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明細書 :デジタル音響信号処理装置

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5540374号 (P5540374)
公開番号 特開2011-041023 (P2011-041023A)
登録日 平成26年5月16日(2014.5.16)
発行日 平成26年7月2日(2014.7.2)
公開日 平成23年2月24日(2011.2.24)
発明の名称または考案の名称 デジタル音響信号処理装置
国際特許分類 H04R   3/00        (2006.01)
H04R   1/40        (2006.01)
H04S   1/00        (2006.01)
FI H04R 3/00 310
H04R 1/40 310
H04S 1/00 K
請求項の数または発明の数 6
全頁数 34
出願番号 特願2009-186829 (P2009-186829)
出願日 平成21年8月11日(2009.8.11)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 平成21年2月12日 国立大学法人金沢大学の「自然科学研究科電子情報工学専攻修士論文口頭発表会(F部門)」で発表
審査請求日 平成24年8月10日(2012.8.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
発明者または考案者 【氏名】西川 清
個別代理人の代理人 【識別番号】100075557、【弁理士】、【氏名又は名称】西教 圭一郎
審査官 【審査官】▲吉▼澤 雅博
参考文献・文献 特開2007-135199(JP,A)
特開2008-048294(JP,A)
特開2009-010491(JP,A)
国際公開第2008/041530(WO,A1)
調査した分野 H04R 3/00
H04R 1/40
H04S 1/00
特許請求の範囲 【請求項1】
音源から入力したデジタル音響信号の指向特性を、2次元デジタルフィルタによって制御し、一直線に沿って配置され、かつ前記一直線に直交する方向に並列に音を出力する複数のスピーカから成るスピーカアレーによって再生するデジタル音響信号処理装置であって、
前記2次元デジタルフィルタは、時間およびスピーカの位置について2次元フーリエ変換した音響信号のスペクトルを、時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、ビームの過渡域幅が角度10°以下に設定されるように構成されることを特徴とするデジタル音響信号処理装置。
【請求項2】
前記2次元デジタルフィルタは、前記一直線上で前記複数のスピーカの中心を通り、かつスピーカの出力面に直交する第2の直線に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点を形成する第1の2次元デジタルフィルタおよび音響ビームの第2の焦点を形成する第2の2次元デジタルフィルタを含み、
前記音源は、ステレオ音源であり、ステレオ音源からの左デジタル音響信号が第1の2次元デジタルフィルタに入力され、ステレオ音源からの右デジタル音響信号が第2の2次元デジタルフィルタに入力されることを特徴とする請求項1に記載のデジタル音響信号処理装置。
【請求項3】
前記第1の焦点と前記第2の焦点との距離は、前記複数のスピーカのうち第2の直線から最も遠い位置にある両端のスピーカの前記一直線上のそれぞれの中心を結ぶ線分の長さの半分未満の長さに設定されることを特徴とする請求項2に記載のデジタル音響信号処理装置。
【請求項4】
前記2次元デジタルフィルタは、前記一直線上で前記複数のスピーカの中心を通り、かつスピーカの出力面に直交する第2の直線に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点を形成する第1の2次元デジタルフィルタおよび音響ビームの第2の焦点を形成する第2の2次元デジタルフィルタ、ならびに前記第2の直線に対して前記平面上で、前記複数のスピーカの前記直線方向の中心からの距離が第1,2の焦点と同じで、かつ第1,2の焦点の位置よりも前記第2の直線に近い対称な位置に、第2の直線に対して第1の焦点と同じ側に、音響ビームの第3の焦点を形成する第3の2次元デジタルフィルタ、および第2の直線に対して第2の焦点と同じ側に、音響ビームの第4の焦点を形成する第4の2次元デジタルフィルタを含み、
前記音源は、第1のステレオ音源および第2のステレオ音源を含み、第1のステレオ音源からの第1の左デジタル音響信号が第1の2次元デジタルフィルタに入力され、第1のステレオ音源からの第1の右デジタル音響信号が第3の2次元デジタルフィルタに入力され、第2のステレオ音源からの第2の左デジタル音響信号が第4の2次元デジタルフィルタに入力され、第2のステレオ音源からの第2の右デジタル音響信号が第2の2次元デジタルフィルタに入力されることを特徴とする請求項1に記載のデジタル音響信号処理装置。
【請求項5】
前記第1~第4の2次元デジタルフィルタは、前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離が予め定める距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度である第1の設定値、前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも大きい角度である第2の設定値、または前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が前記予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも小さい角度である第3の設定値に設定されることを特徴とする請求項4に記載のデジタル音響信号処理装置。
【請求項6】
前記2次元デジタルフィルタの音響信号のスペクトルを前記2次元周波数平面上で表したとき、ビーム中心の両側に形成される前記ビームの過渡域幅は、ビーム中心に対して非対称に設定されることを特徴とする請求項1~5のいずれか1つに記載のデジタル音響信号処理装置。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のスピーカを配列したスピーカアレーによって、特定の方向に強い指向性で音波を放射させることができる音響再生信号を生成するデジタル音響信号処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音を特定方向の狭い範囲に放射させる用途が増加しているが、低い周波数から高い周波数に渡って同一指向特性の音響ビーム形成は、超音波による方法以外にはまだ商用されていない。しかし、スピーカアレーおよび2次元デジタルフィルタで構成される指向性アレースピーカ(非特許文献1,2参照)によって所望の指向特性に設計すれば、広角度から狭角度までの指向性ビームを形成することができる。
【0003】
同様にスピーカアレーを用いて特定の位置、すなわち焦点に集束する音響ビームを形成する方法があり、用いる2次元デジタルフィルタに、音の集束のために、方向により異なる直線位相の2次元位相特性が設定される(非特許文献3,4参照)。この方法では、スピーカアレーから近い距離では、位相特性が効果的に働いて、焦点位置に旨く集束する音響ビームが形成される。
【0004】
マルチメディア社会の進展に伴い、大画面映像を提供する地上デジタル放送やデジタルバーサタイルディスクやブルーレイディスクなどの光記録媒体を用いた高画質な映像を提供することができるシステムが普及してきている。特に、オーディオビジュアルシステムでは、高い臨場感を実現するため、ステレオ音響再生の役割が非常に重要になってきている。
【0005】
集束型の指向性アレースピーカは、スピーカアレーと2次元デジタルフィルタとを用いて焦点を形成することができ(非特許文献3,4参照)、この焦点付近では、非常に高い音圧レベルであることに着目して、この高音圧の焦点を利用したステレオ再生システムも提案されている。
【先行技術文献】
【0006】

