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明細書 :ゲルアクチュエータを用いた連繋機構

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5448091号 (P5448091)
公開番号 特開2012-023843 (P2012-023843A)
登録日 平成26年1月10日(2014.1.10)
発行日 平成26年3月19日(2014.3.19)
公開日 平成24年2月2日(2012.2.2)
発明の名称または考案の名称 ゲルアクチュエータを用いた連繋機構
国際特許分類 H02N  11/00        (2006.01)
FI H02N 11/00 Z
請求項の数または発明の数 4
全頁数 14
出願番号 特願2010-159329 (P2010-159329)
出願日 平成22年7月14日(2010.7.14)
審査請求日 平成23年11月10日(2011.11.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】橋本 稔
【氏名】松木 俊明
【氏名】柴垣 南
審査官 【審査官】西山 智宏
参考文献・文献 特開2005-330457(JP,A)
特開平11-141580(JP,A)
特開昭60-81527(JP,A)
特表2008-531434(JP,A)
山野美咲、外4名,収縮型PVCゲルアクチュエータの構造と駆動特性,日本ロボット学会誌,日本,一般社団法人日本ロボット学会,2009年 9月,Vol.27,No.7,p.718-724
調査した分野 H02N2/00
H02N11/00
特許請求の範囲 【請求項1】
第1の部材と第2の部材を互いに接離する方向に押動するゲルアクチュエータと、該ゲルアクチュエータを駆動する電源とを備えるゲルアクチュエータを用いた連繋機構であって、
前記ゲルアクチュエータは、
導電材からなるメッシュ体と、該メッシュ体を挟んで対向配置される、誘電性高分子材料からなる第1のゲル及び第2のゲルと、該第1のゲルと第2のゲルのそれぞれの外面に設けられた電極とを備え、
記電源により前記メッシュ体と前記電極との間に電圧を印加した際には、前記メッシュ体のメッシュ孔に前記第1のゲルと第2のゲルの一部が入り込むことにより厚さ方向に収縮し、電圧の印加を解除した際には、前記第1のゲルと第2のゲルとが元の厚さに復帰する作用をなし、
前記第1の部材と、軸線の回りで回転駆動される第2の部材との間においてブレーキ作用を生じさせる機構として、
前記ゲルアクチュエータを、前記第1の部材を押動することにより、第1の部材と第2の部材を互いに接離させる配置に設け、
前記第1の部材を、該第1の部材と第2の部材とが接離する方向には移動自在に、前記第2の部材の回転方向には回り止めして支持し、
前記ゲルアクチュエータを、前記メッシュ体と電極との間に電圧を印加した際に、厚さ方向に収縮して前記第1の部材と第2の部材とが離間し、電圧の印加を解除した際に、元の厚さに復帰し前記第1の部材と第2の部材とが接触して前記第1の部材と第2の部材との間においてブレーキ作用を生じさせる配置とすることを特徴とするゲルアクチュエータを用いた連繋機構。
【請求項2】
前記メッシュ体と、前記第1のゲル及び第2のゲルと、前記電極とを備える基本単位となるゲルアクチュエータを、隣接層間において前記電極を共用する配置として、厚さ方向に複数個積み重ねたゲルアクチュエータを使用することを特徴とする請求項1記載のゲルアクチュエータを用いた連繋機構。
【請求項3】
前記第1のゲル及び第2のゲルとして、ポリ塩化ビニル(PVC)からなる誘電性高分子材料に、可塑剤としてアジピン酸ジブチル(DBA)を加えたものを使用することを特徴とする請求項1または2記載のゲルアクチュエータを用いた連繋機構。
【請求項4】
前記第2の部材が、電動の駆動源に連繋され、前記ゲルアクチュエータを駆動する電源と、前記駆動源の電源とが連動してON-OFF制御されることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項記載のゲルアクチュエータを用いた連繋機構。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本出願は、ゲルアクチュエータを用いた連機構に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、福祉機器や介護機器として、人の動作を補助することを目的とする製品が提供されている。これらの製品では、動作を補助するための駆動源としての電気モータや、特定の移動位置において機器の動作を停止させるブレーキ機構といった制御機構が用いられている。これらの制御機構は、電気モータ等によって駆動されている部材に他の部材を連繋して、機械的な作用を及ぼす構成となっている。
たとえば、ブレーキ機構は電気モータ等によって駆動される部材に他の部材を接離させて部材の動作を停止させる作用をなすものであり、クラッチ機構は部材に他の部材を接離させることにより、部材と他の部材との機械的な連結を制御する作用をなす。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開2009-273204号公報
【0004】

