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明細書 :球状炭酸カルシウムの製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5574325号 (P5574325)
公開番号 特開2011-157245 (P2011-157245A)
登録日 平成26年7月11日(2014.7.11)
発行日 平成26年8月20日(2014.8.20)
公開日 平成23年8月18日(2011.8.18)
発明の名称または考案の名称 球状炭酸カルシウムの製造方法
国際特許分類 C01F  11/18        (2006.01)
FI C01F 11/18 A
請求項の数または発明の数 3
全頁数 12
出願番号 特願2010-022140 (P2010-022140)
出願日 平成22年2月3日(2010.2.3)
審査請求日 平成25年1月31日(2013.1.31)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504224153
【氏名又は名称】国立大学法人 宮崎大学
発明者または考案者 【氏名】馬場 由成
個別代理人の代理人 【識別番号】110000796、【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
審査官 【審査官】廣野 知子
参考文献・文献 特開平02-153819(JP,A)
特開平04-154605(JP,A)
特開2008-247696(JP,A)
特公昭57-55454(JP,B2)
特開昭63-258642(JP,A)
特開昭57-092520(JP,A)
特開平05-294616(JP,A)
特開2003-063819(JP,A)
調査した分野 C01F 1/00-17/00
特許請求の範囲 【請求項1】
カルシウムイオンが溶解した連続水相と、有機相とからなるO/Wエマルションを、疎水性を有する多孔質膜を通過させた後、炭酸イオンを含む水溶液と反応させる、球状炭酸カルシウムの製造方法であって、O/Wエマルションの連続水相と有機相の体積比が、1:1~13:2である、製造方法。
【請求項2】
前記多孔質膜が、分相法によって製造された多孔質膜である請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質膜の細孔径が、10~20μmである請求項1又は2に記載の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、バテライト形の球状の炭酸カルシウムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭酸カルシウムの結晶には、六方晶系のカルサイト形、斜方晶系のアラゴナイト形及び擬六方晶系(球状体)のバテライト形が存在する。このうちカルサイト形及びアラゴナイト形(図1)は天然に存在し、市販されている安定的な結晶形であるのに対して、バテライト形は天然中に存在せず、不安定とされている。しかしながら、炭酸カルシウムを球状化することにより、炭酸カルシウムの充填性、分散性、研磨性等、種々の特性が改善され、好ましい特性が付与されるので、球状炭酸カルシウムは多方面において求められている。
【0003】
炭酸カルシウムは、ファンデーション、フェイスパウダー、メイクアップ化粧品等に配合されているが、粒子径のばらつきや摩擦が大きいカルサイト形の炭酸カルシウムが多く含まれると、肌へ塗布した際に初期の付着量が多くなる傾向があって厚みが不均一となり、感触も悪く使用感に問題があった。一方で、粒子径の揃った炭酸カルシウム、バテライト形等の炭酸カルシウムが配合された化粧品等は良好な使用感を示すとされている。
【0004】
従来のバテライト形の球状炭酸カルシウムを得る方法としては、例えば水酸化カルシウム塩と炭酸塩をカルシウム以外の2価のカチオン存在下で80℃程度の温度で反応させる方法(特許文献1)、添加物の存在下において、特定のpH環境下で、水酸化カルシウムのスラリーに二酸化炭素ガスを導入する方法(特許文献2)、厳密に制御されたデンドリマーを特定の濃度にて原料に配合し、特定の温度及び特定のpH範囲にて、塩化カルシウムと炭酸ガスを反応させる方法(特許文献3)等が報告されている。しかしながら、これらの方法では合成に手間がかかる点、大量生産が困難な点、製造コストが高い点、安定的にバテライト形のみを得ることができない点などの問題があり満足すべき方法がないのが現状である。
【0005】
特許文献4、5には、原料を含む水相を分散相とするW/Oエマルションを、ミクロ多孔質膜体を通過させることによって作製し、さらに原料を含有した水相と混合して、球状シリカ等の作製方法が開示されている。しかしながら、球状炭酸カルシウムの作製への用途については示唆も開示も無い。
【先行技術文献】
【0006】

