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明細書 :金属微粒子の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5408823号 (P5408823)
登録日 平成25年11月15日(2013.11.15)
発行日 平成26年2月5日(2014.2.5)
発明の名称または考案の名称 金属微粒子の製造方法
国際特許分類 B22F   1/02        (2006.01)
B22F   9/14        (2006.01)
B22F   9/12        (2006.01)
C22C  14/00        (2006.01)
FI B22F 1/02 B
B22F 9/14 Z
B22F 9/12 Z
C22C 14/00 Z
請求項の数または発明の数 2
全頁数 8
出願番号 特願2009-57178 (P2009-57178)
出願日 平成21年3月10日(2009.3.10)
審査請求日 平成24年3月2日(2012.3.2)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021288
【氏名又は名称】国立大学法人長岡技術科学大学
発明者または考案者 【氏名】床井 良徳
【氏名】新原 皓一
【氏名】末松 久幸
【氏名】中山 忠親
【氏名】鈴木 常生
【氏名】諏訪 浩司
【氏名】石原 知
個別代理人の代理人 【識別番号】100102299、【弁理士】、【氏名又は名称】芳村 武彦
【識別番号】100151965、【弁理士】、【氏名又は名称】松井 佳章
特許請求の範囲 【請求項1】
有機酸の蒸気又は霧を含む雰囲気中で、直径0.05-1.0mmのチタンを81~100モル%含有する金属により構成された金属細線に0.1-100μ秒の間通電加熱し、金属細線蒸発エネルギーの1.5-5.0倍のエネルギーを投入することを特徴とする、チタンを81~100モル%含有する金属により構成された平均粒径が5-100nmの金属微粒子であって、その表面が有機酸のチタン塩で被覆されている金属微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記有機酸が、炭素数1~18のカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中でも酸化しにくいチタン或いはチタン合金により構成された金属微粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタンは生体親和性が高く、軽量高強度など、特徴的な性能を持つ元素である。チタンを超微粒子化できれば、粉末冶金による複雑形状製品の作製、低温触媒、超高真空用ポンプなど、様々な製品に適用することが可能となる。しかしながら、チタンは銅等の他の金属に比較して酸化の速度が速いために、表面積が大きな微粒子化を試みると、チタンが酸化されて酸化チタンや二酸化チタンが生成する。このようなチタンの酸化を防止するには、金属微粒子中のチタンの含有量を80モル%以下にすることが必要であり、目的とする性状を有する高濃度のチタンを含有する金属微粒子を得ることはできなかった。
【0003】
本発明者等は、これまで有機物蒸気/霧中で金属細線にパルス通電することによって、表面が有機物で被覆された酸化されない金属超微粒子が得られることを見出し、提案してきた(特許文献1、2参照)。また、原料となる金属細線に有機物を塗布してパルス通電する有機物で被覆された金属微粒子の作製方法についても、提案した(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【0004】

【特許文献1】特開2004-107784号公報
【特許文献2】特開2005-272897号公報
【特許文献3】特開2007-254841号公報
【0005】
これらの特許文献に記載された方法は、金属微粒子の表面に原料として用いた有機物を化学変化をさせずに被覆するものであり、ニッケル、銅、錫のような比較的酸化の速度が遅い金属微粒子の表面に、有機物の被膜を形成するのには好適に用いることができる方法である。しかしながら、酸化速度の速いチタンでは、単にこのような方法を使用することによっては、表面に有機物の被膜が均一に形成された耐酸化性に優れたチタン金属微粒子を得ることができなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、これらの従来技術では得ることができなかった、純チタン又はチタンの含有量が80モル%を超えるチタン合金により構成された金属微粒子であって、その表面が有機酸とチタンとの化合物により被覆された、耐酸化性に優れたチタン金属微粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は鋭意検討した結果、チタン金属微粒子表面に被覆する有機物の種類を選択し、かつ金属細線を蒸発させる際に投入するエネルギー量を特定の範囲とすることによって、チタン金属微粒子の表面に有機物とチタンが化合して生成した被膜が形成されることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明はつぎの1.~2.の構成を採用するものである。
1.有機酸の蒸気又は霧を含む雰囲気中で、直径0.05-1.0mmのチタンを81~100モル%含有する金属により構成された金属細線に0.1-100μ秒の間通電加熱し、金属細線蒸発エネルギーの1.5-5.0倍のエネルギーを投入することを特徴とする、チタンを81~100モル%含有する金属により構成された平均粒径が5-100nmの金属微粒子であって、その表面が有機酸のチタン塩で被覆されている金属微粒子の製造方法。
2.前記有機酸が、炭素数1~18のカルボン酸であることを特徴とする1.に記載の金属微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、純チタン又はチタンの含有量が80モル%を超えるチタン合金により構成された平均粒径が5-100nmの金属微粒子であって、その表面が有機酸とチタンとの化合物により被覆された、耐酸化性に優れたチタン金属微粒子を得ることができる。このようなチタン金属微粒子は、粉末冶金による複雑形状製品の作製、低温触媒、超高真空用ポンプをはじめ、小型積層セラミックコンデンサーや電解コンデンサー代替大容量積層セラミックコンデンサーのような次世代電子機器用基盤部品等、様々な製品に適用することが可能であり、極めて実用的価値の高いものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の有機酸のチタン塩で被覆された金属微粒子を製造するのに使用する製造装置の1例を示す模式図である。
【図2】実施例1で作製された金属微粒子の透過型電子顕微鏡写真と電子回折図形であり、作製直後(As-prepared)と2カ月経過後(After 2 monthes)のものである。
【図3】実施例1で、K=2及び4で作製された金属微粒子の粉末X線回折図形である。
【図4】実施例1で作製された金属微粒子の被膜の赤外吸収スペクトルである。
【図5】比較例1で作製された金属微粒子の作製直後の粉末X線回折図形である。
【図6】比較例2で作製された金属微粒子の作製直後の粉末X線回折図形である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
図1は、本発明で有機酸のチタン塩で被覆された金属微粒子を製造するのに使用する製造装置の1例を示す模式図である。
この製造装置1は、有機酸及び不活性ガス導入口2を備えた密閉可能な反応室3内に、金属細線4を保持する電極5を配置し、該電極5にコンデンサー6、及び電源7を接続すると共にギャップスイッチ9を設けたものである。そして、反応室3には生成した金属超微粒子を回収するためのフイルター8が接続されている。製造装置1を構成する各部材の寸法は任意に選択することができるが、例えば反応室3の体積としては、通常は1~10L程度とすることが好ましい。

