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明細書 :「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5627912号 (P5627912)
公開番号 特開2011-214170 (P2011-214170A)
登録日 平成26年10月10日(2014.10.10)
発行日 平成26年11月19日(2014.11.19)
公開日 平成23年10月27日(2011.10.27)
発明の名称または考案の名称 「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法
国際特許分類 D02G   3/06        (2006.01)
D02G   3/22        (2006.01)
FI D02G 3/06
D02G 3/22
請求項の数または発明の数 13
全頁数 27
出願番号 特願2010-081120 (P2010-081120)
出願日 平成22年3月31日(2010.3.31)
審査請求日 平成25年3月12日(2013.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【識別番号】513023170
【氏名又は名称】株式会社ナノア
発明者または考案者 【氏名】金 翼水
【氏名】金 ビョンソク
【氏名】金 圭梧
【氏名】渡邊 圭
個別代理人の代理人 【識別番号】100104709、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 誠剛
審査官 【審査官】平井 裕彰
参考文献・文献 特表2007-518891(JP,A)
金 翼水,新領域に迫るナノファイバー エレクトロスピニング法によるナノファイバーの世界(上)-ナノフージョンテクノロジー研究グループを中心に-,加工技術,2009年 5月10日,vol.44, No.5,p.285-292
調査した分野 D02G1/00~ 3/48
D02J1/00~13/00
D01D1/00~13/02
D04H1/00~18/04
JSTPlus(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する第1工程と、
前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する第2工程と、
前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して前記高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程とをこの順序で含む「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法であって、
前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対してレーザー光を照射するレーザー照射処理により行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項2】
請求項に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、レーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程においては、前記帯状不織布として、前記部分結合処理を促進可能な、高分子ナノ繊維を構成する高分子材料のガラス転移温度を低下させる添加塩を加えた帯状不織布を製造することを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項7】
高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する第1工程と、
前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する第2工程と、
前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に紫外線を照射して前記高分子ナノ繊維を構成する高分子の架橋処理を行うことにより前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程は、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクターが形成された「ドラム状コレクター」における前記コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から前記高分子ナノ繊維を前記コレクター上に堆積し、前記高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造する工程であることを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程においては、2種類以上の高分子材料を含有する高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて電界紡糸を行い、2種類以上の高分子材料が内部でブレンドされた高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造することを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項11】
請求項8又は9に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程においては、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて同時に電界紡糸を行い、2種類以上の高分子ナノ繊維を含有する前記帯状不織布を製造することを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項12】
請求項8又は9に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程においては、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて順番に電界紡糸を行い、それぞれ異なる高分子ナノ繊維が積層された構造の前記帯状不織布を製造することを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項13】
請求項1~7のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程においては、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて個別に電界紡糸を行い、2種類以上の前記帯状不織布を製造し、
前記第2工程においては、前記2種類以上の前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記2種類以上の前記帯状不織布から前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法に関する。なお、本発明において、ナノ繊維とは、平均直径が1000nm程度又はそれ以下の繊維のことをいう。
【0002】
「高分子ナノ繊維からなる糸」はナノ繊維が集合して糸状になったものであり、極めて大きい比表面積及び高い強度を有する。このため、「高分子ナノ繊維からなる糸」は、空気清浄用フィルター、各種産業用フィルター、ワイピングクロース、おむつ、人工皮革、人工透析用フィルター、人工血管、人工骨などに用いることができる。
【背景技術】
【0003】
従来、「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法として、以下のような「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。図17は、特許文献1に記載された「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造装置を説明するために示す図である。すなわち、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、図17に示すように、電界紡糸法(エレクトロスピニング法ということもある。)によって製造した高分子ナノ繊維を帯状に切断して、高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する。そして、当該帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて延伸することにより「高分子ナノ繊維からなる糸」(連続フィラメント)を製造するというものである。
【0004】
従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、別途の紡績工程を行わなくても、電界紡糸法によって製造された高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を用いて、高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表2007-518891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、産業界においては、より高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することのできる製造方法が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能な「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意努力を重ねた結果、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととすれば、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維同士に滑りが生じ難くなり、その結果、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となることを見出し、本発明(請求項1)を完成させるに至った。また、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」に紫外線を照射して高分子ナノ繊維を構成する高分子の架橋処理を行うこととすれば、当該架橋処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっているため、上記の場合と同様に、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となることを見出し、本発明(請求項11)を完成させるに至った。
【0009】
[1]すなわち、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する第1工程と、前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する第2工程と、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸を行いながら前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して前記高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸を行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合された状態となる。このため、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維同士に滑りが生じ難くなり、その結果、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。
【0011】
また、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸を行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、「高分子ナノ繊維からなる糸」全体で高分子ナノ繊維が溶融して単繊維からなる糸になったり、高分子ナノ繊維同士が接触している部位のすべてが結合して「高分子ナノ繊維からなる糸」が剛直化してしまったりすることはなく、それゆえ、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0012】
なお、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、「高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する」とは、高分子ナノ繊維同士が接触している箇所についての全部ではなく一部を結合することをいう。例えば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を部分的に加熱することによって、高分子ナノ繊維同士が接触している箇所についての一部を結合することとしてもよいし、「高分子ナノ繊維からなる糸」を比較的弱い条件で加熱することにより、高分子ナノ繊維同士が接触している箇所についての一部を結合することとしてもよい。
【0013】
なお、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱する条件としては、高分子ナノ繊維の温度が少なくともガラス転移温度以上になるような条件を採用することが好ましい。
【0014】
[2]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対してレーザー光を照射するレーザー照射処理により行うことが好ましい。
【0015】
このような方法とすることにより、レーザー照射の照射強度、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0016】
[3]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うことが好ましい。
【0017】
このような方法とすることにより、効率良く「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0018】
[4]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、レーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うことが好ましい。
