TOP > 国内特許検索 > 電気伝導体及びその形成方法 > 明細書

明細書 :電気伝導体及びその形成方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5582498号 (P5582498)
公開番号 特開2011-210454 (P2011-210454A)
登録日 平成26年7月25日(2014.7.25)
発行日 平成26年9月3日(2014.9.3)
公開日 平成23年10月20日(2011.10.20)
発明の名称または考案の名称 電気伝導体及びその形成方法
国際特許分類 H01B   1/22        (2006.01)
H01B   1/00        (2006.01)
H01B  13/00        (2006.01)
H05K   1/09        (2006.01)
FI H01B 1/22 Z
H01B 1/00 E
H01B 13/00 Z
H05K 1/09 A
請求項の数または発明の数 8
全頁数 9
出願番号 特願2010-075515 (P2010-075515)
出願日 平成22年3月29日(2010.3.29)
審査請求日 平成25年2月26日(2013.2.26)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
発明者または考案者 【氏名】石渡 勉
個別代理人の代理人 【識別番号】100088306、【弁理士】、【氏名又は名称】小宮 良雄
【識別番号】100126343、【弁理士】、【氏名又は名称】大西 浩之
審査官 【審査官】赤樫 祐樹
参考文献・文献 国際公開第2010/032841(WO,A1)
特開2009-129882(JP,A)
特開2009-197325(JP,A)
調査した分野 H01B 1/00- 1/24
H01B 13/00-13/32
特許請求の範囲 【請求項1】
金属ナノワイヤ同士が接合されて形成された電気伝導体であって、前記金属ナノワイヤ同士は、その表面の少なくとも一部を覆うカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内の金属塩又は前記有機化合物と前記金属塩との金属錯体が、前記有機層を消失する加熱処理により還元され且つ一部が融解された金属によって金属接合されていることを特徴とする電気伝導体。
【請求項2】
前記金属塩が、塩化金酸、硝酸銀、塩化銅、塩化白金酸から選ばれる金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の電気伝導体。
【請求項3】
前記カルボキシル基を有する有機化合物が、高分子カルボン酸又は親水性基若しくは疎水性基を有する少なくとも炭素数5の低分子カルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の電気伝導体。
【請求項4】
金属ナノワイヤと、前記金属ナノワイヤの表面に有機層を形成する有機層形成能を有するカルボン酸化合物及び金属塩を溶解した溶液とを混合し、前記金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部を被覆するカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内に前記金属塩又は前記カルボン酸化合物と前記金属塩との金属錯体を分散して配合した後、前記溶液から分離した前記金属ナノワイヤに加熱処理を施して、前記有機層を消失すると共に、前記金属塩又は前記金属錯体を還元し且つ一部を融解した属で、前記金属ナノワイヤ同士を金属接合することを特徴とする電気伝導体の形成方法。
【請求項5】
前記金属塩として、塩化金酸、硝酸銀、塩化銅、塩化白金酸から選ばれる金属塩を用いることを特徴とする請求項4に記載の電気伝導体の形成方法。
【請求項6】
前記有機層形成能を有するカルボン酸化合物として、高分子カルボン酸又は親水性基若しくは疎水性基を有する少なくとも炭素数5の低分子カルボン酸を用いることを特徴とする請求項4に記載の電気伝導体の形成方法。
【請求項7】
前記有機層を高分子膜とすることを特徴とする請求項4に記載の電気伝導体の形成方法。
【請求項8】
前記金属ナノワイヤとして、金属塩、得られる金属ナノワイヤの形態を調整する形態調整剤及び塩化物を溶媒中に溶解した後、酸素ガスを吹き込みつつ加熱して得られた金属ナノワイヤを用いることを特徴とする請求項4に記載の電気伝導体の形成方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器内の電気部品や電子部品を導電させつつ接合するのに用いられる電気伝導体及びその形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレクトロニクス産業の発達に伴い、パーソナルコンピューター、携帯情報端末、テレビなどの様々な電子機器が生産されており、それらの電子機器には電子回路が内蔵されている。
【0003】
電子回路は、電子素子などの電子部品を電気伝導体で接着して形成されているものであり、例えば、プリント配線板やモジュール基板などの電子回路基板である。
【0004】
電気伝導体として、電気部品または電子部品を強固に接着させることができ、かつ優れた導電性を有することからPb-Sn系はんだが汎用されている。しかし、電子回路基板などを内蔵している電子機器を屋外に放置、または廃棄処分した際に、酸性雨により電子部品のはんだ付け材料から鉛が溶出し、地下水を汚染するなどの問題が生じている。
【0005】
このため、現在、鉛を含有しない、SnAgCu系、SnZnBi系、SnCn系などの鉛フリーはんだが開発されつつあり、鉛含有はんだから鉛フリーはんだへの切り替えが進んでいる。鉛フリーはんだは、鉛による環境汚染を防止することができるが、鉛含有のはんだ付けに比べて高い融点であるため、素子の破壊や劣化などの問題を有している。更に、電気伝導体として、はんだ以外に、固着させる樹脂と導電性金属粒子とを混合させた導電性接着剤が使用されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、太陽電池等には、透明電極が用いられている。かかる透明電極用の透明電極として、例えば特許文献2に、金属ナノワイヤ、粒状金属化合物及び還元剤を含有する塗布膜を加熱して、少なくとも一部の金属ナノワイヤが金属化合物から生成した金属微粒子を介して接合されて成る電気伝導体が形成されている透明電極が開示されている。
【先行技術文献】
【0007】

