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明細書 :GaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5660528号 (P5660528)
公開番号 特開2011-210845 (P2011-210845A)
登録日 平成26年12月12日(2014.12.12)
発行日 平成27年1月28日(2015.1.28)
公開日 平成23年10月20日(2011.10.20)
発明の名称または考案の名称 GaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体およびその製造方法
国際特許分類 H01L  35/14        (2006.01)
H01L  35/34        (2006.01)
C30B  29/52        (2006.01)
FI H01L 35/14
H01L 35/34
C30B 29/52
請求項の数または発明の数 2
全頁数 13
出願番号 特願2010-075467 (P2010-075467)
出願日 平成22年3月29日(2010.3.29)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成22年3月3日 社団法人 応用物理学会発行の「2010年春季 <第57回>応用物理学関係連合講演会 [講演予稿集](DVD)」に発表
審査請求日 平成25年2月27日(2013.2.27)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504203572
【氏名又は名称】国立大学法人茨城大学
発明者または考案者 【氏名】鵜殿 治彦
個別代理人の代理人 【識別番号】100062225、【弁理士】、【氏名又は名称】秋元 輝雄
【識別番号】100101421、【弁理士】、【氏名又は名称】越智 俊郎
審査官 【審査官】羽鳥 友哉
参考文献・文献 特開2007-235083(JP,A)
特開2003-092435(JP,A)
国際公開第2007/023548(WO,A1)
特開2007-042963(JP,A)
特開2006-108203(JP,A)
調査した分野 H01L 35/14
C30B 29/52
H01L 35/34
特許請求の範囲 【請求項1】
下式(1)あるいは下式(2)で表されるとともにMnSiが含まれていないことを特徴とするGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体。
Mn11Si19-xGax 式(1)
[式(1)において、xは0を超え0.1以下である。]
Mn4 Si7-y Sny 式(2)
[式(2)において、yは0を超え0.1以下である。]
【請求項2】
下記工程(1)~(6)を含み、真空中で製造することを特徴とする請求項1記載のGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体の製造方法。
(1)Mn:Siの元素比が下式(3)から計算される元素比の、Mn粒子とSi粒子の混合物を焼結法などによってペレット状にしたもの、あるいはこれらを融点以上に融解して合金化したMnSi1.7合金からなる原料を準備する工程。
(2)反応容器中の底部を結晶析出部とし、前記反応容器中に所定量のGa粒子あるいはSn粒子を充填した後、前記反応容器をGaあるいはSnの融点以上に加熱して、Ga粒子あるいはSn粒子を融解して、GaあるいはSn融液からなる結晶成長部を形成する工程。
(3)工程(1)で準備した原料を、工程(2)で準備した前記反応容器中のGa融液あるいはSn融液の上面に接触させて充填して原料からなる原料部を形成する工程。
(4)前記反応容器をさらに加熱して、前記原料部の温度を少なくとも前記結晶成長部の温度より高く、かつ高くても1200℃以下の温度とし、前記結晶成長部を600~1150℃とするとともに、前記原料部から前記結晶析出部に至る間における温度勾配が5~100℃/cmとなるように設定する工程。
(5)前記反応容器を工程(4)で設定した状態に維持しつつ、前記結晶成長部で所定時間結晶を成長させて、前記結晶析出部にGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいはバルク状マンガンシリサイド多結晶体を堆積する工程。
(6)結晶成長が終了した後、常温まで冷却し、GaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体を前記反応容器から取り出す。
MnSi1.75-x 式(3)
[式(3)において、xは0以上0.13以下である。]
