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明細書 :水性蛍光塗料用蛍光材料およびその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5431995号 (P5431995)
公開番号 特開2011-162728 (P2011-162728A)
登録日 平成25年12月13日(2013.12.13)
発行日 平成26年3月5日(2014.3.5)
公開日 平成23年8月25日(2011.8.25)
発明の名称または考案の名称 水性蛍光塗料用蛍光材料およびその製造方法
国際特許分類 C09K  11/08        (2006.01)
C09D   7/12        (2006.01)
C09D   5/22        (2006.01)
FI C09K 11/08 B
C09D 7/12
C09D 5/22
請求項の数または発明の数 6
全頁数 12
出願番号 特願2010-029573 (P2010-029573)
出願日 平成22年2月13日(2010.2.13)
審査請求日 平成24年4月4日(2012.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】米沢 晋
【氏名】高島 正之
【氏名】金 在虎
【氏名】横山 周平
個別代理人の代理人 【識別番号】100141472、【弁理士】、【氏名又は名称】赤松 善弘
審査官 【審査官】井上 恵理
参考文献・文献 特開2007-177075(JP,A)
特開2004-359923(JP,A)
特開2007-131773(JP,A)
特開2006-342082(JP,A)
特開2009-167151(JP,A)
調査した分野 C09K 11/00- 11/89
C09D 1/00-201/10
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
貝殻を焼成してなる貝殻の焼成粉末を水で抽出した抽出液を有効成分として含有する蛍光材料であって、前記貝殻がホタテガイの貝殻、ムラサキイガイの貝殻およびサザエの貝殻からなる群より選ばれた少なくとも1種の貝殻であり、前記貝殻の焼成粉末が貝殻を150~400℃の温度で焼成してなる焼成粉末であり、前記抽出液が前記貝殻の焼成粉末を5~60℃の水中で抽出した抽出液であり、前記抽出液に含まれている焼成粉末が除去されていることを特徴とする水性蛍光塗料用蛍光材料
【請求項2】
請求項1に記載の抽出液を蒸発乾固してなる固形物を有効成分として含有する水性蛍光塗料用蛍光材料。
【請求項3】
請求項1または2に記載の水性蛍光塗料用蛍光材料が配合されてなる水性蛍光塗料。
【請求項4】
貝殻を焼成し、粉砕することによって得られた貝殻の焼成粉末を水中で分散させ、得られた分散液から当該貝殻の焼成粉末を除去する水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方法であって、前記貝殻がホタテガイの貝殻、ムラサキイガイの貝殻およびサザエの貝殻からなる群より選ばれた少なくとも1種の貝殻であり、当該貝殻を150~400℃の温度で焼成し、当該貝殻を焼成することによって得られた焼成粉末を5~60℃の水で抽出し、得られた抽出液に含まれている焼成粉末を除去することを特徴とする水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方法。
【請求項5】
貝殻を焼成した後に粉砕する請求項に記載の水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方法。
【請求項6】
さらに、前記貝殻の焼成粉末が除去された分散液を蒸発乾固する請求項4または5に記載の水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、水性蛍光塗料用蛍光材料およびその製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、蓄光性塗料、暗闇でも視認可能な蓄光性タイルなどの建材、避難誘導表示板などに有用である水性蛍光塗料用蛍光材料およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホタテガイなどの貝殻をそのまま産業廃棄物として処理するのではなく、その貝殻を有効活用するために種々の研究がされている。例えば、ホタテガイの貝殻を有効利用する方法として、100℃を超える温度でホタテガイの貝殻を焼成処理することによって蛍光体を製造する方法(例えば、特許文献1参照)、貝殻粉末とアルミナおよび/または水酸化アルミニウム粉末と賦活剤とを含有する原料を焼結することによって蓄光性蛍光体を製造する方法(例えば、特許文献2参照)、貝殻を焼成後に粉砕することによって得られた粉末をCa-α-サイアロン蛍光体の製造原料として用いる方法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。
【0003】
しかし、従来の貝殻を使用した蛍光体は、いずれも、水に不溶の固形の貝殻の粉末が使用されているため、例えば、塗料などに使用した場合、分散性および形成される塗膜の平滑性(レベリング性)に劣り、また塗料の流動性が低下するという欠点があることから、その用途展開に大きな制約がある。
【0004】
したがって、近年、産業廃棄物として廃棄されている貝殻を有効利用し、水溶性に優れた機能性材料の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特開2004-359923号公報
【特許文献2】特開2007-131773号公報
【特許文献3】特開2007-177075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、例えば、水性塗料などの用途に好適に使用することができる蛍光材料およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)貝殻を焼成してなる貝殻の焼成粉末を水で抽出した抽出液を有効成分として含有する蛍光材料であって、前記貝殻がホタテガイの貝殻、ムラサキイガイの貝殻およびサザエの貝殻からなる群より選ばれた少なくとも1種の貝殻であり、前記貝殻の焼成粉末が貝殻を150~400℃の温度で焼成してなる焼成粉末であり、前記抽出液が前記貝殻の焼成粉末を5~60℃の水中で抽出した抽出液であり、前記抽出液に含まれている焼成粉末が除去されていることを特徴とする水性蛍光塗料用蛍光材料
(2)前記(1)に記載の抽出液を蒸発乾固してなる固形物を有効成分として含有する水性蛍光塗料用蛍光材料、
)前記(1)または2)に記載の水性蛍光塗料用蛍光材料が配合されてなる水性蛍光塗料、
)貝殻を焼成し、粉砕することによって得られた貝殻の焼成粉末を水中で分散させ、得られた分散液から当該貝殻の焼成粉末を除去する水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方法であって、前記貝殻がホタテガイの貝殻、ムラサキイガイの貝殻およびサザエの貝殻からなる群より選ばれた少なくとも1種の貝殻であり、当該貝殻を150~400℃の温度で焼成し、当該貝殻を焼成することによって得られた焼成粉末を5~60℃の水で抽出し、得られた抽出液に含まれている焼成粉末を除去することを特徴とする水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方法、
)貝殻を焼成した後に粉砕する前記()に記載の水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方法、および
)さらに、前記貝殻の焼成粉末が除去された分散液を蒸発乾固する前記(または5)に記載の水性蛍光塗料用蛍光材料の製造方
関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来、廃棄物として処理されていた貝殻を原料として有効利用し、例えば、水性塗料などの用途に好適に使用することができる水性蛍光塗料用蛍光材料およびその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1~3で得られた貝殻の焼成粉末のX線回折図である。
【図2】本発明の実施例1~3で得られた蛍光材料に白色光または紫外線を照射したときの状態を示す図面代用写真である。
【図3】本発明の実施例1~3で得られた蛍光材料に波長370nmの紫外線を照射したときの蛍光発光スペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の蛍光材料は、貝殻を焼成することによって得られる貝殻の焼成粉末を水で抽出した抽出液を有効成分として含有する。したがって、本発明の蛍光材料は、前記抽出液のみで構成されていてもよく、前記抽出液を有効成分として含有しているのであれば、本発明の目的が阻害されない範囲内で他の成分が含まれていてもよい。

