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明細書 :三次元顕微鏡装置及び同装置を用いた観察・測定法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5300522号 (P5300522)
公開番号 特開2010-191170 (P2010-191170A)
登録日 平成25年6月28日(2013.6.28)
発行日 平成25年9月25日(2013.9.25)
公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
発明の名称または考案の名称 三次元顕微鏡装置及び同装置を用いた観察・測定法
国際特許分類 G02B  21/00        (2006.01)
G02B  27/02        (2006.01)
FI G02B 21/00
G02B 27/02 Z
請求項の数または発明の数 3
全頁数 13
出願番号 特願2009-035171 (P2009-035171)
出願日 平成21年2月18日(2009.2.18)
審査請求日 平成24年1月5日(2012.1.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504150461
【氏名又は名称】国立大学法人鳥取大学
発明者または考案者 【氏名】後藤 知伸
【氏名】中井 唱
【氏名】菊田 誠之
個別代理人の代理人 【識別番号】100078204、【弁理士】、【氏名又は名称】滝本 智之
審査官 【審査官】殿岡 雅仁
参考文献・文献 特開平09-288221(JP,A)
特開平11-326682(JP,A)
特開平10-248806(JP,A)
特開平06-052316(JP,A)
特開平06-213632(JP,A)
特開平11-063927(JP,A)
特開平07-261094(JP,A)
調査した分野 G02B 21/00
G02B 21/06 - 21/36
特許請求の範囲 【請求項1】
観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第一の撮像装置と、前記第一の撮像装置とは異なる方向より前記観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第二の撮像装置とよりなり、前記第一の撮像装置より得られた第一の画像情報と前記第二の撮像装置より得られた第二の画像情報より、前記観察対象物の三次元情報を得るようにするとともに、前記観察対象物の特定点の位置情報を複数時点において取得し、それら取得された位置情報より前記観察対象物の回転等の姿勢に関する情報を得るようになした装置において、2枚の板体間に留保された液中に前記観察対象物を収容し、前記2枚の板体間の間隔を、一方の対物レンズの視野に入らない範囲で且つ当該2枚の板体間の液が表面張力により留保されるように設定することを特徴とする三次元顕微鏡装置。
【請求項2】
観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第一の撮像装置と、前記第一の撮像装置とは異なる方向より前記観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第二の撮像装置とよりなり、前記第一の撮像装置より得られた第一の画像情報と前記第二の撮像装置より得られた第二の画像情報より、前記観察対象物の三次元情報を得るようにするとともに、前記観察対象物の特定点の位置情報を複数時点において取得し、それら取得された位置情報より前記観察対象物の回転等の姿勢に関する情報を得るようになした装置において、2枚の板体間に留保された液中に前記観察対象物を収容し、前記2枚の板体間の間隔を、一方の対物レンズの視野に入らない範囲で且つ当該2枚の板体間の液が表面張力により留保されるように設定するとともに、前記観察対象物の特定二点の位置情報から同特定二点間の距離を複数個取得して同特定二点間の距離の平均値を算出するとともに、前記観察対象物の特定二点間の距離を前記平均値となるように位置情報の補正値を求め前記位置情報の最尤値を求めるようにしたことを特徴とする三次元顕微鏡装置。
【請求項3】
観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第一の撮像装置と、前記第一の撮像装置とは異なる方向より前記観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第二の撮像装置とよりなり、前記第一の撮像装置より得られた第一の画像情報と前記第二の撮像装置より得られた第二の画像情報より、前記観察対象物の三次元情報を得るようにするとともに、前記観察対象物の特定点の位置情報を複数時点において取得し、それら取得された位置情報より前記観察対象物の回転等の姿勢に関する情報を得るようになした装置を用いて、2枚の板体間に留保された液中に前記観察対象物を収容し、前記2枚の板体間の間隔を、一方の対物レンズの視野に入らない範囲で且つ当該2枚の板体間の液が表面張力により留保されるように設定するとともに、前記観察対象物の特定二点の位置情報から同特定二点間の距離を複数個取得して同特定二点間の距離の平均値を算出するとともに、前記観察対象物の特定二点間の距離を前記平均値となるように位置情報の補正値を求め前記位置情報の最尤値を求めるようにしたことを特徴とする三次元顕微鏡装置を用いた観察・測定法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、主として観察対象物の大きさが数μm程度の微小体を立体的に顕微鏡観察・測定するに際し、有用な三次元顕微鏡装置及び同装置を用いた観察・測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元情報が取得可能な従来の顕微鏡装置としては、代表例として、以下に述べる2つの装置がある。
【0003】
第1は、追跡型顕微鏡といわれるもので、観察対象物が焦点面に入るように自動で同対象物の位置を動かすようにする装置である。
【0004】
しかし、この装置はその原理上奥行き方向の解像度が同装置のレンズ系の焦点深度の程度しかないという課題、また、対象物の大きさが数μmというような微小の物体であるとその輪郭が検出できず十分な観察・測定が不可能という課題がある。
【0005】
さらにまた、対象物の回転等の姿勢に関する情報が得られないという課題もある。
【0006】
第2は、全焦点型顕微鏡といわれるもので、対物レンズを高速で走査し、対象物が焦点面に入った部分のみを検出し、三次元像を構築する装置である。
【0007】
しかしこの装置も又、奥行き方向の解像度が同装置のレンズ系の焦点深度の程度しかないという課題、また、対象物の大きさが数μmというような微小の物体であるとその輪郭が検出できず十分な観察・測定が不可能という課題がある。
【0008】
さらにまた、対象物の回転等の姿勢に関する情報が広範囲に得られないという課題や対物レンズの走査方向の範囲、つまり可測定範囲が制限されるという課題もある。
【先行技術文献】
【0009】

