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明細書 :スルホニルイミデートのアリル化反応方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5254264号 (P5254264)
公開番号 特開2011-184400 (P2011-184400A)
登録日 平成25年4月26日(2013.4.26)
発行日 平成25年8月7日(2013.8.7)
公開日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発明の名称または考案の名称 スルホニルイミデートのアリル化反応方法
国際特許分類 C07C 303/40        (2006.01)
C07C 311/17        (2006.01)
C07B  61/00        (2006.01)
FI C07C 303/40
C07C 311/17
C07B 61/00 300
請求項の数または発明の数 4
全頁数 13
出願番号 特願2010-053547 (P2010-053547)
出願日 平成22年3月10日(2010.3.10)
審査請求日 平成23年5月11日(2011.5.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】小林 修
【氏名】松原 亮介
個別代理人の代理人 【識別番号】100102668、【弁理士】、【氏名又は名称】佐伯 憲生
審査官 【審査官】今井 周一郎
参考文献・文献 特開平04-234330(JP,A)
特開2009-215247(JP,A)
特開2009-167109(JP,A)
調査した分野 C07C 311/51
C07C 303/40
特許請求の範囲 【請求項1】
次の一般式(2)
【化8】
JP0005254264B2_000009t.gif
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
で表されるアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物と、次の一般式(1)
【化9】
JP0005254264B2_000010t.gif
(式中、R、及びRは、それぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
で表されるスルホニルイミデートとをパラジウム触媒及び酸化ヒ素の存在下に反応させて、次の一般式(3)
【化10】
JP0005254264B2_000011t.gif
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、前記したものと同じものを表す。)
又は次の一般式(4)
【化10-1】
JP0005254264B2_000012t.gif
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、前記したものと同じものを表す。)
で表されるアリル化スルホニルイミデートを製造する方法。
【請求項2】
パラジウム触媒が、0価パラジウム化合物である請求項に記載の方法。
【請求項3】
アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物が、アリルアルコール又はシンナミルアルコールである請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
スルホニルイミデートが、イソプロピル N-(4-ニトロベンゼンスルホニル)プロピオンイミデートである請求項1~のいずれかに記載の方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物と、スルホニルイミデートとを遷移金属触媒及び酸化ヒ素の存在下に反応させて、アリル化スルホニルイミデートを製造する方法に関する。より詳細には、本発明は、アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物と、スルホニルイミデートとをパラジウム触媒及び酸化ヒ素の存在下に反応させて、アリル化スルホニルイミデートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医薬品産業や農薬産業においては新たな活性化合物の開発のために多数の化合物が製造されてきている。また、近年では有機EL素子などの素子材料として多くの有機化合物が製造されてきている。
このような有機化合物の製造においては、新しい有機化合物の合成手法の開発が望まれてきている。求核反応は有機化合物を製造する際の代表的な化学反応のひとつとして知られており、多くの産業分野で利用されてきている。特に、アリル化物は、医薬、農薬、電子材料などを製造する際の中間体としても重要な物質である。アリル化物は、その二重結合を酸化してエポキシ体としたり、また環化させてシクロプロパン誘導体とすることができることから、極めて重要な中間体となってきている。
【0003】
このためにアリル化方法として種々の方法が開発されてきている。例えば、酸化剤の存在下にアリールヒドラジンをアリル化してアリル置換アリール化合物を製造する方法(特許文献1参照)、Pd触媒の存在下にシクロペンタジエニル金属塩を反応させてアリル化シクロペンタジエン誘導体を製造する方法(特許文献2参照)、Pd系触媒の存在下に求核剤を用いてアリルアルコールの水酸基を置換してアリル化物を製造する方法(特許文献3参照)、金属塩類の存在下にシリル化アリル化合物を用いてカルボニル化合物やイミノ化合物をアリル化する方法(特許文献4参照)、ハロゲン化アリルを用いてナフトールをアリル化する方法(特許文献5参照)などが報告されてきている。
また、アリル位に脱離基を有するアリル化合物と、非求核性強塩基とを、不活性溶剤中で、触媒量の非求核性のより弱い塩基の存在下で反応させてシクロプロペン類を製造する方法(特許文献6参照)も報告されている。
【0004】
一方、本発明者らは、求核試薬としてのスルホニルイミデートを開発してきた。スルホニルイミデートは、イミンの炭素原子やα,β-不飽和カルボニルのβ炭素原子やアゾ基の窒素原子などと求核的に反応して付加し、その結果求核反応生成物を生成することを報告してきた(特許文献7、及び非特許文献1参照)。
このようにスルホニルイミデートは求核試薬として興味深い反応性を有しているが、スルホニルイミデートのα位に炭素-炭素結合を触媒的に導入する反応の報告例は極めて限られており、活性なイミン化合物、またはα,β-不飽和カルボニル化合物を求電子剤として用いる反応のみしか知られておらず一般性に問題があった。スルホニルイミデートのα位に炭素-炭素結合を触媒的に導入する反応のひとつとして、本発明者らは、アリル位に脱離基を有するアリル化合物と、スルホニルイミデートとをパラジウム触媒及び塩基の存在下に反応させて、アリル化スルホニルイミデートを製造する方法も報告してきた(特許文献8参照)。しかし、この反応はアリルアルコールのような水酸基を脱離基とすることはできず、より脱離性のよう官能基に変換して反応させなければならなかった。
スルホニルイミデートのα位に炭素-炭素結合を触媒的に導入する反応において、アリルアルコールを直接使用することができる反応の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-149523号公報
【特許文献2】特開2004-91383号公報
【特許文献3】特開2004-262843号公報
【特許文献4】特開2003-311156号公報
【特許文献5】特開平7-145094号公報
【特許文献6】特開2001-354597号公報
【特許文献7】特開2009-167109号公報
【特許文献8】特開2009-215247号公報
【0006】

