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明細書 :フッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5385189号 (P5385189)
登録日 平成25年10月11日(2013.10.11)
発行日 平成26年1月8日(2014.1.8)
発明の名称または考案の名称 フッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法
国際特許分類 C01G  23/04        (2006.01)
C09D   7/12        (2006.01)
C09D   5/02        (2006.01)
FI C01G 23/04 Z
C09D 7/12
C09D 5/02
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2010-73913 (P2010-73913)
出願日 平成22年3月27日(2010.3.27)
審査請求日 平成24年4月4日(2012.4.4)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
発明者または考案者 【氏名】米沢 晋
【氏名】高島 正之
【氏名】金 在虎
【氏名】久保 俊昌
個別代理人の代理人 【識別番号】100141472、【弁理士】、【氏名又は名称】赤松 善弘
特許請求の範囲 【請求項1】
二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させた後、得られたフッ素化された二酸化チタン粒子と過酸化物水溶液とを混合することを特徴とするフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法。
【請求項2】
二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際のフッ素ガスの圧力が0.5~200kPaである請求項1に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法。
【請求項3】
二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際のフッ素ガスの温度が0~400℃である請求項1または2に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の製造方法によって得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液。
【請求項5】
請求項4に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液を乾燥させてなるフッ素化された二酸化チタンからなるフィルム。
【請求項6】
請求項4に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液を配合してなる水性塗料。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法に関する。さらに詳しくは、例えば、水性塗料などに触媒活性を付与するのに有用なフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンは、紫外線照射下での光触媒活性に優れていることから、近年、脚光を浴びており、例えば、光電変換用薄膜、光触媒薄膜などの薄膜として用いられている。この薄膜は、チタンアルコキシドを加水分解させることによって得られるチタニアゾルを基板に塗布した後、この基板を加熱することによって形成する、いわゆるゾル-ゲル法によって製造されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、チタニアゾルは、チタニア微粒子の集合体であるため、分散安定性に劣り、薄膜を形成したときにその薄膜の表面が平滑にならないことがある。
【0003】
前記チタニア微粒子の集合体の分散安定性を改良したものとして、アスペクト比が高い薄片状の酸化チタン微結晶集合体や(例えば、特許文献2参照)、層状チタン酸化物微結晶を剥離することによって得られた薄片粒子(例えば、特許文献3および特許文献4参照)などが提案されている。しかし、これらの酸化チタン微粒子および薄片粒子は、いずれも粒子であるため、依然として分散安定性に劣り、薄膜を形成したときにその薄膜の表面が平滑にならないことがある。
【0004】
そこで、二酸化チタンの分散安定性を高めるために、近年、光触媒活性を有し、チタニアゾルやチタニアゲル、二酸化チタン微粒子の分散体などのように二酸化チタンが粒子状で存在しているのではなく、二酸化チタンそのものが溶解している溶液の開発が待ち望まれている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第3055684号公報
【特許文献2】特開2003-321222号公報
【特許文献3】特開2001-270022号公報
【特許文献4】特開2002-265223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、光触媒活性を有し、チタニアゾルやチタニアゲル、二酸化チタン微粒子の分散体などのように二酸化チタンが粒子状で存在しているのではなく、二酸化チタンそのものが溶解しているフッ素化された二酸化チタン水溶液およびその製造方法、当該フッ素化された二酸化チタンからなるフィルムおよび当該フッ素化された二酸化チタン水溶液が配合された水性塗料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
(1)二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させた後、得られたフッ素化された二酸化チタン粒子と過酸化物水溶液とを混合することを特徴とするフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法、
(2)二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際のフッ素ガスの圧力が0.5~200kPaである前記(1)に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法、
(3)二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際のフッ素ガスの温度が0~400℃である前記(1)または(2)に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法、
(4)前記(1)~(3)のいずれかに記載の製造方法によって得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液、
(5)前記(4)に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液を乾燥させてなるフッ素化された二酸化チタンからなるフィルム、および
(6)前記(4)に記載のフッ素化された二酸化チタン水溶液を配合してなる水性塗料
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光触媒活性を有し、チタニアゾルやチタニアゲル、二酸化チタン微粒子の分散体などのように二酸化チタンが粒子状で存在しているのではなく、二酸化チタンそのものが溶解しているフッ素化された二酸化チタン水溶液およびその製造方法、当該フッ素化された二酸化チタンからなるフィルムおよび当該フッ素化された二酸化チタン水溶液が配合された水性塗料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】AおよびBは、それぞれ、製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末の粉末X線回折および参考例で用いられたフッ素化される前の二酸化チタン粉末の粉末X線回折を示す図である。
【図2】(a)および(b)は、それぞれ、本発明の実施例1で得られたフッ素化された二酸化チタンからなる薄膜が形成されている試験用サンプルおよびフッ素化された二酸化チタンからなる薄膜が形成されていない対照試験用サンプルに紫外線を照射した結果を示す図面代用写真である。
【図3】(a)および(b)は、それぞれ、実験例において、従来の二酸化チタン水分散体を用いて形成された薄膜に波長250~260nm(ピーク波長253.7nm)の紫外線を含む光線を照射した結果を示す図面代用写真および製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタンを使用して調製した水分散体を用いて形成された薄膜に前記光線を照射した結果を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のフッ素化された二酸化チタン水溶液の製造方法は、二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させた後、得られたフッ素化された二酸化チタン粒子と過酸化物水溶液とを混合することを特徴とする。

