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明細書 :細胞観察用デバイス及び細胞観察方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4674337号 (P4674337)
公開番号 特開2010-207143 (P2010-207143A)
登録日 平成23年2月4日(2011.2.4)
発行日 平成23年4月20日(2011.4.20)
公開日 平成22年9月24日(2010.9.24)
発明の名称または考案の名称 細胞観察用デバイス及び細胞観察方法
国際特許分類 C12M   1/34        (2006.01)
G01N  21/76        (2006.01)
C12Q   1/02        (2006.01)
FI C12M 1/34 B
G01N 21/76
C12Q 1/02
請求項の数または発明の数 6
全頁数 17
出願番号 特願2009-056598 (P2009-056598)
出願日 平成21年3月10日(2009.3.10)
審査請求日 平成22年4月12日(2010.4.12)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
【識別番号】591060980
【氏名又は名称】岡山県
発明者または考案者 【氏名】金原 和秀
【氏名】公文 裕巳
【氏名】狩山 玲子
【氏名】妹尾 典久
【氏名】高野 和潔
早期審査対象出願または早期審理対象出願 早期審査対象出願
個別代理人の代理人 【識別番号】100064908、【弁理士】、【氏名又は名称】志賀 正武
【識別番号】100108578、【弁理士】、【氏名又は名称】高橋 詔男
【識別番号】100089037、【弁理士】、【氏名又は名称】渡邊 隆
【識別番号】100094400、【弁理士】、【氏名又は名称】鈴木 三義
【識別番号】100107836、【弁理士】、【氏名又は名称】西 和哉
【識別番号】100108453、【弁理士】、【氏名又は名称】村山 靖彦
審査官 【審査官】神谷 昌男
参考文献・文献 特開平10-117767(JP,A)
特開2006-115723(JP,A)
特開2006-246720(JP,A)
特開2007-097510(JP,A)
特開2006-313123(JP,A)
特表2007-525667(JP,A)
特開2005-034069(JP,A)
特開平10-276763(JP,A)
特開2004-081086(JP,A)
特開2006-042671(JP,A)
特開2007-166983(JP,A)
調査した分野 G01N21/75-21/83
C12M 1/00-3/10

JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII)
WPI
特許請求の範囲 【請求項1】
半透膜と、該半透膜の一方の面側に順次積層された細胞含有液用流路形成体及び細胞含有液用カバー板と、該半透膜の他方の面側に順次積層された薬液用流路形成体及び薬液用カバー板とを備え、
前記細胞含有液用流路形成体は複数の培養室形成用貫通孔と、該複数の培養室形成用貫通孔に各々接続するように前記半透膜と反対の面側に設けられた複数の細胞含有液流路形成用溝を有し、
前記薬液用流路形成体は、前記複数の細胞培養室形成用貫通孔と隣接する位置に各々設けられた複数の薬液室形成用貫通孔と、該複数の薬液室形成用貫通孔に各々接続するように前記半透膜と反対の面側に設けられた複数の薬液流路形成用溝を有し、
前記各々の培養室形成用貫通孔と前記半透膜及び前記細胞含有液用カバー板によって囲まれる領域が、各々細胞培養室とされ、
前記各々の薬液室形成用貫通孔と前記半透膜及び前記薬液用カバー板によって囲まれる領域が、各々薬液室とされ、
前記各々の細胞含有液流路形成用溝と前記細胞含有液用カバー板によって囲まれる領域が、各々細胞含有液流路とされ、該各々の細胞含有液流路によって、前記各々の細胞培養室に、バイオフィルムを形成可能な微生物の細胞を含有する細胞含有液を導入後排出可能とされており、
前記薬液流路形成用溝と前記薬液用カバー板によって囲まれる領域が、各々薬液流路とされ、該各々の薬液流路によって、前記各々の薬液室に、前記細胞を含有しない薬液を導入後排出可能とされており、
前記薬液用カバー板は、前記細胞培養室で得られるルミネッセンス光を観察するための観察窓とされていることを特徴とするバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【請求項2】
前記細胞含有液用流路形成体と細胞含有液用カバー板との間、及び前記薬液用流路形成体と薬液用カバー板との間に、液漏れ防止用のシール膜が挿入されている請求項1に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【請求項3】
さらに、前記細胞含有液用カバー板の外側に積層される細胞培養室側押さえ板と、
前記薬液用カバー板の外側に積層される薬液室側押さえ板と、
細胞培養室側押さえ板及び薬液室側押え板を連結する連結部材とを備え、
前記薬液室側押さえ板は、少なくとも前記細胞培養室及び薬液室と重なる部分がくり抜かれている請求項1または請求項2に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【請求項4】
外部から細胞含有液又は薬液を導入する入口、及び外部に細胞含有液又は薬液を排出する出口の何れか1以上が、内部に向かうにつれ縮径するテーパー状とされている請求項1から3の何れか一項に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【請求項5】
前記半透膜の厚さが10~20μmである請求項1から4の何れか一項に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の細胞観察用デバイスの細胞培養室に、バイオフィルムを形成可能な微生物の細胞を含有する細胞含有液を導入すると共に、薬液室に、前記細胞を含有しない薬液を導入し、
前記細胞及び/又は前記細胞による生成物に基づくルミネッセンス光を、前記観察窓から観察することを特徴とするバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察方法。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞観察用デバイス及び細胞観察方法に関する。さらに詳しくは、細胞に種々の薬品を作用させた際の影響評価等に適した細胞観察用デバイス及び細胞観察方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞自体、又は細胞活動による生成物の観察は、医学、薬学、食品分野等、種々の分野で行われている。
例えば、特許文献1では、汚水管路の内面に板状体を配設し、これにバイオフィルムを形成させた後に取り出して撮像装置で調査することが提案されている。
また、プレート上に多数のウエルが配列され、底面が多孔質膜のカップに入れた細胞を、ウエル毎の薬液中に浸漬できるスクリーニング用部材(非特許文献1)が実用化されている。
また、断面矩形のフローセル中に、予め薬液を添加した細胞培養液を導入し、このフローセル内を蛍光分析等により観察するフローセルシステム(非特許文献2)も実用化されている。
【先行技術文献】
【0003】