【特許文献1】特開2009-7453号公報
【特許文献2】特開2009-129882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した特許文献1で提案されている導電性接着剤は、一般的に、はんだ付けに比べて接合温度が低いため、熱による電気部品又は電子部品への影響を抑えることができる利点を有するが、その接合力が弱いことや導電性が低いことなどの問題も有する。また、特許文献2で提案されている透明電極の製造方法では、粒状金属化合物を確実に金属ナノワイヤ同士間に位置させることは困難であって、塗布膜内に確実に堅固な電気伝導体を形成することは困難である。更に、還元剤が塗布膜内に残留し、得られた透明電極の特性に影響を与えるおそれもある。
【0009】
そこで、本発明は、耐熱性の低い電気部品又は電子部品に対する熱影響が少なく、優れた導電性を有し、堅固な接合力を有する電気伝導体及びその形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するためになされた、特許請求の範囲の請求項1に記載された電気伝導体は、金属ナノワイヤ同士が接合されて形成された電気伝導体であって、前記金属ナノワイヤ同士は、その表面の少なくとも一部を覆うカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内の金属塩又は前記有機化合物と前記金属塩との金属錯体が、前記有機層を消失する加熱処理により還元され且つ一部が融解された金属によって金属接合されていることを特徴とする。
【0011】
請求項2に記載の電気伝導体は、請求項1に記載されたものであって、前記金属塩が、塩化金酸、硝酸銀、塩化銅、塩化白金酸から選ばれる金属塩であることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の電気伝導体は、請求項1に記載されたものであって、前記カルボキシル基を有する有機化合物が、高分子カルボン酸又は親水性基若しくは疎水性基を有する少なくとも炭素数5の低分子カルボン酸であることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の電気伝導体の形成方法は、金属ナノワイヤと、前記金属ナノワイヤの表面に有機層を形成する有機層形成能を有するカルボン酸化合物及び金属塩を溶解した溶液とを混合し、前記金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部を被覆するカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内に前記金属塩又は前記カルボン酸化合物と前記金属塩との金属錯体を分散して配合した後、前記溶液から分離した前記金属ナノワイヤに加熱処理を施して、前記有機層を消失すると共に、前記金属塩又は前記金属錯体を還元し且つ一部を融解した属で、前記金属ナノワイヤ同士を金属接合することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の電気伝導体の形成方法は、請求項4に記載されたものであって、前記金属塩は、塩化金酸、硝酸銀、塩化銅、塩化白金酸から選ばれる金属塩を用いることを特徴とする。
【0015】
請求項6に記載の電気伝導体の形成方法は、請求項4に記載されたものであって、有機層形成能を有するカルボン酸化合物として、高分子カルボン酸又は親水性基若しくは疎水性基を有する少なくとも炭素数5の低分子カルボン酸を用いることを特徴とする。
【0016】
請求項7に記載の電気伝導体の形成方法は、請求項4に記載されたものであって、前記有機層を、高分子膜とすることを特徴とする。

