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明細書 :金属皮膜の形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5305295号 (P5305295)
公開番号 特開2011-050888 (P2011-050888A)
登録日 平成25年7月5日(2013.7.5)
発行日 平成25年10月2日(2013.10.2)
公開日 平成23年3月17日(2011.3.17)
発明の名称または考案の名称 金属皮膜の形成方法
国際特許分類 B05D   1/12        (2006.01)
B05D   7/24        (2006.01)
C23C  24/04        (2006.01)
FI B05D 1/12
B05D 7/24 302A
C23C 24/04
請求項の数または発明の数 7
全頁数 12
出願番号 特願2009-203423 (P2009-203423)
出願日 平成21年9月3日(2009.9.3)
審査請求日 平成24年9月3日(2012.9.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】榊 和彦
【氏名】▲高▼田 光一
個別代理人の代理人 【識別番号】100077621、【弁理士】、【氏名又は名称】綿貫 隆夫
【識別番号】100092819、【弁理士】、【氏名又は名称】堀米 和春
【識別番号】100141450、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 剛
審査官 【審査官】山崎 利直
参考文献・文献 特開2008-277862(JP,A)
特開2009-055092(JP,A)
特開平08-269672(JP,A)
特開2007-064426(JP,A)
調査した分野 B05D 1/00- 7/26
C23C24/00-30/00
特許請求の範囲 【請求項1】
スプレーノズルから作動ガスに伴って金属粒子を平滑な基材表面に噴射するコールドスプレー法によって前記基材表面に金属皮膜を形成する際に、
前記スプレーノズルと前記基材表面との距離を一定に保持すると共に、前記スプレーノズルから作動ガスに伴って金属粒子を前記基材表面に対して鋭角の噴射角で噴射しつつ、前記スプレーノズルを前記基材表面に沿って移動させ、前記基材表面に金属粒子を衝突させると共に前記基材表面を滑動させて留まらせて、前記基材表面に金属皮膜を形成することを特徴とする金属皮膜の形成方法。
【請求項2】
前記金属皮膜を形成した後、90°の噴射角で前記金属皮膜上に作動ガスに伴って金属粒子を噴射して第2の金属皮膜を形成することを特徴とする請求項1記載の金属皮膜の形成方法。
【請求項3】
前記第2の金属皮膜を形成した後、鋭角の噴射角で前記第2の金属皮膜上に作動ガスに伴って金属粒子を噴射して第3の金属皮膜を形成することを特徴とする請求項1又は請求項2記載の金属皮膜の形成方法。
【請求項4】
前記基材として、基材表面が鏡面に形成した基材又は基材表面が粗面化処理されていない基材を用いる請求項1~3のいずれか一項記載の金属皮膜の形成方法。
【請求項5】
金属粒子の前記基材表面に対する噴射角60~40°である請求項1~4のいずれか一項記載の金属皮膜の形成方法。
【請求項6】
金属粒子として、基材よりも低硬度の金属粒子を用いる請求項1~のいずれか一項記載の金属皮膜の形成方法。
【請求項7】
前記基材として金属製、ガラス・エポキシ製、セラミック製或いはガラス製の基材を用いることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項記載の金属皮膜の形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は金属皮膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基材表面に金属皮膜を形成する方法としてコールドスプレー法が提案されている(例えば、下記非特許文献1参照)。
かかるコールドスプレー法では、図8に示す様に、窒素ガス等の作動ガスの一部を、材料粒子供給装置102に供給して金属粒子をスプレーガン104内に供給する。同時に、残余の作動ガスをヒータ106に供給し、所定温度に加熱してスプレーガン104内に供給する。スプレーガン104内に供給された金属粒子及び所定温度に加熱された作動ガスは、末広状のスプレーノズル108から基材100の表面に噴出する。
この様な、コールドスプレー法では、通常、金属粒子を基材100の表面に対して直角に噴射する。その際のスプレーガン104での作動ガスの温度は1000℃以下であり、その圧力は0.5~4MPa程度である。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】表面技術第59巻第8号(2008)「新しい溶射法コールドスプレーの現状と課題」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8に示す装置を用いたコールドスプレー法では、金属粒子を溶融することなく金属粒子の基材表面に衝突する衝突エネルギーを利用して金属皮膜を形成する。このため、酸化や熱変質がほとんどない金属皮膜を基材表面に形成できる。