【0011】
本発明の蛍光材料は、貝殻を焼成し、粉砕することによって得られた貝殻の焼成粉末を水中で分散させ、得られた分散液から当該貝殻の焼成粉末を除去することによって製造することができる。

【0012】
本発明の蛍光材料の原料として、貝殻が用いられる。本発明によれば、従来、産業廃棄物として廃棄されている貝殻を有効利用することができるのみならず、当該貝殻が原料として用いられているのにもかかわらず、に優れた蛍光材料を提供することができる。

【0013】
本発明の蛍光材料の原料として用いられる貝殻としては、蛍光強度の観点から、ホタテの貝殻、ムラサキイガイの貝殻およびサザエの貝殻が好ましい。これらの貝殻は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。

【0014】
本発明の蛍光材料は、前記したように、従来のホタテガイなどの貝殻のみならず、ムラサキイガイなどの貝殻を原料として用いることができる。ムラサキイガイは、原子力発電所、火力発電所などの臨海発電所の取水管に付着し、取水効率の低下を招く原因となるため、定期的に取り除く必要があるが、その回収量は、月間数百トンにのぼる。本発明によれば、従来のホタテガイの貝殻のみならず、こうした発電所の取水管に付着しているムラサキイガイなどの貝殻を産業廃棄物として廃棄するのではなく、機能性材料として有効活用することができる。