【0011】
二酸化チタンは、一般に、難水溶性を呈することから、水に溶解させることが困難であると考えられている。ところが、本発明者らが鋭意研究を重ねたところ、フッ素ガスを用いて二酸化チタンを直接フッ素化させた後、さらにこのフッ素化された二酸化チタンと過酸化物水溶液とを混合した場合には、驚くべきことに、当該フッ素化された二酸化チタンを過酸化物水溶液に溶解させることができ、さらに得られたフッ素化された二酸化チタンの水溶液を用いて薄膜を形成させたとき、当該薄膜は、優れた光触媒活性を有することが見出された。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。

【0012】
本発明は、前記したように、フッ素化された二酸化チタンを溶液状態で提供することができるという画期的な発明であり、さらに当該フッ素化された二酸化チタンは、二酸化チタンと同様に光触媒活性を有することから、従来、二酸化チタンが粒子状であるがために使用することができなかった種々の用途に幅広く使用することが期待されるものである。

【0013】
本発明において原料として、二酸化チタン粒子が用いられる。二酸化チタン粒子を構成する二酸化チタンとしては、一般に、アナターゼ型二酸化チタン、ルチル型二酸化チタン、ブルッカイト型二酸化チタン、アモルファス型二酸化チタンなどが知られている。これらのなかでは、本発明においては、光触媒活性の観点から、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。

【0014】
二酸化チタン粒子は、乾燥させた二酸化チタン粒子であってもよく、二酸化チタンゲル、二酸化チタンゾルなどであってもよい。なお、二酸化チタンゲル、二酸化チタンゾルなどの二酸化チタンの分散体を用いる場合には、フッ素化効率を高める観点から、二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる前に、当該二酸化チタンの分散体に含まれている溶媒をあらかじめ除去しておくことが好ましい。

【0015】
二酸化チタンは、商業的に容易に入手することができる。その一例として、例えば、石原産業(株)製、品番:ST-21などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。

【0016】
二酸化チタン粒子の粒子径は、特に限定されないが、二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させることにより、二酸化チタン粒子を効率よくフッ素化させる観点から、通常、10nm~100μm程度であることが好ましい。

【0017】
二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させることによって二酸化チタン粒子のフッ素化させる際には、フッ素ガスが大気中に放出されることを防止する観点から、密閉式のバッチ式反応装置などの反応装置を用いることが好ましい。

【0018】
二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際には、まず、反応装置内に二酸化チタン粒子を入れる。反応装置内に入れられる二酸化チタン粒子の量は、特に限定されず、使用される反応装置の規模などに応じて適宜調整すればよい。反応装置内に二酸化チタン粒子を入れた後、反応装置内に空気などの不純物ガスが存在していることから、その内部雰囲気を減圧することにより、当該不純物ガスを反応装置内から排除しておくことが好ましい。

【0019】
次に、反応装置内にフッ素ガスを導入することにより、二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させて二酸化チタン粒子のフッ素化を行なう。二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際のフッ素ガスの圧力は、効率よく二酸化チタン粒子をフッ素化させる観点から、好ましくは0.5kPa以上であり、フッ素化された二酸化チタン粒子を効率よく製造する観点および安全性の観点から、好ましくは200kPa以下、より好ましくは100kPa以下、さらに好ましくは50kPa以下、特に好ましくは15kPa以下である。また、二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際のフッ素ガスの温度は、効率よく二酸化チタン粒子をフッ素化させる観点から、好ましくは0℃以上であり、過度のフッ素化反応の進行を抑制するとともに反応プロセスにおける安全性を確保する観点から、好ましくは400℃以下、より好ましくは200℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。