【特許文献1】特開昭57-92520号公報
【特許文献2】特開平05-294616号公報
【特許文献3】特開2003-63819号公報
【特許文献4】特許2555475号公報
【特許文献5】特開2008-247696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、容易で、かつ、低コストとなるバテライト形の球状炭酸カルシウム粒子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決すべく、発明者らは鋭意検討した結果、カルシウムイオンを含む水溶液中に油相が分散した状態のO/Wエマルションと、炭酸イオンを含む水溶液を原料として用い、多孔質膜を用いた膜透過法を採用することによって、容易に且つ、低コストで球状炭酸カルシウム粒子を製造できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は下記の球状炭酸カルシウムの製造方法を提供するものである。
【0010】
項1.カルシウムイオンが溶解した連続水相と有機相とからなるO/Wエマルションを、多孔質膜を通過させた後、炭酸イオンを含む水溶液と反応させる、球状炭酸カルシウムの製造方法。
【0011】
項2.前記多孔質膜が、分相法によって製造された多孔質膜である上記項1に記載の製造方法。
【0012】
項3.前記多孔質膜が、疎水性を有する多孔質膜である上記項1又は項2に記載の製造方法。
【0013】
項4.前記多孔質膜の細孔径が、10~20μmである上記項1~3のいずれかに記載の製造方法。
【0014】
項5.O/Wエマルションの連続水相と有機相の体積比が、1:1~13:2である上記項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明の製造方法により、容易に且つ低コストで球状炭酸カルシウム粒子を大量生産することが可能となる。また本発明の製造方法は、厳密に制御された様々な細孔径を有する多孔質膜を適宜選択することができるので、所望の粒子径の球状炭酸カルシウムを製造することが可能である。また、粒子径分布の狭い球状炭酸カルシウムを製造することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】カルサイト形及びアラゴナイト形の結晶構造を有する炭酸カルシウムのSEM像。
【図2】実施例1によって作製された炭酸カルシウムのSEM像。
【図3】実施例1によって作製された炭酸カルシウムのX線回折結果。
【図4】実施例2によって作製された炭酸カルシウムのSEM像。
【図5】実施例2によって作製された炭酸カルシウムのX線回折結果。
【図6】実施例3によって作製された炭酸カルシウムのSEM像。
【図7】実施例3によって作製された炭酸カルシウムのX線回折結果。
【図8】実施例4によって作製された炭酸カルシウムの粒子径測定結果。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の球状炭酸カルシウムの製造方法は、カルシウムイオンが溶解した連続水相と、有機相とからなるO/Wエマルションを、多孔質膜を通過させた後、炭酸イオンを含む水溶液と反応させる方法である。

【0018】
O/Wエマルションについて
本発明の製造方法にて用いるO/Wエマルションは、カルシウムイオンおよび界面活性剤を含む水溶液(連続水相)に、油剤(有機相)が分散する状態のO/Wエマルションとなる。

【0019】
上記の連続水相に含まれるカルシウムイオン源となる化合物は、水相に溶解する性質を有し、さらにO/Wエマルションの形成を損なうものでなければ、特に限定はされない。具体的には塩化カルシウム、酢酸カルシウム、乳酸カルシウム等の有機酸カルシウム、硝酸カルシウム、過塩素酸カルシム等の無機酸カルシウムが挙げられ、特に塩化カルシウムを用いることが好ましい。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。水溶液中のカルシウムイオン濃度は特に限定されるものではないが、通常は0.1~3mol/L程度の濃度とすることができる。

【0020】
上記のカルシウムイオン及び界面活性剤を含む水溶液を作製する際に用いる界面活性剤は、水溶性界面活性剤であるカチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等を用いることができ、O/Wエマルションを作製できるものであれば特に限定されるものではなく、両性界面活性剤であるポリオキシエチレンソルビタンモノラウレートを用いることが好ましい。これらの界面活性剤は単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。界面活性剤使用量は、特に限定されるものではないが、上記の連続水相に対して通常は0.5~3重量%程度とすることができる。