【特許文献1】特許第3737483号公報
【0010】

【非特許文献1】尾川順子著「高速ビジュアルサーボ技術を用いたマイクロ世界の計測と制御」第21回エアロ・アクアバイオメカニズム研究会講演会資料2008.3.21千葉大学
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前述の第1、第2の顕微鏡装置の課題である、対象物の回転等の姿勢に関する情報が得られない、又は広範囲に得られないという問題を解決しようとするものである。
【0012】
微小物体であるバクテリアの多くは、らせん形のべん毛を回転することで溶液中を直進遊泳するが、壁面や液面などの境界近傍においては、べん毛の回転に伴う周囲の溶液の流れが境界と干渉することにより、バクテリアの遊泳軌跡は壁面に沿った円弧を描く。このような運動を観察・測定するためには、境界に対するバクテリアの三次元位置や回転等の姿勢に関する情報が必要となるが、本発明は、これら情報の取得が広範囲にわたって可能
となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明請求項1に係る発明は、観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第一の撮像装置と、前記第一の撮像装置とは異なる方向より前記観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第二の撮像装置とよりなり、前記第一の撮像装置より得られた第一の画像情報と前記第二の撮像装置より得られた第二の画像情報より、前記観察対象物の三次元情報を得るようにするとともに、前記観察対象物の特定点の位置情報を複数時点において取得し、それら取得された位置情報より前記観察対象物の回転等の姿勢に関する情報を得るようになした装置において、2枚の板体間に留保された液中に前記観察対象物を収容し、前記2枚の板体間の間隔を、一方の対物レンズの視野に入らない範囲で且つ当該2枚の板体間の液が表面張力により留保されるように設定することを特徴とする三次元顕微鏡装置である。
【0014】
本発明請求項2に係る発明は、観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第一の撮像装置と、前記第一の撮像装置とは異なる方向より前記観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第二の撮像装置とよりなり、前記第一の撮像装置より得られた第一の画像情報と前記第二の撮像装置より得られた第二の画像情報より、前記観察対象物の三次元情報を得るようにするとともに、前記観察対象物の特定点の位置情報を複数時点において取得し、それら取得された位置情報より前記観察対象物の回転等の姿勢に関する情報を得るようになした装置において、2枚の板体間に留保された液中に前記観察対象物を収容し、前記2枚の板体間の間隔を、一方の対物レンズの視野に入らない範囲で且つ当該2枚の板体間の液が表面張力により留保されるように設定するとともに、前記観察対象物の特定二点の位置情報から同特定二点間の距離を複数個取得して同特定二点間の距離の平均値を算出するとともに、前記観察対象物の特定二点間の距離を前記平均値となるように位置情報の補正値を求め前記位置情報の最尤値を求めるようにしたことを特徴とする三次元顕微鏡装置である。
【0015】
本発明請求項3に係る発明は、観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第一の撮像装置と、前記第一の撮像装置とは異なる方向より前記観察対象物の画像情報を得るための光源、対物レンズ、撮像体よりなる第二の撮像装置とよりなり、前記第一の撮像装置より得られた第一の画像情報と前記第二の撮像装置より得られた第二の画像情報より、前記観察対象物の三次元情報を得るようにするとともに、前記観察対象物の特定点の位置情報を複数時点において取得し、それら取得された位置情報より前記観察対象物の回転等の姿勢に関する情報を得るようになした装置を用いて、2枚の板体間に留保された液中に前記観察対象物を収容し、前記2枚の板体間の間隔を、一方の対物レンズの視野に入らない範囲で且つ当該2枚の板体間の液が表面張力により留保されるように設定するとともに、前記観察対象物の特定二点の位置情報から同特定二点間の距離を複数個取得して同特定二点間の距離の平均値を算出するとともに、前記観察対象物の特定二点間の距離を前記平均値となるように位置情報の補正値を求め前記位置情報の最尤値を求めるようにしたことを特徴とする三次元顕微鏡装置を用いた観察・測定法である。

