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明細書 :レーザ加工装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5357790号 (P5357790)
公開番号 特開2011-152578 (P2011-152578A)
登録日 平成25年9月6日(2013.9.6)
発行日 平成25年12月4日(2013.12.4)
公開日 平成23年8月11日(2011.8.11)
発明の名称または考案の名称 レーザ加工装置
国際特許分類 B23K  26/36        (2006.01)
B23K  26/067       (2006.01)
B23K  26/06        (2006.01)
H01S   3/00        (2006.01)
FI B23K 26/36
B23K 26/067
B23K 26/06 Z
H01S 3/00 B
請求項の数または発明の数 4
全頁数 19
出願番号 特願2010-016824 (P2010-016824)
出願日 平成22年1月28日(2010.1.28)
審査請求日 平成24年12月19日(2012.12.19)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304036743
【氏名又は名称】国立大学法人宇都宮大学
発明者または考案者 【氏名】早崎 芳夫
【氏名】伊坂 充弘
【氏名】田北 啓洋
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100117226、【弁理士】、【氏名又は名称】吉村 俊一
審査官 【審査官】田合 弘幸
参考文献・文献 特開2008-205486(JP,A)
特開2010-142862(JP,A)
特開2007-069300(JP,A)
特開2005-014059(JP,A)
特開2006-068762(JP,A)
特開2006-212646(JP,A)
調査した分野 B23K 26/00-26/42
特許請求の範囲 【請求項1】
極超短パルスレーザ光を加工対象物に照射し、当該極超短パルスレーザ光のエネルギーによって加工対象物に加工を行うレーザ加工装置であって、
所定のパルスを有する第1極超短パルスレーザ光及び第2極超短パルスレーザ光を出力するレーザ光出力手段と、
前記第2極超短パルスレーザ光に前記第1極超短パルスレーザ光に対する前記パルス幅以上の遅延時間を与える光遅延手段と、
前記第1極超短パルスレーザ及び前記第2極超短パルスレーザ光を前記加工対象物における異なる位置に照射させる照射制御手段と、
を備え、
前記照射制御手段が、
前記加工対象物の第1位置に多光子吸収過程によりレーザ励起プラズマを発生させるために前記第1極超短パルスレーザ光を照射させるとともに、前記発生したレーザ励起プラズマが前記第1位置から拡散して存在している領域内であって当該第1位置と異なる前記加工対象物上の第2位置に、前記第2極超短パルスレーザ光を照射させ
前記第2位置が、前記第1位置から離隔した前記加工対象物上の位置であって、前記第1位置に照射された第1極超短パルスレーザと前記第2極超短パルスレーザが干渉しない位置であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
請求項1に記載のレーザ加工装置において、
前記照射制御手段が、同一の光学レンズによって、前記第1極超短パルスレーザ光及び前記第2極超短パルスレーザ光を前記加工対象物上の第1位置及び第2位置のそれぞれに照射させる、レーザ加工装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のレーザ加工装置において、
前記光遅延手段が、前記第1極超短パルスレーザ光が非照射状態になったときに前記第2極超短パルスレーザ光が前記第2位置に照射されるように、前記第2極超短パルスレーザ光に所定の遅延時間を与えるレーザ加工装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載のレーザ加工装置において、
前記第1極超短パルスレーザ光を複数に分割するとともに、前記第2極超短パルスレーザ光を前記第1極超短パルスレーザ光の分割数と同じ数に分割する分割手段を更に備え、
前記照射制御手段が、前記分割された各第1極超短パルスレーザ光をそれぞれ該当する前記第1位置に照射させるとともに、前記分割された各第2極超短パルスレーザ光を当該第1位置に対応する第2位置にそれぞれ照射させる、レーザ加工装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のレーザ光を用いて加工対象物を加工するレーザ加工装置に関し、特に超短パルスを用いる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザ加工装置においては、多光子吸収過程によりレーザ励起プラズマを発生させることによって非熱的な加工を行うことができる高出力超短パルスレーザに注目が集まっている。特に、時間単位を「フェムト」(千兆分の一)単位によって発光されたフェムトレーザ光を用いた加工装置(以下、「フェムトレーザ加工装置」という。)は、短時間にエネルギーを圧縮して発振する強力なレーザ光を極めて細かい範囲に照射することができるので、ナノメートルスケールの微細加工または高精度かつ高品質の加工を行うことができるものとして製品開発が行われている。
【0003】
例えば、光パルスあたりのエネルギーを高め、加工効率を向上させるために、2つのレーザ光を用いてレーザ加工を行うダブルパルス法を適用したフェムトレーザ加工装置(以下、「ダブルパルスレーザ加工装置」という。)が知られている(例えば、特許文献1)。
【0004】
具体的には、このダブルパルスレーザ加工装置は、一定のパルス間隔で被加工物の同一位置に2つのレーザ光を照射するとともに、この同一位置を所定の照射間隔で走査することによって被加工物に対して加工を行うようになっている。
【0005】
また、面状加工を短時間で行うために、複数のレーザ光を加工対象物に並列に照射するフェムトレーザ加工装置(以下、「並列レーザ加工装置」という。)も知られている(例えば、特許文献2)。
【0006】
具体的には、この並列レーザ加工装置は、空間光変調素子に計算機ホログラムを表示してフェムト秒レーザパルスを空間的に整形して加工対象に同時並列的に照射し、可変並列の加工を実現している。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2006-212646号公報
