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明細書 :凹凸パターン形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5327743号 (P5327743)
公開番号 特開2010-192702 (P2010-192702A)
登録日 平成25年8月2日(2013.8.2)
発行日 平成25年10月30日(2013.10.30)
公開日 平成22年9月2日(2010.9.2)
発明の名称または考案の名称 凹凸パターン形成方法
国際特許分類 H01L  21/027       (2006.01)
B29C  59/02        (2006.01)
B29C  59/16        (2006.01)
B29K  79/00        (2006.01)
FI H01L 21/30 502D
B29C 59/02 B
B29C 59/02 Z
B29C 59/16
B29K 79:00
請求項の数または発明の数 3
全頁数 16
出願番号 特願2009-035722 (P2009-035722)
出願日 平成21年2月18日(2009.2.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第2項適用 平成20年9月2日 社団法人応用物理学会発行の「2008年(平成20年)秋季 第69回応用物理学会学術講演会 講演予稿集(No.2)」に発表
審査請求日 平成24年2月17日(2012.2.17)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】伊東 栄次
個別代理人の代理人 【識別番号】110000121、【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
審査官 【審査官】佐野 浩樹
参考文献・文献 特開2004-299153(JP,A)
特表2003-509228(JP,A)
特開2006-137021(JP,A)
特開2008-226877(JP,A)
国際公開第2005/093131(WO,A1)
国際公開第2006/112062(WO,A1)
特表2007-526820(JP,A)
調査した分野 B29C33/00 -33/76 、39/26 -39/36 、
41/38 -41/44 、43/36 -43/42 、
43/50 、45/26 -45/44 、
45/64 -45/68 、45/73 、
49/48 -49/56 、49/70 、
51/30 -51/40 、51/44 、
53/00 -53/84 、57/00 -59/18 、
B81B 1/00 - 7/04 、
B81C 1/00 -99/00 、
B82Y 5/00 -99/00 、
G11B 7/24 -7/24027、
7/24035-7/24041、
7/24047-7/2405、
7/24062、7/2407-7/24085、
7/24091、7/24097-7/243、
7/244、7/253、
7/2533-7/2535、7/2537、
7/254、7/2548-7/257、
7/258、 7/26 、
H01L21/027、21/30
特許請求の範囲 【請求項1】
基板表面に形成され、ポリイミド樹脂の前駆体および表面がカルボキシル基で修飾されたカーボンナノチューブを主成分として含む薄膜に、
支持体表面に弾性材料から構成される凹凸型が設けられたスタンパを押し当てた状態で、加熱および光照射から選択される少なくとも一方の外部刺激を付与することにより、前記基板表面に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成工程を少なくとも含み、下式(1)を満たし、且つ、前記凹凸パターンの凸部が、上記ポリイミド樹脂および表面がカルボキシル基で修飾された上記カーボンナノチューブを主成分として含むことを特徴とする凹凸パターン形成方法。
・式(1) H(薄膜)<H(凹凸型)<H(凸部)
〔式(1)中、H(薄膜)は、上記凹凸パターン形成工程実施前の上記薄膜の硬度、H(凹凸型)は上記凹凸型の硬度、H(凸部)は、上記凹凸パターン形成工程実施後の上記凹凸パターンを構成する凸部の硬度を表す。〕
【請求項2】
前記凹凸型を構成する弾性材料が、ポリジメチルシロキサンであることを特徴とする請求項1に記載の凹凸パターン形成方法。
【請求項3】
前記凹凸パターンが、配線、電気回路、および、電子素子から選択される少なくともいずれかとして利用されることを特徴とする請求項1または2に記載の凹凸パターン形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸パターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板表面にナノメーターからマイクロメーターオーダーの凹凸パターンを形成する代表的な方法としては、比較的スケールの大きな凹凸の形成には各種の印刷法が、比較的スケールの小さな凹凸の形成にはフォトリソグラフィや電子線を用いたパターニング方法が知られている。
【0003】
一方、上述したスケールの凹凸パターンの形成、特にナノメーターオーダーの凹凸パターンの形成をより簡便且つ低コストに実現できる次世代の微細加工技術として、近年、ナノインプリント技術が検討されている(例えば、非特許文献1、2等参照)。この技術は、主にナノスケールの凹凸パターンを形成したスタンパを樹脂薄膜が塗付された基板に押し当てて、樹脂薄膜に凹凸パターンを転写する成形加工技術である。ナノインプリント技術としては、大別すると、スタンパにより樹脂薄膜をプレスした際に加熱を行う熱ナノインプリント方式と、樹脂薄膜として光硬化性樹脂を用い、スタンパにより樹脂薄膜をプレスした状態で紫外線などの光を照射する光ナノインプリント方式とが挙げられる。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】S.Y.Chou,P.R.Krauss,P.J.Penstrom:Appl.Phys.Lett.,67,3114(1995)
【0005】

