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明細書 :マイクロチャネルプレート組立体及びマイクロチャネルプレート検出器

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5582493号 (P5582493)
公開番号 特開2011-129362 (P2011-129362A)
登録日 平成26年7月25日(2014.7.25)
発行日 平成26年9月3日(2014.9.3)
公開日 平成23年6月30日(2011.6.30)
発明の名称または考案の名称 マイクロチャネルプレート組立体及びマイクロチャネルプレート検出器
国際特許分類 H01J  43/24        (2006.01)
FI H01J 43/24
請求項の数または発明の数 3
全頁数 9
出願番号 特願2009-286477 (P2009-286477)
出願日 平成21年12月17日(2009.12.17)
審査請求日 平成24年12月10日(2012.12.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
発明者または考案者 【氏名】小林 峰
【氏名】アンジェイェフスキ ロフ
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100105463、【弁理士】、【氏名又は名称】関谷 三男
【識別番号】100102576、【弁理士】、【氏名又は名称】渡辺 敏章
審査官 【審査官】佐藤 仁美
参考文献・文献 特開昭62-195844(JP,A)
特開昭57-046458(JP,A)
特開2005-019537(JP,A)
特開平01-084560(JP,A)
特開昭61-049361(JP,A)
特開昭63-252343(JP,A)
特開2005-019635(JP,A)
特公昭47-024714(JP,B1)
調査した分野 H01J 40/00-49/48
特許請求の範囲 【請求項1】
検出体が入射する側からみて1段目のマイクロチャネルプレートと、2段目のマイクロチャネルプレートと、3段目のマイクロチャネルプレートとを順次重ねて配置した構造を有し、
前記1段目のマイクロチャネルプレートは2次電子増倍利得が1倍~4×103倍であり、前記2段目及び3段目のマイクロチャネルプレートは2次電子像倍利得が3×104倍~1×105倍であり、前記1段目のマイクロチャネルプレートの切り出し角は0゜~5゜であることを特徴とするマイクロチャネルプレート組立体。
【請求項2】
請求項記載のマイクロチャネルプレート組立体において、前記1段目のマイクロチャネルプレートの発散角は前記2段目のマイクロチャネルプレートの切り出し角より小さいことを特徴とするマイクロチャネルプレート組立体。
【請求項3】
マイクロチャネルプレート組立体と、前記マイクロチャネルプレート組立体の出射面に配置されたワイヤアノード検出器とを備えるマイクロチャネルプレート検出器において、
前記マイクロチャネルプレート組立体は、請求項1又は2記載のマイクロチャネルプレート組立体であることを特徴とするマイクロチャネルプレート検出器。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のマイクロチャネルプレートを組み合わせたマイクロチャネルプレート組立体及びそれを用いたマイクロチャネルプレート検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロチャネルプレートは、板状の絶縁性材料に多数の微細な貫通孔(マイクロチャネル)が設けられた構造を有する。個々のマイクロチャネルは、各々が微小な二次電子増倍管として機能し、電子やイオンがマイクロチャネルに入射してその壁面に衝突すると、そこから二次電子が放出され、それが更にチャネル壁に衝突して二次電子放出を繰り返すことにより電子が増幅される。マイクロチャネルの二次電子出射面に蛍光板等の検出器を配置することにより、電子やイオンの入射を高感度で検出することが可能である。マイクロチャネルプレートは、内部に多数のマイクロチャネルが形成された棒状の部材を所望の角度で板状に切り出して製作される。従って、チャネルの方向(軸線)はマイクロチャネルプレートの表面に立てた法線に対して切り出し角だけ傾いている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2001-351509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
マイクロチャネルプレート(以下、MCPという)を用いた検出器では、例えば散乱イオンを検出する場合、散乱イオンのMCPへの入射位置によってチャネル壁との衝突角が異なることにより、検出面上の位置に依存して検出効率が異なる問題がある。極端な場合、MCPのチャネルの方向とイオンの入射方向とが一致した場合には、二次電子の増倍が行われず、散乱イオンがMCPに入ったことを検出することができない。特に、この問題は、MCPを大立体角検出器で放射状に散乱するイオン検出するときに顕著である。
【0005】
本発明は、MCPの検出面上の位置によって検出効率が異なる問題を解決し、また検出器全面での検出効率を向上するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、MCPを3枚用いた3段構成のMCP組立体を用いる。また、このMCP組立体とワイヤアノード検出器とを組み合わせてMCP検出器を構成する。
【0007】
MCP組立体の1段目のMCPは、二次電子の数を大きく増倍することを目的とせず、検出体を捕獲して2段目のMCPに送り込むことを目的とする。そのために、1段目のマイクロチャネルプレートは2次電子増倍利得を1(倍)~4×103(倍)とし、2段目及び3段目のマイクロチャネルプレートは2次電子像倍利得を3×104(倍)~1×105(倍)とする。あるいは、1段目のマイクロチャネルプレートには400V~800Vの電圧を印加し、前記2段目及び3段目のマイクロチャネルプレートには一段当たり1000V~1250Vの電圧を印加する。なお、本明細書では、電子、イオン、中性粒子のような微粒子の他に、真空紫外線、X線、ガンマ線などMCPで検出することができる光子も含めて検出体と総称する。
【0008】
1段目のMCPのチャネルに衝突した検出体は低い増倍率で二次電子に変換されて2段目のMCPに入射し、チャネルに衝突しない検出体は発散角が制限されて2段目のMCPに入射する。そのために、1段目のマイクロチャネルプレートの発散角は2段目のマイクロチャネルプレートの切り出し角より小さく設定する。これにより2段目のMCPのチャネル方向と検出体の進行方向が一致することを回避する。そして、2段目及び3段目のMCPにより、MCP全面で十分に読み出し可能な電荷量まで二次電子数を増倍させる。
【0009】
また、1段目のMCPとして典型的には切り出し角が0゜、実用的には5°以内の切り出し角を持つMCPを用いることにより、1段目のMCPで捕獲できない検出体を減らすことができ、検出体の捕獲効率のトータルを最も高くすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、検出体のMCPへの入射角度や入射位置によらず、MCP全面で検出効率を一様にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】飛行時間型二次イオン質量分析装置の概略図。
【図2】MCPの一例を示す概念図。
【図3】ワイヤアノード検出器の概念図。
【図4】MCPの切り出し角の説明図。
【図5】MCPの2次電子増倍特性を示す図。
【図6】MCPを大立体角の検出器で用いた場合の問題の説明図。
【図7】2次元検出像に生じた欠損の例を示す図。
【図8】本発明によるMCP組立体の概略断面図。
【図9】発散角の説明図。
【図10】1段目のMCPの切り出し角の違いによるMCP上の散乱イオン捕獲効率の分布を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下では、MCP検出器でイオンの入射を検出する場合を例にとって説明する。

