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明細書 :アクアポリン3の発現調節剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5564735号 (P5564735)
公開番号 特開2011-032191 (P2011-032191A)
登録日 平成26年6月27日(2014.6.27)
発行日 平成26年8月6日(2014.8.6)
公開日 平成23年2月17日(2011.2.17)
発明の名称または考案の名称 アクアポリン3の発現調節剤
国際特許分類 A61K  36/18        (2006.01)
A61K  36/53        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
A61P  17/16        (2006.01)
A61K   8/97        (2006.01)
A61Q  19/00        (2006.01)
A61P  17/02        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
C07K  14/705       (2006.01)
FI A61K 35/78 ZNAC
A61K 35/78 Q
A61P 43/00 111
A61P 17/16
A61K 8/97
A61Q 19/00
A61P 17/02
C12Q 1/68 A
C07K 14/705
請求項の数または発明の数 1
全頁数 10
出願番号 特願2009-178704 (P2009-178704)
出願日 平成21年7月31日(2009.7.31)
審査請求日 平成24年7月9日(2012.7.9)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504159235
【氏名又は名称】国立大学法人 熊本大学
発明者または考案者 【氏名】礒濱 洋一郎
【氏名】香月 博志
【氏名】久垣 昭哲
個別代理人の代理人 【識別番号】110000109、【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
審査官 【審査官】原田 隆興
参考文献・文献 特開2000-281553(JP,A)
特開平10-095735(JP,A)
特開平11-228436(JP,A)
特開2004-168732(JP,A)
特開2005-343882(JP,A)
特開2006-290873(JP,A)
国際公開第2009/022338(WO,A1)
調査した分野 A61K 36/18
A61K 8/97
A61K 36/53
A61P 17/02
A61P 17/16
A61P 43/00
A61Q 19/00
C07K 14/705
C12Q 1/68
特許請求の範囲 【請求項1】
ケイガイの100%メタノールエキスを有効成分として含む、創傷治癒促進剤として用いるためのアクアポリン3の発現亢進剤。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アクアポリン3の発現調節剤(発現亢進剤及び発現抑制剤)、及びその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
アクアポリン(aquaporin:以下AQPと略すことがある)は、アグレにより1992年に発見された膜6回貫通蛋白で、細胞内の水分量を調節する水チャネルとして機能する重要な蛋白である。アクアポリンは細菌から哺乳類に至るまで普遍的に存在しており、これまでに哺乳類で、AQP0からAQP12まで13種類のアクアポリンが確認されている。
【0003】
水チャネルの一種であるアクアポリン3(AQP3)は皮膚ケラチノサイトに多く存在し、水やグリセロールの輸送を促進することで皮膚の生理的保湿に重要である。また、本発明者らの研究によれば,AQP3の発現は皮膚炎症部位で著明に低下しており、これが種々の皮膚疾患に伴う乾燥症状の形成とも密接な関係にあることが示唆されている。さらに、AQP3はケラチノサイトの増殖・遊走能にも関わり、本チャネルが創傷時には治癒の促進に関与し、一方、皮膚癌では悪性化に関わっている。すなわち、AQP3の発現を促進する物質は、保湿効果および創傷治癒効果のある化粧品および医薬品として有用であり、またAQP3の発現を抑制する物質は抗腫瘍薬としての応用が期待できる。
【0004】
アクアポリン3を増加させて保湿効果を示す材料としては、中央アジアの植物Ajuga turkestanicaが見出され(J Drugs Dermatol. 2007, 6 (6 Suppl): s20-4.)、米国のDior社により既に化粧品として実用化されている。また、レチノイン酸がアクアポリン3の発現を促進する効果を示すことが報告されている(Cao et al., J cell Physiol, 215, 506, 2008)。しかし、化粧品又は医薬品として実用化の可能性があるアクアポリン3の発現調節剤は極めて少ない。
【0005】
一方、ケイガイが保湿効果を示し、化粧品材料として用いることができることが報告されている(特開平6-92838号公報、特開平9-2935号公報、特開平9-30931号公報)。しかし、ケイガイが保湿効果を示す作用機序は不明である。また、ケイガイを含む複数の生薬の水溶性エキスが創傷治癒効果を示すことが、国際公開WO03/015808号公報に記載されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】J Drugs Dermatol. 2007, 6 (6 Suppl): s20-4.
【非特許文献2】Cao et al., J cell Physiol, 215, 506, 2008
【0007】

