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明細書 :流体注入型アクチュエータ

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5416580号 (P5416580)
登録日 平成25年11月22日(2013.11.22)
発行日 平成26年2月12日(2014.2.12)
発明の名称または考案の名称 流体注入型アクチュエータ
国際特許分類 F15B  15/10        (2006.01)
FI F15B 15/10 H
請求項の数または発明の数 6
全頁数 11
出願番号 特願2009-297928 (P2009-297928)
出願日 平成21年12月28日(2009.12.28)
審査請求日 平成24年12月21日(2012.12.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
発明者または考案者 【氏名】中村 太郎
【氏名】緑川 雄一郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100080296、【弁理士】、【氏名又は名称】宮園 純一
【識別番号】100141243、【弁理士】、【氏名又は名称】宮園 靖夫
特許請求の範囲 【請求項1】
弾性体から成る筒状体と筒状体の両端に設けられた蓋部材とで形成される空間に供給される流体の圧力により前記筒状体を径方向に膨張させ、前記筒状体の軸方向の長さを収縮させる流体注入型アクチュエータであって、
前記筒状体が、前記空間側に配置される内側筒状部材と、前記内側筒状部材よりも外側において前記内側筒状部材と同軸に配置される外側筒状部材とから成り、
前記内側筒状部材と前記外側筒状部材との間には繊維層が介挿され、
前記繊維層が、前記筒状体の軸方向に延長する複数の繊維から成ることを特徴とする流体注入型アクチュエータ。
【請求項2】
前記繊維は機械的な撚りをかけずに収束された無撚り繊維であることを特徴とする請求項1に記載の流体注入型アクチュエータ。
【請求項3】
前記繊維層を複数層設け、当該繊維層間に弾性体から成る中間層を設けたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の流体注入型アクチュエータ。
【請求項4】
前記繊維がカーボンロービング繊維であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータ。
【請求項5】
前記筒状体は、外周部に径方向への膨張を制限するリングを備えていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータ。
【請求項6】
前記リングの表面がゴム部材で被覆されていることを特徴とする請求項5に記載の流体注入型アクチュエータ。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、人工筋肉等に用いられるアクチュエータに関するもので、特に、弾性体から成る筒状体内に流体を注入して膨張させ、筒状体の長さを伸縮させる形態の流体注入型アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、人工筋肉として、図11(a),(b)に示すような、ゴムチューブ51内にガラスロービング繊維などの強化繊維52kを束ねて成る繊維束52を内挿した軸方向繊維強化型アクチュエータ50が提案されている。
このアクチュエータ50は、繊維束52をゴムチューブ51の軸方向に平行に内挿することで、ゴムチューブ51内に空気を注入して膨張させたときのゴムチューブ51の軸方向への膨張を抑制して、ゴムチューブ51を半径方向のみに大きく膨張させることにより、ゴムチューブ51を軸方向へ確実に収縮させることができる(例えば、非特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【0003】

