2直線上に配置されている。前記排ガスの上流側から前記フィルタを見たときオゾン濃度分布が不均一になるように前記オゾン注入ポートから前記排ガス中にオゾンを放出し、且つ、前記複数のオゾン注入ポートのうちオゾンを放出するオゾン注入ポートを経時的に変えることにより、前記オゾン濃度分布を経時的に変化させることを特徴とする。
【0015】
本発明の排ガス処理装置は、排ガスの流路上に設置され、前記排ガス中の粒子状物質を捕捉するフィルタと、前記排ガスの流路上に、前記フィルタに対して上流側に配置された複数のオゾン注入ポートと、前記複数のオゾン注入ポートにオゾンを供給するオゾナイザとを備え、前記複数のオゾン注入ポートから放出されたオゾンによって前記フィルタに捕捉された前記粒子状物質を燃焼させて前記フィルタを再生する排ガス処理装置である。前記複数のオゾン注入ポートは、互いに直交する2直線上に配置されている。前記オゾン注入ポートは、前記排ガスの上流側から前記フィルタを見たときオゾン濃度分布が不均一になるように前記排ガス中にオゾンを放出することができ、且つ、前記複数のオゾン注入ポートのうちオゾンを放出するオゾン注入ポートを経時的に変えることにより、前記オゾン濃度分布を経時的に変化させることができることを特徴とする。

【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、排ガスの上流側からフィルタを見たときオゾン濃度分布が不均一になるようにオゾンを排ガス中に注入するので、排ガスの上流側からフィルタを見たときオゾンが高濃度に分布する領域でフィルタを選択的に高効率で再生することができる。オゾンを局所的に高濃度になるように注入するので、必要な総オゾン量が少なくて済み、オゾン生成のために必要なエネルギー量を少なくすることができ、また、オゾン生成のための装置を小型化することができる。オゾンを排ガス中に注入するので、フィルタに堆積した粒子状物質が局所的に燃焼するのを防止することができる。また、オゾン濃度分布を経時的に変化させることにより、フィルタ全体を再生することができるので、フィルタ寿命の短縮化を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1Aは本発明の排ガス処理装置のフィルタが排ガス中の粒子状物質を捕捉する工程を示した概略図、図1Bは本発明の排ガス処理装置のフィルタを再生する工程を示した概略図である。
【図2】図2は、排ガスに対するオゾンの体積割合と粒子状物質の燃焼速度との関係の一例を示した図である。
【図3】図3A及び図3Bは、本発明の一実施形態に係るフィルタ再生方法を示した図である。
【図4】図4は、本発明の実施例で用いた装置の全体構成を示した図である。
【図5】図5Aは本発明の実施例で用いた排ガス処理装置の概略構成を示した図、図5Bは図5Aの排ガス処理装置における4本のオゾン注入管の配置を示した図である。
【図6】図6は、比較例におけるフィルタの抵抗係数の時間的変化を示した図である。
【図7】図7は、実施例におけるフィルタの抵抗係数の時間的変化を示した図である。
【図8】図8は、一般的なハニカムフィルタの切り欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の排ガス処理装置は、排ガスの流路上に設置され、排ガス中の粒子状物質を捕捉するフィルタを備える。

【0019】
処理対象となる排ガスを排出する機関(エンジン)としては、特に制限はなく、一般には燃料の燃焼により発生する熱エネルギーを動力に変換する機械、装置であって、内燃機関及び外燃機関のいずれであっても良い。中でも、ディーゼルエンジンが好ましい。特に、船舶用のディーゼルエンジンは、一般にその排ガス中に大量の粒子状物質が含まれるので、本発明を適用することによりフィルタを少ないオゾン量で効率良く再生することができるので、好ましい。

【0020】
フィルタは、排ガス中の粒子状物質を捕捉する。使用可能なフィルタの種類は特に制限はなく、例えば排ガス処理の分野で使用されれている公知のフィルタを適宜選択して使用することができる。中でも、図8に示したハニカムフィルタは、粒子状物質の捕捉効率に優れるので好ましい。ハニカムフィルタの材料は、耐熱性の観点から、例えばコージェライト、炭化珪素、サイアロン、窒化珪素などのセラミックス、またはステンレス鋼等の金属からなることが好ましい。図8では、各セル82の断面形状が正方形であるが、これに限定されず、例えば、正方形以外の四角形、三角形、六角形、円形、楕円形などであっても良い。