【非特許文献1】Ryosuke Matsubara, Shu Kobayashi, et al., J. Am. Chem. Soc, 2008, 130, 1804.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、スルホニルイミデートを用いた簡便で新規なアリル化方法を提供するものである。より詳細には、本発明は、アリルアルコールなどのアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物をアリル化剤とするスルホニルイミデートを用いた簡便で新規なアリル化方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、スルホニルイミデートの反応性に着目して、スルホニルイミデートを用いた種々の反応を検討してきたところ、アリル化合物に対して置換反応を行うことを見出してきた(特許文献8参照)。この反応は、種々のアリル化合物を触媒的に導入できるため、種々のスルホニルイミデート誘導体を製造するための極めて有用な手法となるものであったが、アリル化剤としてアリルアルコールのような遊離の水酸基を有する化合物を使用することはできなかった。
そこで、本発明者らは、アリルアルコールをアリル化剤とする、即ち、遊離の水酸基を脱離基として使用することができる方法を鋭意検討してきたところ、遷移金属触媒及び酸化ヒ素の存在下で反応させることにより、遊離の水酸基を有するアリル化合物を使用するアリル化反応を行えることを見出した。
【0009】
即ち、本発明は、アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物と、スルホニルイミデートとを遷移金属触媒及び酸化ヒ素の存在下に反応させて、アリル化スルホニルイミデートを製造する方法に関する。
より詳細には、本発明は、次の一般式(1)、
【0010】
【化1】
JP0005254264B2_000002t.gif

【0011】
(式中、R、及びRは、それぞれ独立して置換基を有してもよい炭化水素基を表し、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
で表されるスルホニルイミデートと、次の一般式(2)、
【0012】
【化2】
JP0005254264B2_000003t.gif

【0013】
(式中、R、R、R、R及びRは、それぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基を表す。)
で表されるアリルアルコール誘導体とを、酸化ヒ素の存在下に反応させて、次の一般式(3)、
【0014】
【化3】
JP0005254264B2_000004t.gif