【0013】
図1は、本発明のMCP検出器を備える飛行時間型二次イオン質量分析装置の概略図である。

【0014】
飛行時間型二次イオン質量分析装置(TOF-SIMS)は、固体試料10の最表面にどのような成分(原子、分子)が存在するかを調べるための装置である。ppmオーダーの極微量成分を検出することができ、有機物・無機物に適用できる。また、表面に存在する成分の分布を調べることもできる。

【0015】
高真空中で、イオン銃11から高速のイオンビーム(1次イオン)12を固体試料10の表面に照射すると、スパッタリング現象によって試料表面の構成成分がはじき飛ばされる。このとき発生する正または負の電荷を帯びたイオン(2次イオン)13を電場によって引き出し、静電分析器14を通して一定距離離れた位置でMCP検出器15によって検出する。スパッタの際には、試料表面の組成に応じて様々な質量をもった2次イオンが発生するが、軽いイオンほど速く、反対に重いイオンほど遅い速度で飛んでいくので、2次イオンが発生してから検出されるまでの時間(飛行時間)を測定すれば、発生した2次イオンの質量を分析することができる。なお、固体試料10の表面は1次イオン12の照射によって帯電するため、電子銃16から電子線を照射、あるいはAr中和銃17からアルゴン粒子を照射することによって試料表面の帯電を防止することができる。