【0015】
本発明の蛍光材料の原料として用いられる貝殻の焼成粉末は、例えば、貝殻を焼成した後に粉砕することによって製造することができるほか、貝殻を粉砕した後に焼成することによって製造することができる。一般に貝殻は、そのままの状態では硬いが、焼成することによって脆くなることから、本発明においては、貝殻を焼成した後に粉砕することにより、貝殻の焼成粉末を製造することが好ましい。

【0016】
従来、貝殻を蛍光体として用いる場合には、特開2007-131773号公報の段落[0027]に記載されているように、1127~1727℃(1400~2000K)という高温で貝殻を焼結しなければならない。

【0017】
これに対して、本発明の蛍光材料の製造方法においては、従来のように貝殻を高温で焼結する必要がない点に、1つの大きな特徴がある。本発明の蛍光材料の製造方法は、従来よりも貝殻の焼成温度を格段に低くすることができるので、エネルギー効率および生産性の点で非常に優れている。

【0018】
本発明において、貝殻の焼成温度は、蛍光強度を高める観点から、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上、さらに好ましくは250℃以上であり、貝殻に含まれている有効成分の燃焼を抑制する観点から、好ましくは400℃以下、より好ましくは350℃以下である。

【0019】
貝殻の焼成時間は、貝殻の種類、貝殻の焼成温度などによって異なるので一概には決定することができないため、これら貝殻の種類、貝殻の焼成温度などに応じて適宜、決定することが好ましい。貝殻の焼成時間は、通常、蛍光強度を高める観点から、好ましくは0.3時間以上、より好ましくは0.5時間以上、さらに好ましくは1時間以上であり、本発明の蛍光材料の生産性を向上させる観点から、好ましくは24時間以内、より好ましくは20時間以内、さらに好ましくは10時間以内である。

【0020】
なお、貝殻を焼成する際の昇温速度および貝殻の焼成後の冷却速度は、特に限定されない。通常、貝殻を焼成する際の昇温速度は、0.1~100℃/min程度であればよい。また、貝殻の焼成後の冷却速度は、0.1~100℃/min程度であればよいが、エネルギー効率の観点から、強制冷却をするのではなく、放冷することが好ましい。

【0021】
貝殻を焼成する際の焼成雰囲気は、特に限定されず、例えば、大気であってもよく、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスであってもよいが、生産性の観点から、大気であることが好ましい。

【0022】
貝殻を焼成する際に用いられる装置は、特に限定されない。かかる装置としては、例えば、電気炉などの焼成炉などが挙げられる。

【0023】
以上のようにして貝殻を焼成することにより、焼成された貝殻を得ることができる。貝殻を焼成した後は、焼成された貝殻を室温に冷却すればよい。

【0024】
貝殻は、前記したように、焼成する前に粉砕してもよいが、焼成前の貝殻は硬いのに対して焼成後の貝殻は脆いことから、貝殻を焼成した後に粉砕することが好ましい。なお、貝殻を焼成した後に粉砕する場合、貝殻を容易に焼成することができるようにするために、貝殻を焼成する前に、ある程度の大きさとなるようにあらかじめ破砕させておいてもよい。

【0025】
貝殻を粉砕する際には、例えば、ボールミル、ビーズミル、サンドミル、ロールミル、振動ミル、ジェットミルなどの粉砕装置を用いることができる。貝殻は、通常、粉砕後の貝殻の粒子径が10~100メッシュ(JISメッシュ)となるように粉砕することが、抽出効率を向上させる観点から好ましい。

【0026】
以上のようにして得られた貝殻の焼成粉末は、次に水を用いた抽出に供される。
本発明においては、貝殻の焼成粉末を水で抽出する点にも1つの大きな特徴がある。本発明では、抽出溶媒として水が用いられるので、有機溶媒を用いた場合のように地球環境に悪影響を及ぼすことを回避することができる。