【特許文献1】特開平9-1122号公報
【0004】

【非特許文献1】“コーニング エッチティーエストランスウエル-96 ティッシュカルチャーシステム(Corning HTS Transwell-96 Tissue Culture Systems)”、[online]、2004年、コーニング社、 [平成21年2月20日検索]、インターネット<http://www.vitaris.com/CMS/GetFile.aspx?ID=2e437c0e-3583-466e-9968-7360f0cf29af&Name=Attachment&Download=False>
【非特許文献2】“科学機器総覧WEB 2009-2010バイオフィルム作成・観察用フローセルシステム”、[online]、[平成21年2月20日検索]、インターネット<http://www.soran.net/index_html/A0292022.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の方法は、バイオフィルムが形成された後に、生成環境から取り出して観察するため、生成過程の観察ができず、生成メカニズムの解明等には適していなかった。
また、非特許文献1のスクリーニング部材は、ウエル毎に蛍光発光があったか否か等のオンオフ情報が得られるだけで、ウエル内の細胞の状態まで観察することは困難であった。
これらに対して、非特許文献2のフローセルシステムは、フローセル内の状態を蛍光分析等により経時的に観察可能である。ところが、非特許文献2のフローセルシステムについては、以下のような問題があった。
(1)フローセルの上下左右の内壁全体にバイオフィルム等が付着するため、蛍光分析等の焦点を合わせにくく、鮮明な映像を得ることが困難であった。
(2)薬液等を予め細胞培養液に添加しておかなければならないので、薬液を培養の途中で添加する等、添加タイミングの変更が困難であった。
(3)細胞と薬液の組み合わせ毎に1つのフローセルが必要であるため、多数の細胞と薬液との組み合わせについて評価することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、細胞を、薬液の存在下で経時的に鮮明に観察可能であり、細胞と薬液との相互作用等を正確に評価できる細胞観察用デバイス及び細胞観察方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
なお、下記[1]~[5]は参考発明である。
【0008】
[1]半透膜を介して隣接する細胞培養室及び薬液室と、前記細胞培養室に、バイオフィルムを形成可能な微生物の細胞を含有する細胞含有液を導入後排出するための細胞含有液流路と、前記薬液室に、前記細胞を含有しない薬液を導入後排出するための薬液流路と、前記薬液室の前記半透膜と対向する側に設けられた前記細胞培養室で得られるルミネッセンス光を観察するための観察窓とを備えることを特徴とするバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【0009】
[2]半透膜の一方の面側に互いに離間して設けられた複数の細胞培養室と、前記半透膜の他方の面側の、前記複数の細胞培養室の各々と前記半透膜を介して隣接する位置に、互いに離間して設けられた複数の薬液室と、前記複数の細胞培養室の各々に、バイオフィルムを形成可能な微生物の細胞を含有する細胞含有液を導入後排出するための細胞含有液流路と、前記複数の薬液室の各々に、前記細胞を含有しない薬液を導入後排出するための薬液流路と、前記複数の薬液室の前記半透膜と対向する側に設けられた前記細胞培養室で得られるルミネッセンス光を観察するための観察窓とを備えることを特徴とするバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【0010】
[3]前記細胞含有液流路が、導入用液溜部と、該導入用液溜部に外部から細胞含有液を導くための共通導入路と、該導入用液溜部から前記複数の細胞培養室の各々に細胞含有液を導くための複数の個別導入路とを有する[2]に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
[4]前記細胞含有液流路が、排出用液溜部と、該排出用液溜部に前記複数の細胞培養室の各々から細胞含有液を導くための複数の個別排出路と、該排出用液溜部から外部に細胞含有液を導くための共通排出路とを有する[2]または[3]に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
[5]前記薬液流路が、排出用液溜部と、該排出用液溜部に前記複数の薬液室の各々から薬液を導くための複数の個別排出路と、該排出用液溜部から外部に薬液を導くための共通排出路とを有する[2]から[4]の何れか一項に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【0011】
[6]半透膜と、該半透膜の一方の面側に順次積層された細胞含有液用流路形成体及び細胞含有液用カバー板と、該半透膜の他方の面側に順次積層された薬液用流路形成体及び薬液用カバー板とを備え、前記細胞含有液用流路形成体は複数の培養室形成用貫通孔と、該複数の培養室形成用貫通孔に各々接続するように前記半透膜と反対の面側に設けられた複数の細胞含有液流路形成用溝を有し、前記薬液用流路形成体は、前記複数の細胞培養室形成用貫通孔と隣接する位置に各々設けられた複数の薬液室形成用貫通孔と、該複数の薬液室形成用貫通孔に各々接続するように前記半透膜と反対の面側に設けられた複数の薬液流路形成用溝を有し、前記各々の培養室形成用貫通孔と前記半透膜及び前記細胞含有液用カバー板によって囲まれる領域が、各々細胞培養室とされ、前記各々の薬液室形成用貫通孔と前記半透膜及び前記薬液用カバー板によって囲まれる領域が、各々薬液室とされ、前記各々の細胞含有液流路形成用溝と前記細胞含有液用カバー板によって囲まれる領域が、各々細胞含有液流路とされ、該各々の細胞含有液流路によって、前記各々の細胞培養室に、バイオフィルムを形成可能な微生物の細胞を含有する細胞含有液を導入後排出可能とされており、前記薬液流路形成用溝と前記薬液用カバー板によって囲まれる領域が、各々薬液流路とされ、該各々の薬液流路によって、前記各々の薬液室に、前記細胞を含有しない薬液を導入後排出可能とされており、前記薬液用カバー板は、前記細胞培養室で得られるルミネッセンス光を観察するための観察窓とされていることを特徴とするバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【0012】
