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明細書 :流体軸受及びそれを備えた非対称流体供給式流体軸受装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5397810号 (P5397810)
登録日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 流体軸受及びそれを備えた非対称流体供給式流体軸受装置
国際特許分類 F16C  32/06        (2006.01)
FI F16C 32/06 Z
F16C 32/06 C
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2009-252677 (P2009-252677)
出願日 平成21年11月4日(2009.11.4)
審査請求日 平成24年10月1日(2012.10.1)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】592216384
【氏名又は名称】兵庫県
発明者または考案者 【氏名】伊勢 智彦
個別代理人の代理人 【識別番号】110000556、【弁理士】、【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
特許請求の範囲 【請求項1】
軸受隙間に供給する流体の圧力で軸の負荷を支持する流体軸受であって、
軸受本体と、
前記軸受本体に形成され、前記軸が挿通される軸受孔と、
前記軸受本体の外周面に開口し、外部から流体が流入する流体流入孔と、
前記軸受本体内で前記軸受孔を外囲し、前記流体流入孔に連通する流体流路と、
前記流体流路を前記軸受孔に連通させる流体絞りと、を有し、
前記軸受本体は、軸線方向一側の第1軸受半体と、軸線方向他側の第2軸受半体とを組付けてなり、前記第1軸受半体の軸線方向他側の端面である第1端面が前記第2軸受半体の軸線方向一側の端面である第2端面と軸線方向に突き合わされ、前記第1端面に形成された溝が前記第2端面で閉鎖されることで、前記流体流入孔、前記流体流路及び前記流体絞りが形成され、
前記流体流入孔が2つ設けられ、前記第1端面及び前記第2端面のうちの一方に設けられて負荷側と反負荷側との境界部分に位置する仕切り部が前記溝のうち前記流体流路を構成する部分を分割することで前記流体流路が前記流体流入孔に対応して負荷側と反負荷側の2つの分割流体流路に仕切られ、前記分割流体流路にはそれぞれ少なくとも1つの前記流体絞りが連通していることを特徴とする流体軸受。
【請求項2】
前記溝のうち、前記流体絞りを構成する部分の深さが、前記流体流路を構成する部分の深さよりも浅い、請求項1に記載の流体軸受。
【請求項3】
軸受隙間に供給する流体の圧力で軸の負荷を支持する流体軸受と、
前記流体軸受に流体を供給する流体供給源と、
前記流体供給源から供給される流体の圧力を制御する制御装置と、を備え、
前記流体軸受が、
前記軸が挿通される軸受孔と、
前記流体軸受の外周面に開口し、外部から流体が流入する流体流入孔と、
前記流体軸受内で前記軸受孔を外囲し、前記流体流入孔に連通する流体流路と、
前記流体流路を前記軸受孔に連通させる流体絞りと、を有し、
前記流体流入孔が複数設けられ、前記流体流路が前記流体流入孔に対応して複数の分割流体流路に仕切られ、前記分割流体流路にはそれぞれ少なくとも1つの前記流体絞りが連通しており、
前記流体供給源が、負荷側の軸受隙間に供給される流体の圧力が反負荷側の軸受隙間に供給される流体の圧力よりも大きくなるように、前記流体軸受に設けられた複数の流体流入孔に互いに異なる圧力の流体を供給可能に構成され、
前記制御装置は、前記軸の軸線の前記軸受孔の軸線に対する偏心量に対する負荷容量を線形に変化させるべく、偏心量が大きくなるにしたがって負荷側と反負荷側との圧力差が大きくなるように且つ偏心量が所定の閾値を超える高偏心率領域においては偏心量に対する圧力差の変化率がより大きくなるようにして、前記複数の流体流入孔のそれぞれに供給する流体の圧力を制御することを特徴とする非対称流体供給式流体軸受装置。
【請求項4】
前記流体軸受が、前記軸受孔が形成される軸受本体を有し、
前記軸受本体は、軸線方向一側の第1軸受半体と、軸線方向他側の第2軸受半体とを組付けてなり、前記第1軸受半体の軸線方向他側の端面である第1端面が前記第2軸受半体の軸線方向一側の端面である第2端面と軸線方向に突き合わされ、前記第1端面に形成された溝が前記第2端面で閉鎖されることで、前記流体流入孔、前記流体流路及び前記流体絞りが形成され、
前記流体流入孔が2つ設けられ、前記第1端面及び前記第2端面のうちの一方に設けられて負荷側と反負荷側との境界部分に位置する仕切り部が前記溝のうち前記流体流路を構成する部分を分割することで前記流体流路が前記流体流入孔に対応して負荷側と反負荷側の2つの分割流体流路に仕切られる、請求項3に記載の非対称流体供給式流体軸受装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受隙間に供給する流体の圧力により軸の負荷を支持する流体軸受、及びそれを備えた流体軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転機械の軸を低摩擦及び高精度で支持する軸受に、いわゆる流体軸受が用いられている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。流体軸受が適用される回転機械として、地中で人工的に弾性波を発生する精密制御定常震源装置等の振動発生装置、旋盤や研削盤等の精密工作機械、及び真円度を測定するための真円度測定器等がある。
【0003】
図1(a),(b)は一般的な従来型の流体軸受装置を示す断面図である。図1(a),(b)に示す流体軸受装置101は円筒状の軸受本体102を備え、この軸受本体102の軸心部には軸線方向に延びる軸受孔107が形成されている。軸受本体102の外周面には単一の流体流入孔109が開口し、この流体流入孔109は軸受本体102内を周方向に延びる流体流路111に連通している。流体流路111には径方向内側へと延びる複数の流体絞り114が連通し、各流体絞り114は軸受孔107の内周面に開口している。軸受孔107には回転機械の回転軸150が挿通され、挿通された回転軸150の外周面と軸受孔107の内周面との間には軸受隙間108が設けられる。流体流入孔109には、例えば高圧ガスを供給するポンプ等の流体供給源135が接続される。
【0004】
回転機械の運転中には、流体供給源135の動作により、高圧且つ定圧の流体が単一の流体流入孔109に供給される。流体流入孔109に供給された流体は、流体流路111及び流体絞り114を通じて軸受隙間108内に流出し、流出した流体の圧力によって回転軸150が支持される。
【0005】
回転軸150の負荷が流体軸受装置101に作用すると、回転軸150は負荷の作用方向に偏心し、軸受隙間108の隙間寸法が負荷側と反負荷側とで変わる。他方、流体絞り114から流出する流体の圧力は軸受隙間108の隙間寸法に応じて変化し、隙間寸法が小さいときほど流体の圧力が大きくなる。よって、軸受本体102においては、負荷側の軸受面と反負荷側の軸受面との間に差圧が生じ、この差圧に応じて負荷容量が与えられる。
【0006】
かかる流体軸受は、例えば転がり軸受などの機械式軸受に対し、本質的には軸受面における固体接触がないためフレーキングの心配がなく長寿命化が見込まれる点や、軸受摩擦が小さく発熱しにくい点で有利である。その反面、流体軸受の負荷容量は比較的小さく、また、軸受の作動に多量の流体を必要とする。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-207668号公報
【0008】

