TOP > 国内特許検索 > 生体適合性ポリマー基板 > 明細書

明細書 :生体適合性ポリマー基板

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5544600号 (P5544600)
公開番号 特開2012-010978 (P2012-010978A)
登録日 平成26年5月23日(2014.5.23)
発行日 平成26年7月9日(2014.7.9)
公開日 平成24年1月19日(2012.1.19)
発明の名称または考案の名称 生体適合性ポリマー基板
国際特許分類 A61L  31/00        (2006.01)
A61B   5/0408      (2006.01)
A61B   5/0478      (2006.01)
A61B   5/0492      (2006.01)
FI A61L 31/00 Z
A61B 5/04 300M
A61B 5/04 300V
A61B 5/04 300J
請求項の数または発明の数 5
全頁数 8
出願番号 特願2010-150519 (P2010-150519)
出願日 平成22年6月30日(2010.6.30)
審査請求日 平成24年9月5日(2012.9.5)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】503360115
【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構
【識別番号】592216384
【氏名又は名称】兵庫県
発明者または考案者 【氏名】濱田 浩幸
【氏名】蒋 永剛
【氏名】樋口 行平
【氏名】前中 一介
個別代理人の代理人 【識別番号】100127203、【弁理士】、【氏名又は名称】奈良 泰宏
審査官 【審査官】原田 隆興
参考文献・文献 特表2005-528253(JP,A)
特表2006-512128(JP,A)
特開2007-167636(JP,A)
特表2012-511963(JP,A)
特開2012-139306(JP,A)
調査した分野 A61L 31/00
A61B 5/0408
A61B 5/0478
A61B 5/0492
特許請求の範囲 【請求項1】
生体データの検出に用いる検出部を有した生体適合性ポリマー基板であって、
前記検出部に接続されている電極を一方の面又は内部に有した第1層を備え、
前記第1層が、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン(以下、「DSDT」)とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(以下、「TTC」)とを、100:2~73:1の比率で重合させてなるものであることを特徴とする生体適合性ポリマー基板。
【請求項2】
前記第1層よりも硬い第2層が、前記第1層の他方の面に設けられており、
前記第2層が、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサンとテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとを含んでいるものであることを特徴とする請求項1に記載のポリマー基板。
【請求項3】
前記電極に接続されている配線が、前記第1層に埋設されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマー基板。
【請求項4】
前記電極に接続されている配線が、前記第2層に埋設されていることを特徴とする請求項2に記載のポリマー基板。
【請求項5】
前記電極が、DSDTとTTCとを100:2~73:1の比率で重合させてなる第3層に埋設されていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のポリマー基板。

発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、人の皮膚などに貼付することが可能な生体適合性ポリマー基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、従来から、下記特許文献1に開示されているように、生体内の蠕動運動を直接的に測定する際に適用可能とすることができる歪センサが公知となっている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2010-189747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1の歪みセンサは生体適合性を有しているものの被対象物に縫いつけて取り付けなければならず、皮膚などに貼り付けて使用することができるものではない(上記特許文献1の段落0032参照)。
【0005】
そこで、本発明の目的は、人の皮膚などに貼り付けてデータを検出することが可能なポリマー基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、生体データの検出に用いる検出部を有した生体適合性ポリマー基板であって、前記検出部に接続されている電極を一方の面又は内部に有した第1層を備え、前記第1層が、ジメチルビニル末端ジメチルシロキサン(以下、DSDT(Dimethyl siloxane,Dimethylvinyl-terminated)と表現することがある。)とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン(以下、TTC(Tetrametyhyl tetravinyl cyclotetrasiloxane)と表現することがある。)とを、100:2~73:1の比率で重合させてなるものである。
【0007】
上記(1)の構成によれば、第1層は生体適合性を有したものであるとともに粘性を有しているので、皮膚などに長時間貼り付けたまま、生体データを検出することが可能である。また、第1層は柔軟性があるので、皮膚などに長時間貼り付けてもストレスを最小限に抑えることができる。また、DSDTとTTCとを100:2の比率で含む場合には、本発明のポリマー組成物は、皮膚などへの貼付と剥離とを何回も繰り返すことができる。
【0008】
(2) 上記(1)の生体適合性ポリマー基板においては、前記第1層よりも硬い第2層が、前記第1層の他方の面に設けられており、前記第2層が、DSDTとTTCとを含んでいるものであることが好ましい。
【0009】
上記(2)の構成によれば、データ検出に用いる検出部を固定しやすくなる。
【0010】
(3) 上記(1)又は(2)の生体適合性ポリマー基板においては、前記電極に接続されている配線が、前記第1層に埋設されていることが好ましい。
【0011】
(4) 上記(2)の生体適合性ポリマー基板においては、前記電極に接続されている配線が、前記第2層に埋設されていることが好ましい。
【0012】
上記(3)又は(4)の構成によれば、配線を保護することができる。また、生体適合性ポリマー基板外に配線が出ることがないことから、配線を第2層に埋設しない場合に比べて、生体適合性ポリマー基板をより小型化することができる。
【0013】
(5) 上記(1)~(4)の生体適合性ポリマー基板においては、前記電極が、DSDTとTTCとを100:2~73:1の比率で重合させてなる第3層に埋設されていることが好ましい。
【0014】
上記(5)の構成によれば、電極を保護することができるとともに、人の皮膚などに貼り付けた場合の電極による接触的なストレスをなくすことができる。また、電極分の貼り付け面積を減少させることも可能であるため、電極を第3層に埋設しない場合に比べて、生体適合性ポリマー基板をより小型化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生体適合性ポリマー基板を示した概略図であって、(a)が側面図、(b)が上視図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る生体適合性ポリマー基板を示した側面概略図である。
【図3】本発明の実施例1及び比較例9に係るポリマー組成物のスチロールへの貼り付き性の実験結果を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例1及び比較例9に係るポリマー組成物の人の皮膚への貼り付き性の実験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<第1実施形態>
以下、図1を用いて、本発明の第1実施形態に係る生体適合性ポリマー基板について説明する。

