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明細書 :「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5467397号 (P5467397)
公開番号 特開2011-214177 (P2011-214177A)
登録日 平成26年2月7日(2014.2.7)
発行日 平成26年4月9日(2014.4.9)
公開日 平成23年10月27日(2011.10.27)
発明の名称または考案の名称 「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法
国際特許分類 D02G   3/02        (2006.01)
D02G   3/12        (2006.01)
D04H   1/728       (2012.01)
D06M  11/83        (2006.01)
D06M  10/00        (2006.01)
FI D02G 3/02 ZNM
D02G 3/12
D04H 1/728
D06M 11/83
D06M 10/00 L
D06M 10/00 K
D06M 10/00 J
請求項の数または発明の数 18
全頁数 27
出願番号 特願2010-081571 (P2010-081571)
出願日 平成22年3月31日(2010.3.31)
審査請求日 平成25年3月12日(2013.3.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
【識別番号】513023170
【氏名又は名称】株式会社ナノア
発明者または考案者 【氏名】金 翼水
【氏名】金 ビョンソク
【氏名】金 ヘリン
【氏名】渡邊 圭
個別代理人の代理人 【識別番号】100104709、【弁理士】、【氏名又は名称】松尾 誠剛
審査官 【審査官】増田 亮子
参考文献・文献 特表2007-518891(JP,A)
特開2010-065327(JP,A)
特開2009-267230(JP,A)
特開平06-010262(JP,A)
特開平03-161539(JP,A)
特開2008-031610(JP,A)
調査した分野 D02G 1/00- 3/48
D02J 1/00-13/00
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
D06M10/00-11/84
D06M16/00
D06M19/00-23/18
特許請求の範囲 【請求項1】
表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維により構成された「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する第1工程と、
前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成するナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うことにより前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第2工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対してレーザー光を照射するレーザー照射処理により行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、レーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項6】
請求項2~5のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して熱風を照射する熱風照射処理により行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項8】
請求項1に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記部分結合処理を、リング状ヒーターに前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を通過させることにより行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して光又は赤外線を集光して照射する急速加熱処理により行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項10】
請求項1に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して電磁波を照射し加熱する電磁波加熱処理により行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に存在する金属に電流を流すことにより加熱する電流加熱処理により行うことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程は、「金属被覆された帯状不織布」を製造する工程と、前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する「高分子ナノ繊維からなる糸」製造工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項13】
請求項12に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記「金属被覆された帯状不織布」の製造工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程と、前記帯状不織布の表面に金属を蒸着する工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項14】
請求項12に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記「金属被覆された帯状不織布」の製造工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布表面に金属を蒸着する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項15】
請求項12に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記「金属被覆された帯状不織布」の製造工程は、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクターが形成された「ドラム状コレクター」における前記コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から前記高分子ナノ繊維を前記コレクター上に堆積し、前記高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造する工程と、前記帯状不織布表面に金属を蒸着する工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項16】
請求項1~11のいずれかに記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記第1工程は、ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する工程と、前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する工程と、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」の表面に金属を蒸着する工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項17】
請求項16に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記帯状不織布の製造工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程とをこの順序で含むことを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、
前記帯状不織布の製造工程は、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクターが形成された「ドラム状コレクター」における前記コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から前記高分子ナノ繊維を前記コレクター上に堆積し、前記高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造する工程であることを特徴とする「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法に関する。なお、本発明において、ナノ繊維とは、平均直径が1000nm程度又はそれ以下の繊維のことをいう。
【0002】
「高分子ナノ繊維からなる糸」はナノ繊維が集合して糸状になったものであり、極めて大きい比表面積及び高い強度を有する。このため、「高分子ナノ繊維からなる糸」は、空気清浄用フィルター、各種産業用フィルター、ワイピングクロース、おむつ、人工皮革、人工透析用フィルター、人工血管、人工骨などに用いることができる。
【背景技術】
【0003】
従来、「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法として、以下のような「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。図18は、特許文献1に記載された「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造装置を説明するために示す図である。すなわち、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、図18に示すように、電界紡糸法(エレクトロスピニング法ということもある。)によって製造した高分子ナノ繊維を帯状に切断して、高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する。そして、当該帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて延伸することにより「高分子ナノ繊維からなる糸」(連続フィラメント)を製造するというものである。
【0004】
従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、別途の紡績工程を行わなくても、電界紡糸法によって製造された高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を用いて、高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することができる。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特表2007-518891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、産業界においては、より高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造することのできる製造方法が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能な「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意努力を重ねた結果、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維を使用して「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造し、当該「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら加熱して高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うこととすれば、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、高分子ナノ繊維同士が金属を介して部分的に結合された状態となる。このため、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維同士に滑りが生じ難くなり、その結果、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
[1]すなわち、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維により構成された「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する第1工程と、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成するナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うことにより前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第2工程とをこの順序で含むことを特徴とする。
【0010】
このため、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維を使用して「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造し、当該「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら加熱して高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、高分子ナノ繊維同士が金属を介して部分的に結合された状態となる。このため、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維同士に滑りが生じ難くなり、その結果、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。
【0011】
また、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、「高分子ナノ繊維からなる糸」全体で高分子ナノ繊維が溶融して単繊維からなる糸になったり、高分子ナノ繊維同士が接触している部位のすべてが結合して「高分子ナノ繊維からなる糸」が剛直化してしまったりすることはなく、それゆえ、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0012】
また、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維の表面に存在する金属が高分子ナノ繊維の軸に沿った方向でも結合するため、高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっている。このため、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」においっては、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっているため、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。
【0013】
また、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維の表面に金属が被覆されていることにより、「高分子ナノ繊維からなる糸」の高強度化のみでなく、高い電磁波シールド性、高い電磁波吸収性、高導電性、高保温性などの特性も「高分子ナノ繊維からなる糸」に付与することが可能となる。
【0014】
なお、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、「高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する」とは、高分子ナノ繊維同士が接触している箇所についての全部ではなく一部を金属により結合することをいう。例えば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を部分的に加熱することによって、高分子ナノ繊維同士が接触している箇所についての一部を金属により結合することとしてもよいし、「高分子ナノ繊維からなる糸」を比較的弱い条件で加熱することにより、高分子ナノ繊維同士が接触している箇所についての一部を金属により結合することとしてもよい。
【0015】