【非特許文献1】Tomohiko ISE et al., “Hydrostatic Asymmetric Journal Gas Bearings for Largely Unbalanced Rotors of Seismic ACROSS Transmitters”, Journal of Advanced Mechanical Design, Systems, and Manufacturing, Vol. 1, No. 1 (2007), pp. 93-101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び非特許文献1には、負荷容量を増大させるために、回転軸の外周部のうち反負荷側を部分的に切り欠いてなる非対称軸を備えた軸受構造が開示されている。これにより、反負荷側の軸受隙間が広くなるとともに軸受長さが短くなることにより反負荷側での受圧面積が小さくなるため、負荷側との差圧が大きくなって負荷容量が増大しうる。但し、流体軸受の作動に必要となる流体の流量は、軸受隙間の隙間寸法の3乗に比例し、軸受長さに反比例する。よって、この軸受構造によれば、隙間が大きく長さが短い反負荷側を流れる流体流量が大きくなり、軸受の作動に必要な流体の流量が大きくなる。したがって、この軸受では、流体供給源の大型化及び運転コストの増大を招く。
【0010】
前述した比例及び反比例の関係のため、流量の低減化には軸受隙間を狭くすることが有効となる。但し、軸受隙間を所望の小さい隙間寸法とするには、要求される加工精度が高くなる。
【0011】
そこで本発明は、流体軸受の負荷容量を増大し、且つ軸受の作動に必要となる流体の流量を低減することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は上記目的を達成すべくなされたものであり、本発明に係る流体軸受は、軸受隙間に供給する流体の圧力で軸の負荷を支持する流体軸受であって、前記軸が挿通される軸受孔と、前記流体軸受の外周面に開口し、外部から流体が流入する流体流入孔と、前記流体軸受内で前記軸受孔を外囲し、前記流体流入孔に連通する流体流路と、前記流体流路を前記軸受孔に連通させる流体絞りと、を有し、前記流体流入孔が複数設けられ、前記流体流路が前記流体流入孔に対応して複数の分割流体流路に仕切られ、前記分割流体流路にはそれぞれ少なくとも1つの前記流体絞りが連通していることを特徴としている。
【0013】
このような構成とすることにより、軸受隙間の負荷側と反負荷側とに、外部から互いに分離独立した流路を用いて流体を供給することができる。このため、ある流体流入孔に供給する流体の圧力と、他の流体流入孔に供給する流体の圧力とを異ならせるなどして、軸受隙間の負荷側の圧力と反負荷側の圧力とを容易且つ自在に調整可能となる。従って、これら圧力の差も容易に大きくすることが可能となり、負荷容量の大きい流体軸受装置の提供に資する。同時に、供給圧を反負荷側と負荷側とで互いに独立して調整可能となり、例えば反負荷側の供給圧を負荷側の供給圧に対して低減させることもできる。従って、軸受の作動に必要な流体の流量の低減に資する。また、負荷側と反負荷側とで供給圧を変更可能にしたことで負荷容量の増大及び流量の低減を図っていることから、特別に高い加工精度が要求されることもない。
【0014】
また、本発明に係る非対称流体供給式流体軸受装置は、前述した流体軸受と、前記流体軸受に流体を供給する流体供給源と、を備え、前記流体供給源が、前記流体軸受に設けられた複数の流体流入孔に、互いに異なる圧力の流体を供給可能に構成されていることを特徴としている。
【0015】