【非特許文献1】松下:ゴム人工筋作成ノート;「計測と制御」第7巻第12号(昭和43年12月):pp110-116
【非特許文献2】軸方向繊維強化型空気ゴム人工筋肉の開発;日本機械学会誌 2007.5 vol. 110 No.1062:p73
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の軸方向繊維強化型アクチュエータ50では、周上に繊維束52がある場所とない場所があるため、ゴムチューブ51が膨張した場合には、図12に示すように、半径方向への膨張が繊維束52間のゴムに集中してしまい、そのため、半径方向の膨張を軸方向の収縮へ十分に伝達することができないといった問題点があった。
また、ゴムチューブ51に高圧力の空気を送り込んだ場合には、繊維束52間のゴムが破裂してしまうことから、高圧時の耐久性能にも問題があった。
【0005】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、筒状体を膨張させて軸方向の長さを伸縮させる際に、半径方向の膨張を軸方向に効率よく伝達することができるとともに、高圧時の耐久性能にも優れた流体注入型アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載の発明は、弾性体から成る筒状体と筒状体の両端に設けられた蓋部材とで形成される空間に供給される流体の圧力により前記筒状体を径方向に膨張させ、前記筒状体の軸方向の長さを収縮させる流体注入型アクチュエータであって、前記筒状体が、前記空間側に配置される内側筒状部材と、前記内側筒状部材よりも外側において前記内側筒状部材と同軸に配置される外側筒状部材とから成り、前記内側筒状部材と前記外側筒状部材との間には繊維層が介挿され、前記繊維層が、前記筒状体の軸方向に延長する複数の繊維から成ることを特徴とするものである。
これにより、筒状体を径方向により均一に膨張させることができるとともに、高圧領域においても高い収縮量と収縮率を得ることができる。また、高圧時においても弾性体に応力が集中することがないので、アクチュエータの耐久性を向上させることができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流体注入型アクチュエータにおいて、前記繊維を機械的な撚りをかけずに収束された無撚り繊維としたことを特徴とする。
これにより、筒状体の径方向への膨張を更に均一にすることができる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の流体注入型アクチュエータにおいて、前記繊維層を複数層設け、当該繊維層間に弾性体から成る中間層を設けたことを特徴とする。
これにより、高圧動作時において繊維層間の隙間によって起こるゴム層の破裂を抑制することができるとともに、繊維層自身の破断を防ぐことができる。したがって、高負荷時における耐久性を向上させることができるとともに、アクチュエータの長寿命化を図ることができる。
請求項4に記載の発明は、請求項1~請求項3のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータであって、前記繊維がカーボンロービング繊維であることを特徴とする。
これにより、繊維層の強度を高めて耐久性を向上させることができるとともに、筒状体の径方向への膨張を確実に均一にすることができる。
【0008】
請求項5に記載の発明は、請求項1~請求項4のいずれかに記載の流体注入型アクチュエータにおいて、前記筒状体が、外周部に径方向への膨張を制限するリングを備えていることを特徴とする。
これにより、筒状体を複数の領域に分割し、それぞれの領域を径方向に膨張させることができる。したがって、膨張時における筒状体の径と長さとの比を調整することができるので、膨張時の筒状体の形状を仕様に合わせて決定することができる。
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の流体注入型アクチュエータであって、前記リングの表面がゴム部材で被覆されていることを特徴とする。
これにより、リングズレを防止できるので、リングズレによる筒状体の過度の膨張を抑制することができる。したがって、高圧時の性能を更に向上させることができる。
【0009】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施の形態に係る流体注入型アクチュエータを示す図である。
【図2】アクチュエータ本体の構成を示す図である。
【図3】流体注入型アクチュエータの膨張時の状態を示す図である。
【図4】流体注入型アクチュエータの圧力—収縮率特性の測定結果を示す図である。
【図5】繊維複層型アクチュエータの構成を示す図である。
【図6】繊維複層型アクチュエータの圧力—収縮率特性の測定結果を示す図である。
【図7】繊維複層型アクチュエータの圧力—収縮力特性の測定結果を示す図である。
【図8】ゴム層の厚さを薄くしたアクチュエータの収縮特性の測定結果を示す図である。
【図9】ゴム塗装型リングの構成を示す図である。
【図10】リングの違いよるアクチュエータの収縮特性を測定した結果を示す図である。
【図11】従来の軸方向繊維強化型アクチュエータの構成を示す図である。
【図12】従来の軸方向繊維強化型アクチュエータの膨張時の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る流体注入型アクチュエータ10の構成を示す図で、(a)図は側面図、(b)は(a)図のA-A断面図である。
流体注入型アクチュエータ(以下、アクチュエータという)10は、内側筒状部材11と繊維層12と外側筒状部材13とを備えたアクチュエータ本体14と、アクチュエータ本体14の両端にそれぞれ取付けられる蓋部材15a,15bと、締付バンド16a,16bと、リング17と、圧縮空気注入管18aと、空気排出管18bと、注入用及び排気用の電磁弁19a,19bと、圧縮空気供給装置20と、制御装置21とを備えている。
内側筒状部材11と外側筒状部材13とは、ともに、天然ラテックスゴムもしくはシリコーンゴムなどのゴム部材から成る円筒状の部材で、外側筒状部材13は内側筒状部材11の外側に、内側筒状部材11と同軸に配置される。
また、繊維層12は、図2にも示すように、内側筒状部材11及び外側筒状部材13の軸方向であるアクチュエータ10の軸方向に延長する複数の繊維12kから成り、内側筒状部材11と外側筒状部材13との間に介挿される。