【0015】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、前記したものと同じものを表す。)
で表されるアリル化スルホニルイミデートを製造する方法に関する。
【0016】
本発明をさらに詳細に説明すれば以下のとおりである。
(1)アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物と、スルホニルイミデートとを遷移金属触媒及び酸化ヒ素の存在下に反応させて、アリル化スルホニルイミデートを製造する方法。
(2)遷移金属触媒が、パラジウム触媒である前記(1)に記載の方法。
(3)パラジウム触媒が、0価パラジウム化合物である前記(2)に記載の方法。
(4)アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物が、前記した一般式(2)で表されるアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物である前記(1)~(3)のいずれかに記載の方法。
(5)アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物が、アリルアルコール又はシンナミルアルコールである前記(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)スルホニルイミデートが、前記した一般式(1)で表されるスルホニルイミデートである前記(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)スルホニルイミデートが、イソプロピル N-(4-ニトロベンゼンスルホニル)プロピオンイミデートである前記(1)~(6)のいずれかに記載の方法。
(8)アリル化スルホニルイミデートが、前記した一般式(3)で表されるアリル化スルホニルイミデートである前記(6)又は(7)に記載の方法。
(9)前記した一般式(1)で表されるスルホニルイミデートと、前記した一般式(2)で表されるアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物とを、遷移金属触媒及び酸化ヒ素の存在下に反応させて、前記した一般式(3)で表されるアリル化スルホニルイミデートを製造する方法。
(10)遷移金属触媒が、パラジウム触媒である前記(9)に記載の方法。
(11)パラジウム触媒が、0価パラジウム化合物である前記(10)に記載の方法。
(12)反応が、塩基の不存在下で行われる前記(1)~(11)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、スルホニルイミデートのα位に炭素-炭素結合を介してアリル基を導入する方法を提供するものであり、本発明の方法によりα位に置換基を有する種々のスルホニルイミデートを簡便に製造することができる。本発明の方法で製造されたスルホニルイミデートは種々のカルボニル化合物(エステルやアルデヒドなど)に容易に変換することができ、α位にアリル基を有する種々のカルボニル化合物類を製造することができる。本発明の方法は、アリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物、例えばアリルアルコールのような遊離の水酸基を有するアリル化合物を、そのまま使用することができ、脱離性のよい誘導体に変換する必要がないだけでなく、反応後の副生成物も水だけとなり環境面においても極めて優れている。
また、このようにして製造されたアリル化物は、エポキシ体やシクロプロパン体に容易に変換することができ、本発明の方法は医薬や農薬の製造のみならず、各種の電子材料や産業基材となる有機化合物の製造に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で使用されるスルホニルイミデートは、前記した一般式(1)で表される構造を有する化合物である。
一般式(1)及び一般式(2)における「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、無置換の炭化水素基、又はハロゲン、カルボキシル基、水酸基、エステル基、ニトロ基、シアノ基、エーテル基、チオール基、アミド基、アミノ基、チオエーテル基等の置換基を1個以上有していてもよい炭化水素基を意味する。
また、「置換基を有していてもよい炭化水素基」における「炭化水素基」としては、炭素数が1~20、好ましくは1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基、ブチル基など)、炭素数が2~20、好ましくは2~10の直鎖状又は分岐状のアルケニル基(例えばエテニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基又は2-ペンテニル基)、炭素数が2~20、好ましくは2~10の直鎖状又は分岐状のアルキニル基(例えばエチニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、2-メチル-3-ブチニル基、フェニルエチニル基など)、炭素数3~15、好ましくは炭素数3~10の飽和又は不飽和の単環式、多環式又は縮合環式のシクロアルキル基(例えばシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基など)、炭素数6~18、好ましくは炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基(例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、フェナントリル基、又はアントリル基など)、炭素数6~18、好ましくは炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基に、前記した炭素数1~20、好ましくは炭素数1~10のアルキル基が結合した、炭素数7~40、好ましくは炭素数7~20、炭素数7~15のアラルキル基(例えば、ベンジル基、フェネチル基、又はα-ナフチル-メチル基など)などの基が挙げられる。

【0019】
一般式(1)における好ましいRの基としてはi-プロピル基、ブチル基などの炭素数が1~20、好ましくは1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられ、好ましいRの基としては、置換基を有してもよい炭素数6~18、好ましくは炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。当該アリール基における好ましい置換基としては、ハロゲン、エステル基、ニトロ基、シアノ基などが挙げられる。好ましいRの基の例としては、p-ニトロフェニル基などの置換基を有してもよいフェニル基が挙げられる。
好ましいR及びRの基としては、水素原子、又はメチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基などの炭素数が1~20、好ましくは1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基が挙げられる。R及びRの基うちのいずれか一方は、水素原子であるのがさらに好ましい。
この様なスルホニルイミデートは、文献(Kupfer, R.; Nagel, M.; Wurthwein, E.-U.; Allmann, R. Chem. Ber. 1985, 118, 3089.;S.B.J. Kan, R.Matsubara, et al., Chem. Commun., 2008, 6354-6356.)に記載の方法を参考にして、当業者が適宜製造し、あるいは入手することができる。

