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明細書 :ミトコンドリアの代謝活性測定方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5477791号 (P5477791)
公開番号 特開2011-205935 (P2011-205935A)
登録日 平成26年2月21日(2014.2.21)
発行日 平成26年4月23日(2014.4.23)
公開日 平成23年10月20日(2011.10.20)
発明の名称または考案の名称 ミトコンドリアの代謝活性測定方法
国際特許分類 C12Q   1/02        (2006.01)
C12Q   1/25        (2006.01)
C12Q   1/66        (2006.01)
FI C12Q 1/02
C12Q 1/25
C12Q 1/66
請求項の数または発明の数 11
全頁数 11
出願番号 特願2010-075564 (P2010-075564)
出願日 平成22年3月29日(2010.3.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 第32回日本分子生物学会年会講演要旨集2P-0372(平成21年11月20日)に発表。
特許法第30条第1項適用 平成21年12月10日パシフィコ横浜において開催された第32回日本分子生物学会年会で発表。
審査請求日 平成23年4月15日(2011.4.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
発明者または考案者 【氏名】藤川 誠
【氏名】吉田 賢右
個別代理人の代理人 【識別番号】100107984、【弁理士】、【氏名又は名称】廣田 雅紀
【識別番号】100102255、【弁理士】、【氏名又は名称】小澤 誠次
【識別番号】100096482、【弁理士】、【氏名又は名称】東海 裕作
【識別番号】100123168、【弁理士】、【氏名又は名称】大▲高▼ とし子
【識別番号】100120086、【弁理士】、【氏名又は名称】▲高▼津 一也
【識別番号】100131093、【弁理士】、【氏名又は名称】堀内 真
審査官 【審査官】白井 美香保
参考文献・文献 特表2007-514407(JP,A)
特表2003-504035(JP,A)
日本生体エネルギー研究会第35回討論会講演要旨集,2009年,p.49-50 O-18 P-18
電子情報通信学会論文誌D,2010年 3月 1日,vol.J93-D no.3,pp.398-408
調査した分野 C12Q 1/00-3/00
CA/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
CiNii
特許請求の範囲 【請求項1】
ストレプトリジンO(StreptolysinO)含有液を用いて細胞をインビトロで透過処理し、該透過処理した細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝活性を測定する方法であって、ストレプトリジンO含有液を添加して15℃以下で反応させた後、細胞透過用低張液を添加して25~45℃で反応させ透過処理を行うことを特徴とするミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項2】
透過処理した細胞に対して、アデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液を添加することを特徴とする請求項1記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項3】
細胞が培養細胞であることを特徴とする請求項1又は2記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項4】
10個以下の細胞を用いて測定を行うことを特徴とする請求項1~のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項5】
プレート上で培養した細胞に対して、直接透過処理を行うことを特徴とする請求項1~のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項6】
区分けされた複数区画の細胞に対して同時に透過処理を行うことを特徴とする請求項1~のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項7】
o1-ATP合成酵素によるATP合成活性を測定することを特徴とする請求項1~のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項8】
ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による発光を検出することによりATP合成活性を測定することを特徴とする請求項1~のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項9】
ミトコンドリア膜電位に関連する蛍光を検出することにより呼吸鎖活性を測定することを特徴とする請求項1~のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項10】
発光又は蛍光を定量することによりATPを定量することを特徴とする請求項又は記載のミトコンドリア代謝活性測定方法。
【請求項11】
ストレプトリジンO含有液と、細胞透過用低張液と、アデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液とを備えたことを特徴とするミトコンドリア代謝活性測定用キット。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイスループットスクリーニングに適用可能なミトコンドリア代謝活性測定法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、哺乳類Fo1-ATP合成酵素のATP合成活性を測定するには、肝臓などの組織や培養細胞からのミトコンドリア画分を調製する必要があった。かかるミトコンドリア画分の調製には、組織や細胞の低張処理後にホモホジナイザーにより細胞膜を破砕して、その抽出液を低速遠心にて核を除去、その抽出液をさらにショ糖勾配を利用した高速遠心してミトコンドリアを沈殿させていた。この調製作業は煩雑な上、ミトコンドリア膜の損傷が問題となっていた。
【0003】
また、培養細胞の場合には、10細胞ほどを集めて、ジギトニンなど穏和な界面活性剤により透過処理を行った上で活性測定する方法も知られている(非特許文献1参照)。この方法も、上記の方法と同様に、細胞の剥離、遠心、洗浄など作業が煩雑であり、さらに、界面活性剤が、細胞膜だけでなくミトコンドリア膜へも損傷を与えるという問題があった。
【先行技術文献】
【0004】