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、GaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体およびその製造方法に関するものであり、さらに詳しくは、高い性能指数が期待できるP型熱電変換材料や光センサ、光学素子などとして有効利用できる安価なGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギー社会に向けて、工場設備や発電設備などから生じる廃熱を利用した発電システムの開発が活発化している。特に、産業廃棄物の増加などに伴って、これらを焼却する際に生じる廃熱の有効利用が課題となっている。例えば、大型廃棄物焼却設備では、廃熱でボイラーを焚き、蒸気タービンにより発電するなどの廃熱回収が行われているが、大多数を占める中・小型廃棄物焼却設備では、スケールメルット依存性が高いためにタービンにより発電する方法が採れない。
従って、このような排熱を利用した発電方法としてスケールメリット依存性の無い、ゼーベック効果あるいはペルチェ効果を利用して可逆的に熱電変換を行う熱電変換材料を用いた熱電変換素子が提案されている。
【0003】
熱電変換素子は、例えば、熱伝導率の小さいn型半導体、p型半導体をそれぞれn型熱電変換部、p型熱電変換部の熱電変換材料として用い、図5、図6に示すように、並置されたn型熱電変換部101、p型熱電変換部102の上端部および下端部にそれぞれ電極5,6が設けられ、各熱電変換部101,102の上端の電極5が接続されて一体化されるとともに、各熱電変換部101,102の下端の電極6,6は分離されて構成されている熱電変換素子を挙げることができる。
そして、電極5,6間に温度差を生じさせることで、電極5,6間に起電力を生じさせることができる。
【0004】
一方、各熱電変換部101,102の下端の電極6,6間に直流電流を流すことで、各電極5,6において発熱作用や吸熱作用を生じさせるようになっている。
【0005】
このような熱電変換部の熱電変換性能は、一般に下式(1)で表される性能指数Z(単位:K-1)によって評価される。
Z=α2/(κρ) ・・・(1)
式(1)において、α, κ,ρはそれぞれゼーベック係数(熱起電力)、熱伝導率、比抵抗を表わしている。
この性能指数Zに温度Tを乗じて無次元化した無次元性能指数ZTが、例えば0.5以上、好ましくは1以上となることが実用化の目安とされている。
【0006】
つまり、優れた熱電変換性能を得るには、ゼーベック係数αが大きく、熱伝導率κおよび比抵抗ρの小さい材料を選定すればよい。
【0007】
つまり、図5に示すように、電極5側を加熱しあるいは電極6側を放熱することで電極5,6間に正の温度差(Th-Tc)が生じると、熱励起されたキャリアによってp型熱電変換部102がn型熱電変換部101よりも高電位となり、左右の電極6,6間に負荷としての抵抗3を接続することで、p型熱電変換部102からn型熱電変換部101側へ電流が流れる。
一方、図6に示すように、直流電源4によってp型熱電変換部102からn型熱電変換部101に直流電流を流すことで、電極5,6にそれぞれ吸熱作用、発熱作用が生じる。
逆に、n型熱電変換部101からp型熱電変換部102に直流電流を流すことで、電極5,6にそれぞれ発熱作用、吸熱作用を生じさせることができる。
【0008】
そこで熱電変換材料として資源量が豊富で無毒で、環境負荷が少ないMg2 Si(例えば、非特許文献1、2、3参照)が研究されており、Mg2 Siはn型熱電変換材料として適している。
そして、n型Mg2 Si熱電変換材料と相性のよいp型熱電変換材料としてMnSi1.7 (マンガンシリサイド)が注目され始めている。
【0009】
しかし、従来の製法で製造されたMnSi1.7 は、熱電変換性能が悪いという問題があった。
すなわち、Mn、Siの融液からMnSi1.7 結晶を成長させる従来の製法では、原料としてSiとMnを使用し、結晶成長温度は1200℃と高く、状態図から必ずMnSi相(モノシリサイド相)と呼ばれる異相やSi単相が結晶内に析出するので、熱電変換性能が悪かった(非特許文献4参照)。
また、これに対して、化学気相法(非特許文献5参照)やMn、Siを原料とし、Ga、Sn、Pb、Cu融液を溶媒に使ってMnSi1.7 結晶を成長させる溶液法(非特許文献6参照)で単相のMnSi1.7 を得ることができるという報告があるが、最大でも平均直径0.1mm程度のものであり、また同じ粉末内にSiやMnSi相が析出しており、熱電変換材料として使用するには難がある上、結晶成長温度が1200℃と高かった。
【先行技術文献】
【0010】