【0017】
請求項8に記載の電気伝導体の形成方法は、請求項4に記載されたものであって、前記金属ナノワイヤとしては、金属塩、得られる金属ナノワイヤの形態を調整する形態調整剤及び塩化物を溶媒中に溶解した後、酸素ガスを吹き込みつつ加熱して得られた金属ナノワイヤを用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る電気伝導体は、金属ナノワイヤ同士を、その表面の少なくとも一部を覆うカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内の金属塩又は前記有機化合物と金属塩との金属錯体を還元して形成された金属によって金属接合している。このため、金属ナノワイヤ同士は、相互に電気的な導通を取りつつ強固に接続されており、電気的に一つの連続体から成る強固な電気伝導体を簡易に形成できる。
【0019】
更に、かかる電気伝導体は、金属ナノワイヤと、前記金属ナノワイヤの表面に有機層を形成する有機層形成能を有するカルボン酸化合物及び金属塩を溶解した溶液とを加え、前記金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部を被覆するカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内に金属塩又は前記カルボン酸化合物と金属塩との金属錯体を分散して配合した後、前記金属塩又は金属錯体を還元して金属化し、前記金属ナノワイヤ同士を金属接合することによって形成している。このため、金属塩と金属ナノワイヤの表面に有機層を形成する有機層形成能を有するカルボン酸化合物とを溶媒中で溶解し、金属ナノワイヤを加えた溶液を、電気部品又は電子部品の金属箇所同士の接合箇所に滴下した後、金属塩又は金属錯体の還元により、金属箇所同士を電気的に接続できる。或いは、電気部品又は電子部品の金属箇所同士の接合箇所に載置した金属ナノワイヤに、金属塩と金属ナノワイヤの表面に有機層を形成する有機層形成能を有するカルボン酸化合物とを溶媒中で溶解した溶液を滴下した後、金属塩又は金属錯体の還元により、金属箇所同士を電気的に接続できる。しかも、かかる金属塩又は金属錯体の還元は、比較的低温での処理が可能であり、耐熱性の低い電気部品を使用した場合でも熱影響を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明で採用される銀ナノワイヤの走査型電子顕微鏡の写真である。
【図2】従来の製造方法で得られた銀ナノワイヤの走査型電子顕微鏡の写真である。
【図3】硝酸銀、ポリアクリル酸及びエチレングリコールを攪拌して溶解した溶液の透過型顕微鏡写真である。
【図4】硝酸銀、ポリアクリル酸及びエチレングリコールを攪拌して溶解した溶液を所定温度に昇温した後、銀ナノワイヤを添加して所定時間反応して得られた銀ナノワイヤの走査型電子顕微鏡の写真である。
【図5】図4に示す銀ナノワイヤの透過型顕微鏡の写真である。
【図6】硝酸銀とラウリン酸とのエタノール溶液を、銀ナノワイヤに添加して得られた銀ナノワイヤの走査型電子顕微鏡の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。

【0022】
本発明に係る電気伝導体は、金属ナノワイヤ同士が接合されて形成された電気伝導体であって、この金属ナノワイヤ同士は、その表面の少なくとも一部を覆うカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内の金属塩又は前記有機化合物と金属塩との金属錯体を還元して形成された金属によって金属接合されているものである。

