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明細書 :光導波路型バイオセンサ装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5554650号 (P5554650)
公開番号 特開2011-033621 (P2011-033621A)
登録日 平成26年6月6日(2014.6.6)
発行日 平成26年7月23日(2014.7.23)
公開日 平成23年2月17日(2011.2.17)
発明の名称または考案の名称 光導波路型バイオセンサ装置
国際特許分類 G01N  21/64        (2006.01)
FI G01N 21/64 Z
請求項の数または発明の数 6
全頁数 13
出願番号 特願2010-156999 (P2010-156999)
出願日 平成22年7月9日(2010.7.9)
優先権出願番号 2009164201
優先日 平成21年7月10日(2009.7.10)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成25年7月3日(2013.7.3)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
【識別番号】509093026
【氏名又は名称】公立大学法人高知工科大学
発明者または考案者 【氏名】末 信一朗
【氏名】榎波 康文
個別代理人の代理人 【識別番号】100093230、【弁理士】、【氏名又は名称】西澤 利夫
審査官 【審査官】田中 洋介
参考文献・文献 米国特許第05164588(US,A)
特開2006-138757(JP,A)
特開2008-241281(JP,A)
特開平04-276518(JP,A)
特開平10-153609(JP,A)
特開2005-351651(JP,A)
米国特許出願公開第2009/0129721(US,A1)
特開2009-192274(JP,A)
APPLIED PHYSICS LETTERS,2007年,VOL.91,pp.203507-1~203507-3
調査した分野 G01N 21/00-21/74
JSTPlus(JDreamIII)
JMEDPlus(JDreamIII)
JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
励起光パルス光源と、蛍光タンパク質をゾルゲルシリカまたはゾルゲルケイ酸ナトリウム内部に固定したコアを有する光導波路を備えセンシング対象物と接触可能な複数の光導波路型センサ部と、光導波路型センサ部からの蛍光を検出する光パルス検出部とを有し、前記複数の光導波路型センサ部は光ファイバによって直列に光学的に接続され、光導波路型センサ部の励起光パルス入射側とは反対側にある励起光パルス出射側の光ファイバには該各光導波路型センサ部の励起光パルス出射側からの蛍光を選択的に反射し励起光パルスを透過するファイバブラッググレーティングが設けられ、前記ファイバブラッググレーティングは前記複数の光導波路型センサ部のひとつひとつに対応して複数設けられ、前記複数のファイバブラッググレーティングはそれぞれ波長の異なる蛍光を反射させており、励起光パルス光源からの励起光パルスによる光導波路型センサ部からの蛍光をファイバブラッググレーティングで選択的に反射させることにより前記複数の光導波路型センサ部を接続する光ファイバを通じて光パルス検出部に導入して検出することを特徴とする光導波路型バイオセンサ装置。
【請求項2】
センシング対象物との接触により変化する光導波路型センサ部からの蛍光強度をOTDRによる光パルス検出部により検出することを特徴とする請求項1に記載の光導波路型バイオセンサ装置。
【請求項3】
光ファイバによって直列に光学的に接続された前記複数の光導波路型センサ部からのファイバブラッググレーティングで反射された蛍光が光パルス検出部に到達するまでの検出時間遅延を測定することにより、光導波路型センサ部を特定して光導波路型センサ部ごとに蛍光強度を検出することを特徴とする請求項2に記載の光導波路型バイオセンサ装置。
【請求項4】
蛍光タンパク質はGFP(Green Fluorescent Protein)であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の光導波路型バイオセンサ装置。
【請求項5】
蛍光タンパク質は酵母表面に付着したものであることを特徴とする請求項4に記載の光導波路型バイオセンサ装置。
【請求項6】
光導波路型センサ部の光導波路は単一モード光導波路であり、光ファイバは単一モード光ファイバであることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の光導波路型バイオセンサ装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路型バイオセンサ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、センシング対象物を迅速、簡便に測定するシステムが求められている。例えば、有機リン化合物は発展途上国では未だに広く農薬として使用されており、輸入野菜や食品等に残留農薬汚染のおそれがあることから、有機リン化合物を迅速、簡便に測定するシステムが求められている。
【0003】
有機リン化合物の測定技術としては、アセチルコリンエステラーゼや抗体を用いた検出法が知られているが、アセチルコリンエステラーゼを用いた方法は、活性の阻害に基づくため特異性が低く、多段階反応であるため操作が煩雑である。また抗体を用いた方法(ELISA)は、抗体が極めて高価でありプレート操作が煩雑、操作に熟練を要する等の問題点があり広く利用されるまでには至っていない。
【0004】
一方、センシング対象物を検知する技術として、光導波路を用いた技術が検討されている。例えば、光ファイバクラッド先端、光導波路コア、あるいは光導波路クラッド表面等に酵素等の生体触媒を固定化し、生体反応に伴う蛍光変化等を検知する構成の光バイオセンサが知られている。
【0005】
しかしながら、従来の光バイオセンサは光伝送に必要な蛍光強度が得られず、また蛍光を光ファイバに結合する際の光損失が大きく、光ファイバネットワーク化が困難であった。
【0006】
本発明者らは、センシング対象物を迅速、簡便に測定するシステムを構築することを目指して、光バイオセンサを構成する方法を検討してきた。そして生体である蛍光タンパク質をゾルゲルシリカ光導波路に直接ドープして蛍光観測する光導波路型バイオフォトニックデバイスを実現した(非特許文献1、特許文献1参照)。そして、このデバイスを用いて生体からの蛍光を1ヶ月にわたり遠視野において目視観測することに成功している。
【0007】
ここで用いられている蛍光タンパク質は、有機リン分解酵素と蛍光タンパク質(GFP)が酵母の細胞表面に発現している酵母由来のものであり、図6に示すように有機リン分解酵素による有機リン化合物の分解によってpHが変化し、これにより蛍光タンパク質からの蛍光が変化する。すなわち有機リン化合物に対する細胞1個レベルでの応答(蛍光消光)が確認されている。
【先行技術文献】
【0008】

