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明細書 :複素環置換芳香族化合物、分子検出剤、分子検出方法、及び分子捕捉方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5590654号 (P5590654)
公開番号 特開2011-168507 (P2011-168507A)
登録日 平成26年8月8日(2014.8.8)
発行日 平成26年9月17日(2014.9.17)
公開日 平成23年9月1日(2011.9.1)
発明の名称または考案の名称 複素環置換芳香族化合物、分子検出剤、分子検出方法、及び分子捕捉方法
国際特許分類 C07D 233/61        (2006.01)
G01N  21/78        (2006.01)
FI C07D 233/61 CSP
G01N 21/78 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 22
出願番号 特願2010-031792 (P2010-031792)
出願日 平成22年2月16日(2010.2.16)
審査請求日 平成25年2月15日(2013.2.15)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
発明者または考案者 【氏名】近藤 満
個別代理人の代理人 【識別番号】100079049、【弁理士】、【氏名又は名称】中島 淳
【識別番号】100084995、【弁理士】、【氏名又は名称】加藤 和詳
【識別番号】100099025、【弁理士】、【氏名又は名称】福田 浩志
審査官 【審査官】吉田 直裕
参考文献・文献 中国特許出願公開第1736976(CN,A)
特開2002-088137(JP,A)
Jia-Ming Yan, et al.,Direct imidazolylmethylation of phenols,Synthetic Communications,1994年,Vol.24, No.1,pp.47-52
半田絢子,外2名,ヒドロキシル基を導入した金属錯体カプセルの合成と過塩素酸イオン捕捉による呈色,錯体化学討論会講演要旨集,2010年 9月16日,Vol.60th,p.197,1PA-33
望月優,外4名,金属錯体カプセルを用いた水溶液中からの高溶解性陰イオンの選択的捕捉,錯体化学討論会講演要旨集,2009年 9月 4日,Vol.59th,p.310, 2PA-087
調査した分野 CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
下記式(a)、下記式(c)、下記式(e)、又は下記式(g)で表される複素環置換芳香族化合物。
【化1】
JP0005590654B2_000012t.gif

【請求項2】
前記式(a)又は前記式(c)で表される請求項1に記載の複素環置換芳香族化合物。
【請求項3】
前記式(a)で表される請求項1に記載の複素環置換芳香族化合物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複素環置換芳香族化合物を含み、液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を検出する分子検出剤。
【請求項5】
液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を検出する方法であって、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複素環置換芳香族化合物と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、前記液体試料と、を接触させて、前記標的分子を捕捉した捕捉カプセル型分子を形成させ、該捕捉カプセル型分子の形成に伴う液体試料の色の変化により前記標的分子を検出する分子検出方法。
【請求項6】
液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を捕捉する方法であって、
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の複素環置換芳香族化合物と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、前記液体試料と、を接触させて、前記標的分子を捕捉した捕捉カプセル型分子を形成させることを含む分子捕捉方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複素環置換芳香族化合物、分子検出剤、分子検出方法、及び分子捕捉方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体試料中の分子サイズ1nm以下の分子を除去する技術や検出する技術に関し、種々の検討が行われている。
例えば、分子サイズ1nm以下の分子のうち過塩素酸イオンは、甲状腺のヨウ素の取り込みを阻害し、その結果成長ホルモンの生成が妨げられる作用がある。そのため、過塩素酸イオンを乳幼児が摂取しすぎると、成長阻害や運動障害、あるいは精神遅滞などの悪影響を及ぼすことが懸念されている。また、近年、土壌・水中において過塩素酸塩の混入が増加しつつあることが知られている。
過塩素酸イオン(ClO)は、水に対して高い溶解度を示し、また金属イオンと相互作用が極めて低い。このため、液体試料中の過塩素酸イオンを検出する方法として、従来は、イオンクロマトグラフィー等の機器分析を利用する方法や、まず液体試料に可溶な鉄錯体を添加して過塩素酸イオンを対イオンとして含む鉄錯体を生成させ、次に、生じた鉄錯体をニトロベンゼンで抽出し、抽出された鉄錯体の吸光度を測定するという煩雑な方法等が用いられてきた。従って、液体試料中の過塩素酸イオンを直接的に検出できる検出剤の開発が望まれている。
【0003】
液体試料中の過塩素酸イオンを除去する方法としては、液体試料を濃縮する必要がある従来の方法(例えば、特許文献1参照)や、樹脂を用いて除去する従来の方法(例えば、特許文献2及び非特許文献1参照)に代えて、特定の複素環置換芳香族化合物を用い、液体試料中の過塩素酸イオンを捕捉カプセル型分子に取り込んで沈殿させる方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
種々のイオンを取り込むようにカプセルを形成し得る化合物としては、例えば非特許文献2に記載された化合物も知られているが、上記特許文献3に記載の複素環置換芳香族化合物は、特定のイオンを選択的に取り込んで捕捉カプセル型分子を形成できる点で、非特許文献2に記載された化合物とは異なる。
【0004】
また、分子サイズ1nm以下の分子のうち、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)は、半導体製造工程やめっき工程等の廃液に含まれるイオンである。
テトラフルオロホウ酸イオンを含む廃液の処理方法、即ち、廃液中からテトラフルオロホウ酸イオンを除去する除去方法は、テトラフルオロホウ酸イオンをフッ素とホウ素とに分解し、得られたフッ素とホウ素とを個別に処理する方法が主流となっている(例えば、特許文献4及び5参照)。
テトラフルオロホウ酸イオンを分解せず直接的に沈殿させる化合物としても、上記特許文献3と同様の複素環置換芳香族化合物が有効であることが報告されている(例えば、特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表平9-504472号公報
【特許文献2】特開2004-346299号公報
【特許文献3】国際公開第2008/029804号パンフレット
【特許文献4】特許2912934号公報
【特許文献5】特開2007-222817号公報
【特許文献6】特開2010-022886号公報
【0006】