本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法において、高分子ナノ繊維表面に被覆する金属は、単元素金属であっても合金であっても良い。
【0016】
単元素金属としては、アルミニウム、銅、すず、亜鉛、ニッケル、鉄、金、銀を好ましく例示でき、合金としては、銅系合金、アルミニウム系合金、チタニウム系合金、鉄系合金を好ましく例示できる。
【0017】
[2]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対してレーザー光を照射するレーザー照射処理により行うことが好ましい。
【0018】
このような方法とすることにより、レーザー照射の照射強度、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が金属により部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0019】
[3]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うことが好ましい。
【0020】
このような方法とすることにより、効率良く「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0021】
[4]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、レーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うことが好ましい。
【0022】
このような方法とすることにより、レーザー照射の照射位置を走査しながら、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0023】
例えば、レーザー光を「高分子ナノ繊維からなる糸」の延伸軸に沿った方向に走査すれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」の延伸軸に沿った方向に部分結合処理を行うことが可能となる。
【0024】
また、2本以上の「高分子ナノ繊維からなる糸」を並列に配置し、すべての「高分子ナノ繊維からなる糸」を交差するようにレーザー光を走査すれば、1つのレーザー光により2本以上の「高分子ナノ繊維からなる糸」に部分結合処理を行うことが可能となる。
【0025】
[5]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うことが好ましい。
【0026】
このような方法とすることにより、前記レーザー照射処理を間欠的に行えば、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0027】
パルス周期又はデューティ比を調整することにより、特に、「高分子ナノ繊維からなる糸」に形成される部分結合の密度を調整することができる。
【0028】
パルス光の周期を短くする、または、デューティ比を大きくしてレーザー照射を行うことにより、高密度に部分結合を形成することが可能となる。逆に、パルス光の周期を長くする、かつ、デューティ比を小さくしてレーザー照射を行うことにより、低密度に部分結合を形成することが可能となる。
【0029】
[6]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うことが好ましい。
【0030】
このような方法とすることにより、「高分子ナノ繊維からなる糸」のより多くの部位にレーザー光を照射できるようになるため、「高分子ナノ繊維からなる糸」に対してレーザー照射処理をより均一に行うことができる。
【0031】
[7]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記金属結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して熱風を照射する熱風照射処理により行うことが好ましい。
【0032】
このような方法とすることによっても、上記[2]に記載の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、熱風照射の照射強度、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が金属により部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0033】
[8]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、リング状ヒーターに前記「高分子ナノ繊維からなる糸」を通過させることにより行うことが好ましい。
【0034】
このような方法とすることによっても、リング状ヒーターの温度、加熱領域の長さ、「高分子ナノ繊維からなる糸」の通過速度その他の加熱条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が金属により部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0035】
リング状ヒーターとしては、「高分子ナノ繊維からなる糸」が通過する領域を囲む位置にヒーターが配置された電気炉、「高分子ナノ繊維からなる糸」が通過する領域を囲む位置に赤外線源が配置された赤外線炉、半導体製造などに用いられる拡散炉を好ましく例示することができる。
【0036】
「高分子ナノ繊維からなる糸」がリング状ヒーターの加熱領域を通過する時間は、加熱領域の長さを調整することによっても、「高分子ナノ繊維からなる糸」の通過速度を調整することによっても、またはそれら両方を調整することによっても可能である。
【0037】
[9]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して光又は赤外線を集光して照射する急速加熱処理により行うことが好ましい。
【0038】
このような方法とすることによっても、急速加熱処理の条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が金属により部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0039】
[10]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に対して電磁波を照射し加熱する電磁波加熱処理により行うことが好ましい。
【0040】
このような方法とすることによっても、金属が有する電磁波吸収特性を用いて、電磁波照射の照射強度、周波数、照射範囲、照射位置その他の照射条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が金属により部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0041】
[11]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記部分結合処理を、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」に存在する金属に電流を流すことにより加熱する電流加熱処理により行うことが好ましい。
【0042】
このような方法とすることによっても、金属が有する導電性を用いて、金属に流す電流量その他の電流加熱処理条件を適宜制御することにより、高分子ナノ繊維同士が金属により部分的に結合される程度、結合点の密度、結合点の分散度合いなどを調整して、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。
【0043】
[12]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程は、「金属被覆された帯状不織布」を製造する工程と、前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する「高分子ナノ繊維からなる糸」製造工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0044】
このような方法とすることにより、ナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる、金属が存在する「高分子ナノ繊維からなる糸」を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。
【0045】
また、上記[12]に記載の方法で「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造すると、「高分子ナノ繊維からなる糸」の表面だけでなく内部にも金属が存在するようになる。
【0046】
[13]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記「金属被覆された帯状不織布」の製造工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程と、前記帯状不織布の表面に金属を蒸着する工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0047】
このような方法とすることにより、表面に金属が蒸着されたナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。
【0048】
[14]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記「金属被覆された帯状不織布」の製造工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布表面に金属を蒸着する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0049】
このような方法とすることによっても、表面に金属が蒸着されたナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。
【0050】
[15]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記「金属被覆された帯状不織布」の製造工程は、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクターが形成された「ドラム状コレクター」における前記コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から前記高分子ナノ繊維を前記コレクター上に堆積し、前記高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造する工程と、前記帯状不織布表面に金属を蒸着する工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0051】
このような方法とすることによっても、表面に金属が蒸着されたナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。また、不織布を切断する工程が不要となる。
【0052】
[16]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記第1工程は、ナノ繊維からなる帯状不織布を製造する工程と、前記帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて前記帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造する工程と、前記「高分子ナノ繊維からなる糸」の表面に金属を蒸着する工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0053】
このような方法とすることによっても、ナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる金属が存在する「高分子ナノ繊維からなる糸」を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。
【0054】
また、上記[16]に記載の方法で「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造すると、金属は「高分子ナノ繊維からなる糸」の表面近傍に存在するようになる。
【0055】
[17]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記帯状不織布の製造工程は、コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造する工程と、前記シート状不織布を切断して前記帯状不織布を製造する工程とをこの順序で含むことが好ましい。
【0056】
このような方法とすることにより、ナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。
【0057】
[18]本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、前記「金属被覆された帯状不織布」の製造工程は、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクターが形成された「ドラム状コレクター」における前記コレクターとノズルとの間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から前記高分子ナノ繊維を前記コレクター上に堆積し、前記高分子ナノ繊維からなる前記帯状不織布を製造する工程であることが好ましい。
【0058】
このような方法とすることによっても、ナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。また、不織布を切断する工程が不要となる。
【0059】
本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維の表面に金属が被覆されていることにより、「高分子ナノ繊維からなる糸」の高強度化のみでなく、高い電磁波シールド性、高い電磁波吸収性、高導電性、高保温性などの特性も「高分子ナノ繊維からなる糸」に付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。
【図2】実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。
【図3】実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。
【図4】実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。
【図5】変形例1における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図6】変形例2における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図7】変形例3における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図8】変形例4における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図9】変形例5における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図10】変形例6における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図11】変形例7における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図12】変形例8における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図13】変形例9における部分結合処理を説明するために示す図である。
【図14】実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図15】実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図16】実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図17】実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。
【図18】特許文献1に記載された「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造装置を説明するために示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
以下、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。