【非特許文献1】Manfredi G, Yang L, Gajewski CD, Mattiazzi M; Methods, 2002 vol. 26 (4) pp. 317-26; Measurements of ATP in mammalian cells
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、ミトコンドリア画分の調製等の従来技術における煩雑さが、哺乳動物細胞を含む高等真核生物におけるTCAサイクル・呼吸鎖・ATP合成という一連のエネルギー代謝研究を困難にしてきた。
本発明の課題は、ミトコンドリア膜の損傷を与えることなく簡便にミトコンドリアの代謝活性を測定できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、哺乳動物細胞を含む高等真核生物におけるTCAサイクル・呼吸鎖・ATP合成という一連のエネルギー代謝に関する研究を進める中で、その作業の煩雑さから研究の障害となっていたミトコンドリアの代謝活性を測定する手法について検討した結果、ストレプトリジンO(StreptolysinO)を用いることにより、ミトコンドリア膜を損傷することなく細胞を透過し、簡便にミトコンドリアの代謝活性を測定することができることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、(1)ストレプトリジンO(StreptolysinO)含有液を用いて細胞をインビトロで透過処理し、該透過処理した細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝活性を測定する方法であって、ストレプトリジンO含有液を添加して15℃以下で反応させた後、細胞透過用低張液を添加して25~45℃で反応させ透過処理を行うことを特徴とするミトコンドリア代謝活性測定方法や、(2)透過処理した細胞に対して、アデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液を添加することを特徴とする上記(1)記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、()細胞が培養細胞であることを特徴とする上記(1)又は2)記載のミトコンドリア代謝活性測定方法に関する。

【0008】
また、本発明は、()10個以下の細胞を用いて測定を行うことを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、()プレート上で培養した細胞に対して、直接透過処理を行うことを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、()区分けされた複数区画の細胞に対して同時に透過処理を行うことを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、()Fo1-ATP合成酵素によるATP合成活性を測定することを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、()ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による発光を検出することによりATP合成活性を測定することを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、()ミトコンドリア膜電位に関連する蛍光を検出することにより呼吸鎖活性を測定することを特徴とする上記(1)~()のいずれか記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、(1)発光又は蛍光を定量することによりATPを定量することを特徴とする上記()又は()記載のミトコンドリア代謝活性測定方法や、(1)ストレプトリジンO含有液と、細胞透過用低張液と、アデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液とを備えたことを特徴とするミトコンドリア代謝活性測定用キットに関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の方法を用いることにより、ミトコンドリア膜の損傷を与えることなく簡便にミトコンドリアの代謝活性を測定できる。また、小スケールで簡便に測定できることから、ハイスループットスクリーニングにも適用することが可能であり、様々な代謝疾患に関わる創薬研究にも大きく貢献する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の測定方法においてルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による発光を検出することによりATP合成活性を測定した結果を示すグラフである(呼吸基質として、コハク酸を使用。)。
【図2】本発明の測定方法においてルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による発光を検出することによりATP合成活性を測定した結果を示すグラフである(呼吸基質として、リンゴ酸及びピルビン酸を使用。)。
【図3】本発明の測定方法においてルミトコンドリア膜電位に関連する発光を検出することによりATP合成活性を測定した結果を示す図である(呼吸基質として、コハク酸を使用。)。
【図4】本発明の測定方法において、βサブユニットをノックダウンした細胞を用いてATP合成活性を測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のミトコンドリア代謝活性測定方法としては、ストレプトリジンO(以下、SLOという。)含有液を用いて細胞を透過処理し、該透過処理した細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝活性を測定する方法であれば特に制限されるものではなく、本発明の方法によれば、SLOを用いて細胞膜のみに穿孔するので、細胞内にあるミトコンドリア膜は無傷な状態が維持される。また、バッファーの交換のみで測定用の細胞を調製することができることから、非常に簡便に測定することが可能となり、例えば区分けされた複数区画を有するプレートを用いて複数区画の細胞を同時に測定することが可能となる。さらに、従来法では、ミトコンドリア調製におけるサンプルのロスが多く、その測定にも10細胞程度の量を要していたが、本発明の方法ではその細胞量を大幅に低減することができる。すなわち、本発明の方法によれば、例えば、10個以下の細胞や10個以下の細胞で測定することが可能であり、500-1000個程度で測定することも可能である。したがって、例えば分裂寿命などのため大量調製できない初代培養細胞などでも適用が可能となり、適用範囲の拡大が図られる。