【特許文献2】特開2006-68762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のダブルパルスレーザ加工装置にあっては、一度の照射で加工対象物における単一の焦点位置のみが加工されるので、面状加工を行う場合には、レーザ光を複数回に渡り面状加工範囲に照射する必要があるため、加工時間を短縮することは難しい。また、上述の並列レーザ加工装置にあっては、ダブルパルスレーザ加工装置よりは加工時間を短縮させることができるが、複数のレーザパルス光がそれぞれ加工対象物に作用するので、加工効率を向上させるには限界がある。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、その目的は、微細加工及び高精度かつ高品質の加工を行うことができるとともに、高い加工効率を有し、かつ、レーザ光の照射回数を少なくして任意の形状加工においても短時間に加工可能なレーザ加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上記課題を解決するため、本発明は、極超短パルスレーザ光を加工対象物に照射し、当該極超短パルスレーザ光のエネルギーによって加工対象物に加工を行うレーザ加工装置であって、第1極超短パルスレーザ光及び第2極超短パルスレーザ光を出力するレーザ光出力手段と、前記第2極超短パルスレーザ光に前記第1極超短パルスレーザ光に対する所定の遅延時間を与える光遅延手段と、前記第1極超短パルスレーザ及び前記第2極超短パルスレーザ光を前記加工対象物における異なる位置に照射させる照射制御手段と、を備え、前記照射制御手段が、前記加工対象物の第1位置に多光子吸収過程によりレーザ励起プラズマを発生させるために前記第1極超短パルスレーザ光を照射させるとともに、前記発生したレーザ励起プラズマが前記第1位置から拡散して存在している領域内あって当該第1位置と異なる前記加工対象物上の第2位置に、前記第2極超短パルスレーザ光を照射させることを特徴とする。
【0011】
この構成により、本発明は、第1極超短パルスレーザ光によって発生させ、かつ、第1位置から拡散しているレーザ励起プラズマに対して第2極超短パルスレーザ光によって増強吸収を引き起こさせることができる。すなわち、本発明は、2つの極超短パルスレーザによって加工効率を向上させることができるとともに、第1位置と第2位置の異なる位置に極超短パルスレーザ光を照射することによって広い加工範囲をも確保することができる。したがって、本発明は、高精度かつ高品質に微細加工を行うことができるという極超短パルスレーザ光を用いることによって得られる効果に加えて、加工効率を向上させること、及び、レーザ照射回数を少なくすることによって短時間で加工対象物の加工を実行可能にすること(スループットの向上)を両立させることができる。
【0012】
(2)また、本発明は、前記照射制御手段が、前記第2極超短パルスレーザ光を、前記第1位置から離隔した第2位置に照射させる構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明は、第1極超短パルスレーザ光と第2極超短パルスレーザ光とを空間的に干渉させずに加工対象物にそれぞれ照射させることができるで、本発明は、第1極超短パルスレーザ光によって発生させ、かつ、第1位置から拡散しているレーザ励起プラズマに対して第2極超短パルスレーザ光によって増強吸収を引き起こさせることができる。
【0014】
(3)また、本発明は、前記光遅延手段が、前記第1極超短パルスレーザ光が非照射状態になったときに前記第2極超短パルスレーザ光が前記第2位置に照射されるように、前記第2極超短パルスレーザ光に所定の遅延時間を与える構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明は、第1極超短パルスレーザ光と第2極超短パルスレーザ光とを空間的に干渉させずに加工対象物にそれぞれ照射させることができるで、本発明は、第1極超短パルスレーザ光によって発生させ、かつ、第1位置から拡散しているレーザ励起プラズマに対して第2極超短パルスレーザ光によって増強吸収を引き起こさせることができる。
【0016】
(4)また、本発明は、前記レーザ光出力手段が、パルス幅が100×10-12秒以下の前記第1極超短パルスレーザ光及び前記第2極超短パルスレーザ光を出力する構成を有している。
【0017】
この構成により、本発明は、パルス幅が10×10-12秒以下の第1極超短パルスレーザ光及び第2極超短パルスレーザ光によって加工対象物の加工を行うことができるので、微細加工及び高精度かつ高品質の加工を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明は、2つの極超短パルスレーザによって加工効率を向上させることができるとともに、第1位置と第2位置の異なる位置に極超短パルスレーザ光を照射することによって広い加工範囲をも確保することができる。
【0019】
したがって、本発明は、高精度かつ高品質に微細加工を行うことができるという極超短パルスレーザ光を用いることによって得られる効果に加えて、加工効率を向上させること、及び、レーザ照射回数を少なくすることによって短時間で加工対象物の加工を実行可能にすること(スループットの向上)を両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係るレーザ加工システムの第1実施形態における構成を示すブロック図である。
【図2】ダブルパルスレーザ加工装置の効果を説明するための図である。
【図3】第1実施形態における時間差及び距離差を与えた場合の加工箇所の位相変化を示す表である。
【図4】第1実施形態における時間差及び距離差を与えた場合の加工箇所の位相変化を示すグラフである。
【図5】第1実施形態における本実施形態のレーザ加工システムにおける時間差の相違における加工箇所(集光スポット)の位相変化と加工痕を示す図である。
【図6】第1実施形態における本実施形態のレーザ加工システムにおける距離差の相違における加工箇所(集光スポット)の加工痕を示す図である。
【図7】第1実施形態における本実施形態のレーザ加工システムにおける距離差の相違における加工箇所(集光スポット)の位相変化を示すグラフである。
【図8】第1実施形態の光遅延素子における変形例の構造を示す図である。
【図9】第1実施形態の光遅延素子及び後適合光学調整部における変形例を示す図である。
【図10】本発明に係るレーザ加工システムの第2実施形態における構成を示すブロック図である。
【図11】第1実施形態のレーザ加工システムにおける変形例(I)のシステムブロック図である。
【図12】第実施形態のレーザ加工システムにおけるその他変形例(II)のシステムブロック図である。
【図13】本発明に係るレーザ加工システムの第2実施形態における構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、パルス幅がフェムト秒単位のパルスレーザビーム(以下、「フェムトレーザビーム」という。)を用いて加工対象物の加工を行うレーザ加工システムについて本発明のレーザ加工装置を適用したものである。