【非特許文献1】西川清、外4名、「広帯域ビーム形成用2次元FIRファンフィルタの2次元フーリエ級数近似による設計法」、電子通信学会論文誌、社団法人電子情報通信学会、2000年12月、第J83-A巻、第12号、p.1357-1367
【非特許文献2】松本康志、西川清、「一定サイドローブ量の指向性アレースピーカの設計法」、信学技報、社団法人電子情報通信学会、2004年10月、EA2004-74、p.13-18
【非特許文献3】西川清、横山哲哉、宮岸美貴子、「直線状スピーカアレーと2次元FIRフィルタを用いた音像移動の方法」、電子情報通信学会論文誌、社団法人電子情報通信学会、2000年7月、第J83-A巻、第7号、p.839-849
【非特許文献4】西川清、志村智、横山哲哉、宮岸美貴子、「2次元ディジタルフィルタを用いた音像移動と集束ビーム形成」AES東京コンベンション‘99予稿集、p.166-169
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、指向性アレースピーカを用いて複数の焦点を形成することによってステレオシステムあるいはマルチステレオシステムを形成しようとする場合、複数の音響ビームが互いに影響しあい焦点位置後方でのステレオ効果を十分発揮させることができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、指向性アレースピーカの音響ビームの焦点先鋭度を高くすることができるデジタル音響信号処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、音源から入力したデジタル音響信号の指向特性を、2次元デジタルフィルタによって制御し、一直線に沿って配置され、かつ前記一直線に直交する方向に並列に音を出力する複数のスピーカから成るスピーカアレーによって再生するデジタル音響信号処理装置であって、
前記2次元デジタルフィルタは、時間およびスピーカの位置について2次元フーリエ変換した音響信号のスペクトルを、時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、ビームの過渡域幅が角度10°以下に設定されるように構成されることを特徴とするデジタル音響信号処理装置である。
【0010】
また本発明は、前記2次元デジタルフィルタは、前記一直線上で前記複数のスピーカの中心を通り、かつスピーカの出力面に直交する第2の直線に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点を形成する第1の2次元デジタルフィルタおよび音響ビームの第2の焦点を形成する第2の2次元デジタルフィルタを含み、
前記音源は、ステレオ音源であり、ステレオ音源からの左デジタル音響信号が第1の2次元デジタルフィルタに入力され、ステレオ音源からの右デジタル音響信号が第2の2次元デジタルフィルタに入力されることを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記第1の焦点と前記第2の焦点との距離は、前記複数のスピーカのうち第2の直線から最も遠い位置にある両端のスピーカの前記一直線上のそれぞれの中心を結ぶ線分の長さの半分未満の長さに設定されることを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記2次元デジタルフィルタは、前記一直線上で前記複数のスピーカの中心を通り、かつスピーカの出力面に直交する第2の直線に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点を形成する第1の2次元デジタルフィルタおよび音響ビームの第2の焦点を形成する第2の2次元デジタルフィルタ、ならびに前記第2の直線に対して前記平面上で、前記複数のスピーカの前記直線方向の中心からの距離が第1,2の焦点と同じで、かつ第1,2の焦点の位置よりも前記第2の直線に近い対称な位置に、第2の直線に対して第1の焦点と同じ側に、音響ビームの第3の焦点を形成する第3の2次元デジタルフィルタ、および第2の直線に対して第2の焦点と同じ側に、音響ビームの第4の焦点を形成する第4の2次元デジタルフィルタを含み、
前記音源は、第1のステレオ音源および第2のステレオ音源を含み、第1のステレオ音源からの第1の左デジタル音響信号が第1の2次元デジタルフィルタに入力され、第1のステレオ音源からの第1の右デジタル音響信号が第3の2次元デジタルフィルタに入力され、第2のステレオ音源からの第2の左デジタル音響信号が第4の2次元デジタルフィルタに入力され、第2のステレオ音源からの第2の右デジタル音響信号が第2の2次元デジタルフィルタに入力されることを特徴とする。
【0013】
また本発明は、前記第1~第4の2次元デジタルフィルタは、前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離が予め定める距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度である第1の設定値、前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも大きい角度である第2の設定値、または前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が前記予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも小さい角度である第3の設定値に設定されることを特徴とする。
【0014】
また本発明は、前記2次元デジタルフィルタの音響信号のスペクトルを前記2次元周波数平面上で表したとき、ビーム中心の両側に形成される前記ビームの過渡域幅は、ビーム中心に対して非対称に設定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、音源から入力したデジタル音響信号の指向特性を制御する2次元デジタルフィルタは、時間およびスピーカの位置について2次元フーリエ変換した音響信号のスペクトルを、時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、ビームの過渡域幅が角度10°以下に設定されるように構成される。したがって、デジタル音響信号処理装置、たとえば指向性アレースピーカの音響ビームの焦点先鋭度を高くすることができる。
【0016】
また本発明によれば、前記2次元デジタルフィルタは、前記一直線上で前記複数のスピーカの中心を通り、かつスピーカの出力面に直交する第2の直線に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点を形成する第1の2次元デジタルフィルタおよび音響ビームの第2の焦点を形成する第2の2次元デジタルフィルタを含み、前記音源であるステレオ音源からの左デジタル音響信号が第1の2次元デジタルフィルタに入力され、ステレオ音源からの右デジタル音響信号が第2の2次元デジタルフィルタに入力される。すなわち、ステレオ音源の左右の音響ビームの焦点先鋭度をそれぞれ高くすることができるので、他の音響ビームとの境界を明確にすることができ、左右音源を際立たせ、ステレオ効果を高めることができる。
【0017】
また本発明によれば、前記第1の焦点と前記第2の焦点との距離は、前記複数のスピーカのうち第2の直線から最も遠い位置にある両端のスピーカの前記一直線上のそれぞれの中心を結ぶ線分の長さの半分未満の長さに設定されるので、受聴位置で、音圧が高く、かつステレオ効果が高く、そして臨場感のある音を形成することができる。
【0018】
また本発明によれば、前記2次元デジタルフィルタは、前記一直線上で前記複数のスピーカの中心を通り、かつスピーカの出力面に直交する第2の直線に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点を形成する第1の2次元デジタルフィルタおよび音響ビームの第2の焦点を形成する第2の2次元デジタルフィルタ、ならびに前記第2の直線に対して前記平面上で、前記複数のスピーカの前記直線方向の中心からの距離が第1,2の焦点と同じで、かつ第1,2の焦点の位置よりも前記第2の直線に近い対称な位置に、第2の直線に対して第1の焦点と同じ側に、音響ビームの第3の焦点を形成する第3の2次元デジタルフィルタ、および第2の直線に対して第2の焦点と同じ側に、音響ビームの第4の焦点を形成する第4の2次元デジタルフィルタを含み、前記音源は、第1のステレオ音源および第2のステレオ音源を含む。そして、第1のステレオ音源からの第1の左デジタル音響信号が第1の2次元デジタルフィルタに入力され、第1のステレオ音源からの第1の右デジタル音響信号が第3の2次元デジタルフィルタに入力され、第2のステレオ音源からの第2の左デジタル音響信号が第4の2次元デジタルフィルタに入力され、第2のステレオ音源からの第2の右デジタル音響信号が第2の2次元デジタルフィルタに入力される。すなわち、2つのステレオ音源のそれぞれの左右の音響ビームの焦点先鋭度を個々に高くすることができるので、他の音響ビームとの境界を明確にすることができ、それぞれのステレオ音源を際立たせ、それぞれステレオ効果を高めることができる。
【0019】
また本発明によれば、前記第1~第4の2次元デジタルフィルタは、前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離が予め定める距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度である第1の設定値、前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも大きい角度である第2の設定値、または前記第1の焦点と前記第3の焦点との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、前記第1の焦点の通過域のビーム中心の角度が前記予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ前記第3の焦点の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも小さい角度である第3の設定値に設定される。したがって、受聴領域の広さを受聴する人数に応じた2次元デジタルフィルタとすることができる。
【0020】
また本発明によれば、前記2次元デジタルフィルタの音響信号のスペクトルを前記2次元周波数平面上で表したとき、ビーム中心の両側に形成される前記ビームの過渡域幅は、ビーム中心に対して非対称に設定されるので、音響ビームの両側のうち、片側の音圧の減衰を緩慢にし、他の片側の音圧の減衰を急峻にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態である指向性アレースピーカ1の構成を示すブロック図である。
【図2】2次元デジタルフィルタ4の機能の構成を示す図である。
【図3】1次元デジタルフィルタ3の論理構成を示す図である。
【図4】2次元デジタルフィルタ4Lを1次元デジタルフィルタの伝達関数で表したブロック図である。
【図5】2次元デジタルフィルタ4Lによって形成される左焦点PLの位置を示す図である。
【図6】2次元デジタルフィルタ4Lの目標振幅特性を示す図である。
【図7】インパルス列応答におけるピーク値Hpおよび幅Wpを説明するための図である。
【図8】2次元デジタルフィルタ4Lによる指向性アレースピーカ1のインパルス列応答の空間分布を示す図である。
【図9】2次元デジタルフィルタ4Lによる指向性アレースピーカ1のインパルス列応答の空間分布の断面特性を示す図である。
【図10】ビーム過渡域幅を20°としたときのインパルス列応答の空間分布を示す図である。
【図11】ビーム過渡域幅を20°としたときのインパルス列応答の空間分布の断面特性を示す図である。
【図12】指向性アレースピーカ1の2つの焦点の位置を示す図である。
【図13】第1の比較例である指向性アレースピーカ91の2つの焦点の位置を示す図である。
【図14】第2の比較例である指向性アレースピーカ92の2つの焦点の位置を示す図である。
【図15】指向性アレースピーカ1の2次元デジタルフィルタ4Lによる受聴位置での指向特性およびインパルス列応答を示す図である。
【図16】指向性アレースピーカ91の2次元デジタルフィルタ4Lによる受聴位置での指向特性およびインパルス列応答を示す図である。
【図17】指向性アレースピーカ92の2次元デジタルフィルタ4Lによる受聴位置での指向特性およびインパルス列応答を示す図である。
【図18】本発明の他の実施形態である指向性アレースピーカ101の構成を示すブロック図である。
【図19】指向性アレースピーカ101の第1の設計例の4つの焦点の位置とステレオ領域との位置関係を示す図である。
【図20】指向性アレースピーカ101の第2の設計例の4つの焦点の位置とステレオ領域との位置関係を示す図である。