【0020】
二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際に要する時間は、二酸化チタン粒子の粒子径およびその量、二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際のフッ素ガスの圧力および温度などによって異なるので一概には決定することができない。二酸化チタン粒子をフッ素ガスと接触させる際に要する時間は、得られるフッ素化された二酸化チタン粒子が過酸化物水溶液に可溶化するのに適した時間であり、通常、0.5~5時間程度である。

【0021】
二酸化チタン粒子とフッ素ガスとを接触させることにより、二酸化チタン粒子をフッ素化させた後、安全性の観点から、不活性ガスを反応装置内に導入し、反応装置内の内部雰囲気を当該不活性ガスで置換することが好ましい。不活性ガスは、フッ素ガスに対して不活性なガスを意味し、その代表例としては、例えば、アルゴンガスなどの希ガスなどが挙げられる。

【0022】
以上のようにして得られたフッ素化された二酸化チタン粒子は、反応装置から取り出した後、過酸化物水溶液と混合される。

【0023】
過酸化物水溶液に用いられる過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過酸化リチウム、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化バリウム、ペルオキソ二硫酸などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらの化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。過酸化物のなかでは、入手が容易であることおよび安全性の面から、過酸化水素が好ましい。また、本発明においては、本発明の目的が阻害されない範囲内で、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニムなどの過硫酸塩;過塩素酸カリウム、過塩素酸ナトリウムなどの過塩素酸類などを過酸化物と併用することができる。

【0024】
過酸化物水溶液には、溶媒として水が用いられるが、本発明の目的を阻害しない範囲内で、例えば、エタノール、メタノールなどの水性有機溶媒や界面活性剤などが含まれていてもよい。

【0025】
過酸化物水溶液における過酸化物の濃度は、特に限定されないが、フッ素化された二酸化チタン粒子の溶解性を高める観点から、好ましくは3重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、取り扱い時における安全性の面から、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。

【0026】
過酸化物水溶液と混合されるフッ素化された二酸化チタン粒子の量は、特に限定されないが、過酸化物水溶液100mLあたり、光触媒活性を高める観点から、好ましくは10mg以上、より好ましくは50mg以上であり、フッ素化された二酸化チタン粒子の溶解性の観点から、好ましくは10g以下、より好ましくは5g以下である。

【0027】
フッ素化された二酸化チタン粒子と過酸化物水溶液とを混合する際のフッ素化された二酸化チタン粒子および過酸化物水溶液の温度には特に限定がなく、当該温度は、通常、常温であればよい。

【0028】
なお、フッ素化された二酸化チタン粒子と過酸化物水溶液とを混合することによって得られる混合物は、フッ素化された二酸化チタン粒子を十分に溶解させるために、例えば、撹拌子などを用いて十分に撹拌することが好ましい。

【0029】
以上のようにしてフッ素化された二酸化チタンの水溶液が得られるが、この水溶液には、完全に溶解しきれなかったフッ素化された二酸化チタン粒子が含まれている場合がある。その場合には、必要により、例えば、吸引濾過装置などの濾過装置を用いることにより、フッ素化された二酸化チタンの水溶液から溶解しなかったフッ素化された二酸化チタン粒子を除去することができる。

【0030】
本発明のフッ素化された二酸化チタンの水溶液は、そのままの状態で使用することができるほか、基材上に塗布し、当該水溶液に含まれている溶媒を除去するために乾燥させることにより、フィルムを形成させ、フィルムとして用いることができる。このようにしてフィルムを形成させた場合、従来のような二酸化チタン粒子が含まれていないので、その表面が平滑であり、厚さが1nm~0.1mm程度であるフィルムを得ることができる。形成されたフィルムは、フッ素化された二酸化チタンで形成されており、光触媒活性を有し、耐水性に優れているので、水分と接触しやすい環境でも光触媒活性を有するフィルムとして種々の用途に使用することができる。

