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明細書 :触覚呈示装置および触覚呈示ディスプレイ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5388119号 (P5388119)
登録日 平成25年10月18日(2013.10.18)
発行日 平成26年1月15日(2014.1.15)
発明の名称または考案の名称 触覚呈示装置および触覚呈示ディスプレイ
国際特許分類 G01N   3/40        (2006.01)
A61B  10/00        (2006.01)
A61B   5/00        (2006.01)
G09B   9/00        (2006.01)
FI G01N 3/40 Z
A61B 10/00 Y
A61B 5/00 101L
G09B 9/00 Z
請求項の数または発明の数 7
全頁数 8
出願番号 特願2009-211790 (P2009-211790)
出願日 平成21年9月14日(2009.9.14)
審査請求日 平成24年9月12日(2012.9.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】石橋 良太
【氏名】佐野 明人
【氏名】藤本 英雄
特許請求の範囲 【請求項1】
内部に網目状のコア材を有する成型樹脂と、該成型樹脂を伸縮させるアクチュエータと、
該アクチュエータの発生する伸縮力を制御して前記成型樹脂の内部の応力を調節する内部
応力制御部とを備え、前記成型樹脂の内部応力の調節により可変した前記成型樹脂の剛性
により触覚を呈示することを特徴とする触覚呈示装置。
【請求項2】
前記成型樹脂は、前記網目状のコア材と、該コア材よりも柔軟な樹脂からなる樹脂プレ
—トからなることを特徴とする請求項1に記載の触覚呈示装置。
【請求項3】
前記樹脂プレート表面上の任意位置の剛性が同じ値となるように、前記網目状のコア材
が前記樹脂の内部に一様に分布していることを特徴とする請求項2に記載の触覚呈示装置。
【請求項4】
前記網目状のコア材は、ハニカムコア材であることを特徴とする請求項3に記載の触覚
呈示装置。
【請求項5】
前記アクチュエータは、前記樹脂プレートの側面を平面方向から圧縮することにより前
記樹脂プレートを伸縮させるものであることを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1つ
に記載の触覚呈示装置。
【請求項6】
前記内部応力制御部は、前記アクチュエータの発生する伸縮力を振動的に与えるように
制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の触覚呈示装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の触覚呈示装置を、画像呈示部の画像呈示面に呈示される画像が前記触覚呈示装置の成型樹脂を介して視認されることを特徴とする触覚呈示ディスプレイ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚を呈示する触覚呈示装置およびそれを画像呈示部上に配置してなる触覚呈示ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
生体組織は特有の柔らかな触感を有し、殊に病変組織においては正常組織とはわずかに異なる触感を示すことが知られている。この触感の差は医療現場では触診として利用されており、生体組織の繊細な触感の呈示手法の開発が望まれている。
【0003】
柔らかさの呈示方法として、これまで幾つかの方法が提案されている。例えば、柔軟シート下部に配置されたピンの配列を直動アクチュエータにより調整し、柔軟シート上に弾性分布を表現するもの(非特許文献1参照)や柔軟シートのバイアス張力の調整により法線方向の剛性を調節するもの(非特許文献2参照)がある。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】河村,矢野,岩田:,弾性分布を呈示する面型ハプティックインターフェイスの開発-,日本バーチャルリアリティ学会第4 回大会論文集, pp.51-54, 2000.
【非特許文献2】K. Inoue, R. Uesugi, T. Arai, Y. Mae: Development of Haptic Device Using Flexible Sheet, Journal of Robotics and Mechatronics, 2000.,vol. 15, no. 2, pp. 121-127, 2003.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ピンの配列などを調整する方法では、高精細な弾性分布を広範囲に表現するには分解能と面積に応じたピンの数だけアクチュエータを必要とする。柔軟シートを利用した方法では、シートの法線方向の剛性は、張力を印加するためのアクチュエータのみで調節できる。ただし、一定のバイアス張力下では、シートの各部で法線方向の剛性が異なった値となるため、接触点が移動するような場合には工夫が必要となる。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みたもので、ピンの配列を調整するためのアクチュエータを必要とせず、また剛性を一様にすることが可能な触覚呈示装置およびそれを用いた触覚呈示ディスプレイを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明に係る触覚呈示装置は、内部に網目状のコア材を有する成型樹脂と、該成型樹脂を伸縮させるアクチュエータと、該アクチュエータの発生する伸縮力を制御して成型樹脂の内部の応力を調節する内部応力制御部とを備え、成型樹脂の内部応力の調節により可変した成型樹脂の剛性により触覚を呈示することを特徴とする。
【0008】
成型樹脂としては、請求項2に記載の発明のように、網目状のコア材と、該コア材よりも
柔軟な樹脂からなる樹脂プレートからなるものにできる。網目状のコア材としては、請求
項3に記載の発明のように、樹脂プレート表面上の任意位置の各部位の剛性が同じ値とな
るように、樹脂の内部に一様に分布するものにできる。網目状のコア材としては、請求項4に記載の発明のように、ハニカムコア材とすることができる。また、アクチュエータとしては、請求項5に記載の発明のように、樹脂プレートの側面を平面方向から圧縮することにより樹脂プレートを伸縮させるものとすることができる。また、請求項6に記載の発明のように、内部応力制御部は、アクチュエータの発生する伸縮力を振動的に与えるように制御するようにしてもよい。このことにより、例えば、成型樹脂内部の硬さと表面の摩擦係数を調整することができる。
【0009】
請求項7に記載の発明に係る触覚呈示ディスプレイは、請求項1乃至6のいずれか1つに記載の触覚呈示装置を画像呈示部上に配置してなり、画像呈示部の画像呈示面に呈示される画像が触覚呈示装置の成型樹脂を介して視認されることを特徴とする。この発明によれば、画像呈示部の画像呈示面に呈示される画像に応じた触感を呈示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る触覚呈示装置の構成を示す図である。
【図2】図1中の樹脂プレート1の構成を示す図である。
【図3】図1、2に示す触覚呈示装置を画像呈示部上に配置してなる触覚呈示ディスプレイの構成を示す図である。
【図4】図3に示す触覚呈示ディスプレイを用い、圧縮距離を6mmとした際の、位置が異なる三箇所での荷重の計測値と押し込み量との関係を示す図である。
【図5】図3に示す触覚呈示ディスプレイを用い、圧縮距離を0mmから12mmの範囲で変化させたときの荷重の計測値と押し込み量との関係を示す図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。