【0017】
生体適合性ポリマー基板100は、板状のポリマー層(第1層)10と、板状のポリマー層(第2層)11と、電極12、13、14と、データ取得用モジュール(検出部)15とを備えているものである。

【0018】
ポリマー層10は、電極12、13、14を一方の面に有しているものである。また、ポリマー層10は、DSDTとTTCとを60℃程度~80℃程度の範囲の温度環境下において、100:2~73:1の比率で重合させてなるPDMSである。このPDMSは、生体適合性を有しているものでもある。

【0019】
ポリマー層11は、ポリマー層10の他方の面に設けられており、ポリマー層10よりも硬いものである。また、ポリマー層11は、ポリマー層10側の面と反対側の面にデータ取得用モジュール15を有している。なお、ポリマー層11は、DSDTとTTCとを60℃程度~80℃程度の範囲の温度環境下において、10:1~9:2の比率で重合させてなるPDMSからなるものでもよいし、ポリイミドからなるものであってもよい。

【0020】
電極12、13、14は、被対象物からデータを取得するための部位であり、順に、配線16、17、18を介して、データ取得用モジュール15に接続されている。なお、配線16、18の一部及び配線17は、ポリマー層10、11に埋設されており、保護されている。

【0021】
データ取得用モジュール15は、電極12、13、14及び配線16、17、18を介して得た生体データなどを記憶する記憶部と、外部と前記記憶部における生体データなどを送受信可能に接続することができる送受信部(図示せず)とを有した基板である。

【0022】
次に、電極12、13、14側を人の皮膚に貼り付けた際の生体適合性ポリマー基板100の動作について説明する。まず、電極12、13、14において、人の皮膚から心筋由来電圧信号を検出し、順に、配線16、17、18を介して、データ取得用モジュール15に送信する。心筋由来電圧信号を受信したデータ取得用モジュール15は、記憶部において、心筋由来電圧信号を記憶する。記憶された生体データは、前記送受信部から外部のデータ蓄積部(図示せず)に送信され、該生体データが蓄積される。

【0023】
本実施形態によれば、ポリマー層10は生体適合性を有したものであるとともに粘性を有しているので、皮膚などに長時間貼り付けたまま、生体データを検出することが可能である。また、ポリマー層10は柔軟性があるので、皮膚などに長時間貼り付けてもストレスを最小限に抑えることができる。

【0024】
また、ポリマー層10よりも硬いポリマー層11により、データ取得用モジュール15を生体適合性ポリマー基板100に固定しやすくなっている。

【0025】
<第2実施形態>
次に、図2を用いて、本発明の第2実施形態に係る生体適合性ポリマー基板について説明する。なお、本実施形態における符号20~28の部位は、順に、第1実施形態における符号10~18の部位と同様のものであるので、説明を省略することがある。

【0026】
生体適合性ポリマー基板200は、ポリマー層(第3層)29とポリマー層30とを有している点で、第1実施形態における生体適合性ポリマー基板100と異なっている。

【0027】
ポリマー層29は、ポリマー層20の電極22、23、24側の面に設けられており、電極22、23、24を覆うように保護している。なお、ポリマー層29は、ポリマー層20と同様の材質からなるものである。

【0028】
ポリマー層30は、ポリマー層21のモジュール25側の面に設けられており、モジュール25及び配線26、28を覆うように保護している。なお、ポリマー層30は、ポリマー層21と同様の材質からなるものである。

【0029】
本実施形態によれば、第1実施形態と同様の作用効果を奏することができる。また、ポリマー層30内にモジュール25及び配線26、28を埋設することで、モジュール25及び配線26、28を保護することができる。また、ポリマー層30内に配線26、28を埋設しない場合に比べて、生体適合性ポリマー基板200を小型化することができる。