【0016】
従来の2次イオン質量分析装置(SIMS)ではイオン化の際に有機化合物が完全にバラバラになってしまうので、質量スペクトルから得られる化学構造情報は非常に乏しいのに対して、TOF-SIMSの場合には1次イオン照射量が著しく少ないため、有機化合物は化学構造を保った状態でイオン化され、質量スペクトルから有機化合物の構造を知ることができる。固体試料表面の最も外側で発生した2次イオンのみが、真空中へ飛び出すことができるので、試料の最表面の情報を得ることができる。また、イオンを検出する方法は、電子や光を検出する方法と比べて感度がよいため、TOF-SIMSは表面に存在するppmオーダーの微量成分を検出することができる。さらに、TOF-SIMSでは、1次イオンビームを走査することによって、試料表面のイオン像(マッピング)を取得することができる。

【0017】
図2は、MCP検出器に用いられるMCPの一例を示す概念図である。
MCPは、絶縁性材料からなる本体に、多数の微細な貫通孔(マイクロチャネル)21を形成したものである。入射面と出射面には、電極となる導電膜が形成されており、入射面側の電極と出射面側の電極に所定の加速電圧が印加される。電子、イオン、中性粒子、真空紫外線、X線、ガンマ線等の検出体がマイクロチャネルに入射してその壁面に衝突すると、そこから二次電子が放出され、それが更にチャネル壁に衝突して二次電子放出を繰り返すことにより電子が増幅され、出射面から出力される。

【0018】
図3は、MCP検出器に用いられるワイヤアノード検出器の概念図である。ワイヤアノード検出器は、電子の入射位置と、検出時刻を検出可能な位置敏感時間分解型検出器の一種である。

【0019】
ワイヤアノード検出器は、互いに所定の間隔をあけ、かつX方向に正確な周期で所定の回数だけ巻回された2本のワイヤアノード31,32、及び互いに所定の間隔をあけ同様にY方向に正確な周期で所定の回数だけ巻回された2本のワイヤアノード33,34を有している。ワイヤアノード33,34は、巻回されたワイヤアノード31,32が作る空間内にそれと接触することなく配置されている。ワイヤアノード31,32とワイヤアノード33,34とが互いに接触することなく直交して配置されている領域が2次元の検出領域となり、この検出領域に対向するようにしてMCPの出射面が位置付けられる。2本のワイヤアノード31,32は、一方が信号用であり、他方が参照用である。同様に、2本のワイヤアノード33,34も一方が信号用で、他方は参照用である。例えば、信号用のワイヤアノードには520Vの電圧が印加され、参照用のワイヤアノードには480Vの電圧が印加される。

【0020】
ワイヤアノード検出器の2次元の検出領域に電子が入射すると、入射した電子がワイヤアノードに衝突し、衝突した位置から電流が生じて、当該ワイヤアノードの両端に信号が検出される。アノードの両端にいつ信号が現れたかを知ることにより、高スループットで検出体のX,Y方向の入射位置及び時間を知ることができる。ワイヤアノード単体では1個のイオンを検出することはできないため、MCPと組み合わせ、1個のイオン入射によってMCPで増倍された2次電子をワイヤアノードで検出することによって、1個のイオンがいつ、どの位置に入射したかが検出される。

【0021】
図1に示したTOF-SIMSの場合、MCPへの2次イオンの入射位置、すなわちワイヤアノード検出器における2次電子検出位置は、2次イオンの散乱角に対応する。従って、MCP検出器を用いて散乱イオンを検出することにより、散乱イオンの質量と散乱角の情報を取得することができ、試料の表面付近の全ての元素を高感度で検出することができると共に、試料の結晶構造や配列に関する情報も取得することができる。

【0022】
図4は、MCPの切り出し角の説明図である。図示するように、MCPの表面法線に対し、マイクロチャネルの軸線は切り出し角θだけ傾いている。切り出し角は、通常5~20°である。

