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明細書 :土壌改質方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5522626号 (P5522626)
公開番号 特開2011-055733 (P2011-055733A)
登録日 平成26年4月18日(2014.4.18)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成23年3月24日(2011.3.24)
発明の名称または考案の名称 土壌改質方法
国際特許分類 A01G   7/00        (2006.01)
FI A01G 7/00 602Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2009-206564 (P2009-206564)
出願日 平成21年9月8日(2009.9.8)
審査請求日 平成24年9月3日(2012.9.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504155293
【氏名又は名称】国立大学法人島根大学
発明者または考案者 【氏名】森 也寸志
個別代理人の代理人 【識別番号】100116861、【弁理士】、【氏名又は名称】田邊 義博
審査官 【審査官】有家 秀郎
参考文献・文献 実開昭61-191760(JP,U)
特開平07-274722(JP,A)
特開2003-079245(JP,A)
特開2003-274753(JP,A)
調査した分野 A01G 1/00- 1/02
A01G 1/06- 1/12
A01G 5/00- 7/06
A01G 16/00-17/02
A01G 17/18
特許請求の範囲 【請求項1】
表層にしか有機物層が形成されておらず表層以深には有機分が拡散されていない劣化土壌を改質する方法において、
土壌中への水分の毛管力浸透を担う無数のミクロポアが内在した一方向に細長い糸状の繊維質素材ないし木質素材を束ねることによりまたは撚ることにより、土壌中における水分の重力移動を担うマクロポアを構造的に形成した棒状体であって、
対象土壌の不飽和透水曲線における吸引圧が-2kPa~-10kPaとなる水分供給速度が実現されるように、束ねるまたは撚る本数を調整した棒状体を、
上端は地表に露出させつつ、地下20cmから50cmの所定の深さまで、単位面積あたり所定の本数、少なくとも1年以上埋入し続けて深根性植物を繁茂させることを特徴とする土壌改質方法。
【請求項2】
素材を竹またはグラスファイバーとしたことを特徴とする請求項1に記載の土壌改質方法。
【請求項3】
棒状体の太さを直径5mm~20mmとしたことを特徴とする請求項1または2に記載の土壌改質方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、劣化した土壌の改質方法に関し、特に、表層にしか有機物層が形成されておらず、強風や強雨により逐次有機物層が散逸してしまい有機物層の深層への成長機会が損なわれた劣化土壌を改質し、有機物層の再生をおこなわしむる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
劣化土壌とは、赤土に代表されるように透水性が悪く、養分や水分の浸透が不十分な土壌をいう。このような土壌は植生に乏しく、表層部分のみに根をはる程度の植物しか形成されない。また、表層部分に蓄積された有機物層も、水分浸透力が低いため、下方に移動しにくく、大雨などで容易に散逸してしまう。従って、持続的に有機物層が蓄積されないので透水性の向上がもたらされず、一旦劣化土壌が形成されてしまうと元通りになりにくいという問題点があった。
【0003】
劣化土壌であるなしに関わらず土壌に液体を浸透させる方法として、本願発明者による先行技術文献1に開示する技術が知られている。この技術によれば、土壌中の細部まで液体を浸透させることができる。
【0004】
しかしながら、上記先行技術では、液体の滴下ないし散布は、地表からおこなうため、劣化土壌の表層に植物が生育している場合にはかならずしも適正な滴下ないし散布とならないという問題点があった。また、表層の植物は、数ヶ月間単位で変化するため、植生にあわせて滴下や散布を変化させることは、対象地の面積が広大となるほど困難であるという問題点があった。
【0005】
また、このような劣化土壌は、表層部とそれ以深の土壌層とに二層化(二極化)しており、下の土壌層へ有機分を拡散させることが重要であるが、これには数年単位で土壌管理せねばならず、上記先行技術ではこのような長期管理には不向きであるという問題点があった。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開2008-211984号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
すなわち、解決しようとする問題点は、長期間にわたる劣化土壌の改質処理を、容易な管理にておこなえる技術を提供する点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の土壌改質方法は、表層にしか有機物層が形成されておらず表層以深には有機分が拡散されていない劣化土壌を改質する方法において、土壌中への水分の毛管力浸透を担う無数のミクロポアが内在した一方向に細長い糸状の繊維質素材ないし木質素材を束ねることによりまたは撚ることにより、土壌中における水分の重力移動を担うマクロポアを構造的に形成した棒状体であって、対象土壌の不飽和透水曲線における吸引圧が-2kPa~-10kPaとなる水分供給速度が実現されるように、束ねるまたは撚る本数を調整した棒状体を、上端は地表に露出させつつ、地下20cmから50cmの所定の深さまで、単位面積あたり所定の本数、少なくとも1年以上埋入し続けて深根性植物を繁茂させることを最も主要な特徴とする。