【0020】
本発明で使用されるアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物は、前記した一般式(2)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
一般式(2)における「置換基を有していてもよい炭化水素基」としては、前述の一般式(1)において説明してきた基が挙げられる。
一般式(2)における好ましいR、R、R、R及びRの基としては、水素原子、炭素数が1~20、好ましくは1~10の直鎖状又は分岐状のアルキル基、又は炭素数6~18、好ましくは炭素数6~12の単環式、多環式、又は縮合環式のアリール基が挙げられる。アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、i-プロピル基などが挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基などが挙げられる。さらに好ましいR、R、R、R及びRの基としては、水素原子が挙げられる。
本発明で使用されるアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物の好ましい例としては、例えば、アリルアルコール、シンナミルアルコールなどが挙げられる。

【0021】
本発明の方法における遷移金属触媒としては、パラジウム、白金、ルテニウムなどの遷移金属を含有してなる触媒が挙げられるが、パラジウム触媒が特に好ましい。
パラジウム触媒としては、Pd(PPhのような0価のパラジウム錯体が好ましいが、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、硫酸パラジウムなどのパラジウム塩、π-アリルパラジウムクロリドダイマー、1,5-シクロオクタジエンパラジウムクロリド、Pd(dba)(式中、dbaはジベンジリデンアセトンを表す。)などの有機パラジウム錯体なども挙げられる。これらの錯体はさらに、ホスフィン類やアミン類をリガンドとして有していてもよい。
パラジウム触媒などの遷移金属触媒は、触媒量の使用でよく、より具体的には、一般式(1)で表されるスルホニルイミデートに対して0.01~30モル%、より好ましくは1~10モル%程度である。

【0022】
本発明の方法における、酸化ヒ素は、俗に亜ヒ酸と称されている三酸化二ヒ素(As)である。酸化ヒ素の使用量としては、一般式(1)で表されるスルホニルイミデートに対して0.1~30モル%、より好ましくは1~20モル%程度、又は1~10モル%程度である。
本発明の方法においては、塩基の存在は必要ではない。その理由は必ずしも明確ではないが、酸化ヒ素がスルホニルイミデートの脱プロトン化剤としても作用し、そのために塩基の不存在下で反応が進行するものと考えられる。
また、本発明の方法は、モレキュラーシーブ(好ましく3~4オングストロームのもの)の存在下に行うこともできる。好ましいモレキュラーシーブとしては、モレキュラーシーブ3A(MS3A)が挙げられる。

【0023】
本発明の方法は、例えば、一般式(1)で表されるスルホニルイミデートと一般式(2)で表されるアリル化合物を溶媒中で混合し、これに遷移金属触媒及び酸化ヒ素を添加して、さらに好ましくはモレキュラーシーブをさらに添加して行われる。
溶媒としては、この反応に不活性なものであれば各種の有機溶媒を使用することができる。好ましい溶媒の例としては、ジクロルメタン(DCM)などのハロゲン化アルキル、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素系溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルエーテル(DME)、ジオキサン、ジグライムなどのエーテル系溶媒などが挙げられる。本発明の方法は比較的高温で行われるために、好ましい溶媒としては、沸点の高い溶媒が好ましく、例えば1,4-ジオキサンが挙げられる。
一般式(2)で表されるアリル化合物の使用量としては、一般式(1)で表されるスルホニルイミデート1モルに対して、等量以上であればよいが、通常は1.5~5モル、1.5~3モルの範囲で使用される。

【0024】
本発明の方法は、常圧又は加圧で行うことができるが、通常は常圧で行うのが好ましい。反応温度は0℃以上が好ましく、より好ましくは50~100℃、例えば、80~100℃の範囲が好ましい。
反応混合物中から、目的物を単離精製する方法としては、特に制限はなく、通常の抽出操作、分液操作、結晶化方法、蒸留法、クロマトグラフィーなどの単離精製手段により単離精製することができる。
また、本発明の方法により得られたアリル化スルホニルイミデート誘導体は、通常の合成化学における加水分解反応、還元反応、脱炭酸反応の反応条件により処理することができる。本発明の方法により得られたアリル化スルホニルイミデート誘導体のスルホニルイミデート基は種々のカルボニル化合物(エステルやアルデヒドなど)に変換可能であるため、本発明の方法により得られたアリル化スルホニルイミデート誘導体は、α位に置換基を有する種々のカルボニル化合物の製造原料として有用である。

