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明細書 :新規化合物、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5649159号 (P5649159)
公開番号 特開2011-116717 (P2011-116717A)
登録日 平成26年11月21日(2014.11.21)
発行日 平成27年1月7日(2015.1.7)
公開日 平成23年6月16日(2011.6.16)
発明の名称または考案の名称 新規化合物、及びその製造方法
国際特許分類 C07D 487/22        (2006.01)
C07C 255/47        (2006.01)
C09B  47/00        (2006.01)
C09K   3/00        (2006.01)
C07D 209/52        (2006.01)
H01M  14/00        (2006.01)
H01L  51/46        (2006.01)
FI C07D 487/22 CSP
C07C 255/47
C09B 47/00
C09K 3/00 105
C07D 209/52
H01M 14/00 P
H01L 31/04 154C
請求項の数または発明の数 7
全頁数 18
出願番号 特願2009-277344 (P2009-277344)
出願日 平成21年12月7日(2009.12.7)
審査請求日 平成24年12月5日(2012.12.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】内山 真伸
【氏名】村中 厚哉
【氏名】米原 光拡
個別代理人の代理人 【識別番号】110000338、【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
審査官 【審査官】爾見 武志
参考文献・文献 特開2009-029955(JP,A)
調査した分野 C07D 487/22
C07C 255/47
C07D 209/52
C09B 47/00
C09K 3/00
H01L 51/46
H01M 14/00
CA/REGISTRY(STN)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記一般式(1)、(11)、(21)又は(31)、
【化1】
JP0005649159B2_000015t.gif
(一般式(1)、(11)、(21)及び(31)それぞれにおける、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0~20の非芳香環置換基を表し、同一のアズレン環に存在するR1及びR2、R2及びR3はそれぞれ結合して環を形成してもよい。
異なるアズレン環に存在するR1同士、R2同士、及びR3同士は互いに異なっていてもよい。
Mは、2個の水素原子、又は2価以上のカチオン原子を表す。ただし、当該カチオン原子が3価以上の場合には、炭素数20以下のカウンターアニオンをさらに有していてもよい。)
で表されることを特徴とする化合物。
【請求項2】
一般式(1)、(11)、(21)及び(31)それぞれにおける、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子;ニトロ基;シアノ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;置換基を有していてもよいアシル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシカルボニル基;、又は、複素環基;であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
一般式(1)、(11)、(21)及び(31)それぞれにおける、Mは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Ru、Sb、Pd、及びPtからなる群より選択される何れか一種であることを特徴とする請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の化合物を含むことを特徴とする近赤外光吸収材。
【請求項5】
請求項1~3の何れか一項に記載の化合物を光吸収色素として含むことを特徴とする太陽電池素子。
【請求項6】
下記一般式(2)~(5)の何れか、
【化2】
JP0005649159B2_000016t.gif
(一般式(2)~(5)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0~20の非芳香環置換基を表す。)
で表されることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項1~3の何れか一項に記載の化合物を製造する方法であって、
【化3】
JP0005649159B2_000017t.gif
(一般式(2)~(5)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0~20の非芳香環置換基を表す。)
上記一般式(2)で表される化合物から選択された少なくとも一種、上記一般式(3)で表される化合物から選択された少なくとも一種、上記一般式(4)で表される化合物から選択された少なくとも一種、又は上記一般式(5)で表される化合物から選択された少なくとも一種、を縮合する工程を含むことを特徴とする製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アズレン環が縮合した新規化合物、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
色素材料は、例えば、顔料、色素増感太陽電池、有機薄膜太陽電池、光線力学的治療、記録材料、又はイメージングへの応用等、幅広い分野で応用されている。中でも、近赤外領域の光の利用を進めることを目的の一つとして、当該光を吸収する特性を有する色素材料(近赤外色素材料とも称する)の開発が進められている。
【0003】
例えば、フタロシアニンは金属と錯体を形成して、通常は青色から緑色を呈する色素材料として知られている。また、フタロシアニンのベンゼン環をナフタレン環に置き換えたナフタロシアニンと呼ばれる色素材料は近赤外領域(例えば、波長800nm付近)に比較的狭い主吸収帯を有し、発光する(特許文献1、及び非特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2009—29955(21年2月12日出願公開)
【0005】