【非特許文献2】L.J.Guo:Adv.Mater.,19,495(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ナノインプリント技術を用いて凹凸パターンを形成した場合、基板表面に形成された互いに隣接する2つの凸部間に薄い膜が残ってしまう。このような薄い膜(残膜)が凸部間に存在すると、例えば、導電性を有する樹脂薄膜にスタンパを押し当てて凹凸パターンを形成した場合に、基板表面の互いに隣接する凸部間の電気的導通をもたらしてしまう。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、薄膜にスタンパを押し当てて凹凸パターンを形成した場合に、基板表面の互いに隣接する凸部間に実質的に残膜が存在しない凹凸パターン形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は以下の本発明により達成される。
すなわち、本実施形態の凹凸パターン形成方法は、基板表面に形成され、ポリイミド樹脂の前駆体および表面がカルボキシル基で修飾されたカーボンナノチューブを主成分として含む薄膜に、支持体表面に弾性材料から構成される凹凸型が設けられたスタンパを押し当てた状態で、加熱および光照射から選択される少なくとも一方の外部刺激を付与することにより、前記基板表面に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成工程を少なくとも含み、下式(1)を満たし、且つ、前記凹凸パターンの凸部が、ポリイミド樹脂および表面がカルボキシル基で修飾されたカーボンナノチューブを主成分として含むことを特徴とする。
・式(1) H(薄膜)<H(凹凸型)<H(凸部)
〔式(1)中、H(薄膜)は、上記凹凸パターン形成工程実施前の上記薄膜の硬度、H(凹凸型)は上記凹凸型の硬度、H(凸部)は、上記凹凸パターン形成工程実施後の上記凹凸パターンを構成する凸部の硬度を表す。〕
【0012】
本実施形態の凹凸パターン形成方法の実施態様は、前記凹凸型を構成する弾性材料が、ポリジメチルシロキサンであることが好ましい。
【0013】
本実施形態の凹凸パターン形成方法の他の実施態様は、前記凹凸パターンが、配線、電気回路、および、電子素子から選択される少なくともいずれかとして利用されることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、薄膜にスタンパを押し当てて凹凸パターンを形成した場合に、基板表面の隣接する凸部間に実質的に残膜が存在しない凹凸パターン形成方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】弾性材料から構成される凹凸型を用いて凹凸パターンを形成する場合の凹凸パターン形成プロセスの一例を示す概略図である。ここで、図1(A)は、弾性材料から構成される凹凸型を薄膜に押し当てた状態の一例を示す模式断面図であり、図1(B)は、弾性材料から構成される凹凸型を用いて形成された凹凸パターンの一例を示す模式断面図である。
【図2】評価用サンプルの凹凸パターン形状を示す平面図である。
【図3】評価用サンプルの第一の態様を示す平面図である。
【図4】評価用サンプルの第二の態様を示す平面図である。
【図5】実施例1の2種類の評価用サンプルに直流電流を印加した際の電流値の変化を示すグラフである。
【図6】実施例1の評価用サンプル(図4に示すタイプのサンプル)および比較例1の評価用サンプル(図4に示すタイプのサンプル)に直流電流を印加した際の電流値の変化を示すグラフである。
【図7】参考例1の2種類の評価用サンプルに直流電流を印加した際の電流値の変化を示すグラフである。
【図8】非弾性材料から構成される凹凸型を用いて凹凸パターンを形成する場合の凹凸パターン形成プロセス(従来の凹凸パターン形成プロセス)の一例を示す概略図である。ここで、図8(A)は、非弾性材料から構成される凹凸型を薄膜に押し当てた状態の一例を示す模式断面図であり、図8(B)は、非弾性材料から構成される凹凸型を用いて形成された凹凸パターンの一例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本実施形態の凹凸パターン形成方法は、基板表面に形成され、熱硬化性材料及び光硬化性材料から選択される少なくとも1種の硬化性材料を主成分として含む薄膜に、支持体表面に弾性材料から構成される凹凸型が設けられたスタンパを押し当てた状態で、加熱および光照射から選択される少なくとも一方の外部刺激を付与することにより、前記基板表面に凹凸パターンを形成する凹凸パターン形成工程を少なくとも含み、且つ、下式(1)を満たすことを特徴とする。
・式(1) H(薄膜)<H(凹凸型)<H(凸部)
〔式(1)中、H(薄膜)は、上記凹凸パターン形成工程実施前の上記薄膜の硬度、H(凹凸型)は上記凹凸型の硬度、H(凸部)は、上記凹凸パターン形成工程実施後の上記凹凸パターンを構成する凸部の硬度を表す。〕

【0017】
本実施形態の凹凸パターン形成方法では、凹凸型の硬度H(凹凸型)が、薄膜の硬度H(薄膜)よりも大きい。従って、薄膜に凹凸型を押し当てた場合に、凹凸パターンが形成される。また、凹凸パターン形成工程を経て基板表面に形成された凹凸パターンの凸部の硬度H(凸部)は、凹凸型の硬度H(凹凸型)よりも大きい。従って、凹凸パターン形成工程を終えた後に、基板表面に形成された凹凸パターン状の薄膜からスタンパを剥離する際に、スタンパの凹凸型と凹凸パターンの凸部側面や頂上面とが接触したり、凹凸型により凹凸パターンの凸部に外力が加わったとしても、凹凸パターンの形状が損なわれることが無い。

【0018】
なお、薄膜は凹凸パターン形成工程を実施する際には流動性を有するのに対して、凹凸型は所定の形状を有する固体であるため、式(1)中の「H(薄膜)<H(凹凸型)」なる関係は常に満たされる。また、式(1)中の「H(凹凸型)<H(凸部)」なる関係は、凹凸型を構成する弾性材料の硬度よりも、凹凸パターンの凸部を構成する硬化物の硬度が大きくなるように、凹凸型を構成する弾性材料と、凹凸パターンの形成に用いる薄膜材料とを組み合わせて選択すればよい。例えば、弾性材料がPDMSなどのゴム材料であり、硬化物が光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を主成分とする薄膜材料を硬化させた非弾性材料であれば、上記関係は満たされる。

【0019】
そして、本実施形態の凹凸パターン形成方法では、凹凸型は弾性材料から構成される。このため、凹凸型を薄膜に押し当てた際に、凹凸型の凸部の頂上面が基板表面にぴったりと沿うように追従でき、薄膜に対して凹凸型の凸部が陥入した部分(凹凸型の凸部頂上面と基板表面とが対面する領域)からは、加圧により薄膜を構成する樹脂が確実に押し出されることになる。従って、本実施形態の凹凸パターン形成方法により作製された凹凸パターンにおいては、基板表面の互いに隣接する凸部間に実質的に残膜が存在しない。