これにより、軸受隙間の負荷側の圧力と反負荷側の圧力とを容易且つ自在に調整可能となる。従って、これら圧力の差も容易に大きくすることが可能となり、負荷容量の大きい流体軸受装置を提供することができる。同時に、供給圧を反負荷側と負荷側とで互いに独立して調整可能となり、例えば反負荷側の供給圧を負荷側の供給圧に対して低減させることもできる。従って、軸受の作動に必要な流体の流量を低減することができる。
【0016】
このとき、負荷側の軸受隙間に供給される流体の圧力が、反負荷側の軸受隙間に供給される流体の圧力よりも大きいことが好ましい。
【0017】
前記流体供給源から供給される流体の圧力を制御する制御装置と、前記軸の軸線の前記軸受孔の軸線に対する偏心量を検出するための偏心量検出器と、を備え、前記制御装置は、前記偏心量検出器により検出される偏心量に基づいて、前記偏心量に対し負荷容量が線形に変化するようにして、前記複数の流体流入孔のそれぞれに供給する流体の圧力を制御してもよい。これにより、同一の偏心量(すなわち偏心率)であらゆる負荷に対応可能な流体軸受を提供することができる。
【0018】
前記流体供給源から供給される流体の圧力を制御する制御装置と、前記軸の軸線の前記軸受孔の軸線に対する偏心量を検出するための偏心量検出器と、を備え、前記制御装置は、前記偏心量検出器により検出される偏心量が所定の閾値を超えているときに、当該検出される偏心量が大きくなるにしたがって負荷側と反負荷側との圧力差が大きくなるようにして、前記複数の流体流入孔のそれぞれに供給する流体の圧力を制御してもよい。これにより、従来よりも安定的に軸の負荷を支持することができる。
【0019】
また、前記流体供給源から供給される流体の圧力を制御する制御装置と、前記軸の軸線の前記軸受孔の軸線に対する偏心量を検出するための偏心量検出器と、を備え、前記制御装置は、前記偏心量検出器により検出される偏心量に基づいて、前記偏心量が一定となるように前記複数の流体流入孔のそれぞれに供給する流体の圧力を制御してもよい。これにより、特に高偏心率領域において、従来よりも安定的に軸の負荷を支持することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の本発明によると、負荷側の圧力と反負荷側の圧力との非対称性を大きくすることができ、負荷容量を増大させることができる。また、圧力を自在に変更可能であることにより、軸受の作動に必要となる流体の流量もこれに併せて低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)が従来型の流体軸受の断面図及びそれを備える流体軸受装置の構成図、(b)が図1(a)のIb-Ib線に沿って切断して示す断面図である。
【図2】(a)が本発明の実施形態に係る流体軸受の断面図及び本発明の実施形態に係る非対称流体供給式流体軸受装置の構成図、(b)が図2(a)のIIb-IIb線に沿って切断して示す断面図である。
【図3】流体軸受装置の軸方向圧力分布を模式的に示す説明図であって、(a)が図2に示す本発明の実施形態に係る軸方向圧力分布の模式図、(b)が図1に示す従来型に係る軸方向圧力分布の模式図である。
【図4】流体軸受装置における偏心率に対する負荷容量の数値計算結果を示すグラフである。
【図5】流体軸受装置における偏心率に対する流量の数値計算結果を示すグラフである。
【図6】本発明に係る流体軸受装置において、反負荷側の供給圧を変化させた場合における偏心率に対する負荷容量の数値計算結果を示すグラフである。
【図7】本発明に係る流体軸受装置において、反負荷側の供給圧を変化させた場合における偏心率に対する流量の数値計算結果を示すグラフである。
【図8】偏心率に対して負荷容量を線形に変化させる制御において、偏心率に応じて反負荷側の供給圧の目標値を求めるために参照される制御マップを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。