【0031】
また、本発明のフッ素化された二酸化チタンの水溶液は、水溶性を有することから、水性塗料に配合することにより、光触媒活性を有する水性塗料を調製することができる。水性塗料としては、例えば、アクリル系水性塗料などの一般に使用されている水性塗料であればよく、本発明は、かかる水性塗料の種類によって限定されるものではない。水性塗料に配合されるフッ素化された二酸化チタンの水溶液の量は、その塗料の種類、要求される光触媒活性の程度などによって異なるので一概には決定することができないことから、これら塗料の種類、要求される光触媒活性の程度などに応じて適宜決定することが好ましい。

【0032】
以上説明したように、本発明のフッ素化された二酸化チタンの水溶液は、フッ素化された二酸化チタンそのものが溶解しており、しかもフッ素化された二酸化チタンは、二酸化チタンと同様に光触媒活性を有することから、従来、二酸化チタンが粒子状であるがために使用することができなかった種々の用途に幅広く使用することが期待されるものである。
【実施例】
【0033】
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0034】
製造例1
二酸化チタン粉末〔平均一次粒子径が約20nmのアナターゼ型二酸化チタン粉末、石原産業(株)製、品番:ST-21〕10gを密閉式のバッチ式反応装置に投入し、当該反応装置に含まれている不純物ガスを除去するために、室温下で反応装置の内圧が1Pa以下となるまで減圧した。次に、反応装置内にフッ素ガス(純度:99.9%)を導入し、反応装置内のフッ素ガスの圧力を1.3kPaに調整した後、室温で1時間静置することにより、二酸化チタン粉末をフッ素化させた。その間に反応装置内では著しい発熱などの挙動が確認されなかった。
【0035】
次に、反応装置の内部を減圧することにより、その内部からフッ素ガスを除去し、アルゴンガスを大気圧となるまで導入した後、フッ素化された二酸化チタン粉末を反応装置から取り出した。
【0036】
得られたフッ素化された二酸化チタン粉末の粉末X線回折を調べた。なお、粉末X線回折は、粉末X線回折測定装置〔(株)島津製作所製、商品名:粉末X線回折測定装置XD-6100)を用いて測定した。なお、粉末X線回折の測定条件は、電圧:40kV、電流:20mA、走査モード:Continuous、走査範囲:5~80℃、走査速度:2.0°/min、雰囲気:大気とした。その測定結果を図1のAに示す。
【0037】
参考例
参考のために、製造例1で用いたものと同じ二酸化チタン粉末〔平均一次粒子径が約20nmのアナターゼ型二酸化チタン粉末、石原産業(株)製、品番:ST-21〕の粉末X線回折を製造例1と同様にして調べた。その結果を図1のBに示す。
【0038】
図1に示された結果から、製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末のX線回折パターンは、参考例で用いられたフッ素化されていない二酸化チタン粉末のX線回折パターンと同様であることがわかる。このことから、二酸化チタン粉末をフッ素化させても、その結晶構造は、フッ素化させていない二酸化チタンからほとんど変化していないことがわかる。
【0039】
製造例2および3
製造例1において、反応装置内のフッ素ガスの圧力を1.3kPaから0.6kPa(製造例2)または49.4kPa(製造例3)に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてフッ素化された二酸化チタン粉末を調製した。
【0040】
製造例2および3で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末のX線回折パターンを製造例1と同様にして調べたところ、製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末のX線回折パターンと同様であったことから、二酸化チタン粉末をフッ素化させる際のフッ素ガスの圧力を変化させても、二酸化チタン粉末の結晶構造がほとんど変化しないことが確認された。
【0041】
次に、製造例1~3で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末を油圧プレスで直径13mm、質量0.5gのペレットに成形した後、このペレットを用いて蛍光X線分析装置〔(株)島津製作所製、品番:XRF-1800〕によりフッ素の定量を行なった。その結果、製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末におけるフッ素分子の含有率は1.9重量%であり、製造例2で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末におけるフッ素分子の含有率は1.6重量%であり、製造例3で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末におけるフッ素分子の含有率は3.7重量%であった。
【0042】
実施例1~3