【0019】
このような方法とすることにより、レーザー照射の照射位置を走査しながら、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0020】
例えば、レーザー光を「高分子ナノ繊維からなる糸」の延伸軸に沿った方向に走査すれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」の延伸軸に沿った方向に部分結合処理を行うことが可能となる。
【0021】
また、2本以上の「高分子ナノ繊維からなる糸」を並列に配置し、すべての「高分子ナノ繊維からなる糸」を交差するようにレーザー光を走査すれば、1つのレーザー光により2本以上の「高分子ナノ繊維からなる糸」に部分結合処理を行うことが可能となる。
【0022】
[5]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うことが好ましい。
【0023】
このような方法とすることにより、前記レーザー照射処理を間欠的に行えば、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0024】
パルス周期又はデューティ比を調整することにより、特に、「高分子ナノ繊維からなる糸」に形成される部分結合の密度を調整することができる。
【0025】
パルス光の周期を短くする、又は、デューティ比を大きくしてレーザー照射を行うことにより、高密度に部分結合を形成することが可能となる。逆に、パルス光の周期を長くする、かつ、デューティ比を小さくしてレーザー照射を行うことにより、低密度に部分結合を形成することが可能となる。
【0026】
[6]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うことが好ましい。
【0027】
このような方法とすることにより、「高分子ナノ繊維からなる糸」のより多くの面にレーザー光を照射できるようになるため、より均一に「高分子ナノ繊維からなる糸」の高強度化することが可能となる。
【0028】
[7]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して熱風を照射する熱風照射処理により行うことが好ましい。
【0029】
このような方法とすることによっても、上記[2]に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、熱風照射の照射強度、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0030】
なお、熱風照射処理を行う手段としては、ホットガンによる加熱処理を好ましく例示することができる。
【0031】
[8]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、リング状ヒーターに前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を通過させることにより行うことが好ましい。
【0032】
このような方法とすることによっても、リング状ヒーターの温度、加熱領域の長さ、「高分子ナノ繊維からなる糸」の通過速度その他の加熱条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0033】
リング状ヒーターとしては、「高分子ナノ繊維からなる糸」が通過する領域を囲む位置にヒーターが配置された電気炉、「高分子ナノ繊維からなる糸」が通過する領域を囲む位置に赤外線源が配置された赤外線炉、半導体製造などに用いられる拡散炉を好ましく例示することができる。
【0034】
「高分子ナノ繊維からなる糸」がリング状ヒーターの加熱領域を通過する時間は、加熱領域の長さを調整することによっても、「高分子ナノ繊維からなる糸」の通過速度を調整することによっても、又はそれら両方を調整することによっても可能である。
【0035】
[9]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して光又は赤外線を集光して照射する急速加熱処理により行うことが好ましい。
【0036】
このような方法とすることによっても、急速加熱処理の条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0037】
[10]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程においては、前記帯状不織布として、前記部分結合処理を促進可能な、高分子ナノ繊維を構成する高分子材料のガラス転移温度を低下させる添加塩を加えた帯状不織布を製造することが好ましい。
【0038】
このような方法とすることにより、高分子ナノ繊維同士が結合し易くなるため、部分結合処理を一層容易に行うことが可能となり、より一層高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。
【0039】
なお、添加塩としては、例えばFeSO・7HOを好ましく例示することができる。
【0040】
[11]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する第1工程と、前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する第2工程と、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸を行いながら前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に紫外線を照射して前記高分子ナノ繊維を構成する高分子の架橋処理を行うことにより前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0041】
このため、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸を行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」に紫外線を照射して高分子ナノ繊維を構成する高分子の架橋処理を行うこととしているため、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっている。このため、当該架橋処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっているため、上記[1]に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。
【0042】
なお、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、上記[1]に記載の部分結合処理及び上記[11]に記載の架橋処理の両方を行っても良い。このような方法とすることにより、部分結合処理又は架橋処理をそれぞれ単独に行う場合と比較して、より一層高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。
【0043】
[12]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0044】
このような方法とすることにより、ナノレベルの直径を持った高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。
【0045】
[13]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程は、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクターが形成された「ドラム状コレクター」における前記コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から前記高分子ナノ繊維を前記コレクター上に堆積し、前記高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造する工程であることが好ましい。
【0046】
このような方法とすることによっても、ナノレベルの直径を持った高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。また、不織布を切断する工程が不要となる。
【0047】
[14]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程においては、2種類以上の高分子材料を含有する高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて電界紡糸を行い、2種類以上の高分子材料が内部でブレンドされた高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造することが好ましい。
【0048】
このような方法とすることにより、2種類以上の高分子材料が内部でブレンドされ、互いの高分子材料の特性を相補し合う、高機能でかつ高強度な「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【0049】
[15]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程においては、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて同時に電界紡糸を行い、2種類以上の高分子ナノ繊維を含有する前記帯状不織布を製造することが好ましい。
【0050】
このような方法とすることにより、2種類以上の高分子ナノ繊維を含有し、互いの高分子ナノ繊維の特性を相補し合う、高機能でかつ高強度な「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【0051】
例えば、加熱による部分結合処理が困難な高分子材料のナノ繊維と、部分結合処理が容易に行える高分子材料のナノ繊維が混合された帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造して、部分結合処理を行うことができる。このようにすることにより、部分結合処理が容易に行える高分子材料を接着剤として部分結合処理が困難なナノ繊維同士を結合し、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0052】
[16]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程においては、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて順番に電界紡糸を行い、それぞれ異なる高分子ナノ繊維が積層された構造の前記帯状不織布を製造することが好ましい。
【0053】
このような方法とすることによっても、2種類以上の高分子ナノ繊維を含有し、互いの高分子ナノ繊維の特性を相補し合う、高機能でかつ高強度な「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【0054】
例えば、加熱による部分結合処理が困難な高分子材料のナノ繊維からなる帯状不織布に部分結合処理が容易に行える高分子材料のナノ繊維からなる帯状不織布を積層した帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造して、部分結合処理を行うことができる。このようにすることにより、部分結合処理が容易に行える高分子を接着剤として部分結合処理が困難なナノ繊維同士を結合し、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0055】
[17]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程においては、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて個別に電界紡糸を行い、2種類以上の前記帯状不織布を製造し、前記第2工程においては、前記2種類以上の前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記2種類以上の前記帯状不織布から前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することが好ましい。
【0056】
このような方法とすることによっても、2種類以上の高分子ナノ繊維を含有し、互いの高分子ナノ繊維の特性を相補し合う、高機能でかつ高強度な「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。
【図4】変形例1における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図5】変形例2における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図6】変形例3における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図7】変形例4における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図8】実施形態2における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図9】実施形態3における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図10】実施形態4における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図11】実施形態5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における第3工程を説明するために示す図である。
【図12】実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における第3工程を説明するために示す図である。
【図13】変形例5における第1工程を説明するために示す図である。
【図14】変形例6における第1工程を説明するために示す図である。
【図15】変形例7における第1工程を説明するために示す図である。
【図16】変形例8における第1工程を説明するために示す図である。
【図17】特許文献1に記載された「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造装置を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。

