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明細書 :化合物粒子が傾斜分散した傾斜機能材料の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5527655号 (P5527655)
公開番号 特開2011-184713 (P2011-184713A)
登録日 平成26年4月25日(2014.4.25)
発行日 平成26年6月18日(2014.6.18)
公開日 平成23年9月22日(2011.9.22)
発明の名称または考案の名称 化合物粒子が傾斜分散した傾斜機能材料の製造方法
国際特許分類 C22C   1/10        (2006.01)
C22C  21/00        (2006.01)
C22C  23/00        (2006.01)
FI C22C 1/10 H
C22C 21/00 E
C22C 23/00
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2010-048602 (P2010-048602)
出願日 平成22年3月5日(2010.3.5)
審査請求日 平成25年2月21日(2013.2.21)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
発明者または考案者 【氏名】渡辺 義見
【氏名】佐藤 尚
審査官 【審査官】河野 一夫
参考文献・文献 特開2004-353087(JP,A)
調査した分野 C22C 1/00 - 49/14
特許請求の範囲 【請求項1】
反応可能な物質A粒子と物質B粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらに該混合粉末に溶融した物質Aを注入することにより、粉末粒子間に物質Aを行き渡らせ、かつ、物質Aと物質Bとを反応させて、遠心力方向に化合物AmBnが傾斜分散した傾斜機能材料の製造方法
【請求項2】
前記物質Aが金属であり、前記物質Bが金属あるいは半金属である、請求項1に記載の傾斜機能材料の製造方法
【請求項3】
前記物質AがMgであり、前記物質BがSiである、請求項2に記載の傾斜機能材料の製造方法
【請求項4】
前記物質AがAlであり、前記物質BがTiである、請求項2に記載の傾斜機能材料の製造方法
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜機能材料およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
傾斜機能材料とは組成や組織が異なる複数の素材が傾斜し、一体的に組み合わされた材料のことである。傾斜機能材料を製造するためには、材料設計に応じて材料内部の組成分布や組織を自由に制御できる技術が要求される。傾斜機能材料の製造技術は、素材と大きさの組合せにより多種多岐にわたる。具体例として、金属粉末とセラミックス粉末とを所定の割合で混合し、その混合粉末をあらかじめ定められた組成分布に従って組成を変えながら積層し、それの焼結を行う粉末冶金法がある。しかし、この手法では組成傾斜が段階的になり、連続的に組成が傾斜した材料の製造は困難である。
【0003】
特許文献1、特許文献2および特許文献3に記載の、遠心力を利用した製造法では連続的組成傾斜が可能となる。遠心力を利用した傾斜機能材料の従来の製造技術は、大きく2つの手法に分けることが出来る。その一つは遠心鋳造を応用した遠心力法である(図1)。第2相粒子を含む金属溶湯を遠心鋳造に供すると、金属溶湯と第2相粒子の密度差によって、第2相粒子が金属母相中を移動する。金属溶湯中に粒子が傾斜分布した状態で移動を終了させれば傾斜機能材料製造法の製造が行え、これを遠心力固相法と呼んでいる。
【0004】
金属溶湯中における粒子の移動速度は次のストークスの式によって支配される。
【0005】
【数1】
JP0005527655B2_000002t.gif

【0006】
ここで、dx/dt、rp、rm、g、Dp およびh はそれぞれ粒子の移動速度、粒子の密度、溶融母相の密度、重力、粒子径および見かけの粘性である。この式から分かるように、粒子の移動速度は溶融母相と固相粒子の密度差、重力倍数および固相粒子径の二乗に比例する。金属溶湯に粒子を添加し、遠心力を印加せず重力場での沈降を利用した傾斜機能材料の製造も報告されている。これは、原理的に遠心力法と等しい。溶湯中の第2相粒子が溶解し、遠心力印加場で晶出する場合もあり、これを遠心力晶出法と言う(特許文献4、特許文献5)。
【0007】
しかし、溶湯中の固相粒子の移動速度は数1より明らかなように固相粒子径の二乗に比例するため、微細粒子分散の複合材料の製造は不可能であった.この欠点を補うべく、母相となる金属粉末と複合化させたい微細粒子粉末が混合している混合粉末を作製し、その混合粉末を遠心力鋳造装置の型に投入して、型を回転させることによって遠心力印加および型の予備加熱を行い、回転中の型へ溶解炉で溶解された金属母材溶湯を流し込むことによって、微細粒子が母相に強固に固定され母相中に均一あるいは傾斜分散された微細粒子複合材料を製造する方法が提案されている(特許文献6)。しかし、特許文献6で示された技術では、混合粉末の成分がそのまま傾斜機能材料の強化相となるため、製造可能な材料系に制限があった。また、強化相と母相とは単に物理的に結合しているため、一般的には強化相と母相との界面強度が弱いという欠点を有していた。
【先行技術文献】
【0008】