【0020】
なお、上述した効果が得られる理由については、本発明者は以下のように推定している。すなわち、市販されている表面が平坦な各種基板のみならず、極めて高い平坦度が得られるように研磨加工された基板であっても、基板表面には、通常、うねりが大なり小なり存在する。ここで、以下に説明する図8および図1において、支持体(不図示)表面上の凹凸型に設けられた複数の凸部の高さが、凹凸型を薄膜に押し当てる前の状態において全て同じであると仮定する。すると、凹凸型が非弾性材料から構成される場合、図8(A)に示すように、凹凸型10Sの凸部20の頂上面22と基板表面30との間には隙間G(図中、両矢印で示す領域)が生じてしまう。従って、この隙間Gに残留した薄膜材料40が、図8(B)に示すように、凹凸パターン102の凸部110の間(すなわち、凹部120の底部)に残膜130を形成することになる。これに対して、本実施形態の凹凸パターン形成方法のように、凹凸型が弾性材料から構成される場合、図1(A)に示すように、凹凸型10Eの凸部20の頂上面22は、基板表面30のうねりに追従して変形できるため、基板表面30と頂上面22との間には、実質的に隙間が形成されない。従って、図1(B)に示すように、凹凸パターン100の凸部110の間(すなわち、凹部120の底部)に実質的に残膜130が形成されない。

【0021】
次に、本実施形態の凹凸パターン形成方法に用いられる各種材料や、各工程の詳細について、より詳細に説明する。

【0022】
-薄膜材料-
基板表面に形成される薄膜を構成する薄膜材料は、熱硬化性材料及び光硬化性材料から選択される少なくとも1種の硬化性材料を主成分として含み、凹凸パターン形成工程を実施する前の状態(より具体的には、外部刺激を付与する前)において流動性を有するものであれば特に限定されない。硬化性材料は、加熱や光照射による重合反応、縮合反応および/または架橋反応などにより硬化する材料であれば特に限定されず、公知の材料を用いることができるが、一般的には、重合性単量体(樹脂前駆体)や、エポキシ基などの架橋基を有する樹脂等の硬化性成分を含み、必要に応じて更にこれら硬化性成分を溶解させる溶媒を含んでいてもよい。

【0023】
熱硬化性材料としては、代表的には熱硬化性樹脂を挙げることができ、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸を有機溶媒(例えば、NMP(N-メチル-2-ピロリドン)など)に溶解させた材料を一例として挙げることができる。光硬化性材料としては、代表的には紫外線硬化性樹脂を挙げることができ、例えば、市販品として、東洋合成製のUVナノインプリント用樹脂(商品名;PAK-01、PAK-02)や、離型性を高めたフッ素含有UVナノインプリント樹脂(旭硝子製、商品名;NIF-A-1)等を用いることができる。

【0024】
なお、これらの硬化性材料を硬化させて得られる硬化物の物性としては、その硬度が凹凸型よりも硬度が大きければそれ以外の物性は特に限定されるものではない。しかしながら、形成された凹凸パターンの利用用途に応じて、所望の電気的特性や光透過性、屈折率等の物性を有する硬化物が得られるように硬化性材料を選択することが好ましい。また、硬化物は、その硬度が上述したように凹凸型よりも硬度が大きければ、硬化物は弾性体でっても非弾性体であってもよいが、通常は非弾性体であることが好ましい。

【0025】
-添加材-
なお、薄膜材料には、硬化性材料以外にも必要に応じて種々の添加材を添加することができる。例えば、硬化反応を制御するために、重合開始剤や重合促進剤などを添加することができる。また、硬化物の導電性を制御することを目的に導電性材料を添加したり、屈折率を制御するために、酸化チタン粒子などの高屈折率材料を添加したりすることができる。

【0026】
例えば、凹凸パターンの凸部を構成する硬化物に導電性を付与したい場合には添加材(導電性材料)としてカーボンナノチューブ(CNT)、カーボンブラック、フラーレンなどの各種導電性カーボン粒子や、金属フィラーなどを用いることができる。なお、導電性材料としてカーボンナノチューブを用いる場合は、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)のいずれを用いてもよい。また、硬化性材料中のCNTの添加量としては、目的とする電気的特性に応じて適宜選択できるが、硬化性材料100質量部(硬化性材料が溶媒を含む場合は固形分100質量部)に対して0質量部を超え30質量部以下の範囲が好ましい。CNTの添加量が30質量部を超える場合は、添加量に対する導電性の向上効果が飽和してしまう傾向にあることに加えて、添加量が多すぎるために硬化材料中でのCNTの分散性が低下してしまう場合がある。

【0027】
また、CNTを硬化性材料に分散させる場合、CNTをそのまま硬化性材料中に分散させてもよい。しかし、この場合、CNT分子同士が分子間力等によって凝集し、硬化性材料中へのCNTの分散が不十分となる場合がある。このような場合、可溶化処理を施したCNTを用いることが好ましい。可溶化処理の方法としては、(1)ドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤や、ピレン誘導体などのπ共役系を有する多核芳香族化合物、DNA、又は、RNAなどの可溶性分子をCNTに吸着させる方法や、(2)CNTを酸処理することでCNTの末端部や欠陥部にカルボキシル基を形成するなどのように、CNTを親溶媒性の可溶化基で化学的に修飾する方法が挙げられる。このような可溶化処理方法は、CNTを溶解・分散させたい溶媒の種類に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸の良溶媒であるNMPに対するCNTの溶解・分散性を向上させたい場合は、酸処理によりカルボキシル基で化学修飾されたCNTを用いることができる。

