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明細書 :干渉測定装置および測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5397817号 (P5397817)
登録日 平成25年11月1日(2013.11.1)
発行日 平成26年1月22日(2014.1.22)
発明の名称または考案の名称 干渉測定装置および測定方法
国際特許分類 G01B  11/06        (2006.01)
G01B   9/02        (2006.01)
G01K  11/12        (2006.01)
FI G01B 11/06 G
G01B 9/02
G01K 11/12 H
請求項の数または発明の数 7
全頁数 11
出願番号 特願2010-24491 (P2010-24491)
出願日 平成22年2月5日(2010.2.5)
審査請求日 平成25年2月4日(2013.2.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人名古屋大学
【識別番号】599002043
【氏名又は名称】学校法人 名城大学
【識別番号】508016295
【氏名又は名称】NUシステム株式会社
発明者または考案者 【氏名】堀 勝
【氏名】伊藤 昌文
【氏名】東島 康裕
【氏名】太田 貴之
個別代理人の代理人 【識別番号】100087723、【弁理士】、【氏名又は名称】藤谷 修
特許請求の範囲 【請求項1】
測定物に照射した測定光と、参照光との干渉を測定する干渉測定装置において、
スーパーコンティニューム光を放射する光源と、
前記スーパーコンティニューム光を、前記測定物に照射する前記測定光と、前記参照光とに分割する分割手段と、
前記測定物と同一の分散特性を有した材料からなり、前記測定物との厚さの差が、前記スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長以上である分散補償素子と、
前記測定光または前記参照光の一方の光路長を変化させる光路長変化手段と、
前記分散補償素子により反射された前記参照光と、前記測定物によって反射された前記測定光との干渉を測定する受光手段と、
を備えていることを特徴とする干渉測定装置。
【請求項2】
前記分散補償素子は、前記測定物と同一の材料からなることを特徴とする請求項1に記載の干渉測定装置。
【請求項3】
前記分散補償素子と前記測定物との厚さの差は、前記スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長の1~100倍であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の干渉測定装置。
【請求項4】
前記スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長は、0.5~10μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の干渉測定装置。
【請求項5】
前記測定物は、Si基板であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の干渉測定装置。
【請求項6】
前記受光手段は、前記測定物表面と前記分散補償素子表面での反射による干渉と、前記測定物裏面と前記分散補償素子裏面での反射による干渉と、を測定することによって前記測定物の温度または厚さを測定する手段である、ことを特徴とする請求項1または請求項5のいずれか1項に記載の干渉測定装置。
【請求項7】
測定物に照射した測定光と、参照光との干渉を測定する干渉測定方法において、
スーパーコンティニューム光を測定光と参照光に分割し、
前記測定光を前記測定物に照射し、
前記参照光を、前記測定物と同一の分散特性を有した材料からなり、前記測定物との厚さの差が、前記スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長以上である分散補償素子に照射し、
前記測定光または前記参照光の一方の光路長を変化させ、
前記分散補償素子により反射された前記参照光と、前記測定物によって反射された前記測定光との干渉を測定する、
ことを特徴とする干渉測定方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光の干渉波形から測定物の温度を測定する干渉測定装置、および測定方法に関するものであり、特に干渉に基づく温度等の測定精度が向上されたものに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体プロセスなどのように、薄膜成長や微細加工を行うプロセスでは、基板の温度が薄膜の膜質や加工精度に大きく影響するため、基板の温度制御が非常に重要であり、高精度に温度を測定することが求められる。基板の温度測定には従来、熱電対や蛍光温度計などが用いられている。しかし、熱電対や蛍光温度計は、基板の裏面に接触させて計測するため、接触のさせ方などによって測定誤差が生じる場合がある。また、基板表面側で熱流入があるプラズマ加工プロセスでは、基板そのものの温度を測定することができない。
【0003】