【非特許文献1】NEDO海外レポート、No.946、2004.12.15、インターネット<http://www.nedo.go.jp/kankobutsu/report/946/946-07.pdf>
【非特許文献2】J.Am.Chem.Soc., 2003, Vol.125, No.28, p.8595-8613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、液体試料中の分子サイズ1nm以下の分子を検出する方法としては、より短時間に、より感度良く検出する方法の開発が望まれている。
従って、本発明の目的は、液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を、短時間に感度良く検出できる複素環置換芳香族化合物、分子検出剤、分子検出方法、及び分子捕捉方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は以下のとおりである。
<1> 下記式(a)、下記式(c)、下記式(e)、又は下記式(g)で表される複素環置換芳香族化合物。
【0009】
【化1】
JP0005590654B2_000002t.gif

【0013】
<2> 前記式(a)又は前記式(c)で表される<1>記載の複素環置換芳香族化合物。
【0014】
<3> 前記式(a)で表される<1>記載の複素環置換芳香族化合物。
【0015】
<4> <1>~<3>のいずれか1項に記載の複素環置換芳香族化合物を含み、液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を検出する分子検出剤。
【0020】
<5> 液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を検出する方法であって、
<1>~<3>のいずれか1項に記載の複素環置換芳香族化合物と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、前記液体試料と、を接触させて、前記標的分子を捕捉した捕捉カプセル型分子を形成させ、該捕捉カプセル型分子の形成に伴う液体試料の色の変化により前記標的分子を検出する分子検出方法。
【0025】
<6> 液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を捕捉する方法であって、
<1>~<3>のいずれか1項に記載の複素環置換芳香族化合物と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、前記液体試料と、を接触させて、前記標的分子を捕捉した捕捉カプセル型分子を形成させることを含む分子捕捉方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、液体試料中の分子サイズ1nm以下の標的分子を、短時間に感度良く検出できる複素環置換芳香族化合物、分子検出剤、分子検出方法、及び分子捕捉方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施例2における捕捉カプセル型分子の構造を概念的に示す図である。
【図2】実施例3における過塩素酸イオンの捕捉に伴う液体試料の分光特性の変化を示す図である。
【図3】実施例4における試料1~試料5(左から順に、試料1、試料2、試料3、試料4、試料5)の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<複素環置換芳香族化合物>
本発明の複素環置換芳香族化合物は、下記一般式(I)で表される複素環置換芳香族化合物のうち、後述する、式(a)、式(c)、式(e)、又は式(g)で表される複素環置換芳香族化合物である。

【0033】
【化9】
JP0005590654B2_000003t.gif



【0034】
[式中、R、R、及びRのうち1つは、Rに対してメタ位又はパラ位にあるRであり、R及びRは互いに独立して下記の複素環置換基を表し、

【0035】
【化10】
JP0005590654B2_000004t.gif

【0036】
、R、R、R及びRからRを除いた残りは、それぞれ独立に、水酸基、メチロール基(-CHOH基)、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子、炭素数1~30の置換若しくは未置換の脂肪族基、又はスルホン酸基を表す。R、R、R、R及びRからRを除いた残りのうち、少なくとも1つは水酸基又はメチロール基(-CHOH基)である。
前記複素環置換基のうち、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表し、Aは、窒素原子を少なくとも1つ含む5員又は6員の複素環基を表す。

【0037】
般式(I)で表される複素環置換芳香族化合物(以下、「一般式(I)で表される化合物」ともいう)は、液体試料中で、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、分子サイズ1nm以下の標的分子、に接触すると、複数集まって前記金属イオンとともに、前記標的分子を取り込んでカプセル型分子を形成する(自己集積化反応)。
本発明においては「分子サイズ1nm以下の標的分子」を、単に「標的分子」ともいう。
また、本発明においては前記標的分子を取り込んだカプセル型分子を、「捕捉カプセル型分子」という。捕捉カプセル型分子の構造の一例については、後述する実施例2(図1)で詳細に説明する。
上記接触により捕捉カプセル型分子が形成される理由は、前記標的分子のサイズが、前記一般式(I)で表される化合物と前記金属イオンとで形成されるカプセル骨格の内部空間(捕捉空間)のサイズよりも小さく、かつ、前記標的分子が前記内部空間から離脱しにくいため、と考えられる。

【0038】
般式(I)で表される化合物は、分子中に水酸基(メチロール基中の水酸基を含む)を少なくとも1つ有しているため、極性溶媒(例えば水)に対する溶解性が高い。更に、前記一般式(I)で表される化合物は骨格中に芳香環を有するため、非極性溶媒に対する溶解性も高い。
従って、前記一般式(I)で表される化合物は、溶媒として極性溶媒及び非極性溶媒の少なくとも一方を含む液体試料中に容易に溶解されるとともに、短時間で捕捉カプセル型分子を形成できる。更に、形成された捕捉カプセル型分子自体も水酸基を有し、かつ、骨格中に芳香環を有するため、溶媒として極性溶媒及び非極性溶媒の少なくとも一方を含む液体試料への溶解性が高い。このため、捕捉カプセル型分子の形成に伴い、液体試料が該捕捉カプセル型分子に由来する色(例えば紫色)に着色する。
従って、一般式(I)で表される化合物と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、標的分子を含む液体試料と、を接触させて、該標的分子を捕捉した捕捉カプセル型分子を形成させ、該捕捉カプセル型分子の形成に伴う液体試料の色の変化を確認することにより、液体試料中の標的分子を、短時間に感度良く検出できる。