【0012】
繊維層12を構成する繊維12kとしては、機械的な撚りをかけずに収束された無撚り繊維が用いられている。本例では、繊維12kとして、径が5~15μm程度の極細でかつ強度の高いカーボンロービング繊維を用いた。
繊維層12は、アクチュエータ10の軸方向に延長する繊維12kがアクチュエータ10の周方向沿って配置されるとともに、径方向にも積み重なって配置されている。
また、複数の繊維12kは、必ずしも互いに平行に配置されている必要はなく、径方向に若干の傾きを有しながらアクチュエータ10のほぼ軸方向に沿って延びる繊維であってもよい。要は、本願発明の繊維層12としては、複数の繊維12kが内側筒状部材11の外側面と外側筒状部材13の内壁の間に、全周にわたって配置され、かつ、径方向に積み重なりながら、全体としてアクチュエータ10の軸方向に延長している形態であればよい。

【0013】
蓋部材15a,15bは円柱状の部材で、それぞれの一端がアクチュエータ本体14の両端にそれぞれ挿入される。蓋部材15a,15bのアクチュエータ本体14内に挿入される部分の外径は、少なくともアクチュエータ本体14を構成する内側筒状部材11の端部の内径よりも大きく設定することが好ましい。これにより、アクチュエータ本体14の開口部である内側筒状部材11の開口部を押し広げながら蓋部材15a,15bをアクチュエータ本体14の端部に挿入すれば、蓋部材15a,15bとアクチュエータ本体14とにより、内側筒状部材11の中空部とほぼ同じ体積の密閉空間を形成することができる。

【0014】
締付バンド16a,16bはアクチュエータ本体14の外周側端部に配置される。締付バンド16a,16bは、蓋部材15a,15bとアクチュエータ本体14との間に隙間ができないように、アクチュエータ本体14を締め付けて蓋部材15a,15bとアクチュエータ本体14とを密着させる。これにより、蓋部材15a,15bとアクチュエータ本体14とにより形成される密閉空間の密閉性を更に向上させることができるとともに、アクチュエータ本体14を蓋部材15a,15bに確実に固定することができる。
リング17はアクチュエータ本体14の外周側に配置されて、アクチュエータ本体14の膨張を制限する。リング17はアクチュエータ本体14の一端からアクチュエータ本体14の全長の1/3及び2/3の位置にそれぞれ設けられている。
本例では、リング17をアルミニウムから構成した。
これらのリング17は、アクチュエータ本体14の径方向への膨張を制限するために設けられたもので、膨張時には、リング17の位置がアクチュエータ本体14の膨張・収縮の節となるとともに、過度な膨張によるゴムの破裂を防止することができる。
また、リング17を設けるとアクチュエータ本体14の膨張直径が小さくなるので、アクチュエータ10をスリム化できる。

【0015】
圧縮空気注入管18aと空気排出管18bとは、それぞれ、一方の蓋部材(ここでは、蓋部材15b)に設けられた図示しない空気注入口及び空気排出口に取付けられる。
圧縮空気注入管18aは注入用の電磁弁19aを介して圧縮空気を供給する圧縮空気供給装置20に連結され、空気排出管18bは排気用の電磁弁19bに連結される。
制御装置21は、注入用の電磁弁19aの開閉と排気用の電磁弁19bの開閉とを制御して、アクチュエータ本体14の膨張・収縮を制御する。

【0016】
次に、本発明による流体注入型アクチュエータ10の動作について説明する。
ここで、説明を簡単にするため、図3の上側の図に示すように、圧縮空気注入管18aと空気排出管18bとが取付けられた方の蓋部材15bを、アクチュエータ10を固定するための固定部材25に固定し、アクチュエータ本体14内に供給される空気圧より、固定部材25に固定された方の蓋部材(以下、固定端側の蓋部材という)15bともう一方の蓋部材(以下、自由端側の蓋部材という)15aとの距離を伸縮させる例(無負荷往復運動)について説明する。
なお、自由端側の蓋部材15aを連結具等を介して負荷に連結すれば、この負荷を往復運動させることができる。