【非特許文献1】Semiconducting Properties of Mg2Si Single Crystals Physical Review Vol.109,No.6 March 15,1958,P.1909~1915
【非特許文献2】Seebeck Effect In Mg2Si Single Crystals J.Phys.Chem.Solids Pergamon Press 1962.Vol.23,pp.601-610
【非特許文献3】Bulk crystal growth of Mg2Si by the vertical Bridgman method Science Direct Thin Solid Films 461(2004)86-89
【非特許文献4】J.Materials Sci.16(1981)355
【非特許文献5】J.Crystal Growth 47(1979)589
【非特許文献6】J.Crystal Growth 229(2001)532
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の第1の目的は、約300~600℃の中温で高い性能指数が期待できる熱電変換材料や光センサ、光学素子などとして有効利用できる安価なGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体を提供することである。
本発明の第2の目的は、そのようなGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体を、高価な装置などを使用せず、短時間でしかも安全に容易に製造できる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解消するため、鋭意研究した結果、Mn、Si混合物を原料とし、Ga融液あるいはSn融液を使って、後述する、下式(1)あるいは下式(2)で表されるGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体(以下、MnSi1.7 結晶と称すことがある)を成長させる溶液法において、原料部と結晶析出部との間の結晶成長部に適切な温度勾配ΔTを付けることで、Ga融液あるいはSn融液中での対流と拡散を促し、MnSi1.7 結晶の合成速度を圧倒的に早くし、約900℃という比較的低温でも平均直径約1mm以上、好ましくは約1cm以上、さらに好ましくは約10~20cmに達する大型の結晶を合成することができることを見い出し、本発明を成すに到った。
【0013】
本発明の請求項1記載の発明は、下式(1)あるいは下式(2)で表されるとともにMnSiが含まれていないことを特徴とするGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体である。
【0014】
Mn11Si19-xGax 式(1)
[式(1)において、xは0を超え0.1以下である。]
Mn4 Si7-y Sny 式(2)
[式(2)において、yは0を超え0.1以下である。]
【0015】
本発明の請求項2記載の発明は、下記工程(1)~(6)を含み、真空中で製造することを特徴とする請求項1記載のGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体の製造方法である。
【0016】
(1)Mn:Siの元素比が下式(3)から計算される元素比の、Mn粒子とSi粒子の混合物を焼結法などによってペレット状にしたもの、あるいはこれらを融点以上に融解して合金化したMnSi1.7合金からなる原料を準備する工程。
(2)反応容器中の底部を結晶析出部とし、前記反応容器中に所定量のGa粒子あるいはSn粒子を充填した後、前記反応容器をGaあるいはSnの融点以上に加熱して、Ga粒子あるいはSn粒子を融解して、GaあるいはSn融液からなる結晶成長部を形成する工程。
(3)工程(1)で準備した原料を、工程(2)で準備した前記反応容器中のGa融液あるいはSn融液の上面に接触させて充填して原料からなる原料部を形成する工程。
(4)前記反応容器をさらに加熱して、前記原料部の温度を少なくとも前記結晶成長部の温度より高く、かつ高くても1200℃以下の温度とし、前記結晶成長部を600~1150℃とするとともに、前記原料部から前記結晶析出部に至る間における温度勾配が5~100℃/cmとなるように設定する工程。
(5)前記反応容器を工程(4)で設定した状態に維持しつつ、前記結晶成長部で所定時間結晶を成長させて、前記結晶析出部にGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいはバルク状マンガンシリサイド多結晶体を堆積する工程。
(6)結晶成長が終了した後、常温まで冷却し、GaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体を前記反応容器から取り出す。
【0017】
MnSi1.75-x 式(3)
[式(3)において、xは0以上0.13以下である。]
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1記載の発明は、不活性ガス導入装置などを使用せずに製造できる、前式で表されるGaあるいはSnでドーピングされた、例えば平均直径約1mm以上、好ましくは約1cm以上、さらに好ましくは約10~20cmに達する、MnSiが含まれていないバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体であって、安価であり、GaあるいはSnでドーピングされているので約300~600℃の中温で高い性能指数が期待できる熱電変換材料として有効利用できる外、光センサ、光学素子などとしても有効利用できるという顕著な効果を奏する。
【0019】
本発明の請求項2記載の発明は、前記工程(1)~(6)を含み、真空中で製造することを特徴とする請求項1記載のGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体の製造方法であり、
高価な不活性ガス導入装置などを使用せず、短時間でしかも安全に容易に製造できるという顕著な効果を奏する。
【0020】
前記原料部の温度を少なくとも前記結晶成長部の温度より高く、かつ高くても1200℃以下の温度とし、前記結晶成長部を600~1150℃とするとともに、前記原料部から前記結晶析出部に至る間における温度勾配が5~100℃/cmとなるように設定し、この状態に維持しつつ、前記結晶成長部で所定時間結晶を成長させて、前記結晶析出部に結晶を堆積させることにより、前記結晶成長部における対流と拡散を促進し、結晶の成長速度を著しく大きくすることができたので、平均直径約10~20cmに達するGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体を短時間で製造することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のGaあるいはSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体の製造方法を説明する説明図である。
【図2】実施例1の本発明のGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体のX線回折結果を示すグラフである。
【図3】実施例2の本発明のSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体のX線回折結果を示すグラフである。
【図4】実施例1の本発明のGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体および実施例2の本発明のSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体の温度に対する電気抵抗率測定結果を示すグラフである。
【図5】n型熱電変換部とp型熱電変換部を備えた熱電変換素子の構成例を説明する説明図である。
【図6】n型熱電変換部とp型熱電変換部を備えた他の熱電変換素子の構成例を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明のGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体を真空中で製造する方法を説明する説明図である。