【0023】
ここで用いる金属ナノワイヤとしては、金ナノワイヤ、銀ナノワイヤ、白金ナノワイヤ、銅ナノワイヤを好適に用いることができる。この金属ナノワイヤの直径は200nm以下、特に100nm以下であることが好ましい。金属ナノワイヤの製造方法としては、従来から公知の製造方法を採用できるが、金属塩、得られる金属ナノワイヤの形態を調整する形態調整剤及び塩化物を溶媒中に溶解した後、酸素ガスを吹き込みつつ加熱する金属ナノワイヤの製造方法を好適に採用できる。ここで、金属塩としては、形成する金属ナノワイヤと同種の金属の塩化物であることが好ましく、硝酸塩、硫酸塩のような無機塩や酢酸塩のような有機塩を溶媒に応じて用いることができる。また、塩化物として、食塩(NaCl)や塩化カリウム(KCl)を用い、且つ得られる金属ナノワイヤの形態を調整する形態調整剤としては、ポリビニルピロリドンやポリビニルアルコールを用いることができる。溶媒としては、エチレングリコールやトリエチレングリコール等の高沸点アルコールを好適に用いることができる。更に、加熱温度としては、溶媒の沸点近傍の温度を採用できる。この様に、溶媒の沸点近傍で加熱しつつ酸素を吹き込むことによって、均斉な金属ナノワイヤを得ることができる。特に、この製造方法を銀ナノワイヤの製造に適用することによって、均斉な銀ナノワイヤを得ることができる。

【0024】
かかる金属ナノワイヤは、その表面の少なくとも一部が前述したポリビニルピロリドンやポリビニルアルコール等の形態調整剤によって覆われている。この様な金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部は、カルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層によって覆われている。かかる有機層としては、高分子膜であってもよく、脂肪酸のような界面活性剤の集合体によって形成されているものであってもよい。この有機層は、そのカルボキシル基が金属ナノワイヤの表面或いは形態調整剤に作用し、金属ナノワイヤの表面を被覆しているものと推察される。かかるカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層としては、例えばポリアクリル酸等の高分子カルボン酸を用いた場合には、高分子膜から成る有機層を形成でき、脂肪酸、例えばラウリン酸を用いた場合には、界面活性剤の集合体から成る有機層が形成される。

【0025】
更に、金属ナノワイヤ同士は、この様に金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部を覆う有機層内に存在する金属塩又はカルボキシル基を有する有機化合物と金属塩との金属錯体を還元して形成した金属によって金属接合されている。このため、金属ナノワイヤ同士は電気的にも接続されている。この金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、塩化銅、塩化白金酸を用いることができる。この様に、本発明に係る電気伝導体では、金属ナノワイヤ同士が金属接合されているため、堅固な電気伝導体を形成できる。

【0026】
かかる電気伝導体は、金属ナノワイヤと、この金属ナノワイヤの表面に有機層を形成する有機層形成能を有するカルボン酸化合物及び金属塩を溶解した溶液とを加え、金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部を覆うカルボキシル基を有する有機化合物から成る有機層内に、金属塩又はカルボン酸化合物と金属塩との金属錯体を分散して配合した後、この金属塩又は金属錯体を還元して金属化することによって形成できる。ここで、有機層形成能を有するカルボン酸化合物としては、高分子カルボン酸又は親水性基若しくは疎水性基を有する少なくとも炭素数5の低分子カルボン酸を好適に用いることができる。この高分子カルボン酸としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸を挙げることができる。特に、高分子カルボン酸として、ポリアクリル酸を好適に用いることができる、その平均分子量は5,000~100,000であることが好ましい。また、親水性基若しくは疎水性基を有する少なくとも炭素数5の低分子カルボン酸としては、少なくとも炭素数5の脂肪酸、特にラウリン酸を好適に用いることができる。