【非特許文献1】B. L. Wheeler et al. J. Am. Chem. Soc. Vol.106, p7404-7410(1984).(1984年11月公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、近赤外色素材料に求められる光の吸収特性はその用途に応じて異なる。そのため、ナフタロシアニン系の色素材料とは異なる光の吸収特性を有する、新規な近赤外色素材料の開発が切望されている。
【0007】
本願発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、近赤外領域の光を吸収する特性を有する新規化合物、及びその製造方法を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明にかかる化合物、又はその異性体は、下記一般式(1)、
【0009】
【化1】
JP0005649159B2_000002t.gif

【0010】
(一般式(1)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0~20の非芳香環置換基を表し、同一のアズレン環に存在するR1及びR2、R2及びR3はそれぞれ結合して環を形成してもよい。異なるアズレン環に存在するR1同士、R2同士、及びR3同士は互いに異なっていてもよい。Mは、2個の水素原子、又は2価以上のカチオン原子を表す。ただし、当該カチオン原子が3価以上の場合には、炭素数20以下のカウンターアニオンをさらに有していてもよい。)
で表されることを特徴としている。
【0011】
本発明にかかる化合物、又はその異性体は、一般式(1)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子;ニトロ基;シアノ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下の鎖状アルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;置換基を有していてもよいアシル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシカルボニル基;又は、複素環基;であることが好ましい。
【0012】
本発明にかかる化合物、又はその異性体は、一般式(1)中における、Mは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Ru、Sb、Pd、及びPtからなる群より選択される何れか一種であることがより好ましい。
【0013】
本発明にかかる近赤外光吸収材は、上記した本発明にかかる化合物、又はその異性体を含むことを特徴としている。
【0014】
本発明にかかる太陽電池素子は、上記した本発明にかかる化合物、又はその異性体を光吸収色素として含むことを特徴としている。太陽電池素子は、また、光吸収色素が吸収した光を電気に変換する光電変換部材を備える。
【0015】
本発明はまた、下記一般式(2)~(5)の何れか、
【0016】
【化2】
JP0005649159B2_000003t.gif

【0017】
(一般式(2)~(5)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0~20の非芳香環置換基を表す。)で表される化合物を提供する。
【0018】
本発明はまた、上記一般式(1)で表される化合物、又はその異性体を製造する方法であって、上記一般式(2)で表される化合物から選択された少なくとも一種、上記一般式(3)で表される化合物から選択された少なくとも一種、上記一般式(4)で表される化合物から選択された少なくとも一種、又は上記一般式(5)で表される化合物から選択された少なくとも一種、を縮合する工程を含む方法を提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、近赤外領域の光を吸収する特性を有する新規化合物、及びその製造方法が提供されるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例に係る化合物(異性体の混合物)の光の吸収スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
〔実施の形態1〕
(本発明に係る化合物)
本発明に係る新規化合物は、下記一般式(1)、

【0022】
【化3】
JP0005649159B2_000004t.gif

【0023】
で表されるものである。

【0024】
ここで、一般式(1)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0~20の非芳香環置換基を表し、同一のアズレン環に存在するR1及びR2、R2及びR3はそれぞれ結合して環を形成してもよい。また、一般式(1)中に含まれる異なるアズレン環に存在するR1同士、R2同士、及びR3同士は互いに異なっていてもよい。ただし、合成が容易であるとの観点では、異なるアズレン環に存在するR1同士、R2同士、及びR3同士は同一であることが好ましい。

【0025】
<芳香環基>
R1、R2、R3が芳香環基である場合、その骨格構造は特に限定されないが、例えば、5員環単環としてフラン環、チオフェン環、ピロール環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、6員環単環としてベンゼン環、ピリジン環、ピラジン環、5又は6員環の縮合環としてナフタレン環、フェナンスレン環、アズレン環、ピレン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、ベンゾフラン環、カルバゾール環、ジベンゾチオフェン環、アントラセン環等が挙げられる。これらのうち、合成がより容易であるとの観点では単環が好ましく、更に好ましくは6員環の単環であり、特に好ましくはベンゼン環である。

【0026】
R1、R2、R3が芳香環基である場合、該芳香環基は更に置換基を有していてもよい。該置換基は特に限定されないが、例えば、鎖状アルキル基、鎖状アルケニル基、鎖状アルキニル基、炭化水素環基、複素環基、アルコキシ基、アルキルカルボニル基、(ヘテロ)アリールオキシ基、(ヘテロ)アラルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、或いは、置換基を有していてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、エステル基、置換基を有していてもよいカルバモイル基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。