【0027】
抽出溶媒として用いられる水には、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール、無機酸、有機酸などの酸、アルカリ、界面活性剤などが含まれていてもよい。貝殻の焼成粉末を水で抽出する際に、酸水溶液を用いた場合、その酸の水溶液に貝殻の焼成粉末を溶解させることにより、当該貝殻の焼成粉末に含まれている成分を水中に溶出させることができるが、貝殻の焼成粉末から抽出された成分が加水分解などの変性を受ける可能性があることに注意を要する。このように、本明細書における抽出の概念には、酸水溶液などを用いて貝殻の焼成粉末を溶解させることにより、当該貝殻の焼成粉末に含まれている成分を水中に溶出させることが含まれる。

【0028】
貝殻の焼成粉末に含まれている成分の水による抽出は、例えば、貝殻の焼成粉末を水中に添加し、撹拌することによって容易に行なうことができる。

【0029】
水100mLあたりの貝殻の焼成粉末の量は、抽出効率を高める観点から、好ましくは1g以上、より好ましくは3g以上であり、水中における貝殻の焼成粉末の分散性を向上させる観点から、好ましくは20g以下、より好ましくは10g以下である。

【0030】
貝殻の焼成粉末を抽出する際の水温は、抽出効率を高める観点から、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上であり、操作性の観点から、好ましくは60℃以下である。

【0031】
貝殻の焼成粉末を水中に添加した後には、抽出効率を高める観点から、貝殻の焼成粉末を添加することによって得られた貝殻の焼成粉末と水との混合物に超音波を照射したり、当該混合物を攪拌子で撹拌することにより、貝殻の焼成粉末を水中に懸濁させることが好ましい。

【0032】
貝殻の焼成粉末に含まれている成分を水中に抽出させるのに要する時間は、抽出温度、貝殻の焼成粉末の量などによって異なるので一概には決定することができないが、貝殻の焼成粉末に含まれている成分を水中に十分に抽出させる観点から、好ましくは3分間以上、より好ましくは5分間以上であり、生産効率の観点から、好ましくは60分間以下、より好ましくは30分間以下である。

【0033】
以上のようにして貝殻の焼成粉末を水中に分散させ、当該貝殻の焼成粉末に含まれている成分が抽出された抽出液には貝殻の焼成粉末が含まれているため、当該貝殻の焼成粉末を除去することが好ましい。

【0034】
抽出液から貝殻の焼成粉末を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いて焼成粉末を濾別する方法、遠心分離によって焼成粉末を分離する方法などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0035】
抽出液から分離された残渣は、白色に近い色彩を有することからチタンホワイト、亜鉛華などに代わる白色顔料、セメント混和剤などの建築用材料、炭酸カルシウムの原料などに使用したり、天然物である貝殻に由来するものであることから、カルシウム剤などの農業用肥料、鶏の飼料、食品添加物、栄養補助食品などに使用したり、さらに抽出溶媒として人体に対して安全な水が使用されており、それ自体が保湿性を有することから、例えば、化粧料などに使用される保湿剤などとして有効利用することが期待される。

【0036】
一方、貝殻の焼成粉末が除去された抽出液は、蛍光を発するとともに、蓄光性にも優れているので、そのままの状態で、本発明の蛍光材料の有効成分として用いることができる。

【0037】
本発明の蛍光材料は、このように貝殻の焼成粉末を水で抽出した抽出液を有効成分として含有するものであり、蛍光を発するので、例えば、アクリル系水性塗料などの水性塗料に使用される水性溶媒として用いることができる。このように水性塗料の溶媒として本発明の蛍光材料を用いた場合には、当該水性塗料を水性蛍光塗料として用いることができる。

【0038】
また、本発明の蛍光材料は、蓄光性にも優れているので、例えば、本発明の蛍光材料を含有する水性塗料を建築物の壁面に塗布した場合には、災害などによる停電によって建築物内が暗くなったときであっても、その壁面が蓄光性を有し、発光することから、照明がなくても通路や避難路などを視覚により容易に把握することができるようにしたり、暗所であっても壁面に蛍光文字や蛍光画像を浮かび上がらせることができるという利点を有する。

【0039】
なお、前記抽出液において、貝殻の焼成粉末から溶出したカルシウム濃度が高い場合、経時とともにカルシウム成分が析出することがある。その場合、前記抽出液をしばらくの間、静置することによってカルシウム成分を析出させ、析出したカルシウム成分を除去してもよい。