【0027】
更に、溶媒としては、エチレングリコールやトリエチレングリコール等の高沸点アルコールの他にエタノールを用いることができる。但し、反応温度が高い場合には、高沸点アルコールが好ましい。特に、エチレングリコールが好ましい。かかる溶媒に金属塩と金属ナノワイヤの表面に有機層を形成する有機層形成能を有するカルボン酸化合物(以下、有機層形成能を有するカルボン酸化合物と称することがある)とを添加し攪拌して溶解する。この際に、有機層形成能を有するカルボン酸化合物の一部と金属塩とが反応して、有機層で覆われた金属粒子が少量析出する。この金属粒子の析出は、カルボン酸化合物のカルボキシル基が金属塩に作用したものと考えられる。次いで、必要に応じて金属塩とカルボン酸化合物とが溶解された溶液を所定温度まで昇温する。更に、この溶液に金属ナノワイヤを添加して攪拌しつつ所定時間反応を続行する。この金属ナノワイヤの添加は、金属ナノワイヤを分散した水溶液を添加することが簡単である。この反応時間は、0.5~30分間程度である。反応終了後、必要に応じて溶液を室温まで冷却してから金属ナノワイヤを分離する。分離された金属ナノワイヤは、その表面の少なくとも一部が有機層で覆われており、且つ有機層内には金属塩や金属錯体が分散され、且つ少量の金属粒子が認められることがある。尚、乾燥状態又は溶液中に分散している金属ナノワイヤに、金属塩と有機層形成能を有するカルボン酸化合物とを溶解した溶液を加えることによっても、金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部を金属塩又は金属錯体を含有する有機層で覆うことができる。

【0028】
更に、金属ナノワイヤの表面の少なくとも一部を被覆する有機層内に存在する金属塩又は金属錯体を還元して金属粒子を析出させるべく、金属塩の還元処理を施す。かかる還元処理によって、金属ナノワイヤ同士が接合された箇所においても、金属粒子が析出し相互溶融して金属ナノワイヤ同士を金属接合できる。かかる還元処理としては、加熱処理が最も簡易で且つ効果的である。この際の加熱処理温度として、析出した金属粒子の一部が融解する加熱処理温度を採用することによって、金属ナノワイヤ同士を更に一層強固に接合できる。かかる加熱処理の際に、有機層が消失しても、金属ナノワイヤ同士は金属接合されているため、その接合状態を維持できる。また、この還元処理に還元剤を用いてもよい。かかる還元剤としては、水素化ホウ素ナトリウム、クエン酸、ヒドラジン等を用いることができるが、還元力の高いものが好ましい。