【0030】
また、人の皮膚などに貼り付けた場合の電極22、23、24による接触的なストレスをなくすことができる。また、電極22、23、24分の貼り付け面積を減少させることも可能であるため、電極22、23、24をポリマー層29に埋設しない場合に比べて、生体適合性ポリマー基板200をより小型化することが可能である。
【実施例】
【0031】
次に、実施例を用いて、上記第1実施形態に係るポリマー層10を構成するポリマー組成物について説明する。
【実施例】
【0032】
下記表1の実施例1~4及び比較例1~8に示した体積比で、DSDTとTTCとを混合した後、80℃の環境下で放置し、ポリマー組成物を生成することを試みた。その結果、比較例6~8についてはポリマー組成物を生成することができなかったが、実施例1~4及び比較例1~4については、ポリマー組成物を生成することができた。なお、実施例1~4及び比較例1~4の条件で生成されたポリマー組成物を、各条件につき数個ずつ作成し、該ポリマー組成物それぞれについて人の皮膚への貼り付き耐久性を調査した。該調査の結果を表1に示す。
【実施例】
【0033】
【表1】
JP0005544600B2_000002t.gif
【実施例】
【0034】
表1から、生体適合性を有した実施例1~4に係るポリマー組成物は、直接、人の皮膚などに長期間貼り付けることが可能であることがわかった。実施例2~4に係るポリマー組成物に関しては、実施例1に係るポリマー組成物よりも粘着性は強いが、柔らかいために貼り付けた場所から移動してしまうことがあった。
【実施例】
【0035】
また、実施例1に係るポリマー組成物と比較例9に係る市販商品(ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)製のBAND-AID(登録商標))とについて、スチロールの表面と人の皮膚とに貼ったり剥がしたりすることを繰り返して、貼り付き性の変化を調査した。スチロールの表面について行った調査の結果を図3のグラフに示し、人の皮膚について行った調査の結果を図4のグラフに示す。なお、実施例1に係るポリマー組成物又は比較例9に係る市販商品を被対象物に貼って剥がしてという2つの作業を1サイクルと定義し、図3及び図4のx軸にサイクル数を示す。また、図3及び図4のy軸は、実施例1に係るポリマー組成物と比較例9に係る市販商品を剥がす際に必要な張力の値を示すものである。
【実施例】
【0036】
図3及び図4のグラフから、実施例1に係るポリマー組成物の貼り付き性は、スチロールの表面について行った調査では、80回未満では異なるものの80回以上で比較例9に係る市販商品と同様のものとなった。また、実施例1に係るポリマー組成物の貼り付き性は、人の皮膚について行った調査では、40回未満では異なるものの40回以上で比較例9に係る市販商品と同様のものとなった。なお、実施例1に係るポリマー組成物の貼り付き性は、最初から200回まで上記サイクルを繰り返しても変化せず、安定したものであることがわかった。したがって、実施例1のポリマー組成物は、被貼付物への貼付と剥離とを何回も繰り返すことができることがわかった。すなわち、実施例1のポリマー組成物を何回も使用することができることから、実施例1のポリマー組成物は、被貼付物への貼付と剥離とが1回でできなくなってしまうものに比べて経済的である。
【実施例】
【0037】
なお、実施例2~4に係るポリマー組成物については、スチロールの表面又は人の皮膚に貼り付くものの、剥がすと、該ポリマー組成物がスチロールの表面又は人の皮膚にいくらか残留するという状況になった。
【実施例】
【0038】
<変形例>
なお、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。例えば、上記実施形態及び実施例においては、少なくとも2つのポリマー層を有したものであるが、1つのポリマー層の一方の面にモジュールが搭載できるとともに、他方の面が人の皮膚に貼り付けることができるように構成してもよい。
【実施例】
【0039】
また、上記第2実施形態においては、ポリマー層20とポリマー層29とを同様の材質(PDMS)からなるものとしたが、ポリマー層20をポリイミドなどの柔軟性を有した他のポリマーで構成してもよい。
【実施例】
【0040】
また、上記第2実施形態においては、ポリマー層30とポリマー層21とを同様の材質からなるものとしたが、所定の柔軟性を有したものであれば、異なる材質からなるものであってもよい。
【実施例】
【0041】
また、上記第2実施形態においては、モジュール25及び配線26、28をポリマー層30内に埋設したが、モジュール25及び配線26、28のうちいずれか1つ以上を埋設するだけでもよい。また、ポリマー層30を設けない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0042】
10、11、20、21、29、30 ポリマー層
12、13、14、22、23、24 電極
15、25 データ取得用モジュール
16、17、18、26、28 配線
100、200 生体適合性ポリマー基板
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3