そこで、非接触での温度測定方法が望まれており、たとえば特許文献1などのような、光による干渉を利用した方法が提案されている。これは、以下のような方法である。まず、低コヒーレンス光をスプリッタによって参照光と測定光とに分割し、測定光は測定物に照射して反射させ、参照光はミラーによって反射させる。ミラーは駆動装置によって移動させて参照光の光路長を変化させる。測定物により反射された測定光と、ミラーにより反射された参照光とを干渉させ、干渉波形を測定する。そして、屈折率の温度変化や熱膨張による干渉ピーク位置の温度変化から、温度を測定する。また、測定物表面での反射による干渉ピークと、測定物裏面での反射による干渉ピークが得られるため、測定物の厚さの測定も可能である。光源としては、SLD(スーパールミネッセントダイオード)、LED、スーパーコンティニューム光源などが挙げられる。特にスーパーコンティニューム光(SC光)は、帯域が広くて平坦なスペクトルを有した光であり、コヒーレンス長が短いことから、分解能を向上させて測定精度の向上を図ることができると考えられる。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2006-194679
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしSC光を用いると、測定物による波長分散によって干渉波形が歪み、温度計測の精度が落ちてしまったり、温度計測自体が不可能になってしまう問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、スーパーコンティニューム光源を用いた光の干渉を測定する干渉測定装置および干渉測定方法において、測定の精度を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、測定物に照射した測定光と、参照光との干渉を測定する干渉測定装置において、スーパーコンティニューム光を放射する光源と、スーパーコンティニューム光を、測定物に照射する測定光と、参照光とに分割する分割手段と、測定物と同一の分散特性を有した材料からなり、測定物との厚さの差が、スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長以上である分散補償素子と、測定光または参照光の一方の光路長を変化させる光路長変化手段と、分散補償素子により反射された参照光と、測定物によって反射された測定光との干渉を測定する受光手段と、を備えていることを特徴とする干渉測定装置である。
【0008】
スーパーコンティニューム光(SC光)とは、帯域が広く位相が揃ったスペクトルを有した光である。帯域幅は100~2600nmであることが望ましく、コヒーレンス長は10μm以下であることが望ましい。この範囲であれば、測定精度をより向上させることができる。より望ましいコヒーレンス長は、0.5~10μmであり、さらに望ましいのは0.5~2μmである。
【0009】
本発明に言う「測定物と同一の分散特性を有した材料」とは、測定物の主たる構成材料の分散特性と同一の材料、または、本発明の作用・効果を奏する程度に分散特性が近い材料を言い、完全に測定物と分散特性が等しい材料である必要はない。分散特性が近い材料であれば、測定物とは異なる材料を分散補償素子に用いてもよい。たとえば、測定物がSiである場合、分散補償素子にGaPなどを用いることもできる。また、分散補償素子の厚さは、測定物の厚さに近い方が分散を補償する効果が高く望ましいが、干渉ピークが重ならないように光源が放射するSC光のコヒーレンス長以上の差を設ける必要がある。測定物と分散補償素子との厚さの差は、コヒーレンス長以上であればなるべく小さいことが望ましく、コヒーレンス長の1~100倍であることが望ましい。コヒーレンス長の2~50倍であればさらに望ましい。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、分散補償素子は、測定物と同一の材料からなることを特徴とする干渉測定装置である。
【0011】
ここで言う、測定物と同一の材料とは、測定物の主たる構成材料と同一の材料、もしくは、本発明の作用・効果を奏する程度に類似した材料をいう。
【0012】
第3の発明は、第1の発明または第2の発明において、分散補償素子と測定物との厚さの差は、スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長の1~100倍であることを特徴とする干渉測定装置である。
【0013】
第4の発明は、第1の発明から第3の発明において、スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長は、0.5~10μmであることを特徴とする干渉測定装置である。
【0014】
第5の発明は、第1の発明から第4の発明において、測定物は、Si基板であることを特徴とする干渉測定装置である。
【0015】
第6の発明は、第1の発明から第5の発明において、受光手段は、測定物表面と分散補償素子表面での反射による干渉と、測定物裏面と分散補償素子裏面での反射による干渉と、を測定することによって測定物の温度または厚さを測定する手段である、ことを特徴とする干渉測定装置である。
【0016】
第7の発明は、測定物に照射した測定光と、参照光との干渉を測定する干渉測定方法において、スーパーコンティニューム光を測定光と参照光に分割し、測定光を測定物に照射し、参照光を、測定物と同一の分散特性を有した材料からなり、測定物との厚さの差が、スーパーコンティニューム光のコヒーレンス長以上である分散補償素子に照射し、測定光または参照光の一方の光路長を変化させ、分散補償素子により反射された参照光と、測定物によって反射された測定光との干渉を測定する、ことを特徴とする干渉測定方法である。