【非特許文献1】日本ロボット学会誌Vol.27,No.7,pp.718~724,2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気モータに連繋して用いられるブレーキ機構には、従来、電磁式のブレーキが用いられることが多い。しかしながら、電磁式のブレーキは電磁石を使うために重くなるという問題があり、応答が速いためにブレーキ作用時に騒音が発生するという問題があった。また、クラッチ機構も同様に、電磁力を利用したものや油圧を利用するものがあるが、装置が複雑になったり、装置の小型化が困難であるという問題があった。
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、小型化が可能で装置に容易に組み込むことができ、取り扱いが容易なゲルアクチュエータを用いた連機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るゲルアクチュエータを用いた連機構は、第1の部材と第2の部材を互いに接離する方向に押動するゲルアクチュエータと、該ゲルアクチュエータを駆動する電源とを備えるゲルアクチュエータを用いた連繋機構であって、前記ゲルアクチュエータは、導電材からなるメッシュ体と、該メッシュ体を挟んで対向配置される、誘電性高分子材料からなる第1のゲル及び第2のゲルと、該第1のゲルと第2のゲルのそれぞれの外面に設けられた電極とを備え、前記電源により前記メッシュ体と前記電極との間に電圧を印加した際には、前記メッシュ体のメッシュ孔に前記第1のゲルと第2のゲルの一部が入り込むことにより厚さ方向に収縮し、電圧の印加を解除した際には、前記第1のゲルと第2のゲルとが元の厚さに復帰する作用をなし、前記第1の部材と、軸線の回りで回転駆動される第2の部材との間においてブレーキ作用を生じさせる機構として、前記ゲルアクチュエータを、前記第1の部材を押動することにより、第1の部材と第2の部材を互いに接離させる配置に設け、前記第1の部材を、該第1の部材と第2の部材とが接離する方向には移動自在に、前記第2の部材の回転方向には回り止めして支持し、前記ゲルアクチュエータを、前記メッシュ体と電極との間に電圧を印加した際に、厚さ方向に収縮して前記第1の部材と第2の部材とが離間し、電圧の印加を解除した際に、元の厚さに復帰し前記第1の部材と第2の部材とが接触して前記第1の部材と第2の部材との間においてブレーキ作用を生じさせる配置とすることを特徴とする。
【0007】
また、ゲルアクチュエータとして、前記メッシュ体と、前記第1のゲル及び第2のゲルと、前記電極とを備える基本単位となるゲルアクチュエータを、隣接層間において前記電極を共用する配置として、厚さ方向に複数個積み重ねたゲルアクチュエータを使用する場合は、基本単位の単一のゲルアクチュエータを使用する場合とくらべて変位量を大きく取ることができる点で有効である。
また、ゲルアクチュエータの前記第1のゲル及び第2のゲルとして、ポリ塩化ビニル(PVC)からなる誘電性高分子材料に、可塑剤としてアジピン酸ジブチル(DBA)を加えたものがとくに有効に用いられる。
【0008】
ゲルアクチュエータを用いた連機構が第1の部材と第2の部材との間においてブレーキ作用を奏する機構を備える場合に、前記第2の部材が、電動の駆動源に連繋され、前記ゲルアクチュエータを駆動する電源と、前記駆動源の電源とが連動してON-OFF制御される構成とすることが有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るゲルアクチュエータを用いた連繋機構は、第1の部材と第2の部材の少なくとも一方を押動する機構にゲルアクチュエータを使用し、ゲルアクチュエータ自体が簡素に構成されることから、小型化、装置への組み込みが容易で、取り扱いが容易な連繋機構として提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ゲルアクチュエータの構成と作用を示す説明図である。
【図2】積層型のゲルアクチュエータの構成と作用を示す説明図である。
【図3】ゲルアクチュエータに電圧を印加したときの変位量の測定結果を示すグラフである。
【図4】ゲルアクチュエータに用いるゲルの組成による応答特性を測定した結果を示すグラフである。
【図5】ゲルアクチュエータによる回復応力を測定するための測定装置の構成を示す説明図である。
【図6】ギャップを変えたときの回復応力を測定した結果を示すグラフである。
【図7】ゲルアクチュエータを用いたブレーキ機構の構成例を示す説明図である。
【図8】ゲルアクチュエータを用いたブレーキ機構の特性を測定するための測定装置の構成を示す説明図である。
【図9】モータに印加する電圧のプロフィールを示すグラフである。
【図10】モータに電圧を印加したときのモータの回転角の測定結果を示すグラフである。
【図11】モータに電圧を印加したときのブレーキトルクの測定結果を示すグラフである。
【図12】ギャップにより制動トルクがどのようになるかを示すグラフである。
【図13】モータへの通電をOFFにした後に、ブレーキを作用させた場合とブレーキを作用させない場合でのモータの回転量を示すグラフである。
【図14】モータへの通電をOFFにした後におけるモータに作用するトルクを示すグラフである。
【図15】モータへの通電をOFFにした後におけるモータの回転角度を示すグラフである。
【図16】モータに一定時間正弦波電圧を印加した後のブレーキの作用を測定した結果を示すグラフである。
【図17】モータに一定時間正弦波電圧を印加した後、ブレーキを作用させたときにモータが停止するまでの時間を測定した結果を示すグラフである。
【図18】モータに一定時間正弦波電圧を印加した後、ブレーキを作用させたときにモータが停止するまでの回転角を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(ゲルアクチュエータの構成とその作用)
図1は、本発明に係るゲルアクチュエータを用いた連繋機構に用いるゲルアクチュエータの構成とその作用を示す。
ゲルアクチュエータ10は、導電材からなるメッシュ体12と、メッシュ体12を挟む位置に対向配置された第1のゲル14a及び第2のゲル14bと、第1のゲル14aと第2のゲル14bのそれぞれの外面に接して設けられた第1の電極16aと第2の電極16bとからなる。