【0023】
図1において、1は、本発明のGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体を真空中で製造するための装置、2は加熱炉、3は加熱炉2の外周に設けた加熱用ヒータ、4は反応容器、5は反応容器4中のGa融液からなる結晶成長部、6は結晶成長部5のGa融液の上面に接触させて配設して形成した原料のMnSi1.7合金などからなる原料部、7は反応容器4の底部に種結晶部を配設せずに、反応容器4の底部を結晶析出部とし、この結晶析出部に堆積した成長中のマンガンシリサイド単結晶体、8は温度計、9は制御手段を示す。

【0024】
次に、工程毎に本発明の製造方法を工程ごとに説明する。
工程(1)で、先ず、Mn:Siの元素比が前式(3)から計算される元素比の、Mn粒子とSi粒子を焼結したペレットあるいはMnSi1.7合金からなる原料を準備する。

【0025】
工程(2)で、反応容器4の底部を結晶析出部とし、反応容器4中に所定量のGa粒子を充填した後、制御手段9からの信号により加熱用ヒータ3を駆動して反応容器4をGaの融点以上に加熱して、Ga粒を融解して、Ga融液からなる結晶成長部5を形成する。反応容器4の底部を結晶析出部としたが、底部に石英板などの種結晶を配設して結晶析出部とすることもできる。

【0026】
工程(3)で、前記工程(1)で準備した原料を、工程(2)で準備した反応容器4中のGa融液からなる結晶成長部5の上面に接触させて充填して原料からなる原料部6を形成する工程。
結晶成長部5の上面と原料部6の間にメッシュや多孔体などの適当なスペーサを設置してもよい。