【0029】
この様に、本発明に係る電気伝導体は、金属ナノワイヤ同士が、相互に電気的な導通を取りつつ強固に接続されており、電気的に一つの連続体とされる強固な電気伝導体であるため、導電性フィルム等に用いることができる。また、金属塩と有機層形成能を有するカルボン酸化合物とを溶媒中で溶解し、金属ナノワイヤを加えた溶液を、電気部品又は電子部品の金属箇所同士の接合箇所に滴下した後、金属塩又は金属錯体の還元により、金属箇所同士を電気的に接続できる。或いは、電気部品又は電子部品の金属箇所同士の接合箇所に載置した金属ナノワイヤに、金属塩と有機層形成能を有するカルボン酸化合物とを溶媒中で溶解した溶液を滴下した後、金属塩又は金属錯体の還元により、金属箇所同士を電気的に接続できる。更に、ボトムアップ法として金属構造を組立てることも可能である。尚、本発明においては、金属ナノワイヤを用いているが、金属ナノ粒子を混合してもよく、金属ナノワイヤに代えて金属ナノ粒子を用いてもよい。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
(1)銀ナノワイヤの作製
硝酸銀0.15g、形態調整剤としての平均分子量が40,000のポリビニルピロリドン0.58g、食塩(NaCl)0.004g及びエチレングリコール(18ml)を、環流器及び攪拌機が付いたフラスコに添加し、攪拌しつつ溶解した後、温度をエチレングリコールの沸点近傍である198℃まで昇温し、酸素を吹き込みつつ20分間反応させた。反応終了後、室温下で放置して冷却した。次いで、フラスコ内に蒸留水を添加して薄めた内容物を遠心分離した後、上澄みを除去する洗浄を行った。かかる洗浄を複数回行った後、得られた銀ナノワイヤを蒸留水中に分散した。得られた銀ナノワイヤを走査型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製、商品名S-5000)の写真(SEM写真)を図1に示す。図1から明らかなように、表面が滑らかな直径が均一の銀ナノワイヤが得られた。得られた銀ナノワイヤは、直径が60~80nmであり、長さが数十μmであった。
【実施例】
【0031】
参考例として、上記銀ナノワイヤの製造方法において、食塩を使用しなかったことと、反応温度を160℃としたこと以外は、実施例1と同様にして銀ナノワイヤを作製した。得られた銀ナノワイヤのSEM写真を図2に示す。図2から明らかな様に、得られた銀ナノワイヤは、直径に150~250nmというバラツキが存在し、且つ直径が400nm以上の三角形や多角形の粒子が多数存在していた。
【実施例】
【0032】
(2)電気伝導体の形成
硝酸銀0.034g及び平均分子量が25,000のポリアクリル酸0.014gをエチレングリコール(10ml)中で攪拌して溶解した。この溶液の透過型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、商品名JEM-2010)の写真(TEM写真)を図3に示す。図3から明らかな様に、高分子膜で被覆された直径20nm程度の微細粒子が多数存在する。かかる微細粒子は、ポリアクリル酸のカルボキシル基が銀粒子表面に作用して生じたものと考えられる。
【実施例】
【0033】
この様に、多数の微細粒子が生成している溶液の温度を130℃に昇温し、(1)で得られた蒸留水中に分散されている銀ナノワイヤを蒸留水ごと滴下し、20分間反応を続行した。反応終了後、室温下で放置して冷却した。次いで、フラスコ内に蒸留水を添加して薄めた内容物を遠心分離した後、上澄みを除去する洗浄を行った。かかる洗浄を複数回行って、得られた銀ナノワイヤのSEM写真を図4に示す。図4から明らかなように、銀ナノワイヤの表面は高分子膜で被覆されており、銀ナノワイヤ同士が高分子膜によって接合されている。更に、得られた銀ナノワイヤ同士の接合部を含めて観察すると、図5(a)(b)に示すTEM写真から明らかな様に、銀ナノワイヤの表面を被覆する高分子膜内に銀粒子が存在し[図5(a)]、且つ銀ナノワイヤ同士の接合部の高分子膜内にも銀粒子が存在する[図5(b)]ことが認められる。
【実施例】
【0034】
その後、図4及び図5に示す銀ナノワイヤを、空気又は窒素の雰囲気下で270℃に加熱する加熱処理を5分間施して、高分子膜内の硝酸銀に対して還元処理を施したところ、高分子皮膜は消失し、銀ナノワイヤの表面に多数の銀粒子が析出し、銀ナノワイヤ同士の接合部では銀接合がされていた。
【実施例】
【0035】
(実施例2)
実施例1の(1)で得られた蒸留水中に分散されている銀ナノワイヤに、硝酸銀と脂肪酸の一種であるラウリン酸との1:1の混合物にエタノールを加えたエタノール溶液を滴下した。その後、遠心分離した後、上澄みを除去する洗浄を行った。かかる洗浄を複数回行って、得られた銀ナノワイヤのSEM写真を図6に示す。図6から明らかなように、銀ナノワイヤの表面を覆う有機層内に銀粒子が凹凸状に析出している。
【実施例】
【0036】
次いで、図6に示す銀ナノワイヤを、空気中で270℃に加熱する加熱処理を5分間施して、有機層内の硝酸銀に対して還元処理を施したところ、銀ナノワイヤの表面を被覆する有機層が消失しており、銀ナノワイヤ同士の接合部では銀接合がされていた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の電気伝導体は、エレクトロニクス分野における電気部品を接合するための接着剤や電気配線材料、或いは導電性フィルム用として用いられる。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5