【0040】
さらに、本発明においては、前記抽出液をそのままの状態で蛍光材料として用いることができるほか、前記抽出液を蒸発乾固させることによって得られる固形物を本発明の蛍光材料として用いることができる。

【0041】
前記抽出液を蒸発乾固させる方法としては、例えば、エバポレーターなどを用いて前記抽出液を乾燥させる方法、前記抽出液を加熱することによって抽出液に含まれている水分を蒸発させる方法などが挙げられるが、本発明は、かかる方法によって限定されるものではない。これらの方法のなかでは、抽出液に強い熱履歴を与えないようにする観点から、エバポレーターなどを用いて前記抽出液を乾燥させる方法が好ましい。

【0042】
前記抽出液を蒸発乾固させた後には、必要により、さらに減圧乾燥させてもよく、シリカゲルなどの乾燥剤を用いて乾燥させてもよい。前記抽出液を蒸発乾固させることによって得られる固形の蛍光材料は、通常、粉末状態で得ることができる。

【0043】
前記抽出液を蒸発乾固させることによって得られる固形の蛍光材料は、前記抽出液と同様に蛍光を発するとともに蓄光性にも優れているので、そのまま固形の状態で蛍光材料として使用することができる。

【0044】
また、この固形の蛍光材料は、固体であることから、保存安定性、取扱い性などに優れているので、例えば、各種用途の発光性賦形剤、有機溶媒系塗料などに使用される発光性顔料、建築材料用発光剤などとして使用することができる。

【0045】
さらに、この固形の蛍光材料は、それ自体が保湿性を有することから、例えば、化粧料などに使用される保湿剤などとして有効利用することが期待される。

【0046】
本発明の蛍光材料は、水性塗料に配合することにより、水性蛍光塗料に使用することができる。水性塗料としては、例えば、アクリル系水性塗料などの一般に使用されている水性塗料であればよく、本発明は、かかる水性塗料の種類によって限定されるものではない。

【0047】
水性蛍光塗料に配合される蛍光材料の量は、その塗料の種類、要求される蛍光の程度などによって異なるので一概には決定することができないことから、これら塗料の種類、要求される蛍光の程度などに応じて適宜決定することが好ましい。

【0048】
また、本発明の蛍光材料は、例えば、水をはじめ、エタノール、水酸化ナトリウム水溶液などのプロトン性極性溶媒に溶解し、蛍光を呈することから、これらの溶媒が使用される用途にも好適に使用することができる。