製造例1~3で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末をそれぞれ別々に0.01gの量で秤量し、各フッ素化された二酸化チタン粉末をそれぞれ別々に、過酸化水素の濃度が15重量%の過酸化水素水10mLに添加し、室温下で撹拌子を用いて1日間撹拌した後、得られた水溶液から吸引濾過装置で残渣を分離することにより、黄色透明のフッ素化された二酸化チタン水溶液を得た。得られた二酸化チタン水溶液は、弱酸性を示した。
【0043】
なお、実施例1~3では、フッ素化された二酸化チタン水溶液の原料として、それぞれ順に、製造例1~3で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末を用いた。
【0044】
次に、各実施例で得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液をシリカガラスプレート(縦:30mm、横:20mm、厚さ:2mm)上に塗布し、大気中にて室温下で乾燥させることにより、シリカガラスプレートの表面上に無色透明のフッ素化された二酸化チタンからなる平滑な薄膜を形成させた。形成された薄膜の厚さは、いずれの実施例でも、約0.1μmであった。
【0045】
次に、前記で得られた薄膜が形成されているシリカガラスプレートを沸騰水中に5時間浸漬した後、沸騰水から取り出し、このシリカガラスプレートの薄膜面を観察したが、薄膜はシリカガラスプレートから剥離しておらず、また沸騰水に溶解しておらず、無色透明であることが確認された。
【0046】
このことから、本発明のフッ素化された二酸化チタン水溶液を用いて形成された薄膜は、耐沸騰水性を有するとともに、水の沸点における耐熱性および基材との密着性に優れていることがわかる。
【0047】
次に、各実施例で得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液を用いて薄膜が形成されているシリカガラスプレートの当該薄膜が形成されている面に、赤色インク〔(株)パイロットコーポレーション製、商品名:パイロットインキレッド〕をスポイドで直径が約15mmの円が描かれるように薄膜上に滴下し、試験用サンプルを調製した。
【0048】
また、対照として、フッ素化された二酸化チタンからなる薄膜が形成されていないシリカガラスプレートを用意し、その一方面に赤色インク〔(株)パイロットコーポレーション製、商品名:パイロットインキレッド〕をスポイドで直径が約15mmの円が描かれるように薄膜上に滴下し、対照試験用サンプルを調製した。
【0049】
前記で得られた試験用サンプルおよび対照試験用サンプルに紫外線(UV-C)(波長:250~260nm)を100時間照射した後、その赤色に着色されている薄膜を観察した。
【0050】
実施例1で得られたフッ素化された二酸化チタンからなる薄膜が形成されている試験用サンプルの試験結果を図2(a)に、対照試験用サンプルの試験結果を図2(b)に示す。
【0051】
各実施例で得られたフッ素化された二酸化チタンからなる薄膜が形成されている試験用サンプルでは、いずれも、図2(a)に示されるように赤色インクが消色し、薄膜を介してシリカガラスプレートが透けて見えるのに対し、対照試験用サンプルでは、赤色インクが完全には消色しておらず、図2(b)に示されるように黒く見える筋状の着色部分(実際には、赤色の筋状の着色部分)が確認された。このことから、各実施例で得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液を用いて形成された薄膜は、光触媒活性を有していることがわかる。
【0052】
以上の結果から、各実施例で得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液を用いて形成された薄膜は、光触媒活性に優れ、さらに耐沸騰水性、水の沸点における耐熱性および基材との密着性に優れているので、各種水性塗料などに使用することが期待されるものであることがわかる。
【0053】
実施例4
製造例1において、反応装置内のフッ素ガスの圧力を1.3kPaから101.3kPaに変更し、フッ素化させる際の温度を室温から250℃に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてフッ素化された二酸化チタン粉末を調製した。
【0054】
得られたフッ素化された二酸化チタン粉末のX線回折パターンを製造例1と同様にして調べたところ、製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末のX線回折パターンとほぼ同様であったが、TiOFに由来する強度が低いピークも同時に観測されたことから、二酸化チタン粉末をフッ素化させる際のフッ素ガスの圧力を変化させても、二酸化チタン粉末の結晶構造はほとんど変化しないが、過剰のフッ素化反応は二酸化チタンの分解を招き、TiOFなどの酸化フッ化物などの生成が起きることが確認された。
【0055】
次に、前記で得られたフッ素化された二酸化チタン粉末0.01gを過酸化水素の濃度が15重量%の過酸化水素水10mLに添加し、室温下で1日間撹拌した後、得られた水溶液から吸引濾過装置で残渣を分離することにより、黄色透明のフッ素化された二酸化チタン水溶液を得た。得られた二酸化チタン水溶液は、弱酸性を示した。
【0056】