【非特許文献1】Applied Physics Letters, 91, 203507 (2007)
【0009】

【特許文献1】特願2008-031117
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、長距離や複数箇所の位置にあるセンシング対象物を実際に高精度に検出可能な光ファイバネットワークの実現は未だ実証されておらず、その実現が待たれている。すなわち、生体由来の蛍光の光ファイバネットワークによる検出は、蛍光を光ファイバに結合する際の光損失やセンサ自体の蛍光強度の点を考慮すると、蛍光検出が困難であり、あるいは伝送蛍光信号の誤り率を十分に低減することが困難であった。
【0011】
本発明は、以上の通りの事情に鑑みてなされたものであり、センシング対象物を、複数の位置において、長距離であっても迅速、簡便に精度良く測定することが可能な光導波路型バイオセンサ装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の課題を解決するために、以下のことを特徴としている。
【0013】
第1:励起光パルス光源と、蛍光タンパク質をゾルゲルシリカまたはゾルゲルケイ酸ナトリウム内部に固定したコアを有する光導波路を備えセンシング対象物と接触可能な複数の光導波路型センサ部と、光導波路型センサ部からの蛍光を検出する光パルス検出部とを有し、前記複数の光導波路型センサ部は光ファイバによって直列に光学的に接続され、光導波路型センサ部の励起光パルス入射側とは反対側の光ファイバには光導波路型センサ部からの蛍光を反射し励起光パルスを透過するファイバブラッググレーティングが設けられ、励起光パルス光源からの励起光パルスによる光導波路型センサ部からの蛍光をファイバブラッググレーティングで反射させることにより前記複数の光導波路型センサ部を接続する光ファイバを通じて光パルス検出部に導入して検出することを特徴とする光導波路型バイオセンサ装置。
【0014】
第2:センシング対象物との接触により変化する光導波路型センサ部からの蛍光強度をOTDR (Optical Time Domain Reflectometry:光時間領域反射測定法)による光パルス検出部により検出することを特徴とする上記第1の光導波路型バイオセンサ装置。
【0015】
第3:光ファイバによって直列に光学的に接続された前記複数の光導波路型センサ部からのファイバブラッググレーティングで反射された蛍光が光パルス検出部に到達するまでの検出時間遅延を測定することにより、光導波路型センサ部を特定して光導波路型センサ部ごとに蛍光強度を検出することを特徴とする上記第2の光導波路型バイオセンサ装置。
【0016】
第4:蛍光タンパク質はGFP(Green Fluorescent Protein)であることを特徴とする上記第1から第3のいずれかの光導波路型バイオセンサ装置。
【0017】
第5:蛍光タンパク質は酵母表面に付着したものであることを特徴とする上記第4の光導波路型バイオセンサ装置。
【0018】
第6:光導波路型センサ部の光導波路は単一モード光導波路であり、光ファイバは単一モード光ファイバであることを特徴とする上記第1から第5のいずれかの光導波路型バイオセンサ装置。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、センシング対象物を、複数の位置において、長距離であっても迅速、簡便に精度良く測定することができる。
【0020】
そしてセンシング対象物との接触により変化する蛍光強度を多数の観測点で同時に測定するとともに、センシング対象物を検出したセンサ部を特定することができる。
【0021】
さらに、マルチモードよりも伝送損失が小さい単一モード光ファイバを用いるとともに光導波路型センサ部の光導波路を単一モード光導波路とし、光ファイバと光導波路型センサ部とを低結合損失で接続してセンサネットワークを構築しているので、高感度な検出が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の光導波路型バイオセンサ装置の実施形態を示す概略構成図である。
【図2】光導波路型センサ部を示す概略構成図である。
【図3】(a)は、有機リン化合物をゾルゲルシリカ薄膜に滴下したときの経時での蛍光顕微鏡像、(b)は、10%メタノールを同様にゾルゲルシリカ薄膜に滴下したときの経時での蛍光顕微鏡像である。
【図4】各種濃度の有機リン化合物をゾルゲルケイ酸ナトリウム薄膜に滴下したときの経時での蛍光顕微鏡像である(最上段は対照として10%メタノールを滴下した場合を示す。)。
【図5】本発明の光導波路型バイオセンサ装置による蛍光検出結果を示すグラフである。
【図6】有機リン添加によって酵母から発する蛍光が消失する様子を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明について説明する。

