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明細書 :微細流路の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5322173号 (P5322173)
公開番号 特開2011-060846 (P2011-060846A)
登録日 平成25年7月26日(2013.7.26)
発行日 平成25年10月23日(2013.10.23)
公開日 平成23年3月24日(2011.3.24)
発明の名称または考案の名称 微細流路の形成方法
国際特許分類 B81C   1/00        (2006.01)
B81B   1/00        (2006.01)
G01N  37/00        (2006.01)
FI B81C 1/00
B81B 1/00
G01N 37/00 101
請求項の数または発明の数 6
全頁数 21
出願番号 特願2009-206147 (P2009-206147)
出願日 平成21年9月7日(2009.9.7)
審査請求日 平成24年9月7日(2012.9.7)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】西岡 賢祐
【氏名】末藤 豪
個別代理人の代理人 【識別番号】110000671、【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
審査官 【審査官】和瀬田 芳正
参考文献・文献 特表2006-523533(JP,A)
国際公開第2010/122720(WO,A1)
国際公開第2006/051727(WO,A1)
国際公開第2010/114887(WO,A1)
調査した分野 B81B 1/00
B81C 1/00
G01N 37/00
H01L 21/306
H01L 21/308
特許請求の範囲 【請求項1】
基板上にマスクパターンを形成する工程と、
貴金属微粒子を前記基板の露出部に塗布する工程と、
前記基板をエッチング溶液に浸漬して前記マスクパターンをマスクとして前記基板の露出部下部の基板をエッチングすることにより、前記基板表面に微細流路を形成する工程と、
を含む微細流路の形成方法。
【請求項2】
前記マスクパターンの形成材料は、疎水性インク材料である、請求項1に記載の形成方法。
【請求項3】
前記貴金属微粒子の平均粒子径は1~500nmである、請求項1または2に記載の形成方法。
【請求項4】
前記微細流路の表面の接触角は90~180°である、請求項1~3のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項5】
前記貴金属微粒子は高分子保護剤で被覆されている、請求項1~4のいずれか1項に記載の形成方法。
【請求項6】
基板と、基板表面に形成された微細流路とを含み、
前記微細流路が請求項1~5のいずれか1項に記載の形成方法により形成される、液体輸送デバイス。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明はエッチングによる微細流路の形成方法に関する。より詳細には、微小反応装置(マイクロリアクタ);MEMS(Micro Electro Mechanical System);バイオセンサなどに使用可能な基板への微細流路の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスを始めとする微細加工を必要とする各種デバイスの分野では、デバイスの高機能化、高密度化、高集積化の要求がますます高まってきている。各種デバイスの微細加工プロセスにおけるパターン形成工程で重要な役割を果たしているのがリソグラフィ技術である。リソグラフィ技術とは、レジストを塗布した基板表面にフォトマスクを配置し、レジストを感光させ、パターンを形成、現像する技術であり、デバイスの高性能化と微細化において重要な役割を果たしている。かようなリソグラフィ技術を用いた微細加工は、工程数が多いうえ、工程が複雑化してしまい、生産性に乏しく高コストであるという問題がある。
【0003】
デバイス製造コストの低価格化要求を受け、リソグラフィ法以外のパターン形成方法が望まれている。リソグラフィ技術以外のパターン形成技術の1つとして、インクジェットプリント等を用いたプリント技術が挙げられる。
【0004】
また、微細加工において材料をエッチングする際、プラズマエッチングが広く使用されている。しかしながら、プラズマエッチングにはプラズマを発生させる機構や、真空系が必要となり、装置構成が複雑でコストがかかる。そこで、これらを必要としないエッチング法として、ウェットエッチング技術が知られている。ウェットエッチングは、エッチング溶液を用いて基板を溶解除去する技術であり、大規模な処理が可能であるという点やコスト面で有利である。しかし、エッチング加工速度を上げるために過酷なエッチング条件でエッチング加工する場合も多く、このような場合、エッチング中にマスクパターンが剥離してしまうという問題がある。また、一般に、ウェットエッチングは等方性エッチングであり、精度の高い微細加工が困難であるという問題もある。
【0005】
したがって、これらの問題を解決すべく、基板表面に容易にかつ低コストで微細加工を施す技術の開発が現在急速に進められている。
【0006】
さらに、近年では、デバイスの多様化・高機能化の要求を受け、基板に機能表面を付与する試みが注目されている。例えば、特許文献1には、貴金属を用いて基板の表面をエッチングすることにより、基板表面にサブミクロンサイズの凹凸(テーパー構造)を形成する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2007-194485号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