【0022】
<第1実施形態>
はじめに、図1~図9の各図を用いて本発明に係るレーザ加工システムSの第1実施形態について説明する。

【0023】
[レーザ加工システムの概要と構成]
まず、図1を用いて本実施形態のレーザ加工システムSの概要とその構成について説明する。なお、図1は、本実施形態におけるレーザ加工システムSの構成を示すブロック図であり、図2は、ダブルパルスレーザ加工装置の効果を説明するための図である。

【0024】
本実施形態のレーザ加工システムSは、図1に示すように、フェムトレーザビームを生成して出力するレーザ光源100と、出力されたフェムトレーザビームに対して所定の調整を行う前適合光学調整部200と、前適合光学調整部200によって調整されたフェムトレーザビームの一部に所定の遅延時間を与える光遅延素子300と、を備えている。

【0025】
また、このレーザ加工システムSは、フェムトレーザビームを複数のビームに分割するビーム分割素子400と、分割されたフェムトレーザビームを加工対象物Mに照射するために所定の調整を行う後適合光学調整部500と、を備えている。

【0026】
なお、例えば、本実施形態のレーザ光源100は、本発明のレーザ光出力手段を構成し、光遅延素子300は、本発明のレーザ出力手段及び光遅延手段を構成する。また、例えば、本実施形態のビーム分割素子400及び後適合光学調整部500は、本発明の照射制御手段を構成する。

【0027】
本実施形態のレーザ加工システムSは、レーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームの一部を遅延させ、加工対象物Mに時間差を与えてフェムトレーザビームを異なる集光スポットSPに集光(照射)することによって加工対象物Mを加工するようになっている。

【0028】
特に、このレーザ加工システムSは、加工対象物Mの加工を行う所定の集光スポット(以下、「第1位置」ともいう。)SPに遅延を生じていないフェムトレーザビーム(以下、「第1フェムトレーザビーム」という。)を照射(集光)し、当該第1位置から処置の距離離隔されている集光スポット(以下、「第2位置」ともいう。)SPに遅延を生じさせたフェムトレーザビーム(以下、「第2フェムトレーザビーム」という。)を照射(集光)して加工効率を向上させつつ、広い加工範囲を確保するようになっている。

【0029】
通常、上述したダブルパルスレーザ加工装置によって加工対象物Mの所定の集光スポットにフェムトレーザビームを集光させると、各原子に対して多光子吸収が起こり、プラズマ(すなわち、レーザ励起プラズマ)が励起される。そして、さらにダブルパルスレーザ加工装置によって同一の集光スポットSPに所定時間遅延させたフェムトレーザビームを集光させると、当該発生されたレーザ励起プラズマに増強吸引を引き起こさせることができるので、当該レーザ励起プラズマの発光強度が向上する。例えば、図2に示すように、単一のパルス(フェムトレーザビーム)のエネルギー(100nJ)と同一のエネルギー(50nJ×2)で2つのフェムトレーザビームを照射すると、加工痕の位相変化が大きくなる。したがって、ダブルパルスレーザ加工装置においては、加工効率を向上させることができるようになっている。

【0030】
しかしながら、このダブルパルスレーザ加工装置においては、2つのフェムトレーザビームが単一の集光スポットに集光されるので、線上加工または面状加工など広い加工範囲を確保するためには、複数のレーザビームを並列に同時に照射するラインビームなどによって一度に多くのレーザビームを広い領域に照射させる必要がある。

【0031】
一方、一度に加工対象物Mに対して広い領域にフェムトレーザビームを数多く照射する並列レーザ加工装置においては、隣接するレーザビームが干渉(パルス干渉)して空間分布(加工対象物Mの加工面上における光強度分布)を乱すことになるので、それぞれのフェムトレーザビームについてはパルス幅以上離して照射させることが必要である。このため、微細加工及び高精度かつ高品質の加工を行うことに限界がある。特に、ダブルパルスレーザ加工装置についても、並列レーザ加工装置に適用させることができるが、上述と同様に、隣接するレーザビームが干渉(パルス干渉)して空間分布(加工対象物Mの加工面上における光強度分布)を乱すことになるので、微細加工及び高精度かつ高品質の加工を行うことに限界がある。