【0027】
鎖状アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、iso-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等の、炭素数が20以下、好ましくは10以下の直鎖又は分岐状のものが挙げられる。鎖状アルキル基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。

【0028】
鎖状アルケニル基の例としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、2-メチル-1-プロペニル基、ヘキセニル基、オクテニル基等の、炭素数が20以下、好ましくは10以下の直鎖又は分岐状のものが挙げられる。

【0029】
鎖状アルキニル基の例としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、2-メチル-1-プロピニル基、ヘキシニル基、オクチニル基等の、炭素数が20以下、好ましくは10以下の直鎖又は分岐状のものが挙げられる。

【0030】
炭化水素環基の例としては、シクロプロピル基、シクロヘキシル基、テトラデカヒドロアントラニル基等の、炭素数が3以上、好ましくは5以上であり、かつ、炭素数が20以下、好ましくは10以下のシクロアルキル基;シクロヘキセニル基等の、炭素数が3以上、好ましくは5以上であり、かつ、炭素数が20以下、好ましくは10以下のシクロアルケニル基;フェニル基、アントラニル基、フェナンスリル基、フェロセニル基等の、炭素数が6以上であり、かつ、炭素数が18以下、好ましくは10以下のアリール基が挙げられる。炭化水素環基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。

【0031】
複素環基の例としては、5~6員環の単環又は5~6員環が2~6個縮合してなる縮合環からなるヘテロアリール基、5~6員環の単環又は5~6員環が2~6個縮合してなる縮合環からなるヘテロシクロアルキル基が挙げられ、ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子等が挙げられる。具体的には、チエニル基等の5員環の単環;ピリジル基、2-ピペリジニル基、2-ピペラジニル基等の6員環の単環;ベンゾチエニル基、カルバゾリル基、キノリニル基、オクタヒドロキノリニル基等の5~6員環が2~6個縮合してなる縮合環が挙げられる。

【0032】
アルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、iso-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が挙げられ、その炭素数は、好ましくは2以上で、かつ9以下、好ましくは8以下である。アルコキシ基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。

【0033】
アルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、イソプロピルカルボニル基、tert-ブチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基等の、炭素数が18以下、好ましくは8以下のものが挙げられる。

【0034】
(ヘテロ)アリールオキシ基の例としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等の、炭素数が6以上で18以下、好ましくは10以下のアリールオキシ基;2-チエニルオキシ基、2-フリルオキシ基、2-キノリルオキシ基等の、炭素数が5以上で18以下、好ましくは10以下であって、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子等から選ばれるものを含むヘテロアリールオキシ基等が挙げられる。(ヘテロ)アリールオキシ基は、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。

【0035】
(ヘテロ)アラルキルオキシ基の例としては、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、ナフチルメトキシ基等の、炭素数が7以上で18以下、好ましくは12以下のアラルキルオキシ基;2-チエニルメトキシ基、2-フリルメトキシ基、2-キノリルメトキシ基等の、炭素数が6以上で18以下、好ましくは10以下で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアラルキルオキシ基などが挙げられる。

【0036】
アルキルチオ基、アリールチオ基、及びアルコキシカルボニル基は何れも、好ましくは炭素数が20以下、より好ましくは10以下であり、例えばハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。

【0037】
置換基を有していてもよいアミノ基の例としては、アミノ基、アルキルアミノ基、(ヘテロ)アリールアミノ基等が挙げられる。

【0038】
アルキルアミノ基の例としては、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ピペリジル基等の、炭素数が2以上、好ましくは3以上で、かつ、炭素数が20以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。

【0039】
(ヘテロ)アリールアミノ基の例としては、ジフェニルアミノ基、ジナフチルアミノ基、ナフチルフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基等の、炭素数が6以上で30以下、好ましくは15以下のアリールアミノ基;ジ(2-チエニル)アミノ基、ジ(2-フリル)アミノ基等の、炭素数が5以上、好ましくは6以上で、かつ炭素数が30以下、好ましくは15以下で、ヘテロ原子として窒素原子、酸素原子、硫黄原子などから選ばれるものを含むヘテロアリールアミノ基;フェニル(2-チエニル)アミノ基等の、炭素数が11以上、好ましくは12以上で、かつ炭素数が30以下、好ましくは16以下のアリールヘテロアリールアミノ基等が挙げられる。

【0040】
置換基を有していてもよいカルバモイル基の例としては、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基などが挙げられる。