【発明の効果】
【0017】
光の干渉を測定する干渉測定装置または干渉測定方法において、光源としてSC光を放射するものを用いていると、測定物による波長分散によって干渉ピークの幅が拡がり、測定精度を低下させてしまう。そこで、本発明の干渉測定装置または干渉測定方法では、参照光を反射させるミラーとして、測定物と同一の分散特性を有した材料からなり、測定物との厚さの差が、SC光のコヒーレンス長以上である分散補償素子を用いている。これにより、測定物裏面での反射と分散補償素子裏面での反射による干渉ピークは、分散が補償されてピーク幅が狭くなり、干渉ピークの位置測定の精度を向上させることができる。その結果、干渉の測定に基づいた測定物の温度、厚さ、屈折率の温度変化などの測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の干渉測定装置の構成を示した図。
【図2】SC光のスペクトルを示したグラフ。
【図3】測定した干渉波形を示した図。
【図4】測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉波形を拡大して示した図。
【図5】測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉波形を拡大して示した図。
【図6】比較例の干渉測定装置を用いた場合の干渉波形を示した図。
【図7】測定物15表面とアルミミラーの反射による干渉波形を拡大して示した図。
【図8】測定物15裏面とアルミミラーの反射による干渉波形を拡大して示した図。
【図9】温度と光路長との関係を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的な実施例について図を用いて説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0020】
図1は、実施例1の干渉測定装置の構成を示した図である。干渉測定装置は、光源10と、光ファイバカプラ11(本発明の分割手段に相当)と、分散補償素子12と、駆動装置13と、受光手段14と、によって構成されている。測定対象である測定物15は、厚さ800μmのSi基板である。
【実施例】
【0021】
光源10は、帯域幅が広く位相が揃った連続スペクトルを有した光であるスーパーコンティニューム光(SC光)を放射する光源である。また、このSC光は、発振周波数50MHzのパルス光である。図2は、SC光のスペクトルを示したグラフである。中心波長は約1.6μmであり、波長1.3~1.9μmまでの広帯域で平坦なスペクトルであることがわかる。コヒーレンス長は約2μmである。
【実施例】
【0022】
なお、SC光のコヒーレンス長は、0.5~10μmが望ましい。この範囲であると、干渉ピークの幅が広がってしまったり、干渉ピーク同士が重なってしまうなどの問題を防止することができ、また干渉ピークも良好に測定することができるため、測定精度を向上させることができる。より望ましいSC光のコヒーレンス長は、0.5~2μmである。
【実施例】
【0023】
光ファイバカプラ11は、2×2ポートの構造であり、入力ポートの一方には光源10からのSC光が入力され、測定光と参照光に分波されて2つの出力ポートから放射される。2つの出力ポートには、それぞれコリメータ16が接続されている。また、他方の入力ポートには受光手段14が接続されている。測定光は測定物15の表面に垂直に照射され、測定物15の表面および裏面により反射され、参照光は分散補償素子12によって反射される。反射された測定光、参照光は元の出力ポートにそれぞれ入射され、測定光と参照光とが合波されて受光手段14に入力される。
【実施例】
【0024】
光ファイバカプラ11以外にも、光源10からの光を測定光と参照光とに分割できる手段であれば任意であり、キューブ型、平板型のビームスプリッタや、導波路型の光分波器などを用いてもよい。ただし、大気による外乱などによって測定精度が低下するのを防止するため、光ファイバカプラを用いることが望ましい。
【実施例】
【0025】
分散補償素子12は、厚さ780μmのSi基板である。つまり、分散補償素子12は、測定物15と同一の材料であり、測定物15よりも20μm薄い。分散補償素子12は、参照光を反射させる面が参照光の光軸に対して垂直となるよう駆動装置13に取り付けられており、参照光の光軸方向へ分散補償素子12を所定幅で移動させることが可能となっている。これにより参照光の光路長を変更することができる。また、分散補償素子12は、室温に置かれている。駆動装置13は、たとえば、ボイスコイルモータ型ディレイライン、ピエゾチューブ型ディレイライン、直動ステージ型ディレイライン、積層ピエゾ型ディレイライン、などである。参照光は、分散補償素子12の表面と裏面で反射されて光ファイバカプラ11に入力され、受光手段14に入力される。
【実施例】
【0026】
なお、分散補償素子12には必ずしも測定物15と同一の材料のものを用いる必要はなく、Siに分散特性の近い材料を用いてもよい。たとえば、GaPなどである。また、分散補償素子12と測定物15との厚さの差は、少なくとも光源10からのSC光のコヒーレンス長以上であればよい。コヒーレンス長未満では、測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉ピークと、測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉ピークとが重なってしまうからである。それら2つの干渉ピークが明確に区別でき、かつ、分散補償の効果を十分とするためには、分散補償素子12と測定物15との厚さの差がコヒーレンス長以上でなるべく小さいことが望ましく、光源10からのSC光のコヒーレンス長の1~100倍とするのが望ましい。2~50倍とするとさらに望ましい。