【発明の効果】
【0016】
本発明は、前述のような構成からなるので、従来の装置では不可能であった微小体の回転等の姿勢に関する情報が広範囲に得られることとなり、バクテリア等の境界に対する挙動の観察・測定に多大な効果を奏する。
即ち、本発明は、対物レンズ系の焦点深度の数倍の範囲において、観察・測定可能であり、解像度が焦点深度に依存しないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施例における三次元観察可能な顕微鏡装置の概略図である。
【図2】図1に示す顕微鏡でゾウリムシを撮影したときの、各方向からの画像を示す図である。
【図3】境界からの光の反射を防ぐための試料容器の概略図である。
【図4】図1に示す装置で測定したビブリオ菌の遊泳運動の三次元軌跡を示す図である。
【図5】図1に示す装置で測定したビブリオ菌の姿勢についての三次元情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施例につき、以下、図面を用いて説明する。図1は本発明の実施例の概略的
構成を示している。図1において右下に示す方向にx、y、z軸をとる。1は光源としての透過光源、2は位相差コンデンサ、3は対物レンズ、4は対物レンズ位置調節ハンドル、5は撮像体の一例としてのCCDカメラで、13は光路折り曲げミラーであり、1~5、13で1つの顕微鏡ユニット、即ち第一の撮像装置の一例を構成している。13の光路折り曲げミラーは、対物レンズを通った光をCCDカメラ5に入れるために設けた。

【0019】
また、もう1つの顕微鏡ユニット、即ち第二の撮像装置の一例は、透過光源6、位相差コンデンサ7、対物レンズ8、xyz調節台9、撮像体の一例としてのCCDカメラ10、ビデオマイクロスコープ14から構成される。

【0020】
1~5、13からなる顕微鏡ユニットは、既製の顕微鏡(オリンパス社、IX-71)を用いているが、6~10、14から構成される顕微鏡ユニットはそれらを設置する顕微鏡本体が無いため、光軸合わせを行う必要があり、また対物レンズ8を通った光がCCDカメラ10において像を結ぶためのビデオマイクロスコープ14が必要となる。

【0021】
カメラ5、10に結ばれた像は図示しない画像取り込みボードによりハードディスクに同期取込みする。観察対象物に応じて透過光源1、6を落射光源にして、位相差コンデンサ2、7を無くしても良い。光源の光は可視光に限定されるわけではなく、赤外線、紫外線やX線でもよい。上記2つの撮像装置における光軸は、異なる方向、つまり平行でないことが要求される。本実施例においては、2つの光軸が直交するようにした。

【0022】
上記2つの顕微鏡ユニットにおける光軸が垂直に交わるようにするため、1~5、13から構成される顕微鏡ユニットを組み立て、その光軸にできるだけ垂直な光軸を持つように6~10、14を配置する。その後、xyz調節台9を用いて2つの光軸が交わるようにし、xyz調節台9をx方向に調節することで、2つの対物レンズ3、8の焦点面の交線が2つのCCDカメラ5、10いずれの視野にも入るようにする。2つの光軸は厳密に交わる必要はなく、CCDカメラ5、10どちらの視野にも同一の観察対象物が結像されていればよい。また2つの光軸が垂直であることも、後の解析に便利になるためであり、本発明の原理においては厳密に垂直であることを要求しない。