【0013】
メッシュ体12は導電材を用いて、網状に形成したものである。本実施形態においては、線径0.2mm、メッシュ孔1.1×1.1mm、厚さ0.4mmのステンレスメッシュを使用した。また、第1の電極16aと第2の電極16bには厚さ0.01mmのステンレス箔を使用した。第1の電極16aと第2の電極16bは、第1のゲル14aと第2のゲル14bの外面の全面を覆うように設けられる。
図1に示すゲルアクチュエータ10は、厚さ方向に膨縮作用をなす、基本単位となるゲルアクチュエータである。

【0014】
第1のゲル14aと第2のゲル14bには、電気刺激によって屈曲変形やクリープ変形をなす、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリメタクリル酸メチル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ナイロン6、ポリビニルアルコール、ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル等の誘電性高分子材料が用いられる。
本実施形態においては、第1のゲル14a及び第2のゲル14bとしてPVCを使用した。具体的には、PVCに、可塑剤としてアジピン酸ジブチル(DBA)を加えたものを使用した。この混合物を、テトラヒドロフラン(THF)を溶媒として完全に溶解した後、溶液をシャーレにキャストし、シャーレを水平にして数日間放置し、THFが完全に蒸発したらゲルを取り出し、適当な大きさに切り出して使用した。ゲルの膜厚は0.6~1.0mmである。

【0015】
PVCゲルを作製する際には、フタル酸ジブチル(DBP)等のアジピン酸ジブチル(DBA)以外の可塑剤を用いることもできる。本実施形態において、可塑剤としてアジピン酸ジブチル(DBA)を使用しているのは、陽極となるメッシュ体との粘着性が、可塑剤としてDBPを用いたものよりも低く、ゲルアクチュエータに印加する電圧を除去した際の応答性がよくなるからである。

【0016】
ゲルアクチュエータ10は、図1に示すように、第1及び第2の電極16a、16bとメッシュ体12との間に電圧を印加しない状態(discharging)においては、第1のゲル14aと第2のゲル14bの対向面が離間し、第1及び第2の電極16a、16bとメッシュ体12との間に電圧を印加すると(charging)、第1のゲル14aと第2のゲル14bの一部がメッシュ体12のメッシュ孔12aに入り込む。このように、ゲルアクチュエータ10は、第1及び第2の電極16a、16bとメッシュ体12との間に電圧を印加する操作をON-0FFすることにより、収縮状態と元の厚さに復帰する状態とに切り替えられる。すなわち、ゲルアクチュエータ10は電圧(メッシュ体が陽極、電極が陰極)の印加操作によって厚さ方向に変位するアクチュエータとして作用する。