【0024】
図1は、本発明の光導波路型バイオセンサ装置の実施形態を示す概略構成図、図2は、その光導波路型センサ部を示した図である。

【0025】
図1に示すように、本実施形態の光導波路型バイオセンサ装置1は、OTDR2および複数の光導波路型センサ部4を有しており、複数の光導波路型センサ部4(図1において符号4a、4b、4c…)が単一モード光ファイバ3により直列に光学的に接続されている。OTDR2は、投光部6aおよび受光部6bを備え、投光部6aは不図示の励起光パルス光源を備え、受光部6bは不図示の光パルス検出部を備えている。

【0026】
そしてOTDR2の投光部6aおよび受光部6bは、カプラ7により単一モード光ファイバ3に接続されている。

【0027】
光導波路型センサ部4は、図2(a)、(b)に示すように、基板13上に設けられたクラッド12と、クラッド12に囲まれた導波路軸方向に延びるコア11とを備えており、公知のフォトリソグラフィーの手法等を利用して作製されたものである。例えば、非特許文献1および特許文献1に記載の方法により作製することができる。

【0028】
光導波路14を構成するコア11は、低温処理したゲル状または多孔性のゾルゲルシリカに蛍光タンパク質を直接混入(ドープ)し、UV照射により固定化したものである。ゾルゲルシリカとしては、室温におけるUV照射処理によるものが好ましく、例えばγ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランと屈折率調整剤のジルコニウム(IV)-n-プロポキシドを用いて80℃の加熱処理を行うことで、加水分解と縮退が始まりガラス化と同時にアルコールが蒸発する。またUV照射によっても同様のガラス化が始まる。