【0009】
すなわち、請求項1に係る発明は、棒状体を土壌に刺し入れることにより、土壌中において水分の重力移動を担うマクロポア(50μm以上)と水分の毛管力浸透を担うミクロポア(50μm未満)を適正に混在させ、植物根が達する地表下50cm程度までのいわゆる根群域を三次元的に適正に浸潤させることができ、これにより、深根性植物などの自生を可能とし、根の生育による土壌塊の細分化、これによる更なる保水性の向上、有機分の蓄積および下方浸透を実現し、劣化土壌の改質を実現する。
【0010】
なお、ミクロポアは、繊維質素材ないし木質素材により確保され、マクロポアは糸状素材を束ねるまたは撚ることにより構造的に実現される。また、この構造に基づき棒状体に保水性が生まれ、劣化土壌においては表層の二次元的な水分移流が生じやすいところ、地下への三次元的な水分浸透の契機がもたらされる。
【0011】
糸状とは、糸のように細く長い状体をいう。また、素材の一本の長さが20cm~50cmある必要はなく、適宜束ねたり撚ったりすることによりクロスオーバーし、棒状体の設計長さになればよいものとする。たとえば、素材一本の長さは5cm~15cmとすることができる。また、埋入本数や埋入深さは、素材の選択、対象土壌の飽和透水係数および不飽和透水係数曲線、埋入期間に従って適宜設定できるが、たとえば、埋入間隔は一辺40cmの正方形敷き、一辺50cmの正三角形敷き、とすることができる。また、刺し入れは、棒状体を硬質管でガイドして管だけを抜き取ればよい。
【0012】
請求項2に記載の土壌改質方法は、請求項1に記載の土壌改質方法において、素材を竹またはグラスファイバーとしたことを主要な特徴とする。
【0013】
すなわち、請求項2に係る発明は、簡便な素材で棒状体を作製できる。竹の場合は原料調達も加工も容易であり、自然素材であるので、5~10年程度で素材自体も土に帰り、その間に根群域の改質が実現されるので、一度差し入れればメンテナンスフリーとなる。グラスファイバーはケイ素素材であるので人工物でありながら自然への悪影響が生じず、ミクロポアの人工的な調節も可能となる。
【0014】
請求項3に記載の土壌改質方法は、請求項1または2に記載の土壌改質方法において、棒状体の太さを直径5mm~20mmとしたことを主要な特徴とする。
【0015】
すなわち、請求項3に係る発明は、保水力も加味した適正な劣化土壌の改質処理が可能となる。ここで、径を太くしても素材の量が多くなるだけで土壌への水分浸潤効果は効果的に増大しないため径の上限は20mmとしている。また、径が細すぎると目詰まりが生じやすく下方への水分移流作用が小さくなり、また、穴自体の構造ももろくなりやすいので径の下限は5mmとしている。
【0018】
なお、本発明において、劣化土壌とは、有機物が極僅かであるか、土壌表層近くに集中していて深さ方向に極端な偏りがあるもの示すものとする。