微小反応装置、MEMS、バイオセンサなどに使用される液体輸送デバイスにおいては、液体の流路に凹凸構造を付与して、撥水性を付与する試みがされている。
【0009】
特許文献1に記載の技術では、基板表面にテーパー構造を形成することができる。しかし、基板の表面全体にテーパー構造が形成されるため、流路のみに選択的に凹凸を形成することは困難である。
【0010】
そこで本発明は、簡便かつ低コストな方法で、基板表面に選択的に撥水性を有する微細流路を形成する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、マスクパターンを形成した基板を貴金属微粒子の触媒作用を利用してエッチングすることにより、簡便かつ低コストな方法で、基板表面を選択的に異方性エッチングしつつ、流路に撥水性を付与できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、基板上にマスクパターンを形成する工程と、貴金属微粒子を前記基板の露出部に塗布する工程と、前記基板をエッチング溶液に浸漬して前記マスクパターンをマスクとして前記基板の露出部下部の基板をエッチングすることにより、前記基板表面に微細流路を形成する工程と、を含む微細流路の形成方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡便かつ低コストな方法で、基板表面に選択的に微細流路を形成することができる。形成される微細流路はナノサイズのテーパー構造となるため撥水性を示す。したがって、本発明の方法においては、流路のパターニングと撥水性の付与とを同時に実現することが可能である。
【0014】
また、本発明では、微細流路の形成は異方性エッチングにより行われるため、鋭いエッジを有する凹凸構造(微細流路)が得られる。
【0015】
さらに、本発明の方法では、エッチング中にマスクパターンが剥離したとしても、剥離箇所のエッチングが防止されるため、安価なマスク材料を使用することができ、低コストで高精度のパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態である、微細流路の形成方法を示す模式図であって、図1Aはマスクパターンを形成する工程を示す模式図であり、図1Bは貴金属微粒子を前記基板の露出部に塗布する工程を示す模式図であり、図1Cはエッチング工程を示す模式図であり、図1Dはマスクパターン除去工程を示す模式図である。
【図2】実施例1で得られた基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真であって、図2Aはエッチングにより形成された段差部分のSEM写真であり、図2Bは、図2Aに示す非エッチング部60をより拡大したSEM写真であり、図2Cは図2Aに示すエッチング部70をより拡大したSEM写真である。
【図3】実施例2で得られた基板のマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)のSEM写真である。
【図4】実施例3で得られたマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)のSEM写真である。
【図5】実施例4で得られた基板表面のマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)の原子間力顕微鏡(AFM)写真およびその解析結果を示す図面であって、図5Aは実施例4で得られた基板のエッチング部のAFMの3D写真であり、図5Bは実施例4で得られた基板のエッチング部のAFMの表面写真であり、図5Cは図5BにおけるC5-C5線に沿った断面図である。
【図6】実施例5で得られた基板表面のマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)の原子間力顕微鏡(AFM)写真およびその解析結果を示す図面であって、図6Aは実施例5で得られた基板のエッチング部のAFMの3D写真であり、図6Bは実施例5で得られた基板のエッチング部のAFMの表面写真であり、図6Cは図6BにおけるC6-C6線に沿った断面図である。
【図7】実施例6で得られた基板表面のマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)の原子間力顕微鏡(AFM)写真およびその解析結果を示す図面であって、図7Aは実施例6で得られた基板のエッチング部のAFMの3D写真であり、図7Bは実施例6で得られた基板のエッチング部のAFMの表面写真であり、図7Cは図7BにおけるC7-C7線に沿った断面図である。
【図8】接触角測定を示す図面であって、図8Aは非エッチング部における接触角測定を示す写真であり、図8Bはエッチング部における接触角測定を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の代表的な実施形態は、基板上にマスクパターンを形成する工程と、貴金属微粒子を前記基板の露出部に塗布する工程と、前記基板をエッチング溶液に浸漬して前記マスクパターンをマスクとして前記基板の露出部下部の基板をエッチングすることにより、前記基板表面に微細流路を形成する工程と、を含む微細流路の形成方法である。かような方法を用いることにより、簡便な方法で、基板表面に超撥水性を示す微細流路を形成することができる。また、本発明によれば、エッチング中にマスクパターンが剥離したとしても、剥離箇所のエッチングが防止されうる。このため、従来の高価なリソグラフィ装置を使用したり、従来のウェットエッチング法のようにマスクの密着性を高めた高価なレジストを使用する必要はない。したがって、本発明の方法によれば、工程の簡素化が達成され、かつ、コスト面でも有利である。