【0021】
上記の油剤とは、実質的に水と混ざり合うことが無く、カルシウムイオン及び界面活性剤を含む水溶液中にて、分散油相を形成してO/Wエマルションを作製し得るものであれば特に限定されない。具体的にはヘキサン、トルエン、シクロヘキサン、キシレン、ベンゼン等の水と混和しない有機溶媒が挙げられる。特にヘキサンを用いることが好ましい。これらの油剤は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。

【0022】
上記のカルシウムイオン及び界面活性剤を含む水溶液(W)と上記の油剤(O)の体積比は、球状炭酸カルシウムを効率よく作製できる範囲で設定することが可能であり、また球状炭酸カルシウムの粒子径を所望の分布にさせるような範囲で設定することが可能である。通常はW:O=1:1~13:2程度の範囲にて設定することができる。より好ましい範囲はW:O=7:3~5:2程度である。

【0023】
本発明の製造法において、上記のカルシウムイオン及び界面活性剤を含む水溶液と、上記の油剤を混合した後は、公知の方法を用いてO/Wエマルションを作製することができる。例えば混合した溶液に超音波照射する方法、ホモジナイザー又はスターラーを用いて撹拌する方法等を挙げることができる。本発明では、ホモジナイザーを用いて撹拌する方法が好ましい。撹拌の回転数が大きいほど、より粒子径が小さいO/Wエマルションを作製することができる。ここで撹拌時の回転数は、好適な粒子径のO/Wを作製し得るものであれば特に限定はされない。具体的には、2,000~20,000rpm程度とすることができる。より好ましくは、5,000~18,000rpmである。さらに好ましくは9,000~15,000rpm程度である。

【0024】
多孔質膜について
本発明の製造方法にて用いる多孔質膜は、所定の大きさの細孔が一方から他方へ貫通しているものであれば、いかなるものでも採用できる。その細孔の形状は、円柱状、角柱状、漏斗形状等のいかなる形状であってもよい。また、細孔は膜面に対して垂直もしくは斜めに貫通していても、それらが絡み合ってもよい。さらに多孔質膜そのものの形状、構造等も特に限定はされない。具体的には、パイプ形状、平膜形状等の種類の形状を挙げることができ、対称膜もしくは非対称膜、均質膜もしくは非均質膜等の種類の構造が挙げられる。多孔質膜の材質も特に限定はされることなく、例えばガラス、セラミックス、シリコン、高分子、金属等が挙げられる。

【0025】
本発明の製造方法にて用いる好適な多孔質膜としては、分相法によって得られる多孔質膜を用いることが例示される。具体的にはCaO-B-SiO-Al-NaO系多孔質ガラス膜、MgO-CaO-B-SiO-Al-NaO系多孔質ガラス膜、NaO-KO-CaO-Al-B-ZrO-SiO系多孔質ガラス膜等が挙げられる。分相法によって得られる多孔質膜は、均一な細孔径を有し、また細孔径の形状も厳密に制御され、細孔径断面が円筒状になっていることが特徴である。

【0026】
上述の均一な孔径とは、多孔膜体の孔径が、相対累積細孔分布曲線において、細孔容積が全体の10%を占めるときの孔径(φ10)を、細孔容積が全体の90%を占める時の孔径(φ90)で除して得られる商の値が1~1.5程度の範囲内にある場合をいう。

【0027】
本発明の製造方法において用いる多孔質膜の細孔径とは、相対累積細孔径分布曲線において、貫通細孔径容積が、全体の50%を占めるときの細孔径を意味する。

【0028】
上記の分相法によって得られる多孔質膜は、特開昭57-140334号公報又は特開昭61-40841号公報に記載された方法によって作製することができる。具体的には、上記多孔質ガラス膜の原材料となる基礎ガラスを600~800℃にて2~24時間処理した後、酸可溶成分を溶出除去することによって作製することができる。

【0029】
上記の分相法によって得られる多孔質膜は、SPGテクノ株式会社より販売されている商品名『SPG膜』の各種細孔径ラインナップから適宜入手して用いることも可能である。