しかし、従来のコールドスプレー法では、厚い金属皮膜を基材表面に形成すると、金属皮膜が剥離され易いことが判明した。
そこで、基材表面に厚付けした金属皮膜が剥離され易い従来のコールドスプレー法の課題を解決し、基材表面に厚付けした金属皮膜が剥離され難いコールドスプレー法を利用した金属皮膜の形成方法及び金属皮膜を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、前記課題を達成すべく、先ず、基材表面にブラスト加工を施して粗面化することによって、金属皮膜との密着性を向上できる。
しかしながら、基材表面にブラスト加工を施すことは、基材表面にブラスト材の残留や加工工程を長く且つ複雑化して好ましくない。
このため、本発明者等は、平滑な基材表面にコールドスプレー法によって密着性に優れた金属皮膜を形成できないか検討した結果、スプレーノズルからの金属粒子の基材表面に対する噴射角を鋭角にして金属皮膜を形成したところ、基材表面に厚付けした金属皮膜の密着性が向上されることを見出した。
すなわち、本発明者等は、前記課題を解決する手段として、
スプレーノズルから作動ガスに伴って金属粒子を平滑な基材表面に噴射するコールドスプレー法によって前記基材表面に金属皮膜を形成する際に、前記スプレーノズルと前記基材表面との距離を一定に保持すると共に、前記スプレーノズルから作動ガスに伴って金属粒子を前記基材表面に対して鋭角の噴射角で噴射しつつ、前記スプレーノズルを前記基材表面に沿って移動させ、前記基材表面に金属粒子を衝突させると共に前記基材表面を滑動させて留まらせて、前記基材表面に金属皮膜を形成する金属皮膜の形成方法を提供できる。
【0006】
本発明者等が提供した課題を解決する手段において、下記の好ましい態様を上げることができる。
前記金属皮膜を形成した後、90°の噴射角で前記金属皮膜上に作動ガスに伴って金属粒子を噴射して第2の金属皮膜を形成することができる
前記第2の金属皮膜を形成した後、鋭角の噴射角で前記第2の金属皮膜上に作動ガスに伴って金属粒子を噴射して第3の金属皮膜を形成することができる。
基材として、基材表面が鏡面に形成した基材又は基材表面が粗面化処理されていない基材にも、コールドスプレー法によって金属皮膜を厚付けすることができる。
かかる金属粒子の基材表面に対する噴射角としては、60~40°とすることが好ましい。この噴射角は、基材表面や形成途中の積層体面に衝突してせん断変形した変形金属粒子の積層方向と略等しい。
尚、金属粒子として、基材よりも低硬度の金属粒子を好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る金属皮膜の形成方法では、基材表面に対して鋭角の噴射角で金属粒子を噴出し、基材表面に衝突した金属粒子は、基材表面に沿って滑動して留まる。このため、金属粒子が受けるせん断変形は、金属粒子を基材表面に直角に噴射する場合に比較して、金属粒子が受けるせん断変形を拡大でき、基材表面との密着性を向上できる。また、形成された金属皮膜と基材表面との密着性が向上されるため、基材表面に金属皮膜を厚付けしても、その剥離を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明者らが提案した金属皮膜の形成方法に用いる装置の概略を説明する説明図である。
【図2】基材10よりも低硬度の金属粒子20の噴射角θと基材10の基材表面に衝突した金属粒子20の挙動とを説明する説明図及び電子顕微鏡写真である。
【図3】基材10よりも高硬度の金属粒子の噴射角θと基材10の基材表面に衝突した金属粒子20の挙動とを説明する電子顕微鏡写真である。
【図4】基材10よりも低硬度の金属粒子20を用いて、基材10の基材表面に形成した金属皮膜の密着強さと噴射角θとの関係を示すグラフである。
【図5】基材10の基材表面に形成した金属皮膜の断面構造と金属粒子20の噴射角θとの関係を示す電子顕微鏡写真である。
【図6】基材10よりも低硬度の金属粒子20を用いて形成した金属皮膜の厚さ、密着強さ及び噴射角θの関係を示すグラフである。
【図7】基材10よりも高硬度の金属粒子20を用いて形成した金属皮膜の厚さ、密着強さ及び噴射角θの関係を示すグラフである。
【図8】従来の金属皮膜の形成方法に用いる装置の概略を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明者らが提案した金属皮膜の形成方法では、図1に示す装置を用いる。図1に示す装置では、窒素ガス等の高圧ガスの一部をキャリアガスとして材料粒子供給装置12に供給して、金属粒子をスプレーガン14内に供給する。同時に、残余の高圧ガスを作動ガスとしてヒータ16に供給し、所定温度に加熱してスプレーガン14内に供給する。スプレーガン14内に供給された金属粒子及び所定温度に加熱された作動ガスは、先細末広状のスプレーノズル18から基材10の表面(以下、単に基材表面と称することがある)に噴出する。
図1に示す装置では、通常のコールドスプレー法で採用されているガスの温度条件や圧力を採用できる。例えば、スプレーガン14での温度を1000℃以下とし、その圧力を0.5~4MPa程度とすることが好ましい。