【0021】
図1Aに示すように、フィルタ1は排ガス5の流路7上に配置される。排ガス5がフィルタ1を通過する際に、排ガス5中に含まれる炭素を主成分とする粒子状物質がフィルタ1に捕捉される。従って、粒子状物質が除去された清浄なガス6が得られる。

【0022】
時間が経過すると、フィルタ1に粒子状物質が堆積し、フィルタ1での圧力損失が増加する。従って、フィルタ1に堆積した粒子状物質を除去してフィルタ1を再生する必要がある。本発明では、フィルタ1を再生するためにオゾンを利用する。即ち、図1Bに示すように、フィルタ1に対して上流側の排ガスの流路7上で、排ガス5中にオゾン(O3)を注入する。すると、下記反応式(1)に示すように、排ガス中の一酸化窒素(NO)がオゾン(O3)によって二酸化窒素(NO2)に酸化され、次いで下記反応式(2)に示すように、この二酸化窒素(NO2)がフィルタに堆積した粒子状物質中の可燃性物質である炭素(C)と反応して粒子状物質の燃焼反応を引き起こす。その結果、フィルタに堆積した粒子状物質は主に二酸化炭素(CO2)に酸化されてガス化され、フィルタが再生される。

【0023】
NO+O3→NO2+O2 …(1)
2NO2+C→CO2+2NO …(2)
しかし、排ガス中には未燃炭化水素や硫黄酸化物(SOx)なども存在するため、これらの物質が一酸化窒素に優先してオゾンによって酸化される場合がある。また、オゾンが排ガス流路の内壁面などに接触し分解される場合もある。これらの場合、上記反応(1)が阻害され、その結果、粒子状物質を燃焼させる反応(2)が生じにくくなる。従って、排ガス中へのオゾン注入量に対して上記反応式(1),(2)から理論的に求められる粒子状物質の燃焼量に比べて、実際の粒子状物質の燃焼量は少なくなる。

【0024】
但し、排ガス中に注入されたオゾン量に対する、一酸化窒素以外の物質との反応によって消費されるオゾン量の割合は、排ガス中へのオゾン注入量が多くなるほど相対的に低くなる。図2に、排気量200ccの発電用ディーゼルエンジンの排ガスの全量をハニカムフィルタに導くように構成された排ガス処理装置において、ハニカムフィルタの再生のために注入したオゾンの排ガスに対する体積割合を変えたときの、粒子状物質の燃焼速度の変化を測定した結果を示す。縦軸の粒子状物質の燃焼速度は、後述する粒子状物質の燃焼速度CPM(g/h)と同様に求めたものである。図2からも分かるように、排ガス中に注入されるオゾン量が増えれば増えるほど、粒子状物質の燃焼速度が増大しており、より高効率でフィルタを再生することができる。

【0025】
ところが、多量のオゾンを生成するためには、大型のオゾン発生装置が必要となり、排ガス処理装置の大型化を招く。また、多量のオゾン生成のために、エネルギー消費量が増大する。

【0026】
そこで、本発明では、排ガスの上流側からフィルタを見たときオゾン濃度分布が不均一になるようにオゾンを排ガス内に放出する。オゾンが高濃度に存在する領域では上記反応式(1)を阻害する物質はオゾンに比して相対的に少量となるため、大部分のオゾンが一酸化窒素の酸化反応(反応式(1))に用いられる。その結果、無駄に消費されるオゾン量が減少し、フィルタを高効率で再生できる。

【0027】
但し、フィルタに対して単に不均一なオゾン濃度分布を形成するだけでは、フィルタの同一部分が常に部分的に再生される。そこで、本発明では、オゾン濃度分布を経時的に変化させる。これにより、フィルタ全体を再生して、フィルタ寿命が短縮化するのを防ぐ。