【0059】
[実施形態1]
図1~図3は、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。このうち、図1は実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における第1工程を説明するために示す図であり、図2は第2工程を説明するために示す図であり、図3は第3工程を説明するために示す図である。図1(a)は電界紡糸装置100を用いて高分子ナノ繊維12からなるシート状不織布14を製造する様子を示す図であり、図1(b)はシート状不織布14を切断して帯状不織布16を製造する様子を示す図である。図2(a)は帯状不織布16を撚り糸装置200を通過させて「高分子ナノ繊維からなる糸16」を製造する様子を示す図であり、図2(b)は図2(a)における符号R2で示す領域を拡大して示す図であり、図2(c)は当該領域を図2(b)におけるよりも高い拡大率で示す図である。図3(a)は「高分子ナノ繊維からなる糸18」にレーザー光を照射することにより部分結合処理を行う様子を示す図であり、図3(b)は、図3(a)を上部より見た図である。

【0060】
実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、図1~図3に示すように、高分子ナノ繊維12からなる帯状不織布16を製造する第1工程と、帯状不織布16を撚り糸装置200内に通過させて帯状不織布16から「高分子ナノ繊維からなる糸18」を製造する第2工程と、「高分子ナノ繊維からなる糸18」を撚りと延伸を行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸18」を加熱して高分子ナノ繊維12同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸18」を高強度化する第3工程とをこの順序で含む。以下、製造工程に従って、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を詳細に説明する。

