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明細書 :バリアフィルムの水蒸気透過率測定器及び測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5283177号 (P5283177)
公開番号 特開2010-197218 (P2010-197218A)
登録日 平成25年6月7日(2013.6.7)
発行日 平成25年9月4日(2013.9.4)
公開日 平成22年9月9日(2010.9.9)
発明の名称または考案の名称 バリアフィルムの水蒸気透過率測定器及び測定方法
国際特許分類 G01N  27/22        (2006.01)
FI G01N 27/22 A
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2009-042415 (P2009-042415)
出願日 平成21年2月25日(2009.2.25)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 研究集会名 平成20年度 電子情報通信学会信越支部大会 IEEE 信越支部セッション 主催者名 電子情報通信学会信越支部・IEEE信越支部 開催日 平成20年9月27日
審査請求日 平成24年1月12日(2012.1.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 栄次
【氏名】宮入 圭一
個別代理人の代理人 【識別番号】100088579、【弁理士】、【氏名又は名称】下田 茂
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 特開平03-018749(JP,A)
特開2007-139447(JP,A)
特開2001-264237(JP,A)
調査した分野 G01N 27/00-27/24
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
所定の湿度雰囲気中に一方の面を臨ませた被測定用のバリアフィルムの他方の面側に配した水分センサ部により当該バリアフィルムの水蒸気透過率を測定するバリアフィルムの水蒸気透過率測定器において、感湿膜及びこの感湿膜の両面にそれぞれ面接触する一対の電極層を有し、かつ前記感湿膜の一方の面を基板の上面に付設した水分センサ部と、前記感湿膜の他方の面に直接又は樹脂層を介して他方の面を重ねた前記バリアフィルムの一方の面の全部又は一部を除き、当該バリアフィルムから前記基板の上面の間における少なくとも前記感湿膜の側方を覆う樹脂被覆部とを備えるとともに、前記基板として、透明性を有するガラス基板を用い、かつ少なくとも前記感湿膜と前記基板間に配する電極層として、当該ガラス基板上に形成したITO電極(透明電極)を用いることを特徴とするバリアフィルムの水蒸気透過率測定器。
【請求項2】
前記感湿膜は、フッ素化ポリイミド膜を用いることを特徴とする請求項1記載のバリアフィルムの水蒸気透過率測定器。
【請求項3】
前記バリアフィルムの大きさは、前記感湿膜の大きさよりも大きく形成することを特徴とする請求項1又は2記載のバリアフィルムの水蒸気透過率測定器。
【請求項4】
所定の湿度雰囲気中に一方の面を臨ませた被測定用のバリアフィルムの他方の面側に配した水分センサ部により当該バリアフィルムの水蒸気透過率を測定するに際し、感湿膜及びこの感湿膜の両面にそれぞれ面接触する一対の電極層を有し、かつ前記感湿膜の一方の面を基板の上面に付設した水分センサ部を使用し、前記感湿膜の他方の面に、前記バリアフィルムの他方の面を直接又は樹脂層を介して重ね、当該バリアフィルムの一方の面の全部又は一部を除き、当該バリアフィルムから前記基板の上面の間における少なくとも前記感湿膜の側方を樹脂被覆部により覆うとともに、前記基板として、透明性を有するガラス基板を用い、かつ少なくとも前記感湿膜と前記基板間に配する電極層として、当該ガラス基板上に形成したITO電極(透明電極)を用い、前記バリアフィルムの一方の面を所定の湿度雰囲気中に臨ませることにより当該バリアフィルムの水蒸気透過率を測定することを特徴とするバリアフィルムの水蒸気透過率測定方法。
【請求項5】
前記バリアフィルムの他方の面に、前記樹脂被覆部を形成する樹脂を塗布し、この樹脂を塗布した前記バリアフィルムの面を、前記感湿膜の他方の面に重ねて加圧することにより前記樹脂被覆部を形成することを特徴とする請求項4記載のバリアフィルムの水蒸気透過率測定方法。
【請求項6】