【0039】
従って、一般式(1)で表される化合物による標的分子の検出では、長時間(例えば1時間以上)を必要とせず、標的分子の濃度が高い液体試料(例えば20mM以上)を用いる必要もない。
一般式(1)で表される化合物による標的分子の検出では、検出に要する時間は、例えば10分以内とすることができ、更には5分以内とすることもでき、更には1分以内とすることもでき、更には5秒以内とすることもできる。
一般式(1)で表される化合物による標的分子の検出では、液体試料中における標的分子の濃度は、例えば10mM以内とすることができ、更には5mM以内とすることもでき、更には1mM以内とすることもでき、更には0.5mM以内とすることもできる。

【0040】
前記平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンとして、具体的には、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、及びMn2+が挙げられる。

【0041】
前記標的分子において、分子サイズ1nm以下とは、分子の最大径が1nm以下であることを指す。
ここで、分子の最大径は、ファンデルワールス半径を考慮して作製した構造モデルを基に、その分子を構成する末端の原子間距離の最長距離の平均から求められた値を指す。
また、前記標的分子は、陰イオン及び中性分子のいずれであってもよいが、陰イオンが好ましい。

【0042】
本発明における標的分子の具体例を以下に示す。
陰イオンである標的分子としては、例えば、XOで表されるオキソ酸イオン、硝酸イオン(NO)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、リン酸イオン(PO3-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)、アジ化物イオン(N)、等が挙げられる。
前記XOにおけるXは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を表し、中でも、塩素原子又は臭素原子が好ましい。前記XOにおけるaは、1~4の整数を表し、中でも3~4の整数が好ましい。
具体的には、前記XOで表されるオキソ酸イオンとしては、過塩素酸イオン(ClO)、塩素酸イオン(ClO)、又は臭素酸イオン(BrO)が好ましく、過塩素酸イオン(ClO)が特に好ましい。
陰イオンである標的分子としては、上記のうち、過塩素酸イオン(ClO)、塩素酸イオン(ClO)、臭素酸イオン(BrO)、硝酸イオン(NO)、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、リン酸イオン(PO3-)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)が好ましい。
また、中性分子である標的分子としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、が挙げられる。

【0043】
また、本発明における「液体試料」は、溶媒として極性溶媒及び非極性溶媒の少なくとも一方を含む試料であれば特に限定はない。
「液体試料」としては、金属イオン及び一般式(I)で表される化合物の溶解性が高く、捕捉カプセル型分子をより形成し易い観点からは、溶媒として極性溶媒を含む液体試料が好ましく、溶媒中における極性溶媒の比率が30質量%以上である液体試料がより好ましく、溶媒中における極性溶媒の比率が50質量%以上である液体試料が更に好ましく、溶媒中における極性溶媒の比率が80質量%以上である液体試料が更に好ましい。
ここで、極性溶媒としては、水、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、酢酸、ギ酸、等の極性プロトン性溶媒;テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、等の極性非プロトン性溶媒;が挙げられる。また、非極性溶媒としては、ベンゼン、ヘキサン、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、酢酸エチル、塩化メチレン等が挙げられる。
本発明における「液体試料」の具体例としては、例えば、上水、下水、各種廃水(工業廃水等)、液状の中間生成物、工業用水、飲料水、各種水溶液、コロイド溶液(牛乳等)、食品や土壌等を含む懸濁液、等が含まれる。

【0044】
前記一般式(I)において、RとRは同一の複素環置換基であることが、生成する捕捉カプセル型分子の異性体の数を制限でき、生成物の同定を行いやすい観点から好ましい。
及びRにおいて、R及びRは、芳香族環の他の置換基と立体障害を起こすことなく、捕捉カプセル型分子を形成しうる観点から、共に水素原子であることが好ましい。

【0045】
また、前記一般式(I)において、RがRに対してメタ位にあること、即ち、R又はRがRであることが、合成容易性の観点から好ましい。
また、前記一般式(I)において、RがRに対してパラ位にあること、即ち、RがRであることは、標的分子が離脱しない、隙間の無い捕捉空間を形成させる観点からは、好ましい。

【0046】
また、前記一般式(I)において、R、R、R、R及びRからRを除いた残りは、それぞれ独立に、水酸基、メチロール基、水素原子、アセチル基、ハロゲン原子(好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、より好ましくはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、更に好ましくは塩素原子又は臭素原子、特に好ましくは塩素原子)、炭素数1~30の置換若しくは未置換の脂肪族基、又はスルホン酸基を表す。ここで、R、R、R、R及びRからRを除いた残りのうち、少なくとも1つは水酸基又はメチロール基である。
、R、R、R及びRからRを除いた残りとして、より好ましい形態は、水酸基が隣合う形態以外の形態である。ここで、「水酸基が隣合う形態」とは、R及びRが同時に水酸基となる形態、R及びRが同時に水酸基となる形態、R及びRが同時に水酸基となる形態、R及びRが同時に水酸基となる形態、R、R及びRが同時に水酸基となる形態、又は、R、R及びRが同時に水酸基となる形態を指す。
、R、R、R及びRからRを除いた残りが、水酸基が隣合う形態以外の形態であれば、脱水環化をより抑制でき、捕捉カプセル型分子の形成性をより向上させることができる。