【0025】
本発明の方法は、種々のアリル化合物を触媒的に導入できるため、広い一般性を持ち、種々のスルホニルイミデート誘導体を簡便に製造することができる。本発明者らはアリルカーボネートをアリル化剤として用いる方法を以前開発しているが(特許文献8参照)、本発明のアリルアルコールをアリル化剤として用いる方法は、副生成物が水のみであり、環境調和型の高効率的な反応であると言える。また、アリル化反応は炭素-炭素結合生成反応として有用であるが、アリル化剤としてアリルアルコールを直接用いる例は少なく、電子求引性基などα位活性化置換基を持たないエステル等価体との反応の例はこれまでに皆無であった。
また、本発明のアリル化反応は、水酸基の結合している炭素(α位炭素)が反応する場合と、二重結合を形成する二つの炭素のうち水酸基側からみて遠い側の炭素(γ位炭素)が反応する場合がある。選択性の原因は明らかになっていないが、置換基の位置によって選択性が異なる傾向があることから、立体障害が少ない位置で反応していると思われる。
即ち、生成物としては、前記した一般式(3)の化合物(水酸基の結合している炭素(α位炭素)が反応した場合)だけでなく、二重結合を形成する二つの炭素のうち水酸基側からみて遠い側の炭素(γ位炭素)が反応した場合の化合物が得られることもある。後者の場合には、生成物としては正確な表現をすれば、次の一般式(4)、

【0026】
【化4】
JP0005254264B2_000005t.gif

【0027】
(式中、R、R、R、R、R、R、R、R及びRは、前記したものと同じものを表す。)
で表されるアリル化スルホニルイミデートが得られるということになる。したがって、本発明の方法を一般式を用いて正確に表現すれば、一般式(1)で表されるスルホニルイミデートと、一般式(2)で表されるアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物とを、遷移金属触媒及び酸化ヒ素の存在下に反応させて、一般式(3)及び/又は一般式(4)で表されるアリル化スルホニルイミデートを製造する方法ということになる。
しかしながら、一般式(3)及び一般式(4)におけるR、R、R、R及びRは、いずれもそれぞれ独立して水素原子又は置換基を有してもよい炭化水素基を表しており、一般式における表記自体に相互に互換性があることから、本明細書においては、「一般式(3)及び/又は一般式(4)で表されるアリル化スルホニルイミデート」という煩雑な表現を回避するために、単に「一般式(3)で表されるアリル化スルホニルイミデート」と表現することとする。