【0041】
アルキルカルバモイル基の例としては、N-メチルカルバモイル基、N,N-ジメチルカルバモイル基、N-エチル-N-シクロヘキシルカルバモイル基等の、炭素数が2以上で20以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。

【0042】
エステル基の例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、イソプロポキシカルボニル基、tert-ブトキシカルボニル基、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等の、炭素数が2以上で20以下、好ましくは10以下のものが挙げられる。

【0043】
ハロゲン原子の例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。

【0044】
<非芳香環置換基>
R1、R2、又はR3が炭素数0~20の非芳香環置換基である場合、その具体例としては、R1、R2、又はR3が芳香環基である場合に更に有していてもよい置換基として上述した具体例のうち、芳香環基以外の置換基を挙げることができる。

【0045】
<環構造>
上記一般式(1)において、同一のアズレン環に存在するR1及びR2同士は、互いに結合して環を形成してもよい。また、同一のアズレン環に存在するR2及びR3同士は互いに結合して環構造を形成してもよい。なお、当該環構造は、更に炭素数20以下の置換基を有していてもよい。その置換基の具体例としては、R1、R2、又はR3が芳香環基である場合に更に有していてもよい置換基として上述した具体例と同様の置換基を挙げることができる。

【0046】
<R1、R2、及びR3の好ましい組み合わせ>
一般式(1)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子;ニトロ基;シアノ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のシクロアルキル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシ基又はアリールオキシ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルキルチオ基又はアリールチオ基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアシル基;置換基を有していてもよい炭素数20以下のアルコキシカルボニル基;及び、複素環基;からなる群より選択される何れか一つであることが好ましい。

【0047】
また、一般式(1)中における、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子;ニトロ基;シアノ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子;及び、置換基を有していてもよい炭素数5以下のアルキル基;からなる群より選択される何れか一つであることがより好ましい。より具体的には、R2が水素原子であり、かつ、R1及びR3は互いに独立に、水素原子;ニトロ基;シアノ基;塩素原子、臭素原子、フッ素原子、ヨウ素からなる群より選択されるハロゲン原子;及び、置換基を有していてもよい炭素数5以下のアルキル基;からなる群より選択される何れか一つであることがより好ましい。

【0048】
また、上記一般式(1)において、異なるアズレン環に存在するR1同士、R2同士、及びR3同士は互いに異なっていてもよいが、合成が容易であるとの観点では、異なるアズレン環に存在するR1同士、R2同士、及びR3同士は同一であることが好ましい。

【0049】
<一般式(1)中のM>
上記一般式(1)中、Mは、2個の水素原子、又は、2価以上のカチオン原子を表わす。Mがカチオン原子の場合、その種類は、縮合アズレン環骨格の窒素原子に結合し得るものであれば特に制限されない。その具体例としては、Be、B、Mg、Al、Si、P、Ca、Ti、V、Cr、Fe、Ni、Co、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Ru、Sb、Pd、Pt、等が挙げられ、より好ましくは、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Ru、Sb、Pd、及びPtからなる群より選択される何れか一種である。

【0050】
なお、Mがカチオン原子であり、該カチオン原子が3価以上の場合、更に炭素数20以下のカウンターアニオン(軸配位子)を有していてもよい。該カウンターアニオンの具体例としては、水、アルコール、フェノール、カルボン酸、ホスホン酸、ハロゲン、過塩素酸、過ヨウ素酸、シアン酸、イソシアン酸、イソチオシアン酸、アジド、硝酸、炭酸、炭酸水素酸、置換又は無置換の硫酸(硫酸、硫酸水素酸、メチル硫酸など)、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トシル酸、置換又は無置換のリン酸(リン酸、リン酸水素酸、リン酸二水素酸、フェニルリン酸など)、六フッ化リン、六フッ化アンチモン、置換又は無置換のホスフィン酸(ホスフィン酸、メチルホスフィン酸など)、置換又は無置換のボロン酸(テトラフェニルボロン酸など)、ベンゼンスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸等の化合物をアニオン化したもの等が挙げられる。これらのうち、合成の容易さ等の観点から、水、アルコール又はフェノールをアニオン化したものを有することが好ましい。