【0018】
図1は本発明の一実施形態である、微細流路の形成方法を示す模式図である。図1Aはマスクパターンを形成する工程を示す模式図であり、図1Bは貴金属微粒子を前記基板の露出部に塗布する工程を示す模式図であり、図1Cはエッチング工程を示す模式図であり、図1Dはマスクパターン除去工程を示す模式図である。以下、図1を参照しながら本発明の実施形態を工程順に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態のみには制限されない。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。

【0019】
(1)マスクパターンの形成工程(図1A)
まず、図1Aに示すように、基板10上にマスクパターン20を形成する。後述するエッチング工程により、マスクパターンにより露出された基板(基板の露出部10a)がエッチングされ、撥水性を示す流路が形成される。

【0020】
基板としては、貴金属微粒子を用いたウェットエッチングが可能なものであれば特に限定されない。上記基板の材料としては、例えば、シリコン(Si)、インジウムリン(InP)が知られている。中でも、汎用的に使用されるシリコン(Si)が好ましい。なお、基板は、多結晶でも単結晶でもよく、結晶面の方向も特に限定されない。

【0021】
基板の厚みは、基板の種類や使用用途等により異なり、特に限定されないが、例えば1μm~10mmの範囲内である。

【0022】
マスクパターンの材料としては、貴金属微粒子の基板への付着が防止されるものであれば特に限定されない。具体的には、導電インク、絶縁インク、油性染料インク、油性顔料インク、溶剤性インク、ソリッドインク、ゲルインク、ポリマーインク、油性塗料などの疎水性インク材料が挙げられ、中でも、油性染料インクまたは油性顔料インクなどの油性インクがより好ましい。これらの材料はコスト面で安価であり、製造装置の簡略化が図られる。

【0023】
このような疎水性インク材料は耐エッチング性に劣るため、従来のウェットエッチングにおいて疎水性インク材料を使用すると、エッチング中にマスクパターンが剥離する場合がある。この場合、マスクパターンの剥離箇所もエッチングされ、精密なパターン形成を行うことが困難である。このため、従来のウェットエッチングにおいては、エッチングしたくない部分を完全に保護しておく必要があり、基板とマスクパターンとの間に強固な密着性が要求されていた。これに対して、本発明ではエッチング初期段階において貴金属微粒子が付着した部分のみがその触媒作用によりエッチングされるため、エッチング中にパターンが剥離したとしても、剥離箇所のエッチングが防止されうる。したがって、本発明の方法では、従来高精度な流路形成に不向きであった安価な疎水性インク材料を使用でき、製造工程の簡略化およびコストダウンを図ることが可能となるのである。

【0024】
油性インクは、従来から印刷の技術分野で使用されるものであればいずれも使用可能である。通常、油性インクは、染料または顔料などの着色剤、有機溶媒、および水不溶性ポリマーを含むインク組成物の形態で使用される。

【0025】
着色剤としては、従来から油性インク材料として使用されている顔料および染料のいずれでも使用可能である。具体的には、顔料としては、印刷の技術分野で一般に使用される有機顔料および無機顔料を用いることができ、例えば、カーボンブラック、カドミウムレッド、モリブデンレッド、クロムイエロー、カドミウムイエロー、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、ウルトラマリンブルー、プルシアンブルー、コバルトブルー、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ジオキサジン系顔料、スレン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キノフタロン系顔料、金属錯体顔料などが挙げられる。染料としては、印刷の技術分野で一般に使用される染料をいずれも使用可能であり、例えば、アゾ染料、ジスアゾ染料、金属錯塩染料、ナフトール染料、アントラキノン染料、インジゴ染料、カーボニウム染料、キノンイミン染料、シアニン染料、キノリン染料、ニトロ染料、ニトロソ染料、ベンゾキノン染料、ナフトキノン染料、キサンテン染料、フタロシアニン染料、金属フタロシアニン染料などが挙げられる。これらの染料および顔料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0026】
有機溶媒としては、上記着色料を分散させることができ、かつ水不溶性ポリマー成分を溶解し得るものであれば特に制限されない。例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール等のアルコール類;ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、セロソルブ等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、チオジグリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類;N-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等が挙げられる。好ましくは、インクの速乾性の面で、低沸点有機溶媒であるメタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール等の一価アルコール類が好ましい。これらの有機溶媒は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、インク組成物の安定性や水接触による乾燥性を損なわない範囲で、少量の水を含有することもできる。

【0027】
水不溶性ポリマーとしては特に制限されず、インク組成物において従来公知のものを使用すればよい。例えば、アクリル樹脂類、スチレン樹脂類、ブチラール樹脂類(ポリビニルブチラール等)、ニトロセルロース、ポリエステル系樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、酢酸ビニル系樹脂等が挙げられる。中でも、アクリル樹脂類、スチレン樹脂類、ブチラール樹脂類が好ましい。

