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明細書 :アミロイド凝集体の検出試薬及び検出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5368284号 (P5368284)
公開番号 特開2011-122928 (P2011-122928A)
登録日 平成25年9月20日(2013.9.20)
発行日 平成25年12月18日(2013.12.18)
公開日 平成23年6月23日(2011.6.23)
発明の名称または考案の名称 アミロイド凝集体の検出試薬及び検出方法
国際特許分類 G01N  33/53        (2006.01)
G01N  33/543       (2006.01)
G01N  33/553       (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
G01N  21/27        (2006.01)
FI G01N 33/53 D
G01N 33/543 581A
G01N 33/553
G01N 21/78 Z
G01N 21/27 Z
請求項の数または発明の数 5
全頁数 10
出願番号 特願2009-280652 (P2009-280652)
出願日 平成21年12月10日(2009.12.10)
審査請求日 平成24年8月31日(2012.8.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】迫野 昌文
【氏名】前田 瑞夫
【氏名】座古 保
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】加々美 一恵
参考文献・文献 特表2008-530578(JP,A)
特表2005-283250(JP,A)
Journal of Neurochemistry,2007年,Vol.103,p334-345
Analytical Biochemistry,2004年,Vol.335,p81-90
調査した分野 G01N 33/48-33/98
特許請求の範囲 【請求項1】
アミロイドβモノマーを認識する抗体をプロテインAを介して担持させた金属コロイドからなる、アミロイドβ可溶性オリゴマーを含有するアミロイド凝集体の検出試薬。
【請求項2】
アミロイドβモノマーを認識する抗体をプロテインAを介して担持させた金属コロイドが、ブロッキング剤で修飾されている、請求項1に記載のアミロイドβ可溶性オリゴマーを含有するアミロイド凝集体の検出試薬。
【請求項3】
アミロイドβモノマーを認識する抗体をプロテインAを介して担持させた金属コロイドと、アミロイドβ可溶性オリゴマーを含有するアミロイド凝集体含有試料とを混合し、上記金属コロイドの凝集状態の変化を測定することを含む、アミロイドβ可溶性オリゴマーを含有するアミロイド凝集体の検出方法。
【請求項4】
アミロイドβモノマーを認識する抗体をプロテインAを介して担持させた金属コロイドが、ブロッキング剤で修飾されている、請求項3に記載のアミロイドβ可溶性オリゴマーを含有するアミロイド凝集体の検出方法。
【請求項5】
金属コロイドの凝集状態の変化を吸光度変化として測定する、請求項3又は4に記載のアミロイドβ可溶性オリゴマーを含有するアミロイド凝集体の検出方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コロイドを用いたアミロイド凝集体の検出試薬及び検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アミロイド凝集体を検出する際のターゲットとして、線維状構造体を検出するものが多く、可溶性オリゴマーを含めて検出可能なものはない。線維状構造体を検出する方法としては、不溶性のアミロイド凝集体をサンプルから抽出し、ELISA 等の免疫診断法により行われる。アミロイドオリゴマーサンプルの作製については、非特許文献1及び2に報告されている。このサンプル調製時において、可溶性オリゴマーは除去されるため、サンプル中に含まれていた可溶性オリゴマーの検出を行うことが出来ないという問題点がある。近年、可溶性オリゴマー検出を行うための手段として、可溶性オリゴマーに特異的な抗体を作製し、それをELISA 等に使用することで、可溶性オリゴマーの検出を実現する方法が報告されている(非特許文献3及び4)。しかし、可溶性オリゴマーはペプチドの重合量によって構造が異なることや、オリゴマーの構造に多様性があることなどが報告されていることから、すべての可溶性オリゴマーを単一抗体のみで網羅的に検出する方法の開発には至っていない。例えば、非特許文献5には、通常のELISAではオリゴマーを正確に測定できないことが報告されている。上記の通り、多様な構造の可溶性オリゴマーから線維までのすべてのアミロイド凝集体を検出しうる方法は開発されていないのが現状である。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】M. P. LAMBERT et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, Vol. 95, pp. 6448-6453, 1998