【0029】
ゾルゲルガラスの多孔性については過去に報告がなされてきている(R. Armon et al.“Sol-gel as reaction matrix for bacterial enzymatic activity”, Journal of Sol-Gel Science and Technology, 19, 289-292, 2000.)。一般的には低温処理でのゾルゲルシリカの多孔半径は大きくなるが(作花済夫著「ゾルゲル法の応用」アグネ承風社p. 93)、本発明では例えば多孔半径10~100nm程度のゾルゲルシリカの使用が考慮される。また空気中の水蒸気との反応による導波路損失の変化についても報告されている(O. N. Mishechkin et al. “Passivation of organic-inorganic hybrid sol-gel”, Journal of Sol-Gel Science and Technology, 34, 47-51, 2005.)
蛍光タンパク質は、励起波長の光を照射することにより蛍光を発するタンパク質であり、蛍光タンパク質を発現する自然界の生体が存在する。蛍光タンパク質の代表的なものとしては、オワンクラゲから単離された緑色の蛍光を発するタンパク質であるGFP(Green Fluorescent Protein、分子質量27kDa)などが例示される。GFPは一般的な無機・有機蛍光物質と異なりタンパク質であるため、遺伝子の形で生きた細胞や生物に導入することもできる。

【0030】
また、蛍光タンパク質として酵母表面に付着したものを用いることができる(例えばBiotechnology Advances 18 (2000) 121-140、Appl Microbiol Biotechnol (2005) 69: 423-427参照)。例えば、有機リン分解酵素と蛍光タンパク質(GFP)が酵母の表面に発現している酵母由来のものを用いることができる。なお、このような酵母としては、Saccharomyces cerevisiaeや、その他Candida utilis, Schizosaccharomyces pombe等が挙げられる。

【0031】
このような蛍光タンパク質を用いることで、図6に示すように有機リン分解酵素による有機リン化合物の分解によってpHが変化し、これにより蛍光タンパク質からの蛍光が変化する。従って有機リン化合物の検出用センサに好適である。

【0032】
図3(a)は、有機リン化合物(パラオキソン)をゾルゲルシリカ薄膜に滴下したときの経時での蛍光顕微鏡像である。酵母表面に発現したOPHおよびGFPを膜厚4μmのゾルゲルシリカにドープし、上述のゾルゲルシリカ導波路と同様の処理方法で薄膜化した。そして20mMの有機リン化合物をゾルゲルシリカ薄膜に滴下した(pH=6.8)。その結果、30分以内に蛍光パワーの減少を観測した。これは有機リン化合物がゾルゲルシリカ薄膜内部のGFPおよびOPHに反応し、蛍光減少したことを示している。これに対して図3(b)は10%メタノールを同様にゾルゲルシリカ薄膜に滴下したときの経時での蛍光顕微鏡像であるが、有機リン化合物を含まないメタノールでは蛍光パワーは変化しなかった。

【0033】
クラッド12は、屈折率等を化学組成等により考慮して、例えばコア11と同様にゾルゲルシリカにより作製することができる。

【0034】
光導波路型センサ部4は、光導波路14を構成するコア11の入射側端面11aより励起光パルスを入射し、コア11内の蛍光タンパク質を励起することで、出射側端面11bより導波路進行方向に蛍光タンパク質からの蛍光を取り出すことができる。

【0035】
蛍光タンパク質をドープするゾルゲルシリカは、低温処理を行った場合、ゲル状や多孔性とすることができるため、センシング対象物としての固体、液体、および気体の全てをゾルゲルシリカ内部に浸透させることができる。従って、蛍光タンパク質を発現する酵母等の微生物をゾルゲルシリカにドープした場合、当該微生物は外部からの酸素交換によりゾルゲルシリカ内部で生存可能となり、蛍光タンパク質の光導波路デバイス1内での寿命を向上させることができる。

【0036】
また、化学物質を光導波路型センサ部4に外部から接触させることで、当該化学物質を光導波路14内に浸透させることも可能である。たとえば農薬やサリン等の有機リン化合物を光導波路型センサ部4に接触させることで光導波路14内に有機リン化合物が浸透した場合、酵母等の微生物に付着した有機リン加水分解酵素の反応により蛍光タンパク質からの蛍光量は変化し、この蛍光量変化から有機リン化合物の検出が可能となる。

【0037】
図1および図2の実施形態では光導波路14のゾルゲル材料としてゾルゲルシリカを用いているが、本発明ではゾルゲルシリカ以外にゾルゲルケイ酸ナトリウムを用いることもできる。