【0032】
そこで、本実施形態のレーザ加工システムSは、上述のように、2つのフェムトレーザビームを時間的にかつ空間距離的に差異(すなわち、時間差及び距離差)を与えて加工対象物Mに照射することによって、第1フェムトレーザビームによって発生させたレーザ励起プラズマに対して第2フェムトレーザビームによって増強吸引を引き起こさせることができるので、レーザ励起プラズマを効率よく励起することができるとともに、一度に加工対象物Mにおける異なる位置に複数のフェムトレーザパルスを照射することができるので、広い加工範囲をも確保することができるようになっている。

【0033】
すなわち、第1フェムトレーザビームによって励起したレーザ励起プラズマが第1位置から外側に向かって拡散し、当該拡散したレーザ励起プラズマに対してさらに第2フェムトレーザビームを集光させると、第1フェムトレーザビームにおける多光子吸収を利用して加工効率を図りつつ、2つのフェムトレーザビームを別々の場所に照射することによって加工範囲を拡大することができるようになっている。

【0034】
したがって、本実施形態のレーザ加工システムSは、高精度かつ高品質に微細加工を行うことができるという極超短パルスレーザ光を用いることによって得られる効果に加えて、加工効率を向上させること、及び、レーザ照射回数を少なくすることによって短時間で加工対象物Mの加工を実行可能にすること(スループットの向上)を両立させることができるようになっている。

【0035】
[システム構成]
次に、上述の図1を用いて本実施形態のレーザ加工システムSにおける各部の詳細について説明する。

【0036】
レーザ光源100は、パルス幅がフェムト秒単位のパルスレーザビームを生成し、出力する装置である。また、このレーザ光源100は、例えば、1パルスのレーザビームエネルギーが10nJ~100μJ程度であって、50fsのパルス幅を有するフェムトレーザビームを単一パルス毎に出力するようになっている。

【0037】
なお、フェムトレーザビームのパルス幅は、前適合光学調整部200、光遅延素子300及び後適合光学調整部500を通過することによって広くなるので、その点を考慮してパルス幅を設定する必要がある。

【0038】
前適合光学調整部200は、レーザ光源100と光遅延素子300との間に形成されており、入力されたフェムトレーザビームに対してその断面におけるエネルギー分布を均一化するとともに、フェムトレーザビームのビーム径及びそのビーム強度を調整などビーム分割素子400または後適合光学調整部500に適切なレーザビームを入射させるための所定の処理を行うようになっている。そして、この前適合光学調整部200は、所定の処理が為されたフェムトレーザビームの一部を光遅延素子300に出力し、その他のフェムトレーザビームをビーム分割素子400に出力するようになっている。

【0039】
光遅延素子300は、前適合光学調整部200とビーム分割素子400との間に配設されている。また、この光遅延素子300は、前適合光学調整部200から出力されたフェムトレーザビームの一部を分割して当該分割された位置のフェムトレーザに所定の遅延時間を与えるようになっている。

【0040】
また、光遅延素子300は、遅延時間が与えられたレーザビーム(第2フェムトレーザビーム)をビーム分割素子400に出力するようになっている。なお、その他のレーザビーム(第1フェムトレーザビーム)については光遅延素子300を経由せずに、ビーム分割素子400に入力されるようになっている。

【0041】
具体的には、本実施形態の光遅延素子300は、ガラスによって形成されており、その厚さを調整することによってフェムトレーザビームに与える遅延時間を変更することができるようになっている。例えば、レーザ光源100から出力されているフェムトレーザビーム(パルス幅100fs)に10psの遅延時間を与える場合には、ガラスの厚さ「L」は、(式1)から6mmとなる。ただし、(式1)において「C」が光速であり、空気の屈折率(n0)=1.0及びガラスの屈折率(n1)=1.5を用いる。

【0042】
【数1】
JP0005357790B2_000002t.gif

【0043】
なお、第2フェムトレーザビームに与えられる遅延時間(以下、単に「時間差」ともいう。)の詳細については後述する。

【0044】
ビーム分割素子400は、光遅延素子300と後適合光学調整部500の間に配設されている。また、このビーム分割素子400には、遅延時間が生じていない第1フェムトレーザビーム及び所定の遅延時間が生じている第2フェムトレーザビームが入光される。そして、このビーム分割素子400は、計算機ホログラムを用いて、加工対象物Mの内部において二次元または三次元に分布する多数の集光スポットSPに集光可能に、それぞれの入光されたフェムトレーザビームを分割して出力するようになっている。

【0045】
具体的には、このビーム分割素子400は、透過型回析光学素子または反射型回析光学素子などの各種の光学素子によって形成されており、図示しないコンピュータなどの制御装置の制御に基づいて、入射された第1フェムトレーザビームの集光スポットSPの位置と数を特定し、入光された第1フェムトレーザビームを特定された数(例えば、合計で数十)に分割しつつ、各第1位置に集光するように出力する構成を有している。

【0046】
また、このビーム分割素子400は、入光された第2フェムトレーザビームを、第1フェムトレーザビームと同数に分割し、各第1フェムトレーザビームが集光している集光スポットSP(第1位置)の近傍であって各フェムトレーザビームのパルスが重ならない程度に離隔した第1位置と異なる位置(第2位置)に各第2フェムトビームレーザを集光するように出力する構成を有している。特に、このビーム分割素子400は、第1位置に第1フェムトレーザビームを集光することによって生ずる多光子吸収過程により発生したレーザ励起プラズマが拡散して存在している範囲(以下、単に「プラズマ拡散範囲」という。)内であって、第1位置と異なる第2位置に第2フェムトレーザビームを照射させるようになっている。