前記樹脂被覆部を形成する樹脂は、光硬化樹脂を用いることを特徴とする請求項4又は5記載のバリアフィルムの水蒸気透過率測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、各種バリアフィルムの水蒸気透過率を測定する際に用いて好適なバリアフィルムの水蒸気透過率測定器及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、商品の包装(袋)等に用いられるバリアフィルムは、一定水準以上の防湿性が要求され、この水蒸気透過率(防湿性)の優劣は、包装される食品や電子部品等の商品の品質や寿命などにも直接影響する。したがって、この種のバリアフィルムの水蒸気透過率を正確に評価(測定)することは重要な課題となる。
【0003】
このため、従来よりバリアフィルムの防湿性(水蒸気透過率)を測定(評価)する防湿性測定装置も知られており、既に、本出願人もバリアフィルムの透湿度を測定する際に用いて好適な透湿度測定装置を提案した(特許文献1)。この透湿度測定装置は、絶縁基板上に下部電極膜、下部電極膜の少なくとも一部を覆うように吸湿性膜、及び下部電極膜の少なくとも一部と吸湿性膜を挟んで面的に対向し、かつ下部電極膜とは絶縁された上部電極膜を有し、下部電極膜と上部電極膜との間に容量計が接続され、吸湿性膜を覆う被測定試料膜の透湿度を容量計により測定するようにしたものであり、これにより、薄膜の透湿度を精度よく測定することができる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2007-139447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来(特許文献1)の透湿度測定装置は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
即ち、この種のバリアフィルムには、包装される商品の進化或いは新しいエレクトロニクスデバイスの出現等に伴い、より高いバリア性能が要求され、これにより、バリアフィルムの透湿度測定装置(水蒸気透過率測定器)に対しても、より微量な水分を測定する能力が要求される。例えば、一般的な食品包装のバリアフィルムに要求される水蒸気透過率(透湿度)は、0.1〔g/m2・day〕程度であるが、エレクトロニクスデバイスの分野(デバイスの封止用途)で要求される水蒸気透過率は、太陽電池,液晶及び薄膜トランジスタで、0.01~0.1〔g/m2・day〕以下、有機EL素子で、10-5〔g/m2・day〕以下となるなど、透湿度測定装置(水蒸気透過率測定器)は、極微量の水分測定にも対応する必要がある。
【0007】
通常、測定する水分量が微量になった場合、ノイズ等の誤差要因が大きく影響し、測定精度の低下を招くため、誤差要因の排除は重要である。しかし、従来の透湿度測定装置では、このような誤差要因の排除については十分な対策が講じられているとはいえず、この点に更なる改善の余地があった。なお、誤差要因の排除は、水蒸気透過率測定装置のコストアップやサイズアップを無視すれば、技術的には可能となるが、量産性や使い勝手などを考慮した場合、コストアップやサイズアップは極力回避する必要がある。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したバリアフィルムの水蒸気透過率測定器及び測定方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバリアフィルムの水蒸気透過率測定器1は、上述した課題を解決するため、所定の湿度雰囲気A中に一方の面Ffを臨ませた被測定用のバリアフィルムFの他方の面Fs側に配した水分センサ部2により当該バリアフィルムFの水蒸気透過率を測定する水蒸気透過率測定器であって、感湿膜3及びこの感湿膜3の両面3u,3dにそれぞれ面接触する一対の電極層4u,4dを有し、かつ感湿膜3の一方の面3dを基板5の上面5uに付設した水分センサ部2と、感湿膜3の他方の面3uに直接又は樹脂層6rを介して他方の面Fsを重ねたバリアフィルムFの一方の面Ffの全部又は一部を除き、当該バリアフィルムFから基板5の上面5uの間における少なくとも感湿膜3の側方を覆う樹脂被覆部6とを備えるとともに、基板5として、透明性を有するガラス基板5gを用い、かつ少なくとも感湿膜3と基板5間に配する電極層4dとして、ガラス基板5g上に形成したITO電極(透明電極)4diを用いることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るバリアフィルムの水蒸気透過率測定方法は、上述した課題を解決するため、所定の湿度雰囲気A中に一方の面Ffを臨ませた被測定用のバリアフィルムFの他方の面Fs側に配した水分センサ部2により当該バリアフィルムFの水蒸気透過率を測定するに際し、感湿膜3及びこの感湿膜3の両面3u,3dにそれぞれ面接触する一対の電極層4u,4dを有し、かつ感湿膜3の一方の面3dを基板5の上面5uに付設した水分センサ部2を使用し、感湿膜3の他方の面3uに、バリアフィルムFの他方の面Fsを直接又は樹脂層6rを介して重ね、当該バリアフィルムFの一方の面Ffの全部又は一部を除き、当該バリアフィルムFから基板5の上面5uの間における少なくとも感湿膜3の側方を樹脂被覆部6により覆うとともに、基板5として、透明性を有するガラス基板5gを用い、かつ少なくとも感湿膜3と基板5間に配する電極層4dとして、ガラス基板5g上に形成したITO電極(透明電極)4diを用い、バリアフィルムFの一方の面Ffを所定の湿度雰囲気A中に臨ませることにより当該バリアフィルムFの水蒸気透過率を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