【0010】
かかる図1に示す装置を用いた金属皮膜の形成方法では、スプレーノズル18と基材10の基材表面との距離dを一定に保持する。
更に、スプレーノズル18を基材10の表面に傾斜して、スプレーノズル18からの金属粒子の基材表面に対する噴射角θを、鋭角であって、基材表面に衝突した金属粒子が基材表面を滑動して留まる角度に調整する。
この噴射角θについて、鋼材から成る基材10の表面に、金属粒子20としての基材10よりも低硬度の銅粒子を噴射し、その噴射角θを90~30°に変更した結果を図2に示す。図2(a)に示す様に、金属粒子20の噴射角θを90°とすることによって、金属粒子20はせん断変形を受けて変形した変形金属粒子22が基材表面に接合される。
しかし、図2(a)に示す変形金属粒子22では、その衝突部の周辺部22a,22aが主にせん断変形を受けている。

【0011】
これに対し、図2(b)に示す様に、金属粒子20の噴射角θを60°とすることによって、基材表面に衝突した金属粒子20は、基材表面の距離24を滑動して停止する。かかる滑動中に金属粒子20は、せん断変形を受けて変形して変形金属粒子22となる。このため、金属粒子20は、基材表面から受けるせん断変形は、図2(a)に示す金属粒子の噴射角θが90°の場合に比較して、大きくすることができる。
一方、図2(c)に示す様に、金属粒子20の噴射角θを30°とすると、基材表面に衝突した金属粒子20は、基材表面の距離24を滑動して、基材表面から飛び出してしまう。このため、基材表面に金属皮膜を形成できない。
かかる噴射角θは、金属粒子20と基材10との硬さ等によって異なる。例えば、図3に示す様に、アルミニウムから成る基材10の表面に金属粒子20として基材10よりも高硬度の銅粒子を噴射した場合、噴射角θを30°としても、基材10の表面に衝突した金属粒子20は基材表面を滑動して留まっている。
この噴射角θとしては、使用する金属粒子20と基材10とについて、予め実験的に最適な噴射角θを求めておくことが好ましいが、40~60°、特に45~60°の噴射角θを採用することが好ましい。

【0012】
図1に示す装置を用いた金属皮膜の形成方法では、スプレーノズル18と基材10の表面との距離dを一定に保持すると共に、基材10を固定状態としスプレーノズル18の基材表面に対する傾斜角を調整して、金属粒子20の基材表面に対しする噴射角θを調整している。
かかる噴射角θを基材10の表面に衝突した金属粒子20が基材表面を滑動して留まる角度となるように、スプレーノズル18を基材表面に対する傾斜角を調整して、スプレーノズル18から作動ガスに伴って金属粒子20を基材表面に噴射する。
更に、金属粒子20を噴射するスプレーノズル18を、距離d及び傾斜角を保持して基材表面に沿って移動することによって、基材10の表面に金属皮膜を形成できる。
かかる図1に示す装置を用いた金属皮膜の形成方法では、図8に示す通常のコールドスプレー法によって金属皮膜を形成し難い基材10の表面、特に鏡面に形成された表面にも、密着性が良好な金属皮膜を形成できる。