【特許文献1】特開平6-92838号公報
【特許文献2】特開平9-2935号公報
【特許文献3】特開平9-30931号公報
【特許文献4】国際公開WO03/015808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アクアポリン3の機能異常に起因する病態の予防及び/又は治療のために有用なアクアポリン3の発現亢進剤及び発現抑制剤を提供することを解決すべき課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、in vitroの実験系によりAQP3発現調節薬を探索し、生薬ケイガイのメタノール抽出物が顕著なAQP3発現促進作用を示すこと、並びにショウキョウのメタノール抽出物がAQP3発現抑制作用を示すことを見出した。また、生薬ケイガイのメタノール抽出物が、AQP3発現促進に基づくと考えられる創傷治癒促進作用を示すことを確認した。本発明はこれらの知見に基づいて完成したものである。
【0010】
即ち、本発明によれば、ケイガイエキスを有効成分として含む、アクアポリン3の発現亢進剤が提供される。
好ましくは、ケイガイエキスがケイガイの有機溶媒エキスである。
好ましくは、有機溶媒が低級アルコールである。
好ましくは、有機溶媒がメタノールである。
【0011】
好ましくは、本発明のアクアポリン3の発現亢進剤は、皮膚の保湿剤として用いる。
好ましくは、本発明のアクアポリン3の発現亢進剤は、化粧品として用いる。
好ましくは、本発明のアクアポリン3の発現亢進剤は、ケラチノサイトの遊走促進剤として用いる。
好ましくは、本発明のアクアポリン3の発現亢進剤は、創傷治癒促進剤として用いる。
【0012】
本発明によればさらに、ショウキョウエキスを有効成分として含む、アクアポリン3の発現抑制剤が提供される。
好ましくは、ショウキョウエキスがショウキョウの有機溶媒エキスである。
好ましくは、有機溶媒が低級アルコールである。
好ましくは、有機溶媒がメタノールである。
【0013】
本発明によればさらに、ケイガイエキスをインビトロ又はインビボで投与することを含むアクアポリン3の発現を亢進する方法が提供される。
本発明によればさらに、ショウキョウエキスをインビトロ又はインビボで投与することを含むアクアポリン3の発現を抑制する方法が提供される。
【0014】
本発明によればさらに、アクアポリン3の発現亢進剤の製造のためのケイガイエキスの使用が提供される。
本発明によればさらに、アクアポリン3の発現抑制剤の製造のためのショウキョウエキスの使用が提供される。
【発明の効果】
【0015】
ケラチノサイトに多く存在するアクアポリン3は、皮膚の保湿作用と創傷治癒促進作用の両方の作用をもつことが知られている。本発明では、ケイガイエキスがアクアポリン3発現促進作用を示すとともに、ケラチノサイトの遊走促進作用を示すことから創傷治癒促進作用を示すことが実証された。本発明によるケイガイエキスを有効成分として含むアクアポリン3の発現亢進剤は、皮膚の保湿剤又は創傷治癒促進剤として有用であり、具体的には創傷治癒の促進を目的とした外傷治療薬としての医薬品、肌荒れ又は皮膚乾燥を改善する化粧品、さらには健康食品として利用可能である。さらに本発明では、ショウキョウエキスがアクアポリン3発現抑制作用を示すことが実証された。本発明によるショウキョウエキスを有効成分として含むアクアポリン3の発現抑制剤は、例えば、抗腫瘍剤として応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、ケラチノサイトのアクアポリン3mRNA発現に対する各種生薬エキスの作用を示す。
【図2】図2は、ケラチノサイトのアクアポリン3タンパク質発現に対する各種生薬エキスの作用を示す。
【図3】図3は、ケラチノサイトの遊走能に対するケイガイの作用を示す。
【図4】図4は、皮膚炎症部位でのアクアポリン3mRNA発現の低下を示す。
【図5】図5は、ケイガイメタノールエキスより調製した各分画のアクアポリン3mRNA発現に対する作用を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明は、(1)ケイガイエキスを有効成分として含む、アクアポリン3の発現亢進剤、並びに(2)ショウキョウエキスを有効成分として含む、アクアポリン3の発現抑制剤に関する。