【0061】
(1)第1工程
第1工程は、コレクター108とノズル106との間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液からシート状不織布14を製造する工程と、シート状不織布14を切断して帯状不織布16を製造する工程とをこの順序で含む。

【0062】
まず、シート状不織布14を製造する工程は、以下のようにして行う。すなわち、図1(a)に示すように、電界紡糸装置100に備え付けられた原料タンク102に高分子ナノ繊維12の原料となる高分子材料溶液を充填しバルブ104を開けノズル106に原料供給可能な状態とする。高圧電源110を用いてノズル106とコレクター108との間に高電圧を印加することによりノズル106とコレクター108との間の空間に高分子ナノ繊維12が紡糸され、ノズル106とコレクター108との間に生じる電界により高分子ナノ繊維12がコレクター108へ堆積し、高分子ナノ繊維12からなるシート状の不織布14が製造される。

【0063】
シート状の不織布14の厚さは、例えば5μm~50μmである。高分子ナノ繊維の平均直径は、例えば300nm~800nmである。

【0064】
原料として用いる高分子材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)などを用いることができる。用途に応じて最適なものを選択すればよい。

【0065】
電界紡糸装置100を用いてシート状不織布を製造する際に、ノズル106とコレクター108の間に印加する電圧は、ノズル106とコレクター108の距離や用いる原料などにより異なるが、数kV~数10kVである。高分子原料や電界紡糸装置100の構造に応じて適宜最適な値を選択すればよい。

【0066】
次に、帯状不織布16を製造する工程は、以下のようにして行う。すなわち、図1(b)に示すように、シート状不織布14を1~100mm程度の幅に切断し撚糸可能な帯状不織布16を製造する。

【0067】
(2)第2工程
第2工程は、帯状不織布16を撚り糸装置200内に通過させて帯状不織布16から「高分子ナノ繊維からなる糸18」を製造する工程である。すなわち、図2(a)に示すように、第1工程で製造した帯状不織布16を主撚り糸装置202を用いて撚糸化することにより図2(b)に示すような「高分子ナノ繊維からなる糸18」を製造することができ、糸送り装置204,206を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸18」を図2(a)の左から右に撚りながら糸送りすることにより強固に撚り糸された「高分子ナノ繊維からなる糸18」が連続的に製造できる。

【0068】
糸送り装置204,206を用いて糸送りするときに、糸送り装置206の糸送り速度V1を糸送り装置204の糸送り速度V2よりも速くすれば、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸を行うこともできる。

【0069】
本第2工程で製造される「高分子ナノ繊維からなる糸18」は、図2(c)に示すように、高分子ナノ繊維12が「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に対して約30度の角度をもって配向している。

【0070】
第2工程で製造される「高分子ナノ繊維からなる糸」の直径は、例えば10μm~2000μmである。

【0071】
(3)第3工程
第3工程は、「高分子ナノ繊維からなる糸18」を撚りと延伸とを行いながら当該「高分子ナノ繊維からなる糸18」を加熱して高分子ナノ繊維12同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸18」を高強度化する工程である。具体的には、「高分子ナノ繊維からなる糸18」を撚りと延伸とを行いながらレーザー発生装置302とレンズ304からなるレーザー光照射装置300を用いてレーザー光を「高分子ナノ繊維からなる糸18」の所定の位置に照射すると、レーザー光が照射された部分R3においては「高分子ナノ繊維からなる糸18」が加熱され、R3領域に存在する高分子ナノ繊維12の温度が高分子ナノ繊維12のガラス転移温度以上になり、高分子ナノ繊維12同士が溶融して結合点20を形成する。

【0072】
一方、レーザー光が照射されていない部分R4においては、「高分子ナノ繊維からなる糸18」が加熱されないため、高分子ナノ繊維12同士の結合は見られない。

【0073】
なお、レーザー光を用いて部分結合処理を行う際は、レーザー光が照射された部分に存在する高分子ナノ繊維のすべてが結合して単繊維化してしまわないように、照射するレーザー光の強度を調整する。

【0074】
レーザー発生装置は、半導体レーザー、炭酸ガスレーザーやヘリウムネオンレーザーといったガスレーザーなどを用いることができる。加熱に必要なレーザーの波長や出力などに応じて選択すればよい。