【0023】
[流体軸受]
図2(a)に示すように、本発明の実施形態に係る流体軸受装置1は、非対称流体供給式となっており、この方式を実現するための流体軸受として略円筒形状の軸受本体2を備えている。軸受本体2は金属材料から成形されるが、その材料は特に限定されない。軸受本体2は、軸線方向一側(図2(a)左側)の第1軸受半体3と、軸線方向他側(図2(a)右側)の第2軸受半体4とを組み付けてなる。より具体的には、第1軸受半体3の軸線方向他側の端面(以下「第1端面5」という)が、第2軸受半体4の軸線方向一側の端面(以下「第2端面6」という)に軸線方向に突き合わされた後、第1軸受半体3が第2軸受半体4にボルト(図示せず)で結合される。

【0024】
このようにして組付状態とした軸受本体2の軸心部には、軸線方向に延びる断面円形状の軸受孔7が形成される。この軸受孔7に回転機械の回転軸50が挿通される。なお、本実施形態の回転軸50は、断面円形状の一般的なものであり、切り欠きを部分的に設けるなどした非対称軸とはなっていない。回転軸50が軸受孔7に挿通されると、回転軸50の外周面と軸受孔7の内周面との間に、断面円環形状の軸受隙間8が設けられる。なお、図2では便宜的に軸受隙間8を大きく示している。

【0025】
流体軸受装置1は、軸受隙間8に流体を供給し、供給した流体の圧力により回転軸50が発生する負荷Wを支持する。他方、負荷Wの作用により、回転軸50の軸線は、軸受孔7の軸線から見て負荷Wが作用する方向(図2下方)へと偏心する。回転軸50が偏心すると、軸受隙間8は、負荷Wが作用する側(図2下側,以下「負荷側」という)で狭くなり、その反対側(図2上側,以下「反負荷側」という)で広くなる。このとき、軸受隙間8の負荷側に供給される流体の圧力は、反負荷側に供給される流体の圧力よりも大きくなるが、流体軸受装置1の軸受容量はこの差圧に応じて決まる。なお、軸受隙間8は、軸受本体2の軸線方向両端部で、大気に開放されている。

【0026】
このような流体軸受装置1の作動のため、第1軸受半体3の第1端面6には溝が形成されており、この溝は、第1端面5を第2端面6に突き合わせたときに第2端面6で閉鎖される。これにより、組付状態とした軸受本体2内には、軸受隙間8に供給される流体を流通させるための流路が構成されることとなる。

【0027】
当該流路として、軸受本体2の外周面には、外部から流体が流入する第1流体流入孔9及び第2流体流入孔10が開口している。これら第1及び第2流体流入孔9,10は、周方向に互いに180度離れて配置されている。本実施形態では、第1流体流入孔9が反負荷側に配置され、第2流体流入孔10が負荷側に配置されている。

【0028】
軸受本体2内には、第1及び第2流体流入孔9,10に連通する流体流路11が形成されている。流体流路11は、軸受孔7よりも外周側にて断面円環形状に形成されており、軸受孔7を外囲している。