【0028】
インク組成物における着色料、有機溶媒、水不溶性ポリマーの配合比率は特に限定されない。一例を挙げると、インク組成物の全体(100質量%)に対して、着色剤を0.01~10質量%程度、水不溶性ポリマーを5~40重量%程度、残りを有機溶媒とすればよい。

【0029】
インク組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、通常のインクに含まれる電荷付与剤、pH調整剤、蛍光増感剤、表面処理剤、界面活性剤、増粘剤、レオロジー調整剤、レベリング剤、消泡剤、殺菌剤、防腐・防黴剤、難燃剤、酸化防止剤、導電剤、香料などの種々の添加剤類を配合してもよい。

【0030】
マスクパターンを基板上に形成(印刷)する方法も特に制限されない。例えば、スクリーン印刷、インクジェット印刷、オフセット印刷、凹版印刷、凸版印刷、タンポ印刷、グラビア印刷、感熱転写印刷、スタンプ印刷方式等のあらゆる方式を採用することができる。また、直接手動でマスクパターンを形成してもよい。

【0031】
マスクパターンの厚みは、続く貴金属微粒子の塗布工程において貴金属微粒子の基板への付着が防止されるものであれば特に限定されない。具体的には、マスクパターンの厚みは、マスクパターンの形成材料等を考慮して適宜選択すればよい。マスクパターンの幅(すなわち、微細流路間の距離)及びマスクパターン間の距離(すなわち、微細流路の幅)も特に制限されず、適用用途に応じて適宜設定すればよい。一例を挙げると、MEMSの流路として使用する場合は、微細流路の幅は1μm~1mm程度であることが好ましい。マスクパターンの厚み、マスクパターンの幅、微細流路の幅は、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて測定することができる。

【0032】
(2)貴金属微粒子の塗布工程(図1B)
次に、図1Bに示すように、貴金属微粒子30を前記基板の露出部10aに塗布する。貴金属微粒子30は、続くエッチング工程において触媒として作用し、基板を溶解させる。

【0033】
使用しうる貴金属微粒子としては、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)などの貴金属を含む粒子が挙げられ、中でも、触媒作用に優れる金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、またはパラジウム(Pd)を含むことが好ましく、コスト面や入手容易性の面から銀(Ag)を含むことが好ましい。これらの貴金属微粒子は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。

【0034】
エッチングにより得られる微細構造は、貴金属微粒子の形状や粒径により影響されるため、再現性よく構造を形成するためには、付着させる貴金属微粒子の形状を制御することが必要である。

【0035】
具体的には、貴金属微粒子の粒子径は、最終的に作成する流路におけるテーパー構造の形状に応じて適宜決定すればよい。テーパー構造の形状は貴金属微粒子の粒子径により影響をうけるため、貴金属微粒子の粒子径を制御することにより、テーパー構造の形状を制御することが可能である。一例を挙げると、貴金属微粒子の粒子径は、1~500nmであることが好ましく、3~300nmであることがより好ましく、3~30nmであることがさらに好ましい。かような範囲であれば、エッチングにより微細な流路パターンを形成することができ、かつ、形成される微細流路の表面に撥水性が付与されうる。なお、本明細書において「粒子径」とは粒子(またはその断面形状)の輪郭線上の任意の2点間の距離のうち、最大の距離を意味する。粒子径の値としては、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)などの観察手段を用い、数~数十視野中に観察される粒子の粒子径の平均値として算出される値を採用するものとする。

【0036】
貴金属微粒子の形状としては、球状、棒状、針状、板状、柱状、不定形状、燐片状、紡錘状など任意の構造をとりうるが、球状であることが好ましい。

【0037】
貴金属微粒子の積層厚みは特に制限されず、少なくとも1層以上の貴金属微粒子が積層されていればよい。一例を挙げると、貴金属微粒子の積層厚みは、1nm~1μm程度である。

【0038】
貴金属微粒子の塗布方法は特に制限されない。例えば、貴金属微粒子を含む分散液(貴金属微粒子スラリー)を調製し、これを基板の露出部10aに塗布し、乾燥する方法が挙げられる。この方法では、まず、貴金属微粒子30を分散溶媒31に分散して、貴金属微粒子スラリーを調製する。分散溶媒としては、特に制限されることはないが、例えば、メタノール、エタノール、2-プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘププタノール、α-テレピネオールなどのアルコール類;水;酢酸エチル、酢酸ブチル、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルホルムアミドなどが挙げられる。貴金属微粒子スラリーはホモジナイザー、超音波分散機、ジェットミル、ビーズミル等で均一に分散されることが好ましい。