【0062】
[実施形態1]
図1~図4は、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における各工程を説明するために示す図である。このうち、図1~図3は実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における第1工程を説明するために示す図であり、図4は第2工程を説明するために示す図である。
図1(a)は電界紡糸装置100を用いて高分子ナノ繊維12からなるシート状不織布14を製造する様子を示す図であり、図1(b)はシート状不織布14を切断して帯状不織布16を製造する様子を示す図であり、図1(c)は図1(b)における符号R1で示す領域を拡大して示す図である。

【0063】
図2は帯状不織布16に金属を蒸着して金属の蒸着された帯状不織布18を製造する金属蒸着工程を示す図であり、図2(b)は金属が蒸着される前の帯状不織布16の走査型電子顕微鏡写真であり、図2(c)は金属が蒸着された後の帯状不織布18の走査型電子顕微鏡写真である。
図3は金属が蒸着された帯状不織布18を撚り糸装置300を通過させて「高分子ナノ繊維からなる糸20」を製造する様子を示す図である。
図4(a)は「高分子ナノ繊維からなる糸20」にレーザー光を照射することにより部分結合処理を行う様子を示す図であり、図4(b)は、図4(a)を上部より見た図である。

【0064】
実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、図1~図4に示すように、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維により構成された「高分子ナノ繊維からなる糸20」を製造する第1工程と、「高分子ナノ繊維からなる糸20」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸20」を加熱して「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第2工程とをこの順序で含む。以下、製造工程に従って、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を詳細に説明する。

【0065】
(1)第1工程
第1工程は、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維により構成された「高分子ナノ繊維からなる糸20」を製造する工程である。第1工程は、帯状不織布16を製造する帯状不織布製造工程と、帯状不織布に金属を蒸着して金属が蒸着された帯状不織布18を製造する金属蒸着工程と、金属が蒸着された帯状不織布18を撚り糸装置300内に通過させて帯状不織布18から、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維により構成された「高分子ナノ繊維からなる糸20」を製造する撚糸工程である。