【0028】
本発明の一実施形態に係るフィルタ再生方法を図3A、図3Bを用いて説明する。フィルタ(ハニカムフィルタ(DPF))25に対して排ガス流の上流側に、フィルタ25から離間して4本のオゾン注入管26a~26dが設置されている。オゾン注入管26a~26dは、略円柱形状のフィルタ25の中心軸に対して放射状に90°間隔で配置されている。オゾン注入管26a~26dのそれぞれのフィルタ25に対向する面には、複数のオゾン注入ポートが形成されている。

【0029】
フィルタ25に粒子状物質が堆積しフィルタ25での圧力損失が増加すると、図3Aに示すように、排ガスが流れている状態で、一直線上に配置されたオゾン注入管26b,26dのオゾン注入ポートからオゾンをフィルタ25に向かって放出する。オゾンは、オゾン注入管26b,26dの近傍に高濃度に分布するので、フィルタ25のうち、オゾン注入管26b,26dに対向する部分が主として再生される。フィルタ25での圧力損失が低下すると、オゾンの放出を停止する。

【0030】
その後、フィルタ25での圧力損失が再び増加すると、今度は図3Bに示すように、排ガスが流れている状態で、一直線上に配置されたオゾン注入管26a,26cのオゾン注入ポートからオゾンをフィルタ25に向かって放出する。オゾンは、オゾン注入管26a,26cの近傍に高濃度に分布するので、フィルタ25のうち、オゾン注入管26a,26cに対向する部分が主として再生される。フィルタ25での圧力損失が低下すると、オゾンの放出を停止する。

【0031】
このように、フィルタ25の再生時に、複数のオゾン注入ポートのうちの一部のみからオゾンを注入することで、排ガスの上流側から見たとき不均一なオゾン濃度分布が排ガス中に形成される。従って、排ガスの上流側から見たとき、オゾンが高濃度に分布する領域でフィルタは部分的に高効率で再生される。

【0032】
また、フィルタ25の再生ごとに、複数のオゾン注入ポートのうちオゾンを実際に放出するオゾン注入ポートを変えることで、フィルタ25のうち再生される部分を変えることができる。その結果、長期的に見てフィルタ25の全体をほぼ満遍なく再生することができるので、フィルタ寿命の短縮化を防止できる。

【0033】
本発明のフィルタ再生では、オゾンの生成や、上記の反応(1)は常温で可能である。また、上記の反応(2)が生じるためには、粒子状物質の濃度や排ガス成分によって異なるが、オゾン注入ポートが設置された地点で排ガスが好ましくは220℃以上、更に好ましくは300℃以上という比較的低温を有していれば足りる。また、排ガスがフィルタを通過している状態でオゾンを排ガス中に放出することができるので、上述した特許文献2で起こりうる、フィルタに堆積した粒子状物質の局所的な自発的燃焼は、本発明ではほとんど発生しない。従って、フィルタとして高性能なセラミックスからなるフィルタを用いても、フィルタが高温となって割れるなどの問題は生じない。

【0034】
なお、本発明では、オゾン注入ポートが設置された地点での排ガス温度の上限は特に制限はないが、320℃以下が好ましい。これより高温でも上記の反応(2)が促進されることはなく、むしろ高温によるフィルタの破損などの弊害が発生するからである。

【0035】
本発明では、フィルタの上流側に、排ガスの上流側からフィルタを見たとき不均一なオゾン濃度分布が形成され、且つ、当該オゾン濃度分布が経時的に変化するように、排ガスの経路上にオゾン注入ポートを配置すればよいので、装置構成は簡単となり、また、既存の排ガス経路を大幅に変更する必要はない。

【0036】
図3A、図3Bでは、複数のオゾン注入ポートを互いに直交する2直線上に配置した。この配置は、直線状のオゾン注入管を用いて容易に不均一なオゾン濃度分布を形成することができる。但し、本発明においてオゾン注入ポートの配置は、フィルタを排ガスの上流側から見たとき不均一なオゾン濃度分布を形成することができれば、図3A、図3Bに限定されない。例えば、複数のオゾン注入ポートを、格子点上に配置したり、複数の同心円上に配置したりしてもよい。

【0037】
また、本発明では、オゾン濃度分布を経時的に変化させる。これを実現するための方法も特に制限はない。図3A、図3Bに例示されるように、複数のオゾン注入ポートを設けておき、この複数のオゾン注入ポートの中から実際にオゾンを放出するポートを順次切り替える方法は、バルブ等の切り替えで容易に実現することができる。但し、これ以外に、例えば、不均一なオゾン濃度分布を形成することができる1つ又は複数のオゾン注入ポートを順次移動させることにより、オゾン濃度分布を経時的に変化させてもよい。