【0017】
まず、注入用の電磁弁19aを開いて、図1に示した圧縮空気供給装置20から送られてくる圧縮空気を、圧縮空気注入管18aを介して、アクチュエータ10の密閉空間内に導入する。アクチュエータ本体14の内側筒状部材11と外側筒状部材13とは、導入された圧縮空気の圧力により全方向、すなわち、径方向と軸方向との両方に膨張しようとする。
一方、内側筒状部材11と外側筒状部材13との間に介挿されている繊維層12は、アクチュエータ10の軸方向に延長する複数の繊維12kから成り、かつ、その両端部が内側筒状部材11及び外側筒状部材13とともに固定されているので、内側筒状部材11と外側筒状部材13との軸方向への膨張を拘束する。
これにより、内側筒状部材11の膨張と外側筒状部材13の膨張とはいずれも径方向のみに限定されるので、それに伴ってアクチュエータ本体14には軸方向への収縮力が発生する。すなわち、繊維層12が内側筒状部材11と外側筒状部材13の軸方向への膨張を拘束するので、アクチュエータ本体14は、図3の下側の図に示すように、径方向に膨張しながら軸方向に収縮する。

【0018】
また、本例のアクチュエータ10は2個のリング17を備えているので、アクチュエータ本体14の膨張・伸縮の節は(端部を除くと)2個となる。これにより、アクチュエータ本体14全体の膨張量dが、図3の下側の図の破線で示したリング17がないときの膨張量Dよりも小さくなる。なお、収縮量xもリング17がないときの収縮量(図示せず)よりも小さくなる。
また、リング17の数を調節すれば、膨張時におけるアクチュエータ本体14の径と長さの比を調整することができるので、膨張時の筒状体の形状を仕様に合わせて決定することができる。
アクチュエータ本体14を元の長さに戻すには、注入用の電磁弁19aを閉じて圧縮空気の導入を中止すると同時に、排気用の電磁弁19bを開いてアクチュエータ10の密閉空間内の圧縮空気を外気中に放出すればよい。

【0019】
本例のアクチュエータ本体14の繊維層12は、繊維12kと繊維12kとの隙間が極めて狭いので、内側筒状部材11と外側筒状部材13とが膨張した場合でも、内側筒状部材11及び外側筒状部材13に対する圧力集中が抑制されるので、高圧時での操作が容易となる。また、図11に示した従来の軸方向繊維強化型アクチュエータ50のように、膨張したゴムが繊維間に入り込むことがないので、内側筒状部材11のゴムの破裂が起きにくいので、耐久性が向上する。
図4(a),(b)は本発明による流体注入型アクチュエータの圧力—収縮率特性と従来の軸方向繊維強化型アクチュエータの圧力—収縮率特性とを実際に測定した結果を示すグラフである。(a)図は無負荷時の特性、(b)図はアクチュエータ10に0.85kgの重りを20個取付けてこれを負荷としたときの特性である。なお、負荷の大きさは166.6Nである。
また、グラフの横軸はアクチュエータに導入された導入圧力(MPa)で、縦軸は収縮率(%)で、白丸が本発明よるアクチュエータで、黒丸が従来のアクチュエータである。同図のX印はアクチュエータが破損した点を示す。なお、実験に使用したアクチュエータ10の可動長さ(締付バンド16aと締付バンド16bとの間にあるアクチュエータ本体14の長さ)は187mmで、アクチュエータ本体14の直径は12.3mm、内外径差は2.3mmである。
図4(a),(b)から明らかなように、本発明よるアクチュエータは、無負荷時においても負荷時においても、従来のアクチュエータに比較して高い収縮率を実現することができる。特に、負荷時においては、従来のアクチュエータの約2.7倍という高い収縮率を実現できた。

【0020】
このように本実施の形態によれば、流体注入型アクチュエータ10の膨張収縮部であるアクチュエータ本体14を、内側筒状部材11と、外側筒状部材13と、内側筒状部材11と外側筒状部材13との間に介挿される繊維層12から構成するとともに、繊維層12を、内側筒状部材11及び外側筒状部材13の軸方向であるアクチュエータ10の軸方向に延長する複数のカーボンロービング繊維12kから構成したので、内側筒状部材11と外側筒状部材13とを径方向により均一に膨張させることができるとともに軸方向へ収縮力の伝達を効率よく行うことができる。したがって、アクチュエータ10の小型化、細型化が可能となる。
また、高圧時においても弾性体である内側筒状部材11と外側筒状部材13とに応力が集中することがないので、アクチュエータ10の耐久性を向上させることができる。