【0030】
上記の多孔質膜の中には疎水性を有するものもあるが、そのうちの多くは細孔の表面に-SiOH基、-OH基等の極性基を有するので、親水性であるものも存在する。本発明の製造方法では、上記の多孔質膜に予め疎水化処理を施して、疎水性を有する多孔質膜を用いてもよい。多孔質膜の疎水性とは、多孔質膜の表面と水溶液の接触角が90°を超えて多孔質膜が水溶液に濡れない状態のことをいう。

【0031】
上記の疎水化処理の方法は、O/Wエマルションが多孔質膜を通過する際に、多孔質膜内の細孔を閉塞させず、好適に球状炭酸カルシウムを製造することが出来れば、特に限定されるものではない。具体的には細孔の表面を含む多孔質膜の全面に疎水化剤を化学吸着させる方法、疎水化剤を化学結合させる方法、物理的に均一な疎水化剤の膜を形成させる方法等が挙げられる。

【0032】
上述の疎水化剤としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポロシロキサン等の熱硬化性シリコーンオイル、シリコーンエマルジョン、シリコーンレジン等のシリコーン樹脂、メチルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ビニルトリメトキシシラン、トリメチルコロロシラン等のシランカップリング剤、ジハイドロジェンヘキサメチルシクロテトラシロキサン、トリハイドロジェンベンタメチルシクロテトラシロキサン等の環状シリコーン化合物、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-)チタネート等のチタネート系カップリング剤、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウム系カップリング剤、フッ素シリコーンコーティング剤、フッ素系コーティング剤等を好適に用いることができる。これらの疎水化剤は1種又は2種以上で使用することができる。これらの疎水化剤を用いて疎水化する程度についても、O/Wエマルションを含む溶液が細孔を通過する際に、疎水性が損なわれない程度であればよい。

【0033】
本発明の製造方法にて用いる多孔質膜の細孔径は、所望する球状炭酸カルシウムの粒子径、O/Wエマルションの粒子径等に従って適宜選択することが可能である。通常は10~20μm程度の細孔径とすることが可能である。より好ましくは14~16μm程度である。また、多孔質膜の膜厚については、エマルションを含む溶液を通過させる際に印加する圧力に対して、十分な強度を有していれば特に限定はされないが、通常は400μm~1mm程度とすることができる。

【0034】
本発明の製造方法において、O/Wエマルションを、多孔質膜を通過させる際には、圧力を印加すればよい。印加する圧力の範囲は、多孔質膜、O/Wエマルション等に、物理的又は化学的な損傷を与えることなく、球状の炭酸カルシウムを効率よく作製しうる範囲であれば特に限定されることはない。印加する圧力が弱いときには、O/Wエマルションが多孔質膜を通過できなくなるか、又は細孔の出口でうまく球状を形成させることが出来ず、歪な形状の炭酸カルシウムが作製されるので好ましくない。

【0035】
印加する圧力は、O/Wエマルションの粒子径、粘度、多孔質膜の細孔径等様々な条件によって適宜設定することが可能である。例えば、細孔径が10μmの多孔質膜を用いた場合に印加する圧力は、通常は0.011MPa以上程度とすることができる。細孔径が15μmの疎水性を有する多孔質膜を用いた場合であれば、通常0.009MPa以上程度とすることができる。細孔径が20μmの疎水性を有する多孔質膜を用いた場合であれば、通常0.004MPa以上程度とすることができる。なお、印加する圧力の上限値は、上述のように多孔質膜や、O/Wエマルション影響を与えない程度において適宜設定される。

【0036】
本発明の炭酸イオンを含む水溶液の作製の際に炭酸イオン源となる化合物は、球状炭酸カルシウムの原料となるものであれば特に限定されない。具体的には炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウムなどのアルカリ金属の炭酸塩が挙げられ、特に炭酸ナトリウムを用いることが好ましい。これらの化合物は単独又は2種以上を混合して用いてもよい。前記水溶液中での炭酸イオンの濃度は特に限定されるものではなく、通常は0.1~1mol/L程度の濃度とすることができる。