[7]前記細胞含有液用流路形成体と細胞含有液用カバー板との間、及び前記薬液用流路形成体と薬液用カバー板との間に、液漏れ防止用のシール膜が挿入されている[6]に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
[8]さらに、前記細胞含有液用カバー板の外側に積層される細胞培養室側押さえ板と、前記薬液用カバー板の外側に積層される薬液室側押さえ板と、細胞培養室側押さえ板及び薬液室側押え板を連結する連結部材とを備え、前記薬液室側押さえ板は、少なくとも前記細胞培養室及び薬液室と重なる部分がくり抜かれている[6]または[7]に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
[9]外部から細胞含有液又は薬液を導入する入口、及び外部に細胞含有液又は薬液を排出する出口の何れか1以上が、内部に向かうにつれ縮径するテーパー状とされている[1]から[8]の何れか一項に記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
【0013】
[10] 前記半透膜の厚さが10~20μmである[1]から[9]の何れかに記載のバイオフィルムを形成可能な微生物の細胞観察用デバイス。
[11] [1]から[10]の何れかに記載の細胞観察用デバイスの細胞培養室に、細胞を含有する細胞含有液を導入すると共に、薬液室に、細胞を実質的に含有しない薬液を導入し、前記細胞及び/又は前記細胞による生成物に基づくルミネッセンス光を、前記観察窓から観察することを特徴とする細胞観察方法。
【発明の効果】
【0014】
[1]の発明によれば、実質的に細胞を含有しない薬液が導入される薬液室側に観察窓を設けたので、薬液を作用させた細胞を、経時的に鮮明に観察可能である。
また、薬液を、細胞培養室と別個に設けた薬液室に導入後排出するようにしたので、薬液添加のタイミングや、導入する薬液の種類や濃度の変更が容易である。
[2]の発明によれば、複数の細胞培養室と薬液室を有するので、複数の細胞と薬液との組み合わせについて評価することが容易である。
[3]の発明によれば、導入用液溜部から複数の細胞培養室の各々に細胞含有液を導くようにしたので、送液圧力を各細胞培養室に均等に分散し、各細胞培養室の条件を均一化しやすい。
[4]の発明によれば、複数の細胞培養室の各々から排出用液溜部に細胞含有液を導くようにしたので、各細胞培養室の背圧を均等とし、各細胞培養室の条件を均一化しやすい。
[5]の発明によれば、複数の薬液室の各々から排出用液溜部に薬液を導くようにしたので、各薬液室の背圧を均等とし、各薬液室の条件を均一化しやすい。
[6]の発明によれば、ほぼ平板状の部材を積層するだけで、細胞培養室、細胞含有液流路、薬液室及び薬液流路を容易に作成することができる。
[7]の発明によれば、液漏れ防止用のシール膜を挿入するので、細胞含有液用流路形成体と細胞含有液用カバー板との間、及び前記薬液用流路形成体と薬液用カバー板との間を、接着等によらずに液漏れ防止できる。
したがって、各部材を、適宜組み立ててデバイスを得ることができ、かつ使用後は分解して洗浄も可能である。
[8]の発明によれば、一対の押さえ板に挟んで固定するので、組み立て分解が容易である。
[9]の発明によれば、入口ないし出口をテーパー状としたので、先端部外径をテーパー状とした可撓性の送液チューブを、連結ソケット等を用いることなく直接挿入しやすい。そのため、多数の入口ないし出口を、デバイス表面に密集して形成することができる。
[10]の発明によれば、ルミネッセンス光を用いて、鮮明にかつ経時的に細胞及び/又はその生成物を観察することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の細胞観察用デバイスの一実施形態に係るデバイス1の分解斜視図である。
【図2】デバイス1の流路形成体20の平面図である。
【図3】図2のIIIa-IIIa断面図であり、かつIIIb-IIIb断面図である。
【図4】図2のIV-IV断面図である。
【図5】図2のV-V断面図である。
【図6】デバイス1の流路形成体50の平面図である。
【図7】図6のVIIa-VIIa断面図であり、かつVIIb-VIIb断面図である。
【図8】図6のVIII-VIII断面図である。
【図9】デバイス1の押さえ板40の平面図である。
【図10】図9のX-X断面図である。
【図11】デバイス1の押さえ板70の平面図である。
【図12】図11のXII-XII断面図である。
【図13】デバイス1の部分縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の細胞観察用デバイスの一実施形態に係るデバイス1の分解斜視図である。
デバイス1は、半透膜10、半透膜10の一方の面側に順次積層された流路形成体20、カバー板30及び押さえ板40と、半透膜10の他方の面側に順次積層された流路形成体50、カバー板60及び押さえ板70と、流路形成体20とカバー板30との間に挿入されたシール膜110と、流路形成体50とカバー板60との間に挿入されたシール膜120と、カバー板60と押さえ板70との間に挿入されたシール膜130と、押さえ板40及び押さえ板70以外の上記各部材を貫通する位置決めピン140、140と、押さえ板40と押さえ板70を連結するボルト150…とを備えている。