【0012】
本発明のミトコンドリア代謝活性測定方法において用いる細胞としては、哺乳動物等の生体から採取した細胞であってもよいし、培養した細胞であってもよい。培養した細胞を用いる場合には、培養したプレートに処理液を直接添加して処理することが好ましく、これにより効率的に測定を進めることができる。特に、区分けされた複数区画を有するプレート(マルチウェルプレート)を用いて培養する場合には、上記のように複数区画の細胞に対して同時に透過処理を行うことができることから、非常に効率的である。

【0013】
本発明の方法においては、まずSLO含有液を細胞に添加し反応させるが、その反応温度としては、15℃以下であることが好ましく、10℃以下であることがより好ましい。また、SLO含有液の濃度としては、0.5~100μg/mLであることが好ましく、10~50μg/mLであることがより好ましい。この反応により、細胞膜にSLOが挿入されると考えられる。なお、常に一定の細胞膜透過処理を行うため、例えばDTT(ジチオスレイトール)を用いて、SLOを還元処理することが好ましい。

【0014】
SLO含有液で処理した後、細胞透過用低張液を添加して反応を行う。細胞透過用低張液としては、用いる細胞等に応じて従来公知の細胞用低張液を適宜使用することができる。反応温度としては、25~45℃であることが好ましく、30~40℃であることがより好ましい。これにより、細胞膜に穿孔し、細胞内物質を細胞外に排出して細胞を透過することができる。

【0015】
なお、上記SLO含有液及び細胞透過用低張液を用いた透過処理は、処理された細胞全体の少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の細胞が確実に処理されていることが重要である。細胞が確実に透過処理されているか否かの確認は、例えば、透過処理した細胞に対して、細胞質由来エステラーゼの加水分解によって蛍光を発する蛍光基質を添加して、蛍光顕微鏡で蛍光を発しないことを確認することにより行うことができ、これを利用して最適条件を設定することができる。

【0016】
透過処理された細胞に対しては、アデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液を添加することが好ましい。アデニル酸キナーゼ阻害剤(Ap5A)の濃度としては、次工程で添加するADPに対して、1~3倍モルであることが好ましく、1~2倍モルであることがより好ましい。なお、次工程で添加するADPは、細胞の種類等によっても異なるが、好ましくは50~200μMである。これにより、細胞に存在する他のATP合成酵素を阻害して、ミトコンドリアにおけるFo1-ATP合成酵素によるATP合成活性を正確に測定することが可能となる。

【0017】
続いて、従来公知の方法を用いてATP合成活性等のエネルギー代謝活性を測定することができる。例えば、ADP、呼吸基質を添加し、ルシフェリン・ルシフェラーゼ反応による発光をフォトメーターで測定(定量)してATP量を定量することができる。また、ミトコンドリア膜電位に関連する蛍光を検出することによりATP合成の前段階である呼吸活性を測定(定量)してもよい。

【0018】
ここで、呼吸基質とは、TCAサイクルや呼吸鎖を駆動させることが可能な物質であり、コハク酸、ピルビン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸等を例示することができる。これらは、必要に応じて2種以上組み合わせて用いることが好ましく、例えば、ピルビン酸及びリンゴ酸の組み合わせ、アスコルビン酸及びTMPD(テトラメチル-p-フェニレンジアミン)の組み合わせを例示することができる。また、ADPと共に、この呼吸基質を適宜選択して添加することにより、TCA回路、呼吸鎖、Fo1-ATP合成酵素の機能を調査することが可能となる。