【0038】
図4は、各種濃度の有機リン化合物(パラオキソン)をゾルゲルケイ酸ナトリウム薄膜に滴下したときの経時での蛍光顕微鏡像である(なお、最上段は対照として10%メタノールを滴下した場合を示す。)。酵母表面に発現したOPHおよびGFPをゾルゲルケイ酸ナトリウム膜にドープし、上述のゾルゲルシリカ導波路と同様の処理方法で薄膜化した。そして各濃度の有機リン化合物をゾルゲルケイ酸ナトリウム薄膜に滴下した。その結果、図4に示すように20mMの有機リン化合物に対して1分以内での消光を確認した。この結果と図3とを対比すると、ゾルゲル材料としてゾルゲルケイ酸ナトリウムを用いた場合には、ゾルゲルシリカの場合に比べて有機リン化合物との反応時間を短縮できることが分かる。従って、検査サイクルの点からも好適である。

【0039】
本発明において、ケイ酸ナトリウムを用いたゾルゲル法は、既に知られている方法を参考にして適用することができる。(例えば、Biosensors and Bioelectronics 20 (2005) 1433-1437、Chem. Mater. 2000, 12, 2434-2441等参照)。例えば、ゾルゲルコーティング方法の具体的な一例として次のように行うことができる。

【0040】
まず、ゾルゲル溶液を調製する。ケイ酸ナトリウム溶液(~10.6% Na2O、~26.5% SiO2)1.15 gをポリプロピレン製の容器に採取し、撹拌しながら滅菌SP水3.4 mlを添加する。数分攪拌後、DOWEX TM 50W×8 100-200 Mesh (H) Cation Exchange Resin 1.18 g(添加する前に、RO水で洗浄する)を添加し、攪拌する。そして、吸引ろ過を行うことで樹脂を除去する(このときのフィルターは、例えばMILLIPORE社のNYLON NET FILTERSでFILTER TYPE : 11μl, NY 11を用いることができる)。攪拌しながら、ろ液に1N HCl 0.5 mlをゆっくりと滴下後、Millex(登録商標)-LG 0.2μmでフィルター濾過する。

【0041】
このように調製したゾルゲル溶液を用いてゾルゲルコーティングを行う。例えば、pH7の1 mM HEPES/0.1 mM CoCl2 buffer (ゾルゲル溶液の1/5量) をゾルゲル溶液に添加する。そして、カットしたスライドガラス(25×25 mm)に適量添加し、2,000 rpm、45sでスピンコート後、4℃、24hエイジングを行う。

【0042】
なお、有機リン化合物添加後のEGFPの蛍光応答を観察するために、例えば、1 mM HEPES/0.1 mM CoCl2buffer(pH7)で洗浄、懸濁したEGFPとOPHの同時表層発現酵母(ゾルゲル溶液の1/5量)をゾルゲル溶液に添加し、その溶液を用いて上記のようにゾルゲルコーティングを行うことができる。

【0043】
そして図1に示すように、本実施形態の光導波路型バイオセンサ装置1は、光導波路型センサ部4の光導波路14を単一モード光導波路とし、光導波路型センサ部4のコア11の入射側端面11aおよび出射側端面11bに単一モード光ファイバ3を光学的に接続し、これにより複数の光導波路型センサ部4を単一モード光ファイバ3により直列に接続している。

【0044】
それぞれの光導波路型センサ部4の励起光パルス入射側とは反対側の単一モード光ファイバ3には、ファイバブラッググレーティング5が設けられている。ファイバブラッググレーティング5は、例えば光ファイバに紫外レーザ光を照射する等により光ファイバ中のコアの屈折率に周期的な強弱を持たせたものであり、その結果ファイバ長手方向に周期的な屈折率変調が得られ、周期に合致した波長の光信号のみが反射し他の波長の光信号はこの周期的屈折率変動を感知せず通過する。本実施形態では、ファイバブラッググレーティング5は光導波路型センサ部4からの蛍光を反射し励起光パルスを透過する。