【0022】
【図21】指向性アレースピーカ101の第3の設計例の4つの焦点の位置とステレオ領域との位置関係を示す図である。
【図22】第3の設計例の2次元デジタルフィルタ4L1の指向特性およびインパルス列応答の空間分布を示す図である。
【図23】第3の設計例の2次元デジタルフィルタ4R1の指向特性およびインパルス列応答の空間分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態である指向性アレースピーカ1の構成を示すブロック図である。デジタル音響信号処理装置である指向性アレースピーカ1は、スピーカアレー2、2次元デジタルフィルタ4、アナログデジタル変換器(以下「A/D」という)7L,7R、デジタルアナログ変換器(以下「D/A」という)8a~8g、および増幅器(以下「Amp」という)9a~9g、および入力端子11,12を含んで構成される。

【0024】
指向性アレースピーカ1は、ステレオ効果を発揮することができる装置であり、音源、たとえばステレオ音源からのアナログ信号である左音響信号が入力端子11に入力され、ステレオ音源からのアナログ信号である右音響信号が入力端子12に入力される。ステレオ音源は、たとえばラジオやテレビジョンなどの放送を受信する受信装置であってもよいし、ビデオ機器などの再生装置であってもよいし、マイクロフォンなどの入力装置であってもよい。

【0025】
A/D7Lは、入力端子11から入力される左音響信号を、予め定めるサンプリング間隔でサンプリングして、左デジタル音響信号に変換するアナログデジタル変換器であり、A/D7Rは、入力端子12から入力される右音響信号を、予め定めるサンプリング間隔でサンプリングして、右デジタル音響信号に変換するアナログデジタル変換器である。A/D7L,7Rは、それぞれ変換したデジタル音響信号を2次元デジタルフィルタ4に送る。

【0026】
2次元デジタルフィルタ4は、たとえばデジタルシグナルプロセッサ(以下「DSP」という)および半導体メモリなどの記憶装置を含んで構成される。DSPは、たとえば周波数160MHzのクロックで動作し、A/D7Lから受け取る左デジタル音響信号およびA/D7Rから受け取る右デジタル音響信号を、スピーカアレー2から出力するためのデジタル音響信号に変換し、変換したデジタル音響信号をD/A8a~8gに出力する。DSPは、たとえば記憶装置に記憶するフィルタ係数を用いて、後述する2次元有限インパルス応答(以下「FIR」という)フィルタとしての演算を行って、デジタル音響信号への変換を行う。

【0027】
スピーカアレー2は、(N+1)個のスピーカ2a~2gから構成され、各スピーカ2a~2gには、D/A8a~8gおよびAmp9a~9gがそれぞれ縦続に接続される。Nは、正の偶数である。スピーカの個数は、増減可能であり、スピーカの個数に合わせてD/AおよびAmpの個数も増減する。D/A8a~8gは、それぞれ入力されるデジタル音響信号をアナログ音響信号に変換し、変換したアナログ音響信号を、それぞれの後段に接続されるAmp9a~9gに送る。Amp9a~9gは、D/A8a~8gから受け取るアナログ音響信号を増幅して、それぞれのスピーカ2a~2gに送り、音を出力させる。

【0028】
図2は、2次元デジタルフィルタ4の機能の構成を示す図である。2次元デジタルフィルタ4は、2次元デジタルフィルタ4L,4Rおよび加算器Ka~Kgを含んで構成される。2次元デジタルフィルタ4L,4Rおよび加算器Ka~Kgは、2次元デジタルフィルタ4を構成するDSPによって実現される機能である。2次元デジタルフィルタ4Lは、左デジタル音響信号用の2次元FIRフィルタであり、2次元デジタルフィルタ4Rは、右デジタル音響信号用の2次元FIRフィルタである。2次元デジタルフィルタ4L,4Rは、それぞれ第1,第2の2次元デジタルフィルタである。

