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明細書 :イネ由来高発現型ポリペプチド鎖延長因子プロモーターおよびその使用方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3867140号 (P3867140)
登録日 平成18年10月20日(2006.10.20)
発行日 平成19年1月10日(2007.1.10)
発明の名称または考案の名称 イネ由来高発現型ポリペプチド鎖延長因子プロモーターおよびその使用方法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
C12N 5/00 C
請求項の数または発明の数 13
全頁数 19
出願番号 特願2002-576689 (P2002-576689)
出願日 平成13年3月27日(2001.3.27)
国際出願番号 PCT/JP2001/002511
国際公開番号 WO2002/077247
国際公開日 平成14年10月3日(2002.10.3)
審査請求日 平成15年6月13日(2003.6.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】田中 宥司
【氏名】番 保徳
【氏名】萱野 暁明
【氏名】松岡 信
【氏名】坂本 知昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
【識別番号】100062409、【弁理士】、【氏名又は名称】安村 高明
【識別番号】100113413、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 夏樹
審査官 【審査官】田村 明照
参考文献・文献 FEBS Letters, Vol.338, pp.103-106 (1994)
Biochimica et Biophysica Acta, Vol.1442, pp.369-372 (1998)
調査した分野 C12N 15/00
BIOSIS/WPI(DIALOG)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
特許請求の範囲 【請求項1】
植物において異種遺伝子を強力に発現させるためのプロモーター活性を有するDNAであって:
i)配列番号1で示される配列、またはその一部を有する配列であって、配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する、DNA、あるいは
ii)該配列番号1で示される配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAであって、GUS遺伝子のプロモーターとして使用した場合のGUS活性が、配列番号1で示される配列をGUS遺伝子のプロモーターとして使用した場合のGUS活性の50%以上である、DNA。
【請求項2】
前記プロモーターが、前記異種遺伝子の発現を、植物の生長分裂組織において特異的に促進する、請求項1に記載のDNA。
【請求項3】
請求項1に記載のDNA、および該DNAと発現可能に接続された異種遺伝子を含む、発現ベクター。
【請求項4】
請求項3に記載の発現ベクターにより形質転換された植物細胞。
【請求項5】
前記植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項4に記載の植物細胞。
【請求項6】
前記植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項4に記載の植物細胞。
【請求項7】
請求項4に記載の植物細胞により再生された植物体。
【請求項8】
請求項7に記載の植物体の子孫。
【請求項9】
請求項7に記載の植物体の伝播体。
【請求項10】
請求項8に記載の子孫により得られる種子。
【請求項11】
植物における発現が所望される異種遺伝子を植物に導入する方法であって:
請求項3に記載の発現ベクターで植物細胞を形質転換する工程;および
該形質転換された植物細胞を再分化させて、植物体を得る工程、
を包含する、方法。
【請求項12】
前記植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項11に記載の方法。
発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、植物遺伝子のプロモーターを用いる、有用植物の育種に関する。さらに詳しくは、イネのポリペプチド鎖延長因子β1(以下、OsEF1β1という)遺伝子のプロモーターを用いる有用植物の育種に関する。
背景技術
近年、植物に所望の性質を与えるために、目的とする遺伝子を植物に導入して、発現させることが一般的となってきている。しかし、このような発現は、植物の生長および発達の段階で変動し、例えば、幼植物の時期には発現されていたが、より生長および発達段階が進むにつれて発現が弱まることがある。従って、植物の生長および発達段階に関わらず、導入された遺伝子を安定に発現し得るプロモーターの需要が求められている。