【0013】
このことを基材10の表面に形成した金属皮膜の密着強さを測定して確認した。この金属皮膜としては、鋼材から成るヴィッカース硬度が220HVの基材10の鏡面に形成した表面に、銅粒子から成るヴィッカース硬度が84HVの平均粒径が19μmの金属粒子20を、作動ガスとしての窒素ガスによって噴射し、その噴射角θを90~45°に変更して形成した金属皮膜を用いた。この金属皮膜の厚さは250~300μmであった。
かかる金属皮膜の形成の際に、スプレーノズル18と基材10の表面との距離dを15mmとし、スプレーガン14での窒素ガスの温度を623~673℃とした。また、スプレーガン14での圧力を3MPaとし、スプレーノズル18の基材表面に沿っての移動速度を20~40mm/secとした。
更に、基材表面に形成された金属皮膜の密着強さは、JIS H 8402に準拠して測定した。つまり、基材表面に形成した金属皮膜に、接着剤(3M社製のEW2010)を張り合わせて、引張試験機(ミネビア社製のTCM5000)によって測定した。
その結果を、図4に示す。図4に示す様に、噴射角θが90~75°の場合には、形成された金属皮膜の密着強さが極めて低い。これに対し、噴射角θが60~45°では、形成された金属皮膜の密着強さが向上される。
この様に、噴射角θが60~45°では、鏡面仕上げした基材表面に衝突した金属粒子20は、基材表面に沿って滑動して留まる。このため、金属粒子20が受けるせん断変形は、噴射角θを90°として金属粒子20を基材表面に噴射する場合に比較して、金属粒子20が受けるせん断変形を拡大でき、形成された金属皮膜と基材表面との密着性を向上できるものと考えられる。

【0014】
図4に示す密着強さを呈する金属皮膜の断面についての電子顕微鏡写真を、図5(a)の(ii)に示す。
図5(a)の(ii)は、金属粒子20の噴射角θを60°として得られた金属皮膜の断面写真である。この金属皮膜には、せん断変形した変形金属粒子が基材表面に対して傾斜して積層され、且つ積層体内に形成された気孔が変形金属粒子の積層方向に沿って形成される。
他方、 図5(a)の(i)は、金属粒子の噴射角θを90°として得られた金属皮膜であるが、断面写真を撮影用に試料準備中に金属皮膜と基材表面とが剥離してしまった。
一方、金属粒子20の噴射角θを30°としたとき、前述した図2(c)に示す様に、噴射された金属粒子20が基材表面から飛び出てしまうため、図5(a)の(iii)に示す様に、基材表面に金属皮膜は形成されない。

【0015】
また、基材表面に形成した金属皮膜の厚さと密着強さとの関係を図6に示す。図6に示す白抜きの四角形は、金属粒子20の噴射角θを90°としたときに形成された金属皮膜の密着強さを示す。一方、黒塗りの三角形は、金属粒子20の噴射角θを60°としたときに形成された金属皮膜の密着強さを示す。
図6から明らかな様に、金属粒子20の噴射角θを60°として形成した金属皮膜及び金属粒子20の噴射角θを90°として形成した金属皮膜は、その金属皮膜が厚くなるほど、その密着強さは低下する。
しかし、金属粒子20の噴射角θを60°として形成した金属皮膜は、金属粒子20の噴射角θを90°として形成した金属皮膜よりも、その密着強さが高くなっており、金属皮膜の厚付けを可能にできる。