【0029】
2次元デジタルフィルタ4Lは、スピーカアレー2が(N+1)個のスピーカによって構成されるので、(N+1)個の1次元デジタルフィルタ3a~3gによって構成される。スピーカの個数を増減する場合、1次元デジタルフィルタの個数も同じ個数になるように増減させる。1次元デジタルフィルタ3a~3gは、A/D7Lから受け取る左デジタル音響信号を、それぞれの1次元FIRフィルタによって変換し、変換したデジタル音響信号をそれぞれの加算器Ka~Kgに送る。

【0030】
2次元デジタルフィルタ4Rは、2次元デジタルフィルタ4Lと同じ構成である。2次元デジタルフィルタ4Rを構成する1次元デジタルフィルタ3a~3gは、A/D7Rから受け取る右デジタル音響信号を、それぞれの1次元FIRフィルタによって変換し、変換したデジタル信号をそれぞれの加算器Ka~Kgに送る。

【0031】
加算器Ka~Kgは、2次元デジタルフィルタ4Lの1次元デジタルフィルタ3a~3gから受け取るデジタル信号と、2次元デジタルフィルタ4Rの1次元デジタルフィルタ3a~3gから受け取るデジタル信号とをそれぞれ加算し、対応するD/A8a~8gに送る。たとえば、加算器Kaは、2次元デジタルフィルタ4Lの1次元デジタルフィルタ3aからのデジタル信号と、2次元デジタルフィルタ4Rの1次元デジタルフィルタ3aからのデジタル信号を加算して、D/A8aに送る。

【0032】
図3は、1次元デジタルフィルタ3の論理構成を示す図である。1次元デジタルフィルタ3は、1次元デジタルフィルタ3a~3gのうちの1つであることを示し、いずれも入力端子31、遅延器C1~CN、乗算器J0~JN、加算器Kおよび出力端子32を含んで構成される。遅延器C1~CNは、デジタル信号を予め定める時間遅延して出力する。

【0033】
入力端子31は、たとえば左デジタル音響信号あるいは右デジタル音響信号が入力される。入力端子31に入力されるデジタル音響信号は、遅延器C1および乗算器J0に送られる。遅延器C1は、入力端子31からのデジタル音響信号を予め定める時間遅延して遅延器C2および乗算器J1に送る。以下、各遅延器C2~C(N-1)は、それぞれ予め定める時間遅延して遅延器C3~CNおよび乗算器J2~J(N-1)に送る。遅延器CNは、予め定める時間遅延して乗算器JNに送る。

【0034】
乗算器J0~JNは、それぞれに入力されるデジタル音響信号に対して各乗算器のフィルタ係数を乗算し、乗算結果を加算器Kに送る。各乗算器のフィルタ係数は、図4で説明するフィルタ係数h(n,n)である。加算器Kは、乗算器J0~JNのそれぞれの乗算結果を加算し、加算した乗算結果をデジタル音響信号として出力する。

【0035】
図4は、2次元デジタルフィルタ4Lを1次元デジタルフィルタの伝達関数で表したブロック図である。(N+1)個の1次元デジタルフィルタ3のうち第n番目の1次元デジタルフィルタの伝達関数を伝達関数Hn2(z)とすると、伝達関数Hn2(z)は、式(1)で表わされる。

【0036】
【数1】
JP0005540374B2_000002t.gif

【0037】
ここに、Nは、フィルタ次数であり、たとえば「60」である。h(n,n)は、第n番目の1次元デジタルフィルタの第n番目の乗算器のフィルタ係数である。nは、「0」~「N」までの自然数であり、nは、-N/2~N/2の整数である。

【0038】
2次元デジタルフィルタの伝達関数をH(z,z)とすると、伝達関数H(z,z)は、式(2)で表わされる。

【0039】
【数2】
JP0005540374B2_000003t.gif
これを変形すると、式(3)となる。

【0040】
【数3】
JP0005540374B2_000004t.gif

【0041】
すなわち、2次元デジタルフィルタの伝達関数H(z,z)は、1次元デジタルフィルタの伝達関数Hn2(z)の和で表わされる。

【0042】
図5は、2次元デジタルフィルタ4Lによって形成される左焦点PLの位置を示す図である。指向性アレースピーカ1は、2次元デジタルフィルタ4L,4Rを含んで構成されるが、フィルタ係数を設計することを説明するために2次元デジタルフィルタ4Lに着目して説明する。図5には、指向性アレースピーカ1を構成する2次元デジタルフィルタ4Lおよびスピーカアレー2のみを示しており、他の構成要素は省略している。2次元デジタルフィルタ4Rも同様にフィルタ係数を設計することができる。

【0043】
スピーカアレー2は、スピーカ間隔Dおよびスピーカ個数(N+1)のスピーカ2a~2gによって構成され、2次元デジタルフィルタ4Lは、(N+1)個の1次元デジタルフィルタ3a~3gによって構成される。スピーカ2a~2gは、スピーカアレー2の中心O、つまりスピーカ2dの中心Oを原点とするXY座標のY軸に沿って一直線上に等間隔で並列に配置される。X軸方向は、スピーカ2dの出力面に直交する方向である。スピーカ2a~2gのいずれの出力面もX軸方向となるように配置される。図5に示したスピーカアレー2は、水平方向に配置され、鉛直方向の上側から見た図であるが、鉛直方向に配置することも可能である。

【0044】
本実施の形態では、周波数および方向のパラメータを用いるのではなく、時間周波数と空間周波数とによって表わされる2次元周波数平面での2次元デジタルフィルタを所望の周波数および指向特性に近似して、2次元デジタルファンフィルタとして設計する手順について説明する。

【0045】
指向性アレースピーカ1は、2次元デジタルフィルタ4Lの振幅特性および位相特性を設定することによって、スピーカアレー2の中心Oから角度φ0、距離rの左焦点PLに音響ビームの焦点を仮想音源点として形成する。以下に2次元デジタルフィルタ4Lの設計法の概略について述べる。2次元デジタルフィルタ4Lの振幅特性および位相特性の設定は、2次元デジタルフィルタ4Lのフィルタ係数を設計することによって行う。

【0046】
図6は、2次元デジタルフィルタ4Lの目標振幅特性を示す図である。横軸が時間周波数fであり、縦軸が空間周波数fである。2次元周波数平面において、非物理領域5は、φ=90°の直線とφ=-90°の直線とを境界として、空間周波数fと時間周波数fとの比の値の絶対値|f/f|がρより大きい領域であって、音響信号のスペクトルの存在しない領域をいう。また、物理領域6は、2次元周波数平面における非物理領域5を除く領域をいう。

【0047】
まず、振幅特性の設定について説明する。スピーカアレー2から、角度φで放射される音響波のスペクトルは、2次元周波数平面では式(4)の直線上に分布する。角度φは、スピーカアレー2の中心O(以下「原点O」ともいう)を中心とし、X軸に対する角度である。

【0048】
【数4】
JP0005540374B2_000005t.gif

【0049】
ここに、fは時間周波数、fは空間周波数、φ=φ、ρ=D/(cT)、Tはサンプリング間隔、Dはスピーカ間隔、そして、cは音速である。時間周波数fおよび空間周波数fは、それぞれ1/Tおよび1/Dで規格化してある。