【0039】
ここで、貴金属微粒子は凝集性が高く、均一分散が困難な場合がある。このため、貴金属微粒子を高分子保護剤で被覆し、この被覆された微粒子を溶媒中に分散させることが好ましい。本明細書において「被覆」とは、貴金属微粒子の表面全体が高分子保護剤により完全に覆われている形態のみならず、貴金属微粒子の表面の一部が高分子保護剤により覆われている形態、すなわち、貴金属微粒子の表面の一部に高分子保護剤が付着した形態をも含むものとする。

【0040】
高分子保護剤としては、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、メルカプトプロパンジオール、メルカプトコハク酸、メルカプトウンデカン酸、チオグリコール酸、メルカプトフェノール、チオサリチル酸、アミノフェノールなどが挙げられる。高分子保護剤により被覆された微粒子の形成方法も特に制限されないが、例えば貴金属イオンおよび高分子保護剤を含む水溶液中で貴金属イオンを還元する液相還元法を使用することができる。また、高分子保護剤で被覆した貴金属微粒子を使用する代わりに、貴金属微粒子とともに高分子保護剤を分散溶媒中に添加して貴金属微粒子スラリーを調製し、これを塗布してもよい。

【0041】
続いて、上記で調製した貴金属微粒子スラリー31を、基板の露出部10aに塗布し、塗膜を形成する。貴金属微粒子スラリーを基板に塗布するための塗布手段は特に限定されないが、例えば、自走型コーター、ドクターブレード法、スプレー法、インクジェット法などの一般に用いられる手段が採用されうる。その後、必要に応じて、基板の露出部10aに形成された塗膜を乾燥させ、塗膜内の溶媒を揮発させる。乾燥条件は特に制限されないが、一例を挙げると、10~120℃で1秒~30分程度であればよい。最も簡便な塗膜形成手段の一例には、貴金属微粒子スラリーを基板の露出部10に滴下した後、窒素ブロアで乾燥させる手段がある。これにより、基板の露出部10aに貴金属微粒子30が付着する(図1Bを参照)。本方法は安価で簡便な方法で貴金属微粒子の付着層を形成することができる点で有利である。なお、上述したように、本発明の方法では貴金属微粒子の付着部分のみがエッチングされるため、貴金属微粒子がマスクパターン上に一部付着していても問題ない。

【0042】
スラリー中の貴金属微粒子の粒子径、スラリー濃度、塗布量を調節することにより、貴金属微粒子の付着状態(粒子径、分布密度、厚み)を制御することができる。貴金属微粒子の付着状態を局所的に変化させることにより、エッチング状態を変化させることができ、これにより、撥水性の程度を局所的に変化させることが可能となる。

【0043】
また、ラングミュア・ブロジェット法により、貴金属微粒子層を形成することも可能である。当該方法を使用すると、基板表面に貴金属微粒子からなる層を一層ずつ積層することが可能であり、膜厚の制御された超薄膜(例えば、1層のみ)を形成できる点で好ましい。

【0044】
この他、スパッタリング、蒸着、電解もしくは無電解メッキ等の方法を使用してもよい。この際、スパッタリング、蒸着、電解もしくは無電解メッキ等の条件を調節することにより、貴金属微粒子の付着状態(粒子径、分布密度、厚み)を制御することができる。また、他の方法として、エッチング溶液中に貴金属イオンを溶解させ、これを用いて基板をエッチングする方法もある。ただし、これらの方法は真空系を必要としたり、貴金属粒子の粒子径の精密制御が困難である場合がある。このため、簡便にかつ制御性よく、テーパー構造を形成する上では、予め粒子径が制御された粒子を用いて、上述したスラリー塗布法やラングミュア・ブロジェット法により貴金属微粒子を塗布することが好ましい。

【0045】
(3)エッチング工程(図1C)
続いて、図1Cに示すように、前記基板10をエッチング溶液(図示せず)に浸漬して前記マスクパターン20をマスクとして前記基板の露出部10a下部の基板をエッチングすることにより、前記基板表面に微細流路40を形成する。本方法では、貴金属微粒子30が付着した部分のみがその触媒作用によりエッチングされる。このため、エッチング工程中にマスクパターンが剥離した場合であっても剥離部分のエッチングが防止される。