【0019】
上記の本発明のミトコンドリア代謝活性測定方法に用いられるバッファーを組み合わせてミトコンドリア代謝活性測定用キットとすることができる。かかるミトコンドリア代謝活性測定用キットとしては、具体的には、SLO含有液と、細胞透過用低張液と、アデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液とを備えた測定用キットを例示することができる。
【実施例1】
【0020】
1.細胞の準備
HeLa細胞を、2,500-5,000細胞/ウェルで96ウェル白プレートに播種し、COインキュベーターにて24時間培養した。培養後の細胞数は、5000-10000細胞/ウェル程度であった。
【実施例1】
【0021】
2.SLOの活性化
99.7μLの0.2mg/mlのSLO水溶液、11.2μLの10×SLO活性化反応液(115mM KOAc、25mM HEPES[pH7.4]、2.5mM MgCl)、及び1.12μLの1M DTT(ジチオスレイトール)を37℃で30分還元反応を行った。還元終了後は、氷上で保存し1時間以内に以下の細胞処理に使用した。なお、容量は96ウェルプレートの10ウェル分で表記する(以下同様。)。
【実施例1】
【0022】
3.反応液等の調製
SLO処理反応液(SLO含有液)として、25mM HEPES[pH7.3]、125mM KOAc、2.5mM Mg(OAc)、1mM DTT、前項で調製した活性化SLO溶液、及びプロテアーゼ阻害剤(ロッシュ社製)を1mL調製し、氷上で保存した。
細胞透過反応液(細胞透過用低張液)として、25mM HEPES-KOH[pH7.4]、115mM KOAc、2.5mM MgCl、1mM DTT、2mM EGTA、プロテアーゼ阻害剤(ロッシュ社製)を2mL調製し、室温で保存した。
5倍濃縮の活性測定用反応液として、750mM KCl、125mM Tris-HCl、10mM EDTA、0.5% ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)、50mM KPO、及び0.5mM MgClをpH7.4に塩酸で調製した。
洗浄液として、1×活性測定用反応液を4mL調製した。
アデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液として、1×活性測定用反応液、及び150μM Ap5A(P1P5-di(adenosine-5’) pentaphosphate)を400μL調製した。
代謝活性化反応液として、呼吸基質としての5mM コハク酸、100μM ADP、2% DMSO、5mM MgCl、1×活性測定用反応液、並びにルシフェリン及びルシフェラーゼを含むATP定量用反応液(ロッシュ社製)を400μL調製した。また、別途、ATP阻害剤であるオリゴマイシン(10μg/mL)、ロテノン(400μM)、アトラクチロシド(100μM)、CCCP(5μM)、KCN(5mM)、TTFA(100μM)をそれぞれ添加したものも調製した。
【実施例1】
【0023】
4.細胞の透過処理及び代謝活性測定
細胞を培養した96ウェルプレートの培地を除去し、PBS(-)で2回洗浄した。氷上にプレートを移し、100μL/ウェルで上記SLO処理反応液を加え、氷上で10分間反応させた。SLO処理反応液を除去し、100μL/ウェルで細胞透過反応液を加えて、それを除去した。さらに、細胞透過反応液を100μL/ウェルで加え、37℃で10分間反応させた。細胞透過反応液を除去して、洗浄液を200μL/ウェル加えて除去する操作を2回行った。2回洗浄して洗浄液を除去したウェルにアデニル酸キナーゼ阻害剤を含む測定用反応液を40μLウェルで加えた。測定直前に、代謝活性化反応液を加えフォトメーターにセットしてルシフェラーゼによる発光を測定した。
【実施例1】
【0024】
5.蛋白質量の測定
ルシフェラーゼによる発光測定終了後、PBS(-)で2回洗浄して、1%SDSを含むPBS(-)を40μL/ウェルで加えて室温で10分間可溶化した。可溶化した試料をModified Lowry蛋白質定量法を用いて蛋白質量を測定した。
【実施例1】
【0025】
6.解析
ATPの検量線から各ウェルのATP濃度を計算し、測定開始時のATP量をゼロとした。各ウェルの蛋白質量当たりのATP量を計算して標準化した。
【実施例1】
【0026】
その結果を図1に示す。ATP合成阻害剤を添加していないもの(DMSO)は、ATP量が増加しているのに対して、ATP阻害剤を添加したものはATP量が増加しておらず、適切にATP合成活性が測定できていることがわかる。なお、ロテノンは、呼吸鎖複合体Iの阻害剤であり、コハク酸を呼吸基質とした場合には、ATP合成への影響はほとんどないことが明らかになっている。
【実施例2】
【0027】
実施例1と同様にATP合成活性を測定した。ただし、代謝活性化反応液における呼吸基質は、1mM リンゴ酸及び1mM ピルビン酸の組み合わせを用いた。