【0066】
(1-1)帯状不織布製造工程
帯状不織布製造工程は、コレクター108とノズル106との間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液からシート状不織布14を製造する工程と、シート状不織布14を切断して帯状不織布16を製造する工程とをこの順序で含む。

【0067】
まず、シート状不織布14を製造する工程は、以下のようにして行う。すなわち、図1(a)に示すように、電界紡糸装置100に備え付けられた原料タンク102に高分子ナノ繊維12の原料となる高分子材料溶液10を充填しバルブ104を開けノズル106に原料供給可能な状態とする。高圧電源110を用いてノズル106とコレクター108との間に高電圧を印加することによりノズル106とコレクター108との間の空間に高分子ナノ繊維12が紡糸され、ノズル106とコレクター108との間に生じる電界により高分子ナノ繊維12がコレクター108へ堆積し、高分子ナノ繊維12からなるシート状の不織布14が製造される。

【0068】
シート状の不織布14の厚さは、例えば5μm~50μmである。高分子ナノ繊維の平均直径は、例えば300nm~800nmである。なお、電界紡糸装置100は、図示はしていないが、ナノ繊維を連続して巻き取る機構を有しており、長尺のシート状の不織布14が製造される。

【0069】
原料として用いる高分子材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリウレタン(PUR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸(PLGA)などを用いることができる。用途に応じて最適なものを選択すればよい。

【0070】
電界紡糸装置100を用いてシート状不織布を製造する際に、ノズル106とコレクター108の間に印加する電圧は、ノズル106とコレクター108の距離や用いる原料などにより異なるが、数kV~数10kVである。高分子原料や電界紡糸装置100の構造に応じて適宜最適な値を選択すればよい。

【0071】
次に、帯状不織布16を製造する工程は、以下のようにして行う。すなわち、図1(b)に示すように、シート状不織布14を1~100mm程度の幅に切断し撚糸可能な帯状不織布16を製造する。

【0072】
(1-2)金属蒸着工程
次に、金属蒸着工程は、図2(a)に示すように、帯状不織布16を真空蒸着装置200に通しながら、帯状不織布16を構成する高分子ナノ繊維の表面に金属を蒸着する。金属は、各高分子ナノ繊維の表面に例えば図2(b)及び図2(c)に示すように、平均粒径が数十nm程度の微粒子状に付着する。金属蒸着は例えば抵抗加熱又は電子ビーム加熱により行われる。真空度、温度、帯状不織布16の搬送速度などは、帯状不織布16に蒸着される金属の量(厚さ:例えば10nm~100nm)が所定の厚さになるような条件とする。

【0073】
(1-3)撚糸工程
撚糸工程は、金属が蒸着された帯状不織布18を撚り糸装置300内に通過させて帯状不織布18から「高分子ナノ繊維からなる糸18」を製造する工程である。すなわち、図3に示すように、第1工程で製造した帯状不織布18を主撚り糸装置202を用いて撚糸化することにより「高分子ナノ繊維からなる糸20」を製造することができ、糸送り装置304,306を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸20」を図2(a)の左から右に撚りながら糸送りすることによりさらに強固に撚り糸された「高分子ナノ繊維からなる糸20」が連続的に製造できる。

【0074】
糸送り装置304,306を用いて糸送りするときに、糸送り装置306の糸送り速度V1を糸送り装置304の糸送り速度V2よりも速くすれば、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸を行うこともできる。

【0075】
撚糸工程で製造される「高分子ナノ繊維からなる糸20」は、高分子ナノ繊維12が「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に対して約30度の角度をもって配向している。

【0076】
撚糸工程で製造される「高分子ナノ繊維からなる糸」の直径は、例えば10μm~2000μmである。

【0077】
(2)第2工程

【0078】
第2工程は、「高分子ナノ繊維からなる糸20」を撚りと延伸とを行いながら当該「高分子ナノ繊維からなる糸20」を加熱して高分子ナノ繊維12同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸20」を高強度化する工程である。具体的には、「高分子ナノ繊維からなる糸20」を撚りと延伸とを行いながらレーザー発生装置402とレンズ404からなるレーザー光照射装置400を用いてレーザー光を「高分子ナノ繊維からなる糸20」の所定の位置に照射すると、レーザー光が照射された部分R3においては「高分子ナノ繊維からなる糸20」が加熱され、R3領域に存在する金属微粒子の温度が金属微粒子の核成長が起こる温度以上になり(図4(a)の符号21参照。)、高分子ナノ繊維12同士が金属を介して部分的に結合された状態となる(図4(a)の符号22参照。)。なお、R3領域に存在する高分子ナノ繊維12の温度が高分子ナノ繊維12のガラス転移温度以上になり、高分子ナノ繊維12同士が溶融して結合点22を形成することもある。

【0079】
一方、レーザー光が照射されていない部分R4においては、「高分子ナノ繊維からなる糸20」が加熱されないため、高分子ナノ繊維12同士が金属を介して部分的に結合されることもないし、高分子ナノ繊維12同士が溶融して結合点22を形成することもない。

【0080】
なお、レーザー光を用いて部分結合処理を行う際は、レーザー光照射された部分に存在する高分子ナノ繊維のすべてが金属を介して又は高分子ナノ繊維12自体が溶融して結合して単繊維化してしまわないように、照射するレーザー光の強度を調整する。