【0046】
エッチング溶液としては、酸化剤、フッ化水素酸、および水を含むことが好ましい。かようなエッチング溶液を使用する場合には、基板がエッチングされる際に、貴金属微粒子が酸化剤を還元する触媒として作用する。この還元反応により、貴金属微粒子と接触する基板が酸化剤により酸化され、酸化された基板はフッ化水素酸との反応により、イオンとなって液中へ溶解する(特許文献1を参照)。この溶解反応により、貴金属微粒子が基板内部を掘り進むように、貴金属微粒子に接触した基板が除去(エッチング)され、細孔が形成される。その結果、基板10の表面に、壁面にナノサイズの凹凸構造50を有する微細流路40が形成され、微細流路40の表面に超撥水性が付与される。特に、エッチングは貴金属微粒子が基板内部を掘り進むように進行する、すなわち、異方性エッチングとなるため、等方性エッチングであった従来のウェットエッチングに比べて、高エッジの流路パターンを形成することが可能となる。

【0047】
酸化剤としては、過酸化水素が好適に使用される。過酸化水素は、還元反応により水を生成し、他の有害な副生成物を生成しないため、環境面で優れているためである。

【0048】
エッチング溶液における、酸化剤、フッ化水素酸、および水の配合比は特に制限されない。好適に用いられるエッチング溶液の一例として、30質量%の過酸化水素(H)水溶液と50質量%のフッ化水素酸水溶液と水とを、体積比が5:1:10となるように混合した溶液が挙げられる。貴金属微粒子の触媒作用を十分に発揮させるためには、酸化剤及びフッ化水素酸の濃度はこの程度の濃度で十分である。また、フッ化水素酸の濃度を低くすることは基板の腐食を防止する点で望ましい。

【0049】
エッチング溶液への浸漬時間は形成すべき流路の深さおよび流路表面の撥水性に応じて適宜決定すればよい。長時間の浸漬を行うと流路の深さを深くすることが可能となるが、テーパー構造が丸みを帯びてしまい、十分な撥水性を発揮することができない。一方、短時間の浸漬を行うと十分な撥水性を発揮することが可能となるが、深い流路を形成することができない。かような観点から、浸漬時間は、好ましくは1分間以上であり、より好ましくは1~600分間であり、さらに好ましくは1~60分間である。

【0050】
また、微細流路の深さは特に制限されないが、テーパー構造の深さは好ましくは20nm~1μm、より好ましくは30~500nmである。なお、「テーパー構造の深さ」とは、基板のテーパー構造部分の表面粗さを意味し、本明細書中では、テーパー構造部分をAFMにより測定し得られた最大粗さ(表面凹凸の最大高さ)を採用するものとする。

【0051】
エッチング溶液へ浸漬させる際の温度も特に制限されないが、通常は室温である。

【0052】
微細流路の表面の接触角は好ましくは90~180°であり、より好ましくは100~180°であり、さらに好ましくは120~180°である。微細流路の接触角は貴金属微粒子の粒子径および分布密度ならびにエッチング溶液への浸漬時間により制御されうる。微細流路の接触角がかような範囲にある場合には微細流路中を通じて速やかに液滴を輸送させることができるため、微小反応装置、MEMS、バイオセンサなどへの応用に好適である。接触角の測定方法は特に制限されないが、例えば、基板の微細流路の表面に水滴を落として、その角度を計測する液滴法を用いることにより計測が可能である。

【0053】
なお、エッチング方法としては、エッチング溶液を満たした容器内に基板を浸漬させるディップ式が簡便であるが、基板にエッチング溶液を吹き付けるスプレー式、スピナーと呼ばれる回転台に基板を取り付けて、エッチング溶液を滴下するスピン式を採用してもよい。

【0054】
必要に応じて、エッチング工程後に、流路の形成された基板を水や有機溶媒で洗浄することが好ましい。これにより、基板表面でのエッチング溶液などの残存を防止することができる。

【0055】
(4)マスクパターン除去工程(図1D)
必要に応じて、上記エッチング工程後に、前記マスクパターンを除去する工程をさらに含んでもよい(図1Dを参照)。マスクパターンは、パターン形成体の使用時に悪影響を与えるおそれがあるため、エッチング工程後にマスクパターンを除去することが好ましい。

【0056】
マスクパターンを除去する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、剥離溶液を用いる方法を挙げることができる。上記剥離溶液の種類は、マスクパターンの種類に応じて適宜選択すればよい。具体的には、マスクパターンが疎水性インク材料から形成されている場合には、剥離溶液として有機溶媒を用いればよい。有機溶媒としては、マスクパターンを溶解して除去し得るものであれば特に制限されず、インク組成物の調製において例示した有機溶媒を同様に好ましく使用することができる。剥離溶液を用いてマスクパターンを除去する方法も特に制限されず、例えば、剥離溶液を基板に塗布する方法、および剥離溶液に基板を浸漬させる方法等を挙げることができる。