【0047】
、R、R、R及びRからRを除いた残りのうち、水酸基(メチロール基中の水酸基を含む)の総数は1~3であることが好ましく、合成容易性の観点からは1又は2であることがより好ましい。

【0048】
また、R、R、R、R及びRから、R、水酸基、及びメチロール基を除いた残りは、いずれも、炭素数1~30の置換若しくは未置換の炭化水素基であることが、カプセル骨格内からの標的分子の離脱を防ぐ観点から好ましい。
また、R、R、R、R及びRから、R、水酸基、及びメチロール基を除いた残りにおいて、隣り合う基が互いに結合して脂肪族環を形成してもよい。

【0049】
、R、R、R及びRで表される炭化水素基の炭素数としては、合成容易性の観点や、一般式(I)で表される化合物同士が立体的に障害となることなくカプセルを形成し、またカプセル骨格内からの標的分子の離脱を防ぐ観点から、1~10が好ましく、1~2がより好ましい。
この炭化水素基に置換可能な置換基としては、ハロゲン原子、スルホン酸基、ニトロ基、ヒドロキシル基、ハロゲン化アルキル基を挙げることができるが、合成容易性、安定性、及び水に対する不溶性の観点から、フッ素原子、又はパーフルオロアルキル基が好ましい。

【0050】
及びRにおいて、Aで表される複素環基は、炭素数1~6のアルキル基やスルホン酸基等の置換基で置換されていてもよい。また、前記複素環基中には、窒素原子の他に、酸素原子や硫黄原子が含まれていてもよい。
Aで表される複素環基としては、前記金属イオンに配位可能な複素環基が挙げられる。このような複素環基としては、ピロール-1-イル基以外のピロリル基、2H-ピロール-1-イル基以外の2H-ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾール-1-イル基以外のイソチアゾリル基、イソオキサゾール-1-イル基以外のイソオキサゾリル基、ピロリジン-1-イル基以外のピロリジニル基、イミダゾリジニル基、ピラゾリジニル基、ピリジン-1-イル基以外のピリジル基、ピラジル基、ピリミジニル基、ピリダジニル基、ピペリジン-1-イル基以外のピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリン-4-イル基以外のモルホリニル基、下記構造式で表される基が好ましい。

【0051】
【化11】
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【0052】
前記の中でも、合成容易性と金属イオンに対する配位性との観点からは、ピロール-1-イル基以外のピロリル基、イミダゾリル基、ピリジン-1-イル基以外のピリジル基、下記構造式で表される基がより好ましい。

【0053】
【化12】
JP0005590654B2_000006t.gif



【0054】
前記の中でもイミダゾリル基が特に好ましい。

【0055】
前記一般式(I)で表される化合物の合成方法としては、国際公開第2008/029804号パンフレットに記載されている方法に準じた方法や、C.-H. Zhou, R.-G. Xie, and H.-M. Zhao, Organic. Preparations and Procedures Int., 1996, 28(3), 345 に記載されている方法に準じた方法を用いることができる。
合成方法について、具体的には、1~3個の水酸基で置換された芳香族化合物と、1,3,5-トリオキサンと、ハロゲン化水素と、酸性条件下で反応させて、一旦ハロゲン置換された芳香族化合物を合成しておき、その後、一般式(I)中のAに相当する化合物とを反応させて、ハロゲン原子をAで置換する方法、等が挙げられる。

【0056】
以下、一般式(I)で表される化合物の例示化合物を示す。
なお、本発明の複素環置換芳香族化合物は、下記式(a)、下記式(c)、下記式(e)、又は下記式(g)で表される化合物である。
下記式(b)、下記式(d)、下記式(f)、下記式(h)、下記式(i)、又は下記式(j)で表される化合物は、参考化合物である。

【0057】
【化13】
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【0058】
【化14】
JP0005590654B2_000008t.gif

【0059】
<分子検出剤>
本発明の分子検出剤は、前記一般式(I)で表される化合物を含む。
本発明の分子検出剤の形態としては、前記一般式(I)で表される化合物単体の形態が挙げられる。この場合、一般式(I)で表される化合物が粉末状又は錠剤状等の固体であることが好ましい。
また、本発明の分子検出剤の別の形態としては、前記固体と他の成分との混合物の形態であってもよい。
また、本発明の分子検出剤の別の形態としては、前記固体又は混合物が溶剤中に溶解または分散された形態であってもよい。

【0060】
前述のとおり、一般式(I)で表される化合物が、液体試料中で、標的分子と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオン(例えば、Cu2+、Ni2+、Co2+、Fe2+、Mn2+)と、に接触すると、捕捉カプセル型分子が形成される。そして、捕捉カプセル型分子の形成に伴い、液体試料は、捕捉カプセル型分子に由来する色(例えば紫色)に着色される。
従って、分子検出剤としての一般式(I)で表される化合物を、前記金属イオンとともに液体試料中に添加することにより、液体試料中の標的分子の捕捉及び検出を行うことができる。
また、分子検出剤としての一般式(I)で表される化合物と、前記金属イオンと、を予め容器に入れておき、そこに液体試料を添加することによっても液体試料中の標的分子の捕捉及び検出を行うことができる。