このような本発明に係るバリアフィルムの水蒸気透過率測定器及び測定方法によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) バリアフィルムFから基板5の上面5uの間における少なくとも感湿膜3の側方を覆う樹脂被覆部6を設けたため、感湿膜3の両面3u,3dにそれぞれ面接触する一対の電極層4u,4dを有する構造からなる水分センサ部2により水蒸気透過率を測定する場合であっても、本来のバリアフィルムFを透過する水分以外の無用な水分の侵入、即ち、バリアフィルムF以外から感湿膜3に侵入する水分による無用な誤差要因を排除することができる。したがって、測定精度を飛躍的に高めることができ、特に、極微量な水分であっても高い精度により測定することができる。
【0013】
(2) 誤差要因を排除するに際し、感湿膜3の両面3u,3dにそれぞれ面接触する一対の電極層4u,4dを有する構造からなる水分センサ部2に対して、バリアフィルムFから基板5の上面5uの間における少なくとも感湿膜3の側方を覆う樹脂被覆部6を設けたため、水蒸気透過率測定の高精度化を実現する場合であっても、水蒸気透過率測定器1全体のコストアップ及びサイズアップを招く不具合を回避することができ、量産性や使い勝手にも優れる。
【0014】
(3) 基板5として、透明性を有するガラス基板5gを用いるとともに、少なくとも感湿膜3と基板5間に配する電極層4dとして、当該ガラス基板5g上に形成したITO電極(透明電極)4diを用いたため、光硬化樹脂Rsを、ガラス基板5g及び透明電極4diを透過する紫外線C等の光により効率的に、かつ隅々まで確実に硬化させることが
【0015】
(4) 好適な態様により、感湿膜3にフッ素化ポリイミド膜を用いれば、ポリイミドの有する親水性とフッ素の有する疎水性の複合化により、水分の吸収及び放出を迅速に行うことができ、ポリイミドのみのときに生じるヒステリシス特性を排除できる。これにより、湿度の急激な変化に対しても良好な追従性(応答性)を確保できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、バリアフィルムFの大きさを、感湿膜3の大きさよりも大きく形成すれば、バリアフィルムFの側面と感湿膜3の側面と基板5の上面5uにより形成される凹空間Asに、樹脂被覆部6を形成する樹脂Rを入り込ませることができる。したがって、感湿膜3を覆う樹脂被覆部6の厚みを大きくできるため、無用な水分の侵入に対する阻止作用をより高めることができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、樹脂被覆部6を形成する樹脂Rに、光硬化樹脂Rsを用いれば、例えば、熱硬化性樹脂を使用する際の加熱が不要になるなど、水分センサ部2に対する高温付加や熱収縮等の悪影響を回避することができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、バリアフィルムFの他方の面Fsに、樹脂被覆部6を形成する樹脂Rを塗布し、この樹脂Rを塗布したバリアフィルムFの面Fsを、感湿膜3の他方の面3uに重ね、かつ加圧することにより樹脂被覆部6を形成するようにすれば、容易かつ能率的に樹脂被覆部6を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適実施形態に係る水蒸気透過率測定器の正面断面図、
【図2】同水蒸気透過率測定器の図1中X線断面を含む一部破断平面図、
【図3】同水蒸気透過率測定器に用いる水分センサ部を製造する製造工程毎の正面断面図、
【図4】同水蒸気透過率測定器により水蒸気透過率を測定するバリアフィルムのセッティング方法を順を追って示す正面断面図、
【図5】同水蒸気透過率測定器により水蒸気透過率を測定する際における相対湿度に対する静電容量の特性図、
【図6】同水蒸気透過率測定器の原理を説明するためのポリイミド水分センサの吸着した水分量(単位面積当たりの水の質量)に対する静電容量の変化特性図、
【図7】同水蒸気透過率測定器により水蒸気透過率を測定する際における時間に対する静電容量変化率の特性図、
【図8】同水蒸気透過率測定器により水蒸気透過率を測定する際に用いる水蒸気透過率測定装置の全体系統図、
【図9】本発明の変更実施形態に係る水蒸気透過率測定器の正面断面図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。