【0027】
工程(4)で、制御手段9からの信号により各ゾーンの加熱用ヒータ3をそれぞれ適切に駆動して反応容器4をさらに加熱して、原料部6の温度を少なくとも結晶成長部5の温度より高く、かつ高くても1200℃以下の温度とし、好ましくは1100℃以下の温度とし、結晶成長部5を600~1150℃、好ましくは650℃~1100℃とするとともに、原料部6から反応容器4の底部の結晶析出部に至る間における温度勾配ΔTが5~100℃/cm、好ましくは10~90℃/cmとなるように設定する。
1200℃を超えると、原料の融点を超えるため原料全体が融液となってしまい結晶成長ができない恐れがある。結晶成長部5の温度が600℃未満では、原料が十分にGaやSn溶媒に溶けないため、結晶成長が著しく遅くなり、結晶が成長しない恐れがあり、1150℃を超えると、原料の組成の不均一な部分が融解し結晶成長を阻害する恐れがある。
温度勾配ΔTが5℃/cm未満では、溶液中に溶けた溶質が結晶成長部に十分に供給されないため、結晶成長が著しく阻害される恐れがあり、100℃/cmを超えると、結晶品質が悪化する恐れがある。

【0028】
工程(5)で、反応容器4を工程(4)で設定した状態に維持しつつ、結晶成長部5で所定時間結晶を成長させて、前記結晶析出部にGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7を堆積する。

【0029】
工程(6)で、結晶成長が終了した後、常温まで冷却し、Gaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7を反応容器4から取り出す。

【0030】
図1の左側に、縦軸が原料部6から反応容器4の底部の結晶析出部に至る間の距離(cm)(すなわち、XS~XG間の距離)と、横軸が原料部6から反応容器4の底部の結晶析出部に至る間の温度(℃)(すなわち、TG~TS間の温度)との関係を示す。そして、原料部6から反応容器4の底部の結晶析出部に至る間における温度勾配ΔTが5~100℃/cmとなるように設定する。

【0031】
本発明で使用する原料のSiは、半導体用高純度シリコン原料、LSI用高純度シリコン原料、太陽電池高純度シリコン原料、高純度金属シリコンなどを粉砕加工した平均粒径が約2~3mmのチャンク状の粒や平均粒径が約5~50μm程度の粉末を挙げることができる。
本発明で使用する原料のMnとしては、高純度に精製した純度99.9%以上の平均粒径が約2~3mmのチャンク状の粒や平均粒径が約5~50μm程度の粉末を好ましく使用できる。
本発明で使用する原料のMnSi1.7合金とは、例えばチャンク状のSi粒子とチャンク状のMn粒子を融点以上で融解し、冷却して合金化したものを挙げることができる。さらに原料はSi粒子とMn粒子を均質に混合して焼結したバルク状の混合焼結ペレット等を挙げることができる。

【0032】
本発明においては、前式(3)から計算される元素比の、Mn粒子とSi粒子の混合焼結ペレットあるいはMnSi1.7合金からなる原料を準備する。
前記式(3)において、xは析出させる結晶組成にあわせて調整し、Mn11Si19相を成長する場合は好ましくは0.023であり、Mn4Si7相を成長する場合は好ましくは0である。
xが0.13を超えると、モノシリサイド相のMnSi相が析出する恐れがあり、好ましくない。

【0033】
本発明で使用する反応容器は、前記化学反応の反応条件に耐える耐熱性、機械特性を有する物であればよく、特に限定されないが、酸素不透過性を有し、大気中で本結晶成長温度に耐える耐熱性を有するとともに、溶媒のGaやSnと反応せず、製品であるMnSi1.7 結晶に不純物を供給しない特性を有する例えば、高純度石英、BN、緻密処理したグラファイト、アルミナなどの材料で作成された内面を有する反応容器が好ましく使用でき
る。

【0034】
前述のように、工程(4)で、原料部6の温度を少なくとも結晶成長部5の温度より高く、かつ高くても1200℃以下の温度とし、結晶成長部5を600~1150℃とし、原料部6から反応容器4の底部の結晶析出部に至る間における温度勾配ΔTが5~100℃/cmとなるように設定し、設定した状態に維持しつつ、結晶成長部5で所定時間結晶を成長させて、前記結晶析出部にMnSi1.7 結晶7を堆積する。
本発明で使用する反応容器の加熱は、特に限定されるものではなく、公知の電気炉やガス燃焼炉などの加熱装置を使用し、公知の加熱方法を用いることができる。