【0023】
図5は、MCPの2次電子増倍特性を示す図である。横軸はMCPの入射面側の電極と出射面側の電極の間に印加する加速電圧、縦軸は2次電子増倍利得である。図3に概略を示したワイヤアノード検出器で読み出し可能な電子数は、106個程度である。従って、1個の散乱イオンのチャネル壁への衝突によって放出された2次電子をワイヤアノード検出器で読み出し可能な電子数まで増倍するためには、1段目のMCPで増倍した2次電子を更に後段のMCPで増倍すること、すなわち2枚以上のMCPを用いることが必要である。一方、2次電子増倍利得は、ほぼ108で飽和する。以上のことからすると、MCPが有効に働けば、2枚のMCPで、1個の散乱イオンの入射で放出された2次電子をワイヤアノード検出器によって十分に検出可能な電子数まで増倍可能であることが分かる。

【0024】
ここで、図6を用いて、MCPを大立体角で用いた場合の問題について説明する。ここでは、2段のMCPを用いて散乱イオンを検出する場合について説明する。図には、各MCPの表裏の電極電位を、1段目のMCP61は入射面側を-2.4kV、出射面側を-1.2kVとし、2段目のMCP62は入射面側を-1.2kV、出射面側を0Vとした場合、又は1段目のMCP61は入射面側を0V、出射面側を+1.2kVとし、2段目のMCP62は入射面側を+1.2kV、出射面側を+2.4kVとした場合を示している。また、図示はしていないが、2段目のMCP62の出射面に近接して図3に略示したワイヤアノード検出器が配置されている。この電極電位は、厚さ1mm、チャンネル穴径25μmのMCPを用いたときの実施例である。

【0025】
試料60の内部構造を反映して、試料表面の1次イオン入射点Pから種々の方向にイオンが散乱し、それが1段目のMCP61に種々の角度で入射する。散乱イオン63,64は、1段目のMCP61のマイクロチャネルのチャネル壁に衝突し、そこで2次電子が放出され104個程度に増倍される。その2次電子は、2段目のMCP62に入射してそのマイクロチャネルのチャネル壁に衝突し、更に107個程度にまで増倍される。従って、散乱イオン63,64は、図3にて説明したワイヤアノード検出器によって検出可能である。

【0026】
一方、別な角度に散乱されたイオン65は、散乱方向が1段目のMCP61のマイクロチャネルの軸線方向であるため、1段目のMCP61のチャネル壁に衝突することなくそのまま通過して2段目のMCP62に入射し、そこで初めてマイクロチャネルのチャネル壁に衝突する。このイオンの衝突によってチャネル壁からは2次電子が発生されそれが増倍されるが、その数は104個程度である。この電子数はワイヤアノード検出器によって読み出し可能な電子数に達していないため、散乱イオン65は検出されない。

【0027】
このように大立体角で散乱イオンを検出する場合に、1段目のMCPに形成されたマイクロチャネルと散乱イオンとのなす角度が、MCP上の場所によって異なり、そのため検出器の場所によって検出効率が異なるという問題が生じる。特に、MCPのチャネル方向と散乱イオンの入射方向が一致した場合には、MCPで十分な2次電子増倍が生じないため、ワイヤアノード検出器で検出できず、2次元検出像に欠損が生じる。図7は、この2次元検出像に生じた欠損の例を示している。図7の中央の丸で囲んだ領域において、像に欠損が生じている。

【0028】
本発明では、この問題を解決するために、MCPを3段に重ねたMCP組立体を用いる。図8は、本発明によるMCP組立体の概略断面図である。

【0029】
MCP組立体の出射面には、ワイヤアノード検出器を配置して、MCP検出器を構成する。本発明では、MCP組立体の入射側の1段目のMCP81は2次電子増倍利得を低く抑え、検出体のMCP81への入射場所によって2次電子増倍利得に大きな差が生じないようにする。すなわち、1段目のMCP81は、2次電子増倍を主目的とせず、検出体を捕獲して2段目のMCP82に送り込むことを目的とする。1段目のMCP81のチャネル壁に衝突した散乱イオン84,85は低利得、例えば1~4×103で2次電子に変換・増倍されて2段目のMCP82に入射する。1段目のMCP81のチャネル壁に衝突しない散乱イオン86は、発散角が制限(例えば±2.8゜以下)されて2段目のMCP82に入射する。