【0049】
以上のようにして得られる本発明の蛍光材料は、通常、370~550nmの波長領域で発光波長を有し、200~400nmの波長領域で励起波長を有する。

【0050】
本発明の蛍光材料は、前記で説明したように、従来、産業廃棄物として廃棄されていた貝殻を原料として有効利用したものであり、水溶性を有し、蛍光を発するとともに蓄光性に優れているので、例えば、蓄光性塗料、暗闇でも視認可能な蓄光性タイルなどの建材、避難誘導表示板などに好適に使用することができる。
【実施例】
【0051】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【実施例】
【0052】
実施例1~3
サザエの貝殻(実施例1)、ホタテガイの貝殻(実施例2)およびムラサキイガイの貝殻(実施例3)を数cm程度の大きさとなるように軽く砕いた後、箱形電気炉内に入れ、大気雰囲気中にて焼成温度300℃、焼成時間1時間の焼成条件で各貝殻を焼成した。
【実施例】
【0053】
焼成された貝殻を室温にまで放冷した後、電気炉から取り出し、各焼成された貝殻約100gをそれぞれボールミル(容器:内容量が5.1リットルのナイロン製ポット、媒体:直径20mmのナイロン製ボール2リットル程度)で24時間粉砕することにより、粒子径が10~100メッシュ(JISメッシュ)程度の貝殻の焼成粉末を得た。
【実施例】
【0054】
実施例1~3で得られた各貝殻の焼成粉末の粉末X線回折を調べた。なお、粉末X線回折は、粉末X線回折測定装置〔(株)島津製作所製、商品名:粉末X線回折測定装置XD-6100)を用いて測定し、その測定条件は、電圧:40kV、電流:20mA、走査モード:Continuous、走査範囲:5~80℃、走査速度:2.0°/min、雰囲気:大気とした。その測定結果を図1に示す。
【実施例】
【0055】
図1において、1はサザエの貝殻の焼成粉末の粉末X線回折(実施例1)、2はホタテガイの貝殻の焼成粉末の粉末X線回折(実施例2)、3はムラサキイガイの貝殻の焼成粉末の粉末X線回折(実施例3)を示す。
【実施例】
【0056】
次に、各貝殻の焼成粉末25gを25℃の水500mLに添加し、超音波洗浄機を用いて室温で10分間超音波を照射した後、24時間静置することにより、焼成粉末に含まれている成分が抽出された抽出液を得た。得られた抽出液に含まれている焼成粉末を除去するために、当該抽出液を、濾紙(No.5)を用いた吸引濾過器で濾過し、得られた濾液を回収することにより、液体の蛍光材料を得た。
【実施例】
【0057】
次に、前記で得られた液体の蛍光材料に紫外線(波長:230nm)を照射する前後の状態を観察した。その結果を図2に示す。
【実施例】
【0058】
図2において、(a)は実施例1で得られたサザエの貝殻の焼成粉末が用いられた液体の蛍光材料に白色光Aまたは紫外線Bを照射したときの状態を示す写真、(b)は実施例2で得られたホタテガイの貝殻の焼成粉末が用いられた液体の蛍光材料に白色光Aまたは紫外線Bを照射したときの状態を示す写真、(c)は実施例3で得られたムラサキイガイの貝殻の焼成粉末が用いられた液体の蛍光材料に白色光の照射(図2中のA)または紫外線の照射(図2中のB)を行なったときの状態を示す写真である。
【実施例】
【0059】
図2に示された結果から、各実施例で得られた液体の蛍光材料は、いずれも、白色光を照射したときには発光しないが、紫外線を照射したときに蛍光を発するものであることがわかる。
【実施例】
【0060】
次に、各実施例で得られた蛍光材料に紫外線(波長:370nm)を照射したときの蛍光発光スペクトルを、蛍光光度計〔パーキンエルマー社製、品番:LC55〕を用いて調べた。その結果を図3に示す。
【実施例】
【0061】
図3において、pは実施例1で得られたサザエの貝殻の焼成粉末が用いられた蛍光材料に紫外線を照射したときの蛍光発光スペクトル、qは実施例2で得られたホタテガイの貝殻の焼成粉末が用いられた蛍光材料に紫外線を照射したときの蛍光発光スペクトル、rは実施例3で得られたムラサキイガイの貝殻の焼成粉末が用いられた蛍光材料に紫外線を照射したときの蛍光発光スペクトルを示す。
【実施例】
【0062】
図3に示された結果から、各実施例で得られた蛍光材料は、いずれも、波長420nmまたは490nmの付近にピークを有し、高強度の蛍光発光スペクトルを与えることがわかる。
【実施例】
【0063】
次に、各実施例で得られた液体の蛍光材料100mLに15重量%クエン酸カルシウム水溶液100mLを添加した後、pHが12程度となるように約1M水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、蛍光材料を包摂した水酸化カルシウムの白色沈殿物を生成させた。この白色沈殿物を濾別し、乾燥させることにより、白色粉末を回収した。
【実施例】
【0064】
得られた白色粉末に、波長が360nm程度の紫外線を10分間照射した後、照射終了後から1分間経過したときに、この白色粉末の残光を観察したところ、残光(蛍光)が観察された。この結果から、各実施例で得られた液体の蛍光材料は、紫外線の照射終了後、1分間経過しても残光を有することから残光性に優れていることがわかる。