【0081】
レーザー発生装置は、半導体レーザー、炭酸ガスレーザーやヘリウムネオンレーザーといったガスレーザーなどを用いることができる。加熱に必要なレーザーの波長や出力などに応じて選択すればよい。

【0082】
また、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸は、糸送り装置408の糸送り速度V3を糸送り装置406の糸送り速度V4よりも速くすることにより行う。

【0083】
なお、「高分子ナノ繊維からなる糸」の送り速度は、例えば1m/min~30m/minである。また、レーザー光のパワーは、20W~600Wである。レーザー光が照射された部位における高分子ナノ繊維の温度は例えば100℃~300℃である。

【0084】
以上の工程を経て、「高分子ナノ繊維からなる糸20」を製造することができる。

【0085】
実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維を使用して「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造し、当該「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら加熱して高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、高分子ナノ繊維同士が金属を介して部分的に結合された状態となる。このため、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維同士に滑りが生じ難くなり、その結果、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。

【0086】
また、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、「高分子ナノ繊維からなる糸」全体で高分子ナノ繊維が溶融して単繊維からなる糸になったり、高分子ナノ繊維同士が接触している部位のすべてが結合して「高分子ナノ繊維からなる糸」が剛直化してしまったりすることはなく、それゆえ、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0087】
また、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維の表面に存在する金属が高分子ナノ繊維の軸に沿った方向でも結合するため、高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっている。このため、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」においっては、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっているため、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。

【0088】
また、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維の表面に金属が被覆されていることにより、「高分子ナノ繊維からなる糸」の高強度化のみでなく、高い電磁波シールド性、高い電磁波吸収性、高導電性、高保温性などの特性も「高分子ナノ繊維からなる糸」に付与することが可能となる。

【0089】
さらにまた、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、ノズルと平面状のコレクターとの間に高電圧を印加し電界紡糸を行うことにより高分子材料溶液又は溶融高分子材料からシート状不織布を製造し、シート状不織布を切断して帯状不織布を製造しているため、ナノレベルの直径を持った高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。

【0090】
[変形例1]
図5は、変形例1における部分結合処理を説明するために示す図である。図5(a)はレーザー光照射装置400aを「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に対して垂直に移動させることを示す図であり、図5(b)は図5(a)を「高分子ナノ繊維からなる糸18」の延伸軸に沿って見た図である。

【0091】
変形例1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図5に示すように、レーザー照射処理を、「高分子ナノ繊維からなる糸」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うこととしている。

【0092】
なお、実施形態2においては、レーザー光が照射された部位における高分子ナノ繊維の温度は例えば100℃~300℃である。

【0093】
図5を参照しながら変形例1におけるレーザー光照射の方法を説明する。レーザー光のビームスポット直径dは、レーザー光照射装置400aを「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に対して垂直な方向に沿って移動させ、レンズ404と「高分子ナノ繊維からなる糸20」との距離Dを調整することにより行う。

【0094】
レンズ404と「高分子ナノ繊維からなる糸20」との距離Dがレンズ404の焦点距離に近くなるほどビームスポット直径dは小さくなる。一方、距離Dとレンズ404の焦点距離の差(距離Dがレンズ404の焦点距離よりも大きくなる場合も小さくなる場合も含む)が大きくなるに従い、ビームスポット直径dは大きくなる。

【0095】
変形例1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、「高分子ナノ繊維からなる糸18」の平均直径の2倍以下の直径を有するビームスポットに絞ったレーザー光を用いて行うこととしているため、効率良く「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0096】
[変形例2]
図6は、変形例2における部分結合処理を説明するために示す図である。図6(a)はレーザー光照射装置400bを「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に沿って走査しレーザー照射を行っていることを示す図であり、図6(b)はレーザー光照射装置400bを用いて複数の「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に対して平行な方向と垂直な方向に走査しレーザー照射を行っていることを示す図である。

【0097】
変形例2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図6に示すように、レーザー照射処理を、レーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うこととしている。

【0098】
図6を参照しながら変形例2における部分結合処理を説明する。図6(a)に示すように、レーザー光照射装置400bを「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に沿って走査すると、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に沿って部分結合処理を行うことができる。

【0099】
また、図6(b)に示すように、複数の「高分子ナノ繊維からなる糸20」を交差するようにレーザー光照射装置400bを走査すれば、1つのレーザー光照射装置400bで複数の「高分子ナノ繊維からなる糸20」に部分結合処理を行うことができる。

【0100】
変形例2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、「高分子ナノ繊維からなる糸18」にレーザー光を所定の手順に従って走査しながら行うこととしているため、レーザー照射の照射位置を走査しながら、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0101】
[変形例3]
図7は、変形例3における部分結合処理を説明するために示す図である。図7(a)~図7(c)はパルス状レーザー照射を行い間欠的にレーザー光照射を行う様子を示す図であり、図7(d)はパルス状レーザー照射の実行と停止を時間軸でグラフ化した図であり、図7(e)は図7(d)で示したレーザー照射パターンで部分結合処理を行った後の「高分子ナノ繊維からなる糸24」を示す図である。

【0102】
変形例3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図7に示すように、レーザー照射処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うこととしている。