【非特許文献2】Claudio Costantini et al., Experimental Cell Research 311 (2005) 126-134
【非特許文献3】Hillevi Englund et al., Journal of Neurochemistry, 2007, 103, 334-345
【非特許文献4】Harry LeVine, Analytical Biochemistry 335 (2004) 81-90
【非特許文献5】Charlotte Stenh et al., Ann Neurol 2005;58:147-150
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プリオン病やアルツハイマー病などの神経変性疾患病において、ある特定のタンパク質やペプチドが形成するアミロイド凝集体による組織への沈着が病因であると考えられている。このアミロイド凝集体は、同一ペプチド間でベータシートを形成しながら成長する超分子であり、最終的には水には不溶な線維状の形態となる。この線維状の化合物は、培養細胞及び動物組織などに添加することで細胞死を引き起こすことから、この凝集状態を取ることが組織壊死に必要な因子であると考えられている。また、近年、同じアミロイド凝集体の中でも線維状の構造を取らない水に可溶性の凝集体(可溶性オリゴマー)が見つかっており、この凝集体は線維状凝集体よりもはるかに高い細胞毒性を持つことが明らかと成ってきた。この可溶性オリゴマーは、実際の患者サンプルからも見いだされており、線維状凝集体のみならず神経変性疾患病の重要なターゲットであると考えられている。本発明は、可溶性オリゴマーを含む細胞毒性を有するアミロイド凝集体を迅速に検出することができるアミロイド凝集体の検出試薬及びアミロイド凝集体の検出方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドとアミロイド凝集体含有試料とを混合し、上記金属コロイドの凝集状態の変化を測定することによってアミロイド凝集体を迅速に検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドからなる、アミロイド凝集体の検出試薬。
(2) アミロイドが、アミロイドβである、(1)に記載のアミロイド凝集体の検出試薬。
(3) アミロイドモノマーを認識する抗体が吸着により金属コロイドに担持されている、(1)又は(2)に記載のアミロイド凝集体の検出試薬。
(4) アミロイドモノマーを認識する抗体が、プロテインAを介して金属コロイドに担持されている、(1)又は(2)に記載のアミロイド凝集体の検出試薬。
(5) アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドが、ブロッキング剤で修飾されている、(1)から(4)の何れかに記載のアミロイド凝集体の検出試薬。
【0007】
(6) アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドとアミロイド凝集体含有試料とを混合し、上記金属コロイドの凝集状態の変化を測定することを含む、アミロイド凝集体の検出方法。
(7) アミロイドが、アミロイドβである、(6)に記載のアミロイド凝集体の検出方法。
(8) アミロイドモノマーを認識する抗体が吸着により金属コロイドに担持されている、(6)又は(7)に記載のアミロイド凝集体の検出方法。
(9) アミロイドモノマーを認識する抗体が、プロテインAを介して金属コロイドに担持されている、(6)又は(7)に記載のアミロイド凝集体の検出方法。
(10) アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドが、ブロッキング剤で修飾されている、(6)から(9)の何れかに記載のアミロイド凝集体の検出方法。
(11) 金属コロイドの凝集状態の変化を吸光度変化として測定する、(6)から(10)の何れかに記載のアミロイド凝集体の検出方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるアミロイド凝集体の検出試薬及びアミロイド凝集体の検出方法によれば、可溶性オリゴマーを含む細胞毒性を有するアミロイド凝集体を迅速に検出することができる。本発明によるアミロイド凝集体の検出試薬及びアミロイド凝集体の検出方法は、狂牛病の診断における簡易スクリーニング法や、アルツハイマー病などの神経変性疾患の早期診断などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、BSA添加によるコロイドの安定化を示す。
【図2】図2は、BSA、抗体吸着金コロイドの調製を確認した結果を示す。
【図3】図3は、アミロイド添加による吸光度変化及び写真を示す。
【図4】図4は、アミロイド添加によるコロイドの凝集を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。
本発明によるアミロイド凝集体の検出試薬は、アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドからなることを特徴とする。