【0023】
2つの対物レンズ3、8はお互いにぶつからない配置をとる必要がある。高倍率の対物レンズを用いる場合は作動距離が短いため、通常の20倍以上の対物レンズを用いてその光軸が直交し、かつ2つの焦点面の交線がいずれものCCDカメラの視野に入ることは困難である。これを防ぐため、作動距離の長い対物レンズを用いる必要がある。本実施例のように、2つの対物レンズの光軸が垂直な場合、一方の対物レンズの作動距離は他方の対物レンズの筒の最大半径、つまり対物レンズの最外縁径の半分の長さよりも長いことが必要である。

【0024】
また、観察対象物を固定するためのサンプルホルダ11に上記2つの対物レンズがぶつからないように工夫する必要がある。本実施例においては既製の顕微鏡のステージを取り除き、代わりに金属板を用いて小型のステージを作成し、12に示すxy調節台に固定した棒にステージを吊り下げることで、従来のステージと同様にxy方向に移動可能でかつ、上記2つの対物レンズがぶつからないサンプルホルダを作成した。

【0025】
図1に示す装置を用いてゾウリムシを観察したときの画像を図2に示す。図2(a)(b)は、図1においてそれぞれCCDカメラ5、10の画像であり、2つの対物レンズ3、8の光軸が垂直な場合、図2に示すx、y、z方向はそれぞれ図1のx、y、z方向と対応する。2つの光軸が垂直でない場合には、垂直からの傾き角をあらかじめ測っておく必要がある。図2(a)(b)ともに、画面左側に見えるのがゾウリムシ、右側に見える黒いものは溶液中のゴミであり、2方向から同一物体を観察できることがわかる。ここで
ゾウリムシの片方の端を座標原点とする。つまり、図2(a)におけるゾウリムシの右端をx、y座標の原点、図2(b)におけるゾウリムシの右端をx、zの原点とする。

【0026】
そうすると、あらかじめ2つの画像の縮尺を測定しておけば、ゾウリムシの原点でないほうの端について、位置情報である位置座標が取得可能である。ゾウリムシのような細長い物体についてその両端の位置座標を各時刻において取得できれば、三次元の並進および回転運動についての情報が得られる。

【0027】
従来の三次元顕微鏡観察手法においては、観察対象物が対物レンズの焦点面から外れたときの輪郭のボケ具合を検出して視野内における奥行き情報を得ていたため、奥行き方向の解像度が用いた対物レンズの焦点深度の程度しかなかったが、本発明の手法ではxyz全ての方向について直接観察するので、xyzどの方向においても解像度は高く、原理的には光の波長程度の解像度を有する。

【0028】
ゾウリムシのように観察対象物が運動する場合、従来の手法である追跡型顕微鏡を用いる場合はピントが外れることなく観察できるが、本発明による手法の場合は観察対象物の完全な追跡は不可能であり、鮮明な画像を得ることができないため、取得した座標には誤差を含む。例えば図2(a)におけるゾウリムシの左端のy座標と図2(b)におけるゾウリムシの左端のy座標は本来等しいはずであるが、像が不鮮明になるにつれてその差は大きくなる。

【0029】
このような場合に、求める位置座標の最尤値を求めるための補正が必要となる。まず、観察対象物はゾウリムシのように細長く、両端が存在するものとする。各時刻における観察対象物の両端の位置座標から、両端間の長さLを求める。各時刻におけるLは測定が精密ならば一定の値のはずであるが、ピントのズレなどにより異なった値をとる。

【0030】
そこで、各時刻におけるLの平均Laveを求め、測定した両端間の距離が常にLaveとなるように、測定した座標の補正値を求める。

【0031】
さらに、補正した座標と初めに測定した座標との差が出来るだけ少なくなるように、ラグランジュの未定乗数法を用いて補正値を求める。これにより、ピントのずれによる誤差の影響を可能な限り除去した位置座標の最尤値が求まる。撮像装置を3つ以上としても良く、その場合補正の精度は向上する。

【0032】
三次元観察が有効であるのは、多くの場合、観察対象物が壁面や水面などの界面近傍を運動するときであるが、本発明による手法を用いて境界近傍を観察する際には、境界面に平行に対物レンズの光軸が存在する場合に境界面からの反射光が対物レンズに入り、境界近傍を運動する対象物のコントラストが得られないという問題点がある。この問題を解決するために、ガラスのような透明板体を用いて微小な試料容器を作る方法が挙げられる。