ポリペプチド鎖延長因子は、リボソームにおけるアミノ酸の重合反応に関わる因子であり、タンパク質合成を行っている細胞において発現する。Arabidopsis thalianaにおいてポリペプチド鎖延長因子1β(eEF-1β)のプロモーター領域および5’末端領域と、β-グルクロニダーゼ(GUS)遺伝子とを融合するキメラ遺伝子が構築され、これを使用してトランスジェニック植物におけるこの遺伝子の発現が調べられた(Gene、170、(1996)201-206)。この遺伝子の第1イントロンが高レベルの発現に必要とされることが、見出された。この実験は、Arabidopsis thalianaのeEF-1βの第1イントロンにエンハンサー様エレメントが存在し得ることを示した。
イネのポリペプチド鎖延長因子に関する研究は、FEBS Letters 311(1992)46-48、FEBS Letters 338(1994)103-106、およびBiochemica et Biophysica Acta 1442(1998)369-372において報告されている。FEBS Letters 311(1992)46-48は、イネポリペプチド鎖延長因子1β’(EF-1β’)をコードするcDNAのクローニングおよび単離を、FEBS Letters 338(1994)103-106は、イネポリペプチド鎖延長因子1β(EF-1β)をコードするcDNAのクローニングおよび単離を、そしてBiochemica et Biophysica Acta 1442(1998)369-372は、イネポリペプチド鎖延長因子1β(EF-1β)が形成する多重遺伝子族の新規な遺伝子としてEF-1β2の単離および特徴づけを報告している。しかし、いずれの文献も、ポリペプチド延長因子ファミリーの他のメンバーとの配列比較を行ったのみで、プロモーター活性について全く言及していない。
従って、イネの遺伝子から、植物の生長および発達段階に関わらず恒常的な、そして活性が高い、実用的にも使用され得る発現のためのプロモーターが取得できれば、イネ等の作物を含む有用植物の品種改良に大いに貢献できる。
発明の開示
本発明は、遺伝子工学的手法による植物の育種に関し、その目的は、書物組織の発現を強力に促進する植物遺伝子プロモーター、およびそれを含有する発現ベクター、ならびにその利用方法を提供することにある。
本発明者らは、イネのポリペプチド鎖延長因子遺伝子(OsEF1β1)が、恒常的に、非常に高いプロモーター活性を示すことを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成したものである。
本発明は、植物組織において異種遺伝子を強力に発現させるためのプロモーター活性を有するDNAを提供する。このDNAは、配列番号1(図2A~C)で示される配列、またはその一部を有する配列であって、配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する、DNAである。ここで、配列番号1で示される配列は、イネOsEF1β1構造遺伝子の5’上流域、第1エキソン、第1イントロン、および第2エキソンの一部を含む配列である。本発明の1つの実施態様において、本発明のプロモーターは、生長分裂組織において異種遺伝子の発現を特異的に促進し得る。本発明の1つの実施態様において、このDNAは、ストリンジェントな条件下で、配列番号1に記載の配列またはその一部を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズする。
本発明はまた、植物組織において異種遺伝子を強力に発現させるための発現ベクターを提供する。この発現ベクターは、配列番号1で示される配列、またはその一部を有する配列であって配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する、イネOsEF1β1遺伝子プロモーターを含み、さらに、このプロモーターと発現可能に接続された異種遺伝子を含む。本発明はさらに、上記発現ベクターで形質転換された植物細胞(単子葉植物細胞または双子葉植物細胞であり得る)、この植物細胞により再生された植物体、この植物体の子孫および伝播体、およびこの子孫により得られる種子も提供する。
本発明はさらに、植物組織における発現が所望される異種遺伝子を植物に導入する方法を提供する。この方法は、上記の発現ベクターで植物細胞を形質転換する工程;およびこの形質転換された植物細胞を再分化させて、植物体を得る工程を包含する。上記方法において、植物細胞は、単子葉植物細胞または双子葉植物細胞のいずれかであり得る。
発明を実施するための最良の形態
本発明について、以下に、より詳細に説明する。
(イネOsEF1β1遺伝子プロモーターの単離)
イネOsEF1β1遺伝子プロモーターは、イネのゲノミックライブラリーからスクリーニングされ得る。米国クローンテック社(CLONTECH Laboratories Inc.,Palo Alto,CA)が市販しているイネのゲノミックDNAライブラリー(Rice Genomic Library)が用いられ得る。
スクリーニング用のプローブとしては、本発明者らが単離したイネOsEF1β1 cDNAが用いられ得る。