【0021】
まず、本実施形態に係る水蒸気透過率測定器1の構成について、図1~図3を参照して説明する。

【0022】
水蒸気透過率測定器1は、図1に示すように、大別して、水分センサ部2と樹脂被覆部6を備える。図中、Fは、水蒸気透過率測定器1にセットされたバリアフィルムである。したがって、樹脂被覆部6は、バリアフィルムFをセットする際に一緒に設けられる。水分センサ部2は、基本的な構成として、感湿膜3及びこの感湿膜3の両面3u,3dにそれぞれ面接触する一対の電極層4u,4dを有するとともに、感湿膜3の一方の面3dを基板5の上面5uに付設して構成する。これにより、感湿膜3が水分を吸収すれば、感湿膜3の誘電率が変化し、電極層4uと4d間の静電容量が変化する原理に基づいて水分量を測定することができる。

【0023】
以下、水分センサ部2の製造方法について、図3(a)~(e)を参照して具体的に説明する。

【0024】
最初に、片面にITO(酸化インジウムスズ)膜11を付着(成膜)させた基板5を用意する(図3(a))。基板5は透明性を有するガラス基板5gである。したがって、ガラス基板5gとITO膜11は共に透明となる。なお、例示するガラス基板5gの平面形状は、一辺が25〔mm〕前後の矩形である。そして、ITO膜11にエッチング処理を施すことにより、図3(b)及び図2に示す形状のITO電極(透明電極)4diを形成する。このITO電極4diは、後述する感湿膜3と基板5間に配する電極層(下電極層)4dとなる。このようなガラス基板5g上に形成したITO電極4diを用いれば、後述する紫外線硬化樹脂Rsを、ガラス基板5g及び透明電極4diを透過する紫外線Cにより効率的に、かつ隅々まで確実に硬化させることができる。

【0025】
次いで、図3(c)に示すように、ITO電極4diを含むガラス基板5gの上面5uを覆うフッ素化ポリイミド膜3pを設ける。このフッ素化ポリイミド膜3pは、フッ素化ポリイミド膜3pの前駆体である可溶性のポリアミド酸を溶剤で溶かしてポリアミド酸溶液を得、このポリアミド酸溶液をガラス基板5gの上面5u上に均一に塗布した後、300~350〔℃〕の高温環境下で2時間加熱すれば、不溶化させたフッ素化ポリイミド膜3pを得ることができる。フッ素化ポリイミド膜3pは1〔μm〕の膜厚を用いた。なお、この膜厚は0.05~2〔μm〕の範囲で調整可能である。膜厚は薄いほうが感度が高くなるメリットがある反面、導通(ショート)しやすくなったりポリイミド膜以外の個所に僅かに吸収された水分(誤差要因)が無視できなくなるデメリットがある。したがって、実用的には0.1~1〔μm〕程度が望ましい。このようなフッ素化ポリイミド膜3pを用いれば、ポリイミドの有する親水性とフッ素の有する疎水性の複合化により、水分の吸収及び放出を迅速に行うことができ、ポリイミドのみのときに生じるヒステリシス特性を排除できる。したがって、湿度の急激な変化に対しても良好な追従性(応答性)を確保できる。そして、フッ素化ポリイミド膜3pに酸素プラズマ加工によるエッチング処理を施すことにより、図3(d)及び図2に示す形状の感湿膜3を形成する。