【0029】
図2(b)に示すように、本実施形態に係る流体流路11は、第1軸受半体3の第1端面5に形成された円環形状の溝3aが第2軸受半体4の第2端面6で閉鎖されることにより構成されている。この構造により、断面円環形状の流体流路11が軸受本体2内に容易に構成される。

【0030】
この溝3aは、周方向に互いに180度離れて設けられた2つの仕切部3b,3cにより、2つの溝に分割されている。この仕切部3b,3cを第1軸受半体3に一体に設けた場合にあっては、これら仕切部3b,3cの軸線方向他側の端面が、軸受本体2を組付状態としたときに、第2軸受半体4の第2端面6と突き合わされる。よって、流体流路11も、これら仕切部3b,3cによって2つの流路12,13に分割され、これら2つの流路12,13が軸受孔7の軸線を中心とする円に沿って周方向に並んで配置されることとなる。2つの流路12,13の密封性を確保するため、仕切部3b,3cの軸線方向他側の端面と第2軸受半体4の第2端面6との間には、密封要素(図示せず)を設けることが好ましい。これにより、一方の流路を流れる流体が他方の流路に侵入するのを防ぎ、また、一方の流路を流れる流体の圧力が他方の流路を流れる流体の圧力に影響を及ぼすことを防ぐことができる。

【0031】
なお、ここでは、仕切部3b,3cを、流体流路11を構成する溝3aが形成されている第1軸受半体3と一体に設けるとしたが、溝3aを閉鎖する側の第2軸受半体4と一体に設けてもよい。この場合、仕切部3b,3cは第2端面6から軸線方向一側に部分的に突出するようにして設けられることとなる。このように、仕切部3b,3cを軸受本体2(すなわち第1軸受半体3又は第2軸受半体4)と一体に設けると軸受本体2の組立が容易になる。但し、仕切部3b,3cは、軸受本体2とは別体の専用の部品から成形されてもよい。

【0032】
本実施形態においては、仕切部3b,3cがそれぞれ、第1及び第2流体流入孔9,10から見て周方向に90度離れた位置に設けられている。2つの仕切部3b,3cは何れも負荷側と反負荷側との境界部分に配置されており、流体流路11は、かかる仕切部3b,3cによって、反負荷側に位置する流路12と、負荷側に位置する流路13とに分割されている。以下では、前者を「第1分割流体流路12」、後者を「第2分割流体流路13」という。

【0033】
なお、図2(b)では、各分割流体流路12,13の周方向(円弧方向)中央部に、対応する流体流入孔9,10が連通している場合を例示している。第1及び第2流体流入孔9,10は、上記のように位置する第1及び第2分割流体流路12,13にそれぞれ連通してれば、周方向に関してどこに設けられていてもよい。

【0034】
反負荷側の第1分割流体流路12は、第1流体流入孔9と連通している。第1流体流入孔9は、第1分割流体流路12から見て径方向外側へと延びている。また、第1分割流体流路12は、複数の第1流体絞り14と連通している。これら第1流体絞り14は、周方向に等間隔をおいて互いに離れて配置されている。第1流体絞り14はそれぞれ、軸受孔7の内周面に開口し、軸受隙間8の反負荷側に連通している。負荷側の第2分割流体流路13も、第1分割流体流路12と同様にして、第2流体流入孔10及び複数の第2流体絞り15と連通している。これら第2流体絞り15はそれぞれ、軸受孔7の内周面に開口し、軸受隙間8の負荷側に連通している。

【0035】
なお、第1及び第2流体絞り14,15は、流体流路11と同様にして、第1軸受半体3の第1端面5に形成された溝が第2軸受半体4の第2端面6で閉鎖されることにより構成される。これら流体絞り14,15に係る溝の深さは流体流路11に係る溝の深さよりも浅く、これにより流体絞り14,15の流路抵抗が流体流路11の流路抵抗よりも大となる。

【0036】
上記構成を備える軸受本体2は、2つの流体流入孔9,10を有し、これら流体流入孔9,10は、仕切部3b,3cにより互いに分離独立している第1分割流体流路12及び第2分割流体流路13にそれぞれ連通している。第1分割流体流路12は第1流体絞り14を介して軸受隙間8の反負荷側に連通し、第2分割流体流路13は第2流体絞り15を介して軸受隙間8の負荷側に連通している。つまり、この軸受本体2によれば、軸受隙間8の負荷側と反負荷側とに、外部から互いに分離独立した流路を用いて流体を供給可能となっている。