【0057】
(5)貴金属微粒子除去工程
必要に応じて、上記エッチング工程後に、貴金属微粒子を除去する工程をさらに含んでもよい。エッチング工程後に、エッチング溶液を除去し、流路の形成された基板を水や有機溶媒で洗浄した場合であっても、基板の表面に微量の貴金属微粒子が存在する場合がある。流路の撥水面を利用する上で貴金属微粒子が存在しないほうが好ましいため、基板表面の貴金属微粒子を除去することが好ましい。

【0058】
貴金属微粒子を除去する方法としては、基板表面の流路や撥水面を侵食することなく、貴金属微粒子を除去することができる方法であれば特に制限されない。例えば、洗浄液を基板に塗布する方法、および洗浄液に基板を浸漬させる方法等を挙げることができる。洗浄液としては特に制限されないが、例えば、塩素(Cl)、臭素(Br)、またはヨウ素(I)などのハロゲン、塩化アンモニウム(NHCl)、臭化アンモニウム(NHI)、またはヨウ化アンモニウム(NHI)などのハロゲン化アンモニウム、および水を含む溶液、または硝酸、硫酸、塩酸などの酸を使用することができる。一例として、金の洗浄液中には、ヨウ素とヨウ化アンモニウムの混合溶液や王水が、銀の洗浄液には、硝酸が用いられる。

【0059】
なお、上記(4)マスクパターン除去工程および(5)貴金属微粒子除去工程を行う順序は特に限定されず、(3)エッチング工程後であればどちらを先に行ってもよいし、両方の工程を同時に行ってもよい。また、これらの工程の前後やこれらの工程の間にポストエッチング工程などのその他の工程を行い、基板の流路の撥水性のレベルを調整してもよい。