【0026】
さらに、感湿膜3及びガラス基板5gの上面5uには、金(Au)を斜方蒸着することにより電極層(上電極層)4uを設ける。上電極層4uの形状を図3(e)及び図2に示す。例示する上電極層4uは、離間した二個所の位置に設けている。上電極層4uは15〔nm〕の層厚を用いた。なお、この層厚は、5~50〔nm〕(より望ましくは、10~20〔nm〕)程度で選定可能である。このように設けた上電極層4uは、水分が容易に透過することができる。

【0027】
これにより、図3(e)に示す水分センサ部2を得ることができる。このような構造を有する水分センサ部2は、上電極層4u及び下電極層4dの面積を比較的大きく設定できるため、比較的単純な構造により大きな静電容量Cが得られる利点がある。例示の場合、490〔pF〕程度の初期静電容量を得ている。図5は、相対湿度〔%RH〕に対する水分センサ部2における静電容量C〔pF〕の特性図を示す。このように、静電容量Cは相対湿度の変化に対してほぼ直線的に変化する。したがって、この特性に対して数点の評価を行えば、容易に校正することができる。また、図5は、30〔℃〕,50〔℃〕,70〔℃〕の三つの温度に係わる特性を示しているが、温度依存性は存在しないとともに、ヒステリシスも小さい。さらに、図6は、1〔μm〕の厚さを有するポリイミド水分センサの吸着した水分量(単位面積当たりの水の質量〔g/m2〕)に対する静電容量C〔pF〕の変化特性図を示す。同図から明らかなように、ポリイミドを感湿膜とすれば、0.1~0.0001〔g/m2〕までの幅広い領域において感湿膜に吸着した水分量と静電容量が直線関係にあることが分かる。したがって、フッ素化ポリイミド膜3pの静電容量変化を測定することによりバリアフィルムを透過した水蒸気量を知ることができる。

【0028】
次に、本実施形態に係る水蒸気透過率測定器1を用いたバリアフィルムFにおける水蒸気透過率の測定方法について、図4~図8を参照して説明する。なお、水蒸気透過率測定器1は、前述したように、水分センサ部2と樹脂被覆部6により構成され、この樹脂被覆部6は、バリアフィルムFをセットする際に一緒に設けられる。

【0029】
まず、被測定用のバリアフィルムFを用意する。バリアフィルムFの大きさは、感湿膜3の大きさよりも大きく形成する。バリアフィルムFを感湿膜3よりも大きくする理由は、図1に示すように、バリアフィルムFをセットした際に、バリアフィルムFの側面と感湿膜3の側面とガラス基板5gの上面5uにより凹空間Asを形成し、この凹空間Asに樹脂被覆部6を形成する樹脂Rを入り込ませるためである。この場合、感湿膜3の各辺とバリアフィルムFの各辺間の距離Lrが、1〔mm〕以上となるように選定することが望ましい。本実施形態では、二種類のバリアフィルムFを試料S1,S2,S3として用意した。試料S1は、厚さが125〔μm〕のポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、試料S2,S3は、試料1と同じPENフィルムの表面にバリア膜としてシリカ膜を付したものである。この場合、試料S2,S3は、PENフィルムを、ポリシラザン溶液に一回ディップコートし、S2は厚さが1〔μm〕程度のコーティング層を設け、S3は厚さが0.5〔μm〕程度のコーティング層を設け、それぞれ温度40〔℃〕,相対湿度90〔%RH〕の雰囲気中に1日放置して作成した。