【0035】
反応容器中は、真空にする。容器内の真空度は0.06Pa以下、好ましくは1×10-3以下とする。

【0036】
冷却は、自然冷却でも強制冷却でもこれらの組み合わせでもよく、特に限定されるものではなく、公知の冷却装置を使用し、公知の冷却方法を用いることができる。
あまり急激な冷却を行うと、反応容器が割れることがあるので注意を要する。

【0037】
MnSi1.7 結晶を熱電変換材料として利用する場合は、合成工程で得られたGaあるいはSnでドーピングされたMnSi1.7 結晶を粉砕し、ドーピングが不足であれば得られた粉末に、適宜のドーパントを所定量添加した後、加圧圧縮焼結法により減圧雰囲気で焼結圧力5~60MPa、焼結温度600~1000℃で焼結することにより高い物理的強度を有し、かつ安定して高い熱電変換性能を発揮でき、風化せず耐久性に優れ安定性および信頼性が高いP型熱電変換材料を得ることができる。
粉砕は、細かくて、よく揃った粒度を有し、狭い粒度分布を有する粒子とすることが好ましい。細かくて、よく揃った粒度を有し、狭い粒度分布を有する粒子を次の加圧圧縮焼結法により焼結すると、粒子同士がその表面の少なくとも1部が融着してよく焼結できるので、良好に焼結でき、理論密度の約70%からほぼ理論密度の焼結体を得ることができる。

【0038】
粉砕したMnSi1.7 結晶の粒度は、具体的には、例えば、篩75μmパスで65μmオンとか、篩30μmパスで20μmオンとか、あるいは平均粒径0.1~0.2μmなどの例を挙げることができ、使用目的などに合わせて適宜選定することが好ましい。
70%からほぼ理論密度の焼結体を得ることができ、P型熱電変換材料を製造できるので好ましい。

【0039】
ドーパントの具体例としては、B、Al、Ga、Inなどの3価のドーパントを挙げることができる。
他の具体例としては、例えば、P、Biなどの5価のドーパントを挙げることができる。
他の具体例としては、例えば、Cr、Mo、Wなどの6価のドーパントを挙げることができる。