【特許文献1】特開2001-80972号公報
【特許文献2】特開2001-115224号公報
【特許文献3】特開2001-112263号公報
【特許文献4】特開2001-252753号公報
【特許文献5】特開2003-166028号公報
【特許文献6】特開2008-284589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記点に鑑みて、傾斜機能材料を構成する成分を化合物とすることにより、界面強度が強く強化相の脱落のない傾斜機能材料を製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明では、化合物AmBnが傾斜分散した傾斜機能材料を得るために反応可能な物質A粒子と物質B粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらにこれに溶融した物質Aを注入することにより、粉末粒子間に物質Aを行き渡らせ、かつ、溶融物質Aの持つ熱量により混合粉末における物質A粒子を溶融させ、物質B粒子を溶融物質Aが取り巻くようにせしめ,加えて物質Aと物質Bとの反応を生じせしめて製造させたことを特徴とする。また、請求項2に記載の発明では、反応可能な物質A粒子と物質B粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらにこれに溶融した物質Aを注入することにより、粉末粒子間に物質Aを行き渡らせ、かつ、溶融物質Aの持つ熱量により混合粉末における物質A粒子を溶融させ、物質B粒子を溶融物質Aが取り巻くようにせしめ、加えて物質Aと物質Bとの反応を生じせしめ、遠心力方向に化合物AmBnが傾斜分散した傾斜機能材料を製造することを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明では、遠心力方向に化合物AmBnが傾斜分散した傾斜機能材料を得るため、反応可能な金属A粒子と金属あるいは半金属B粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらにこれに金属A溶湯を注入することにより、粉末粒子間に金属溶湯Aを行き渡らせ、かつ、金属溶湯Aの持つ熱量により混合粉末における金属A粒子を溶融させ、金属あるいは半金属B粒子を金属溶湯Aが取り巻くようにせしめ、加えて金属Aと金属あるいは半金属Bとの反応を生じせしめて製造したことを特徴とする。また、請求項4に記載の発明では、反応可能な金属A粒子と金属あるいは半金属B粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらにこれに金属A溶湯を注入することにより、粉末粒子間に金属溶湯Aを行き渡らせ、かつ、金属溶湯Aの持つ熱量により混合粉末における金属A粒子を溶融させ、金属あるいは半金属B粒子を金属溶湯Aが取り巻くようにせしめ、加えて金属Aと金属あるいは半金属Bとの反応を生じせしめ、遠心力方向に化合物AmBnが傾斜分散した傾斜機能材料を製造することを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明では、Mg粒子とSi粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらにこれにMg溶湯を注入することにより、粉末粒子間にMg溶湯を行き渡らせ、かつ、Mg溶湯の持つ熱量により混合粉末におけるMg粒子を溶融させ、Si粒子をMg溶湯が取り巻くようにせしめ、加えてMgとSiとの反応を生じせしめて製造した遠心力方向に化合物MgSiが傾斜分散した傾斜機能材料であることを特徴とする。また、請求項6に記載の発明では、Al粒子とTi粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらにこれにAl溶湯を注入することにより、粉末粒子間にAl溶湯を行き渡らせ、かつ、Al溶湯の持つ熱量により混合粉末におけるAl粒子を溶融させ、Ti粒子をAl溶湯が取り巻くようにせしめ、加えてAlとTiとの反応を生じせしめて製造した遠心力方向に化合物AlTiが傾斜分散した傾斜機能材料であることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】遠心力による傾斜機能材料製造の原理を示す模式図である。
【図2】Mg-Siの2元系平衡状態図を示す図である。
【図3】Ti-Alの2元系平衡状態図を示す図である。
【図4】遠心鋳造装置を示す図である。
【図5】Mg-Si系材料の組織を示す図である。
【図6】Mg-Si系材料のX線回折を示す図である。
【図7】プロセス温度1150℃のAl-Ti系材料の組織を示す図である。
【図8】プロセス温度1350℃のAl-Ti系材料の組織を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態は、少なくとも反応可能な物質A粒子と物質B粒子により構成された混合粉末に遠心力を印加し、さらにこれに溶融した物質Aを注入することにより、粉末粒子間に物質Aを行き渡らせ、かつ、溶融物質Aの持つ熱量により混合粉末における物質A粒子を溶融させ、物質B粒子を溶融物質Aが取り巻くようにせしめ、加えて物質Aと物質Bとの反応を生じせしめ、遠心力方向に化合物AmBnが傾斜分散した傾斜機能材料を作製するものである。物質Aと物質Bは純物質には限られず、反応が可能であれば合金や化合物などであってもいっこうに構わない。