【0033】
本実施例においては、図3に示すように、ガラスで囲まれた空間内に試料溶液を注入する。このとき、溶液の表面張力により、周囲を密封することなく溶液を留保することができる。この空間のサイズは、観察対象物の大きさにより自由に変えても構わないが、表面張力により液滴が動くことなく留保される必要がある。試料溶液20を2枚のガラス16、17で挟んだものをサンプルホルダ15に立てて固定し、2つの方向から対物レンズ18、19を用いて観察する。

【0034】
図3に示すxyz軸の方向は、図1に示すものと対応している。図3における試料溶液20の下面にある自由表面近傍を観察領域とすると、この自由表面の面積が狭いほど対物レンズ19に入る境界からの反射光は少なくなる。ただし、ガラス16、17の間隔を狭
くしすぎると、対物レンズ18の視野内にガラス16、17が入ってしまい、対物レンズ18から得られる像が不鮮明になってしまう。

【0035】
このため、ガラス16、17間の距離は、対物レンズ18の視野に入らない程度に広くかつ、出来るだけ狭いことが望ましい。また、この自由表面に薄いガラスなどでふたをすることにより、固体表面近傍における三次元観察も可能になるものと考えられる。境界からの反射を防ぐ別の方法として、どちらの対物レンズにも境界からの反射光が入らないようにサンプルを保持する角度を工夫するという手法も考えられる。

【0036】
図2におけるゾウリムシの画像も、上記の方法で試料作成をしており、図2(b)の下部の黒い部分が自由表面であるが、境界からの反射光は少なく、鮮明な像が得られている。

【0037】
本実施例の手法は、顕微鏡の形状の制限があったため、上記のような形をとったが、境界からの反射光が対物レンズに入らないような形態であれば何でもよい。例えば、透明板体を透さない方向から観察できるのであれば、試料を留保する容器は透明でなくても良いし、微小管から垂れている微小な液滴や、単にガラス板上の微小液滴を複数方向から観察する、という方法でも良い。

【0038】
本発明の方法を用いて、ビブリオ菌の自由表面近傍における遊泳運動を観察した。ビブリオ菌の大きさは数マイクロメートルであるため、高倍率の対物レンズが必要であるが、対物レンズどうしがぶつからないように、対物レンズ3にはオリンパス社のSLMPLN50×(作動距離18ミリ)を用いた。

【0039】
図4において、(a)は図1におけるCCDカメラ5の映像より得たxy平面上の菌の遊泳軌跡、(b)は図1におけるCCDカメラ10のより得たxz平面上の菌の遊泳軌跡であり、(c)は(a)(b)2つの画像を合成して得た菌の三次元軌跡を表す。映像のフレームごとに菌体の先頭位置の座標を取得し、これらをグラフにプロットすることで、細菌の遊泳軌跡を表した。

【0040】
図5において、(a)は菌体の角度を定義するための図、(b)は角度θと自由表面からの距離dの時間変化、(c)は角度φと自由表面からの距離dの時間変化を示している。ビブリオ菌のサイズは数マイクロメートルと小さいが、図4、5から三次元位置と回転に関する情報が得られることがわかる。

【0041】
本実施例においては、大きさ数マイクロメートルの対象物を観察するために拡大倍率が50倍程度の対物レンズを用いたが、数十マイクロメートル立方の領域の観察を、0.5マイクロメートルの空間解像度をもって行うことが可能である。

【0042】
本発明の応用例の一つに、自由空間内における精子の運動観察が挙げられる。精子の遊泳軌跡はらせん形であり、その特徴を捉えるには三次元観察が不可欠である。また、精子の大きさは10マイクロメートル程度、遊泳軌跡のらせん半径は数十マイクロメートルであることから、本発明が有用であることが期待される。また、ブラウン運動が境界から受ける影響や、発酵などにともなう溶液中の微小気泡の観察などにも応用できる。
【符号の説明】
【0043】
1 透過光源
2 位相差コンデンサ
3 対物レンズ
4 対物レンズ位置調節ハンドル
5 CCDカメラ
6 透過光源
7 位相差コンデンサ
8 対物レンズ
9 xyz調節台
10 CCDカメラ
11 サンプルホルダ
12 xy調節台
13 光路折り曲げミラー
14 ビデオマイクロスコープ
15 サンプルホルダ
16 ガラス
17 ガラス
18 対物レンズ
19 対物レンズ
20 試料溶液
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4