【0028】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
イソプロピル 2-メチル-N-(4-ニトロベンゼンスルホニル)ペント-4-エンイミデートの製造
次に示す反応によりアリルアルコールとスルホニルイミデートとを反応させ、アリル化スルホニルイミデート誘導体を製造した。
【実施例1】
【0030】
【化5】
JP0005254264B2_000006t.gif
【実施例1】
【0031】
十分乾燥された容器に、As(6mol%)とPd(PPh(4mol%)を入れ、スルホニルイミデート(0.3mmol)とMS3A(50mg)を加えた。1,4-ジオキサン(1.0mL)を加えた後、アリルアルコール(2.75当量)を加え容器(スクリューバイアル)を封じた。反応混合物を90℃にて6時間撹拌した後、シリカゲルショートカラムにてMS3A及び触媒分解物を分離した。溶出にはヘキサン:酢酸エチル=5:1の混合溶媒(100mL)を使用した。減圧濃縮したものにp-ジメトキシベンゼン(10mg)を加えH-NMRを測定し、出発物質の消費量(100%)を測定した。またシリカゲルクロマトグラフィーによりこれを精製し、目的の生成物(90% 収率)を得た。
【実施例1】
【0032】
MP. 69-70℃;
H-NMR(CDCl)δ =
8.35(br d, 2H, J = 9.2 Hz), 8.12 (br d, 2H, J = 9.2 Hz), 5.70-5.81 (m,1H), 5.08 (d, 1H, J = 20.6 Hz), 5.05 (br d, 1H, J = 14.9 Hz), 4.97(septet, 1H, J = 6.3 Hz), 3.66 (qt, 1H, J = 7.5, 6.9 Hz), 2.42-2.48 (m, 1H), 2.22-2.27(m, 1H), 1.22-1.27 (m, 9H);
13C-NMR(CDCl)δ =
179.0, 149.7, 147.8, 134.6, 127.8, 124.0, 117.4, 72.6, 39.2, 38.1, 21.1, 21.0, 17.5;
IR(neat) 2982, 2933, 1581, 1532, 1458, 1350, 1298, 1157, 1089cm-1
HRMS(APCI)
1521Sとして、計算値:[M+H] 341.1171,
実測値: 341.1181.
【実施例1】
【0033】
参考例
原料として使用したスルホニルイミデート(イソプロピル N-(4-ニトロベンゼンスルホニル)プロピオンイミデート)は、文献(Chem. Commun., 2008, 6354.)に記載の方法に準じて、次に示す反応式にしたがって製造した。
【実施例1】
【0034】
【化6】
JP0005254264B2_000007t.gif
【実施例1】
【0035】
十分乾燥された容器に、アルゴン置換下でイソプロピル プロピオンイミデート塩酸塩(5g)をとり、ジクロロメタン(66mL)に溶解させた。トリエチルアミン(13.5mL)、p-ニトロベンゼンスルホニルクロリド(7.5g)、ジメチルアミノピリジン(0.4g)を加え、室温で20時間撹拌した。反応終了後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(100mL)を加え、ジクロロメタンで抽出操作を行った。食塩水で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーの後再結晶操作を行い、目的の生成物(イソプロピル N-(4-ニトロベンゼンスルホニル)プロピオンイミデート)(76% 収率)を得た。
【実施例2】
【0036】
(E)-イソプロピル 2-メチル-N-(4-ニトロベンゼンスルホニル)-5-フェニル-ペント-4-エンイミデートの製造
次に示す反応によりアリルアルコールとスルホニルイミデートとを反応させ、アリル化スルホニルイミデート誘導体を製造した。
【実施例2】
【0037】
【化7】
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【実施例2】
【0038】
十分乾燥された容器に、As(6mol%)とPd(PPh(4mol%)を入れ、スルホニルイミデート(0.3mmol)とMS3A(50mg)を加えた。シンナミルアルコール(2.00当量)を加えた後、1,4-ジオキサン(0.5mL)を加え容器(スクリューバイアル)を封じた。反応混合物を90℃にて6時間撹拌した後、シリカゲルショートカラムにてMS3Aおよび触媒分解物を分離した。溶出にはヘキサン:酢酸エチル=5:1の混合溶媒(100mL)を使用した。減圧濃縮したものにp-ジメトキシベンゼン(10mg)を加えH-NMRを測定し、出発物質の消費量(96%)を測定した。またシリカゲルクロマトグラフィーによりこれを精製し、目的の生成物(74% 収率)を得た。
【実施例2】
【0039】
H-NMR(CDCl)δ =
8.22 (d, 2H, 8.7 Hz), 8.04 (d, 2H, 8.7 Hz), 7.28-7.21 (m, 5H), 6.40 (d, 1H, 16.0 Hz), 6.15 (ddd, 1H, 15.9, 7.2, 7.4 Hz), 5.05-4.95 (m, 1H), 3.85-3.76 (m, 1H), 2.58 (ddd, 1H, 7.4, 9.0, 13.3 Hz), 2.42 (ddd, 1H, 7.2, 4.8, 13.3 Hz), 1.31 (d, 1H, 6.9 Hz), 1.26 (d, 1H, 6.4 Hz), 1.21 (d, 1H, 6.4 Hz);
13C-NMR(CDCl)δ =
178.8, 149.6, 147.6, 137.0, 132.4, 128.5, 127.7, 127.3, 126.3, 126.0, 123.9, 72.6, 39.4, 37.6, 21.2, 21.0, 17.6;
IR(neat) 2983, 2933, 2363, 1578, 1530, 1457, 1349, 1305, 1159, 1090cm-1
HRMS(APCI)
2125Sとして、計算値:[M+H] 417.1484,
実測値: 417.1489.
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、スルホニルイミデートのα位に炭素-炭素結合を介して、アリルアルコールなどのアリル位に遊離の水酸基を有するアリル化合物を用いて、直接アリル基を導入する方法を提供するものであり、本発明の方法によりα位に置換基を有する種々のスルホニルイミデートを簡便に製造することができる。本発明の方法で製造されたスルホニルイミデートは種々のカルボニル化合物(エステルやアルデヒドなど)に容易に変換することができ、α位にアリル基を有する種々のカルボニル化合物類を製造することができる。このようにして製造されたアリル化物は、エポキシ体やシクロプロパン体に容易に変換することができ、本発明の方法は医薬や農薬の製造のみならず、各種の電子材料や産業基材となる有機化合物の製造に有用であり、産業上の利用可能性を有する。