【0017】
図2は、基本単位のゲルアクチュエータ10を、厚さ方向に複数個(図示例は5個)重ね合わせて作製した積層型のゲルアクチュエータ20の構成とその作用を示す。積層型のゲルアクチュエータ20を形成する際には、上層と下層の隣接層のゲルアクチュエータ10について、第1の電極16aと第2の電極16bを共通に使用してゲルアクチュエータ10を積み重ねるようにする。
積層型のゲルアクチュエータ20の最下面と最上面には、電気的絶縁を兼ねて、第1、第2のゲル14a、14bと同材からなるゲル14を被着する。

【0018】
積層型のゲルアクチュエータ20は、各々のメッシュ体12が陽極に接続され、第1の電極16aと第2の電極16bが各々陰極に接続される。これにより、基本単位となるゲルアクチュエータ10ごとに電圧が印加される。
図2の左側の図は、メッシュ体12と第1、第2の電極16a、16bとの間に電圧を印加していない状態(discharging)、右側の図は、メッシュ体12と第1、第2の電極16a、16bとの間に電圧を印加した状態(charging)である。ゲルアクチュエータ20は、電圧を印加させることによって収縮し、電圧を除去することによって元の状態に復帰して、厚さ方向に伸縮する(膨縮する)作用をなす。図示例のように、基本単位のゲルアクチュエータ10を複数個積層することにより、単一のゲルアクチュエータ10を使用する場合に比べて、ゲルアクチュエータ全体の変位量を大きくすることができる。

【0019】
図2に示すゲルアクチュエータ20は、平面形状が円形で、中央部に厚さ方向に連通する透孔20aを形成したものである。第1のゲル14aと第2のゲル14bはシート状に形成したゲルをカットして作製するから、ゲルアクチュエータの用途に応じて、適宜形状及び大きさに形成することができる。メッシュ体12及び第1、第2の電極16a、16bについても任意の形状に形成することができ、ゲルアクチュエータ20を任意の形状及び寸法に形成することは容易である。
ゲルアクチュエータとしては、もちろん透孔を形成しない形式のものであってもよい。また、基本単位のゲルアクチュエータ10を積み重ねる積層数についても任意に設定することができる。

【0020】
(変位量の測定)
図3は、ゲルアクチュエータに電圧を印加した際に、どの程度の変位が生じるかを測定した結果を示す。
測定で使用したサンプルは、基本単位のゲルアクチュエータを8層積層したものであり、ゲルにはPVCとDBA(可塑剤)の組成比を、PVC:DBA=10:40(DBA40)としたものを使用し、20メッシュのメッシュ体を使用した。
図3は、ゲルアクチュエータに印加する電圧(DC)を600V/mm、1200V/mm、1800V/mmとしたときの変位量の測定結果を示す。変位測定には、レーザ式変位計測器を使用した。図3は、印加電圧を1800V/mmとしたときの変位量が約1mm、1200V/mmとしたときの変位量が約0.95mm、600V/mmとしたときの変位量が約0.6mmであることを示す。電圧を印加していないときのゲルアクチュエータの全体厚は8mmであり、前記測定におけるゲルアクチュエータの収縮率は、約7.5%、12%、13%となる。

【0021】
(周波数応答特性の測定)
図4は、ゲルアクチュエータに用いるゲルの組成、具体的には可塑剤に使用するDBA(アジピン酸ジブチル)の量によってゲルアクチュエータの応答特性がどのように変わるかを測定した結果を示す。サンプルに用いたのは、PVCとDBAの組成比を、PVC:DBA=10:40(DBA40)10:60(DBA60)、10:80(DBA80)とした3種である。
測定は、ゲルアクチュエータに矩形パルスの電圧(500V)を印加し、0.1Hz~10Hzの周波数で電圧をON-OFFし、そのときの変位の振幅を測定する方法によった。図4はゲイン線図である。

【0022】
測定結果は、図4に示すように、サンプルDBA40が3個のサンプルのうち最も応答特性にすぐれていることを示す。サンプルDBA40では、-3dBになるまでのバンド幅が7Hzであった。アクチュエータの応答速度は、ゲルアクチュエータに用いるゲルの弾力性に依存する。ゲルの弾力性は誘電性高分子材料に加える可塑剤の分量比に依存しており、可塑剤の分量比が多くなるにしたがって、ゲルの弾力性が劣り、これによって応答特性が低下する。