【0061】
また、本発明の分子検出剤は、前記一般式(I)で表される化合物と前記金属イオンとを含む形態であってもよい。
この形態の分子検出剤と、液体試料と、を接触させることによっても、捕捉カプセル型分子を形成させることができ、標的分子の捕捉及び検出を行うことができる。

【0062】
本発明の分子検出剤が、前記一般式(I)で表される化合物と前記金属イオンとを含む形態としては特に限定はないが、以下の2形態が好適である。
第1の形態は、本発明の分子検出剤が、前記一般式(I)で表される化合物と、前記金属イオンを含む金属塩と、を含む混合物である形態である。
第2の形態は、本発明の分子検出剤が、前記一般式(I)で表される化合物と前記金属イオンとを含む配位化合物を含有する形態である。

【0063】
~ 金属塩 ~
第1の形態は、本発明の分子検出剤が、前記一般式(I)で表される化合物と、前記金属イオンを含む金属塩と、を含む混合物である形態である。
前記金属塩としては、前記金属イオンと、標的分子以外の特定の陰イオンと、からなる金属塩が挙げられる。
標的分子以外の特定の陰イオンとしては、例えば、OH、SO2-、CO2-、CHCOO、C2-、HCOO、Cl、Br、F、アセチルアセトナト(C)、SiF2-、NO等が挙げられる。
前記金属塩としては、CuSO、Cu(OH)、又はCuCOが好ましい。

【0064】
~配位化合物~
第2の形態は、本発明の分子検出剤が、前記一般式(I)で表される化合物と前記金属イオンとを含む配位化合物を含有する形態である。
前記配位化合物を液体試料中で標的分子に接触させると、該配位化合物を構成する前記一般式(I)で表される化合物及び前記金属イオンが、標的分子を取り込んだ捕捉カプセル型分子に再構成される。
このため、単独で存在する一般式(I)で表される化合物を用いる場合と同様に、標的分子を捕捉し、検出することができる。
また、前記配位化合物を用いる方法では、液体試料中に金属イオンを直接溶解させる必要がないため、金属イオンによって着色されていない無色透明の液体試料を、捕捉カプセル型分子に由来する色に着色させることができる。このため、より感度の高い検出が可能となる。

【0065】
前記配位化合物の具体的な構造としては、該配位化合物に含まれる複数の金属イオンのそれぞれに対し、前記一般式(I)で表される化合物が複数配位した高分子錯体の構造が挙げられる。
このような高分子錯体の構造としては、国際公開第2008/029804号パンフレットの段落0062~段落0069、段落0106~段落0122に記載されている構造と同様の構造が挙げられる。
前記高分子錯体の構造として、具体的には、各金属イオンに対し前記一般式(I)で表される化合物が4分子ずつ配位し、この単位が無限鎖状に広がった二次元シート型構造などがある。該二次元シート型構造においては、各一般式(I)で表される化合物は、二つの金属イオン間に配置され、一方の複素環中の窒素原子の部分で一方の金属イオンに配位し、他方の複素環中の窒素原子の部分で他方の金属イオンに配位している。
前記配位化合物には、前記特定の陰イオンや水分子が含まれることがあるが、これらの水分子や陰イオンは、前記金属イオンに配位していてもよいし、前記金属イオンに配位していなくてもよい。

【0066】
また、前記配位化合物の構造が前記陰イオンを含む前記二次元シート型構造である場合、該二次元シート型構造中の陰イオンは、(1)別の二次元シート型構造中の金属イオンと配位結合するか、(2)別の二次元シート型構造中の金属イオンに配位した水分子と水素結合していてもよい。前記(1)及び(2)の場合には、前記配位化合物の構造は二次元シート型構造が複数重なった三次元構造となる。
また、三次元構造の別の例としては、金属イオンに水分子が配位した二次元シート型構造同士が、陰イオン(例えば、硫酸イオン)を介して相互に重なった構造も挙げられる。この構造では、二次元シート型構造中の水分子と、別の二次元シート型構造中の水分子と、が陰イオンを介して相互作用している。

【0067】
前記配位化合物の合成方法としては、前記金属イオン(A成分)と、前記一般式(I)で表される化合物(B成分)とを、モル比〔A成分/B成分〕が1/2となる割合で反応させる方法が挙げられる。

【0068】
前記A成分と前記B成分とを反応させる方法としては、前記A成分と前記標的分子以外の特定の陰イオン(具体例は前述のとおりである)とからなる金属塩を、溶剤(例えば、水、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、アセトン、等)中に溶解させて溶液Aとし、前記B成分を別の溶剤(例えば、ジメチルホルムアミド、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、アセトン、等)中に溶解させて溶液Bとし、溶液Aと溶液Bとを混合して反応させる方法が挙げられる。

【0069】
また、前記A成分と前記B成分とを同一の溶剤中に溶解させて反応させてもよく、この場合の溶剤としては、メタノール、ジメチルホルムアミド、又はエタノール等の単一溶媒を使用してもよいし、水/アセトニトリル、水/ジメチルホルムアミド、水/メタノール、水/エタノール、メタノール/ジメチルホルムアミド、エタノール/ジメチルホルムアミド等の混合溶剤を使用してもよい。