【0103】
図7を参照しながら変形例3における部分結合処理を説明する。図7(a)に示すように、時間T1のときにレーザー光照射装置400cからパルス状レーザー光を発生し部分結合処理26を形成する。次に、時間T2のときにはパルス状レーザー光照射を行わず(図7(b))、時間T3において再びパルス状レーザー光を発生させ部分結合処理26を形成し(図7(c))、図7(d)に示すようなパターンで間欠的にレーザー照射処理を行うと、図7(e)のようにパルス状レーザー光照射された部分にのみ部分結合処理が施された「高分子ナノ繊維からなる糸24」が製造される。

【0104】
変形例3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、所定の周期又はデューティ比を持ったパルス状レーザー光を用いて間欠的に行うこととしているため、適切な条件で「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0105】
[変形例4]
図8は、変形例4における部分結合処理を説明するために示す図である。図8(a)は2本のレーザーでレーザー照射を行っていることを示す図であり、図8(b)は図8(a)を延伸軸に沿って見た図であり、図8(c)は3つのレーザーを120°の角度で配置してレーザー照射を行うことを示す図であり、図8(d)は4つのレーザーを90°の角度で配置してレーザー照射を行うことを示す図である。

【0106】
変形例4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図8に示すように、レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うこととしている。

【0107】
図8を参照しながら変形例4における部分結合処理を説明する。図8(a)及び図8(b)のように2つのレーザー光照射装置400を「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に垂直な軸上に配置することにより、「高分子ナノ繊維からなる糸20」に両面からレーザー光を照射できる。

【0108】
図8(c)のように、3つのレーザー光照射装置400を「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に対して垂直な面上で120°の角度をもって配置すると、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の3方向からレーザー光を照射できる。

【0109】
図8(d)のように、4つのレーザー光照射装置400を「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸に対して垂直な面上で90°の角度をもって配置すると、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の延伸軸の上下左右からレーザー光を照射できる。

【0110】
変形例4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、部分結合処理を、レーザー照射処理を、2つ以上のレーザー光を用いて行うこととしているため、高分子ナノ繊維からなる糸」のより多くの部位にレーザー光を照射でき、より均一に「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0111】
[変形例5]
図8は、変形例5における部分結合処理を説明するために示す図である。
変形例5に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図8に示すように、部分結合処理を、ホットガン装置410を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸20」に対して熱風を照射する熱風照射処理により行うこととしている。

【0112】
図8を参照しながら変形例5における部分結合処理を説明する。糸送り装置406,408により「高分子ナノ繊維からなる糸20」を撚りと延伸とを行いながら、ホットガン412から吐出された熱風414を「高分子ナノ繊維からなる糸20」に照射して熱風照射処理を行い、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の部分結合処理を行う。

【0113】
なお、ホットガン装置410は、気流吸引装置416及び気流吸引ポンプ418をさらに供えており、熱風照射処理は、気流吸引装置416により気流を吸引しながら行う。熱風414の温度は、熱風414が「高分子ナノ繊維からなる糸20」に照射されたときに、高分子ナノ繊維の表面に付着している金属微粒子の温度が、金属微粒子の核成長が起こる温度以上になり、高分子ナノ繊維12同士が金属を介して部分的に結合された状態となるような条件を採用することが好ましい。なお、R3領域に存在する高分子ナノ繊維12の温度が高分子ナノ繊維12のガラス転移温度以上になり、高分子ナノ繊維12同士が溶融して結合点20を形成するような条件を採用することも好ましい。

【0114】
[変形例6]
図9は、変形例6における部分結合処理を説明するために示す図である。
変形例6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図9に示すように、部分結合処理をリング状ヒーター420に「高分子ナノ繊維からなる糸」を通過させることにより行う。

【0115】
図9を参照しながら変形例6に係る部分結合処理を説明する。糸送り装置406,408により「高分子ナノ繊維からなる糸12」を撚りと延伸とを行いながら、リング状ヒーター420の中を「高分子ナノ繊維からなる糸20」を通過させることにより「高分子ナノ繊維からなる糸20」が加熱され、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の部分結合処理が行われる。

【0116】
なお、リング状ヒーターの中を通過中の高分子ナノ繊維の表面温度は例えば100℃~300℃である。

【0117】
リング状ヒーター420としては、「高分子ナノ繊維からなる糸20」が通過する領域を囲む位置にヒーター422が配置された電気炉を用いる。その他、「高分子ナノ繊維からなる糸」が通過する領域を囲む位置に赤外線源が配置された赤外線炉、半導体製造などに用いられる拡散炉をも用いることができる。用途に応じて適宜選択することができる。

【0118】
「高分子ナノ繊維からなる糸」がリング状ヒーターの加熱領域を通過する時間は、加熱領域の長さを調整することによっても、「高分子ナノ繊維からなる糸」の通過速度を調整することによっても、又はそれら両方を調整することによっても可能である。

【0119】
[変形例7]
図11は、変形例7における部分結合処理を説明するために示す図である。図11(a)は急速加熱処理装置430を用いて部分結合処理を行っている様子を示す図であり、図11(b)は急速加熱処理装置430の内部構造を示す図である。

【0120】
変形例7に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図11に示すように、部分結合処理を、急速加熱装置430を用いて、「高分子ナノ繊維からなる糸20」に対して光又は赤外線を集光して照射する急速加熱処理により行うこととしている。