【0011】
この製造装置1を使用して有機酸のチタン塩で被覆された金属微粒子を製造するには、反応室3内の電極5にチタンを81~100モル%含有する金属により構成された金属細線4を保持させた後に、反応室3内に有機酸を入れて真空排気することにより有機酸蒸気/霧を発生させる。ついで反応室3内に窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性気体を充填した後にコンデンサー6によりパルス電流を通電し、金属細線を蒸発させて有機酸蒸気/霧と不活性ガス中で蒸発した金属を冷却することにより、表面が厚さ1-10nmの有機酸のチタン塩で被覆された、平均粒径が5~100nm程度の金属微粒子を作製する。金属微粒子は、フイルター8を介して脱気することにより回収される。

【0012】
本発明では、金属細線を蒸発させる際に、金属細線蒸発エネルギーの1.5-5.0倍のエネルギーを投入することによって、チタン金属微粒子の表面に有機物とチタンが化合して生成した被膜を形成することに初めて成功したものである。
本発明において、金属細線蒸発エネルギーとは、室温から沸点の金属蒸気を作るために必要なエネルギーを意味する。また、投入エネルギー比(K)とは、原料加熱のために使用したエネルギーを金属細線蒸発エネルギーで割った値である。

【0013】
金属細線を蒸発させる際に投入エネルギー比が1.5倍未満のときには、金属細線の加熱が不均一となり得られる金属微粒子の粒径にばらつきが生じ、粗大な粒子が含まれる。
一方、投入エネルギー比が5.0倍を超えると、有機酸の分解が生じ金属微粒子の表面に均一な有機酸のチタン塩からなる被膜を形成することが困難となる。

【0014】
金属微粒子の表面に被膜を形成するのに使用する有機酸としては、窒素やアルゴン等の不活性ガス中で炭化せずに蒸発/霧化できるものが用いられる。好ましい有機酸としては、アスコルビン酸、アルコール酸、カルボン酸等が挙げられるが、安価で工業的に広く利用されていて、正負の分子基による適度な分極を有して液中分散性がよいオレイン酸、ギ酸、乳酸、ステアリン酸、リノレン酸のような飽和或いは不飽和の炭素数1~18のカルボン酸を使用することが好ましい。