【0011】
本発明におけるアミロイドの種類は特に限定されないが、例えば、疾患性アミロイド凝集を引き起こすものを挙げることができる。疾患性アミロイド凝集を引き起こすアミロイド化合物としては、アルツハイマー病に関連するアミロイドベータ、パーキンソン病に関連するα-シヌクレイン、ハンチントン病に関連するハンチンチン、クロイツフェルトヤコブ病に関連するヒトプリオンタンパク質、狂牛病に関連するウシプリオンタンパク質などを挙げることができる。本発明ではこれらのアミロイドモノマーを認識する抗体を用いることができる。特に好ましくは、アミロイドベータモノマーを認識する抗体を用いることができる。

【0012】
本発明では、アミロイド凝集体検出用の素子として、アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドを用いる。本発明で用いる金属コロイドは、表面プラズモン共鳴特性を有するものが好ましい。表面プラズモン共鳴特性を有する金属コロイドとしては、金、銀、銅、白金又はアルミニウムなどで構成されるナノメートルサイズの粒子を用いることができる。金属コロイドの直径としては、一般的には5nmから1μm程度であり、好ましくは5nmから500nm程度であり、さらに好ましくは5nmから100nmで程度あり、特に好ましくは5nmから50nm程度である。このような金属コロイドは1粒子で分散している状態では、固有のプラズモン吸収波長を持っているが、多数の金属コロイドが集合もしくは凝集すると、プラズモン吸収波長が赤方シフトする性質がある。

【0013】
金属コロイドにアミロイドモノマーを認識する抗体を担持させる。担持させる手法としては、抗体の非特異吸着性能もしくはチオール基を導入した抗体を作製し、金属コロイドと結合する手法が挙げられる。あるいは、プロテインAを結合させた金属コロイドを用意し、このプロテインAを介して、アミロイドモノマーを認識する抗体を結合させることも可能である。

【0014】
アミロイドモノマーを認識する抗体を担持した金属コロイドは、更にブロッキング剤で修飾されていてもよい。ブロッキング剤としては、ウシ血清アルブミン(BSA)、ポリエチレングリコールなどを使用することができる。

【0015】
このように作製した抗体担持コロイドは、すべての状態のアミロイドペプチドを認識し結合する。無毒性であるモノマー状態のアミロイドペプチドと結合した場合、金属コロイドに抗体を介してペプチドが結合した状態となる。この際、金属コロイドの凝集は引き起こされないため、プラズモン吸収波長は変化しない。

【0016】
一方、抗体担持金属コロイドをオリゴマーもしくは線維状のアミロイド凝集体と混合すると、凝集体を介して多くの金属コロイドが集合もしくは凝集する。これにより、金属コ
ロイドのプラズモン吸収波長がシフトすることから、凝集状態にあるものだけを測定することが可能となる。また、この方法は凝集体に特異的な抗体を必要としないことや、サンプル調製時において不溶性画分と可溶性画分を分離する必要性がないなどのメリットを有している。よって、一般に多く使われている市販のアミロイドモノマー抗体を用いるだけで、金属コロイドの色の違いを見ることで簡便に凝集状態を検出することができる。