【0047】
なお、第1フェムトレーザビーム及び第2フェムトレーザビームを照射する集光スポットSPの距離差(第1位置と第2位置との距離差)の詳細については時間差とともに後述する。

【0048】
後適合光学調整部500は、ビーム分割素子400と加工対象物Mとの間に配設されている。この後適合光学調整部500は、ビーム分割素子400において出力された各フェムトレーザビームが集光する各集光スポットSPを加工対象物Mの内部でさらに小さく集光するための種々の処理を行うようになっている。特に、この後適合光学調整部500は、高い開口率(例えば、1.25)を有するレンズを用いて、空間分布を維持しながら各フェムトレーザビームを加工対象物Mの内部で小さく集光させるようになっている。また、この後適合光学調整部500は、カルバルノスキャナなどの加工対象物Mの加工形状に基づいて各フェムトレーザビームを走査する走査手段を有している。

【0049】
[集光スポットSP間の距離差及びフェムトレーザビームの時間差(遅延時間)]
次に、図3~図7の各図を用いて集光スポットSP間の距離差及びフェムトレーザビームの時間差(遅延時間)について説明する。

【0050】
なお、図3及び図4は、時間差及び距離差を与えた場合の加工箇所(集光スポットSP)の位相変化を示す表及びグラフであり、図5は、本実施形態のレーザ加工システムSにおける時間差の相違における加工箇所の位相変化と加工痕を示す図である。また、図6は、距離差を与えた場合の加工箇所の加工痕を示す図であり、図7は、距離差を与えた場合の加工箇所の位相変化を示す図である。

【0051】
本実施形態のレーザ加工システムSにおける第1位置と第2位置の距離差及び時間差としては、加工対象物Mに照射された際に(すなわち、加工対象物Mの所定の集光スポットSPに集光された際に)、レーザビーム同士の干渉をさけるために、第1フェムトレーザビームと遅延時間が生じている第2フェムトレーザビームのパルス全体が重ならない距離を確保する必要がある。すなわち、第1フェムトレーザビームと第2フェムトレーザビームが干渉すると、両レーザビームの光路差における波長以下の微少な相違によってそれぞれの光強度が変動して均一なビームを得ることができなくなる。このため、フェムトレーザビームのパルス幅以上の時間差を有するとともに、第1フェムトレーザビームと第2フェムトレーザビームのパルス全体が時間的に重ならないことが必要である。

【0052】
また、レーザ励起プラズマは、第1フェムトレーザビームが照射された時刻から外側に向かって拡散するものの、一定の時間経過後に消滅するので、当該レーザ励起プラズマが消滅する前に当該レーザ励起プラズマが存在する位置に、第2フェムトレーザビームが照射される必要がある。ただし、この拡散時間及び拡散距離については、第1フェムトレーザビーム及び第2フェムトレーザビームの照射エネルギーに依存するとともに、照射エネルギーは、加工対象物Mの加工形状、加工範囲及び加工深度によって変化させる必要がある。

【0053】
したがって、本実施形態のレーザ加工システムSは、上記の各条件を考慮して第1フェムトレーザビームと第2フェムトレーザビームの距離及び時間差を設定する必要がある。

【0054】
例えば、各フェムトレーザビームのパルスエネルギーがそれぞれ「30nJ~80nJ」、距離差が0.1μm~1.5μm、及び、時間差がレーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームのパルス幅の重なりが十分に小さい2倍程度(すなわち、半値全幅の2倍程度)で100fs~100ps程度の範囲内において、単一のパルス照射(すなわち、第1フェムトレーザビームと第2フェムトレーザビーム)で加工する範囲、加工形状及び加工対象物Mの材質などに基づいて適宜選択されるようになっている。

【0055】
ここで、距離差及び時間差における本実施形態のレーザ加工システムSにおける実験結果を示す。

【0056】
図3~図5の各図に示すように、本実施形態のレーザ加工システムSは、集光スポットSP間の距離が1.0μmであって、それぞれ50nJのフェムトレーザビームを200fs~100psの時間差を与えて加工対象物M(カバーガラス)に対物レンズNA1.25及び倍率100を用いて照射させた場合には、時間差が0.1ps~10psについてはほぼ一定の位相変化(-0.84πrad~-0.78πrad)を有し、かつ、図4に示すような加工痕が形成されるので、適切に加工対象物Mに加工が実行されているといえる。

【0057】
一方、10ps以上の時間差においては加工箇所の位相変化が減少しているが、各フェムトレーザビームのパルスエネルギーを大きくすれば、プラズマ拡散範囲も変化するので、その場合には、10ps以上の時間差があったとしても、十分な加工を行うことができるものと推定することができる。

【0058】
また、図3、図4、図6及び図7に示すように、上述の実験結果において、時間差200fsと固定し、0.7μm~1.5μmの距離差を与えてそれぞれ50nJのフェムトレーザビームを照射させた場合には、距離差の増加に従って加工箇所の位相変化が悪化するものの、1.2μmまでの距離差においては十分な位相変化(-1.24πrad~-0.77πrad)があり、適切に加工を行うことができているといえる。