【0070】
以上で説明した配位化合物を分子検出剤として用いる形態には特に限定はなく、例えば、粉末状、錠剤状、又はシート状等の固体である配位化合物を用いる形態が挙げられる。また、前記固体と他の成分との混合物を用いる形態であってもよい。また、前記固体又は混合物が溶剤中に溶解または分散された液体を用いる形態であってもよい。

【0071】
<分子捕捉方法、分子検出方法>
本発明の分子捕捉方法は、液体試料中の標的分子を捕捉する方法であって、前記一般式(I)で表される化合物と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、前記液体試料と、を接触させて、前記標的分子を捕捉した捕捉カプセル型分子を形成させることを含む方法である。
また、本発明の分子検出方法は、液体試料中の標的分子を検出する方法であって、前記一般式(I)で表される化合物と、平面四配位又は正八面体配位可能な金属イオンと、前記液体試料と、を接触させて、前記標的分子を捕捉した捕捉カプセル型分子を形成させ、該捕捉カプセル型分子の形成に伴う液体試料の色の変化により前記標的分子を検出する方法である。

【0072】
本捕捉方法及び本検出方法では、液体試料中で、前記一般式(I)で表される化合物と、前記金属イオンと、標的分子と、が接触して捕捉カプセル型分子が形成される。
捕捉カプセル型分子は、標的分子1分子を内包して捕捉するほか、前記捕捉カプセル型分子の外側(2個の金属イオン)にも、配位結合により標的分子を捕捉することができる。従って、捕捉カプセル型分子1分子は、標的分子を3分子捕捉することが可能である。さらに、捕捉カプセル型分子1分子は、標的分子3分子に加え、別の捕捉カプセル型分子との間に、標的分子をさらに1分子捕捉することが確認されている。即ち、捕捉カプセル型分子1分子は、標的分子を最大4分子まで捕捉できることがわかっている(例えば、図1参照)。
以上の形態は、例えば単結晶構造解析及び可視・紫外分光スペクトル等により確認することができる。

【0073】
また、既述のとおり、捕捉カプセル型分子の形成に伴い、液体試料が該捕捉カプセル型分子に由来する色(例えば紫色)に着色するため、本検出方法では、液体試料中の標的分子を、短時間に感度良く検出できる。
液体試料の色の変化は、目視により簡易的に確認することができる。但し、分光スペクトル測定等により確認してもよい。

【0074】
液体試料中で、一般式(I)で表される化合物と、前記金属イオンと、前記標的分子と、を接触させる方法については、特に限定はない。
例えば、一般式(I)で表される化合物単体である分子検出剤を、前記金属イオンとともに液体試料中に添加することにより、液体試料中の標的分子の捕捉及び検出を行うことができる。
また、一般式(I)で表される化合物単体である分子検出剤と、前記金属イオンと、を予め容器に入れておき、そこに液体試料を添加することにより、液体試料中の標的分子の捕捉及び検出を行うことができる。
また、一般式(I)で表される化合物と前記金属イオンとを含む分子検出剤を、液体試料中に添加することにより、液体試料中の標的分子の捕捉及び検出を行うことができる。
また、一般式(I)で表される化合物と前記金属イオンとを含む分子検出剤を予め容器に入れておき、そこに液体試料を添加することによっても液体試料中の標的分子の捕捉及び検出を行うことができる。

【0075】
本捕捉方法及び本検出方法では、前記一般式(I)で表される化合物と金属イオンと標的分子との接触頻度を高め、捕捉カプセル型分子形成反応の反応性を向上させる観点からは、液体試料を加熱してもよい。
加熱の温度としては、前記一般式(I)で表される化合物の種類、分子検出剤の種類、標的分子の種類などによっても異なるが、0~100℃が好ましく、20~70℃がより好ましい。

【0076】
本捕捉方法及び本検出方法では、液体試料中における前記一般式(I)で表される化合物と金属イオンと標的分子との接触後、液体試料を撹拌してもよく、撹拌せずにそのまま放置してもよいが、接触頻度を高め、捕捉カプセル型分子形成反応の反応性を向上させる観点からは、撹拌することが好ましい。
撹拌には、攪拌器、容器の振とう、超音波の照射、マイクロウェーブの照射、加熱による対流、などの手段を用いることができる。中でも、超音波の照射が好ましい。

【0077】
本捕捉方法及び本検出方法では、液体試料中の捕捉カプセル型分子を前記一般式(I)で表される化合物に再生し、回収することができる。
ここで、前記捕捉カプセル型分子は、一般的な金属錯体と同様の構成を有するため、一般的な金属錯体と同様の方法により分解し、再度前記一般式(I)で表される化合物を生じる。
再生の方法としては、例えば、以下の方法を用いることができる。
即ち、捕捉カプセル型分子をアセトニトリル、あるいはメタノール等の有機溶媒に抽出し、その溶液に硫化水素などを金属沈殿剤として接触させて、金属硫化物を沈殿させる。該金属沈殿剤としては、硫化水素以外に、金属を水酸化物塩や炭酸塩として沈殿させることができる、アルカリ試薬や炭酸カリウムなどを用いることができる。次に、溶液中に残った前記一般式(I)で表される化合物を濃縮乾固して集め、アセトニトリル、あるいはメタノールなどの有機溶媒から再結晶させ、前記一般式(I)で表される化合物を再生させることが可能である。
また、前記一般式(I)で表される化合物を再生する方法として、上記の金属沈殿剤を接触させる方法以外に、硝酸や塩酸などの酸を接触させる方法を用いることもできる。即ち、捕捉カプセル型分子が抽出された溶液に前記酸を添加することにより、前記金属イオンと前記一般式(I)で表される化合物との間の配位結合を切断し、捕捉カプセル型分子を分解することができる。捕捉カプセル型分子分解後の前記溶液を濃縮乾固後、水を添加して前記一般式(I)で表される化合物を沈殿として取り出し、続いて、アセトニトリルやメタノールなどの有機溶媒から前記一般式(I)で表される化合物を再結晶させて再生させることが可能である。