【0038】
不均一なオゾン濃度分布を形成するためには、オゾン注入ポートからフィルタまでの距離Lは小さい方が好ましい。具体的には、フィルタの直径をDとしたとき、L/D≦0.37、更にL/D≦0.30を満足することが好ましい。

【0039】
また、オゾン注入ポートはフィルタに向かってオゾンを放出することが好ましい。これにより、オゾン注入ポートから放出されたオゾンの拡散を抑制することができるので、無駄に消費されるオゾン量が減少する。

【0040】
オゾン注入ポートの材料は、排ガス温度で耐熱性を有し、オゾンと反応しない材料が好ましい。具体的にはステンレス鋼(例えばSUS316等)を用いることができる。
【実施例】
【0041】
図4は、実施例で用いた装置の全体構成を示した図である。エンジン11として、排気量47.1Lの過給器付きエンジンを用いた。このエンジン11は、A重油を燃料とし、船舶内において発電用に用いられるものである。エンジン11には200kWの負荷を与えた。エンジン11の排ガス5の排気口に接続した排ガス流路12を、途中で第1排ガス流路13及び第2排ガス流路14に分岐した。第1排ガス流路13及び第2排ガス流路14の各排ガス流量は、バタフライバルブ15,16で調整した。第1排ガス流路13上に排ガス処理装置20を設置した。
【実施例】
【0042】
図5Aに、排ガス処理装置20の概略構成を示す。略漏斗形状の第1ダクト21、略中空円筒形状の第1筒部22、略中空円筒形状の第2筒部23、略漏斗形状の第2ダクト24を順に連結して排ガスの流路を形成した。排ガスは、第1ダクト21側から第2ダクト24側に向かって、この流路内を流れる。排ガス処理装置20の排ガス流方向の寸法(即ち、第1ダクト21の上流側端から第2ダクト24の下流側端までの距離)は845.5mmであった。
【実施例】
【0043】
第2筒部23内にフィルタ25を設置した。フィルタ25として、直径Dが190.5mm、排ガス流方向の長さが100mmで、169cpsi/16milの多孔質SiCセラミック製のハニカムフィルタ(DPF)を用いた。フィルタ25は、90%程度の粒子状物質の捕捉効率を有している。
【実施例】
【0044】
第1筒部22に4本のオゾン注入管26a~26dを突き刺した。図5Bは、4本のオゾン注入管26a~26dを、排ガスの上流側から見た図である。オゾン注入管26a~26dは、略円柱形状のフィルタ25の中心軸に直交する、互いに直交する2直線に沿って配置した。オゾン注入管26a~26dのそれぞれの第1筒部22内に位置する部分に、フィルタ25に対向するように6個のオゾン注入ポート27を形成した。フィルタ25の上流側の端面とオゾン注入管26a~26dとの間隔Lは71mmとした。
【実施例】
【0045】
第1ダクト21と第1筒部22との接合部に整流板28を設置した。整流板28として、多数の貫通孔が形成されたパンチング金属板を用いた。フィルタ25の上流側の端面と整流板28との間隔は116mmとした。
【実施例】
【0046】
図4に戻り、オゾン注入管26a~26dには、オゾン発生装置(オゾナイザ)30で発生させたオゾン31を供給した。
【実施例】
【0047】
フィルタ25の上流側及び下流側の排ガス圧力を圧力計32a,32bで測定した。また、オゾン注入管26a~26d近傍での排ガス温度を温度計33で測定した。フィルタ25を通過した排ガス流量をピトー管34で測定した。更に、フィルタ25の上流側及び下流側で排ガス中の粒子状物質濃度を測定した。
【実施例】
【0048】
最初に、比較例として、図5Aと異なり4本のオゾン注入管26a~26dを整流板28よりも上流側に配置した。そして、エンジン11を運転しながら、一直線上に配置されたオゾン注入管26a,26cのオゾン注入ポート27からオゾンを整流板28に向かって放出した。オゾン注入速度は43g/h,92g/hの2水準とした。フィルタ25の上流側において排ガス温度は270℃、粒子状物質濃度34~40mg/Nm3、フィルタ25を通過した排ガス流量は50Nm3/hであった。
【実施例】
【0049】