【0059】
他方、1.5μmにおける距離差においては、位相変化の値を悪く、加工痕については、ほぼ認識できないが、各フェムトレーザビームのパルスエネルギーや集光径を大きくすれば、プラズマ拡散範囲も変化するので、その場合には、1.5μmの距離差があったとしても、十分な加工を行うことができるものと推定することができる。

【0060】
[作用効果]
以上、本実施形態のレーザ加工システムSは、2つのフェムトレーザビームによって加工効率を向上させることができるとともに、第1位置と第2位置の異なる位置に極超短パルスレーザ光を照射することによって広い加工範囲をも確保することができる。

【0061】
したがって、本実施形態のレーザ加工システムSは、高精度かつ高品質に微細加工を行うことができるというフェムトレーザビームを用いることによって得られる効果に加えて、加工効率を向上させること、及び、レーザ照射回数を少なくすることによって短時間で加工対象物Mの加工を実行可能にすること(スループットの向上)を両立させることができる。

【0062】
[変形例]
次に、図8及び図9を用いて本実施形態のレーザ加工システムSにおける変形例について説明する。なお、図8は、本実施形態の光遅延素子300における変形例の構造を示す図であり、図9は、本実施形態の光遅延素子300及び後適合光学調整部500における変形例を示す図である。

【0063】
本実施形態のレーザ加工システムSは、前適合光学調整部200から出力されたフェムトレーザビームの一部をガラスによって形成される光遅延素子300に入光させているが、図8に示す形状を有するガラス基板から形成される光遅延素子310に前適合光学調整部200から出力された全てのフェムトレーザビームを入力させ、その一部に遅延時間を与えるようにしてもよい。

【0064】
具体的には、この光遅延素子310は、遅延時間に対応させた厚さを有する遅延用凸部312を有し、フェムトレーザビームの一部をこの遅延用凸部に入光するように形成されている。

【0065】
また、本実施形態のレーザ加工システムSにおいて、光遅延素子300及びビーム分割素子400によって加工対象物Mにおける集光スポットSPへの各フェムトレーザビームの集光制御(照射制御)を行っている点に変えて、図9に示すように、回折型または屈折型のマイクロレンズアレイからなり、各フェムトレーザビームを分岐集光する光遅延素子320と後適合光学調整部510とによって各フェムトレーザビームの集光制御を行ってもよい。

【0066】
なお、通常、マイクロレンズアレイの1つのレンズの大きさは、数十μm以上であるので、1μm以下に隣接させてフェムトレーザビームを集光スポットSPに集光するためには、縮小光学系を有する後適合光学調整部510が必要になる。

【0067】
また、本実施形態の光遅延素子300は、前適合光学調整部200とビーム分割素子400の間に形成されているが、ビーム分割素子400と後適合光学調整部500の間に形成されていてもよい。

【0068】
また、本実施形態のレーザ加工システムSは、加工対象物Mに対して、観測用光源及び観測用検出器からなる観測用光学装置を設け、集光スポットSPにおけるレーザの状態及び加工の進捗状況を観測するようにしてもよい。この場合に、レーザ加工システムSは、観測用光学装置の出力を、図示しない制御装置である制御用コンピュータにフィードバックして、ビーム分割素子400の設定を調整するようにしてもよい。

【0069】
<第2実施形態>
次に、図10~図12の各図を用いて本発明に係るレーザ加工システムSの第2実施形態について説明する。

【0070】
本実施形態は、第1実施形態における光遅延素子300内を通過させることによって第2フェムトレーザビームに遅延時間を与える点に変えて、第2フェムトレーザビームの経路を第1フェムトレーザビームの経路より長くすることによって第2フェムトレーザビームに遅延時間を与える点に特徴がある。

【0071】
なお、本実施形態は、上述の点を除き、その他の構成は第1実施形態と同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。

【0072】
[システム構成]
まず、図10を用いて本実施形態のレーザ加工システムSの構成について説明する。なお、図10は、本実施形態におけるレーザ加工システムSの構成を示すブロック図である。

【0073】
本実施形態のレーザ加工システムSは、図10に示すように、レーザ光源100と、前適合光学調整部200と、レーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームを分割するビームスプリッタ600と、第1フェムトレーザビームの経路を形成する第1経路形成部700と、第2フェムトレーザビームの経路を形成する第2経路形成部800と、後適合光学調整部500と、を備えている。

【0074】
なお、例えば、本実施形態のレーザ光源100は、本発明のレーザ光出力手段を構成し、ビームスプリッタ600及び第1経路形成部700は、本発明のレーザ出力手段を構成する。また、例えば、本実施形態の第2経路形成部800は、本発明のレーザ出力手段及び光遅延手段を構成し、後適合光学調整部500は、本発明の照射制御手段を構成する。

【0075】
ビームスプリッタ600は、レーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームの一部(第1フェムトレーザビーム)を透過して第1経路形成部700に出力するとともに、当該フェムトレーザビームの残りのビーム(第2フェムトレーザビーム)を反射させて第2経路形成部800に出力するようになっている。また、このビームスプリッタ600は、第1経路形成部700によって反射された第1フェムトレーザビームを反射させて後適合光学調整部500に出力するとともに、第2経路形成部800によって反射された第2フェムトレーザビームを透過させて後適合光学調整部500に出力するようになっている。