【0017】
本発明を以下の実施例により説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
(1)実験に用いた材料
アミロイドベータ抗体:クローン4G8, クローン6E10(どちらもCovance社より購入)
金コロイド:ProteinA結合型10nm直径金コロイド、20nm直径金コロイド(BBI internationalより購入)
化合物:アミロイドベータ(株式会社ペプチド研)、bovine serum albumin(Sigma), PBS緩衝液(ニッポンジーン)、DMSO(wako chemical)
【実施例】
【0019】
(2)実験手法
アミロイド線維サンプルの調製
333uMとなるようにアミロイドベータをアンモニア溶液に溶解した。この溶液21uLとPBS49uLを混合し(最終アミロイドベータ濃度:100uM)50度24時間インキュベートした。インキュベートの後、15000rpm x 10min遠心処理した。上清を除去し、新たに同容量のPBSを添加しピペットにより再分散し、アミロイド線維サンプルとした。
【実施例】
【0020】
アミロイドオリゴマーサンプル(ADDL)の調製
333uMとなるようにアミロイドベータをアンモニア溶液に溶解した。この溶液21uLとHam'sF-12培地49uLを混合し(最終アミロイドベータ濃度:100uM)4度24時間インキュベートした。インキュベートの後、15000rpm x 10min遠心処理した。上清を回収し、アミロイドオリゴマーサンプルとした。
【実施例】
【0021】
高分子量アミロイドオリゴマーサンプル(HMWO)の調製
アミロイドベータを5mMとなるようにDMSOに溶解し、Ham'sF-12培地に100uMとなるように添加した。37度24時間インキュベートした後、15000rpm x 10min遠心操作の後、上清を回収しHMWOサンプルとした。
【実施例】
【0022】
抗体担持金コロイドの作製
1.抗体の非特異吸着を利用して金コロイドと複合化する方法
BBIより購入した直径20nmの金コロイド(520nm:OD=1)を100uL取り、エッペンチューブに入れ、10000rpm x10min遠心した。上清を除去し、コロイドの100倍量の抗体(6E10)(10倍希釈PBSに溶解)を添加し、1時間室温で放置した。放置の後、10倍希釈PBSに溶解したBSAを添加し、さらに30分放置した。8000rpm x 15minで遠心し、上清を除去し、PBSを添加したのちピペッティングによりコロイドを再分散させた。
【実施例】
【0023】
2.ProteinAの結合した金コロイドを用いた抗体複合の方法
Covanceより購入したアミロイドベータ抗体(4G8)を10mMTris-Hcl(pH9.0)に溶解した。この抗体溶液をproteinA結合金コロイドの20倍量となるように添加し、4度で一晩放置した。15000rpm x 60min遠心処理し、上清を除去した後、上記のトリスバッファーを添加しピペッティングにより再分散させた。
【実施例】
【0024】
抗体担持コロイドへのアミロイドサンプルの添加
(上記1.で作製した粒子)
8000rpm x 15min で遠心処理し、上清を除去した後濃度を調整したアミロイドサンプルを添加し、ピペッティングにより再分散した。37度1時間放置した後、測定を行った。
【実施例】
【0025】
(上記2.で作製した粒子)
15000rpm x 60minで遠心処理し、上清を除去した後濃度を調整したアミロイドサンプルを添加し、ピペッティングにより再分散した。37度1時間放置した後、測定を行った。
【実施例】
【0026】
(3)結果
(3-1)抗体の非特異吸着を利用して金コロイドと複合化した粒子を用いた結果
BSA添加によるコロイドの安定化を図1に示す。BSA非添加で粒子を作製した際、最終的にPBSにバッファーを置き換えた際に凝集してしまうことがわかった。一方BSAを添加した系では、PBS中においても高い分散性を示し、凝集体の形成は見られなかった。
【実施例】
【0027】
BSA、抗体吸着金コロイドの調製を確認した結果を示す図2に示す。BSAを添加した粒子のSDS-PAGEを測定したところ、BSA及び抗体に由来するバンドが見られた。このことからBSAがコロイド表面に結合し、PBS添加による凝集を抑制するブロッキング剤として機能していることがわかった。また、動的光散乱測定により、BBIより購入した時点のコロイド粒径が23.1nmであるのに対し、BSA、抗体処理後のコロイドは36.98nmの粒径となったことから、これらのタンパク質及び抗体がコロイドに吸着していることが示唆された。
【実施例】
【0028】
アミロイド添加による吸光度変化及び写真を図3に示す。BSA及び抗体を担持した粒子に5uMのアミロイドモノマー、線維を添加し、UVスペクトルを測定した。その結果、モノマーを添加した系では大きなスペクトル変化は見られなかった。一方線維を添加した系では、520nmの吸光度が著しく減少した。また、その写真を撮ったところ、線維添加系ではコロイドの凝集体が沈殿しているのが目視で観測された。よって、このコロイドはアミロイド線維と複合化し凝集化する性質があることを示した。
【実施例】
【0029】
(3-2)ProteinAが結合した金コロイドを用いた抗体複合体による測定
アミロイド添加によるコロイドの凝集を図4に示す。各アミロイドサンプルをコロイドと混合し、UV測定を行った。その結果、アミロイド凝集状態にあるサンプルにおいて520nmの吸光度が著しく減少した。特にオリゴマーにおいて高い凝集特性が得られた。これは、線維体に比べて可溶状態にあるオリゴマーの方が抗体との反応がスムーズに行われたためであると考えられる。アミロイド凝集状態にあるサンプルはモノマーに対して4-5倍強の凝集特性があることがわかった。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3