【0028】
-凹凸型-
凹凸型としては、弾性材料から構成されるものが用いられる。なお、凹凸型は繰り返し利用できることが好ましいため、この弾性材料は、加熱や光照射によって劣化し難い材料であることが好ましい。また、光照射を利用して凹凸パターンを形成する場合、弾性材料は光照射する際に用いる光の波長域に対して50%以上の透過率を有していることが好ましい。弾性材料としては、公知のゴム材料を用いることができ、例えば、ポリオレフィン系ゴムや、フッ素ゴム、シリコーンゴムを挙げることができる。しかしながら、これらの中でもシリコーンゴムの1種であるポリシロキサン系ゴムが好ましく、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を用いることが最も好ましい。この理由は、以下の2つである。まず、第一に、PDMSは、他の凹凸型用の材料と比べて表面エネルギーが小さい。このため、特に表面処理を施さなくても離型性に優れ、凹凸パターン形成工程を終えた後にスタンパを剥離する際に、凹凸型表面と凹凸パターン表面との癒着による凹凸パターンの破壊や剥離を抑制する効果が高い。第二に、PDMSは、硬化に伴う収縮が小さい。このため、後述するように原盤を用いた転写によりPDMS製の凹凸型を作製する場合、高い転写精度を得ることができる。なお、PDMSは、高分子鎖を構成する繰り返し単位の一部を異種単量体で置換した変性PDMSであってもよい。この場合、変性PDMSの共重合の態様としては、ランダム共重合型、交互共重合型、ブロック共重合型、あるいは、グラフト共重合型のいずれでもよい。変性PDMSとしては、ブロック共重合型の場合は、例えば、poly(dimethylsiloxane)-block-polystyrene (PDMS-b-PS)を挙げることができ、グラフト共重合型の場合は、例えば、 poly(dimethylsiloxane)-graft-poly(methacrylate)-co-poly(isobornylacrylate) (PDMS-g-PMIA)や、poly(dimethyl siloxane)-graft-poly(methylmethacrylate) (PDMS-g-PMMA)を挙げることができる。なお、凹凸型に用いられる弾性材料のヤング率としては、一般的なゴム材料と同程度前後(約1MPa~10MPa前後)であればよいが、1MPa~6MPaの範囲がより好ましい。例えば、上述したPDMS(Dow Corning社製、SYLGARD184)のヤング率は2MPaである(Adv.Mater.2007,19,495-513)。

【0029】
凹凸型の作製方法としては特に限定されないが、微細且つ形状精度の高い凹凸型の作製が容易であることから、フォトリソグラフィーとエッチングとを組み合わせたパターニングにより作製された原盤を用いて凹凸型を作製することが好ましい。具体的には、例えば、以下の手順で凹凸型を作製することができる。まず、ガラス基板などの平坦な基板上に、フォトレジストを塗布し、凹凸型の凹凸パターンに対応するフォトマスクを用いて露光・エッチングしてパターニングを行い、原盤を作製する。次に、ガラス基板などの平坦な基板からなる支持体表面にコーティングされた未硬化PDMS膜に、原盤の凹凸パターンが形成された面を押し当てた状態で、例えば、100℃、1MPa、1時間の条件で加圧加熱処理する。その後、原盤を剥離することで、支持体表面にPDMS製の凹凸型が形成されたスタンパを得ることができる。

【0030】
なお、凹凸型の作製に際しては、支持体と凹凸型との接着性を強固なものとするために、例えば、支持体表面に予め表面処理を施しておいてもよい。このような表面処理は、支持体表面を構成する材料と、凹凸型を構成する材料との組み合わせを考慮して適宜選択することができる。例えば、支持体がガラス基板であり、凹凸型がPDMSから構成される場合は、HDMS(ヘキサメチルジシラザン)などのシランカップリング剤を用いることができる。また、凹凸型の表面には、凹凸パターン形成工程を終えた後の凹凸パターンが形成された薄膜材料との剥離性を確保するために、離型剤の塗付などの離型処理を施しておいてもよい。

【0031】
なお、凹凸型の平面方向の形状や、最大凸高さ(あるいは最大凹部深さ)については特に限定されず、形成したい凹凸パターンに応じて適宜選択することができる。ここで、凹凸型に設けられる凸部の高さは、全て同一であっても異なっていてもよい。また、凹凸型面内に設けられた凸部の最大高さは、50nm~10000nmの範囲内であることが好ましく、100nm~5000nmの範囲内であることがより好ましい。凸部の最大高さが50nm未満の場合は、凸部の形成自体が困難となる場合がある。また、凸部の最大高さが10000nmを超えると、基板表面に形成された薄膜に凹凸型を押し当てた際に、凸部の形状が崩れて変形したり、凹凸型が撓み易くなる。そして、このような変形や撓みによって、残膜が発生し易くなる場合がある。

【0032】
一方、凸部間の最小ピッチとしては10nm~100000nmの範囲内であることが好ましく、50nm~100000nmの範囲内であることがより好ましい。最小ピッチが50nm未満の場合は、凹凸型の作製自体が困難となる場合がある。一方、最小ピッチが100000nmを超えると、凹凸型を薄膜に押し当てた際に、基板平面方向への薄膜材料の流動が困難となったり、凹部の中央付近が基板側へと突出するように撓み易くなる。このため、形成される凹凸パターンの形状精度が低下してしまうことがある。なお、「凸部間の最小ピッチ」とは、一の凸部の頂上面の輪郭線上の1点と、当該一の凸部に隣接する他の凸部の頂上面の輪郭線上の1点との最短距離を意味する。例えば、帯状の凸部が30μmの間隔を開けて平行に複数本配置された凹凸パターンの場合、「凸部間の最小ピッチ」は30μmとなる。