【0050】
ビーム中心をφ=φ、ビーム肩幅をφ=φP+~φP-、ビーム半値幅をφ=φC+~φC-、ビームの広がりをφ=φS+~φS-、ビーム過渡域幅をφ=φS+~φC+、φ=φC-~φS-とする指向性音響ビームを形成するために、2次元デジタルフィルタ4Lの目標振幅特性A(f,f)として、図6に示すようなくさび型過渡域のファンフィルタ特性を設定して用いる。以下、ビーム肩幅φ=φP+~φP-に対応する2次元周波数平面の領域を通過域といい、角度φ=φP+~φS+および角度φ=φP-~φS-に対応する領域を過渡域という。

【0051】
図6中のψは、通過域の中心とf軸とのなす角、α,αおよびβ,βはそれぞれ通過域と過渡域の開き幅を決めるパラメータであり、ψはビーム中心角度φとの対応により決定され、α,αおよびβ,βはそれぞれビームの半値遮断角度φC-,φC+とビーム端角度φS-,φS+との対応により決定される。このとき、空間エリアシングの影響を入れないために式(5)を用いる。

【0052】
【数5】
JP0005540374B2_000006t.gif

【0053】
なお、|f|>ρ|f|の領域は、スペクトルが存在しない非物理領域5である。
φ=0°、すなわちψ=0°として設定する場合は、φC+=-φC-=φ,φS+=-φS-=φ,α=α=α、β=β=βとする。

【0054】
図5において、原点Oを中心とする円の波面(図5では実線で示す円弧)を、左焦点PLを中心とする小円の波面(図5では破線で示す円弧)に変形するという設定で、原点Oから角度φ方向の両波面間の伝搬遅延差τ(φ)を、波面位置を∞として導出し、これより導いた位相θ(f,f)を2次元デジタルフィルタ4Lの位相特性として設定する。位相θ(f,f)は、式(6)で表わされる。

【0055】
【数6】
JP0005540374B2_000007t.gif

【0056】
音響ビーム形成を確実にするために、ビーム端角度φS+=φ+φe+,φS-=φ-φe-とする。ただし、φe+,φe-は、スピーカアレー2の長さN・Dと、焦点位置、つまり距離rおよび角度φで特定される位置によって決まる角度であり、それぞれ式(7),(8)で与えられる。

【0057】
【数7】
JP0005540374B2_000008t.gif

【0058】
【数8】
JP0005540374B2_000009t.gif

【0059】
なお、式(6)による位相は、ρsinφS-・f<f<ρsinφS+・fにおいて有効に設定される。

【0060】
2次元デジタルフィルタ4Lの目標特性H(f,f)は、目標振幅特性A(f,f)と位相θ(f,f)とを用いて式(9)によって表わされる。

【0061】
【数9】
JP0005540374B2_000010t.gif

【0062】
次数を(N,N)とすると、2次元離散フーリエ級数近似によって得られる2次元デジタルフィルタの伝達関数H(z,z)は式(10)によって表される。

【0063】
【数10】
JP0005540374B2_000011t.gif

【0064】
ここに、h(n,n)は、式(3)に用いた2次元デジタルフィルタ4Lのフィルタ係数であり、式(11)によって表される。

【0065】
【数11】
JP0005540374B2_000012t.gif

【0066】
ただし、M,Mの値はN,Nの10倍程度以上で2のべき乗の値に選ぶ。
さらに、低域では有限次数による振幅劣化の改善のために、f軸上で幅2Wの方形特性を設定している。幅2Wでは、振幅特性が1となる。そのとき、帯域幅下端周波数fは、式(12)で表わされる。

【0067】
【数12】
JP0005540374B2_000013t.gif

【0068】
図7は、インパルス列応答におけるピーク値Hpおよび幅Wpを説明するための図である。図7(a)は、インパルス列応答の空間分布の角度φ=0°方向の断面特性を示す図であり、横軸は距離(m)、縦軸は振幅で、各応答は距離∞においてほぼ振幅1に収束する。距離は、焦点位置を0とする距離である。スピーカアレー2は、-1.5mの位置である。ピーク値Hpは、焦点位置での振幅の最大値である。

【0069】
図7(b)は、インパルス列応答の空間分布を示す図であり、横軸はX軸方向の原点Oからの距離(m)、縦軸はY軸方向の原点Oからの距離(m)を示し、振幅が0.5の位置をプロットしたものである。幅Wpは、焦点において、音響ビーム方向、つまりX軸方向に直交する方向、つまりY軸方向で、振幅0.5のプロットされた位置の最大の幅である。

【0070】
焦点先鋭度Sは、S=Hp/Wpで表され、ピーク値Hpが高く、かつ幅Wpが狭いほど、焦点先鋭度Sは高くなる。

【0071】
2次元デジタルフィルタ4Lについての指向性アレースピーカ1の設計値の一例を表1に示す。

【0072】
【表1】
JP0005540374B2_000014t.gif

【0073】
図8は、2次元デジタルフィルタ4Lによる指向性アレースピーカ1のインパルス列応答の空間分布を示す図である。図9は、2次元デジタルフィルタ4Lによる指向性アレースピーカ1のインパルス列応答の空間分布の断面特性を示す図である。図10は、ビーム過渡域幅を20°としたときのインパルス列応答の空間分布を示す図である。図11は、ビーム過渡域幅を20°としたときのインパルス列応答の空間分布の断面特性を示す図である。

【0074】
図9(a),図11(a)は、φ=0方向における断面特性であり、 図9(b),図11(b)は、φ=φ方向における断面特性であり、図9(c),図11(c)は、φ=φ方向における断面特性である。図8,図10で、実線は、ビーム端角度±φであり、破線は、ビーム半値角度±φである。

【0075】
ビーム過渡域幅の違いによる焦点先鋭度Sの違いを表2に示す。補正係数は、インパルス列応答の振幅を距離∞で1に揃えるための係数である。

【0076】
【表2】
JP0005540374B2_000015t.gif

【0077】
ビーム過渡域幅を20°とし、ビーム半値角度φで振幅が0.5となる設計では、図11(c)に示すように、ビーム端角度φでの振幅が0.2まで下がっている。指向性アレースピーカ1は、図9(c)に示すように、焦点距離の2~3倍までの距離ではビーム端角度φでの振幅が0.5以上となるように、ビーム過渡域幅を10°と狭くしているので、焦点先鋭度Sを高くし、ステレオ効果が発揮される受聴領域の範囲を明確にすることができる。

【0078】
図12は、指向性アレースピーカ1の2つの焦点の位置を示す図である。スピーカ2aの中心点B、スピーカ2gの中心点A、およびX軸上の点Cは正三角形の頂点である。距離ABは、スピーカ間隔DにNを乗算した値である。指向性アレースピーカ1では、点Cを正三角形の頂点としているが、正三角形に限定されるものではなく、辺ABを底辺とする三角形の頂点であればよい。