【0030】
一方、バリアフィルムFをセットするには、まず、図4(a)に示すように、バリアフィルムFの片面(他方の面Fs)に、予め設定した所定量の紫外線(UV)硬化樹脂Rs(樹脂R)を塗布する。このようなUV硬化樹脂Rsを用いれば、例えば、熱硬化性樹脂を使用する際の加熱が不要になるなど、水分センサ部2に対する高温付加や熱収縮等の悪影響を回避することができる。なお、熱収縮によるクラック等の影響の少ないバリアフィルム(コーティング層を含む)Fであれば、エポキシ樹脂やシリコン樹脂等の熱硬化性樹脂も使用可能である。

【0031】
次いで、UV硬化樹脂Rsを塗布したバリアフィルムFの面Fsを、図4(a),(b)に示すように、感湿膜3の他方の面3uに重ね、例えば、加圧プレート31等を利用して、バリアフィルムFを感湿膜3側に加圧する。これにより、バリアフィルムFの他方の面Fsに塗布されたUV硬化樹脂Rsは、図4(b)に示すように、外側にはみ出すとともに、感湿膜3の側面、即ち、凹空間Asに流入し、図4(c)に示すように、バリアフィルムFの一方の面Ffの全部(又は一部)を除き、当該バリアフィルムFの側面から基板5の上面5uの間を覆い、特に、感湿膜3の側方を完全に覆うことができる。この際、バリアフィルムFの他方の面Fsと感湿膜3の他方の面3u間には、UV硬化樹脂Rsが僅かに残留して樹脂層6rが形成される。バリアフィルムFの他方の面Fsと感湿膜3の他方の面3uは直接面接触することが望ましいが、樹脂層6rが残留する場合であっても、その厚さは僅かであり、水分は容易に透過することができる。このため、樹脂層6rの層厚が、50〔nm〕以下となるように、バリアフィルムFに対する加圧力を調整することが望ましい。

【0032】
そして、図4(c)に示すように、ガラス基板5gの下方に配した紫外線(UV)ランプ32からガラス基板5gの下面に紫外線Cを均一に照射する。この場合、ガラス基板5gとITO電極4diは共に透明であるため、紫外線Cは、ガラス基板5gとITO電極4diを透過してUV硬化樹脂Rsに照射される。本実施形態の場合、UV硬化樹脂Rsが凹空間Asに入り込んでいるとともに、バリアフィルムFは紫外線を透過しないタイプも多いため、バリアフィルムFの上方から紫外線を照射する一般的な手法では、UV硬化樹脂Rsを望ましい状態に硬化させることができない。しかし、本実施形態では、基板5として、透明性を有するガラス基板5gを用いるとともに、少なくとも感湿膜3と基板5間に配する電極層4dとして、当該ガラス基板5g上に形成したITO電極(透明電極)4diを用いたため、紫外線硬化樹脂Rsを、ガラス基板5g及び透明電極4diを透過する紫外線Cにより効率的に、かつ隅々まで確実に硬化させることができる。

【0033】
これにより、バリアフィルムFから基板5の上面5uの間における少なくとも感湿膜3の側方を覆う樹脂被覆部6が形成される。この場合、バリアフィルムFの側面と感湿膜3の側面と基板5の上面5uにより形成される凹空間Asに、樹脂Rが入り込んで樹脂被覆部6を形成するため、感湿膜3の側方を覆う樹脂被覆部6の厚みを大きくすることができ、無用な水分の侵入に対する阻止作用を高めることができる。また、本実施形態では、バリアフィルムFの他方の面Fsに、樹脂被覆部6を形成する紫外線硬化樹脂Rsを塗布し、この紫外線硬化樹脂Rsを塗布したバリアフィルムFの面Fsを、感湿膜3の他方の面3uに重ね、かつ加圧することにより樹脂被覆部6を形成するようにしたため、容易かつ能率的に樹脂被覆部6を形成することができる。これにより、バリアフィルムFを水蒸気透過率測定器1にセットすることができ、一緒に設けた樹脂被覆部6は水蒸気透過率測定器1の一部を構成する。