【0017】
[半透膜]
半透膜10は、細胞が透過せず、その他の物質(例えば、薬液中の成分)を透過する孔径を有するものを用いる。
具体的な孔径は、被検体となる細胞の大きさにもよるが、0.1μm以下であることが好ましく、0.01μm以下であることがより好ましい。一方、孔径が小さすぎると、その他の成分の透過速度が不充分となるので、0.003μm以上であることが好ましく、0.004μm以上であることがより好ましい。
また、半透膜10の厚さは10~20μmであることが好ましい。半透膜10が厚すぎると、半透膜10の流路形成体20側で発生するルミネッセンス光をカバー板60側に透過しにくくなると共に、ルミネッセンス光を得るための励起光をカバー板60の外側から半透膜10の流路形成体20側に到達させることが困難となる。一方、半透膜10が薄すぎると、必要な強度維持が困難となる。

【0018】
半透膜10の材質としては、被検体となる細胞の培養に対して適合性を有するものであれば特に限定されず、一般に、透析膜、精密濾過等に用いられる半透膜として市販されているものを適宜使用できる。具体的には、再生セルロース、セルロースエステル、2フッ化ポリビニリデン等が挙げられる。特に、再生セルロースが好ましい。
半透膜10の流路形成体20側の表面は、細胞が接着しやすくなることから、疎水化処理されていることが好ましい。半透膜10の流路形成体50側の表面は、薬液の成分等が透過しやすいよう、親水性であることが好ましい。
半透膜10は略矩形状のシート状で、2つの角部近傍には、位置決め用穴19、19が形成されている。

【0019】
[流路形成体]
流路形成体20は、細胞含有液用の流路形成体である。流路形成体20には、図2、図3に示すように、半透膜10と外形上平面視合同である略矩形の平板状の基体に、7つの貫通孔21a…と、7つの貫通孔21b…とが、2列に並んで形成されている。これらの貫通孔は、細胞培養室形成用の貫通孔である。
また、貫通孔21a…の列と貫通孔21b…の列との略中間には、これらの列と平行に、略矩形状の溝22が形成されている。また、溝22と各貫通孔21a…とをつなぐ樋状の溝23a…、及び溝22と各貫通孔21b…とをつなぐ樋状の溝23b…が形成されている。
溝22は、導入用液溜部形成用溝であり、溝23a…、23b…は、個別導入路形成用溝である。図4に示すように、溝23a…、溝23b…は、溝22より浅く形成されている。

【0020】
また、貫通孔21a…の列の外側には、略二等辺三角形状の溝24が、底辺を貫通孔21a…の列と平行にして、形成されている。同様に、貫通孔21b…の列の外側には、略二等辺三角形状の溝25が、底辺を貫通孔21b…の列と平行にして、形成されている。また、溝24と各貫通孔21a…とをつなぐ樋状の溝26a…と、溝25と各貫通孔21b…とをつなぐ樋状の溝26b…が形成されている。溝24、25は、排出用液溜部形成用溝であり、溝26a…、26b…は、個別排出路形成用溝である。図4に示すように、溝26a…は溝24より浅く形成され、溝26b…は溝25より浅く形成されている。
これら流路形成体20における溝(細胞含有液流路形成用溝)は、何れも半透膜10と反対側になる面の表面から形成されている。

【0021】
また、図2、図4に示すように、略二等辺三角形状の溝24の頂点側における流路形成体20の側面から溝24の頂点側に貫通する横穴27aが設けられている。横穴27aは、溝24から外部に細胞含有液を導くための共通排出路である。なお、溝24の横穴27aと接続する連絡部24cは、底面が横穴27aと連続するように、他の部分より深く穿たれている。
同様に、略二等辺三角形状の溝25の頂点側における流路形成体20の側面から溝25の頂点側に貫通する横穴27bが設けられている。横穴27bは、溝25から外部に細胞含有液を導くための共通排出路である。なお、溝25の横穴27bと接続する連絡部27cは、底面が横穴27bと連続するように、他の部分より深く穿たれている。

【0022】
また、図2、図5に示すように、溝22の一端側における流路形成体20の側面から溝22の一端側に貫通する横穴27cが設けられている。この横穴27cは、溝22に外部から細胞含有液を導くための共通導入路である。なお、溝22の横穴27cと接続する連絡部22cは、底面が横穴27cと連続するように、他の部分より深く穿たれている。
これらの横穴27a、27b、27cは、何れも流路形成体20の側面表面付近において、内部に向かうにつれ縮径するテーパー状とされている。なお、テーパーの角度は、図面上では判別できない程度の僅かなもの(例えば2度前後)である。テーパー状としたので、これらの横穴には、先端部外径をテーパー状とした可撓性の送液チューブを、連結ソケット等を用いることなく直接挿入しやすくなっている。
流路形成体20にはさらに、溝25側の2つの角部近傍であって、半透膜10の位置決め用穴19、19と平面視同位置に、位置決め用穴19、19と同一内径である位置決め用穴29、29が形成されている。

【0023】
流路形成体50は、薬液用の流路形成体である。流路形成体50には、図6、図7に示すように、半透膜10と外形上平面視合同である略矩形の平板状の基体に、7つの貫通孔51a…と、7つの貫通孔51b…とが、2列に並んで形成されている。これらの貫通孔は、薬液室形成用の貫通孔である。7つの貫通孔51a…は、流路形成体20の7つの貫通孔21a…と、7つの貫通孔51b…は、流路形成体20の7つの貫通孔21b…と、各々平面視同位置に同一内径で設けられている。
また、貫通孔51b…の列の外側には、略二等辺三角形状の溝55が、底辺を貫通孔51b…の列と平行にして、形成されている。溝55は、排出用液溜部形成用溝である。また、溝55と各貫通孔51b…とをつなぐ樋状の溝56b…が形成されている。溝56b…は個別排出路形成用溝である。図8に示すように、溝56b…は、溝55より浅く形成されている。

【0024】
また、各貫通孔51a…と貫通孔51b…を各々連結する樋状の溝57b…が形成されている。溝57b…は、貫通孔51b…にとっては個別導入路形成用溝であり、貫通孔51a…にとっては個別排出路形成用溝である。
また、各貫通孔51a…の、溝57b…と反対側には、樋状の溝57a…が形成されている。溝57a…は、個別導入路形成用溝である。図8に示すように、溝57a…、57b…は、溝56b…と同等の深さで形成されている。
これら流路形成体50における溝(薬液流路形成用溝)は、何れも半透膜10と反対側になる面の表面から形成されている。
流路形成体50にはさらに、溝55側の2つの角部近傍であって、半透膜10の位置決め用穴19、19と平面視同位置に、位置決め用穴19、19と同一内径である位置決め用穴59、59が形成されている。