前記で得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液をシリカガラスプレート(縦:30mm、横:20mm、厚さ:2mm)上に塗布し、大気中にて室温下で乾燥させることにより、シリカガラスプレートの表面上に無色透明のフッ素化された二酸化チタンからなる平滑な薄膜を形成させた。形成された薄膜の厚さは、約0.1μmであった。
【0057】
前記で形成された薄膜が形成されているシリカガラス板を沸騰水中に5時間浸漬した後、沸騰水から取り出し、薄膜を観察したが、薄膜はシリカガラスプレートから剥離しておらず、また沸騰水に溶解しておらず、さらに無色透明であることが確認された。
【0058】
このことから、前記で形成された薄膜は、耐沸騰水性を有するとともに、水の沸点における耐熱性および基材との密着性に優れていることがわかる。
【0059】
次に、前記で得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液を用いて薄膜が形成されているシリカガラスプレートの当該薄膜が形成されている面に、赤色インク〔(株)パイロットコーポレーション製、商品名:パイロットインキレッド〕をスポイドで直径が約15mmの円が描かれるように薄膜上に滴下し、試験用サンプルを調製した。
【0060】
前記で得られた試験用サンプルに紫外線(UV-C)(波長:250~260nm)を100時間照射した後、その赤色に着色されている薄膜を観察した。その結果、赤色インクが消色し、薄膜を介してシリカガラスプレートが透けて見えたことから、前記薄膜は、光触媒活性に優れていることが確認された。
【0061】
次に、実施例2および実施例4で得られたフッ素化された二酸化チタン水溶液に含まれているフッ素化された二酸化チタンの含有率を調べたところ、その含有率は、実施例2では3重量%であり、実施例4では27重量%であった。
【0062】
実験例
製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタン粒子を水に分散させ、フッ素化された二酸化チタンの含有率が3重量%である二酸化チタン水分散体を調製した。
【0063】
一方、従来の二酸化チタン水分散体として、二酸化チタン粉末〔平均一次粒子径が約20nmのアナターゼ型二酸化チタン粉末、石原産業(株)製、品番:ST-21〕を水に分散させ、二酸化チタンの含有率が3重量%である二酸化チタン水分散体を調製し、参照用二酸化チタン水分散体として用いた。
【0064】
次に、前記で得られた水分散体および参照用二酸化チタン水分散体を、それぞれ、直径20mmのアルミナ製シャーレ内にスポイドを用いて滴下し、直径約15mmの薄膜を形成し、常温で放置することにより乾燥させた。形成された薄膜に、赤色インク〔(株)パイロットコーポレーション製、商品名:パイロットインキレッド〕をスポイドで直径が約15mmの円が描かれるように薄膜上に滴下した後、紫外線(UV-C)(波長:250~260nm)を100時間照射した。その結果を図3に示す。
【0065】
図3において、(a)は、参照用二酸化チタン水分散体を用いて形成された薄膜に波長250~260nm(ピーク波長253.7nm)の紫外線を含む光線を照射した結果を示す図面代用写真、(b)は、製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタンを使用して調製した水分散体を用いて形成された薄膜に波長250~260nm(ピーク波長253.7nm)の紫外線を含む光線を照射した結果を示す図面代用写真である。
【0066】
図3(a)に示された結果から、従来の二酸化チタン水分散体を用いた場合には、赤色インクがやや消色していることから、光触媒活性をやや有することが確認された。これに対して、図3(b)に示されるように、製造例1で得られたフッ素化された二酸化チタンを使用して調製した水分散体を用いた場合には、図3(a)に示された写真と対比して、赤色インクが顕著に消色されていることが確認された。
【0067】
以上の結果から、フッ素化された二酸化チタン水溶液は、従来の二酸化チタン水分散体よりも光触媒活性に優れていることがわかる。このことは、過酸化物水溶液を用いてフッ素化された二酸化チタンを溶解させることによって得られた二酸化チタン水溶液を用いて形成された薄膜は、従来の二酸化チタン水分散体を用いて形成された薄膜よりも光触媒活性に優れていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明のフッ素化された二酸化チタン水溶液は、従来の二酸化チタンが粒子状で存在しているチタニアゾルやチタニアゲル、二酸化チタン微粒子の分散体ではなく、二酸化チタンそのものが溶解している水溶液であるので、それを乾燥させることによってフィルムとして使用するだけでなく、水性塗料に用いることにより、当該水性塗料に光触媒活性を付与することができる。また、本発明のフッ素化された二酸化チタン水溶液は、光触媒活性に優れていることから、光電変換用薄膜、光触媒薄膜、フォトルミネッセンス材料などの用途に使用されることが期待される。
図面
【図1】
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【図2】
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【図3】
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