【0023】
(回復応力の測定)
図5は、ゲルアクチュエータの回復応力の測定に用いた装置の概略構成を示す。この装置は、測定対象物であるゲルアクチュエータ20を支持台30上にセットし、ゲルアクチュエータ20の上面と圧力センサ32との離間距離(Gap)を変えて、ゲルアクチュエータ20が元の厚さに復帰するときの応力(回復応力)を測定するものである。
圧力センサ32は、ガイド34により鉛直方向に移動可能に支持された支持ロッド33の下端に取り付けられている。ノブ35により支持ロッド33を軸線の回りに回動させることにより圧力センサ32が鉛直方向に移動し、マイクロメータ36により圧力センサ32の移動量が検知される。

【0024】
本実施形態において使用したゲルアクチュエータ20は、前述した積層型のゲルアクチュエータであり、本測定においては、ゲルにDBA40を使用し、基本単位のゲルアクチュエータを8層積層したサンプルを使用した。ゲルアクチュエータ20のメッシュ体12が陽極に接続され、第1の電極16aと第2の電極16bが陰極に接続される。
測定は、陽極と陰極との間に印加する電圧を224(V/mm)、449(V/mm)、674(V/mm)、898(V/mm)とした場合の各々について、ゲルアクチュエータ20と圧力センサ32とのギャップを変えてゲルアクチュエータ20の回復応力を測定した。

【0025】
ゲルアクチュエータ20に電圧を印加すると、ゲルアクチュエータ20は厚さ方向に収縮するから、そのときのゲルアクチュエータ20の上面と圧力センサ32とのギャップをマイクロメータ36によって調整し、ギャップを変えて、電圧を切った際にどのくらいの回復応力を示すかを圧力センサ32によって検出した。図5(a)は、ゲルアクチュエータ20に電圧を印加した場合で、ゲルアクチュエータ20と圧力センサ32との間にギャップが生じている状態、図5(b)は、電圧を切った場合で、ゲルアクチュエータ20が圧力センサ32を押し上げている状態を示す。

【0026】
図6は、回復応力の測定結果を示す。この測定結果は、ゲルアクチュエータ20に印加する電圧が高いほど回復応力が大きくなり、ギャップが狭いほど回復応力が大きくなることを示している。すなわち、回復応力を大きくするには、ゲルアクチュエータ20を収縮させた状態で、ゲルアクチュエータ20の上面と圧力センサ32とをより近接させて配置するのがよい。ゲルアクチュエータによる回復応力(Recovery stress)は2kPa程度あり、この回復応力を利用することによって、ブレーキやクラッチといった機械的な連繋機構にゲルアクチュエータを利用することが可能になる。

【0027】
(ゲルアクチュエータを用いたブレーキ機構)
図7は、ゲルアクチュエータを機械的な連繋機構であるブレーキ機構に利用した例を示す。このブレーキ機構では、枠体に固定されたベース40上に積層型のゲルアクチュエータ20を配置し、ベース40との間でゲルアクチュエータ20を厚さ方向に挟む配置に第1のパッド42を配置している。第1のパッド42にはベース40上に起立させて固定支持した回り止め用のガイドロッド44が挿通され、第1のパッド42は鉛直方向には移動自在に、水平面内においては回り止めして支持される。ガイドロッド44はゲルアクチュエータ20と干渉しないように、ゲルアクチュエータ20の外周囲に配置される。

【0028】
ベース40、ゲルアクチュエータ20及び第1のパッド42には、電動モータ等の駆動源に連繋して回転駆動される駆動ロッド45が挿通する。ベース40、ゲルアクチュエータ20、第1のパッド42には、駆動ロッド45が挿通する透孔が設けられている。
駆動ロッド45の端部は第1のパッド42よりも外方に延出し、駆動ロッド45の延出端側に、駆動ロッド45と一体に回転するロータ46が固定される。ロータ46の第1のパッド42に対向する面には第1のパッド42に対向する配置に第2のパッド48が固定される。
ゲルアクチュエータ20は基本単位となるゲルアクチュエータを複数層に積層したものであり、ゲルアクチュエータ20のメッシュ体は電源の正極側に、電極(第1の電極、第2の電極)は電源の負極側に接続される。