【0076】
第1経路形成部700は、ビームスプリッタ600を透過した第1フェムトビームをビームスプリッタ600に向けて反射させる第1反射ミラー装置710と、第1反射ミラー装置710とビームスプリッタ600との間に形成されつつ、第1反射ミラー装置710によって反射された第1フェムトレーザビームのみ分割する第1ビーム分割素子410と、を有している。

【0077】
第2経路形成部800は、ビームスプリッタ600によって反射された第2フェムトビームをビームスプリッタ600に向けて反射させる第2反射ミラー装置810と、第2反射ミラー装置810とビームスプリッタ600との間に形成されつつ、第2反射ミラー装置810によって反射された第2フェムトレーザビームのみ分割する第2ビーム分割素子420と、を有している。

【0078】
特に、この第2反射ミラー装置810は、第2フェムトレーザビームに遅延時間を与えるために、図示しない制御装置によって第2フェムトレーザビームの経路の長短を変化させるための機構を有している。

【0079】
[作用効果]
以上、本実施形態のレーザ加工システムSは、2つのフェムトレーザビームによって加工効率を向上させることができるとともに、第1位置と第2位置の異なる位置に極超短パルスレーザ光を照射することによって広い加工範囲をも確保することができる。

【0080】
したがって、本実施形態のレーザ加工システムSは、高精度かつ高品質に微細加工を行うことができるというフェムトレーザビームを用いることによって得られる効果に加えて、加工効率を向上させること、及び、レーザ照射回数を少なくすることによって短時間で加工対象物Mの加工を実行可能にすること(スループットの向上)を両立させることができる。

【0081】
[変形例]
次に、図11及び図12を用いて本実施形態のレーザ加工システムSにおける変形例について説明する。なお、図11は、本実施形態のレーザ加工システムSにおける変形例(I)のシステムブロック図であり、図12は、本実施形態のレーザ加工システムSにおけるその他変形例(II)のシステムブロック図である。

【0082】
本実施形態のレーザ加工システムSの第1変形例及び第2変形例は、図11及び図12に示すように、第1経路形成部700及び第2経路形成部800にレーザビームを反射させる第1反射ミラー装置710及び第2反射ミラー装置810に第1ビーム分割素子410または第2ビーム分割素子420が組み込まれている点に特徴がある。

【0083】
第1変形例は、図11に示すように、第1反射ミラー装置710及び第2反射ミラー装置810の一部に第1ビーム分割素子410または第2ビーム分割素子420がそれぞれ用いられており、各反射ミラー装置は、ビームスプリッタ600から出力されたそれぞれのフェムトレーザビームをビーム分割素子400に向けて反射させるミラーを備えている。

【0084】
第2変形例は、図12に示すように、第1反射ミラー装置710及び第2反射ミラー装置810が第1ビーム分割素子410または第2ビーム分割素子420から構成され、ビームスプリッタ600から出力されたフェムトレーザビームをそれぞれ当該ビームスプリッタ600に直接反射させるようになっている。

【0085】
また、本実施形態のレーザ加工システムSは、加工対象物Mに対して、観測用光源及び観測用検出器からなる観測用光学装置を設け、集光スポットSPにおけるレーザの状態及び加工の進捗状況を観測するようにしてもよい。この場合に、レーザ加工システムSは、観測用光学装置の出力を、図示しない制御装置である制御用コンピュータにフィードバックして、第1ビーム分割素子410及び第2ビーム分割素子420または後適合光学調整部500の設定を調整するようにしてもよい。

【0086】
<第3実施形態>
次に、図13を用いて本発明に係るレーザ加工システムSの第2実施形態について説明する。

【0087】
本実施形態は、第2実施形態において、第1フェムトレーザビーム及び第2フェムトレーザビームに時間差及び距離差を与えて加工対象物Mに照射する時空間ダブルパルス加工を実行する点に加えて、経路を切り換えることによって、レーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームによってのみ加工対象物Mに照射する通常加工を実行する構成を有する点に特徴がある。

【0088】
なお、本実施形態は、上述の点を除き、その他の構成は第2実施形態(第1実施形態も含む)と同様であり、同一の符号を付してその説明を省略する。

【0089】
[システム構成]
まず、図13を用いて本実施形態のレーザ加工システムSの構成について説明する。なお、図13は、本実施形態におけるレーザ加工システムSの構成を示すブロック図である。

【0090】
本実施形態のレーザ加工システムSは、図12に示すように、レーザ光源100と、前適合光学調整部200と、通常加工時にレーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームを分割し、かつ、時空間ダブルパルス加工時に第2フェムトレーザビームの分割を行う兼用ビーム分割素子430と、時空間ダブルパルス加工時に第1フェムトレーザビームの分割を行う専用ビーム分割素子440と、を備えている。

【0091】
また、このレーザ加工システムSは、通常加工時と時空間ダブルパルス加工時にフェムトレーザビームの経路を変更する複数の可倒式ビームスプリッタ910、920及び可倒式ミラー930、940と、第1フェムトレーザビーム専用の第1専用経路形成部720と、第2フェムトレーザビーム専用の第2専用経路形成部820と、を備えている。