【0037】
このため、第1流体流入孔9に供給する流体の圧力と、第2流体流入孔10に供給する流体の圧力とを異ならせるなどして、軸受隙間8の負荷側の圧力と反負荷側の圧力とを容易に調整可能になる。従って、これら圧力の差も容易に大きくすることが可能となり、この軸受本体2は負荷容量の大きい流体軸受装置1の提供に資する。

【0038】
さらに、この軸受本体2によれば、流体流入孔を追加し、且つ流体流路を構成する溝に仕切部を設け、これにより負荷側と反負荷側とで供給圧を非対称に変更可能として負荷容量の増大及び流量の低減を図っている。このため、この目的を達成するために、軸受隙間の隙間寸法を極めて小さくした場合と比べて、特別に高い加工精度が要求されることもなく、製造コストが増大するのを抑えることができる。更に、回転軸50を断面円形状の一般的なものとしても、負荷容量の増大を図ることができる。

【0039】
[非対称流体供給式流体軸受装置]
次に、この作用を具体的に実現するための構成について説明する。図2(a)に示すように、前述した軸受本体2を備える流体軸受装置1には、第1圧力調整器31及び第2圧力調整器32と、制御装置33と、偏心量検出器34と、流体供給源35とが更に備えられる。

【0040】
第1圧力調整器31は第1流体流入孔9と接続され、第2圧力調整器32は第2流体流入孔10と接続されている。第1及び第2圧力調整器31,32は、流体供給源35から圧送された高圧流体を調圧する。流体供給源35は単一であっても複数であってもよいが、各圧力調整器31,32は互いに独立して動作可能であり、送られてきた流体の圧力を互いに異なる圧力に調整することができる構成となっている。これにより、第1流体流入孔9には、第1圧力調整器31で調整された第1供給圧Ps1の流体が流入し、第2流体流入孔10には、第2圧力調整器32で調整された第2供給圧Ps2の流体が流入する。

【0041】
偏心量検出器34は、回転軸50の軸線の軸受孔7の軸線に対する偏心量eを検出する。制御装置33の入力側にはこの偏心量検出器34が接続され、出力側には上記第1及び第2圧力調整器31,32が接続されている。制御装置33は、偏心量検出器34により検出された偏心量eに基づいて第1及び第2圧力調整器31,32の動作を制御することができ、これにより第1供給圧Ps1及び第2供給圧Ps2の値が互いに独立して調整されうる。

【0042】
第1供給圧Ps1に設定された流体は、第1流入孔9、第1分割流体流路12及び第1流体絞り14を介して軸受隙間8の反負荷側に供給される。第2供給圧Ps2に設定された流体は、第2流入孔10、第2分割流体流路13及び第2流体絞り15を介して軸受隙間8の負荷側に供給される。

【0043】
[流体軸受装置の効果(従来比)]
図3は流体軸受装置における負荷側及び反負荷側それぞれの軸方向圧力分布の模式図であり、(a)には本実施形態に係る分布、(b)には一般的な従来型に係る分布をそれぞれ模式的に示している。

【0044】
図3(a)及び(b)を参照すると、回転軸が軸受に対し負荷を発生すると、軸受隙間8の負荷側が狭くなる一方で反負荷側が広くなるため、負荷側の圧力が反負荷側の圧力よりも大きくなる。図3(a)には、第1供給圧Ps1を第2供給圧Ps2よりも小さくした場合を示している。反負荷側に供給する流体の圧力を、負荷側に供給する流体の圧力よりも予め小さくしておけば、負荷側の圧力を維持した上で、反負荷側の圧力を更に低下させることができる。したがって、負荷側と反負荷側との間の差圧を大きくすることができる。

【0045】
図4は、偏心率に対する負荷容量の数値計算結果を示すグラフである。ここで、偏心率は、回転軸50の偏心量eを軸受隙間8の隙間寸法で除することにより求められる。この隙間寸法は、反負荷側の隙間寸法Cr1と負荷側の隙間寸法Cr2との和であって、軸受孔7の直径から回転軸50の直径を減じることによっても求められる。偏心量eは負荷Wに応じて変化しうるが、隙間寸法は軸受孔7及び回転軸50の設計寸法が決まれば定数として扱うことができる。

