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明細書 :無花粉型トールフェスク及び有用形質を持つ無花粉型トールフェスクの作出方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3831783号 (P3831783)
公開番号 特開2001-211773 (P2001-211773A)
登録日 平成18年7月28日(2006.7.28)
発行日 平成18年10月11日(2006.10.11)
公開日 平成13年8月7日(2001.8.7)
発明の名称または考案の名称 無花粉型トールフェスク及び有用形質を持つ無花粉型トールフェスクの作出方法
国際特許分類 A01H   5/00        (2006.01)
A01H   1/00        (2006.01)
FI A01H 5/00 Z
A01H 1/00
請求項の数または発明の数 2
全頁数 5
出願番号 特願2000-025166 (P2000-025166)
出願日 平成12年2月2日(2000.2.2)
審判番号 不服 2002-018370(P2002-018370/J1)
審査請求日 平成12年2月3日(2000.2.3)
審判請求日 平成14年9月20日(2002.9.20)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】小松 敏憲
【氏名】藤森 雅博
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100096183、【弁理士】、【氏名又は名称】石井 貞次
参考文献・文献 イタリアンライグラスとトールフェスクの雑種における細胞質の影響,日本草地学会誌,1988,Vol.44,別号,p.128-129
調査した分野 A01H1/00
A01H5/00
特許請求の範囲 【請求項1】
イタリアンライグラスVII型細胞質を有することを特徴とする無花粉型トールフェスク。
【請求項2】
イタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスクを有用形質を有するトールフェスク系統と交配し、得られるF1雑種(種子親)を前記有用形質を有するトールフェスク系統(花粉親)との戻し交雑を繰り返すことにより、イタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスクに前記有用形質を有するトールフェスク系統の核型を導入することを特徴とする有用形質を持つ無花粉型トールフェスクの作出方法。
発明の詳細な説明 【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、無花粉型トールフェスク及び有用形質を持つ無花粉型トールフェスクの作出方法に関する。本発明の無花粉型トールフェスクは、無花粉化率が極めて高く、また、得られる植物体の草勢及び種子収量も正常なトールフェスクに比べ遜色のないものであるため、牧草及び芝草として非常に有用である。
【0002】
【従来の技術】
トールフェスクは、環境適応性に優れるため牧草としてだけでなく、高速道路の法面緑化のために全国で栽培されている。しかし、この植物は、風媒花であるため春先に大量の花粉を飛散させるので、花粉症のアレルゲンとして問題となっている。このような問題は、花粉を生産しないトールフェスクを作出できれば解決できる。
【0003】
無花粉型の植物は、種属間交雑を行うことにより得られることがよく知られている。従って、トールフェスクに近縁の異種植物を戻し交雑すれば、容易に無花粉型のトールフェスクを得ることができる。しかし、このようにして得られる無花粉型トールフェスクは、染色体や遺伝的異常に起因するものであるため、草勢及び種子収量が正常なトールフェスクに比べ著しく劣るため種子の大量増殖が困難である。一方、種属間交雑の後、種子稔性を向上させるための育種操作により作出された植物は、無花粉化率があまり高くなく、生じる個体の中には相当数の花粉生産型個体が含まれてしまう。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように既存の無花粉型トールフェスクは、様々な問題を有していた。本発明は、新規な特性を有するトールフェスクを作出し、このような問題を解決することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、イタリアンライグラスの特定の細胞質を導入したトールフェスクが、無花粉化率が極めて高く、また得られる植物の草勢及び種子収量も正常なトールフェスクに比べ全く遜色のないものであることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、イタリアンライグラスVII型細胞質を有することを特徴とする無花粉型トールフェスクである。
【0006】
また、本発明は、イタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスクを有用形質を有するトールフェスク系統と交配し、得られるF1雑種(種子親)を前記有用形質を有するトールフェスク系統(花粉親)との戻し交雑を繰り返すことにより、イタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスクに前記有用形質を有するトールフェスク系統の核型を導入することを特徴とする有用形質を持つ無花粉型トールフェスクの作出方法である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の無花粉型トールフェスクは、イタリアンライグラスのVII型細胞質を有することを特徴とするものである。このVII型細胞質とは、本発明者らによって分類されたイタリアンライグラスの13種類の細胞質型の一つである(藤森雅博、小松敏憲、秋山典昭、片岡博行、奥村健治 (1989) イタリアンライグラスとトールフェスクの雑種における細胞質の影響、日本草地学会誌(別44)p128-129)。VII型細胞質のミトコンドリアDNAは、図1に示すような制限酵素断片長多型(RFLP)を示す。図1中のレーン3及び4がVII型細胞質を有するトールフェスクである。なお、レーン1及び8のイタリアンライグラスは、雄性不稔性を示すが、VII型細胞質を持つものではない。
【0008】
イタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスクは、出願人が所持しており、特許法施行規則第27条の3の規定に準ずる分譲は出願人が保証する。
このイタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスクを利用して以下のようにして有用形質を持つ無花粉型トールフェスクを作出することができる。
【0009】
イタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスク(種子親)を有用形質を有するトールフェスク系統(花粉親)と交配し、F1雑種を得る。このF1雑種を種子親として前記有用形質を有するトールフェスク系統を花粉親として戻し交雑を繰り返す。このような戻し交雑により、イタリアンライグラスVII型細胞質を有するトールフェスクに前記有用形質を有するトールフェスク系統の核型を導入することができる。有用形質を有するトールフェスクは、どのようなものでもよく、市販の品種を使用してもよい。
【0010】
【実施例】
[実施例1]
トールフェスク品種「Aronde」にイタリアンライグラス品種「ワセアオバ」を交配し、F1雑種を得た。この雑種に「Aronde」を戻し交雑した。得られたBC1個体を放任受粉(トールフェスクの花粉がかかったと推測される)し、得られた雑種に、トールフェスク品種「Manade」を交配した。その後、トールフェスクの放任受粉で戻し交雑を繰り返し、BC5個体を得た。
【0011】
[実施例2]
F1個体からBC5個体までの染色体数、葯の裂開の有無、種子稔性を調べた。この結果を表1に示す。
【0012】
【表1】
JP0003831783B2_000002t.gif【0013】
表1に示すように、BC5世代においては1株当たり最大23gもの種子を得ることができた。染色体の異常により無花粉化した植物ではこのような高い種子稔性を示さないことから、この植物の無花粉化は細胞質雄性不稔に起因するものと推定される。
【0014】
細胞質雄性不稔の場合、核遺伝子の作用により必ずしもすべての個体が雄性不稔になるわけではない。しかし、この植物は、調査した93個体のすべての個体が無花粉化(葯の裂開なし)しており、極めて特異な細胞質雄性不稔植物であると考えられる。
【0015】
【発明の効果】
本発明は、新規な無花粉型トールフェスクを提供する。このトールフェスクは、無花粉化率が極めて高く、また、得られる植物体の草勢及び種子収量も正常な植物体に比べ全く遜色のないものなので、牧草や芝草として非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】ミトコンドリアプローブatpAを用いたサザンブロットの結果を示す図である。
図面
【図1】
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