【実施例】
【0065】
次に、各実施例で得られた液体の蛍光材料に濾紙を浸漬した後、引き上げ、乾燥させたところ、この濾紙は、いずれも蓄光性を有することが確認された。
【実施例】
【0066】
以上の結果から、各実施例で得られた液体の蛍光材料は、それ自体が残光性を有するだけでなく、当該蛍光材料を完全に乾燥させた場合であっても残光性を呈することがわかる。
【実施例】
【0067】
参考例
実施例1~3において、濾過の際に回収された残渣を乾燥させ、得られた粉末状の乾燥物を目視にて観察したところ、その乾燥物は、原料としてサザエの貝殻を用いた場合には灰色を呈し、ホタテガイの貝殻を用いた場合には白色を呈し、ムラサキイガイの貝殻を用いた場合には灰色を呈した。
【実施例】
【0068】
これらの乾燥物は、いずれも粉末状であるので、例えば、蛍光性顔料として有用であることが考えられる。また、これらの乾燥物は、いずれも保湿性に優れているので、例えば、化粧料などに使用される蛍光性保湿剤などとしても有用であることが考えられる。
【実施例】
【0069】
実施例4~6
実施例1~3で得られた各液体の蛍光材料を、エバポレーターを用いて80℃で蒸発乾固することにより、粉末状(固形)の蛍光材料を得た。得られた粉末状の蛍光材料は、原料としてサザエの貝殻を用いた場合には(実施例4)、黄色を呈し、ホタテガイの貝殻を用いた場合には(実施例5)、橙色を呈し、ムラサキイガイを用いた場合には(実施例6)、茶色を呈した。
【実施例】
【0070】
次に、前記で得られた粉末状の蛍光材料を乳鉢にて粉砕し、得られた粉末の粉末X線回折を前記と同様にして調べた。その結果、各蛍光材料の粉末のX線回折は、いずれも、サザエの貝殻、ホタテガイの貝殻およびムラサキイガイの貝殻の焼成粉末のX線回折と同様であった。
【実施例】
【0071】
このことから、サザエの貝殻、ホタテガイの貝殻およびムラサキイガイの貝殻を焼成することによって得られた焼成粉末に含まれている成分が各粉末状の蛍光材料に含まれていることがわかる。
【実施例】
【0072】
次に、前記で得られた各粉末状の蛍光材料に、実施例1~3と同様にして紫外線(波長:230nm)を照射したところ、蛍光を発することが確認された。このことから、前記で得られた各粉末状の蛍光材料は、いずれも紫外線照射による発光性を有することがわかる。
【実施例】
【0073】
前記で得られた各粉末状の蛍光材料5gを25℃の水、エタノール、10%水酸化ナトリウム水溶液、アセトンまたはヘキサンに溶解させた。その結果、前記で得られた各粉末状の蛍光材料は、いずれも、水、エタノールおよび水酸化ナトリウム水溶液に完全に溶解させることができたが、アセトンおよびヘキサンに溶解させることができなかった。このことから、前記で得られた各粉末状の蛍光材料は、いずれも、水、エタノール、水酸化ナトリウム水溶液などのプロトン性極性溶媒に対する溶解性に優れていることがわかる。
【実施例】
【0074】
次に、前記で得られた各粉末状の蛍光材料の水溶液、エタノール溶液および水酸化ナトリウム水溶液に、実施例1~3と同様にして、白色光または紫外線(波長:230nm)を照射したところ、前記溶液は、いずれも、実施例1~3と同様に、白色光を照射したときには発光しないが、紫外線を照射したときには蛍光を発することが確認された。このことから、前記で得られた各粉末状の蛍光材料は、水、エタノール、水酸化ナトリウム水溶液などに溶解させても紫外線を照射したときに蛍光を発するものであることがわかる。
【実施例】
【0075】
以上説明したように、本発明の蛍光材料は、廃棄物として処理されていた貝殻を原料として有効利用したものであり、例えば、塗料などに好適に使用することができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の蛍光材料は、例えば、蓄光性塗料、蓄光性タイル、避難誘導表示板、に使用される水性溶媒として用いることができる。このように水性塗料の溶媒として本発明の蛍光材料を用いた場合には、当該水性塗料は、水性蛍光塗料として用いることができる。
【0077】
また、本発明の蛍光材料は、蓄光性にも優れているので、本発明の蛍光材料を含有する水性塗料を建築物の壁面に塗布した場合、災害などによる停電によって建築物内が暗くなった場合であっても、その壁面が蓄光性を有し、発光することから、電燈などによる明りがなくても通路や避難路などを視覚により容易に把握することができるようにしたり、暗所で壁面に鮮やかな蛍光文字や蛍光画像を浮かび上がらせることができる。
【0078】
さらに、本発明の固形の蛍光材料は、それ自体が保湿性を有することから、例えば、化粧料などに使用される保湿剤などとして有効利用することが期待される。
図面
【図1】
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【図3】
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【図2】
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