【0037】
本発明の製造方法によって作製される球状炭酸カルシウムは沈殿物として回収することができる。回収の方法は特に限定されず、遠心沈降、デカンデーション、ろ過、蒸発等の公知の方法を用いることによって液相を除去して回収することができる。また回収した球状炭酸カルシウムは、公知の方法を用いて洗浄することも可能である。

【0038】
本発明の製造方法は、通常0~50℃程度の温度にて行うことができる。より好ましくは15~35℃程度である。

【0039】
本発明の製造方法は、上述のO/Wエマルションの粒子径、疎水性を有する多孔質膜の細孔径、O/Wエマルションを通過させる際の圧力等の様々な条件を適宜変更することによって所望の大きさの粒子径を有する球状炭酸カルシウムを作製することが可能である。具体的には、0.1~50μm程度の粒子径の球状炭酸カルシウムを作製することができる。より好ましくは、0.5~20μm程度、最も好ましくは1~15μm程度の粒子径の球状炭酸カルシウムを作製することができる。

【0040】
本発明の製造方法は、多孔質膜の細孔径に従って球状炭酸カルシウムを作製することができるので、厳密に制御された細孔径の多孔質膜を用いることによって粒子径分布の狭い球状炭酸カルシウムを作製することができる。例えば、作製される球状炭酸カルシウムの粒子径に対して算出した変動係数が通常0.5~10%程度となるように作製することができる。より好ましくは0.8~1.5%程度である。ここでいう変動係数とは、得られる球状炭酸カルシウム粒子の標準偏差をその平均粒子径で除して得られる商の値を、百分率で表したものである。