比較例におけるフィルタ25の抵抗係数CRの時間的変化を図6に示す。縦軸の抵抗係数CR(kPa・h/m3)は以下によって定義される。
【実施例】
【0050】
R=ΔP/Q …(3)
ここで、ΔPはフィルタ25の上流側と下流側との排ガスの圧力差、Qはフィルタ25を通過した排ガス流量である。
【実施例】
【0051】
図6において、70minから140minまではオゾンを注入していないので、抵抗係数は増加した。140minから160minまでは少量(43g/h)のオゾンを注入しており、抵抗係数は横ばい又は僅かに低下した。そして、170minから190minまでは多量(92g/h)のオゾンを注入しており、抵抗係数は低下した。
【実施例】
【0052】
次いで、本発明に対応する実施例として、4本のオゾン注入管26a~26dを図5Aに示すように整流板28とフィルタ25との間に移動した。そして、エンジン11を運転しながら、一直線上に配置されたオゾン注入管26a,26cのオゾン注入ポート27からオゾンをフィルタ25に向かって放出した。オゾン注入速度は比較例と同様に43g/h,92g/hの2水準とした。その他の条件は、比較例と同じとした。
【実施例】
【0053】
実施例におけるフィルタ25の抵抗係数CRの時間的変化を図7に示す。60minから90minまでは少量(43g/h)のオゾンを注入しており、抵抗係数は低下した。90minから120minまでは多量(92g/h)のオゾンを注入しており、抵抗係数は大きく低下した。そして、120minから147minまではオゾンを注入しておらず、抵抗係数は増加した。
【実施例】
【0054】
図7において、オゾン注入管26a,26cからのオゾン注入量が92g/hのときの抵抗係数の低下速度(即ち、グラフの傾き)は、前段のフェーズ1で大きく、後段のフェーズ2で小さい。また、これに続くオゾン注入を停止したときの抵抗係数の増加速度(即ち、グラフの傾き)は、前段のフェーズ3で大きく、後段のフェーズ4で小さい。このように、抵抗係数が変化する理由は以下のように考えられる。
【実施例】
【0055】
フェーズ1では、排ガスの上流側からフィルタを見たとき、高濃度のオゾンが存在する、オゾン注入管26a,26cと対向する部分に堆積した粒子状物質が燃焼する。粒子状物質が燃焼して消失するにしたがって、抵抗係数は低下する。
【実施例】
【0056】
オゾン注入管26a,26cと対向する部分に堆積した粒子状物質がほぼ燃焼して消失すると、フィルタ25内のこの部分に、フィルタ25の上流側と下流側とを結ぶ低圧損領域が形成される。低圧損領域が形成された段階がフェーズ2である。フェーズ2では、排ガス及びオゾン注入管26a,26cから注入されたオゾンは粒子状物質がほぼ燃焼し消失してしまった低圧損領域を主として流れるので、粒子状物質の更なる燃焼速度は低下する。従って、フェーズ2での抵抗係数の低下速度は、フェーズ1よりも小さい。
【実施例】
【0057】
次に、オゾンの注入を停止してフェーズ3に移行する。フェーズ3では、排ガスは主として低圧損領域を流れるので、粒子状物質はフィルタ25内の低圧損領域内に優先的に堆積する。粒子状物質が堆積するのにしたがって、抵抗係数は増加する。低圧損領域はフィルタ25の一部を占めるにすぎないので、フェーズ3での抵抗係数の増加速度は大きい。
【実施例】
【0058】
フィルタ25内に低圧損領域が消失すると、フェーズ4に移行する。フェーズ4では、フィルタ25の全体に粒子状物質が堆積するので、フェーズ4での抵抗係数の増加速度は、フェーズ3より小さい。
【実施例】
【0059】
上記の説明より明らかなように、フィルタ25内に低圧損領域が形成されたフェーズ2では、注入されたオゾンの一部は、粒子状物質の燃焼に寄与することなく、フィルタ25を通過してしまう可能性がある。従って、実際のフィルタの再生では、フェーズ2に至る前にオゾン注入を停止することが好ましい。
【実施例】
【0060】
図7において、オゾン注入量が43g/hの場合には、オゾン注入量が92g/hの場合のような抵抗係数の低下速度の変化は認められない。即ち、図7のオゾン注入量が43g/hである期間はフェーズ1の状態であって、この期間内にフェーズ2には至っていないものと推測される。