【0040】
なお、上記実施形態の説明は、本発明を説明するためのものであって、特許請求の範囲に記載の発明を限定し、或は範囲を減縮するものではない。又、本発明の各部構成は上記実施形態に限らず、特許請求の範囲に記載の技術的範囲内で種々の変形が可能である。
【実施例】
【0041】
次に実施例および比較例により本発明を詳しく説明するが、本発明の主旨を逸脱しない限りこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
(実施例1)
図1に示した装置1を使用し、原料部6の温度を880~930℃、Ga融液からなる結晶成長部5の温度を850~900℃とするとともに、原料部6から反応容器4の底部の結晶析出部に至る間における温度勾配ΔTが30~60℃/cmとなるように設定し、この状態に維持しつつ、結晶成長部5で所定時間(約1週間)結晶を成長させて、前記結晶析出部にGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7を堆積させた。結晶成長が終了した後、常温まで冷却し、Gaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7を反応容器4から取り出した。
【実施例】
【0043】
Gaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7の走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)を用いて下記の分析条件で3箇所測定し、その平均値を、表1に示す。
(分析条件)
装置:日本電子製JSM-5600LV
電子線加速電圧:15KV
ビームサイズ:44
試料距離:15mm
【実施例】
【0044】
Gaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7を下記の分析条件でX線回折測定した結果を、図2および表2に示す。
(分析条件)
装置:リガクRINT2000
X線:CuKα1 40KV/30mA
発散スリット:1deg.
散乱スリット:1deg.
受光スリット:0.3mm
走査モード:連続
試料回転速度:60rpm
スキャンスピード:2°/min
スキャンステップ:0.02°
走査軸:θ・2θ
【実施例】
【0045】
Gaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7の電気抵抗率(Ωcm)を温度(K)に対して測定した結果を図4に示す。
(測定条件)
測定方法:四端子法
電極:銀ペースト
装置:ケースレー製 2400ソースメータ、2182ナノボルトメータ
【実施例】
【0046】
Gaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7の熱電特性を測定した結果を、非特許文献4[J.Materials Sci.16(1981)355-366 ]のTableIIに記載の報告例とともに表3に示す。
ただし、表3中の、熱電出力因子P=α2 /ρ を表す。
α:ゼーベック係数、ρは電気抵抗を示す。
【実施例】
【0047】
(実施例2)
図1に示した装置1を使用し、原料部6の温度を880~930℃、Sn融液からなる結晶成長部5の温度を850~900℃とするとともに、原料部6から反応容器4の底部の結晶析出部に至る間における温度勾配ΔTが30~60℃/cmとなるように設定し、この状態に維持しつつ、結晶成長部5で所定時間(約2週間)結晶を成長させて、前記結晶析出部にSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7を堆積させた。結晶成長が終了した後、常温まで冷却し、Snでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7を反応容器4から取り出した。
【実施例】
【0048】
実施例1と同様にして、Snでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7の走査型電子顕微鏡(SEM-EDX)を用いて3箇所測定し、その平均値を、表1に示す。
【実施例】
【0049】
実施例1と同様にして、Snでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7のX線回折測定した結果を、図3および表2に示す。
【実施例】
【0050】
実施例1と同様にして、Snでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7の電気抵抗率(Ωcm)を温度(K)に対して測定した結果を図4に示す。
【実施例】
【0051】
実施例1と同様にして、Snでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7の熱電特性を測定した結果を、非特許文献4[J.Materials Sci.16(1981)355-366 ]のTableIIに記載の報告例とともに表3に示す。
【実施例】
【0052】
【表1】
JP0005660528B2_000002t.gif
【実施例】
【0053】
【表2】
JP0005660528B2_000003t.gif
【実施例】
【0054】
【表3】
JP0005660528B2_000004t.gif
【実施例】
【0055】
実施例1のGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7は平均直径約5cmであり、表1から、Si63.1atom%、Mn36.6atom%、Ga0.3atom%の組成を有し、そして図2および表2から、未反応のSi、Mn、Gaや、Mn4 Si7 、MnSiなどが含まれていないことが判る。
表3から、実施例1のGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7は熱電特性に優れていることが判る。
【実施例】
【0056】
実施例2のSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7は平均直径約4.5cmであり、表1から、Si63.4atom%、Mn36.4atom%、Sn0.2atom%の組成を有し、そして図3および、表2から未反応のSi、Mn、Gaや、Mn4 Si7 、MnSiなどが含まれていないことが判る。
表3から、実施例2のSnでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体7は熱電特性に優れていることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、不活性ガス導入装置などを使用せずに製造できる、前式(1)あるいは前式(2)で表されるGaあるいはSnでドーピングされた、例えば平均直径約1mm以上、好ましくは約1cm以上、さらに好ましくは約10~20cmに達するバルク状マンガンシリサイド単結晶体あるいは多結晶体であって、安価であり、GaあるいはSnでドーピングされているので約300~600℃の中温で高い性能指数が期待できる熱電変換材料として有効利用できる外、光センサ、光学素子などとしても有効利用できるという顕著な効果を奏し、本発明の製造方法により短時間でしかも安全に容易に製造できるという顕著な効果を奏するので、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0058】
1 本発明のGaでドーピングされたバルク状マンガンシリサイド単結晶体を真空中で製造するための装置
2 加熱炉
3 加熱用ヒータ
4 反応容器
5 結晶成長部
6 原料部
7 結晶析出部
8 温度計
9 制御手段
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5