【0033】
-基板-
表面としては、表面が平坦な基板であれば特に制限無く利用でき、市販のガラス基板、プラスチック基板、セラミックス基板、半導体基板など、各種の基板を用いることができる。しかしながら、本実施形態の凹凸パターン形成方法は、基板表面のうねりの大小に関係なく残膜の発生を抑制できるため、使用する基板としては、平坦性がある程度低いものであることが好適である。この場合、凹凸型を構成する材料としてシリコンや金属酸化物などの非弾性材料を用いた場合と比べて、残膜の発生をより一層抑制できる。なお、非弾性材料から構成される凹凸型を用いて残膜の発生を抑制しようとする場合、基本的に基板の平坦性を向上させることが必要になる。しかし、基板の平坦性を向上させるためには、基板の成形や研磨により高い精度が要求されるため、平坦性の向上に伴い基板の製造・加工コストが大幅に増大し、結果的に実用性が低下する。しかしながら、本実施形態の凹凸パターン形成方法を用いて凹凸パターンを形成する場合は、基板表面の平坦性が高く無くても残膜の発生を抑制できるため、この意味では低コストで実用性にも優れる。

【0034】
なお、基板の表面には、基板とこの基板表面に形成される凹凸パターンとの密着性を向上させるために、シランカップリング剤などを用いて表面処理を施しておいてもよい。例えば、凹凸パターンを構成する主材料としてポリイミド樹脂を用いる場合は、シランカップリング剤として、例えば、3-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)を用いることができる。また、APTESのようなアミノ基を有するシランカップリング剤は、カルボキシル基と化学結合を形成することができる。このため、凹凸パターン中に酸処理されたCNTが含まれる場合は、このCNT表面に存在するカルボキシル基を介して、CNTも基板表面に安定的に固定することができる。

【0035】
-凹凸パターンの形成プロセス-
次に、凹凸パターンの形成プロセスについて説明する。本実施形態の凹凸パターン形成方法では、少なくとも凹凸パターン形成工程を経て凹凸パターンを形成するものであれば特に限定されないが、通常は、これらの工程の前後に他の工程が適宜組み合わされる。一般的には、(1)基板表面に薄膜を形成する薄膜形成工程、(2)凹凸パターン形成工程、および、(3)凹凸パターン形成工程を終えた後に凹凸型を剥離する剥離工程が、この順に実施される。なお、必要に応じてこれら3つの工程に更に他の工程を組み合わせてもよい。例えば、薄膜形成工程が、薄膜材料を溶媒に分散・溶解させた溶液を基板表面に塗布することにより実施される場合は、薄膜形成工程と凹凸パターン形成工程との間に、溶媒成分を含む薄膜を乾燥させる乾燥工程を必要に応じて実施することができる。また、剥離工程後に凹凸パターンを構成する硬化物の硬度をより高めるために焼成を行う焼成工程を必要に応じて実施することができる。以下、各工程の詳細を説明する。

【0036】
-薄膜形成工程-
薄膜形成工程では、基板表面に薄膜を形成する。薄膜の形成は特に限定されず公知の方法を利用して実施できるが、通常は、薄膜材料を溶媒に分散・溶解させた溶液(薄膜形成用溶液)を塗布することにより実施することが好ましい。塗布方法としては、公知の塗付方法が利用でき、例えば、スピンコーティング法、ディッピング法、スプレーコート法等を挙げることができる。薄膜形成工程を経た後は、そのまま凹凸パターン形成工程を形成してもよい。しかしながら、薄膜中に溶媒分が多量に残留している場合は、自然乾燥により溶媒分をある程度揮発させた後に凹凸パターン形成工程を実施するか、あるいは、凹凸パターン形成工程の実施前に乾燥工程を実施することが好ましい。乾燥工程では、薄膜の流動性が失われない程度の条件で乾燥処理を行う。乾燥処理は、加熱乾燥や減圧乾燥などを適宜選択することができる。乾燥条件は、薄膜中に含まれる溶媒の含有量や沸点、蒸気圧、固形分の硬化温度等に応じて適宜選択することができる。なお、凹凸パターン形成工程実施前の薄膜の厚みは特に限定されるものではなく、凹凸型の最大凸高さや、形成される凹凸パターンの凸部分の体積、凹凸パターン形成工程の押圧力、凹凸パターン形成工程を実施する際の薄膜の流動性などを考慮して適宜選択することができる。しかしながら、実用上の観点からは、薄膜の厚みは50nm~10000nmの範囲が好ましく、100nm~5000nmの範囲が好ましい。薄膜の厚みが50nm未満の場合は膜厚が薄すぎるために、凹凸型に対応した高さの凸部を有する凹凸パターンが形成できなくなることがある。また、薄膜の厚みが10000μmを超えると膜厚が厚すぎるために、凹凸パターン形成工程において凹凸型が薄膜中へと十分に陥入できず、結果として残膜が発生してしまうことがある。

【0037】
-凹凸パターン形成工程-
凹凸パターン形成工程では、まず最初に、基板表面に形成された薄膜に対して、スタンパを、その凹凸型が設けられた側の面を押し当てる。この際の押圧力は、薄膜の厚みや流動性等を考慮して適宜選択することができるが、0.05MPa~10MPaの範囲が好ましく、0.1MPa~5MPaの範囲がより好ましい。押圧力が0.05MPa未満の場合には、押圧力が不十分なため、凹凸パターン形成工程において凹凸型が薄膜中へと十分に陥入できず、結果として残膜が発生してしまうことがある。また、押圧力が5MPaを超える場合には、凹凸型を構成する弾性材料が大きく変形して、凹凸型が損傷してしまう場合がある。

【0038】
続いて、スタンパが薄膜に押し当てられた状態で、薄膜を構成する薄膜材料の組成や、薄膜材料の主成分である硬化性材料の種類に応じて、加熱及び/又は光照射が実施される。なお、加熱や光照射の条件(加熱温度・時間、照射する光の波長域・強度・照射時間)は、凹凸パターン形成工程を完了した時点において、凹凸パターンの凸部の硬度H(凸部)が、スタンパの凹凸型の硬度H(凹凸型)よりも大きくなる範囲で、薄膜材料の組成や、薄膜材料の主成分である硬化性材料の種類に応じて適宜選択することができる。