【0012】
図1に、本発明の一実施形態に係る触覚呈示装置の構成を示す。この触覚呈示装置は、内部に網目状のコア材を有する柔軟な樹脂プレート1と、該樹脂プレート1を伸縮させるアクチュエータ2と、該アクチュエータ2の発生する伸縮力を制御して樹脂プレート1の内部の応力を調節する内部応力制御部3とから構成されている。

【0013】
アクチュエータ2は、矩形状の樹脂プレート1の左右方向の一端、他端に固定された硬質の支持部2a、2bと、支持部2aを固定的に保持するとともに支持部2bを移動可能に保持するレール2cと、支持部2bをレール2cに沿って直線的に移動させる駆動部2dとから構成されている。駆動部2dにより支持部2bを図中の矢印で示す動作方向に移動させることで、樹脂プレート1を伸縮させることができる。なお、駆動部1としては、支持部2bをレール2cに沿って直線的に駆動できるもの、例えばリニアモータ、あるいはモータとその回転を直線運動に変換するクランク機構を用いたものなどを用いる。

【0014】
図2に樹脂プレート1の構成を示す。樹脂プレート1は、図2(a)に示すように、網目状のコア材としてのハニカムコア材と該ハニカムコア材よりも柔軟なシリコン樹脂からなる。図2(b)に示すように、樹脂プレート1の紙面水平方向をアクチュエータ2で伸縮することで、内部へ生じる応力を変化させる。

【0015】
上記した触覚呈示装置によれば、内部応力制御部3によりアクチュエータ2の発生する伸縮力を制御し、それにより樹脂プレート1の内部の応力を調節する。樹脂プレート1の内部応力の調整により可変した樹脂プレート1の剛性を、樹脂プレート1へ触ることで呈示できる。つまり、樹脂プレート1の内部応力を変化させることで、樹脂プレート1の法線方向から触れた際の剛性などの触感を調節する。

【0016】
樹脂プレート1は、樹脂よりも剛性の高い網目状のコア材を内部に有しているので、外部のアクチュエータ2により圧縮されると内部応力が面上の部位によらず同じ値で変化し、その剛性値が一様に同じ値に変化する。このことにより、樹脂プレート1の内部の応力を均一にすることができ、樹脂プレート1の各部で法線方向の剛性を一様にすることができる。因みに、一般に、平面様の柔軟な樹脂の内部応力を側面からの伸縮により一様に変化させることは難しく、過度に圧縮すれば中央部の隆起を招くことになる。これに対し、本実施形態では、図2に示すように、樹脂内部に網目状のコア材を入れているので、そのような問題を解決することができる。樹脂プレート1の各部位の剛性は、樹脂内部に一様に分布する網目状のコア材により同じ値となる。