【0060】
上記実施形態によれば、撥水性に優れる微細流路が形成された基板が提供されうる。流路に撥水性が付与されることにより、液体が流路を流れる際の抵抗が軽減し、液体の輸送性を向上させることができる。すなわち、本発明の他の一実施形態によれば、基板と、基板表面に形成された微細流路とを含む液体輸送デバイスが提供される。そして、前記微細流路は上記実施形態による形成方法により形成される。具体的には、本実施形態の液体輸送デバイスは、微小反応装置、MEMS、バイオセンサなどの液体輸送デバイスとして好適に使用することができる。
【実施例】
【0061】
本発明の効果を、以下の実施例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【実施例】
【0062】
[実施例1]
(1)マスクパターンの形成工程
基板として、シリコンウエハ(厚さ:0.4mm、サイズ:20mm×20mm)を準備した。このシリコン基板の表面に、油性マジック(MAXON社製、プロカラー2 油性 ブラック 0.1mm)を用いてマスクパターンを形成した。
【実施例】
【0063】
(2)貴金属微粒子の塗布工程
次いで、貴金属微粒子として銀微粒子(粒子径:3~5nm)を使用し、これを水に分散させ、貴金属微粒子スラリーを調製した。この貴金属微粒子スラリーを基板表面の露出部に滴下し、窒素ブロアにより乾燥させた。
【実施例】
【0064】
(3)エッチング工程
続いて、貴金属微粒子を付着させた基板を室温下でエッチング溶液に9分間浸漬させた。なお、エッチング溶液としては、30質量%の過酸化水素(H)水溶液と50質量%のフッ化水素酸(HF)水溶液と水とを、体積比が5:1:10となるように混合した溶液を使用した。
【実施例】
【0065】
(4)マスクパターン除去工程
その後、基板をエタノール中に3分間浸漬させて洗浄することにより、基板表面に形成されたマスクパターンを除去した。
【実施例】
【0066】
(5)貴金属微粒子除去工程
続いて、基板を60質量%硝酸水溶液中に10分間浸漬させて洗浄することにより、基板表面に付着した銀微粒子を除去した。
【実施例】
【0067】
[実施例2]
(3)エッチング工程において、エッチング溶液への浸漬時間を3分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、基板のエッチングを行った。
【実施例】
【0068】
[実施例3]
(3)エッチング工程において、エッチング溶液への浸漬時間を80分間に変更したこと以外は実施例1と同様にして、基板のエッチングを行った。
【実施例】
【0069】
[実施例4]
(2)貴金属微粒子の塗布工程において、貴金属微粒子を金微粒子(粒子径:3~5nm)に、(3)エッチング工程において、エッチング溶液への浸漬時間を3分間に、(5)貴金属微粒子除去工程において、洗浄溶液をヨウ素とヨウ素化アンモニウムの混合液に変更したこと以外は、実施例1と同様にして、基板のエッチングを行った。
【実施例】
【0070】
[実施例5]
(3)エッチング工程において、エッチング溶液への浸漬時間を15分間に変更したこと以外は実施例6と同様にして、基板のエッチングを行った。
【実施例】
【0071】
[実施例6]
(3)エッチング工程において、エッチング溶液への浸漬時間を35分間に変更したこと以外は実施例6と同様にして、基板のエッチングを行った。
【実施例】
【0072】
【表1】
JP0005322173B2_000002t.gif
【実施例】
【0073】
[評価]
(SEM観察)
実施例1~3で得られた基板表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて観察した。図2~図4に、実施例1~3で得られた基板表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。図2Aはエッチングにより形成された段差部分のSEM写真である。図2Aに、マスクパターンに覆われて銀微粒子が付着しなかった部分(非エッチング部)60およびマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)70が確認される。また、図2Bは、図2Aに示す非エッチング部60をより拡大したSEM写真であり、図2Cは図2Aに示すエッチング部70をより拡大したSEM写真である。また、図3および図4はそれぞれ実施例2および実施例3で得られた基板のマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)のSEM写真である。
【実施例】
【0074】
(AFM測定)
実施例4~6で得られた基板表面を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した。図5~7に、実施例4~6で得られた基板表面のマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)の原子間力顕微鏡(AFM)写真およびその解析結果を示す。
【実施例】
【0075】
図5A、6A、7Aはそれぞれ実施例4~6で得られた基板のエッチング部のAFMの3D写真である。図5B、6B、7Bはそれぞれ実施例4~6で得られた基板のエッチング部のAFMの表面写真である。図5C、6C、7Cはそれぞれ図5B、6B、7BにおけるC5-C5線、C6-C6線、C7-C7線に沿った断面図である。
【実施例】
【0076】
図2A~図2C、図3および図4から、基板のマスクパターンに覆われ銀微粒子が付着しなかった部分(非エッチング部)60は全くエッチングされていないが、基板のマスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)70にはテーパー構造が形成されていることが確認される。
【実施例】
【0077】
これらの結果から、本発明の方法を使用すると、簡便な方法で基板表面を選択的にエッチングすることが可能となることが確認された。
【実施例】
【0078】
また、図2C、図3および図4、ならびに図5~7から、エッチング溶液への浸漬時間に応じてテーパー構造が変化することが確認された。図3および図5Cに示すように3分間の浸漬では凹凸構造の深さや幅は小さかった。図2Cおよび図6Cに示すように、9分間や15分間のエッチングを行った基板では鋭い山形構造が形成されていた。図7Cに示すように35分間の浸漬後には凹凸構造がやや丸みを帯びていた。図4に示すように80分間の浸漬後においては凹凸構造の深さが深くなり、構造の間隔が広がり、構造が丸みを帯びていることが確認された。図5C~図7Cから、テーパー構造の深さ(表面粗さ)は3分エッチング(図5C)で30nm程度、15分エッチング(図6C)で150nm程度であると測定され、図5~7から、エッチング溶液への浸漬時間が長いほどテーパー構造の深さが深いことが確認された。
【実施例】
【0079】
これらの結果から、エッチング溶液への浸漬時間を調整することにより、形成すべきテーパー構造を制御できることが確認された。
【実施例】
【0080】
(接触角の測定)
実施例1で得た基板を用いて、基板の非エッチング部の表面とエッチング部の表面に水滴を落とし、その角度を計測する液滴法により接触角の測定を行った。なお、測定した水滴の孔径は2mmであった。図8および表2に結果を示す。図8は接触角測定を示す図面であって、図8Aは非エッチング部における接触角測定を示す写真であり、図8Bはエッチング部における接触角測定を示す写真である。
【実施例】
【0081】
【表2】
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【実施例】
【0082】
図8および表2から本発明の方法を使用すると、貴金属微粒子の触媒作用を用いたウェットエッチングによって貴金属微粒子が付着した基板の表面にテーパー構造が形成され、そのナノサイズの凹凸構造により接触角が増加し、超撥水性を示すことが確認された。
【符号の説明】
【0083】
10 基板、
10a 基板の露出部、
20 マスクパターン、
30 貴金属微粒子、
31 分散溶媒、
40 微細流路、
50 ナノサイズの凹凸構造(テーパー構造)、
51 テーパー構造の深さ(表面粗さ)、
60 マスクパターンに覆われて銀微粒子が付着しなかった部分(非エッチング部)、
70 マスクパターンに覆われなかった部分(エッチング部)。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7