【0041】
本発明の製造方法は、60~90%の収率で球状炭酸カルシウムを得ることが出来る。より好ましくは、80~90%である。

【0042】
さらに、本発明の製造方法によって作製される球状炭酸カルシウムは、微結晶の集合体からなっており、多孔質材料である。したがって、薬物や農薬を担持させて用いることや、吸着材、充填剤としての利用が考えられる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明に関して詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されないことは言うまでも無い。
【実施例】
【0044】
下記の実施例又は比較例にて多孔質膜として用いる、疎水性の多孔質膜(以下、疎水性SPG膜)は、15μmの細孔径を有するSPGテクノ社製のSPG膜を、水溶性の有機シリコーンレジン(信越化学工業(株)製;KP-18C)を10重量%含む水溶液中に24時間浸漬し、その後110℃の電気炉で24時間乾燥させて作製した。また、親水性の多孔質膜(以下、親水性SPG膜)は、上記の15μmの細孔径を有するSPGテクノ社製のSPG膜に対して何の処理も加えずに、そのまま使用した。
【実施例】
【0045】
実施例1
球状炭酸カルシウムの作製に用いるエマルションが、O/Wエマルション又はW/Oエマルションのどちらが球状炭酸カルシウムの製造において好適かという点と、親水性SPG膜又は疎水性SPG膜のどちらの多孔質膜を用いるのが好適なのかを明らかにするために、4通りの組み合わせを検討した。
【実施例】
【0046】
0.056重量%の塩化カルシウム水溶液に親水性界面活性剤であるTween60を溶解させて水相とし、油剤となるヘキサンを水相と同体積量加えた後、室温にてホモジナイザーを用い、それぞれ13,500rpmの回転数で2分間撹拌し、カルシウムイオンを有する連続水相中に、ヘキサンを含む油相が分散したO/Wエマルションを作製した。
【実施例】
【0047】
そしてスターラーチップにより600rpmで撹拌させた状態の0.015重量%の炭酸ナトリウム水溶液200ml中に、上述の方法によって作製した疎水性SPG膜又は親水性SPG膜をそれぞれ円筒状にしたものを浸した。引き続いて、その円筒の内部に予め作製した上記のO/Wエマルション20mlを加え、0.03Mpaの窒素ガスを円筒内部に印加し、O/Wエマルションを疎水性、親水性のそれぞれのSPG膜に通過させ、管外部の炭酸ナトリウム水溶液中で、室温にて反応させることにより炭酸カルシウムを作製した。作製した炭酸カルシウムの粒子は、ADVANTEC製のNo.5Cのろ紙を用いて吸引ろ過を行い回収した。回収した炭酸カルシウム粒子に残存する界面活性剤等を除去するために、アルコールを用いて洗浄した。得られた炭酸カルシウムの収率は約62%であった。
【実施例】
【0048】
比較例1
界面活性剤として、テトラグリセリン縮合リシノレイン酸エステル(TGCR)を用いて、連続油相中にカルシウムイオンを含む水溶液が分散したW/Oエマルションを作製した以外は、実施例1と同様にして炭酸カルシウムを作製した。
【実施例】
【0049】
実施例1および比較例1によって得られた炭酸カルシウムのSEM像を図2に示す。W/Oエマルションを用いた際には、球状の炭酸カルシウムでもなく、従来のカルサイト形の炭酸カルシウムでもない、独特の形状の炭酸カルシウムの結晶が得られた。一方で、O/Wエマルションを用いた際には、バテライト形の球状炭酸カルシウムが多く得られ、好適な球状炭酸カルシウムの製造方法であることが明らかとなった。
【実施例】
【0050】
特に、疎水性SPG膜を用いて作製する方法のほうが親水性SPG膜を用いた結果よりもカルサイト形の結晶が少なく、より好適な球状炭酸カルシウムの製造法となることが分かった。
【実施例】
【0051】
図3は、実施例1にて得られた球状炭酸カルシウムのX線結晶回折パターンを表す。図中の四角(□)はカルサイト形(立方晶系)の炭酸カルシウムによるピークであることを表し、図中の丸(○)はバテライト形(擬六方晶系;バテライト形)によるピークであることを表す。
【実施例】
【0052】
図3の上段に示される親水性SPG膜を用いた方が、カルサイト形のピーク値が高く、一方で図3の下段に示される疎水性SPG膜を用いた方が、バテライト形の結晶を表すピーク値が高いことが明らかとなった。また、カルサイト形に特有のピークを示す2θ=29.34°のピーク値について、図3の上段にて示される水性SPG膜を用いたときは6,710であり、図3の下段に示される水性SPG膜を用いたときは3,450であることが判明した。従って図2におけるSEM像の結果と同様に、疎水性SPG膜を用いた方法が、より好適に球状炭酸カルシウムを得ることができる方法であることが明らかとなった。
【実施例】
【0053】
実施例2
O/Wエマルションを作製する際の回転数によって得られるそのO/Wエマルションによって、最終的に得られる炭酸カルシウムにどんな影響を与えるか検討した。O/Wエマルションを作製する際のホモジナイザーの回転数を13,500、9,500、又は17,500rpmとして得られる、それぞれのO/Wエマルション用い、さらに疎水性SPG膜を用いたほかは実施例1と同様にして炭酸カルシウムを作製した。作製された球状炭酸カルシウムのSEM像及び、X線解析の結果をそれぞれ図4及び5に示す。
【実施例】
【0054】