【0015】
本実施形態による傾斜機能材料の作製は、以下の手順でおこなわれる。
(1)混合粉末として、図1に示すような、溶融可能な物質A粒子と物質Aと反応して化合物AmBnを形成することが可能な物質B粒子を最低限含む混合粉末を用いる。
(2)この混合粉末を遠心力場にて配置させ、その後、これに溶融した物質Aを注入することにより、粉末粒子間に物質Aを行き渡らせ、かつ、溶融物質Aの持つ熱量により混合粉末における物質A粒子を溶融させ、物質B粒子を溶融物質Aが取り巻くようにせしめる。
(3)物質Aと物質Bとが反応し、化合物AmBnが形成し、遠心力方向に化合物AmBnが傾斜分散した傾斜機能材料を得る。
(4)本実施形態では、溶融可能な物質A粒子としてMgを、物質Aと反応して化合物AmBnを形成することが可能な物質B粒子としてSiの組み合わせと、溶融可能な物質A粒子としてAlを、物質Aと反応して化合物AmBnを形成することが可能な物質B粒子としてTiの組み合わせを用いるが、これが材料系を決定するものではない。
Mg-Siの2元系平衡状態図を図2に示す。図のように、MgとSiとは反応し、化合物MgSiが形成する。ここで、MgSiの密度は1.88Mg/mと低く,融点が1375Kと高く、剛性率は120GPaと高く、熱伝導率が0.234W/(mK)と低い。またTi-Alの2元系平衡状態図を図3に示す。図のように、TiAl、TiAl、AlTiおよびAlTiの化合物が形成する。

【0016】
まず、Mg-Si系の実験を行った。Mg粒子(純度99.9%)とMgと反応して化合物MgSiを形成することが可能なSi粒子(100mesh)の混合粉末を作製する。この混合粉末を図4に示すような遠心鋳造装置内の鋳型に配置させ、その後、これに溶融したMgを注入する。このとき、混合粉末の粒子間にMgが行き渡る。さらに、溶融Mgの持つ熱量により混合粉末におけるMg粒子が溶融し、Si粒子を溶融Mgが取り巻く。ここで、MgとSiとが反応し、化合物MgSiが形成し、遠心力方向に化合物MgSiが傾斜分散した傾斜機能材料となる。

【0017】
得られた材料の組織写真を図5に示す。Mg母相中に粒子が分散していることがわかる。この粒子の相を同定すべくX線回折実験を行ったところ、図6に示すように化合物MgSiの形成が見いだされた。混合粉末柱のTi粒子の量が多い場合、(a)の様に未反応のTiのまわりに化合物MgSiが形成する。これに対し、Ti量を適度に調整すると全てのSi粒子はMgと反応し、第2相粒子は化合物MgSiのみとなる。このように、混合粉末の組成(混合比)を制御することにより得られる材料の組織の制御が可能である。この材料の硬さを調査したところ、強化相の存在する領域の高度が上昇しており、機械的性質の傾斜した傾斜機能材料の製造が可能となった。

【0018】
つぎに、Al-Ti系の実験を行った。Al粒子とAlと反応して種々の化合物を形成することが可能なTi粒子の混合粉末を作製する。平均組成がAl-10質量%Tiとなるようにする。この混合粉末を図4に示すような遠心鋳造装置内の鋳型に配置させ、その後、これに異なる温度で溶融したAlを注入する。このとき、混合粉末の粒子間にAlが行き渡る。さらに、溶融Alの持つ熱量により混合粉末におけるAl粒子が溶融し、Ti粒子を溶融Alが取り巻く。ここで、AlとTiとが反応し、化合物が形成し、遠心力方向に化合物が傾斜分散した傾斜機能材料となる。

【0019】
1150℃で溶融したAlを注入して得られた材料の組織写真を図7に示す。Al母相中に粒子が分散していることがわかる。この粒子は、未反応のTi粒子と反応により形成したAlTi金属間化合物である。これに対し、1350℃で溶融したAlを注入して得られた材料の組織写真を図8に示す。プロセス温度を適度に調整すると全てのTi粒子はAlと反応し、第2相粒子はAlTi金属間化合物のみとなる。このように、プロセス温度を制御することにより組織の制御が可能である。

【0020】
本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用可能である。例えば、実施例は純物質同士の反応であったが、片方あるいは両者とも合金あるいは化合物のようなものでものを用いてもよい。また、2元系の例をあげたが、3元系以上でも同様である。さらに、実施例では組織制御を混合粉末の組成(混合比)およびプロセス温度により行ったが、対象物質の組成、混合粉末と注入溶融物質との量比、混合粉末の粒子径、混合粉末の分散状態、鋳型の形状、鋳型内における混合粉末の設置方法、遠心力の大きさ、鋳型の予備加熱温度、冷却方法及び冷却速度によっても可能である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7