【0075】
また、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸は、糸送り装置308の糸送り速度V3を糸送り装置306の糸送り速度V4よりも速くすることにより行う。

【0076】
なお、「高分子ナノ繊維からなる糸」の送り速度は、例えば1m/min~30m/minである。また、レーザー光のパワーは、20W~600Wである。レーザー光が照射された部位における高分子ナノ繊維の温度は例えば100℃~300℃である。

【0077】
以上の工程を経て、「高分子ナノ繊維からなる糸18」を製造することができる。

【0078】
実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸を行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」をレーザー照射により加熱して高分子ナノ繊維同士の部分結合処理を行うこととしているため、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維同士が部分的に結合された状態となる。このため、「高分子ナノ繊維からなる糸」に引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維同士に滑りが生じ難くなり、従来よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。

【0079】
また、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、「高分子ナノ繊維からなる糸」全体で高分子ナノ繊維が溶融して単繊維からなる糸になったり、高分子ナノ繊維同士が接触している部位のすべてが結合して「高分子ナノ繊維からなる糸」が剛直化してしまったりすることはなく、それゆえ、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0080】
また、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対してレーザー光を照射することにより行っているため、レーザー照射の照射強度、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0081】
さらにまた、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、ノズルと平面状のコレクターとの間に高電圧を印加し電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造し、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造しているため、ナノレベルの直径を持った高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。

【0082】
[変形例1]
図4は、変形例1における部分結合処理を説明するために示す図である。図4(a)はレーザー光照射装置300aを「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に対して垂直に移動させることを示す図であり、図4(b)は図4(a)を「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に沿って見た図である。

【0083】
変形例1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図4に示すように、レーザー照射処理を、「高分子ナノ繊維からなる糸」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うこととしている。

【0084】
なお、実施形態2においては、レーザー光が照射された部位における高分子ナノ繊維の温度は例えば100℃~300℃である。

【0085】
図4を参照しながら変形例1におけるレーザー光照射の方法を説明する。レーザー光のビームスポット直径dは、レーザー光照射装置300aを「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に対して垂直な方向に移動させ、レンズ304と「高分子ナノ繊維からなる糸18」との距離Dを調整することにより行う。

【0086】
レンズ304と「高分子ナノ繊維からなる糸18」との距離Dがレンズ304の焦点距離に近くなるほどビームスポット直径dは小さくなる。一方、距離Dとレンズ304の焦点距離の差(距離Dがレンズ304の焦点距離よりも大きくなる場合も小さくなる場合も含む)が大きくなるに従い、ビームスポット直径dは大きくなる。

【0087】
変形例1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うこととしているため、効率良く「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0088】
[変形例2]
図5は、変形例2における部分結合処理を説明するために示す図である。図5(a)はレーザー光照射装置300bを「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に沿って走査しレーザー照射を行っていることを示す図であり、図5(b)はレーザー光照射装置300bを用いて複数の「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に対して平行な方向と垂直な方向に走査しレーザー照射を行っていることを示す図である。

【0089】
変形例2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図5に示すように、レーザー照射処理を、レーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うこととしている。

【0090】
図5を参照しながら変形例2における部分結合処理を説明する。図5(a)に示すように、レーザー光照射装置300bを「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に沿って走査すると、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に沿って部分結合処理を行うことができる。

【0091】
また、図5(b)に示すように、複数の「高分子ナノ繊維からなる糸18」を交差するようにレーザー光照射装置300bを走査すれば、1つのレーザー光照射装置300bで複数の「高分子ナノ繊維からなる糸18」に部分結合処理を行うことができる。

【0092】
変形例2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、「高分子ナノ繊維からなる糸18」にレーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うこととしているため、レーザー照射の照射位置を走査しながら、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0093】
[変形例3]
図6は、変形例3における部分結合処理を説明するために示す図である。図6(a)~図6(c)はパルス状レーザー照射を行い間欠的にレーザー光照射を行う様子を示す図であり、図6(d)はパルス状レーザー照射の実行と停止を時間軸でグラフ化した図であり、図6(e)は図6(d)で示したレーザー照射パターンで部分結合処理を行った後の「高分子ナノ繊維からなる糸」を示す図である。

【0094】
変形例3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図6に示すように、レーザー照射処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うこととしている。