たとえば、土層全体の透水性に比べて表層の透水性が1/10未満であり、そこが溶質(有機物)移動の律速になっている場合(後述の図1左)、または、限られた水供給しかないが供給量に比べて土壌の透水性が十分速くない場合(後述の図1右)を挙げることができ、本発明はこのような土壌改質に有効である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、土壌に突き入れるだけでメンテナンスフリーの土壌改良が可能となり、土壌中への炭素固定も可能な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の方法を傾斜土壌と水平土壌に適用する場合の概要説明図である。このうち左図は、土層全体の透水性に比べて表層の透水性が悪く、そこが下方への溶質移動の律速になっている様子を示したものである。また、右図は、限られた水供給しかないが供給量に比べて土壌の透水性が十分でない状態を示したものである。いずれも有機物が微少または土壌表層近くに集中し、深さ方向に極端な偏りを見せる。
【図2】飽和透水係数と不飽和透水曲線の土質による違いおよびそれらに存在するギャップの関係を示した図である。なお、図2(a)では、棒状体に関しては概念曲線をあわせてプロットしている。 図2(a)に示したように、実際の不飽和透水曲線は、数kPaの土壌吸引圧より小さな範囲では不飽和透水係数を測定できないが、図2(b)に示したように、曲線形状から補関してY軸との交点すなわち不飽和透水曲線に基づいた飽和透水係数を求めると、実際の当該土壌の飽和透水係数との間にギャップがあり、一般的に実際の飽和透水係数の値のほうが曲線から求める交点より大きな位置(値)となる。これは、飽和しない間は、浸透が遅いままであることを意味する。本発明では、図2(a)に示したように、毛管力の作用も利用して、当該土壌の飽和透水係数より不飽和透水曲線が上に位置するような材料選択をし、飽和する前であっても(不飽和の状態であっても)積極的に水の浸透を促す発明であるといえる。
【図3】土に穴をあけ所定のミクロポアを有する棒状体をさし込んだときのシミュレーション結果を示した図である。ここで、左図により、マクロポアがないと下方浸透が十分に起こらないことが分かる。中図はマクロポアの間隔を徐々に広げたものであり、ここでは数時間のシミュレーション結果であるが、長期間マクロポアが維持されていれば、間隔を広くできることが示唆されている。右図は、マクロポアの径を変えた結果である。下方浸透という目的ではマクロポアの径を大きくしても効果は変わらないことが分かる。
【図4】実験圃場における透水性改善の結果を示した写真である。右半分は参照区、左半分はグラスファイバーを入れたマクロポア区である、明らかに植物バイオマス量が左側で多いのが目視で確認できる。
【図5】同圃場において、土壌水分の増減を2008年7月から2009年3月までモニタリングした結果を示したグラフである。参照区では深さ10cmで水分が高いが、グラスファイバー区では深さ30cmで水分の上昇が見られ、下方浸透改善の結果があらわれている。
【図6】同圃場から採取された植物バイオマス量を示した結果である。グラスファイバーマクロポア区では参照区に比べ、乾物重として倍近い量が得られている。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の方法を傾斜土壌と水平土壌に適用する場合の概要説明図である。図では、本方法を適用していない劣化土壌の様子もあわせて示している。