【0018】
ケイガイエキスは、アクアポリン3の発現亢進作用を有するため、アクアポリン3の機能異常に起因する病態の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用である。アクアポリン3の機能異常とは、健常な組織内の細胞のアクアポリン3の状態とは異なる病態下の組織内細胞でのアクアポリン3の状態をいい、アクアポリン3の機能減退、細胞におけるアクアポリン3の数の減少などを含む。ケイガイエキスを有効成分として含む本発明のアクアポリン3の発現亢進剤は、具体的には、皮膚の保湿剤として用いたり、創傷治癒促進剤として用いることができるが、これらの用途のみに限定されず、アクアポリン3を発現する組織や器官の疾病の予防や治療を目的とする化粧品及び医薬組成物として、ヒト又は動物に投与することができる。

【0019】
ショウキョウエキスは、アクアポリン3の発現抑制作用を有するため、アクアポリン3の機能異常に起因する病態の予防及び/又は治療のための医薬の有効成分として有用である。アクアポリン3の機能異常とは、健常な組織内の細胞のアクアポリン3の状態とは異なる病態下の組織内細胞でのアクアポリン3の状態をいい、アクアポリン3の機能増大、細胞におけるアクアポリン3の数の増加などを含む。ショウキョウエキスを有効成分として含む本発明のアクアポリン3の発現亢進剤は、具体的には、抗腫瘍剤として用いることができるが、これらの用途のみに限定されず、アクアポリン3を発現する組織や器官の疾病の予防や治療を目的とする化粧品及び医薬組成物として、ヒト又は動物に投与することができる。

【0020】
本発明で用いるケイガイエキスは、シソ科のオドリコソウ亜科に属するケイガイ(Schizonepeta tenuifolia Briquet(var.japonica Kitagawa))(花穂又は全草など)から抽出される成分である。
本発明で用いるショウキョウエキスは、ショウガ科(Zingiberaceae)のショウガ(Zingiber officinale Roscoe)の根茎から抽出される成分である。

【0021】
抽出の方法は特に限定されないが、好ましい方法としては、まず上記植物原料を適度に切断又は粉砕したものを適当な溶媒を用いて室温から加温下で抽出する方法が挙げられる。抽出に用いる溶媒としては、有機溶媒が好ましく、例えば、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等)、多価アルコール(グリセリン、プロピレングリコール等)、低級アルキルエステル(酢酸エチル等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、炭化水素(ベンゼン、ヘキサン等)、エーテル類(ジエチルエーテル等)などを挙げることができる。上記の溶媒は単独で用いてもよいし、2種類以上の溶媒を混合して用いてもよい。上記の中でも、低級アルコールが好ましく、メタノールが特に好ましい。

【0022】
なお、国際公開WO03/015808号公報では、生薬は水溶性エキスとして調製することが記載されているが、本発明で見い出されたケイガイのアクアポリン3発現促進作用はメタノール抽出物であり、しかも、そのなかでも比較的疎水性の高い100%メタノール溶出分画に認められている。従って、本発明によるアクアポリン3の発現亢進は、国際公開WO03/015808号公報とは別の成分に由来する効果であると考えられる。

【0023】
抽出条件としては、原料に対して抽出溶媒を約2~100倍量、好ましくは3~30倍量加え、室温又は加温して数時間から数日間、必要に応じて攪拌しながら抽出することが好ましい。抽出後、濾過して抽出残渣を除去することにより抽出液を得ることができる。得られた抽出液は、必要に応じて、常法に従って希釈、濃縮、乾燥、精製等の処理を行ってもよい。

【0024】
本発明のアクアポリン3の発現亢進剤及びアクアポリン3の発現亢進剤は、ケイガイエキス又はショウキョウエキスをそのまま用いてもよいし、当該エキスを製剤化したものでもよい。ケイガイエキス又はショウキョウエキスは、薬学的に許容し得る担体又は任意の助剤を用いて、常法に従い、注射剤、細粒剤、顆粒剤、カプセル剤、及び錠剤等等の任意の剤形に製剤化することができる。この際、助剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、矯味・矯臭剤等を用いることができる。

【0025】
ケイガイエキス又はショウキョウエキスは、化粧品、飲食品等に配合して使用してもよいし、外用薬として使用することもできる。

【0026】
ケイガイエキス又はショウキョウエキスを化粧品に配合する場合、その配合量は適宜調整することができるが、一般的には約0.0001~10質量%であり、好ましくは約0.001~1質量%である。