【0021】
また、本発明によるアクチュエータ本体14の繊維層12の繊維12k,12k間にはゴム部材がないので、弾性体から成る筒状体の内部にカーボンロービング繊維などの繊維を多数内挿した場合よりも、繊維12kと繊維12kとの隙間を狭くできる。すなわち、本実施の形態のアクチュエータ本体は、弾性体から成る筒状体の内部に繊維を内挿した場合よりも繊維の密度が高いので、少ない繊維量で、弾性体(内側筒状部材11と外側筒状部材13)を効率よく軸方向へ拘束することができる。また、繊維層12と弾性体(内側筒状部材11と外側筒状部材13)とは別個の層を構成しているので、弾性体を効率よく膨張・収縮させることができる。
したがって、弾性体から成る筒状体の内部に繊維を内挿した場合よりも軸方向へ収縮力の伝達を効率よく行うことができるとともに、アクチュエータ本体14を小型化できる。

【0022】
なお、前記実施の形態では、アクチュエータ本体14の繊維層12が一層である場合について説明したが、繊維層12を複数層設けてもよい。図5は繊維層を二層としたときのアクチュエータ本体14Dの例を示す図で、このアクチュエータ本体14Dは、内側筒状部材11側に位置する第1の繊維層12Aと外側筒状部材13側に位置する第2の繊維層12Bと、第1の繊維層12Aと第2の繊維層12B間に設けられた弾性体から成る中間層30とを備える。以下、アクチュエータ本体14の繊維層12が一層であるアクチュエータ10を単層型アクチュエータといい、アクチュエータ本体14Dの繊維層12が二層であるアクチュエータを二層型アクチュエータという。
二層型アクチュエータにおいては、第1の繊維層12Aの径方向外側に配置されている第2の繊維層12Bが、第1の繊維層12Aの隙間を補完する役割を果たすので、繊維間の隙間によって生じる膨張時のゴムの破裂を抑制することができる。また、アクチュエータ本体14Dでは繊維層の体積の増加により、繊維による軸方向の拘束を強靭にできるので、高圧力作動時における繊維の破断を防ぐことができるとともに、高負荷にも耐えることができるという利点がある。
また、中間層30を設けることにより、繊維間の隙間からのゴムの進入が中間層30の弾性体により緩和されるので、第1の繊維層12Aの繊維への負荷を小さくできる。したがって、単に繊維層を増やした場合に比較して、耐久性能が更に向上する。
なお、中間層30を構成する弾性体としては、内側筒状部材11及び外側筒状部材13を構成するゴム部材と同じく天然ラテックスゴムもしくはシリコーンゴムを用いてもよいし、他の種類のゴムを用いてもよい。

【0023】
図6は、本発明による単層型アクチュエータの圧力—収縮率特性と二層型アクチュエータの圧力—収縮率特性とを実際に測定した結果を示すグラフで、図7は、本発明による単層型アクチュエータの圧力—収縮力特性と二層型アクチュエータの圧力—収縮力特性とを実際に測定した結果を示すグラフである。図6では、参考のため、従来の軸方向繊維強化型アクチュエータの収縮特性も併せて記載した。
図6のグラフの横軸はアクチュエータに導入された導入圧力(MPa)で、縦軸は収縮率(%)である。また、図7のグラフの横軸はアクチュエータに導入された導入圧力(MPa)で、縦軸は収縮力(N)である。なお、黒丸が従来のアクチュエータである。
図6,7に示すように、二層型アクチュエータは、単層型アクチュエータの約1.55倍の収縮力と約1.7倍の耐圧性能を持つことがわかった。
この結果から、繊維層を二層にすることで繊維間の隙間からの破裂を防止できることが確認された。