【0079】
指向性アレースピーカ1は、左デジタル音響信号の仮想音源を左焦点PLの位置に形成し、右デジタル音響信号の仮想音源を右焦点PRの位置に形成する。左焦点PLは、辺AC上に形成され、右焦点PRは、辺BC上に形成される。左焦点PLは、原点Oから距離rで角度φの位置であり、右焦点PRは、原点Oから距離rで角度-φの位置である。左焦点PLと右焦点PRとの距離LRは、20cmである。指向性アレースピーカ1の2次元デジタルフィルタ4Lの設計値を表3に示す。2次元デジタルフィルタ4Rの設計値は、X軸に対して対称である。

【0080】
【表3】
JP0005540374B2_000016t.gif

【0081】
図13は、第1の比較例である指向性アレースピーカ91の2つの焦点の位置を示す図である。指向性アレースピーカ91の左焦点PLおよび右焦点PRは、スピーカ2dからの距離が、指向性アレースピーカ1よりも近い位置に形成される。左焦点PLおよび右焦点PRとの距離LRは、80cmである。指向性アレースピーカ91の2次元デジタルフィルタ4Lの設計値を表4に示す。2次元デジタルフィルタ4Rの設計値は、X軸に対して対称である。

【0082】
【表4】
JP0005540374B2_000017t.gif

【0083】
図14は、第2の比較例である指向性アレースピーカ92の2つの焦点の位置を示
す図である。指向性アレースピーカ92の左焦点PLおよび右焦点PRは、スピーカ2dからの距離が、指向性アレースピーカ91よりもさらに近い位置に形成される。左焦点PLおよび右焦点PRとの距離LRは、140cmである。指向性アレースピーカ92の2次元デジタルフィルタ4Lの設計値を表5に示す。2次元デジタルフィルタ4Rの設計値は、X軸に対して対称である。

【0084】
【表5】
JP0005540374B2_000018t.gif

【0085】
図15は、指向性アレースピーカ1の2次元デジタルフィルタ4Lによる受聴位置での指向特性およびインパルス列応答を示す図である。図16は、指向性アレースピーカ91の2次元デジタルフィルタ4Lによる受聴位置での指向特性およびインパルス列応答を示す図である。図17は、指向性アレースピーカ92の2次元デジタルフィルタ4Lによる受聴位置での指向特性およびインパルス列応答を示す図である。図15(a),図16(a),図17(a)は、受聴位置での指向特性であり、図15(b),図16(b),図17(b)は、インパルス列応答の空間分布である。受聴位置は、角度φ=0°の方向で、スピーカアレー2からの距離が2.00mの位置である。

【0086】
指向性アレースピーカ1,91,92の焦点先鋭度Sおよびステレオ角度を表6に示す。ここに、Hpは、図7(a)に示したインパルス列応答におけるピーク値であり、Wpは、図7(b)に示したインパルス列応答の空間分布の断面特性における幅である。

【0087】
【表6】
JP0005540374B2_000019t.gif

【0088】
焦点の位置は、距離LRが140cmの場合の方が、距離LRが20cmの場合よりも、スピーカアレー2に近い。焦点先鋭度Sは、焦点の位置がスピーカアレー2に近いほど高く、受聴者からのステレオ角度も大きくなる。しかしながら、焦点の位置がスピーカアレー2に近いほど焦点PL,PRのビーム中心から離れた位置で受聴することになるため、受聴位置での音圧は小さくなる。

【0089】
図15(a),図16(a),図17(a)の受聴位置での指向特性を比較すると、受聴位置での音圧と、ビーム中心φでの音圧との差は、距離LR=20cmでは、図15(a)から-2dBである。これに対し、距離LR=140cmでは、図17(a)から-6dBと大きい値である。距離LR=80cmでは、図16(a)から-6dBと大きく、また受聴位置での音圧も距離LR=20cmより-6dBと大きい値である。

【0090】
実際の受聴実験では、距離LR=140cmでは、焦点形成の効果によってステレオの広がりを感じることができたが、左右の焦点のビーム中心が外側に向き過ぎている印象がある。距離LR=80cmでは、距離LR=140cmの場合と比較して、受聴位置での音圧が高くなっていることを確認することができた。距離LR=20cmでは、距離LR=80cmの場合よりもさらに受聴位置での音圧が高く、臨場感のある音を確認することができた。すなわち、距離LR=20cmとした指向性アレースピーカ1は、指向性アレースピーカ91,92よりも、ステレオ効果が高いことを確認することができた。

【0091】
図18は、本発明の他の実施形態である指向性アレースピーカ101の構成を示すブロック図である。デジタル音響信号処理装置である指向性アレースピーカ101は、スピーカアレー2、2次元デジタルフィルタ4a、A/D7L1,7R1,7L2,7R2、D/A8a~8g、およびAmp9a~9gを含んで構成される。指向性アレースピーカ101の構成要素のうち図1に示した指向性アレースピーカ1の構成要素と同じものについては、同じ参照符を付して説明を省略する。

【0092】
指向性アレースピーカ101は、2種類のステレオ音源に対応する2種類の仮想ステレオ音源を形成することができるマルチステレオシステムであり、第1のステレオ音源のうちの第1の左音響信号が入力端子13に入力され、第1のステレオ音源のうちの第1の右音響信号が入力端子14に入力され、第2のステレオ音源のうちの第2の左音響信号が入力端子15に入力され、第2のステレオ音源のうちの第2の右音響信号が入力端子16に入力される。ステレオ音源は、たとえばラジオやテレビジョンなどの放送を受信する受信装置で有ってもよいし、ビデオ機器などの再生装置であってもよいし、マイクロフォンなどの入力装置であってもよいし、これらの組み合わせであってもよい。

【0093】
A/D7L1,7R1,7L2,7R2は、アナログデジタル変換器であり、A/D7L1は、入力端子13から入力されるアナログ信号の第1左音響信号を、A/D7R1は、入力端子14から入力されるアナログ信号の第1右音響信号を、A/D7L2は、入力端子15から入力されるアナログ信号の第2左音響信号を、A/D7R2は、入力端子16から入力されるアナログ信号の第2右音響信号を、それぞれデジタル音響信号に変換して、2次元デジタルフィルタ4aに送る。

【0094】
2次元デジタルフィルタ4aは、図1に示した2次元デジタルフィルタ4と同様に、DSPおよび記憶装置を含んで構成される。DSPは、記憶装置に記憶されるフィルタ係数を用いて、2次元FIRフィルタとしての演算を行って、4つの2次元デジタルフィルタ4L1,4R1,4L2,4R2、および加算器Ka~Kgを実現する。2次元デジタルフィルタ4L1,4R1,4L2,4R2は、それぞれ第1~第4の2次元デジタルフィルタである。

【0095】
2次元デジタルフィルタ4L1,4R1、および2次元デジタルフィルタ4L2,4R2は、いずれも図1に示した2次元デジタルフィルタ4に含まれる2次元デジタルフィルタ4L,4Rに相当する。第1の組である2次元デジタルフィルタ4L1,4R1は、第1のステレオ音源のための2次元デジタルフィルタであり、第2の組である2次元デジタルフィルタ4L2,4R2は、第2のステレオ音源のための2次元デジタルフィルタである。