【0022】
棒状体1は、グラスファイバー(坂口電機製ヤーン)を撚ったものであり、直径約1cm、長さ30cmに調整したものである。これを、等間隔で劣化土壌に20cm間隔で埋入する。埋入に当たっては、まず、外径1.3cmφ程度の中空パイプを土壌30cmの深さまで突き刺し、これを抜き取って略1cmφ×30cmの土壌を除去する(空洞ができる)。土壌には固着性があるため,パイプを抜き取っても空洞形状は維持される。

【0023】
次に、同様の外径1.3cm内径1.0cmの中空パイプに棒状体1をさし込み、これを先にあけた空洞に差し入れ、中空パイプ部分だけを取り除く。棒状体1は、繊維材料を撚ってあり長手方向にスジが形成されているので、飽和近くの水分量の場合(降雨時の場合)、土壌そのものより効果的に水を導く。また、鉛直下方に穴があけてあるので、下方への水分移動が相乗的に促されることとなる。すなわち、棒状体1を土壌にさし込むと、効果的に穴内に水が移動するようになる。これは、強雨でも表層に水が溜まりにくくなることも意味し、表層の土壌散逸が防止されることにもつながる。

【0024】
一方、棒状体1は、糸状の繊維材料であって無数のミクロポアが内在しているので、雨がやんでしばらくすると不飽和状体となり毛管力が優位となるので、土壌中への効果的な水分拡散が実現される。なお、このとき、棒状体1は通気組織としても機能するため、透水不良土層の酸素供給にも貢献することとなる。これは、微生物の土壌中の繁殖を促すので、表層以深の改質に貢献することにもつながる。

【0025】
束ねる繊維の本数を変えることにより、棒状体1の透水性の調整も可能である。目安としては、対象土壌の不飽和透水係数曲線における吸引圧(suction)が-2kPa~-10kPaとなるような水分供給速度となるように本数調整をおこなう。

【0026】
なお、飽和透水係数と不飽和透水係数曲線の例を図2に示す。ここで、飽和透水状態とは、土の間隙が総て水で満たされている状態をいい、このときの水の移動量が飽和透水係数である。不飽和状態とは、土の間隙が水だけでなく空隙(空気)も混在する状態であって、不飽和透水係数は、水移動の力(重力もしくは毛管力)に基づく水の移動量を示すものである。飽和透水係数と不飽和透水係数曲線の開始点にはギャップがあることが知られている。図2(b)は、実際の土壌であって粘土層とローム層のそれぞれ30cm深さの土、50cm深さの土における飽和透水係数ないし不飽和透水係数曲線を測定してプロットしたものである。

【0027】
棒状体1は、上述のギャップを埋める透水性を有するように調整が可能であり、飽和流における地表面流を防止し、不飽和流の状態からでも積極的に水分の下方浸透を促すことができる(図2(a)に棒状体1の性質の概念をプロットした)。

【0028】
すなわち、棒状体1は、マクロポアとミクロポアが混在し、また、毛管力による水分伝搬力を有するので、実際の土壌と異なり、飽和透水係数と不飽和透水曲線との間にはギャップが存在しない部材であるといえる。よって、実際の土壌改質においては、当該土壌の飽和透水係数と差がない飽和透水係数を有する棒状体1を埋設すれば、中空パイプによる人工穴と棒状体1との間にある間隙の影響もあり自然と当該土壌の飽和透水係数と不飽和透水曲線との橋渡しをするようになる。

【0029】
次に、コンピュータシミュレーションにより、水の下方移動およぶ土壌中への拡散(水平移動)について説明する。図3は、土に穴をあけ所定のミクロポアを有する棒状体をさし込んだときのシミュレーション結果である。図では色の濃さにより、水分量を示している。

【0030】
図3左は、通常の土壌に液送した結果である。図3中は、穴の径は1cm深さは30cmとして、隣り合う穴の間隔を次第にあけて配置した結果である。図3右は、穴の径を変化した結果である。

【0031】
なお、仮定として、土壌範囲は横80cm、深さ50cmの二次元断面とし、穴は所定の透水係数を有し(棒状体をさし込んだことに相当する)、単位時間あたり2mmの雨が4時間降ったものとした。また、土壌の飽和透水係数は壌土質土壌に多く見られる1x10-3cm/secとし、不飽和透水係数は1x10-4cm/secから不連続に始まる係数であって、場所によりランダムに±50%の揺らぎがあるものとした。

【0032】
図から明らかなように、4時間の降雨では間隔は5cm~10cmが適し、また、穴の径は1cmで十分であることが確認できた。なお、上記シミュレーションは、4時間で土壌中の水分が高まる間隔であるので5cm~10cm間隔が適する、という結果であり、降雨後24時間のうちに多くの水分移動が発生することを鑑みると、水平方向への水移動は等速移動を仮定して、30cm/日~60cm/日が目安となる。すなわち深さ50cmの土層に水分を到達させる目的においては、棒状体は40cm~50cm程度の間隔とするとよいといえる。なおこの間隔とすると、送水量が少ない時期、または降雨の少ない時期においては中途に土壌水分率が低いところが生じ、いわば、含水量分布がまだらとなる場合があるが、一旦深根性植物が生育すると、その根が棒状体の役割を担うので、順次まだらの部分が減少していく。よって、棒状体の間隔は上記の通り40cm~50cmとすればよい。