【0095】
図6を参照しながら変形例3における部分結合処理を説明する。図6(a)に示すように、時間T1のときにレーザー光照射装置300cからパルス状レーザー光を発生し部分結合処理22を形成する。次に、時間T2のときにはパルス状レーザー光照射を行わず(図6(b))、時間T3において再びパルス状レーザー光を発生させ部分結合処理22を形成し(図6(c))、図6(d)に示すようなパターンで間欠的にレーザー照射処理を行うと、図6(e)のようにパルス状レーザー光照射された部分にのみ部分結合処理が施された「高分子ナノ繊維からなる糸18」が製造される。

【0096】
変形例3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うこととしているため、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0097】
[変形例4]
図7は、変形例4における部分結合処理を説明するために示す図である。図7(a)は2本のレーザーでレーザー照射を行っていることを示す図であり、図7(b)は図7(a)を延伸軸に沿って見た図であり、図7(c)は3つのレーザーを120°の角度で配置してレーザー照射を行うことを示す図であり、図7(d)は4つのレーザーを90°の角度で配置してレーザー照射を行うことを示す図である。

【0098】
変形例4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図7に示すように、レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うこととしている。

【0099】
図7を参照しながら変形例4における部分結合処理を説明する。図7(a)及び図7(b)のように2つのレーザー光照射装置300を「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に垂直な軸上に配置することにより、「高分子ナノ繊維からなる糸18」に両面からレーザー光を照射できる。

【0100】
図7(c)のように、3つのレーザー光照射装置300を「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に対して垂直な面上で120°の角度をもって配置すると、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の3方向からレーザー光を照射できる。

【0101】
図7(d)のように、4つのレーザー光照射装置300を「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に対して垂直な面上で90°の角度をもって配置すると、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸の上下左右からレーザー光を照射できる。

【0102】
変形例4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うこととしているため、高分子ナノ繊維からなる糸」のより多くの部位にレーザー光を照射でき、より均一に「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0103】
[実施形態2]
図8は、実施形態2における部分結合処理を説明するために示す図である。
実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、基本的には実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むが、部分結合処理の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図8に示すように、部分結合処理を、ホットガン装置310を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸18」に対して熱風を照射する熱風照射処理により行うこととしている。

【0104】
図8を参照しながら実施形態2における部分結合処理を説明する。糸送り装置306,308により「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら、ホットガン312から吐出された熱風314を「高分子ナノ繊維からなる糸18」に照射して熱風照射処理を行い、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の部分結合処理を行う。

【0105】
なお、ホットガン装置310は、気流吸引装置316及び気流吸引ポンプ318をさらに供えており、熱風照射処理は、気流吸引装置316により気流を吸引しながら行う。熱風314の温度は、熱風314が「高分子ナノ繊維からなる糸18」に照射されたときに、高分子ナノ繊維12の温度が少なくともガラス転移温度以上になるような条件を採用することが好ましい。

【0106】
このように実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、部分結合処理の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なるが、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。

【0107】
また、実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0108】
なお、実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によっても、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、熱風照射の照射強度、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0109】
実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、部分結合処理の内容以外については、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。

【0110】
[実施形態3]
図9は、実施形態3における部分結合処理を説明するために示す図である。
実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、基本的には実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むが、部分結合処理の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図9に示すように、部分結合処理をリング状ヒーター320に「高分子ナノ繊維からなる糸」を通過させることにより行うこととしている。

【0111】
図9を参照しながら実施形態3に係る部分結合処理を説明する。糸送り装置306,308により「高分子ナノ繊維からなる糸18」を撚りと延伸とを行いながら、リング状ヒーター320の中を「高分子ナノ繊維からなる糸18」を通過させることにより「高分子ナノ繊維からなる糸18」が加熱され、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の部分結合処理が行われる。

【0112】
なお、リング状ヒーターの中を通過中の高分子ナノ繊維の表面温度は例えば100℃~300℃である。

【0113】
リング状ヒーター320としては、「高分子ナノ繊維からなる糸18」が通過する領域を囲む位置にヒーター322が配置された電気炉を用いる。その他、「高分子ナノ繊維からなる糸」が通過する領域を囲む位置に赤外線源が配置された赤外線炉、半導体製造などに用いられる拡散炉をも用いることができる。用途に応じて適宜選択することができる。

【0114】
「高分子ナノ繊維からなる糸」がリング状ヒーターの加熱領域を通過する時間は、加熱領域の長さを調整することによっても、「高分子ナノ繊維からなる糸」の通過速度を調整することによっても、又はそれら両方を調整することによっても可能である。

【0115】
このように実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、部分結合処理の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なるが、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。

【0116】
また、実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0117】
なお、実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によっても、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、リング状ヒーターの温度、加熱領域の長さ、「高分子ナノ繊維からなる糸」の通過速度その他の加熱条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0118】
実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、部分結合処理の内容以外については、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。