【0121】
図11を参照しながら変形例7における部分結合処理を説明する。急速加熱処理装置430の中を「高分子ナノ繊維からなる糸20」が通過することにより「高分子ナノ繊維からなる糸20」が加熱され、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の部分結合処理が行われる。

【0122】
なお、急速加熱処理を施されている最中の高分子ナノ繊維の表面温度は例えば100℃~300℃である。

【0123】
[変形例8]
図12は、変形例8における部分結合処理を説明するために示す図である。図12中、符号442は電磁波を示す。
変形例8に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法においては、図12に示すように、部分結合処理を、電磁波加熱処理により行うこととしている。

【0124】
図12を参照しながら変形例8における部分結合処理を説明する。「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」に電磁波を照射することにより、「高分子ナノ繊維からなる糸20」が加熱され、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の部分結合処理が行われる。このような方法とすることによっても、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成するナノ繊維同士を金属により部分的に結合することができる。

【0125】
なお、電磁波加熱処理を行っている最中の高分子ナノ繊維の表面温度は例えば100℃~300℃である。

【0126】
[変形例9]
図13は、変形例9における部分結合処理を説明するために示す図である。
変形例9における部分結合処理においては、図13に示すように、部分結合処理を、「高分子ナノ繊維からなる糸20」に存在する金属に電流を流すことにより加熱する電流加熱処理により行うこととしている。

【0127】
図13を参照しながら変形例9における部分結合処理を説明する。撚りと延伸とが行われている「高分子ナノ繊維からなる糸」に一対の電極454を用いて「高分子ナノ繊維からなる糸20」に存在する金属に電流を流すことにより、「高分子ナノ繊維からなる糸20」が加熱され、「高分子ナノ繊維からなる糸20」の部分結合処理が行われる。このような方法とすることによっても、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成するナノ繊維同士を金属により部分的に結合することができる。

【0128】
なお、電流加熱処理を行っている最中の高分子ナノ繊維の表面温度は例えば100℃~300℃である。

【0129】
[実施形態2]
図14及び図15は、実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。図14(a)は電界紡糸法により製造されたシート状の不織布を示す図であり、図14(b)はシート状の不織布14に金属蒸着を施している様子を示す図である。図15は金属蒸着されたシート状の不織布17を切断している様子を示す図である。

【0130】
実施形態2に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、図14に示すように、まず、電界紡糸法により製造されたシート状の不織布14を切断することなくそのまま用いて金属蒸着を行って金属蒸着されたシート状の不織布17を製造し、その後、図15に示すように、金属蒸着されたシート状の不織布17を切断して金属蒸着のされた帯状不織布18を製造することとしている。

【0131】
このような方法とすることによっても、表面に金属が蒸着されたナノレベルの直径の高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。

【0132】
[実施形態3]
上記実施形態1においては、電界紡糸法により一旦シート状の不織布14を製造し、当該シート状不織布14を切断することにより帯状不織布16を製造することとしているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、電界紡糸法により直接帯状不織布16を製造することとしてもよい。図16は、実施形態3における帯状不織布製造工程を説明するために示す図である。図16(a)及び図16(b)はドラム状コレクター500を用いて帯状不織布16を製造する様子をそれぞれ異なる角度から見たときの図であり、図16(c)はドラム状コレクター500で製造された帯状不織布16を示す図である。

【0133】
実施形態6に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法における帯状不織布製造工程においては、図16(a)及び図16(b)に示すように、コレクターとして、ドラム外周面に周方向に延在する帯状のコレクター502が形成されたドラム状コレクター500を用いるとともに、当該ドラム状コレクター500におけるコレクター502と、ノズル106との間に高電圧が印加された状態で電界紡糸を行うことにより、高分子材料溶液又は溶融高分子材料から高分子ナノ繊維12を帯状のコレクター502上に堆積し、図16(c)に示すように、高分子ナノ繊維12からなる帯状不織布16を直接製造することとしている。

【0134】
図16を参照しながら実施形態6における帯状不織布製造工程を説明する。図16(a)に示す「ドラム状コレクター500」は、導電体の軸504に複数枚の導電体ディスク506を非導電体のディスク508を介して通すことによりこれらのディスク506,508を積層することにより製造することができる。ドラム状コレクター500からは中心から軸504が伸びており、軸504の一方は軸受510を通してモーター512に接続されている。軸504の他方は接続端子を介して高圧電源110と接続されている。なお、軸受510はモーター512と軸504とを電気的に絶縁できるように構成されている。

【0135】
ドラム状コレクター500のコレクター502とノズル106との間に高圧電源110を用いて高電圧を印加して電界紡糸を行うと、コレクター502上に高分子ナノ繊維12が堆積する。このとき、図16(b)に示すように、ドラム状コレクター500を図16(b)に示した矢印方向に低速で回転させながら電界紡糸を行うことにより、ドラム状コレクター500の外周面に高分子ナノ繊維12が周方向に連続して堆積される。電界紡糸を行う一方で堆積した高分子ナノ繊維からなる不織布を搬送用ローラー514,516を介して巻き取りドラム518に巻き取ることにより、帯状不織布16を連続して製造し、回収することができる。