【0045】
OTDR2の励起光パルス光源からの励起光パルスを単一モード光ファイバ3を通じてそれぞれの光導波路型センサ部4に導入し、蛍光タンパク質を励起することで、図2のコア11の出射側端面11bより導波路進行方向に蛍光タンパク質からの蛍光を取り出すことができる。この蛍光は、単一モード光ファイバ3に設けられたファイバブラッググレーティング5で選択的に反射されて、複数の光導波路型センサ部4を接続する単一モード光ファイバ3を通じてOTDR2の光パルス検出部により検出される。そして光パルス検出部により蛍光強度とその変化を観測することにより、センサとしての利用が可能とされる。

【0046】
OTDR2の光パルス検出部は、複数の光導波路型センサ部4からの蛍光を検出する。OTDR2は光ファイバ中を伝搬している光パルスから光パワーの一部が入射側に戻ってくる現象を利用して光ファイバの評価を行う方法であり(JIS C 6823:光ファイバ損失試験方法参照)、例えば、カプラ7を通じてフォトダイオード(PD)を接続し、A/D変換器によりデジタル信号に変換して制御装置によりパルス信号を解析する。具体的には、励起光パルス光源より励起光パルスを発した後、単一モード光ファイバ3によって直列に接続された複数の光導波路型センサ部4から出射しファイバブラッググレーティング5で反射された蛍光が光パルス検出部に到達するまでの遅延時間を測定することにより、遅延時間により光導波路型センサ部4の位置を特定して光導波路型センサ部4ごとに蛍光強度を検出する。すなわち、蛍光が光パルス検出部に到達するまでの遅延時間は、ファイバ長さに依存(dt=n dL/c, n:光ファイバ屈折率)する。例えば500m遠方の光導波路型センサ部4を探知する時間遅延は、往復1kmで5μsとなる。

【0047】
このようにして、センシング対象物との接触により変化するそれぞれの光導波路型センサ部4からの蛍光強度を個別に分離して検出することができる。

【0048】
本実施形態の光導波路型バイオセンサ装置1を作製しそれぞれの光導波路型センサ部4からの蛍光を測定した結果を図5に示す。GFPをゾルゲルシリカのコア11にドープした光導波路型センサ部4を直列に5つ接続し、光導波路型センサ部4間のファイバ長さを5mとした。パルス幅数ナノ秒、光波長488nm、15mWの励起光レーザパルスを光導波路型センサ部4に入力してそれぞれの光導波路型センサ部4を励起し、取り出した蛍光(中心波長511nm、蛍光幅40nm)をファイバブラッググレーティング5(反射率100%:中心波長511nm、反射率0%:波長488nm)により反射させ励起光を透過させた。

【0049】
反射した蛍光パルスを光パルス検出部によりOTDRで検出し、蛍光パルスが光パルス検出部に到達するまでの遅延時間からそれぞれの光導波路型センサ部4に対応する反射蛍光を識別するとともに、蛍光強度(波長511nm)の変化を検出した。

【0050】
図5に示すように、2つの光導波路型センサ部4のうち、2番目と4番目の光導波路型センサ部4に緩衝液(pH 4.5)を滴下したところ、120秒後には2番目と4番目の光導波路型センサ部4に蛍光強度の減衰が観測された。

【0051】
このように、本実施形態の光導波路型バイオセンサ装置1は、有機リン化合物等の外部物質など、センシング対象物(固体、液体、または気体)との接触により変化する蛍光強度を測定し、センシング対象物の存在および濃度をリアルタイムに測定することができる。従って、例えば、有機リン系薬物(農薬、サリン等)の検知のためのセンサネットワークに好適である。

【0052】
また、本実施形態の光導波路型バイオセンサ装置1は、光ファイバを用いてセンサネットワークを構築しており、光ファイバは同軸ケーブルに比べて径が小さく、漏電の危険性がないことから、建造物や装置等の内部への敷設が容易となる。そして光ファイバは同軸ケーブルに比べて伝送損失が小さいため、数kmにわたる信号伝送が可能である。

【0053】
以上に、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 光導波路型バイオセンサ装置
2 OTDR
3 単一モード光ファイバ
4、4a、4b、4c 光導波路型センサ部
5 ファイバブラッググレーティング
6a 投光部
6b 受光部
7 カプラ
11 コア
11a 入射側端面
11b 出射側端面
12 クラッド
13 基板
14 光導波路
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図5】
2
【図3】
3
【図4】
4
【図6】
5