【0051】
(本発明に係る化合物の異性体)
本発明に係る一般式(1)に示す化合物には、以下の一般式(6)に示す異性体が存在する。本発明に係る化合物又はその異性体とは、下記に示す異性体を少なくとも二種含む混合物であってもよい。或いは、上記一般式(1)に示す化合物又はその異性体を一種のみ含むものを調製する場合には、例えば、混合物から特定の異性体のみを精製すればよい。精製工程は特に限定されないものの、例えば、同相又は逆相のHPLCを用いて行うことができる。

【0052】
【化4】
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【0053】
(本発明に係る化合物又は異性体が集積した集積体)
上記一般式(1)に示す化合物又はその異性体において、Mが3価以上のカチオン原子であって、かつ炭素数20以下の上記カウンターアニオンを有する場合には、当該カウンターアニオンを介して一般式(1)に示す化合物又はその異性体がさらに1つ以上結合してもよい。すなわち、一つのカウンターアニオンを介して、上記一般式(1)に示す化合物又はその異性体が2個以上結合した、いわゆるサンドイッチタイプの集積体でありえる。

【0054】
(合成中間体)
本発明は、以下の一般式(2)、(3)、(4)、又は(5)に示す新規化合物も提供する。これら新規化合物は、後述する通り、上記一般式(1)に示す化合物又はその異性体を製造するための合成中間体等として利用可能である。

【0055】
【化5】
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【0056】
なお、一般式(2)、(3)、(4)、及び(5)において、R1、R2、R3は互いに独立に、水素原子、置換基を有していてもよい芳香環基、又は炭素数0~20の非芳香環置換基を表す。ここで、「置換基を有していてもよい芳香環基」、及び「炭素数0~20の非芳香環置換基」の定義は、一般式(1)に示す化合物の場合と同じである。

【0057】
(本発明に係る化合物、及び異性体の製造方法)
上記一般式(1)に示す化合物又はその異性体は、一例として、上記一般式(2)で表される化合物から選択された少なくとも一種、上記一般式(3)で表される化合物から選択された少なくとも一種、上記一般式(4)で表される化合物から選択された少なくとも一種、又は上記一般式(5)で表される化合物から選択された少なくとも一種、を縮合することにより製造される。

【0058】
<一般式(2)で表される化合物の製造例>
アズレンを構成する7員環の5位及び6位の水素をハロゲン原子に置換したジハロゲン化アズレン(例えば、5,6-ジブロモアズレン)を、参考文献(Y. Lu et al. J. Am. Chem. Soc. Vol.122, p.2440-2445 (2000))に記載の方法に基づき合成する。

【0059】
次いで、得られたジハロゲン化アズレンにシアノ化剤(例えば、シアン化銅等)を反応させて、5,6-ジシアノアズレンを得る。さらに、必要に応じて、5,6-ジシアノアズレンに、R1、R2及びR3を導入するための試薬を一段階又は多段階で反応させることによって、一般式(2)で表される化合物を得る。例えば、R1、R2及びR3がアルキル基の場合にはアルキル化剤(ハロゲン化アルキルと3塩化アルミニウム等との組合せ)を、ハロゲン原子の場合にはハロゲン化剤を反応させる。R1、R2及びR3を導入するための試薬の使用量、反応温度、及び反応溶媒等の反応条件は、一般式(2)で表される化合物が得られる限り特に限定されず、適宜設定すればよい。また、製造に際しては、後述する実施例の記載も参照される。

【0060】
<一般式(3)、(4)、又は(5)で表される化合物の製造例>
一般式(3)で表される誘導体は、例えば、一般式(2)で表される化合物に対して、窒素源(アンモニア、尿素等)と金属アルコキシドとを反応させればよい。一般式(4)で表される誘導体、及び一般式(5)で表される誘導体は、例えば、一般式(3)で表される誘導体を段階的に酸化すればよい。また、製造に際しては、後述する実施例の記載も参照される。

【0061】
<一般式(1)で表される化合物又はその異性体の製造例>
一般式(1)で表される化合物又はその異性体は、上記一般式(2)で表される化合物から選択された少なくとも一種を4分子縮合することにより、又は、上記一般式(3)で表される化合物から選択された少なくとも一種を4分子縮合することにより、又は、上記一般式(4)で表される化合物から選択された少なくとも一種を4分子縮合することにより、又は、上記一般式(5)で表される化合物から選択された少なくとも一種を4分子縮合することにより製造される。