【0025】
流路形成体20、50の材質に特に限定はないが、使用する薬品の種類等が制限されないように、耐薬品性を有するものが好ましい。また、加熱殺菌が可能なように、耐熱性を有するものが好ましい。
流路形成体20、50に適切な材質としては、ステンレス鋼、耐熱性樹脂等が挙げられる。

【0026】
[カバー板]
カバー板30は、細胞含有液用カバー板である。カバー板30には、図1に示すように、半透膜10と外形上平面視合同である略矩形の平板状の基体に、半透膜10の位置決め用穴19、19と平面視同位置に、位置決め用穴19、19と同一内径である位置決め用穴39、39が形成されている。
カバー板30の材質に特に限定はないが、加熱殺菌が可能なように、耐熱性を有するものが好ましい。また、カバー板30側からも、細胞培養室内を目視等によって観察可能とするためには、透明であることが好ましい。
カバー板30に適切な材質としては、耐熱ガラス、石英ガラス等が挙げられる。

【0027】
カバー板60は、薬液用カバー板である。カバー板60には、図1に示すように、半透膜10と外形上平面視合同である略矩形の平板状の基体に、流路形成体50における7本の溝57a…の末端部(貫通孔51aと反対側)の各々と平面視重なる位置に、7つの貫通孔61…が形成されている。また、流路形成体50の溝55と、その頂点近傍において平面視重なる位置に、貫通孔62が形成されている。さらに、半透膜10の位置決め用穴19、19と平面視同位置に、位置決め用穴19、19と同一内径である位置決め用穴69、69が形成されている。
カバー板60の材質は、観察窓として使用されるため、観察すべきルミネッセンス光を透過可能なものであることが必要である。また、蛍光発光のように、ルミネッセンス光を得るための励起光を必要とする場合は、当該励起光も透過可能であることが必要である。また、加熱殺菌が可能なように、耐熱性を有するものが好ましい。
カバー板60に適切な材質としては、石英ガラスが挙げられる。

【0028】
[押さえ板]
押さえ板40は、図9、図10に示すように、抜き穴41を有する枠状体とされており、12個のボルト穴42…が設けられている。
押さえ板40の面積は半透膜10より大きく、抜き穴41の面積は半透膜10より小さく、押さえ板40と半透膜10とを重ねた際、半透膜10の外周が、抜き穴41の外側であって、ボルト穴42…よりも内側に位置するようになっている。

【0029】
押さえ板70は、図11、図12に示すように、抜き穴71を有する枠状体とされており、押さえ板40のボルト穴42…と平面視同位置に、12個のネジ穴72…が設けられている。
また、カバー板60の7つの貫通孔61…の各々と平面視同位置に、貫通孔61…と同一内径である7つの溝穴73…が形成されると共に、これら溝穴73…と各々連結する7つの横穴74…が、押さえ板70の側面から形成されている。
また、カバー板60の貫通孔62と平面視同位置に、貫通孔62と同一内径である溝穴75が形成されると共に、溝穴75と連結する横穴76が、押さえ板70の側面から形成されている。
これらの横穴74…、76は、何れも押さえ板70の側面表面付近において、内部に向かうにつれ縮径するテーパー状とされている。なお、テーパーの角度は、図面上では判別できない程度の僅かなもの(例えば2度前後)である。
テーパー状としたので、これらの横穴には、先端部外径をテーパー状とした可撓性の送液チューブを、連結ソケット等を用いることなく直接挿入しやすくなっている。連結ソケット等が不要であることから、横穴74…は、押さえ板70の側面に密集して形成することが可能となっている。そのため、デバイス1全体を小さく形成できるようになっている。

【0030】
押さえ板70の面積は半透膜10より大きく、抜き穴71の面積は半透膜10より小さく、押さえ板70と半透膜10とを重ねた際、半透膜10の外周が、溝穴73、75の外側であって、ボルト穴42…よりも内側に位置するようになっている。
また、押さえ板70と流路形成体50とを重ねた際、流路形成体50の総ての貫通孔51…a、51b…が、抜き穴71の内側となるようにされている。すなわち、押さえ板70が、流路形成体50の総ての貫通孔51…a、51b…と重ならないように、抜き穴71が形成されている。

【0031】
押さえ板40、70の材質に特に限定はないが、使用する薬品の種類等が制限されないように、耐薬品性を有するものが好ましい。また、加熱殺菌が可能なように、耐熱性を有するものが好ましい。
押さえ板40、70に適切な材質としては、ステンレス鋼、耐熱製樹脂等が挙げられる。

【0032】
[シール膜]
シール膜110は、流路形成体20とカバー板30との間に、液漏れ防止のために挿入される。図1に示すように、半透膜10と外形上平面視合同である略矩形の平板状のシートであり、半透膜10の位置決め用穴19、19と平面視同位置に、位置決め用穴19、19と同一内径である位置決め用穴119、119が形成されている。

【0033】
シール膜120は、流路形成体50とカバー板60との間に、液漏れ防止のために挿入されるもので、図1に示すように、半透膜10と外形上平面視合同である略矩形の平板状のシートに、7つの貫通孔121a…と、7つの貫通孔121b…とが、2列に並んで形成されている。7つの貫通孔121a…は、流路形成体50の7つの貫通孔51a…と、7つの貫通孔121b…は、流路形成体50の7つの貫通孔51b…と、各々平面視同位置に同一内径で設けられている。
また、カバー板60の7つの貫通孔61…の各々と平面視同位置に、貫通孔61…と同一の内径である7つの貫通孔122…が形成されていると共に、カバー板60の貫通孔62と平面視同位置に、貫通孔62と同一の内径である貫通孔123が形成されている。
また、半透膜10の位置決め用穴19、19と平面視同位置に、位置決め用穴19、19と同一内径で位置決め用穴129、129が形成されている。