【実施例】
【0027】
受光手段14は、フォトダイオードであり、測定光と参照光との干渉波形を測定する。干渉波形は、駆動装置13によって分散補償素子12を所定幅で光軸方向へ移動させて走査したときの光強度の変化であり、多数のパルス光の光強度の足し合わせである。フォトダイオード以外にもフォトトランジスタや光電子増倍管などを用いることができる。
【実施例】
【0028】
図3は、実施例1の干渉測定装置を用い、駆動装置13によって分散補償素子12を微小幅で走査して、測定物15の反射による干渉波形を測定した結果を示した図である。図3において、横軸は分散補償素子12の移動距離を光路長に換算した値、縦軸は光強度を示している。測定光は、測定物15の表面および裏面で反射されて受光手段14に達し、参照光は、分散補償素子12の表面および裏面で反射されて受光手段14に達する。そのため、図3のように、干渉のピークは主に4つ見られ、図3中左から順にそれぞれ、測定物15表面と分散補償素子12裏面の反射による干渉、測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉、測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉、測定物15裏面と分散補償素子12表面の反射による干渉、である。また、図4は、測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉波形を拡大して示した図であり、図5は、測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉波形を拡大して示した図である。
【実施例】
【0029】
これら4つの干渉のうち、測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉は、測定光が測定物15内部を透過せず、参照光が分散補償素子12内部を透過しないため、測定物15による波長分散の影響はなく、図4に示されているように干渉ピークの半値幅は約5.9μmと狭い。そのため、干渉ピーク位置を精度よく測定することができる。
【実施例】
【0030】
一方、測定物15表面と分散補償素子12裏面の反射による干渉、および、測定物15裏面と分散補償素子12表面の反射による干渉、では、測定光と参照光のうち一方が、測定物15または分散補償素子12の内部を透過して波長分散の影響を受けるため、干渉波形に歪みを生じている。そのため、干渉ピーク位置の取得精度が劣化してしまう。
【実施例】
【0031】
これに対し、測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉では、測定光と参照光の双方が、測定物15、分散補償素子12によって同程度に波長分散の影響を受けるため、測定光と参照光との干渉において波長分散がほぼ打ち消され、図5に示されているように干渉波形の歪みが補償される。その結果、干渉ピークの半値幅は約4.1μmと非常に狭かった。よって、干渉ピーク位置を精度よく測定することができる。
【実施例】
【0032】
したがって、測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉ピーク位置と、定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉ピーク位置とを用いれば、測定物15の温度等を精度よく計測することができる。
【実施例】
【0033】
比較のため、分散補償素子12に替えてアルミミラーを用い、それ以外の構成は実施例1の干渉測定装置と同様とした干渉測定装置(以下、比較例1の干渉測定装置)を用いて、測定物15の反射による干渉波形を測定した。図6がその干渉波形である。横軸はアルミミラーの移動距離を光路長に換算した値、縦軸は光強度を示している。また、図7は、測定物15表面とアルミミラーの反射による干渉波形を拡大して示した図であり、図8は、測定物15裏面とアルミミラーの反射による干渉波形を拡大して示した図である。
【実施例】
【0034】
測定物15表面とアルミミラーの反射による干渉では、測定物15の波長分散の影響がない。そのため、図4と図7を比較するとわかるように干渉波形はほぼ同様であり、干渉ピークの半値幅は約7μmであった。
【実施例】
【0035】
他方、測定物15裏面とアルミミラーの反射による干渉では、測定光のみが測定物15による波長分散の影響を受けるため、図5と図8を比較するとわかるように干渉波形に歪みを生じており、干渉ピークの半値幅は約20μmと広い。そのため、干渉ピーク位置を精度よく測定することができない。
【実施例】
【0036】