【0062】
上記の縮合は、必要に応じて溶媒中で行われる。溶媒としては、上記一般式(2)、(3)、(4)又は(5)で表される化合物と反応しないものを適宜利用することができる。特に限定されないが、溶媒は、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素;シクロヘキサン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素;メタノール、エタノール、プロパノ-ル、ヘキサノール、シクロヘキサノール等のアルコール;テトラヒドロフラン等の各種のエーテル類;ジメチルホルムアミド;等が挙げられる。

【0063】
必要に応じて、触媒及び助触媒を、上記の縮合に用いる。触媒及び助触媒は、上記の縮合を行うことが出来る限りにおいて特に限定されないが、具体的には例えば、アルカリ金属のアルコキシド、アルカリ土類金属のアルコキシド、モリブデン酸アンモニウム、ジメチルアミノエタノール、等が挙げられる。

【0064】
なお、上記一般式(4)又は(5)で表される化合物を縮合させる場合には、例えば、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物を共存させる必要がある。

【0065】
上記一般式(1)中におけるMの導入は、上記の縮合の際にMを含有する化合物を共存させて反応を行う、或いは、上記の縮合を行った後にMを含有する化合物とさらに反応させることにより、行うことができる。また、Mの導入を行った後に、必要に応じて、そのカウンターアニオンを共存させることにより、当該カウンターアニオンの導入を行うこともできる。

【0066】
(用途)
上記一般式(1)に示す本発明の化合物又はその異性体は、近赤外光に強い吸収を示す。従って、当該化合物又はその異性体は、近赤外光吸収材として利用可能である。近赤外線吸収材は、例えば、色素増感型太陽電池素子又は有機薄膜太陽電池素子の光吸収色素、光線力学治療(レーザー療法等)とりわけ癌を対象とする光線力学治療に用いる光吸収色素(光線力学療法剤の一部構成をなす増感剤)、分子イメージング又は光記録に用いる光吸収色素(記録材料等)等として用いられる。

【0067】
近赤外光領域の光(主に波長が700nm~1100nm)は細胞組織透過性が比較的すぐれていることが知られている。従って、本発明の化合物又はその異性体(混合物であってもよい)を、光線力学療法における増感剤として用いれば、例えば、より深部にある病巣の治療が可能になる、或いは、表層にある正常細胞に副作用を与える可能性を低減可能になるという効果を示す。

【0068】
また、実施例も参照されるように、本発明の化合物又はその異性体は、例えばナフタロシアニン等と比較しても化学的な安定性により優れているという利点も有する。