【0034】
シール膜130は、カバー板60と押さえ板70との間に、液漏れ防止のために挿入されるもので、図1に示すように、半透膜10と外形上平面視合同である略矩形の平板状のシートに、抜き穴131を有する枠状体とされている。
また、カバー板60の7つの貫通孔61…の各々と平面視同位置に、貫通孔61…と同一内径である7つの貫通孔132…が形成されていると共に、カバー板60の貫通孔62と平面視同位置に、貫通孔62と同一内径である貫通孔133が形成されている。
また、半透膜10の位置決め用穴19、19と平面視同位置に、位置決め用穴19、19と同一内径である位置決め用穴139、139が形成されている。
抜き穴131は、抜き穴71と平面視同位置に、略合同の形状で形成されている。したがって、シール膜130と流路形成体50とを重ねた際、流路形成体50の総ての貫通孔51…a、51b…が、抜き穴71の内側となるようにされている。すなわち、シール膜130が、流路形成体50の総ての貫通孔51…a、51b…と重ならないように、抜き穴131が形成されている。

【0035】
シール膜110、120、130は、シール性のある弾性材料であれば特に限定はないが、使用する薬品の種類等が制限されないように、耐薬品性を有するものが好ましい。また、加熱殺菌が可能なように、耐熱性を有するものが好ましい。
シール膜110、120、130に適切な材質としては、シリコーンゴム、フッ素ゴム等が挙げられる。
なお、シール膜110の流路形成体20側の面は、細胞が付着しにくいように、親水処理されていることが好ましい。

【0036】
[ボルト、位置決めピン]
位置決めピン140、140は円柱状の形態で、その断面は、位置決め用穴19の内径とほぼ同等であり、その長さは、カバー板30からシール膜130までの部材を、密着して重ねた際の総厚と略同等ないし、若干短めとされている。
位置決めピン140、140は、各々カバー板30の位置決め用穴39、シール膜110の位置決め用穴119、流路形成体20の位置決め用穴29、半透膜10の位置決め用穴19、流路形成体50の位置決め用穴59、シール膜120の位置決め用穴129、カバー板60の位置決め用穴69、シール膜130の位置決め用穴139に順次挿入されるようになっている。
12本のボルト150…は、押さえ板40のボルト穴42…に挿入され、押さえ板70のネジ穴72…に螺合されることにより、押さえ板40と押さえ板70とを連結するようになっている。
押さえ板40と押さえ板70とは、予め、カバー板30からシール膜130までの部材を位置決めピン140、140で位置を揃えて重ねたものを挟んでから、ボルト150…によって連結される。
ボルト150…の締め付けによって、カバー板30からシール膜130までの部材が、互いに密着した状態で積層されるようになっている。

【0037】
[断面構造]
図13は、デバイス1の、流路形成体20の貫通孔21a(又は貫通孔21b)及び流路形成体50の貫通孔51a(又は貫通孔51b)近傍を、溝23a(又は溝21b)の長手方向中心に沿って切断した断面図である。
図13に示すように、貫通孔21a(又は貫通孔21b)及び貫通孔51a(又は貫通孔51b)は、半透膜10を挟んで平面視同位置に配置されている。

【0038】
貫通孔21a、半透膜10及びシール膜110で囲まれる領域(間接的に貫通孔21a、半透膜10及びカバー板30で囲まれる領域)は、細胞培養室CSとされている。また、貫通孔51aと貫通孔121a、半透膜10及びカバー板60で囲まれる領域(貫通孔51a、半透膜10及びカバー板60で囲まれる領域)は、薬液室RSとされている。
また、溝23a及びシール膜110で囲まれる領域(間接的に溝23a及びカバー板30で囲まれる領域)は、細胞含有液導入路CI(細胞含有液流路の内、細胞含有液Cがデバイス1の入口から細胞培養室CSに至るまでの流路)の一部である個別導入路とされている。また、溝57a及びシール膜120で囲まれる領域(間接的に溝57a及びカバー板60で囲まれる領域)は、薬液導入路RI(薬液流路の内、薬液Rがデバイス1の入口から薬液室RSに至るまでの流路)の一部である個別導入路とされている。
また、溝26a及びシール膜110で囲まれる領域(間接的に溝26a及びカバー板30で囲まれる領域)は、細胞含有液排出路CE(細胞含有液流路の内、細胞含有液Cが細胞培養室CSからデバイス1の出口に至るまでの流路)の一部である個別排出路とされている。また、溝57b及びシール膜120で囲まれる領域(間接的に溝57b及びカバー板60で囲まれる領域)は、薬液排出路RE(薬液流路の内、薬液Rが薬液室RSからデバイス1の出口に至るまでの流路)の一部である個別排出路とされている。

【0039】
同様に、貫通孔21b、半透膜10及びシール膜110で囲まれる領域(間接的に貫通孔21b、半透膜10及びカバー板30で囲まれる領域)は、細胞培養室CSとされている。また、貫通孔51bと貫通孔121b、半透膜10及びカバー板60で囲まれる領域(貫通孔51b、半透膜10及びカバー板60で囲まれる領域)は、薬液室RSとされている。
また、溝23b及びシール膜110で囲まれる領域(間接的に溝23b及びカバー板30で囲まれる領域)は、細胞含有液導入路CIの一部である個別導入路とされている。また、溝57b及びシール膜120で囲まれる領域(間接的に溝57b及びカバー板60で囲まれる領域)は、薬液導入路RIの一部である個別導入路とされている。
また、溝26b及びシール膜110で囲まれる領域(間接的に溝26b及びカバー板30で囲まれる領域)は、細胞含有液排出路CEの一部である個別排出路とされている。また、溝56b及びシール膜120で囲まれる領域(間接的に溝56b及びカバー板60で囲まれる領域)は、薬液排出路REの一部である個別排出路とされている。