【0046】
なお、数値計算には、ダイバージェンス・フォーミュレーション法(divergence formulation method)が用いられている。計算モデルは非特許文献1に開示の計算モデル(特に96-98頁,Fig. 6参照)に準拠しており、ここではその詳細説明を省略する。計算緒元は、軸受長さ:120mm,軸受直径:60mm,隙間寸法:30μmである。更に、本実施形態では、反負荷側の供給圧が0.4MPa(gauge)、負荷側の供給圧が0.8MPa(gauge)であり、従来型では、供給圧が0.8MPa(gauge)である。なお、作動流体は空気としている。

【0047】
図4から、本実施形態の負荷容量は、偏心率の大小に関わらず、従来型に比べて大きくなることがわかる。これは、図3に示したように、負荷側と反負荷側との間の差圧を大きくしたことにより得られる効果である。また、図4に示す曲線の傾きは軸受の剛性を表している。2つの曲線が互いに同様の傾きを示しているため、本実施形態に係る流体軸受の剛性は従来型と同程度であり、剛性の低下は認められない。

【0048】
図5は、偏心率に対する流量の数値計算結果を示している。なお、計算法、計算緒元及び作動流体は、図4に示したものと同様である。図5に示すように、本実施形態の流量は、偏心率の大小に関わらず、従来型に比べて大きく低減することがわかる。偏心率が任意のある値において、本実施形態の軸受隙間の反負荷側に供給される流体の圧力は従来型と比べて小さいことから、反負荷側に供給された流体の圧力と軸受隙間の出口圧力(例えば大気圧)との差についても本実施形態のほうが小さくなる。これにより、本実施形態においては、軸受の作動に必要となる流体の流量が、従来型に比べて低減する。

【0049】
[流体軸受装置の効果(供給圧感度解析)]
図6は、本発明に係る流体軸受装置において、反負荷側の供給圧を変化した場合における偏心率に対する負荷容量の数値計算結果を示している。なお、計算法及び作動流体は図4に示したものと同様であり、計算緒元についても反負荷側の供給圧を除いて図4に示したものと同様である。負荷側の供給圧は0.8MPa(gauge)で固定し、反負荷側の供給圧は0.8MPa(gauge)から0.2MPa(gauge)までの範囲内で0.2MPa(gauge)間隔で変化させる。図6に示すように、反負荷側の供給圧が小さくなるほど、すなわち、負荷側と反負荷側とで供給圧の非対称性が大きくなるほど、負荷容量が増加することがわかる。

【0050】
図7は、本発明に係る流体軸受装置において、反負荷側の供給圧を変化した場合における偏心率に対する流量の数値計算結果を示している。なお、計算法、計算緒元及び作動流体は図6に示したものと同様である。図7に示すように、反負荷側の供給圧が小さくなるほど、すなわち、負荷側と反負荷側とで供給圧の非対称性が大きくなるほど、軸受の作動に必要となる流体の流量が低減することがわかる。

【0051】
このように、本実施形態に係る流体軸受装置によれば、反負荷側に供給される流体の圧力を、負荷側に供給される流体の圧力よりも小さくすることにより、負荷容量が増大する。これにより、従来よりも大きい負荷を支持することができ、軸受の汎用性が高くなる。また、反負荷側に供給される流体の圧力を、負荷側に供給される流体の圧力よりも小さくすることにより、軸受の作動に必要となる流体の流量を低減することができる。これにより、軸受の運転コストを抑えることができる。

【0052】
なお、反負荷側の供給圧を0Pa(gauge)に設定すると、負荷容量を更に増加させることができ、且つ流量を更に低減させることができる。但し、反負荷側の供給圧の最小値を0Pa(gauge)を超えた所定値とすると、不意に回転軸に反負荷側に向けて外力が作用するようなことがあっても回転軸の外周面と軸受孔の内周面との固体接触を避けることができ、軸受の保護性が確保される。

【0053】
[非対称流体供給式流体軸受装置における偏心率に応じた供給圧制御]
ここで、図6を参照すると、偏心率が0から所定値(0.6程度)に至るまでの間は負荷容量が略線形で変化するが、偏心率がこの所定値を超えて大きくなると、負荷容量の変化率が低下する。このため、一般に流体軸受においては、高偏心率領域での安定的な負荷支持が難しく、軸受が損傷するおそれが高まるという技術的課題がある。他方、本実施形態では、負荷側の圧力と反負荷側の圧力との非対称性を自在に変化させることができるため、これに対応することが可能である。