【0015】
本発明では、金属微粒子の表面に形成する被膜を構成する有機物として有機酸を選択し、金属細線を蒸発させる際に特定量のエネルギーを投入することによって、チタンを81~100モル%含有する金属により構成された金属微粒子の表面において、有機酸がチタンと化合して有機酸のチタン塩からなる被膜が形成される。
【実施例】
【0016】
次に、実施例により本発明をさらに説明するが、以下の具体例は本発明を限定するものではない。
(実施例1)
図1に示す内容積が1Lの反応室3を有する製造装置1を使用して、直径0.3mm、長さ20mmのTi線を電極5に保持させた。反応室3内にオレイン酸を入れ、真空排気することによってオレイン酸蒸気/霧を発生させた。不活性ガス供給装置2から窒素ガスを充填して反応室内の圧力を100kPaとし、オレイン酸蒸気/霧を均一に混合させた窒素ガス雰囲気を調製した。Ti線を保持した電極5を6kVに充電した容量10~20μFのコンデンサーに接続し、パルス大電流放電によって4μ秒間Ti線を加熱して蒸発させた。この際、Ti線の蒸発エネルギーは93.2Jであることがわかっている。また、コンデンサーに充電したエネルギーが加熱のために利用したエネルギーであり、これはおのおの180と360Jであった。よって、投入エネルギー比(K)は2倍及び4倍であった。蒸発させた金属をオレイン酸蒸気/霧と窒素ガス中で冷却し、作製した微粒子をフィルター8を介して脱気することにより回収した。
【0017】
図2にK=2で作製された金属微粒子の透過型電子顕微鏡写真と電子回折図形(図の右上部)を示す。作製直後(As preparedと記す)は直径40nmの微粒子からなっており、これが大気中2ヶ月間保存した後(After 2 monthsと記す)でも変化しなかった。図3にK=2及び4で作製された金属微粒子の粉末X線回折図形を示す。この図と図2の電子回折には、金属微粒子の作製直後は六方晶(hcp)の金属チタン(Ti(hcp)と記す)以外のピークは見えない。そして、これを室温、大気中に2ヶ月保存して置いても、酸化物は検出されなかった。
【0018】
また、図4に図2の微粒子 (Ti nanoparticle covered with oleic acidと記す)をアセトンに沈降させた後、上澄み液を取りだして揮発成分を乾燥させた後に測定した赤外吸収スペクトルを示す。また、オレイン酸(Oleic acid)及びオレイン酸チタン(Titanium oleate)のスペクトルも同図に示す。これらのスペクトルを比較した結果、図2の微粒子の被膜はオレイン酸チタンであると判明した。すなわち、窒素ガス中で均一に混合したオレイン酸蒸気/霧とTi微粒子の反応の結果、生成したオレイン酸チタンがTi微粒子を均一に被覆することにより、Ti微粒子の酸化を防止していることが判明した。
本発明の金属微粒子では、極めて酸化されやすいTi金属微粒子が有機酸のチタン塩によって均一に被覆されていることにより、室温、大気中で2ヶ月間保存した後にも酸化されずに金属状態を保ったことが判った。
【0019】
(実施例2)
実施例1において、Ti線に代えてアルミニウム6wt%(10.2モル%)及びバナジウム4wt%(3.6モル%)を含有するチタン合金からなる細線を使用した以外は、実施例1と同様にして金属微粒子を作製し、同様に表面がオレイン酸チタンで被覆された金属微粒子を得た。
【0020】
(比較例1)
図1に示す内容積が1Lの反応室3を有する製造装置1を用いて、直径0.1-0.2mm、長さ20mmのTi線を電極5に保持させた。有機酸を入れずに、反応室3を圧力100kPaの窒素ガスで充填した。Ti線を保持した電極5を6kVに充電した容量10μFのコンデンサーに接続し、パルス大電流放電によってTi線を加熱・蒸発させた。このときの投入エネルギー比は、K=2であった。プラズマの冷却によって作製した微粒子は、フィルター8を介して脱気することにより回収した。これを3回行った。
3回の実験において、得られた金属微粒子の作製直後の粉末X線回折図を図5に示す。全ての微粒子で作製直後から、Ti(hcp)ではないピークが見られた。これはTiO、TiCまたはTiNであると考えられた。よって、実施例1のように有機酸蒸気/霧中で金属微粒子を作製して被覆を施さなければ、純チタンにより構成された金属チタン微粒子は得られないことが明らかとなった。なお、図5中Ti(bcc)は体心立方晶チタンを表す。
【0021】
(比較例2)
実施例1において、Ti線を保持した電極5を6kV充電した30μFのコンデンサーに接続して粒子を作製した以外は、実施例1と同様にして金属微粒子を作製した。このときの投入エネルギー比は、K=6であった。
得られた微粒子の粉末X線回折図形を図6に示す。Ti(hcp)のピークは観察されるものの、それ以外のピークが発現していた。これらのピークは、TiO,TiCまたはTiNからなる化合物のピークであると考えられた。また、これより高い倍率のエネルギーを使用した際にも、同様なTiO,TiCまたはTiNのピークが見られ、金属チタンは得られなかった。よって、投入するエネルギーを細線蒸発エネルギーの5倍程度よりも大きくすると、オレイン酸の分解等のために均一な化合物被覆が形成されず、耐酸化性の被膜を有する純チタンにより構成された金属チタン微粒子が得られないことが判明した。
【0022】
(実施例3)
実施例1において、オレイン酸に代えてラウリン酸を使用した以外は、実施例1と同様にして金属微粒子を作製し、同様に表面がラウリン酸チタンで被覆された金属微粒子を得た。
【0023】
(実施例4)
実施例1において、オレイン酸に代えて酪酸を使用した以外は、実施例1と同様にして金属微粒子を作製し、同様に表面が酪酸チタンで被覆された金属微粒子を得た。
【符号の説明】
【0024】
1 有機酸チタン塩被覆金属微粒子の製造装置
2 不活性ガス供給装置
3 反応室
4 金属細線
5 電極
6 コンデンサー
7 電源
8 フイルター
9 ギャップスイッチ
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5