【0034】
一方、バリアフィルムFをセットした水蒸気透過率測定器1は、図8に示す水蒸気透過率測定装置50にセットして目的の水蒸気透過率測定を行うことができる。図8中、51は恒温恒湿槽であり、温度を20~70〔℃〕、相対湿度を30~95〔%RH〕に設定可能である。水蒸気透過率測定時には、温度を40〔℃〕、相対湿度を90〔%RH〕に設定する。また、恒温恒湿槽51の内部には、外部操作により開閉することができる蓋52cを付設した密閉ボックス52を収容し、この密閉ボックス52の中に、バリアフィルムFをセットした水蒸気透過率測定器1を収容する。さらに、水蒸気透過率測定器1に備える水分センサ部2の上電極槽4u及び下電極槽4d(ITO電極4di)には、それぞれリード配線53,54の一端を接続し、このリード配線53,54の他端側を恒温恒湿槽51の外部に導出する。そして、リード配線53,54の他端を、静電容量Cを検出するためのキャパシタンスメータ55に接続するとともに、このキャパシタンスメータ55はパソコン等の汎用コンピュータ56に接続する。他方、密閉ボックス52には乾燥空気供給装置57を接続する。これにより、密閉ボックス52の内部に乾燥空気を満たすことができる。

【0035】
次に、水蒸気透過率測定器1をセットした水蒸気透過率測定装置50を用いたバリアフィルムFにおける水蒸気透過率の測定方法について、図8を参照して説明する。

【0036】
まず、恒温恒湿槽51の内部は、温度を40〔℃〕、相対湿度を90〔%RH〕に設定する。これにより、恒温恒湿槽51の内部は、所定の湿度雰囲気Aとなる。また、密閉ボックス52は、蓋52cを閉じ、乾燥空気供給装置57から密閉ボックス52の内部に乾燥空気を供給することにより、相対湿度を0〔%RH〕の状態にする。そして、測定を開始する際には、密閉ボックス52の蓋52cを開く。これにより、温度40〔℃〕、相対湿度90〔%RH〕の空気が密閉ボックス52の内部に流入するため、この時点から測定を行えばよい。

【0037】
この状態では、密閉ボックス52内の水分がバリアフィルムFを透過し、感湿膜3に至るため、感湿膜3の誘電率が変化する。フッ素化ポリイミドの比誘電率は3前後の小さい値となるが、水の比誘電率は常温で80前後の大きい値となるため、感湿膜3が乾燥状態から吸湿状態になれば、水分センサ部2の静電容量Cが大きくなる。この静電容量Cの大きさはキャパシタンスメータ55により測定されるため、汎用コンピュータ56に設定した静電容量Cと水分量の変換用データベース(図5参照)を用いれば、静電容量Cに対応する水分量を求めることができる。

【0038】
また、水蒸気透過率Dwは、次の(式1)から求めることができる。なお、γは図6の関係から実験的に求めたものである。
Dw=(γ×d×8.64×1010)/Δt〔g/m2・day〕 …(式1)
ただし、γ:0.44×(ΔC/C)
ΔC/C:静電容量変化率
d:フッ素化ポリイミドの膜厚
Δt:時間

【0039】
図7は、前述した試料S1と試料S2の時間〔分〕に対する静電容量変化率ΔC/C〔%〕の測定結果を示している。図7及び式1から、試料S1(PENフィルム)の水蒸気透過率は、0.41〔g/m2・day〕となり、試料S2(PENフィルム+シリカ膜(1〔μm〕))の水蒸気透過率は、0.18〔g/m2・day〕となり、試料S3(PENフィルム+シリカ膜(0.5〔μm〕))の水蒸気透過率は、0.04〔g/m2・day〕となる。試料S2とS3は、PENフィルムに対してシリカ膜を付したものであるため、防湿性がより高められている。薄いシリカ膜を用いた試料S3が厚いシリカ膜を用いた試料S2よりも防湿性が高められているのは、薄い膜の方がポリシラザンをシリカ膜に転化する際にクラック(亀裂)が発生しにくいためである。なお、静電容量Cが増えるまでの時間(水分到達時間)に着目すれば、試料S1は概ね50〔分〕程度、試料S2は概ね100〔分〕程度、試料S3は概ね300〔分〕程度となる。