【0054】
つまり、この流体軸受装置1の制御装置33の記憶領域には、図6の破線で示すように負荷容量を偏心率に対して線形に変化させるようにするため、図8の破線に例示するように偏心率に応じて反負荷側の供給圧の目標値を求めるためのマップが予め記憶される。図示するマップは、偏心率が0から0.8まで変化する間に負荷容量を0から1400[N]まで線形に変化させるとする際に利用され得るものであって、単なる一例に過ぎず、所望する負荷容量の増加率が変更されればそれに応じてこのマップも適宜変更される。なお、図8の実線は、破線の推移の特異性を明示すべく、負荷容量が図6の実線に示すように推移する際における反負荷側の供給圧と偏心率との関係を確認的に示したものである。

【0055】
図8を参照すると、負荷容量を偏心率に対して線形に変化させるため、偏心率が大きくなるほど、反負荷側の供給圧の目標値が減少している。特に、反負荷側の供給圧を一定とした場合に負荷容量の増加率の減少が顕著に現れる高偏心率領域においては、偏心率が大きくなるほど反負荷側の供給圧の目標値を大きく減少させるようにしている(すなわち、目標値の減少率を大きくしている)。

【0056】
制御装置33は、このようにして設定される供給圧の目標値に応じて第1圧力調整器31の動作を制御する。これにより、この流体軸受装置1においては、偏心率の大小に関わらず、偏心率に対して負荷容量が線形に変化する。したがって、従来、安定動作が困難であった高偏心率領域においても、安定して負荷を支持することができるようになる。

【0057】
なお、図8には、負荷側の供給圧を固定し、反負荷側の供給圧のみを変化させることで偏心率に対する負荷容量の線形性を確保する場合に用いるマップを例示している。他方、本実施形態の流体軸受装置1は、負荷側の供給圧を変化させることもできる。このため、同様の作用効果を得るために、反負荷側の供給圧に替えて、あるいはそれに加えて、負荷側の供給圧を偏心率に応じて変更する制御を行ってもよい。

【0058】
また、従来型の流体軸受装置においては、回転軸の負荷が変動すると、偏心量(すなわち偏心率)が変更して負荷容量が変更し、これにより負荷の変動を吸収して回転軸の負荷を支持した状態を維持する。これは、本実施形態のように負荷側の供給圧を反負荷側の供給圧と異ならせることができる軸受であっても、これら供給圧をそれぞれ一定値としていれば、同様の作動を示す。他方、図6の矢印を参照すると、本実施形態に係る流体軸受装置においては、偏心率が任意のある値である場合において、反負荷側の供給圧を低下させて負荷側の供給圧との非対称性を大きくすればするほど、負荷容量が増大する。

【0059】
従って、本実施形態の制御装置33は、偏心量検出器34からの入力に基づいて偏心率の変化を測定し、偏心率が一定の値をとるように負荷側及び/又は反負荷側の供給圧を変化させるよう第1圧力調整器31及び/又は第2圧力調整器32の動作を制御する構成であってもよい。すなわち、制御装置33は、反負荷側の供給圧と負荷側の供給圧との非対称性を変更する制御を通じて、偏心率を一定とするフィードバック制御を実行する構成であってもよい。この場合、負荷が増大して偏心率が大きくなる傾向にあるときには、供給圧の非対称性が大きくなるよう圧力調整器31,32を制御し、負荷Wが減少して偏心率が小さくなる傾向にあるときには、供給圧の非対称性が小さくなるよう圧力調整器31,32を制御するとよい。これにより、同一の偏心率であらゆる負荷に対応可能な流体軸受を提供することができる。

【0060】
これまで、本発明の実施形態について説明したが、上記構成は一例に過ぎず、本発明の範囲内で適宜変更可能である。特に、上記実施形態においては、流体流入孔の個数及びこれに対応する流体流路の分割数を2つとしたが、この数は複数であればよく特に限定されない。また、作動流体も、空気に限らず、オイル等の液体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明は、負荷容量が増大し、且つ軸受の作動に必要な流体の流量が低減するという作用効果を奏し、例えば振動発生装置、精密工作機械及び真円度測定器等、流体軸受を適用しうる種々の回転機械に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0062】
1 流体軸受装置
2 軸受本体(流体軸受)
7 軸受孔
8 軸受隙間
9,10 流体流入孔
11 流体流路
12,13 分割流体流路
14,15 流体絞り
31,32 圧力調整器
33 制御装置
34 偏心量検出器
35 流体供給源
50 回転軸
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7