【0096】
加算器Ka~Kgは、図1に示した2次元デジタルフィルタ4に含まれる加算器Ka~Kgに相当する。図に示した加算器Ka~Kgは、2次元デジタルフィルタ4L,4Rから各スピーカ2a~2gに送られる2つのデジタル音響信号をそれぞれ加算して、D/A8a~8gに送っているが、2次元デジタルフィルタ4aの各加算器Ka~Kgは、2次元デジタルフィルタ4L1,4R1,4L2,4R2から各スピーカ2a~2gに送られる4つのデジタル音響信号をそれぞれ加算して、D/A8a~8gに送る。

【0097】
図19は、指向性アレースピーカ101の第1の設計例の4つの焦点の位置とステレオ領域との位置関係を示す図である。スピーカ2aの中心点の位置をB、スピーカ2gの中心点の位置をA、およびスピーカ2dの中心点の位置をO、第1のステレオ音源の左焦点の位置をPL1、第1のステレオ音源の右焦点の位置をPR1、第2のステレオ音源の左焦点の位置をPL2、第2のステレオ音源の右焦点の位置をPR2とする。そして、中心点Aおよび左焦点PL1を結ぶ直線と、中心点Bおよび右焦点PR1を結ぶ直線との交点をC1とし、中心点Aおよび左焦点PL2を結ぶ直線と、中心点Bおよび右焦点PR2を結ぶ直線との交点をC2とする。左焦点PL1は、原点Oから距離r、X軸から角度φL0の位置であり、右焦点PR1は、原点Oから距離r、X軸から角度φR0の位置である。左焦点PL2および右焦点PR2は、X軸に対してそれぞれ右焦点PR1および左焦点PL1と対称の位置にある。

【0098】
ステレオ領域ST1は、第1のステレオ音源の左焦点PL1からの音響ビームと第1のステレオ音源の右焦点PR1からの音響ビームとが重なる領域のうち、第2のステレオ音源の左焦点PL2からの音響ビームが重ならない領域であり、ステレオ領域ST2は、第2のステレオ音源の左焦点PL2からの音響ビームと第2のステレオ音源の右焦点PR2からの音響ビームとが重なる領域のうち、第1のステレオ音源の右焦点PR1からの音響ビームが重ならない領域である。

【0099】
すなわち、ステレオ領域ST1は、左焦点PL1からの音響ビームのビーム端角度φS-からφS+までの領域と、右焦点PR1からの音響ビームのビーム端角度φS-からφS+までの領域とが重なる領域のうち、左焦点PL2からの音響ビームのビーム端角度φS-からφS+までの領域が重ならない領域である。ステレオ領域ST2は、左焦点PL2からの音響ビームのビーム端角度φS-からφS+までの領域と、右焦点PR2からの音響ビームのビーム端角度φS-からφS+までの領域とが重なる領域のうち、右焦点PR1からの音響ビームのビーム端角度φS-からφS+までの領域が重ならない領域である。ステレオ領域ST1,ST2は、受聴領域である。

【0100】
第1の設計例は、内側の焦点、つまり第1のステレオ音源の右焦点PR1および第2のステレオ音源の左焦点PL2のビーム端角度がお互いに相手のステレオ領域に大きく偏っているので、ステレオ領域ST1,ST2が狭い。

【0101】
図20は、指向性アレースピーカ101の第2の設計例の4つの焦点の位置とステレオ領域との位置関係を示す図である。第2の設計例は、第1の設計例よりも各焦点の位置をX軸より外側に大きく傾けた構成である。すなわち、第2の設計例の角度φL0および角度φR0を第1の設計例よりも大きくした構成である。

【0102】
第2の設計例は、ステレオ領域ST1,ST2が第1の設計例よりも外側に大きく広がっている。

【0103】
図21は、指向性アレースピーカ101の第3の設計例の4つの焦点の位置とステレオ領域との位置関係を示す図である。第3の設計例は、第1の設計例よりも、各ステレオ音源の左右の焦点の間隔を狭くした構成である。すなわち、第3の設計例の角度φL0は第1の設計例よりも小さくし、第3の設計例の角度φR0は第1の設計例よりも大きくした構成である。

【0104】
第3の設計例は、各ステレオ音源の左右の焦点の間隔を狭くした分だけ、音響ビームをビーム中心よりに配置することができ、ステレオ領域ST1,ST2が奥深くなって広がっている。第3の設計例は、各ステレオ音源の左右の焦点の間隔が狭いので、第1および第2の設計例に比べて受聴域での音圧が高く、したがって、ステレオ効果が高い。第1~第3の設計例の特徴を表7に示す。

【0105】
【表7】
JP0005540374B2_000020t.gif

【0106】
第1の設計例は、受聴域での音圧は高いが受聴域が狭いので少人数の場合に適している。第2の設計例は、受聴域での音圧は高く、受聴域が広いので、多人数の場合に適している。第3の設計例は、受聴域での音圧がより高く、かつ受聴域も広いので、多人数の場合に適している。したがって、指向性アレースピーカ101は、フィルタ係数の設計値を変更して、第1,第2のステレオ音源の左右の焦点の位置を変えることによって、受聴域の広さと受聴域で受聴する人数に応じた構成とすることができる。

【0107】
第3の設計例の2次元デジタルフィルタ4L1,4R1の設計値をそれぞれ表8,9に示す。第3の設計例の2次元デジタルフィルタ4L2の設計値は、2次元デジタルフィルタ4R1の設計値を、X軸に対して焦点の位置が対象となるように変換した値であり、第3の設計例の2次元デジタルフィルタ4R2の設計値は、2次元デジタルフィルタ4L1の設計値を、X軸に対して焦点の位置が対象となるように変換した値である。

【0108】
【表8】
JP0005540374B2_000021t.gif

【0109】
【表9】
JP0005540374B2_000022t.gif

【0110】
第3の設計例では、2次元デジタルフィルタ4L1の焦点と2次元デジタルフィルタ4R1の焦点の間の距離は、予め定める距離であり、25cmである。2次元デジタルフィルタ4L1のビーム中心φは、予め定める第1の角度であり、29.1°である。2次元デジタルフィルタ4R1のビーム中心φは、予め定める第2の角度であり、22.3°である。第1,第2の設計例は、第3の設計例の設計値を変更することによって設計することができる。第3の設計例の設計値は、第1の設定値であり、第1,第2の設計例の設計値は、第2,第3の設定値である。

【0111】
図22は、第3の設計例の2次元デジタルフィルタ4L1の指向特性およびインパルス列応答の空間分布を示す図である。図23は、第3の設計例の2次元デジタルフィルタ4R1の指向特性およびインパルス列応答の空間分布を示す図である。図22(a),図23(a)は、各2次元デジタルフィルタの受聴位置での指向特性であり、図22(b),図23(b)は、各2次元デジタルフィルタの受聴位置でのインパルス列応答の空間分布である。