【0017】
なお、樹脂プレート1の内部に設けられるコア材としては、網目状コア材であれば、ハニカムコア材以外のものであってもよい。また、そのような網目状コア材により、樹脂プレート1の内部の応力を均一にすることができるが、必ずしも全ての領域で内部の応力を均一にする必要はなく、一部の領域において内部の応力が不均一になっていてもよい。また、樹脂プレート1の伸縮は、樹脂プレート1の圧縮によらず張力の印加により行うようにしてもよい。

【0018】
次に、上記した触覚呈示装置を画像呈示部上に配置してなる触覚呈示ディスプレイの実施形態について説明する。

【0019】
この実施形態では、樹脂プレート1を構成する材料を、透明な樹脂、例えば透明ウレタンゲルを用いる。このことにより、背面からの画像投影を可能とする。 図3に、この実施形態に係る触覚呈示ディスプレイの構成を示す。触覚呈示装置は、液晶表示装置などの画像を表示する画像呈示部の画像呈示面4上に配置されている。画像呈示部の画像呈示面4に生体組織などの柔軟組織を表示し、柔軟組織の硬さに応じて樹脂プレート1を触れた際の剛性などの触感を調節する。このことにより、生体組織の繊細な触感を呈示することができる。

【0020】
この触覚呈示ディスプレイの具体的な構成について説明する。樹脂プレート1の樹脂は市販されているウレタンゲル(硬度1)を用いている。網目状コア材はアルミ製ハニカム材(セルサイズ9.0mm)を用いている。網目状コア材にアルミ製ハニカム材用いている理由は、樹脂よりも剛性が高く、かつ横方向から伸縮でき、平面様の柔らかな樹脂を横方向からの圧縮により安定して伸縮できるからである。また、六角形のハニカム材料を用いることにより、透明樹脂プレートを用いた際の下部からの画像呈示に際した視認性を向上することができる。

【0021】
なお、特に網目状コア材は六角形のハニカム材である必要は無いが、安定して剛性を可変するために、上記した実施形態では六角形のハニカム材を用いている。また、駆動用のアクチュエータ2は、複数個使用しても良い。例えば、樹脂プレート1を複数領域に分割し、それぞれに対応してアクチュエータ2を使用した場合には、樹脂プレートの内部応力を局所的に可変にすることが可能となる。また、樹脂プレート1の樹脂としては、下部からの画像呈示が視認可能であれば半透明のものであってもよい。

【0022】
上記した触覚呈示装置およびそれを用いた触覚呈示ディスプレイの効果を実験的に確認するために、剛性調節実験を行った。このとき、圧縮距離(図2に示すx方向の距離)と剛性との関係をみた。剛性は、力センサプローブをディスプレイ表面へ押し込み,その際の荷重の計測値と押し込み量((図2に示すz方向の距離)との関係からみた。

【0023】
図4に、圧縮距離を6mmとした際の、位置が異なる三箇所での荷重の計測値と押し込み量との関係を示す。このとき、全ての結果がほぼ同値となることが確認された。また、剛性値は非線形性を有し、その形状から樹脂の等容積変形に起因すると推察される。図5は、圧縮距離を0mmから12mmの範囲で変化させたときの荷重の計測値と押し込み量との関係であり、横方向からの圧縮により剛性値が変化していることが確認できる。また、押し込み量が深いほど剛性変化が大きいことも確認できる。

【0024】
なお、上記した実施形態では、内部に網目状のコア材を有する成型樹脂として、樹脂プレート1を示したが、プレート状でなくても球状の成型樹脂としてもよい。また、触覚呈示ディスプレイとしては、タッチパネルを有する表示画面上に触覚呈示装置を配置したものとしてもよい。このことにより、柔らかさが調整されたタッチ操作を行うことができる。また、アクチュエータの発生する伸縮力を振動としても良い。 一例として、ピエゾアクチュエータを用いてディスプレイパネルを励振する。例えば、図6に示すように、振動モードが与えられたとき、アクチュエータの発生する伸縮力を振動とする目標値を生成し、それによりピエゾアクチュエータを駆動する。このことにより、樹脂プレート1内部の硬さと表面の摩擦係数を調整することができる。また、ピエゾアクチュエータでなく直動アクチュエータを用い、その直動アクチュエータに与える目標軌道を高周波帯域として駆動しても良い。このとき、該直動アクチュエータの駆動力は、例えば樹脂プレート1の振動の観測値を利用したフィードバック系により調整されても良い。このことにより、表面の摩擦係数および柔らかさが調整されたタッチ操作を行うことができる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5