【0119】
[実施形態4]
図10は、実施形態4における部分結合処理を説明するために示す図である。図10(a)は急速加熱処理装置330を用いて部分結合処理を行っている様子を示す図であり、図10(b)は急速加熱処理装置330の内部構造を示す図である。

【0120】
実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、基本的には実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むが、部分結合処理の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図10に示すように、部分結合処理を、急速加熱装置330を用いて、「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して光又は赤外線を集光して照射する急速加熱処理により行うこととしている。

【0121】
図10を参照しながら実施形態4における部分結合処理を説明する。急速加熱処理装置330の中を「高分子ナノ繊維からなる糸18」が通過することにより「高分子ナノ繊維からなる糸18」が加熱され、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の部分結合処理が行われる。

【0122】
なお、急速加熱処理にを施されている最中の高分子ナノ繊維の表面温度は例えば100℃~300℃である。

【0123】
急速加熱処理装置330は、図10(b)に示すように、糸送り装置306,308を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸18」を撚りと延伸とを行いながら、光又は赤外線発生装置332から発生した光又は赤外線を集光ミラー334により集光し、「高分子ナノ繊維からなる糸18」上に加熱エネルギーを集中することで急速加熱を行う。

【0124】
このように実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、部分結合処理の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なるが、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。

【0125】
また、実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0126】
なお、実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によっても、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、急速加熱処理の条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0127】
実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、部分結合処理の内容以外については、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。

【0128】
[実施形態5]
図11は、実施形態5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における第3工程を説明するために示す図である。

【0129】
実施形態5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、基本的には実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むが、第3工程の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図11に示すように、第3工程を、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸を行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」に紫外線を照射して高分子ナノ繊維を構成する高分子の架橋処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することとしている。

【0130】
図11を参照しながら実施形態5における架橋処理を説明する。糸送り装置306,308により「高分子ナノ繊維からなる糸18」を撚りと延伸を行いながら、紫外線発生装置340を用いて紫外線342を「高分子ナノ繊維からなる糸18」に対して照射することにより紫外線照射を行い架橋処理を行う。

【0131】
紫外線発生装置340としては、紫外線ランプやUVレーザーなどを用いることができ、適宜選択して使用することができる。

【0132】
なお、高分子材料としては、シンナモイル基を有する高分子材料を好適に用いることができる。

【0133】
このように実施形態5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、第3工程における処理の内容が実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なるが、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」に紫外線を照射して高分子ナノ繊維を構成する高分子の架橋処理を行うこととしているため、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっている。このため、当該架橋処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっているため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。

【0134】
なお、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における部分結合処理及び実施形態5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における架橋処理の両方を行っても良い。このような方法とすることにより、部分結合処理又は架橋処理をそれぞれ単独に行う場合と比較して、より一層高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。

【0135】
実施形態5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、第3工程の内容以外については、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。

【0136】
[実施形態6]
図12は、実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における第3工程を説明するために示す図である。

【0137】
実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、基本的には実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むが、2種類の帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する点で、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なる。すなわち、実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、第1工程においては、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて個別に電界紡糸を行い、2種類以上の帯状不織布を製造し、第2工程においては、図12に示すように、当該2種類以上の帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて2種類以上の帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することとしている。なお、図12においては、説明を簡単にするために、2種類以上の帯状不織布として2種類の帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造するものとしている。

【0138】
このように実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、2種類以上の帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する点で、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合とは異なるが、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第3工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。

【0139】
また、実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0140】
また、実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対してレーザー光を照射することにより行っているため、レーザー照射の照射強度、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0141】
さらにまた、実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、2種類以上の帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造するため、2種類以上の高分子ナノ繊維を含有し、互いの高分子ナノ繊維の特性を相補し合う、高機能でかつ高強度な「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することが可能となる。

【0142】
実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、部分結合処理の内容以外については、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法と同様の工程を含むため、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法が有する効果のうち該当する効果を有する。

【0143】
以上、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。

【0144】
(1)上記実施形態6においては、2種類以上の帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて2種類以上の帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。図13は変形例5における第1工程を説明するために示す図であり、図14は変形例6における第1工程を説明するために示す図であり、図15は変形例7における第1工程を説明するために示す図である。例えば、図13に示すように、2種類以上の高分子材料を含有する高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて電界紡糸を行い、2種類以上の高分子材料が内部でブレンドされた高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を製造し、当該帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することとしてもよい。また、図14に示すように、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて同時に電界紡糸を行い、2種類以上の高分子ナノ繊維を含有する帯状不織布を製造し、当該帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することとしてもよい。また、図15に示すように、それぞれ異なる高分子材料を含有する2種類以上の高分子材料溶液又は溶融高分子材料を用いて順番に電界紡糸を行い、それぞれ異なる高分子ナノ繊維が積層された構造の帯状不織布を製造し、当該帯状不織布を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することとしてもよい。