【0040】
また、カバー板60の薬液室RSに面する部分は観察窓Wとされている。シール膜120には、観察窓Wの内側部分に貫通孔121a(121b)が設けられているので、観察窓Wは直接薬液室RS内の薬液に接するようになっている。
また、シール膜130には抜き穴131が、押さえ板70には抜き穴71が、何れも観察窓Wを覆う範囲で形成されている。したがって、観察窓Wは、デバイス1の表面に露出している。

【0041】
なお、溝22とシール膜110で囲まれる領域は、細胞含有液導入路CIの一部である導入用液溜部を、溝24とシール膜110で囲まれる領域、及び溝25とシール膜110で囲まれる領域は、各々細胞含有液排出路CEの一部である排出用液溜部を形成している。
このように、導入用液溜部と排出用液溜部とを備えているので、各細胞培養室CSへの細胞含有液Cの導入圧力及び背圧を揃えやすくなっている。
また、溝55とシール膜120で囲まれる領域は、薬液排出路REの一部である排出用液溜部を形成している。このように、排出用液溜部を備えているので、各薬液室RSに対する背圧を揃えやすく、ひいては、細胞培養室CSへの薬液浸透の条件を均一化できる。

【0042】
[細胞含有液流路]
細胞を含有する細胞含有液Cは、デバイス1内に形成された細胞含有液流路を流れ、細胞培養室CSに導入された後排出される。
細胞含有液Cがデバイス1の入口から細胞培養室CSに至るまでの細胞含有液流路(細胞含有液導入路CI)を、図1、図2、図13を参照しつつ説明する。
まず、デバイス1の入口となるのは、流路形成体20の側面に設けられた横穴27cである。この横穴27cに挿入された送液チューブから、細胞含有液Cがデバイス1内に導入される。
横穴27cに導入された細胞含有液Cは、溝22の連絡部22cから溝22とシール膜110によって囲まれた導入用液溜部に導入される。次いで、溝23a(23b)とシール膜110によって囲まれた各個別導入路に分配され、貫通孔21a(21b)、半透膜10及びシール膜110で囲まれた細胞培養室CSに至る。

【0043】
次に、細胞含有液Cが細胞培養室CSからデバイス1の出口に至るまでの細胞含有液流路(細胞含有液排出路CE)を、図1、図2、図13を参照しつつ説明する。
まず、細胞培養室CSから流出した細胞含有液Cは、溝26a(26b)とシール膜110によって囲まれた各個別排出路を経由して、溝24(25)とシール膜110によって囲まれた排出用液溜部に合流される。次いで、連絡部24c(25c)から、デバイス1の出口となる横穴27a(27b)に導かれる。そして、横穴27a(27b)に挿入された送液チューブによって排出される。

【0044】
[薬液流路]
細胞を実質的に含有しない薬液Rは、デバイス1内に形成された薬液流路を流れ、薬液室RSに導入された後排出される。
薬液Rがデバイス1の入口から薬液室RSに至るまでの薬液流路(薬液導入路RI)を、図1、図6、図13を参照しつつ説明する。
まず、デバイス1の入口となるのは、押さえ板70の側面に設けられた7つの横穴74…である。この横穴74…に各々挿入された送液チューブから、薬液Rがデバイス1内に導入される。
横穴74に導入された薬液Rは、溝穴73から、シール膜130の貫通孔132、カバー板60の貫通孔61、シール膜120の貫通孔122を順次通過して、流路形成体50の溝57aとシール膜120で囲まれた個別導入路に導入され、貫通孔51a、半透膜10及びカバー板60で囲まれた第1の薬液室RSに至る。
次いで、溝57bとシール膜120によって囲まれた各流路を経由して、貫通孔51b、半透膜10及びカバー板60で囲まれた第2の薬液室RSに至る。

【0045】
次に、薬液Rが第2の薬液室RSからデバイス1の出口に至るまでの薬液流路(薬液排出路RE)を、図1、図6、図13を参照しつつ説明する。
まず、前記第2の薬液室RSから流出した薬液Rは、溝56bとシール膜120によって囲まれた各個別排出路を経由して、溝55とシール膜120によって囲まれた排出用液溜部に合流される。次いで、シール膜120の貫通孔123、カバー板60の貫通孔62、シール膜130の貫通孔133を通過して、溝穴75から、デバイス1の出口となる横穴76に導かれる。そして、横穴76に挿入された送液チューブによって排出される。

【0046】
[細胞含有液]
細胞含有液Cは、バイオフィルムを形成可能な微生物の細胞を含有する液である。
細胞には、ルミネッセンス光を発生するような蛋白質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)を予め組み入れておくことができる。
細胞含有液Cに含まれるその他の成分としては、細胞の栄養分となる成分の他、細胞の分化の誘導や形態形成に関係する成分等が挙げられる。
なお、細胞の栄養分となる成分は、細胞含有液に加えず、薬液に加えてもよい。

【0047】
[薬液]
薬液Rは、前記細胞を含有しない液である。「細胞を含有しない」とは、細胞培養室CSで細胞を培養する際に、薬液室RS内で、実質的に細胞が増殖しない程度に、含有される細胞が全く存在しないか、存在しても僅かであることを意味する。例えば、実験中に不可避的に混入してしまう程度の細胞が存在することは許容される。
薬液Rには、細胞との相互作用を評価すべき薬剤、例えば、細胞の増殖や活動を促進又は阻害すると考えられる成分等を含有させることができる。また、細胞の栄養分となる成分や細胞の分化の誘導や形態形成に関係する成分等を含有させることができる。

【0048】
[細胞観察方法]
図13に示すように、細胞培養室CSと薬液室RSとは、半透膜10を挟んで対向している。その結果、薬液Rは、薬液室RSから半透膜10を透過して細胞培養室CS中の細胞に作用することができる。
細胞は、半透膜10を透過した薬液Rの存在下、半透膜10の細胞培養室CS側で増殖したり、代謝物等の生成物を生成したりする。細胞はバイオフィルムFを形成するような微生物細胞であるので、半透膜10の細胞培養室CS側にバイオフィルムFを形成する。