【0039】
薄膜材料の主成分として熱硬化性材料を用いる場合は、加熱を行う。この場合の加熱処理は、熱硬化性材料を略完全に硬化させる完全硬化を目的とするものであってもよいが、硬化反応を部分的に進行させる程度に留める半硬化を目的とするものであってもよい。例えば、熱硬化性材料が、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸であり、スタンパの凹凸型を構成する弾性材料がPDMSである場合は、半硬化を目的として120℃前後(具体的には80℃~150℃の範囲)の温度で加熱処理を行うことが好ましい。この理由は、加熱によりイミド化反応を完遂させてポリイミド樹脂とするためには、350℃前後(具体的には180℃~400℃の範囲)の温度での加熱が必要であるのに対して、このような高温域ではスタンパの凹凸型を構成するPDMSが熱分解・劣化してしまうためである。なお、凹凸型を構成する弾性材料の熱分解・劣化が起こるよりも低い温度で完全硬化が可能な熱硬化性材料を用いる場合は、完全硬化又は半硬化のいずれを目的として加熱処理を行ってもよい。また、凹凸パターン形成工程において、半硬化を目的とした加熱処理(プリベーク処理)のみを実施した場合は、後述する剥離工程を経た後に、必要に応じて完全硬化を目的とした加熱処理(ポストベーク処理)を行う焼成工程を実施することができる。

【0040】
薄膜材料の主成分として光硬化性材料を用いる場合は、光照射を行う。この場合の光照射処理は、光硬化性材料を略完全に硬化させる完全硬化を目的とするものであってもよいが、硬化反応を部分的に進行させる程度に留める半硬化を目的とするものであってもよい。また、凹凸パターン形成工程において、半硬化を目的とした光照射処理のみを実施した場合は、後述する剥離工程を経た後に、必要に応じて完全硬化を目的とした光照射処理を行うことができる。光照射は、スタンパ側から実施してもよいし、基板側から実施してもよい。但し、スタンパ側から光照射を実施する場合は、スタンパを構成する支持体や凹凸型を構成する材料が、照射する光の波長域に対して透光性を有していることが必要である。また、基板側から光照射を実施する場合は、基板を構成する材料が、照射する光の波長域に対して透光性を有していることが必要である。

【0041】
凹凸パターン形成工程の実施時間は、硬化反応の進み具合や、加熱・光照射の条件に応じて適宜選択されるが、実用上、熱硬化の場合は0.5分~120分の範囲が好ましく、0.5分~30分の範囲がより好まく、光硬化の場合は1秒~30分の範囲が好ましく、1秒~5分の範囲がより好ましい。

【0042】
-剥離工程-
凹凸パターン形成工程を終えた後は、基板表面からスタンパを剥離する。これにより、所望の凹凸形状からなる凹凸パターンが表面に形成された基板を得ることができる。なお、剥離工程の後に必要に応じて焼成工程等の各種後工程を実施してもよい。

【0043】
-凹凸パターン付き基板の用途-
以上に説明した本実施形態の凹凸パターン形成方法により作製された凹凸パターン付き基板の用途は特に限定されないが、以下に説明する用途に利用することができる。例えば、凹凸パターンの凸部が、硬化した樹脂マトリックス中にCNTなどの導電性材料を適量分散させた導電性又は半導電性の硬化物や、硬化した導電性樹脂又は半導電性樹脂からなる場合は、凹凸パターン付き基板を配線、電気回路、TFTなどの電子素子として利用することができる。このような電気的特性が要求される用途では、凸部のみが所定の導電性又は半導電性を有し、隣接する2つの凸部間は、両者を意図的に導通させる部分以外は絶縁されていることが必要である。しかしながら、本実施形態の凹凸パターン形成方法により作製された凹凸パターン付き基板では、隣接する2つの凸部間に実質的に残膜が存在しないため、隣接する2つの凸部間で意図しない導通が発生するのを確実に防止することができる。

【0044】
なお、配線等の用途に凹凸パターン付き基板を利用する場合、凸部を構成する硬化物は、ポリイミド樹脂中にCNTを分散させた材料を主成分として含むことが好ましい。ポリイミド樹脂は、耐熱性や、耐摩耗性、耐薬品性に優れるため、凹凸パターン付き基板を種々の電子部品として広く応用展開することが容易となる。ここで、凸部に半導電性(10-12S/cm以上10-6S/cm未満)を付与する場合は、ポリイミド樹脂中のCNT含有量を0.1質量%~1質量%程度の範囲とすることが好ましい。また、凸部に導電性(10-6S/cm以上)を付与する場合は、ポリイミド樹脂中のCNT含有量を1質量%~30質量%程度の範囲内とすることが好ましい。