このように、参照光を反射させるミラーとして、分散補償素子12を用いた実施例1の干渉測定装置のほうが、アルミミラーを用いた比較例1の干渉測定装置よりも、干渉ピーク位置をより正確に測定することができる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例1の干渉測定装置を用いて厚さ800μmのSi基板である測定物15を加熱し、測定物15の温度を測定した。なお、分散補償素子12は加熱せず、室温の状態を保った。測定物15および分散補償素子12の厚さ、線膨張係数、屈折率の温度変化を既知として、測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉と、測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉とのピーク位置の差(図3におけるW)の温度変化から求めた。
【実施例】
【0038】
具体的には、以下のようにして求めた。温度がT1からΔT変化したときの測定光の光路長の温度変化ΔLは、温度T1における測定物15の屈折率をn、厚さをd、線膨張係数をα、屈折率の温度変化の係数をβとして、ΔL=n・d・(α+β)・ΔT、の式で表わされる。参照光の光路長の温度変化についても、分散補償素子12が測定物15と同じSiからなるために、厚さdが異なる以外は同様の式で表わされる。一方、干渉波形におけるピーク位置の差Wは、測定物15と分散補償素子12との厚さの差による光路長差に相当する。したがって、ピーク位置の差Wの温度変化を測定すれば、光路長差の温度変化がわかり、上記式から温度を測定することができる。
【実施例】
【0039】
図9は、温度とピーク位置の差Wとの関係を示したグラフである。図9のグラフにおいて、実線の曲線は理論値を示し、正方形のプロットは、上記方法による温度の測定値を示している。図4のように、0~600℃の範囲で測定値は理論値にほぼ一致しており、実施例1の干渉測定装置を用いれば、高精度に測定物15の温度を計測することができることがわかる。
【実施例】
【0040】
また、上記温度計測において、理論値と測定値との計測誤差は±0.4℃であった。一方、分散補償素子12に替えてアルミミラーを用いた比較例1の干渉測定装置により温度計測したところ、温度の測定誤差は±1.7℃であった。また、実施例1の干渉測定装置における分散補償素子12をアルミミラーに替え、かつ光源を中心波長約1580nm、半値幅約40nmのSLD(スーパールミネッセントダイオード)に替え、それ以外の構成は実施例1と同様としたところ、測定誤差は±1.0℃であった。このように、参照光を反射させるミラーとして、分散補償素子12を用いた実施例1の干渉測定装置は、光源としてSLDを用いたり、ミラーとしてアルミミラーを用いた従来の干渉測定装置に比べて、温度の計測精度が向上していることがわかった。
【実施例】
【0041】
なお、実施例1では、測定物15としてSi基板を用いたが、本発明の干渉測定装置は、SC光を反射可能な任意の材料からなる測定物からの反射による干渉測定に利用することができる。
【実施例】
【0042】
また、実施例1では、干渉を用いた測定物15の温度計測の例を示したが、測定物の厚さの計測を行うこともできる。たとえば、分散補償素子12の厚さを既知として、測定物15表面と分散補償素子12表面の反射による干渉と、測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉とのピーク位置の差Wを求めれば、測定物15の厚さを測定することができる。実施例1の干渉測定装置では、測定物15裏面と分散補償素子12裏面の反射による干渉のピーク幅が狭く、そのピーク位置を精度よく測定することができるため、ピーク位置の差Wもまた精度よく測定することができ、したがって測定物15の厚さも精度よく測定することができる。また、測定物15の温度と厚さを同時に計測してもよい。また、温度、厚さを既知として、測定物の屈折率の温度変化を測定することも可能であり、上記と同様の理由により精度よく測定することができる。また、干渉波形をフーリエ変換することで、測定物15の表面および裏面の状態、たとえば表面に付着した不純物の同定など、を精度よく解析することが可能である。
【実施例】
【0043】
また、実施例1では、分散補償素子12を駆動装置13によって移動させて参照光の光路長を変化させているが、逆に分散補償素子12を固定し、測定物15を移動させて測定光の光路長を変化させることで、干渉を生じさせてもよい。また、分散補償素子12や測定物15を移動させる方法以外の方法によって光路長を変化させてもよい。たとえば、強誘電体結晶中を参照光または測定光が透過するようにし、強誘電体結晶に印加する電圧を変化させることで誘電率を変化させて、強誘電体結晶中を透過する参照光または測定光の光路長を変化させるようにしてもよい。
【実施例】
【0044】
また、測定光あるいは参照光をさらに複数に分割し、複数の測定光間、または複数の参照光間に光路長差を設けるようにしてもよい。これにより、複数の測定光のうち1つと参照光との干渉、または、測定光と複数の参照光のうち1つとの干渉を測定するまでの分散補償素子12または測定物15の移動距離を短くすることができ、計測に要する時間を短縮することができる。また、測定光を複数に分割し、それぞれ測定物の異なる位置に照射することで、測定物の面内の温度分布や膜厚分布を測定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の干渉測定装置は、半導体プロセスにおける基板の温度制御などに用いることができる。
【符号の説明】
【0046】
10:光源
11:光ファイバカプラ
12:分散補償素子
13:駆動装置
14:受光手段
15:測定物
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8