【0029】
前述したように、ゲルアクチュエータ20は陽極(メッシュ体)と陰極(電極)との間に電圧を印加すると厚さ方向に収縮する。図7(a)は、ゲルアクチュエータ20に電圧を印加した状態でゲルアクチュエータ20が厚さ方向に収縮した状態、図7(b)は、ゲルアクチュエータ20に印加する電圧を切った状態でゲルアクチュエータ20が厚さ方向に膨らんだ(電圧を印加しない元の状態に復帰した)状態を示す。
図7(a)、(b)に示すように、電源をONとした際に第1のパッド42と第2のパッド48とが離間し、電源をOFFとした際に第1のパッド42と第2のパッド48とが接触するように第1のパッド42と第2のパッド48の相互間隔を設定しておけば、電源をONにした状態でロータ46がフリー回転し、電源をOFFにした状態でロータ46にブレーキ力を作用させることができる。

【0030】
電動モータなどを使用して機器を駆動する場合、駆動用の電源をOFFにした際にブレーキ力を作用させて駆動力が伝達されることを阻止するように制御する場合がある。図7に示すブレーキ機構は、ゲルアクチュエータ20に接続する電源をOFFにした際にロータ46にブレーキ力が作用する設定となるもので、ネガティブタイプのブレーキと呼ばれる。駆動源である電動モータの電源と、ゲルアクチュエータ20に接続する電源とのON-OFFを連動させておけば、電動モータの駆動を停止させた際にゲルアクチュエータ20の作用により自動的にブレーキが作用して機器の駆動を停止させることができる。このような制御方法は、電動モータの駆動停止とブレーキとが連動することによって、機器操作の安全性を高めることができ、電動モータの駆動が停止した際に瞬時にブレーキが作用することによって、機器を特定の動作停止位置に正確に保持させることが可能になる。ロボットに使用する電動モータを制御するような場合に、このような制御は有効である。

【0031】
図7はゲルアクチュエータ20をネガティブタイプ(負作動)のブレーキとして作用するように構成した例であるが、ゲルアクチュエータ20に電圧を印加した際にブレーキ力が作用し、電圧を切った際にブレーキ力が解除される構成(ポジティブ(正作動)タイプのブレーキ)とすることももちろん可能である。たとえば、図7に示す例において、第1のパッド42の形状を、第1のパッド42によって第2のパッド48を抱え込む形状とし、ゲルアクチュエータ20が収縮した際に、第2のパッド48の上面に第1のパッド42が接触する構成とすればよい。

【0032】
また、図7では、ベース40、ゲルアクチュエータ20、第1のパッド42を挿通するように駆動ロッド45を配置したが、ブレーキ力を作用させるためのゲルアクチュエータ20等の配置はこの例に限るものではない。ゲルアクチュエータ20を備えるブレーキ機構は、ブレーキを作用させるロータ等の対象に対して適宜配置とすることができる。また、図7では、ゲルアクチュエータ20により第1のパッド42を移動させて第2のパッド48との間でブレーキ力を作用させるようにしているが、第2のパッド48を使用せず、第1のパッド42をロータ46に直接、押接させるようにしてもよい。

【0033】
図7に示す実施形態においては、相互間においてブレーキ力が作用する第1のパッド42が本願発明における第1の部材に相当し、第2のパッド48が第2の部材に相当するが、より大きな概念としては、ベース40と第1のパッド42とを含めて第1の部材ととらえることもでき、ロータ46と第2のパッド48とを含めて第2の部材ととらえることもできる。このように、本願発明におけるゲルアクチュエータは、一般的な部材間において機械的作用を連繋する作用を及ぼすものとして把握することができる。

【0034】
図7に示すように、ベース40と第1のパッド42との間にゲルアクチュエータ20を介装させてブレーキ作用を生じさせる構成とする方法は、ゲルアクチュエータ20を駆動体に対して直列的に配置できる点からも、小型の機器内にきわめてコンパクトに装着することができるという利点がある。
また、回復応力の測定の項において述べたように、パッド間のギャップ(離間間隔)を適当に調節することによって、回復応力(作用力)の強さを調節することが可能であり、パッド間のギャップを調節することによってブレーキ力の利き方を調節することができ、用途に応じて、たとえばソフトにブレーキ力を作用させるといった調節が可能になる。