【0027】
ケイガイエキス又はショウキョウエキスは、外用薬として例えば、乳液状、クリーム状もしくはジェル状の軟膏、又は貼付剤として患部に供することができる。該外用薬では、ケイガイエキス又はショウキョウエキス以外に、油性原料、界面活性剤、無機充填剤、増粘剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、栄養剤、色剤、香料、美白剤、血行促進剤、局所刺激剤、抗炎症剤、収斂剤、清涼剤、肌荒れ防止剤、制汗剤、ビタミン類、ホルモン類、又は抗ヒスタミン剤等の各種薬剤を用途に応じて適宜配合することができる。

【0028】
ケイガイエキス又はショウキョウエキスの投与量及び投与回数は特に限定されず、予防及び/又は治療の目的、疾患の種類、患者の体重や年齢、疾患の重篤度などの条件に応じて、適宜選択することができる。一般的には、成人一日あたりの投与量は有効成分であるケイガイエキス又はショウキョウエキスの重量として0.1~1000 mg程度である。

【0029】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
製造例1:ケイガイ及びショウキョウのメタノールエキスの製造
乾燥ケイガイ1gまたは乾燥ショウキョウにメタノール10mlを加え、加熱(70℃)もしくは室温で2時間抽出、不溶物を濾別して、減圧下濃縮、乾固させた。実験には、この抽出物をジメチルスルホキシド(DMSO)で再溶解して、100mg/mlの濃度に調製したものを用いた。
【実施例】
【0031】
実施例1:ケラチノサイトのアクアポリン3mRNA発現に対する各種生薬エキスの作用
ケラチノサイト株DJM-1細胞の培養液にカンゾウ、ケイガイ、ソウジュツ、タクシャ、トウキ及びショウキョウのメタノールエキス(0.1mg/ml)を加え、24時間培養後に細胞の総RNAをTRIZOL試薬(Invitrogen社)を用いて抽出した。アクアポリン3mRNA量はReal time-PCR法により測定し、GAPDHのmRNA量を基に標準化した。Real time-PCRは、まず、抽出した総RNAを出発物質とし、PrimeScript Reverse Transcriptase (Takara社) を用いて逆転写反応させDNA化した。これを鋳型とし、SYBR Premix Ex Taq (Takara社) と以下に示すプライマーを用いて、(95℃ for 3 min) x 1 cycle, (95℃ for 15 sec, 60℃ for 1 min) x 40 cyclesで増幅反応させた。mRNA量はPCRの増幅産物が一定量検出される最初のサイクル数(threshold cycle:Ct値)より求め、GAPDHのCt値と比較することで定量化した。
【実施例】
【0032】
AQP3-Foward:5'-TGCCTGGGGACCCTCATC-3'(配列番号1)
AQP3-Reverse:5'-GATCATATCCAAGTGTCC-3'(配列番号2)
GAPDH- Forward:5'-ACCATCTTCCAGGAGCGAGA-3'(配列番号3)
GAPDH- Reverse:5'-CAGTCTTCTGGGTGGCAGTG-3'(配列番号4)
【実施例】
【0033】
アクアポリン3mRNA量の測定結果を図1に示す。図1において、アクアポリン3mRNA量は、溶媒投与群のアクアポリン3mRNA/GAPDHmRNA比を1として標記した。Means±SD、n=3,*:p<0.05(対照に対して、Dunnett two-tailed test)
【実施例】
【0034】
図1の結果から分かるように、ケイガイ、ソウジュツ及びトウキで有意な発現亢進が認められ、ショウキョウで有意な発現抑制が認められた。
【実施例】
【0035】
実施例2:ケラチノサイトのアクアポリン3タンパク質発現に対する各種生薬エキスの作用
ケラチノサイト株DJM-1細胞の培養液にカンゾウ、ケイガイ、ソウジュツ、タクシャ、トウキ及びショウキョウのメタノールエキス(0.1mg/ml)を加え、24時間培養後に細胞をRIPA buffer (150 mM NaCl, 50 mM Tris-HCl, 5 mM EDTA, 1% NP-40, 0.1% SDS, 0.5% deoxycholate, 1% protease inhibitor cocktail; pH 7.5)で可溶化し、遠心(14,000 xg、4℃、10分)した上清を試料とした。試料を12%ポリアクリルアミドゲルで分離した後、PVDF膜に転写した。転写したPVDF膜は5%スキムミルクでブロッキングし、一次抗体(抗アクアポリン3抗体、Chemicon社または抗βアクチン抗体、Sigma社、4℃、8時間)および二次抗体反応 (抗ウサギ抗体、Jackson labs社、室温, 1時間) と反応させた。その後、ECL advance Western blotting analysis system (GE Healthcare Life Science社) を用いて免疫複合体を化学発光させ、バイオイメージアナライザー(LAS-1000、Fuji Film社)で検出した。