【0112】
2次元デジタルフィルタ4aを設計する際、受聴位置が、各焦点のビーム中心上ではなく、左右の焦点間の中心を直交して通る直線上であるため、各メインローブのピーク値よりもやや小さい位置で受聴することになることに留意する必要がある。

【0113】
第1~3の設計例などの複数の設計例のそれぞれの係数を記憶装置に記憶し、たとえば図示しない操作部によっていずれか1つの設計例を選択可能にしておくことによって、利用者が受聴する人数に応じて、操作部を操作して最適な設計例を選択可能にしてもよい。

【0114】
また、2次元デジタルフィルタ4,4aの音響信号のスペクトルを2次元周波数平面上で表したとき、各2次元デジタルフィルタ4L,4R,4L1,4R1,4L2,4R2のビーム中心の両側に形成されるビームの過渡域幅、つまりビーム過渡域幅を、ビーム中心に対して非対称に設定してもよい。非対称に設定された2次元デジタルフィルタは、音響ビームの両側のうち、片側の音圧の減衰を緩慢にし、他の片側の音圧の減衰を急峻にすることができる。

【0115】
また、上述した実施形態では、2次元デジタルフィルタ4,4aを1つのDSPによって構成したが,2次元デジタルフィルタ4L,4R,4L1,4R1,4L2,4R2をそれぞれ個別のDSPを用いて構成してもよい。

【0116】
このように、音源から入力したデジタル音響信号の指向特性を制御する2次元デジタルフィルタ4,4aは、時間およびスピーカの位置について2次元フーリエ変換した音響信号のスペクトルを、時間周波数軸と空間周波数軸とから成る2次元周波数平面上で表したとき、ビーム過渡域幅が角度10°以下に設定されるように構成される。したがって、デジタル音響信号処理装置、たとえば指向性アレースピーカ1の音響ビームの焦点先鋭度Sを高くすることができる。

【0117】
さらに、2次元デジタルフィルタ4は、前記一直線上、つまりY軸上で複数のスピーカ2a~2gの中心Oを通り、かつスピーカ2dの出力面に直交する第2の直線、つまりX軸に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点である左焦点PLを形成する2次元デジタルフィルタ4Lおよび音響ビームの第2の焦点である右焦点PRを形成する2次元デジタルフィルタ4Rを含み、前記音源であるステレオ音源からの左デジタル音響信号が2次元デジタルフィルタ4Lに入力され、ステレオ音源からの右デジタル音響信号が2次元デジタルフィルタ4Rに入力される。すなわち、ステレオ音源の左右の音響ビームの焦点先鋭度Sをそれぞれ高くすることができるので、他の音響ビームとの境界を明確にすることができ、左右音源を際立たせ、ステレオ効果を高めることができる。

【0118】
さらに、左焦点PLと右焦点PRとの距離LRは、複数のスピーカ2a~2gのうち第2の直線から最も遠い位置にある両端のスピーカ2a,2gの前記一直線上のそれぞれの中心点A,Bを結ぶ線分の長さの半分未満の長さに設定されるので、受聴位置で、音圧が高く、かつステレオ効果が高く、そして臨場感のある音を形成することができる。

【0119】
さらに、2次元デジタルフィルタ4aは、前記一直線上で複数のスピーカ2a~2gの中心Oを通り、かつスピーカ2dの出力面に直交する第2の直線つまりX軸に対して、前記一直線および第2の直線を含む平面上で対称な位置に、音響ビームの第1の焦点である左焦点PL1を形成する2次元デジタルフィルタ4L1および音響ビームの第2の焦点である右焦点PR2を形成する2次元デジタルフィルタ4R2、ならびに前記第2の直線に対して前記平面上で、複数のスピーカ2a~2gの前記直線方向の中心からの距離が左焦点PL1,右焦点PR2と同じで、かつ左焦点PL1,右焦点PR2の位置よりも前記第2の直線に近い対称な位置に、第2の直線に対して左焦点PL1と同じ側に、音響ビームの第3の焦点である右焦点PR1を形成する2次元デジタルフィルタ4R1、および第2の直線に対して右焦点PR2と同じ側に、音響ビームの第4の焦点である左焦点PL2を形成する2次元デジタルフィルタ4L2を含み、前記音源は、第1のステレオ音源および第2のステレオ音源を含む。そして、第1のステレオ音源からの第1の左デジタル音響信号が2次元デジタルフィルタ4L1に入力され、第1のステレオ音源からの第1の右デジタル音響信号が2次元デジタルフィルタ4R1に入力され、第2のステレオ音源からの第2の左デジタル音響信号が2次元デジタルフィルタ4L1に入力され、第2のステレオ音源からの第2の右デジタル音響信号が2次元デジタルフィルタ4R2に入力される。すなわち、2つのステレオ音源のそれぞれの左右の音響ビームの焦点先鋭度Sを個々に高くすることができるので、他の音響ビームとの境界を明確にすることができ、それぞれのステレオ音源を際立たせ、それぞれステレオ効果を高めることができる。

【0120】
さらに、2次元デジタルフィルタ4L1,4R1,4L2,4R2は、左焦点PL1と右焦点PR1との距離が予め定める距離であり、左焦点PL1の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度であり、かつ右焦点PR1の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度である第1の設定値、つまり第3の設計例の設計値、左焦点PL1と右焦点PR1との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、左焦点PL1の通過域のビーム中心の角度が予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ右焦点PR1の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも大きい角度である第2の設定値、つまり第1の設計例の設計値、または左焦点PL1と右焦点PR1との距離を前記予め定める第1の距離よりも短い距離であり、左焦点PL1の通過域のビーム中心の角度が前記予め定める第1の角度よりも大きい角度であり、かつ右焦点PR1の通過域のビーム中心の角度が予め定める第2の角度よりも小さい角度である第3の設定値、つまり第2の設計例の設計値に設定される。したがって、受聴領域の広さを受聴する人数に応じた2次元デジタルフィルタとすることができる。

【0121】
さらに、2次元デジタルフィルタの音響信号のスペクトルを2次元周波数平面上で表したとき、ビーム中心の両側に形成されるビームの過渡域幅は、ビーム中心に対して非対称に設定されるので、音響ビームの両側のうち、片側の音圧の減衰を緩慢にし、他の片側の音圧の減衰を急峻にすることができる。
【符号の説明】
【0122】
1,91,92,101 指向性アレースピーカ
2 スピーカアレー
2a~2g スピーカ
3a~3g 1次元デジタルフィルタ
4,4a,4L,4R 2次元デジタルフィルタ
5 非物理領域
6 物理領域
7L,7R,7L1,7R1,7L2,7R2 A/D
8a~8g D/A
9a~9g Amp
11~16,31 入力端子
32 出力端子
C1~CN 遅延器
J0~JN 乗算器
K,Ka~Kg 加算器
PL,PR,PL1,PR1,PL2,PR2 焦点
図面
【図1】
0
【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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