【0035】
(ブレーキ作用の測定装置)
図8は図7に示したゲルアクチュエータを用いたブレーキ機構の特性を測定するために用いた測定装置の概略構成を示す。この測定装置は、支持枠50に固定設置したモータ52の出力軸52aと同軸上に、トルクセンサ54と、ブレーキ機構を構成するベース40、ゲルアクチュエータ20、第1のパッド42及び第2のパッド48と、ロータ46とを配置したものである。モータ52には出力軸52aの回転角度(回転数)を検知するためのエンコーダ51が付設されている。モータ52の出力軸52aはカップリング55、56を介して駆動ロッド45に連繋する。
なお、測定で使用したゲルアクチュエータ20は、図2に示す積層型のゲルアクチュエータであり、DBA40をゲルとしてゲルアクチュエータを8層積層したものである。

【0036】
図9はゲルアクチュエータによるブレーキトルク等の測定において、モータ52に印加した電圧のプロフィールを示す。これらの測定においては、ゲルアクチュエータ20に電圧を印加して2秒後から、時間とともに直線的に電圧を上げて測定した。
図10は、第1のパッド42と第2のパッド48との離間間隔(Gap)を変えて、モータ52に印加する電圧を図9に示すプロフィールにしたがって上げたときのモータ52の回転角(回転数)を測定した結果を示す。図中で0.00%とあるのは、ギャップを0としてモータ52に電圧を印加した場合、例として、6.06%とあるのは、ギャップの間隔をゲルアクチュエータ20の全体厚に対して6.06%に相当する間隔に設定した場合の意味である。

【0037】
先の回復応力の測定において、ギャップを狭くした場合に回復応力が大きくなることを示した。図10は、ギャップが広くなるにしたがって、モータ52がより早く回転を始動開始すること、ギャップが0の場合には、10秒後から回転開始したことを示す。このギャップを変えたときのモータの回転始動の測定結果も、ブレーキを作用させるパッドの間隔をより狭くすることによってブレーキの利きが有効になることを示している。

【0038】
図11は、図9に示すプロフィールにしたがってモータ52に印加する電圧を上げていきながらトルクセンサ54によって測定したブレーキトルクの測定結果を示す。モータ52に電圧を印加開始した時点からトルクが検出される。
図12は、ギャップを変えたときにどの程度のブレーキトルク(制動トルク)が得られるかを示したものである。図のプロット点は、モータ52が回転しはじめたときのトルク値を示す。図12では、ギャップが8.3%、10%のときの測定値も示している。この実施例のブレーキ機構では、最大でおよそ40mNmのトルク値が得られた。このトルク値は、小型のモータであればブレーキ機構として十分に利用できる数値である。

【0039】
図13は、モータに印加する電圧を切った後におけるブレーキの作用によってモータ52の回転がどうなるかを測定した結果を示す。モータ52に一定の電圧を印加して5秒後(図の縦の点線の位置)にモータ52への通電をOFFにした。ブレーキを作用させない場合は、モータ52への通電をOFFにした後もモータ52は回転を続け、累積回転角度が約40000(deg)となったところで停止した。これに対して、ブレーキを作用させた場合はモータ52への通電をOFFにした後、1秒以内のうちにモータ52の回転が停止したことを示す。本実施例の測定装置はネガティブタイプのブレーキであり、モータ52への通電をOFFにすることによって自動的にブレーキが作用している。

【0040】
図14は、モータ52への通電をOFFにした場合に、実際にブレーキがどの程度の時間内に作用しはじめるかをトルクセンサ54を用いて測定した結果を示す。図15は、ブレーキを作用させモータ52への通電をOFFにした後のモータ52の回転量をエンコーダ51を用いて測定した結果を示す。
図14に示すトルク値の測定結果は、モータ52への通電をOFF(5秒後)にしてから、0.094秒後(5.094秒後)にブレーキが作用開始したことを示す。図15に示す測定結果は、モータ52への通電をOFFにしてから、0.5秒後には、モータ52は完全に停止していることを示す。
なお、図13、14、15に示す実験はブレーキのギャップを3.32%に設定したものである。