【0145】
(2)上記実施形態1~6においては、電界紡糸法により一旦シート状の不織布14を製造し、当該シート状不織布14を切断することにより帯状不織布16を製造することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電界紡糸法により直接帯状不織布16を製造することとしてもよい。図16は、変形例8における第1工程を説明するために示す図である。図16(a)及び図16(b)はドラム状コレクター400を用いて帯状不織布16を製造する様子をそれぞれ異なる角度から見たときの図であり、図16(c)はドラム状コレクター400で製造された帯状不織布16を示す図である。

【0146】
実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における第1工程においては、図16(a)及び図16(b)に示すように、コレクターとして、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクター402が形成されたドラム状コレクター400を用いるとともに、当該ドラム状コレクター400におけるコレクター402と、ノズル106との間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から高分子ナノ繊維12を帯状のコレクター402上に堆積し、図16(c)に示すように、高分子ナノ繊維12からなる帯状不織布16を直接製造することとしている。

【0147】
図16を参照しながら実施形態6における第1工程を説明する。図16(a)に示す「ドラム状コレクター400」は、導電体の軸404に複数枚の導電体ディスク406を非導電体のディスク408を介して通し、これらのディスク406,408を積層することにより製造することができる。ドラム状コレクター400からは中心から軸404が伸びており、軸404の一方は軸受410を通してモーター412に接続されている。軸404の他方は高圧電源110と接続されている。なお、軸受410はモーター412と軸404とを電気的に絶縁できるように構成されている。

【0148】
ドラム状コレクター400のコレクター402とノズル106との間に高圧電源110を用いて高電圧を印加して電界紡糸を行うと、コレクター402上に高分子ナノ繊維12が堆積する。このとき、図16(b)に示すように、ドラム状コレクター400を図16(b)に示した矢印方向に低速で回転させながら電界紡糸を行っているので、ドラム状コレクター400の外周面に高分子ナノ繊維12が周方向に連続して堆積される。電界紡糸を行う一方で堆積した高分子ナノ繊維からなる不織布を搬送用ローラー414,416を介して巻き取りドラム418に巻き取ることにより、帯状不織布16を連続して回収することができる。

【0149】
変形例8に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、ナノレベルの直径を持った高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。また、不織布を切断する工程が不要となる。

【0150】
(3)上記各実施形態においては、第1工程において高分子材料以外の添加塩を加えることなく帯状不織布を製造したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、第1工程において高分子材料に添加塩(例えば、FeSO・7HO)を加えて帯状不織布を製造し、第3工程における部分結合処理を促進することができる。
【符号の説明】
【0151】
10,10a…高分子原料溶液、12,12a,12b…高分子ナノ繊維、14,14a,14b…シート状不織布、16,16a,16b…帯状不織布、18…「高分子ナノ繊維からなる糸」、20…結合点、22…部分結合処理、100,100a,100b…電界紡糸装置、102,102a,102b…原料タンク、104,104a,104b…バルブ、106,106a,106b…ノズル、108…コレクター、110,110a,110b…高圧電源、200,200a…撚り糸装置、202,202a…主撚り糸装置、204,206,204a,206a,306,308…糸送り装置、300,300a,300b,300c…レーザー光照射装置、302…レーザー発生装置、304…レンズ、310…ホットガン装置、312…ホットガン、314…熱風、316…気流吸引装置、318…気流吸引ポンプ、320…リング状ヒーター、322…ヒーター、324…電源、330…急速加熱処理装置、332…光又は赤外線発生装置、334…集光ミラー、340…紫外線発生装置、342…紫外線、400…ドラム状コレクター、402…コレクター、404…導電体の軸、406…導電体ディスク、408…非導電体ディスク、410…軸受、412…モーター、414,416…搬送用ローラー、418…巻き取りドラム、d…レーザー光のビームスポット径、D…レンズ304と「高分子ナノ繊維からなる糸18」との距離、R1…帯状不織布16の拡大部分、R2…「高分子ナノ繊維からなる糸18」の拡大部分、R3…部分結合処理点の拡大部分、R4…非部分結合処理点の拡大部分、V1…糸送り装置206の糸送り速度、V2…糸送り装置208の糸送り速度、V3…糸送り装置308の糸送り速度、V4…糸送り装置306の糸送り速度、V5…糸送り装置308の回転速度、V6…糸送り装置306の回転速度
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図12】
9
【図13】
10
【図14】
11
【図15】
12
【図16】
13
【図17】
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【図1】
15
【図2】
16