【0078】
本発明の分子検出方法では、上述のように液体試料中の標的分子を直接的に短時間に感度良く検出できるため、廃液、飲料、又は牛乳等の液体だけでなく、液体試料中で前記一般式(I)で表される化合物及び前記金属イオンと共に撹拌することにより、食品、土壌等に含まれる標的分子を容易に検出することができる
【実施例】
【0079】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例において、溶液の調製、または測定に用いた水はすべてイオン交換水を用いた。
【実施例】
【0080】
〔実施例1〕
<例示化合物(a)(3,5-ビス(イミダゾール-1-イル-メチル)-2,4,6-テトラメチルフェノール;bitph)の合成>
下記反応スキーム1に従って例示化合物(a)(bitph)の合成を行った。
【実施例】
【0081】
【化15】
JP0005590654B2_000009t.gif


【実施例】
【0082】
反応スキーム1の詳細を以下に説明する。
まず、2,4,6-トリメチルフェノール(上記化合物1)(13.6g,0.10mol)と、1,3,5-トリオキサン(9.00g,0.10mol)と、を30%HBr/CHCOOH溶液(141ml)の中に入れ、80℃で2時間還流した。その後、室温で冷やし、700mlの氷水に注ぎ、出てきた生成物を濾過して集め、真空乾燥した(生成物の収量:31.43g)。
生成物は、3,5-ビス(ブロモメチル)-2,4,6-トリメチルフェノール(上記化合物2)と、3,5-ビス(ブロモメチル)-2,4,6-トリメチルフェニルエタノエート(上記化合物3)と、の混合物であった。
【実施例】
【0083】
上記で得られた化合物2と化合物3との混合物(2.06g)と、イミダゾール(4.29g,0.063mol)と、をメタノール(51ml)中で、65℃で16時間還流した。その後、炭酸ナトリウム(6.30g,0.059mol)を加え、さらに2時間還流を続けた。氷冷した後濾過し、瀘液を濃縮した。濃縮したものをジクロロメタンと水で分液し、ジクロロメタン層を抽出した。そこに硫酸マグネシウムを入れて残った水を除去した後、硫酸マグネシウムを濾過して除き、ジクロロメタンを濃縮した。濃縮したものをヘキサンに滴下したところ、白色の固体(bitphの粗生成物)が析出した。
この白色固体(bitphの粗生成物)をメタノールに溶かし水を加えて再結晶して、bitphを得た(収量:0.600g)。bitphの化合物1からの収率は29%であった。
得られたbitphの構造は、元素分析及びNMRにより同定した。測定結果は以下のとおりである。
【実施例】
【0084】
~元素分析結果(%)~
Calcd for C17H20N4O : C, 68.89; H, 6.80; N, 18.90.
Found: C, 68.89; H, 7.01; N, 18.65.
~NMR結果~
1H NMR (CDCl3)δ7.22 (s, 2H), 7.03 (s, 2H), 6.79 (s, 2H), 5.17 (s, 4H), 2.25(s, 6H), 2.18 (3H)
【実施例】
【0085】
以上、一般式(I)で表される化合物の合成例として例示化合物(a)の合成例を説明したが、その他の一般式(I)で表される化合物についても、出発物質や反応させる物質を適宜変更すること等により、上記と同様の方法により合成できる。
【実施例】
【0086】
〔実施例2〕
<過塩素酸を取り込んだ捕捉カプセル型分子の形成>
過塩素酸銅六水和物を溶かした水溶液(3mM)と、bitphを溶かしたアセトニトリル溶液(6mM)と、を混合し、約1週間静置したところ、紫色の結晶が得られた。この結晶を何回か再結晶したところ、きれいな紫色のブロック状の結晶(以下、「紫色結晶」ともいう)が析出した(収率74%)。
以下、得られた紫色結晶について、元素分析及び結晶解析を行った結果を示す。
【実施例】
【0087】
~元素分析結果(%)~
Calcd for C68H100Cl4Cu2N16O30 : C, 43.20; H, 5.33; N, 11.85.
Found: C, 43.57; H, 5.12; N, 11.83
~単結晶X線構造解析結果~
a = 13.502(5) Å, b = 14.020(7) Å, c = 13.940(7) Å, α = 87.83(3)°, β = 66.237(19)°, γ = 66.89(2)°, V = 2198.4(18) Å3, Space Group : P-1(#2), Z = 1, R(I>2.00σ(I)) = 0.1362, Rw = 0.1952
【実施例】
【0088】
上記元素分析結果及び単結晶X線構造解析結果より、前記紫色結晶は、以下の反応によって得られた捕捉カプセル型分子の10水和物であることがわかった。
【実施例】
【0089】
【化16】
JP0005590654B2_000010t.gif
【実施例】
【0090】
上記元素分析結果及び結晶解析結果より明らかとなった捕捉カプセル型分子の構造を、図1に示す。