また、ATP阻害剤としては、10μg/mL オリゴマイシン、400μM ロテノン、100μM TTFA、5mM マロン酸、100μM カルボキシンを用いた。
【実施例2】
【0028】
その結果を図2に示す。実施例1と同様に、ATP合成阻害剤を添加していないもの(DMSO)は、ATP量が増加しているのに対して、ATP阻害剤を添加したものはATP量が増加しておらず、適切にATP合成活性が測定できていることがわかる。
【実施例2】
【0029】
なお、呼吸基質としてコハク酸を用いた図1においてはロテノンでATP合成が阻害されていないのに対して、呼吸基質としてリンゴ酸及びピルビン酸の組み合わせを用いた図2においてはロテノンでATP合成が阻害されることが示されている。すなわち、ロテノンは呼吸鎖複合体1を阻害するものであるところ、コハク酸は呼吸鎖複合体2を活性化するので影響を受けないが、リンゴ酸及びピルビン酸の組み合わせは呼吸差複合体1を活性化するので、ロテノンによる阻害を受けることが示されている。この結果は、呼吸鎖複合体1および呼吸鎖複合体2の機能を区別して調べられることを示している。
【実施例3】
【0030】
HeLa細胞を顕微鏡観察用のガラス底ディッシュ上で培養した。実施例1と同様に細胞の透過処理を行い、活性化測定用反応液を添加した。さらに、ルシフェリン及びルシフェラーゼを含むATP定量用反応液(ロッシュ社製)に代えてTMRE(Molecular Probes社製)を含む代謝活性化反応液を添加して、蛍光顕微鏡によりTMREの蛍光を観察した。
【実施例3】
【0031】
図3の上段に蛍光顕微鏡写真を示す。図の左側から、添加前(2分前)、5分後、20分後、CCCP(5μM)添加後のものを示す。また、図3の下段は、これらの蛍光強度を定量化して、プロットしたものである。
【実施例3】
【0032】
図3に示すように、蛍光顕微鏡観察においても本件の方法は有効であることがわかる。また、ミトコンドリア膜電位の脱共役剤であるCCCPを添加することにより、膜電位が低下しており、膜電位の変化が有効に測定できていることがわかる。図1及び図3から、CCCPによる膜電位の消失とFo1-ATP合成酵素によるATP合成活性が対応していることがわかる。
【実施例4】
【0033】
shRNAを発現するレトロウイルスを用いて、Fo1-ATP合成酵素の触媒サブユニットであるβをノックダウンした(shMock: ◇、shBeta-1: □、shBeta-2: △、shBeta-3: ○)。「shMock」は、ベクターコントロールを導入したHeLa細胞を示し、「shBeta-1」~「shBeta -3」は、βのmRNA配列から異なる標的配列を含むshRNAを発現したHeLa細胞を示す。これらのノックダウン細胞を用いて、実施例1と同様にATP合成活性を測定した。また、代謝活性化反応液に、10μg/mL オリゴマイシンを添加したものについても測定した。
【実施例4】
【0034】
図4の左上段は、非変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の後、βに対する抗体でウエスタンブロッティングを行ったものを示し、左下段の2つは、SDSによる変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動の後、βに対する抗体でウエスタンブロッティングしたものと、電気泳動したゲルをCBB染色した像を示す。右側のグラフは、これらのノックダウン細胞を用いて、ATP合成活性を測定した結果を示すグラフであり、黒で塗りつぶされたシグナルは、オリゴマイシンを添加したものである。
【実施例4】
【0035】
図4に示すように、触媒サブユニットβの発現がほぼ完全に抑えられた細胞shBeta-3は、ATP合成活性が全くないことがわかる。このことからも、今回ルシフェラーゼによる発光で検出したATPの増加が、Fo1-ATP合成酵素に由来していることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明は、ピルビン酸からTCAサイクル・呼吸鎖・ATP合成およびATP/ADPトランスポーターを介した一連のエネルギー代謝活性を簡便に測定でき、これらに関わる代謝研究に有用である。多検体サンプルを同時に測定することが可能なので、様々な薬剤を処理した細胞を用いることで、その薬剤のエネルギー代謝への影響を調べることができる。これは代謝異常に対する創薬研究への発展が期待される。また、cDNAライブラリーやsiRNAライブラリーを用いるなどしてエネルギー代謝に関わる遺伝子の網羅的な同定も潜在的に可能である。また、従来方法と比べて顕著に少ないサンプルで測定可能であるので代謝異常の患者から採取された細胞を用いて、機能不全となっている箇所を同定することもできる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3