【0041】
本実施例のブレーキ機構では、ブレーキ用のパッド間にギャップがあるため、ゲルアクチュエータに電圧を印加して実際にブレーキが利きはじめるまでに時間ロスがある。図14、15はこの時間の遅れを示すものであるが、駆動源として電動モータを使用する場合は、通常、1:100程度に減速して使用する場合が多い。この場合には、モータが停止するまでに要する回転角度は20度程度であり、モータの通電をOFFにしてからわずかに回転するだけで停止させることができる。

【0042】
図16、17、18は、ゲルアクチュエータを用いたブレーキ機構の耐久性について測定した結果を示す。図16は、モータ52に対して一定時間にわたって正弦波の電圧を印加し、ある程度時間経過した後にモータ52への通電をOFFにして、その時のブレーキの作用を観察したものである。ブレーキを作用させると、モータ52は短時間のうちに回転停止するのに対して、ブレーキを作用させない場合は、そのまま回転を続けて一定時間後に停止することを示す。
モータ52を長時間作動させた場合は、ゲルアクチュエータがその間ON状態に保持されるから、図16は、ゲルアクチュエータに長時間電圧を印加した場合にブレーキ性能が劣化したか否かを観察したことになる。

【0043】
図17、18は、モータ52に正弦波の電圧を印加する操作を一定時間行った後、ブレーキ作用が正常に作用するか否かを検査した結果を示す。図17は、ブレーキを作用させた際に、どの程度の時間内にモータの回転が停止するかを測定した結果、図18は、ブレーキを作用させた際に、モータが停止するまでに回転した角度を測定した結果を示す。
図17、図18とも、10000秒程度までの経過時のブレーキ特性を測定したものであるが、ゲルアクチュエータの一定時間の電圧印加によってブレーキ特性が劣化することはみられず、ゲルアクチュエータを用いるブレーキ機構は十分な耐久性を備えていることを示している。

【0044】
(他の利用例)
上述した実施形態においては、部材間においてブレーキを作用させるアクチュエータとしてゲルアクチュエータを利用した例を示した。前述したように、ブレーキ機構には駆動源としてさまざまなものが用いられ、ブレーキを作用させる対象物もさまざまであるから、それらの構成に合わせてゲルアクチュエータの配置等を設定すればよい。
たとえば、図7に示す例においては、第1のパッド42をゲルアクチュエータ20によって駆動する構成としたが、ロータ46を駆動ロッド45と一体回転しかつ軸線方向に可動とし、ロータ46をゲルアクチュエータ20によって押動することによって第1のパッド42と第2のパッド48との間でブレーキ力が作用するようにすることも可能である。このように、ゲルアクチュエータを作用させる部材についても適宜選択できる。

【0045】
また、図7に示した例は、第1のパッド42と第2のパッド48との間においてブレーキ力を作用させるものであるが、この作用は、第1のパッド42と第2のパッド48との間において機械的な連結力を作用させる関係とみることもできる。図7において、第1のパッド42とベース40とを軸線の回りで回転支持する構成とすれば、ゲルアクチュエータ20により第1のパッド42を第2のパッド48に押接するとロータ46の回転力が第1のパッド42を介してベース40側に伝達されて、ベース40側が回転することになる。このゲルアクチュエータ20によって第1のパッド42と第2のパッド48とを接離させる作用は、機械的連結を制御するクラッチ機構に相当する。このように、ゲルアクチュエータを用いた連繋機構をクラッチ機構として構成することもできる。

【0046】
本発明に係るゲルアクチュエータは小型でコンパクトな製品であるから、制御用ロボット等のきわめて多数個の電動モータ等の駆動源を備える装置に組みつけて使用することが容易である。また、ゲルアクチュエータは電圧をON-OFFする操作によって簡単に制御でき、電気的な制御も容易である。また、電圧を印加した際の電流値はわずかであり、電力消費量が少なくて済むという利点があり、多くの電動モータを使用するといった装置に好適に用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、部材間において機械的な作用を及ぼすブレーキ機構やクラッチ機構に利用することができる。
【符号の説明】
【0048】
10 ゲルアクチュエータ
12 メッシュ体
14 ゲル
14a 第1のゲル
14b 第2のゲル
16a 第1の電極
16b 第2の電極
20 ゲルアクチュエータ
30 支持台
32 圧力センサ
36 マイクロメータ
40 ベース
42 第1のパッド
45 駆動ロッド
46 ロータ
48 第2のパッド
51 エンコーダ
52 モータ
54 トルクセンサ






図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
7
【図9】
8
【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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