【実施例】
【0061】
図6(比較例)と図7(実施例)とを比較すると、オゾン注入時には、注入量が43g/h、92g/hのいずれであっても、抵抗係数の低下速度は図7の方が大きい。これは、図7では、フィルタ25が部分的に再生されるので、フィルタ25が高効率に再生されているからである。
【実施例】
【0062】
なお、オゾンを注入していないときの抵抗係数の増加速度も、図6より図7の方が大きい。但し、図7では、オゾンを部分的に高濃度で注入しているので、上述した反応式(1)以外のために消費されるオゾン量は少ない。従って、全体としてオゾンの総注入量は、図6に比べて少なくて済む。
【実施例】
【0063】
図6及び図7において、1gの粒子状物質を燃焼するのに必要なオゾン量を計算する。
【実施例】
【0064】
オゾン注入時の粒子状物質の燃焼速度をCPM(g/h)、フィルタ25の粒子状物質の捕捉速度をAPM(g/h)、粒子状物質の捕捉時(オゾン不注入時)の抵抗係数CRの上昇速度をaa(kPa・h/m3・min)、オゾン注入時の抵抗係数CRの低下速度をac(kPa・h/m3・min)とする。捕捉速度APMは、aaに比例する。オゾン注入時には、粒子状物質はフィルタ25で捕捉されると同時にオゾンで燃焼されるため、燃焼速度CPMは(aa+ac)に比例する。従って、以下の式(4)が成立する。
【実施例】
【0065】
PM/APM=(aa+ac)/aa …(4)
捕捉速度APMは、フィルタ25の上流側及び下流側で排ガス中の粒子状物質濃度の実測値と、フィルタ25を通過した排ガス流量から算出することができる。比較例(図6)及び実施例(図7)では、いずれもAPM=1.53g/hであった。また、aa,acは図6、図7のグラフの傾きから求めることができる。
【実施例】
【0066】
図6において、オゾン注入量が92g/hのとき、
a=1.36×10-5(kPa・h/m3・min)
c=1.54×10-5(kPa・h/m3・min)
であるから、上記式(4)より、CPM=3.26g/hとなる。従って、図6(比較例)において92g/hでオゾンを注入したとき、1gの粒子状物質を燃焼するのに28g(=92/3.26)のオゾンが消費された。
【実施例】
【0067】
一方、図7において、オゾン注入量が92g/hのとき、フェーズ1,4に着目すると、
a=4.23×10-5(kPa・h/m3・min)
c=7.14×10-5(kPa・h/m3・min)
であるから、上記式(4)より、CPM=4.11g/hとなる。従って、図7(実施例)において92g/hでオゾンを注入したとき、1gの粒子状物質を燃焼するのに22g(=92/4.11)のオゾンが消費された。
【実施例】
【0068】
従って、本発明のようにオゾン濃度分布が不均一になるように排ガス中にオゾンを注入することにより、少ないオゾン総注入量で高効率にフィルタを再生することができることが計算上でも確認された。
【実施例】
【0069】
図7では、オゾンを注入するオゾン注入管の切り替えを行っていない。しかしながら、例えば、オゾン注入をオゾン注入管26a,26cとオゾン注入管26b,26dとで交互に行っても、排ガス中の粒子状物質量は一定であるから、抵抗係数は図7と同様に変化するはずである。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の利用分野は特に制限はないが、粒子状物質を含む排ガスを排出するディーゼルエンジン等の内燃機関やボイラ、ガスタービン等の燃焼装置から排出される排ガスの処理装置として好ましく利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1,25 フィルタ
5 排ガス
7 排ガスの流路
11 エンジン
12,13,14 排ガス流路
20 排ガス処理装置
26a,26b,26c,26d オゾン注入管
27 オゾン注入ポート
30 オゾン発生装置(オゾナイザ)
31 オゾン
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7