【0024】
しかしながら、図6のグラフから、本発明によるアクチュエータは、低圧領域における収縮が小さいこともわかった。
そこで、二層型アクチュエータにおいて、ゴム層(内側筒状部材11と外側筒状部材13)の厚さを薄くすることで、低圧領域における応答特性の改善を図った。
図8は、二層型アクチュエータにおいて、弾性層の厚さの合計を1.5mmとしたもの(同図の破線)と1.0mmとしたもの(同図の実線)の圧力—収縮率特性とを実際に測定した結果を示すグラフである。参考のため、単層型アクチュエータ(同図の細かい破線)と従来の軸方向繊維強化型アクチュエータ(同図の黒丸)の収縮特性も併せて記載した。
なお、単層型アクチュエータと従来の軸方向繊維強化型アクチュエータの弾性層の厚さも1.5mmである。また、グラフの横軸はアクチュエータに導入された導入圧力(MPa)で、縦軸は収縮率(%)である。
同図に示すように、弾性層の薄型化により、低圧領域における応答特性が改善されていることが確認された。また、弾性層の厚さの合計が1.0mmである二層型アクチュエータは、低圧領域における応答特性が従来の軸方向繊維強化型アクチュエータと同等であるだけでなく、耐圧性能も最大収縮率も従来の軸方向繊維強化型アクチュエータよりも大幅に向上していることがわかる。但し、弾性層の厚さの合計が1.0mmである二層型アクチュエータは、弾性層の厚さの合計が1.5mmである二層型アクチュエータに比較し、限界耐圧性能は劣る。

【0025】
また、前記例では、リング17をアルミニウムリングとしたが、弾性層の厚さを薄くした場合には、アクチュエータの直径が縮んでしまうため、リング17と外側筒状部材13とが摩擦が低下して、リングズレが生じることがある。
そこで、アルミニウムリング17に代えて、図9に示すような、ゴム塗装型アルミニウムリング17Gを用いることにより、リングズレを防止することができる。
ゴム塗装型アルミニウムリング17Gは、アルミニウムリング17の表面にゴムGを塗布したものである。本例では、ゴムの厚さを1.5mmとした。

【0026】
ゴムを塗布した効果を確認するため、アルミニウムリングを使用した二層型アクチュエータ(同図の破線)とゴム塗装型アルミニウムリングを使用した二層型アクチュエータ(同図の実線)について、圧力—収縮率特性とを実際に測定した。その結果を図10のグラフに示す。グラフの横軸はアクチュエータに導入された導入圧力(MPa)で、縦軸は収縮率(%)である。
同図に示すように、ゴム塗装型アルミニウムリングを使用したことで、1.6倍の高圧化を実現できた。これにより、ゴム塗装型アルミニウムリングのリングズレ防止効果を確認することができた。
なお、ゴム塗装型アルミニウムリングを使用した場合、収縮率が若干低下しているが、これは、リング幅が大きくなったため、膨張面積が減少したためと考えられる。

【0027】
また、前記例では、アクチュエータ本体14内に圧縮空気を導入したり、アクチュエータ本体14内から圧縮空気を排出したりして、アクチュエータ10を稼動させたが、水や油などの他の流体を用いてもよい。
また、前記例では、繊維12kとして径が5~15μm程度のカーボンロービング繊維を用いたが、これらの繊維を複数本撚って作製した繊維を用いてもよい。但し、この場合でも、繊維の径を0.1mm以下とすることが好ましく、50μm以下とすれば、更に好ましい。
また、前記例では、リング17を等間隔に2個配置したが、リング数についてはこれに限るものではなく、アクチュエータ10の用途によって適宜設定される。例えば、医療器具として用いられている能動内視鏡などのように、膨張時の最大径に制限があるような場合には、リングの数を増やしてやれば同じ伸び量に対する膨張時の最大径を抑制することができる。
また、流体注入型アクチュエータ10は単独で用いるだけでなく、連結部材を用いて複数個連結して用いることも可能である。

【0028】
このように、本発明によれば、流体注入型アクチュエータの半径方向の膨張を軸方向に効率よく伝達することができるので、アクチュエータの小型化、細型化が可能となる。
したがって、本発明の流体注入型アクチュエータは、ロボットハンドなどのメカトロニクス製品だけでなく、能動カテーテルや能動内視鏡などの医療器具や人工筋肉などにも適用することが可能となる。
また、小さな圧力変化でも大きな引張力を得ることができるので、コンプレッサやポンプ等のアクチュエータの稼動設備についても小型化が図れる。

【0029】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【符号の説明】
【0030】
10 流体注入型アクチュエータ、11 内側筒状部材、
12 繊維層、12k 繊維、13 外側筒状部材、14 アクチュエータ本体、
15a,15b 蓋部材、16a,16b 締付バンド、17 リング、
18a 圧縮空気注入管、18b 空気排出管、19a 注入用の電磁弁、
19b 排気用の電磁弁、20 圧縮空気供給装置、21 制御装置。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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