【0016】
また、図5(b)には、アルミニウムから成るヴィッカース硬度が77HVの基材10の鏡面に形成した表面に、銅粒子から成るヴィッカース硬度が84HVの平均粒径が19μmの金属粒子20を、作動ガスとしての窒素ガスによって噴射し、その噴射角θを90~30°に変更して形成した金属皮膜の断面写真(電子顕微鏡写真)を示す。この金属皮膜の厚さは300~500μmであった。
図5(b)の(ii)(iii)は、金属粒子20の噴射角θを60°、30°として得られた金属皮膜の断面写真である。この金属皮膜には、せん断変形した変形金属粒子が基材表面に対して傾斜して積層されており、積層体内に形成された気孔が変形金属粒子の積層方向に沿って形成される。
他方、 図5(b)の(i)は、金属粒子の噴射角θを90°として得られた金属皮膜である。金属皮膜中に形成された気孔は、図5(b)の(ii)(iii)の金属皮膜中の気孔よりも少ない。
図5(b)に示す様に、アルミニウムから成る基材10の基材表面に、銅粒子から成る基材10よりも高硬度の金属粒子20を噴射角90~30°で噴射することによって金属皮膜を形成できる。その金属皮膜の厚さと密着強さとの関係を図7に示す。図7に示す白抜きの三角形は、金属粒子20の噴射角θを90°としたときに形成された金属皮膜の密着強さを示す。一方、黒塗りの三角形は、金属粒子20の噴射角θを60°としたときに形成された金属皮膜の密着強さを示す。
図7から明らかな様に、金属粒子20の噴射角θを60°として形成した金属皮膜及び金属粒子20の噴射角θを90°として形成した金属皮膜は、その金属皮膜が厚くなるほど、その密着強さは低下する。
しかし、金属粒子20の噴射角θを60°として形成した金属皮膜は、金属粒子20の噴射角θを90°として形成した金属皮膜よりも、その密着強さが高く、金属皮膜の厚付けを可能にできる。

【0017】
この様に、図6及び図7に示す様に、金属粒子20の噴射角θを60°として形成した金属皮膜は、金属粒子20の噴射角θを90°として形成した金属皮膜よりも、その密着強さが高く厚付けを可能にできる理由は、次のように考えられる。
図5から明らかな様に、金属粒子の噴射角θを60°、30°として形成した金属皮膜中の気孔は、金属粒子20の噴射角θを90°として形成された金属皮膜に比較して多く形成されている。このため、金属皮膜を形成する際に、金属皮膜内に蓄積された残留応力を気孔によって吸収でき、金属皮膜と基材表面との剥離を防止できるものと考えられる。

【0018】
以上、述べてきた金属皮膜の形成方法では、金属粒子20の基材表面に対する噴射角θの調整を、基材10を固定した状態でスプレーノズル18の基材表面に対する傾斜角を調整して行っているが、スプレーノズル18を固定した状態で基材10を傾斜して調整してもよい。
また、基材10の表面に、スプレーノズル18からの金属粒子20の噴射角θを鋭角にして密着強度の高い薄膜状の金属皮膜を形成した後、スプレーノズル18からの金属粒子20の噴射角θを90°として、金属皮膜を厚付けしてもよい。このようにして得られた金属皮膜は、密着力が高く且つ耐食性が要求される用途に適している。
或いは、基材10の表面に、スプレーノズル18からの金属粒子20の噴射角θを90°にして緻密な薄膜状の金属皮膜を形成した後、スプレーノズル18からの金属粒子20の噴射角θを鋭角として、金属皮膜を厚付けしてもよい。このようにして得られた金属皮膜は、密着力を特に問題としないが、厚さが要求される用途に適している。
これらを組み合わせた多層金属皮膜であってもよい。例えば、先ず、基材10の表面に、スプレーノズル18からの金属粒子20の噴射角θを鋭角にして密着強度の高い薄膜状の第1金属皮膜を形成した後、スプレーノズル18からの金属粒子20の噴射角θを90°として緻密な第2金属皮膜を形成し、次いで、スプレーノズル18からの金属粒子20の噴射角θを鋭角にして密着強度の高い第3金属皮膜を形成する。
また、基材10の表面に形成する薄膜状の金属皮膜を、めっきや蒸着等によって形成してもよい。この様に、コールドスプレー法を利用して得られた金属皮膜に熱処理を施してもよい。
本発明者らが提案した金属皮膜の形成方法では、基材10としては、金属製の基材の他に、ガラス・エポキシ製、セラミック製或いはガラス製の基材を用いることができる。
また、スプレーノズル18からは金属粒子を噴射しているが、金属粒子に代えてチタニアなどのセラミック粒子、WC-CoやCr3C2-NiCrなどのサーメット或いはこれらの金属-セラミック、金属-サーメット、金属-樹脂などの多数の組み合わせの混合粒子も用いることができる。
【符号の説明】
【0019】
10 基材
12 材料粒子供給装置
14 スプレーガン
16 ヒータ
18 スプレーノズル
20 金属粒子
22 変形金属粒子
24 距離
θ 噴射角
図面
【図1】
0
【図4】
1
【図6】
2
【図7】
3
【図8】
4
【図2】
5
【図3】
6
【図5】
7