【0069】
なお、本発明の化合物又はその異性体は、溶液状態でも固相状態(例えば成膜した状態)でも、近赤外光吸収材として利用可能である。また、当該化合物又はその異性体を溶液状態、固相状態とする方法も特に限定されず、既知の方法を採用可能である。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0071】
〔実施例1:合成中間体の製造〕
充分にアルゴン置換したジメチルホルムアミド(DMF)に、下記の化合物a(1.83 mmol)および CuCN(5.5 mmol)を入れ、加熱還流下で、17時間撹拌、反応させた。室温に戻し、反応液にチオ硫酸ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルにて生成物を抽出、乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムにて精製を行い、化合物bを得た。化合物bの収率は83%であった。反応式は以下に示す。
【実施例】
【0072】
【化6】
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【実施例】
【0073】
次いで、化合物b(0.1 mmol)とtert-ブチルクロリド(0.6 mmol)とを CHNO に溶解し、AlCl(0.3 mmol)を添加後、室温にて撹拌した。6時間後、反応液に水を加え、酢酸エチルにて生成物を抽出した。乾燥後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムにて精製を行い、化合物cを得た。化合物cの収率は49%であった。反応式は以下に示す。
【実施例】
【0074】
【化7】
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【実施例】
【0075】
〔実施例2〕
充分にアルゴン置換したn-ヘキサノールにLi(4.1 mmol)を添加後、80℃ で撹拌してLiを溶解させた(金属アルコキシドの生成)。続いて、ここに、実施例1で得た化合物c(0.68 mmol)を添加して、還流させ、4時間撹拌した。反応後、2規定の塩酸を数滴添加したメタノール溶液に、得られた反応液を滴下し、次いで不溶物を瀘取した。乾燥後、シリカゲルカラムおよびバイオビーズSX-8(Bio-Rad社製の商品名)にて精製を行い、本発明に係る異性体の混合物として黒色の化合物dを得た。化合物dの収量は12%であった。反応式は以下に示す。
【実施例】
【0076】
【化8】
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【実施例】
【0077】
化合物dはベンゼン、トルエン、クロロホルム、塩化メチレン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等の種々の有機溶媒に可溶であった。すなわち、化合物dは、例えばナフタロシアニン系の材料と比較して有機溶媒により溶解しやすい性質を示し、その取り扱い性に優れる。
【実施例】
【0078】
また、化合物dは紫外可視領域から近赤外領域に至る幅広い領域において吸収帯を持ち、クロロホルム中におけるλmaxは1085nmであった(図1参照)。図1に比較をして示すように、化合物dは、ナフタロシアニンよりもさらに長波長側(900nm~1100nm)に主吸収帯を有する。そのため、化合物dは非常に優れた近赤外光吸収材として用いることができる。さらに、化合物dの主吸収帯は、近赤外領域を広くカバーしているため、例えば、太陽電池素子の光吸収色素として用いれば、近赤外光の利用効率に優れた太陽電池素子を提供可能となる。
【実施例】
【0079】
さらに、化合物dに関して、サイクリックボルタンメトリー法にて電気化学測定を行った結果、第一酸化電位が+0.4 V vs. Ag/AgCl、第一還元電位が-0.6 V vs. Ag/AgClであった。図1に示すナフタロシアニンでは同じ測定条件下、第一酸化電位が+0.5 V vs. Ag/AgCl、第一還元電位が-0.9 V vs. Ag/AgClであることから、化合物dではHOMOのエネルギー準位をそれほど変化させることなく、LUMOのエネルギー準位を低下させることで近赤外領域の吸収帯を獲得していることが判明した。すなわち、化合物dは、酸化に強く安定な新規近赤外光色素である。
【実施例】
【0080】
〔実施例3〕
上記の化合物cに代えて、実施例1に示した化合物bを用いる以外は、上記実施例2に記載の方法に従い、合成反応を行う。その結果、化合物dにおいてtert-ブチル基が水素原子である、本発明に係る化合物が得られる。反応式は以下に示す。
【実施例】
【0081】
【化9】
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【実施例】
【0082】
〔実施例4:金属錯体の製造〕
充分にアルゴン置換したジメチルホルムアミドに、実施例2で得た化合物d(0.019mmol)と酢酸ニッケル四水和物(0.19mmol)とを溶解し、加熱還流下、9時間撹拌しつつ反応を行った。反応液を室温に戻した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムにて精製を行い、化合物eを得た。化合物eの収率は35%であった。反応式は以下に示す。化合物eのクロロホルム中におけるλmaxは1059nmであった。
【実施例】
【0083】
【化10】
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【実施例】
【0084】
〔実施例5:その他の金属錯体の製造〕
酢酸ニッケル四水和物を酢酸亜鉛に置き換えた点以外は、上記実施例4の記載に従い合成反応を行うことで、化合物eが有する中心金属がニッケルから亜鉛に置換された化合物を合成した。この化合物の収率は78%であった。反応式は以下に示す。また、この化合物のクロロホルム中におけるλmaxは1056nmであった。
【実施例】
【0085】
【化11】
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【実施例】
【0086】
〔実施例6:その他の合成中間体の製造〕
実施例1に記載の化合物a(1.46mmol)とナトリウムメトキシド(1.80mmol)とを、充分に乾燥させたメタノールに送入し、NH3ガスを吹込みながら70℃で7時間撹拌した。反応終了後、室温まで冷却し、溶媒を留去した後、残渣を水で洗浄して化合物xを得た。反応式は以下に示す。化合物xの収率は91%であった。
【実施例】
【0087】
【化12】
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【実施例】
【0088】
得られた化合物xは、例えば、実施例3で得た化合物を合成するための合成中間体として利用することができる。
【実施例】
【0089】
〔実施例7:その他の合成中間体の製造〕
化合物a(0.10 mmol)とN-ブロモスクシンイミド(0.60 mmol)とをベンゼンに溶解し、加熱還流下、2日間撹拌して反応する。反応液を室温に戻した後、溶媒を留去し、シリカゲルカラムにて精製を行い、化合物yを得た。反応式は以下に示す。化合物yの収率は82%であった。
【実施例】
【0090】
【化13】
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【実施例】
【0091】
得られた化合物yは、実施例2及び3に記載の方法に従って、縮合反応を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明によれば、近赤外領域の光を吸収する特性を有する新規化合物、及びその製造方法が提供される。
図面
【図1】
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