【0092】
なお、例えば、本実施形態のレーザ光源100は、本発明のレーザ光出力手段を構成し、可倒式ビームスプリッタ910及び第1専用経路形成部720は、本発明のレーザ出力手段を構成する。また、例えば、本実施形態の第2専用経路形成部820は、本発明のレーザ出力手段及び光遅延手段を構成し、後適合光学調整部500は、本発明の照射制御手段を構成する。

【0093】
兼用ビーム分割素子430は、通常加工時に前適合光学調整部200と後適合光学調整部500との間に形成されつつ、時空間ダブルパルス加工時に第2専用経路形成部820から出力された第2フェムトレーザビームの経路上に形成される。そして、専用ビーム分割素子440は、何れの加工時であっても、分割したフェムトレーザビームを後適合光学調整部500に出力するようになっている。

【0094】
各可倒式ビームスプリッタ910、920及び各可倒式ミラー930、940は、通常加工時におけるフェムトレーザビームの経路に形成されており、前適合光学調整部200と兼用ビーム分割素子430との間に当該前適合光学調整部200から第1可倒式ビームスプリッタ910、第1可倒式ミラー930及び第2可倒式ミラー940の順でそれぞれ形成されている。また、第2可倒式ビームスプリッタ920は、兼用ビーム分割素子430と後適合光学調整部500との間に形成されている。そして、各可倒式ビームスプリッタ910、920及び可倒式ミラー930、940は、通常加工時にレーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームに対して作用しないように可倒され、ダブルパルス加工時には、適宜フェムトレーザビームに対して透過または反射などの各種の作用を施すようになっている。

【0095】
具体的には、第1可倒式ビームスプリッタ910は、ダブルパルス加工時にレーザ光源100から出力されたフェムトレーザビームを第1フェムトレーザビームと第2フェムトレーザビームに分割し、第1フェムトレーザビームを反射させて第1専用経路形成部720に出力するとともに、第2フェムトレーザビーム透過して第1可倒式ミラー930に出力するようになっている。

【0096】
第1可倒式ミラー930は、入光した第2フェムトレーザビームを反射させて第2専用経路形成部820に出力するようになっている。

【0097】
第2可倒式ミラー940は、第2専用経路形成部820から出力された第2フェムトレーザビームが入光され、当該第2フェムトレーザビームを反射させて兼用ビーム分割素子430に出力するようになっている。

【0098】
第2可倒式ビームスプリッタ920は、兼用ビーム分割素子430から出力された第2フェムトレーザビームを透過しつつ、第1専用経路形成部720から出力された第1フェムトレーザビームを反射させて後適合光学調整部500に出力するようになっている。

【0099】
第1専用経路形成部720は、入光された第1フェムトレーザビームを反射させつつ、第2可倒式ビームスプリッタ920に出力する第1反射ミラー装置710と、第1反射ミラー装置710と第2可倒式ビームスプリッタ920との間に形成されつつ、第1反射ミラー装置710によって反射された第1フェムトレーザビームのみ分割する専用ビーム分割素子440と、を有している。

【0100】
第2専用経路形成部820は、ビームスプリッタ600によって反射された第2フェムトビームをビームスプリッタ600に向けて反射させる第2反射ミラー装置810を有している。特に、この第2専用経路反射ミラー装置は、第2フェムトレーザビームに遅延時間を与えるために、図示しない制御装置によって第2フェムトレーザビームの経路の長短を変化させるための機構を有している。

【0101】
[作用効果]
以上、本実施形態のレーザ加工システムSは、2つのフェムトレーザビームによって加工効率を向上させることができるとともに、第1位置と第2位置の異なる位置に極超短パルスレーザ光を照射することによって広い加工範囲をも確保することができる。

【0102】
したがって、本実施形態のレーザ加工システムSは、高精度かつ高品質に微細加工を行うことができるというフェムトレーザビームを用いることによって得られる効果に加えて、加工効率を向上させること、及び、レーザ照射回数を少なくすることによって短時間で加工対象物Mの加工を実行可能にすること(スループットの向上)を両立させることができる。

【0103】
[変形例]
次に、本実施形態のレーザ加工システムSにおける変形例について説明する。

【0104】
本実施形態のレーザ加工システムSは、加工対象物Mに対して、観測用光源及び観測用検出器からなる観測用光学装置を設け、集光スポットSPにおけるレーザの状態及び加工の進捗状況を観測するようにしてもよい。この場合に、レーザ加工システムSは、観測用光学装置の出力を、図示しない制御装置である制御用コンピュータにフィードバックして、兼用ビーム分割素子430及び専用ビーム分割素子440または後適合光学調整部500の設定を調整するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0105】
S … レーザ加工システム
M … 加工対象物
SP … 集光スポット
100 … レーザ光源
200 … 前適合光学調整部
300、310、320 … 光遅延素子
400 … ビーム分割素子
410 … 第1ビーム分割素子
420 … 第2ビーム分割素子
430 … 兼用ビーム分割素子
440 … 専用ビーム分割素子
500 … 後適合光学調整部
600 … ビームスプリッタ
700 … 第1経路形成部
710 … 第1反射ミラー装置
800 … 第2経路形成部
810 … 第2反射ミラー装置
910 … 第1可倒式ビームスプリッタ
920 … 第2可倒式ビームスプリッタ
930 … 第1可倒式ミラー
940 … 第2可倒式ミラー
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
11
【図13】
12