【0136】
実施形態3に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、ナノレベルの直径を持った高分子ナノ繊維からなる帯状不織布を高い生産性でもって効率良く製造することが可能となる。また、不織布を切断する工程が不要となる。

【0137】
[実施形態4]
図17は、実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を説明するために示す図である。そして、図17は「高分子ナノ繊維からなる糸」に連続的に金属蒸着を施している様子を示す図である。

【0138】
実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法は、まず、電界紡糸法により製造されたシート状の不織布14から帯状不織布を製造した後、これを切断して帯状不織布を製造する。その後、帯状不織布を撚り糸装置内に通過させて当該帯状不織布から「高分子ナノ繊維からなる糸30」を製造する。そして、その後に、「高分子ナノ繊維からなる糸30」の表面に金属を蒸着しすることにより金属蒸着がされた「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造し、さらにその後「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成するナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うことにより「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化する第2工程を行うこととしている。

【0139】
このような方法とすることによっても、実施形態1に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合と同様に、表面の少なくとも一部が金属被覆された高分子ナノ繊維を使用して「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造し、当該「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら加熱して高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、当該部分結合処理後の「高分子ナノ繊維からなる糸」においては、高分子ナノ繊維同士が金属を介して部分的に結合された状態となる。このため、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維同士に滑りが生じ難くなり、その結果、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」が製造可能となる。

【0140】
また、実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を撚りと延伸とを行いながら「高分子ナノ繊維からなる糸」を加熱して高分子ナノ繊維同士を金属により部分的に結合する部分結合処理を行うこととしているため、「高分子ナノ繊維からなる糸」全体で高分子ナノ繊維が溶融して単繊維からなる糸になったり、高分子ナノ繊維同士が接触している部位のすべてが結合して「高分子ナノ繊維からなる糸」が剛直化してしまったりすることはなく、それゆえ、「高分子ナノ繊維からなる糸」中に存在するナノレベルの凹凸構造による極めて大きな比表面積及び「高分子ナノ繊維からなる糸」のしなやかさを維持したまま、「高分子ナノ繊維からなる糸」を高強度化することが可能となる。

【0141】
また、実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維の表面に存在する金属が高分子ナノ繊維の軸に沿った方向でも結合するため、高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっている。このため、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」においっては、引っ張り応力がかかっても高分子ナノ繊維自体の引っ張り強度が高くなっているため、従来の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法の場合よりも高強度の「高分子ナノ繊維からなる糸」を製造可能となる。

【0142】
また、実施形態4に係る「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法によれば、「高分子ナノ繊維からなる糸」を構成する高分子ナノ繊維の表面に金属が被覆されていることにより、「高分子ナノ繊維からなる糸」の高強度化のみでなく、高い電磁波シールド性、高い電磁波吸収性、高導電性、高保温性などの特性も「高分子ナノ繊維からなる糸」に付与することが可能となる。

【0143】
以上、本発明の「高分子ナノ繊維からなる糸」の製造方法を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施することが可能である。
【符号の説明】
【0144】
10…高分子原料溶液、12…高分子ナノ繊維、14…シート状の不織布、16…帯状不織布、17…金属被覆されたシート状の不織布、18…金属被覆された帯状不織布、20…「高分子ナノ繊維からなる糸」、22…結合点、24…第2工程により部分結合処理がなされた「高分子ナノ繊維からなる糸」、26…レーザー光が照射された領域、100…電界紡糸装置、102…原料タンク、104…バルブ、106…ノズル、108…コレクター、110…高圧電源、200,200a…真空蒸着装置、204…繰り出しドラム、206,208…搬送用ローラー、210…巻き取り用ドラム、212…抵抗加熱用電源、300…撚り糸装置、302…主撚り糸装置、304,306,406,408…糸送り装置、400,400a,400b,400c…レーザー光照射装置、402…レーザー発生装置、404…レンズ、410…ホットガン装置、412…ホットガン、414…熱風、416…気流吸引装置、418…気流吸引ポンプ、420…リング状ヒーター、422…ヒーター、424…電源、430…急速加熱処理装置、432…光又は赤外線発生装置、434…集光ミラー、440…電磁波照射装置、442電磁波、450…電流供給装置、452…大電流電流電源、454…接触子、500…ドラム状コレクター、502…コレクター、504…導電体の軸、506…導電体ディスク、508…非導電体ディスク、510…軸受、512…モーター、514,516…搬送用ローラー、518…巻き取りドラム、d…レーザー光のビームスポット径、D…レンズ304と「高分子ナノ繊維からなる糸18」との距離、R1…帯状不織布16の拡大部分、R2…「高分子ナノ繊維からなる糸18」の拡大部分、R3…部分結合処理点の拡大部分、R4…非部分結合処理点の拡大部分、V1…糸送り装置206の糸送り速度、V2…糸送り装置208の糸送り速度、V3…糸送り装置308の糸送り速度、V4…糸送り装置306の糸送り速度、V5…糸送り装置308の回転速度、V6…糸送り装置306の回転速度
図面
【図3】
0
【図4】
1
【図5】
2
【図6】
3
【図7】
4
【図8】
5
【図9】
6
【図10】
7
【図11】
8
【図12】
9
【図13】
10
【図14】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図1】
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【図2】
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【図15】
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