【0033】
次に、実際の土壌で棒状体1をさし込んだ実験をおこなった。なお、当該実験は、屋外実験ではあるが、新規性を喪失しないように管理しておこなった。図4は、対象区と共に写した植生写真であり、図5は、約8ヶ月間の土壌水分の推移を測定したグラフである。

【0034】
なお、実験した土壌は赤黄色土壌で粘土分が20%以上を占めており、地表面の透水係数が10-5cm/sと水田土壌に近く、水が溜まりやすいことが分かっている。

【0035】
図4から明らかなように、実験区は明らかに対象区より植物が繁茂していることが確認できる。また、図5に示したように、地表10cmの土壌水分量は対象区が多く、地表30cmの土壌水分量は、実験区の方が多い。これは、地表10cmでは、水はけが悪いため、対象区の水分量が多くなることを示し、逆に、実験区では差分だけ穴へ導水している結果といえる。反対に、棒状体により水分拡散をし続けているため地表30cmでは、実験区の水分量が多くなっている。

【0036】
以上説明したように、本発明によれば、ミクロポアを調整可能なグラスファイバーを用いて、その束ねる本数や撚り方を調整してマクロポア中の導水性や保水性を確保し、単に土壌にさし込むだけでメンテナンスフリーな土壌改質が実現できる。土木工学的には最小限の現場加工で実現でき、また、表層土壌を耕していないため、新たな水分損失と微細粒子流亡の危険性が最小限となるといえる。

【0037】
また、本技術を応用することにより、劣化土壌を利用した炭素固定が可能となる。具体的には劣化土壌にたいし、少なくとも1年以上棒状体を埋入し続けて、深根性植物を繁茂しやすくする。これにより、表面の有機物層の層厚増大、有機分の下方浸透を招来し、炭素を根群域に固定する。

【0038】
図6は、図4に示したフィールドにおいて、繁茂植物の種類と重量(湿重、乾重)の違いを示した表である。実験区と比例区のうち、同面積の各3区画を設定し(有1~有3は棒状体の挿入区画、無1~無3は対照区)、繁茂植物を調査した。表から明らかなように、深根性の植物(カラスノエンドウ)は実験区で多く、浅根性の植物(タネツケバナ)は対照区で多い。また、実験区の繁茂植物の乾物重は、対照区の繁茂植物の乾物重に比して、2倍近くの差が得られた。

【0039】
次に、炭素固定効果、すなわち、二酸化炭素削減効果を算出する。まず、世界の劣化土壌の面積は3505Mhaとされており(出展:Global assessment of land degradation and improvement 2008、 FAO/ISRIC p.27)、その内の1%がアクセス可能な地域とすると、対象面積は、約35万km2となる。

【0040】
ここで、有機分の到達深度を0.5mとした場合、対象土壌の量は、比重が1.5g/cm=1500Mt/kmとすると、350000×0.0005×1500=262500Mtとなる。

【0041】
前述の基礎実験(図4)から、深さ10cm、30cm、50cmで平均的に0.566%の有機物量の有意な増加を観察している。すなわち単位土壌重量あたり0.00566(g-C)/(g-soil)の炭素重量増が見込める。8ヶ月の実験結果を12月(1年)に換算すると、当該係数は0.00849(g-C)/(g-soil)/yrとなる。従って、劣化土壌に貯留可能な炭素量は262500×0.00849=2229Mt.C/yr.となり、現在の陸域の年間炭素吸収量である3Gt/yr.にごく近くなるほどの技術であることが確認できた。なお、この数値は有機物が分解されることで一部減ずるが、この量を二酸化炭酸量に換算すれば2229Mt./yr.×44/12=81.7億t-CO/yrである。この値は大規模植林で期待される量と近似したオーダーであるので、計算は妥当であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、劣化土壌の改質はもとより、劣化土壌を利用した炭素固定二酸化炭素削減が可能となる。
【符号の説明】
【0043】
1 棒状体
図面
【図1】
0
【図2(a)】
1
【図2(b)】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6