【0045】
また、基板および凸部を構成する硬化物が特定の波長域の光を透過し、且つ、硬化物の屈折率が、基板の屈折率よりも大きい場合は、基板および凸部を覆うように特定の波長域の光を透過し且つ硬化物の屈折率よりも小さい屈折率を有する光透過性材料を配置することができる。この場合、凹凸パターン付き基板を光導波路や光回路として利用することができる。また、この他にも、例えば、凹凸パターン付き基板を、マイクロリアクタ用の流路が形成された部品として利用したり、マイクロマシン用の部品やその金型等として利用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、本実施形態の凹凸パターン形成方法を実施例を挙げて、より具体的に説明する。
【実施例】
【0047】
<評価用サンプルの形状>
評価用サンプルとしては、基板表面に凹凸パターンとして帯状の凸部を並行に複数本形成した後、更に、帯状の凸部に対して平行又は直交するように1対の電極端子を設けたものを2種類準備した。図2は、評価用サンプルの凹凸パターン形状を示す平面図である。図2に示すように凹凸パターン200は、基板表面に帯状の凸部210と凹部220とを交互に配置した形状である。ここで、凸部の幅X1は5μm、高さhは1μm、凹部の幅X2は5μmである。
【実施例】
【0048】
また、一対の電極端子は、凹凸パターンを覆うように図3および図4に示すように配置した。図3は、評価用サンプルの第一の態様を示す平面図であり、一対の電極端子230A、230Bを帯状の凸部210に対して平行となるように配置した評価用サンプル300について示す図である。なお、電極端子230A、230Bは、図3に示すように複数本の凸部210を覆うように配置される。また、電極端子230Aと電極端子230Bとの距離D1は90μmである。そして評価に際しては、電極端子230Aおよび電極端子230Bのうちの一方を正極、他方を負極として直流電流を印加した。
【実施例】
【0049】
図4は、評価用サンプルの第二の態様を示す平面図であり、一対の電極端子230A、230Bを帯状の凸部210に対して直交するように配置した評価用サンプル310について示す図である。ここで、電極端子230Aの先端部が位置する凸部210Bと、電極端子230Bの先端部が位置する凸部210Dとの間には、電極端子230A、230Bと全く接触しない複数本の凸部210C(なお、図4中では、説明を簡略化するために1本の凸部210Cのみを例示してある)が存在するように、電極端子230Aと電極端子230Bとの距離D2を90μmとした。そして評価に際しては、電極端子230Aおよび電極端子230Bのうちの一方を正極、他方を負極として直流電流を印加した。
【実施例】
【0050】
<実施例1>
-凹凸パターン付き基板の作製-
図2に示す凹凸パターン付き基板を以下の手順で作製した。
まず、基板として、表面を希酸および純水で順次洗浄した後、表面をシランカップリング剤(APTES)で表面処理したガラス基板(松浪硝子社製、S8226)を準備した。また、スタンパとしては、予め表面にシランカップリング剤(HDMS)を滴下して加熱処理後、更に洗浄処理したガラス基板(アズワン社製、スライドグラス1204)表面にスピンコーティングされた未硬化のPDMS膜(PDMSは、Dow Corning社製、SYLGARD184を使用)に、フォトリソグラフィおよびエッチングを利用して作製された原盤の凹凸パターンが形成された面を押し当てた状態で、100℃、1MPa、1時間の条件で加圧加熱処理して作製したものを準備した。なお、このスタンパの凹凸型の寸法は、図2に示す凹凸パターンに対応するものであった。
【実施例】
【0051】
また、基板表面に薄膜を形成する際に用いる薄膜形成用の溶液としては、下記組成物を混合した溶液を用いた。
・ポリアミック酸溶液(Sigma Aldrich社、(カプトン型ポリイミド前駆体)
Poly(pyromellitic dianhydride-co-4,4’-oxydianiline), amic acid solution)
・NMP(Sigma Aldrich社製 1-Methyl-2-pyrrolidinone 脱水タイプ)
・CNT
なお、CNTは、シングルウォールタイプのカーボンナノチューブを硝酸溶液で酸処理することにより表面をカルボキシル基で修飾したものであり、その直径は4~5nm程度、平均長さが0.5~1.5μm程度である。また、上記組成からなる混合溶液中のCNT含有量は固形分換算で1質量%である。
【実施例】
【0052】
次に、薄膜形成用溶液を、乾燥処理後の膜厚が0.3μm程度となるように基板表面にスピンコートした後、50℃で3分間の乾燥処理を行った。その後、この薄膜表面にスタンパを押し当てた状態で温度120℃、圧力2MPaにて1時間の加熱処理(プリベーク)を行った。続いて、スタンパを剥離した後、凹凸パターンの形成された基板を、350℃で2時間加熱処理(ポストベーク)することにより、図2に示す凹凸パターンを有する凹凸パターン付き基板を得た。
【実施例】
【0053】
-評価用サンプルの作製-
得られた凹凸パターン付き基板の表面に対して、フォトリソグラフィおよびエッチングを利用してパターニングを行った後、真空蒸着により図3および図4に示すように一対の電極端子(Au膜、厚み0.03μm)を成膜した後、不要なレジストを除去した。これにより、第一の態様および第二の態様の評価サンプルを得た。なお、実施例1では、電極端子230A、230Bの幅を2mmとした。
【実施例】
【0054】
(比較例1)
スタンパとして、以下の手順で作製したスタンパを用いた以外は、基本的に実施例1と同様にして凹凸パターンを形成し、評価用サンプルを作製した。
【実施例】
【0055】
ここで、比較例1で用いたスタンパは、以下のように作製した。まず、表面を予めシランカップリング剤(APTES)で処理したガラス基板(松浪硝子社製、S8226)の表面に、熱可塑性樹脂(旭硝子社製、フッ素樹脂、サイトップ CTX-809A)を塗布して塗膜を形成した。次にこの塗膜を180度で加熱した。その後、この樹脂膜に対して、レジストを塗布してフォトリソグラフィ工程を利用してパターニングされたレジスト膜を用いて加圧成型(150℃、5MPa)することで、溝を形成して原盤を得た。次に、洗浄処理したガラス基板(アズワン社製、スライドグラス1204)表面にスピンコーティングされた未硬化のフッ素系光硬化性樹脂膜(フッ素系光硬化性樹脂は旭硝子製、NIF-A-1を使用)に、上述の原盤の凹凸パターンが形成された面を押し当てた状態で、紫外線照射処理(光源の波長370nm、照射時間5分、照射時の温度:室温)することでスタンパを作製した。なお、このスタンパの凹凸型の寸法は、図2に示す凹凸パターンに対応するものであった。また、凹凸型の作製に用いた材料(NIF-A-1)は、そのヤング率が2100MPaであり非弾性材料である(Microelectronic Engineering 84(2007)973-976)。