図4の結果から、得られた炭酸カルシウムの形状は13,500rpm及び、9,500rpmの回転数にて作製したO/Wエマルションを用いた方法にて作製される炭酸カルシウムの形状は、バテライト形の結晶が多く見られ、一方で、17,500rpmの回転数にて作製したO/Wエマルションを用いたほうの結果では、バテライト形の結晶も存在するが、カルサイト形の炭酸カルシウムが見られた。
【実施例】
【0055】
図5において、図3と同様に図中の四角(□)は、カルサイト形の炭酸カルシウムによるピークであることを表し、丸(○)は、バテライト形によるピークであることを表す。
【実施例】
【0056】
図5の上段に示される13,500rpmの回転数、及び図5の中段に示される9,500rpmの回転数の条件にて作製したO/Wエマルションを用いた場合は、図5の下段に示される17,500rpmの回転数の条件にて作製したO/Wエマルションを用いた場合よりも、バテライト形の結晶を表すピーク値が高いことから、バテライト形の炭酸カルシウム結晶多く得られることが明らかとなった。
【実施例】
【0057】
また、バテライト形に特有のピークを表す2θ=29.34°のピーク値は、回転数が13,500rpmのときは3,450、回転数が9,500rpmのときは5,283.33であるのに対して、回転数が17,500rpmのときは11,296.7と大きいピーク値を表し、カルサイト形の炭酸カルシウムの結晶が多く含まれることを示した。
【実施例】
【0058】
本実施例においては15μmの細孔径を有するSPG膜を用いており、17,500rpmの回転数によって作製されたO/Wエマルションは、疎水性SPG膜において相転換を生じないまま通過するために連続層の水相がそのまま炭酸ナトリウム溶液中で反応したことで、球状の炭酸カルシウムを形成させることが困難であると考えられる。
【実施例】
【0059】
実施例3
O/Wエマルションの作製において、原料の水相と油相の体積比について検討した。実施例1にて用いた水相と油相の体積比をそれぞれ4:4、6:2、7:1として13,500rpmで撹拌させてO/Wエマルションを作製し、疎水性SPG膜を用いた他は、実施例1と同様の方法を用いて炭酸カルシウムを作製した。結果を図6および7に示す。
【実施例】
【0060】
図6のSEM像の結果より、水相と油相の体積比をそれぞれ4:4及び6:2として作製したW/Oエマルションを用いた方法にて作製される炭酸カルシウムの結晶は、両者共に大部分がバテライト形の結晶であり、好適な球状炭酸カルシウムの作製方法であることが明らかとなった。一方で、水相と油相の体積比を7:1として作製したW/Oエマルションを用いた方法にて作製される炭酸カルシウムの結晶は、カルサイト形の結晶が点在し、水相と油相の体積比が4:4又は、6:2の比によって作製したものに劣る結果となった。
【実施例】
【0061】
図7は、実施例3におけるそれぞれの水相と油相の体積比によって作製した炭酸カルシウムのX線解析パターンを表す図である。図3または図5と同様に、図中の四角(□)は、カルサイト形の炭酸カルシウムによるピークであることを表し、丸(○)は、バテライト形によるピークであることを表す。
【実施例】
【0062】
図7の上段に示される水相と油相の体積比が4:4、及び図7の中段に示される水相と油相の体積比が6:2の条件にて作製したO/Wエマルションを用いた場合は、図7の下段に示す油相の体積比が7:1の条件にて作製したO/Wエマルションを用いた場合よりもバテライト形の結晶を表すピーク値が高いことから、バテライト形の炭酸カルシウム結晶多く得られることが明らかとなった。
【実施例】
【0063】
また、バテライト形に特有のピークを表す2θ=29.34°のピーク値は、水相と油相の体積比が4:4のときは3450、水相と油相の体積比が6:2のときは3321.67であるのに対して、水相と油相の体積比が1:7のときは、8934と大きいピーク値を表し、カルサイト形の炭酸カルシウムの結晶が多いことを示した。
【実施例】
【0064】
実施例4
上記実施例3で得られた球状炭酸カルシウムのうち、O/Wエマルション作製の原料を水相:油相の体積比を4:4として得られたもの、及び6:2として得られたものの平均粒子径およびその分布を測定した。結果を図8に示す。
【実施例】
【0065】
水相:油相の体積比が6:2として得られた炭酸カルシウムの粒子は、水相:油相の体積比を4:4とした場合と比較して、粒子径の分布が狭く、より粒子径の揃った炭酸カルシウムが得られることが判明した。水相:油相の体積比を6:2として得られる炭酸カルシウムの粒子径の平均値は6.57μm、標準偏差は0.31であり、変動係数は約4.7%と算出された。水相:油相の体積比を6:2として得られる炭酸カルシウムの粒子径の平均値は9.01μm、標準偏差は0.09であり、変動係数は約1.0%と算出された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の製造方法によって得られる球状炭酸カルシウムは化粧品等の多くの分野において使用することができる。
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
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【図7】
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【図8】
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