図1に示すように、捕捉カプセル型分子の構造は、Cu2+イオン2個及びbitph4分子により形成されたカプセル骨格が、過塩素酸イオン1分子を内包する構造である。更に、このカプセル骨格に含まれる2個のCu2+イオンには、カプセル骨格の外側に過塩素酸イオンが1分子ずつ配位している。更に、当該カプセル骨格と別のカプセル骨格との間に、過塩素酸イオン1分子が捕捉されている。
以上のようにして捕捉カプセル型分子1分子は、過塩素酸イオンを合計4分子捕捉している。
【実施例】
【0091】
〔実施例3〕
<過塩素酸イオンの捕捉に伴う液体試料の分光特性の変化>
硫酸銅とbitphとを含む水溶液(モル比〔Cu2+:bitph〕=2:4)に、過塩素酸ナトリウム水溶液を滴下していき、過塩素酸イオン(ClO)のモル比率を上げていったときの可視紫外吸収スペクトルの変化を測定した。
ここで、可視紫外吸収スペクトルは、日本分光(株)製のV570 UV-Vis.NIR supectrometerにて測定した。
測定結果を図2に示す。
【実施例】
【0092】
図2に示すように、過塩素酸ナトリウム水溶液滴下前は650nm付近に吸収がみられた(波形a)。このとき溶液の色は青緑色であった。
過塩素酸イオン(ClO)のモル比率を増加させるに従い、650nm付近に吸収が小さくなっていった。更に、過塩素酸イオン(ClO)のモル比率を増加させると、650nm付近に吸収は更に小さくなり、代わりに560nm付近に新たな吸収が現れ、溶液の色が次第に紫色に変化していった。
モル比〔Cu2+:bitph:ClO〕が2:4:1となった以降はスペクトルの変化がとまった(波形b)。このとき溶液の色は紫色であった。
新たに現れた560nmの吸収は、捕捉カプセル型分子の吸収と一致したことから、過塩素酸を取り込んだ捕捉カプセル型分子が形成されたことが確認された。
また、捕捉カプセル型分子の形成に伴い、溶液の色が紫色に変化することが確認された。
【実施例】
【0093】
〔実施例4〕
<呈色を利用した過塩素酸イオンの検出>
(試料1の調製)
1.5mg(6×10-6mol)の硫酸銅と、3.6mg(1.2×10-5mol)のbitphと、をサンプル瓶にそれぞれ量りとり、そこに、純水3mlを滴下して試料1(ブランク)とした。
純水の滴下から1分後の試料1の色を目視で観察した。結果を表1及び図3に示す。
【実施例】
【0094】
(試料2~試料5の調製)
試料1の調製において、純水3mlを、下記表1に示す過塩素酸ナトリウム(NaClO)濃度の過塩素酸ナトリウム水溶液3mlに変更したこと以外は試料1の調製と同様にして、試料2~試料5をそれぞれ調製した。
過塩素酸ナトリウム水溶液の滴下から1分後の試料2~試料5の色を目視で観察した。結果を表1及び図3に示す。
【実施例】
【0095】
図3は、試料1~試料5の写真であり、左から順に、試料1、試料2、試料3、試料4、試料5である。
【実施例】
【0096】
【表1】
JP0005590654B2_000011t.gif
【実施例】
【0097】
表1及び図3に示すように、ブランク(純水)である試料1、NaClO濃度が0.5mMである試料2では、試料の色は薄い青緑色であった。
これに対し、NaClO濃度が1.0mM以上である試料3~試料5では、試料の色は、濁りがかった薄い紫色であった。
以上の結果より、bitphは、液体試料中の過塩素酸イオンを検出できることがわかった。
【実施例】
【0098】
以上のように、モル比〔Cu2+:bitph:ClO〕が2:4:1である試料3、及び、試料3よりも過塩素酸イオンのモル比率が高い試料4及び試料5において、試料の色が、濁りがかった薄い紫色に変化した。この結果は、銅原子2個とbitph4分子とで形成されるカプセル骨格に過塩素酸イオン1分子が内包されて捕捉カプセル型分子が形成され、その結果、試料の色が、銅イオンに由来する薄い青緑色から捕捉カプセル型分子に由来する濁りがかった薄い紫色に変化したことを示している。
ここで、粉末固体として使用した硫酸銅及びbitphの量を調整することで、過塩素酸イオン濃度の検出下限を変更することもできる。例えば、上記において硫酸銅及びbitphの量をいずれも1/2とした場合には、過塩素酸イオン濃度0.5mMの試料中における過塩素酸イオンを検出することが可能となる。
また、未知の過塩素酸イオン濃度の溶液に対し、硫酸銅及びbitphの量を変化させながら添加していき、溶液の色が変化したときの硫酸銅及びbitphの量から、過塩素酸イオン濃度を定量することもできる。
【実施例】
【0099】
以上、bitphを用い試料の発色により過塩素酸イオンを検出する実施例について説明したが、bitphは硝酸イオンに対しても同様の発色を示した。更に、テトラフルオロホウ酸イオン(BF)、ヘキサフルオロリン酸イオン(PF)、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CFSO)等、分子サイズ1nm以下の分子について、同様の発色を示した。
また、上記実施例では、一般式(I)で表される化合物の一例としてbitphを用いたが、bitph以外の一般式(I)で表される化合物を用いた場合にも、液体試料中の分子サイズ1nm以下の分子を、直接的に短時間に感度良く検出できる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2