【実施例】
【0056】
(参考例1)
実施例1と同様にして、基板表面に薄膜形成用溶液を、乾燥処理後の膜厚が0.3μm程度となるように基板表面にスピンコートした後、50℃で3分間の乾燥処理を行った。続いて、この薄膜を、実施例1と同様にポストベーク処理して硬化させた。
【実施例】
【0057】
続いて、この薄膜表面にレジスト膜を形成した後、図2に示す凹凸パターンに対応するフォトマスクを用いて露光し、更に現像した。その後、エッチングガスとしてOガスを用いてRIE(リアクティブ・イオン・エッチング)により薄膜を凹凸パターンに対応するようにエッチングし、最後に残ったレジストを除去することで凹凸パターンを形成した。なお、薄膜のRIEによるエッチングは、基板表面が確実に露出する条件で実施した。これにより、図2に示す凹凸パターンを有する凹凸パターン付き基板を得た。その後は、実施例1と同様にして電極端子を形成することで2種類の評価用サンプルを得た。なお、参考例1では、電極端子230A、230Bの幅を0.8mmとした。
【実施例】
【0058】
(評価)
評価は、実施例1、比較例1および参考例1で作製した2種類の評価用サンプルの電極端子に電圧を0V~10Vの間で可変させながら直流電圧を印加した際の電流値を測定することで評価した。なお、電流値の測定には、電流計としてKEITHLEY社製、6517A(測定限界は約1pA程度)を用いた。結果を図5~図7に示す。なお、図5は、実施例1の2種類の評価用サンプルに直流電流を印加した際の電流値の変化を示すグラフであり、図6は、実施例1の評価用サンプル(図4に示すタイプのサンプル)および比較例1の評価用サンプル(図4に示すタイプのサンプル)に直流電流を印加した際の電流値の変化を示すグラフであり、図7は、参考例1の2種類の評価用サンプルに直流電流を印加した際の電流値の変化を示すグラフである。なお、図5および図7中、横軸は図3、図4に示す2つの電極端子230A、230Bに印加した直流電圧(V)を表し、縦軸は2つの電極端子230A、230B間に流れる電流量(nA)を表す。また、図5および図7中の、▲印又は△印で示されるプロットは、図3に示す第一の態様の評価用サンプルについて評価した結果を意味し、●印又は○印で示されるプロットは、図4に示す第二の態様の評価用サンプルについて評価した結果を意味する。また、図6中、横軸は図4に示す2つの電極端子230A、230Bに印加した直流電圧(V)を表し、縦軸は2つの電極端子230A、230B間に流れる電流量(nA)を表す。さらに、図6中の、●印で示されるプロットは、実施例1の評価用サンプル(図4に示す第二の態様の評価用サンプル)について評価した結果を意味し、▲印で示されるプロットは、比較例1の評価用サンプル(図4に示す第二の態様の評価用サンプル)について評価した結果を意味する。なお、図6中、●印および▲印のプロットラインとして各々2本づつ示されているが、これは、測定位置を変えて、2か所で測定したことを意味する。
【実施例】
【0059】
-実施例1の結果について-
図5から明らかなように、図3に示す第一の態様の評価用サンプルでは、直流電圧に比例して電流量が増加していることから、帯状の凸部210が導電性を有していることが判る。また、このことから凸部210を構成する材料が導電性を有することも明かである。
これに対して図4に示す第二の態様の評価用サンプルでは、直流電圧の値に関係なく、電流値は0nA(測定限界値以下)であった。このことから、凹部220には、凸部210と同様の導電性を有する材料からなる残膜が実質的に存在していないことが分った。
【実施例】
【0060】
-比較例1の結果について-
図3に示す第一態様の評価用サンプルについては、実施例1と同様に電圧に対して電流値が直線的に増加した(図示省略)。一方、図4に示す第二態様の評価用サンプルについては、図5に示した場合よりも縦軸のスケールを拡大して図6に示すように実施例1と比較評価した。その結果、実施例1では、直流電圧の値に関係なく、電流値は0nA(測定限界値以下)であったのに対して、比較例1では、直流電圧の値の増加に伴い、微量ではあるが電流量が増加した。このことから、比較例1に示すサンプルでは、凹部220には、互いに隣接する凸部210間を導通させるように薄く連続的な残膜が存在していると推定される。
【実施例】
【0061】
-参考例1の結果について-
図7から明らかなように、図3に示す第一の態様の評価用サンプルでは、直流電圧に比例して電流量が増加していることから、帯状の凸部210が導電性を有していることが判る。また、このことから凸部210を構成する材料が導電性を有することも明かである。
これに対して図4に示す第二の態様の評価用サンプルでは、直流電圧の値に関係なく、電流値は0nA(測定限界値以下)であった。このことは、参考例1の凹凸パターンの作製に際して、RIEによるエッチングを基板表面が確実に露出するまで実施したことと一致する。そして、直流電流に対する電流値の変化の傾向は、実施例1と参考例1とで共通することから、実施例1においても、2つの隣接する凸部210間に残膜が全く存在しないか、仮に残膜が多少残っていたとしても2つの隣接する凸部210間に、両凸部210間の導通が不可能なように不連続的に存在するのみであり、電気的な意味では実質的に残膜が存在しないものと推定される。なお、図5と図7とを比較すると電流値の値が約2.5倍異なるが、これは、電極端子の幅の違いに起因するものである。そして、電極端子230A、230Bの単位幅当たりの電流量は、実施例1と参考例1とで実質的にほぼ同じである。
【符号の説明】
【0062】
10E (弾性材料から構成される)凹凸型
10S (非弾性材料から構成される)凹凸型
20 (凹凸型の)凸部
22 頂上面
30 基板表面
40 薄膜材料
100、102 凹凸パターン
110 (凹凸パターンの)凸部
120 (凹凸パターンの)凹部
130 残膜
200 凹凸パターン
210、210A、210B、210C、210D、210D 凸部
220 凹部
230A 電極端子
230B 電極端子
300 第一の態様の評価用サンプル
310 第二の態様の評価用サンプル
G 隙間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7