【0040】
このように、本実施形態に係る水蒸気透過率測定器1によれば、バリアフィルムFから基板5の上面5uの間における少なくとも感湿膜3の側方を覆う樹脂被覆部6を設けたため、感湿膜3の両面3u,3dにそれぞれ面接触する一対の電極層4u,4dを有する構造からなる水分センサ部2により水蒸気透過率を測定する場合であっても、本来のバリアフィルムFを透過する水分以外の無用な水分の侵入、即ち、バリアフィルムF以外から感湿膜3に侵入する水分による無用な誤差要因を排除することができる。したがって、測定精度を飛躍的に高めることができ、特に、極微量な水分であっても高い精度により測定することができる。しかも、誤差要因を排除するに際し、感湿膜3の両面3u,3dにそれぞれ面接触する一対の電極層4u,4dを有する構造からなる水分センサ部2に対して、バリアフィルムFから基板5の上面5uの間における少なくとも感湿膜3の側方を覆う樹脂被覆部6を設けたため、水蒸気透過率測定の高精度化を実現する場合であっても、水蒸気透過率測定器1全体のコストアップ及びサイズアップを招く不具合を回避することができ、量産性や使い勝手にも優れる。

【0041】
次に、本発明の変更実施形態に係る水蒸気透過率測定器1について、図9を参照して説明する。変更実施形態は下電極層4dを変更したものであり、ガラス基板5gの上面5uに、真空蒸着法によりクロム(Cr)4daを形成するとともに、この上に金(Au)4dbを形成することにより下電極層4dを設けた。この場合、クロム4daの層厚は15〔nm〕程度、金4dbの層厚は30〔nm〕程度が望ましい。また、この下電極層4dは透明とはならないため、樹脂被覆部6には、UV硬化樹脂以外の樹脂を用いることができる。UV硬化樹脂以外の樹脂としては、例えば、アモルファスフッ素樹脂が好適であり、さらに、前述したエポキシ樹脂やシリコン樹脂等の熱硬化性樹脂も使用可能である。なお、その他の構成は、基本的に図1に示した水蒸気透過率測定器1と同様に構成することができる。このため、図9において、図1と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明を省略する。

【0042】
以上、好適実施形態(変更実施形態)について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、感湿膜3には、フッ素化ポリイミド膜3pの使用が最適となるが、ポリイミド膜など、他の感湿性を有する感湿膜3の使用を排除するものではない。また、電極層4u,4d及び基板5も例示の種類に限定されるものではなく、同様の機能を有する他の電極層4u,4d及び基板5により形成してもよい。さらに、凹空間Asは、設けることが望ましいが、必ずしも設けることを要しない。一方、樹脂被覆部6を形成するための樹脂Rは紫外線硬化樹脂Rsの使用が最も望ましいが、可視光線等を含む他の光波長により硬化する光硬化樹脂も使用できるとともに、熱硬化性樹脂や二液混合硬化樹脂等、水分の透過を阻止するものであれば他の樹脂材料も使用可能であり、樹脂の種類は問わない。したがって、樹脂にはゴム等の水分の透過を阻止可能な素材を含む概念である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明に係る水蒸気透過率測定器1は、各種バリアフィルムFの水蒸気透過率の測定に利用することができる。この場合、バリアフィルムFは、一般的なフィルムの概念に限定されるものではなく、シートやブロック、更には液体や粘性材等を水分センサ部2の上に塗布した後に硬化させてシート層を形成する等の形態であってもよい。また、利用する分野は、食品分野やエレクトロニクス分野をはじめ、機械分野や建築分野等の様々な分野で利用することができる。なお、バリアフィルムFをセットしない場合には、一般的な湿度センサとしても使用可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:水蒸気透過率測定器,2:水分センサ部,3:感湿膜,3u:他方の面,3d:感湿膜一方の面,4u:電極層,4d:電極層,4di:ITO電極(透明電極),5:基板,5u:基板の上面,5g:ガラス基板,6:樹脂被覆部,6r:樹脂層,A:所定の湿度雰囲気,As:凹空間,F:バリアフィルム,Ff:バリアフィルムの一方の面,Fs:バリアフィルムの他方の面,R:樹脂,Rs:光硬化樹脂
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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