【実施例】
【0036】
ウエスタンブロットによるアクアポリン3タンパク質発現の測定結果を図2に示す。図2の結果から分かるように、ケイガイを処理した細胞のみにアクアポリン3量の増加が認められ、ソウジュツ及びショウキョウでアクアポリン3量が減少した。
【実施例】
【0037】
実施例3:ケラチノサイトの遊走能に対するケイガイの作用
ケラチノサイト株DJM-1細胞のコンフルエントカルチャーの培養液にケイガイ又はショウキョウのメタノールエキス(0.1mg/ml)を加え、24時間培養後に培養皿底部の細胞を200μlピペットチップの先端で1度だけ直線的に掻き取った。その後、培養液に1%FBSを加え、さらに24時間培養して顕微鏡下に細胞の写真を撮影し、剥ぎ取られた細胞の間隔の幅を測定した。
【実施例】
【0038】
測定の結果を図3に示す。図3の上は、コントロール、ケイガイ処理した細胞及びショウキョウを処理した細胞の24時間後の細胞間隙の写真を示す。図3の下のグラフは、本実験の結果をMeans±SD(n=5)として標記した。*:p<0.05、**:p<0.01(対照に対して、Student's T-test)
図3に示す通り、ケイガイ存在下に培養した細胞では有意に間隙の幅が狭くなり、ケラチノサイトの遊走が促進された。一方、ショウキョウでは間隙の幅が有意に広くなり、遊走が抑制された。
【実施例】
【0039】
実施例4:皮膚炎症部位でのアクアポリン3mRNA発現の低下
皮膚炎を自然発症したNCNgaマウスより炎症部位および正常部位の皮膚を各3箇所ずつ摘出し、これらの試料のアクアポリン3mRNA量を半定量的PCR法により調べた。皮膚組織からの総RNAの抽出にはTRIZOL試薬(Invitrogen社)を用いた。抽出した各RNA試料はRNA PCR Kit Ver. 2(Takara社)を用いて逆転写および増幅し、アクアポリン3および内部標準としてHPRTのmRNAを検出した。逆転写には本キットに含まれるoligo-dTプライマーを用い、42℃、60分間反応させ、DNA化した。アクアポリン3のPCR反応には上記の配列番号1から4に記載のプライマーを用い、HPRTには下記に示すプライマーを用いた。増幅されたDNA断片は1.5%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色により検出した。
【実施例】
【0040】
HPRT-Forward:5'-GTTGGATACAGGCCAGACTTTGTTG-3'(配列番号5)
HPRT-Reverse:5'-GATTCAACTTGCGCTCATCTTAGGC-3'(配列番号6)
【実施例】
【0041】
結果を図4に示す。いずれの炎症部位でも、正常皮膚に比べアクアポリン3mRNA量は減少していたが、ケラチノサイトのマーカーであるHPRTmRNA量には著名な影響はなかった。
【実施例】
【0042】
実施例5:ケイガイメタノールエキスより調製した各分画のアクアポリン3mRNA発現に対する作用
ケイガイのメタノールエキスを疎水クロマトDiaion HP-20Pカラムに吸着させ、その後、アセトン、100%メタノール、50%メタノールおよび水を用いて疎水性の高い物質より溶出して粗分画を調製した。各分画を上記の濃度でケラチノサイト細胞株DJM-1の培養液に添加し、24時間後にRNAを抽出し、半定量的RT-PCR法でアクアポリン3mRNA量を評価した。なお、各分画の濃度は回収率を基に算出したケイガイメタノールエキス0.1mg/ml中の濃度に設定した。本実験の半定量的RT-PCRは上記実施例4の方法に準じた。
【実施例】
【0043】
結果を図5に示す。アクアポリン3発現亢進作用は主に100%メタノール分画(一部アセトン分画)に現れ、比較的疎水性の物質の関与が示唆された。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4