【0049】
本発明では、薬液Rの存在下における細胞やその生成物に基づくルミネッセンス光を観察窓Wから観察する。また、蛍光発光のように励起光を要する場合は、観察窓Wから励起光を照射する。ルミネッセンス光としては、蛍光発光、化学発光等が挙げられ、蛍光発光が特に好ましい。
ルミネッセンス光を得るための手段としては、細胞にルミネッセンス光を発生するような蛋白質、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)を予め組み入れておく手段や、特定の細胞や細胞部位に結合して蛍光を発する蛍光染色色素を用いる手段等が挙げられる。

【0050】
本発明では、薬液Rが実質的に細胞を含まないため、薬液室RS内で細胞が増殖したり、バイオフィルムFが形成されたりすることがない。そのため、観察窓Wから半透膜10の細胞培養室CS側までの間に、細胞培養室CSで発生するルミネッセンス光や励起光の透過を阻害するような汚れが発生しない。
そのため、励起光としてのレーザー光を観察したい部分に的確に照射することかが可能である。また、レーザー光以外の励起光を照射した場合にも、ルミネッセンス光検出の焦点を確実に調整できる。したがって、鮮明にルミネッセンス光を捉えることができる。
本発明によれば、例えば、バイオフィルムFを、厚み方向に観察面をずらしながら観察することも可能である。

【0051】
細胞培養室CSへは、細胞含有液Cを連続流として導入してもよいし、導入後流れを止めてもよい。また、導入後一定時間流れを止め、その後連続流としてもよい。同様に、薬液室RSへは、薬液Rを連続流として導入してもよいし、導入後流れを止めてもよい。また、導入後一定時間流れを止め、その後連続流としてもよい。さらに、細胞含有液Cの導入後一定時間経過後に、薬液Rの薬液室RSへの導入を開始してもよい。
なお、デバイス1では、横穴27c又は横穴74に挿入した送液チューブをピンチで挟むこと等により、細胞含有液C又は薬液Rの流れを止めることができる。
例えば、細胞含有液Cを導入後流れを止めると、半透膜10への細胞の定着を促進しやすい。また、バイオフィルムの成長段階における薬液の影響を観察したい場合は、薬液Rを初めから導入すればよいし、成長したバイオフィルムに対する薬液の影響を観察したい場合は、一定時間経過後に薬液Rの導入を開始すればよい。また、細胞含有液Cの流れを止めても、薬液Rとして培養液(栄養成分を含有する液)を流せば栄養成分の補給が可能である。

【0052】
デバイス1では、7つの入口(横穴74)から薬液Rを同時に各々の薬液室に導入することができるため、多数の薬液が、各々細胞に与える作用を効率的に調査することができる。なお、7つの入口から導入する薬液Rは、2以上が互いに同一種であっても差し支えない。例えば同種の薬液Rを異なるタイミングで、薬液室RSに導入してもよい。
また、細胞培養室CSは、貫通孔21a側と貫通孔21b側の2カ所で同一の薬液Rが導入される薬液室RSと面している。そのため、同一条件(細胞含有液Cが同一、かつ薬液Rが同一)の観察データを2カ所で得ることができる。

【0053】
デバイス1は、全体が液密に構成されているので、上下を逆転させることも可能である。そのため、ルミネッセンス光の観察には、正立顕微鏡、倒立顕微鏡の双方が使用可能である。
また、デバイス1は、複数の部材の積層体で構成されているので、観察終了後は、分解洗浄し、再度組み立ててから加熱殺菌することにより繰り返しの利用が可能である。

【0054】
[その他の実施形態]
本実施形態のデバイス1では、横穴27cを細胞含有液Cの入口とし、横穴27a、27bを出口としたが、入口と出口とは、逆にしてもよい。その場合、2種類の細胞含有液を用いた観察を、同時に行うことができる。
また、デバイス1内の流路を適宜変更することにより、同時に導入できる細胞含有液Cや薬液Rの数は、適宜変更できる。
また、デバイス1では、押さえ板70に薬液の入口を設けたが、流路形成体50の側面から溝57aに連絡する横穴を形成し、薬液の入口としてもよい
また、デバイス1では、原則として導入路と排出路とを別にしたが、導入路を排出路と兼用にして使用してもよい。その場合、導入時と排出時に液の流れ方向を逆転させればよい。
また、デバイス1では、横穴27a、27b、27cや横穴74…、76をテーパー状としたが、これらの横穴は直管状でもよい。直管状であっても、先端部外径をテーパー状とした可撓性の送液チューブを強く押し込むことにより、送液チューブが抜けたり、液漏れが生じたりすることを防止できる。
また、デバイス1は、複数の部材の積層体で構成したが、繰り返し利用を考慮しなければ、各部材を接着等により一体化していてもよい。例えば、流路形成体とカバー板とは、シール膜を介さずに直接接着してもよい。
また、デバイス1では、流路形成体20と押さえ板70の側面から横穴を形成したが、横穴とすべき位置に溝を有する2枚の板を作り、これらを貼り合わせて横穴としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、微生物等の細胞の増殖や活動に与える薬液の影響を観察するのに好適である。特に、医学、薬学、食品分野で、病気、汚染にかかわる微生物バイオフィルムの形成メカニズムの解析や、形成を阻害する薬剤のスクリーニングに有効である。
【符号の説明】
【0056】
10…半透膜、20…流路形成体、30…カバー板、40…押さえ板、50…流路形成体、60…カバー板、70…押さえ板、110…シール膜、120…シール膜、130…シール膜、CS…細胞培養室、CI…細胞含有液導入路、CE…細胞含有液排出路、RS…薬液室、RI…薬液導入路、RE…薬液排出路、W…観察窓
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6
【図8】
7
【図9】
8
【図10】
9
【図11】
10
【図12】
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【図13】
12