【0030】
発散角とは、図9に示すように、チャネル壁92に衝突せずにMCPのマイクロチャネル91を通過することのできるイオンの入射角φをいう。そして、この発散角φ内の入射角で1段目のMCPに入射したイオンは、必ず2段目のMCPのチャネル壁あるいは2段目のMCPの表面に衝突するように、1段目のMCPの発散角は2段目のMCPの切り出し角より小さく設定されている。本実施例では、1段目のMCPの切り出し角を0゜、発散角を±2.8゜、2段目及び3段目のMCPの切り出し角をそれぞれ20゜とした。2段目のMCP82と3段目のMCP83はシェブロン型に配置にした。このため、2段目のMCP82のチャネルの方向とイオンの飛行方向が一致することはなく、全ての入射イオンは、必ずMCP組立体の1段目のMCP81、2段目のMCP82のチャネル壁あるいは、2段目のMCP82の表面に衝突して2次電子に変換され、その後、2段目と3段目のMCP82,83によりMCP組立体全面でワイヤアノード検出器によって十分に読み出し可能な電荷量まで2次電子数が増倍される。その結果、検出像に欠損が無く、検出器全面で検出効率が一様なMCP検出器が得られる。

【0031】
MCPの2次電子増倍利得は、図5に示した印加電圧と2次電子増倍利得の関係から分かるように、MCPへの印加電圧によって制御することが可能である。例えば、1段目のMCPの印加電圧(加速電圧)を400V~800Vとすると、2次電子増倍利得を1~103個程度に抑制することができる。本実施例では、各MCPの入射面と出射面の電位を、図8に示すように設定した。すなわち、1段目のMCP81には500Vの電圧を印加し、2段目のMCP82と3段目のMCP83には、通常の印加電圧としてそれぞれ1.2kVの電圧を印加した。1段目のMCP81への印加電圧は、400V~800Vにすればよい。

【0032】
このとき1個の入射イオンに対する1段目のMCP81の2次電子増倍率は1~数102個程度である。入射イオンがチャネル壁に衝突せずに素通りしたマイクロチャネルでは像倍率が1である。2段目のMCPと3段目のMCPの2次電子の増倍率は従前通りとした。例えば、2段目と3段目のMCPの印加電圧を1000V~1250Vに設定する。このとき、2段目のMCP82を出射するとき2次電子の増倍率は104~106程度である。そして最終的に3段目のMCP83を出射するときの2次電子の増倍率は、出射面全面で107~108程度である。これにより1段目のMCPを通過した散乱イオンを後段のMCPで増倍しても十分な増倍率が得られる。よって、1段目のMCPを通過した散乱イオンの像の抜けを防止できる。

【0033】
次に、1段目のMCPの切り出し角について検討する。図10は、1段目のMCPの切り出し角の違いによるMCP上の散乱イオン捕獲効率の分布を示した図である。曲線aは、切り出し角が0゜のMCPを用いた場合を示し、曲線bは切り出し角が20゜のMCPを用いた場合を示している。横軸はMCPの中心からの距離である。捕獲効率とは、第1段目のMCPのチャンネルへ受け入れる可能な検出体の割合を示すもので、開口率(MCPの面積当りの開口部の割合:0.5)で規格化したものである。

【0034】
図10から分かるように、切り出し角0゜のMCPを用いたときが捕獲効率のトータルが最も高く、かつ捕獲効率のばらつきが最も少ない。このことから、1段目のMCPとしては切り出し角0゜、実用的には、切り出し角が5°以内のMCPを用いのが好ましく、その場合には、検出器の全面で検出効率をほぼ一様にすることができるという前述の効果に加えて、捕獲効率を高めることができるという効果も得られる。
【符号の説明】
【0035】
10 固体試料
11 イオン銃
12 1次イオン
13 2次イオン
14 静電分析器
15 MCP検出器
16 電子銃
17 Ar中和銃
21 マイクロチャネル
31,32 X方向に巻回されたワイヤアノード
33,34 Y方向に巻回されたワイヤアノード
60 試料
61 1段目のMCP
62 2段目のMCP
63~65 散乱イオン
81 1段目のMCP
82 2段目のMCP
83 3段目のMCP
84~86 散乱イオン
91 マイクロチャネル
92 チャネル壁
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9