まず、ファージλを用いて作成されたイネゲノミック遺伝子ライブラリーを大腸菌に感染させてプラークを形成させる。このプラークを常法に従って、ニトロセルロース等のメンブレンに移し、標識したスクリーニング用プローブでハイブリダイズさせる。ハイブリダイズ終了後、洗浄し、オートラジオグラフィーにかけ、ハイブリダイズすることが確認されたファージからDNAを調製する。
調製したファージDNAを、適当な制限酵素を組み合わせて消化し、その消化物をアガロースゲル電気泳動で分離する。分離したDNA断片をナイロンメンブレンに移して、上記のスクリーニング用プローブをハイブリダイズさせ、シグナルの強さとバンドパターンの相違に基づいて、スクリーニングする。
最もシグナルの強いクローンはOsEF1β1遺伝子を含み、弱いシグナルのクローンはOsEF1β1に類似しているがOsEF1β1ではない遺伝子を含んでいると考えられる。また、バンドパターンの比較により、遺伝子の一部を欠損したクローンを識別できる。さらに、バンドパターンに基づく各クローンの物理地図を作製することにより、プロモーターを構成すると推定される、構造遺伝子の5’上流域の長さが約1.6Kbp程度あるクローンを特定できる。
以上の様にして、完全なOsEF1β1ゲノミック遺伝子が、単離され得る。
OsEF1β1ゲノミック遺伝子の塩基配列をOsEF1β1 cDNAの塩基配列と比較することにより、プロモーター領域が特定され得る。プロモーター配列としては、ゲノミック遺伝子がイントロンを有する場合は、構造遺伝子の5’上流域だけではなく、第1イントロン等の領域をも含み得る。本プロモーター配列は、好ましくは、配列番号1に示される配列である(図2A~Cもまた参照のこと;配列番号1および図2に示される配列において、「n」は、アデニン(A)、チミン(T)、グアニン(G)およびシチジン(C)のいずれかを表す)。配列番号に示される配列は、イネOsEF1β1構造遺伝子の5’上流域、第1エキソン、第1イントロン、および第2エキソンを含む。
(GUS活性の測定によるプロモーター活性部分の特定)
OsEF1β1遺伝子のプロモーター領域が特定されると、その配列を切り出して、植物発現用ベクターにつなぎ込み得る。つなぎ込まれたプロモーターの活性を評価するために、そのプロモーターの下流にレポーター遺伝子、例えば、適当な酵素をコードする遺伝子を連結したプラスミドを作成し得る。このプラスミドを植物細胞中に導入し、遺伝子の発現を、例えば、酵素活性を測定して、観察する。植物を宿主とする場合には、例えば、pBI101等のようなプラスミドを用いて、β-グルクロニダーゼ(GUS)の発現を指標として測定するのが一般的であり、本願明細書においても、GUSの発現で測定する方法が適用され得る。
GUS活性は、例えば、植物細胞工学、第4巻、第4号、281~286頁(1992)、同第5巻、第5号、407~413頁(1992)、Plant Mole.Biol.Reporter 5(4)387-405(1987)に記載の手順を用いて測定され得るが、測定方法はこれに限定されない。簡単には、植物体の各組織または切片を、1mM 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、7%(v/v)メタノール、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含有する組織化学基質溶液中に浸漬し、そして反応が進行するのに適当な温度および時間(例えば、CaMVプロモーターなどとGUSの融合遺伝子を導入した場合、37℃で30分~4時間)、インキュベートする。褐変およびGUS不活性化を防止するために、ジチオトレイトール(DTT)などの還元剤が添加され得る。例えば、2mM DTTが、切りとってすぐ;(切片を作製する場合)寒天包埋の段階;切削の過程;または切片の減圧脱気時に添加され得る。また5mMの濃度のDTTが、37℃におけるGUS反応時に添加され得る。次いで、エタノールを添加して反応を停止させ、脱色させ、そして組織または切片を顕微鏡または実体顕微鏡下で観察する。
OsEF1β1遺伝子のプロモーター領域の様々な欠失体、例えば、5’上流側から様々な長さに欠損させたOsEF1β1遺伝子のプロモーター領域をGUS遺伝子と融合させたプラスミドを用いてプロモーター活性を測定し、その活性に必須な部分等を特定し得る。このような活性部分の特定のための手法は、当業者には公知である。従って、例えば、OsEF1β1遺伝子のプロモーター領域に不要な配列を除去して得られる、OsEF1β1遺伝子のプロモーターと同等の活性を有する配列も本発明の範囲内にある。
いったんOsEF1β1遺伝子のプロモーター領域およびその活性部分が特定されると、さらにその配列を改変して、プロモーター活性を高めたり、発現する組織について特異性を変更させることも可能である。例えば、OsEF1β1遺伝子のプロモーター領域またはその活性部分を一部改変して得られる、改変前と同等の活性を有する配列も本発明の範囲内にある。
配列番号1(図2A~C)の配列を有するプロモーター領域は、植物組織において強力にその活性を発現する。従って、本願明細書において、プロモーター活性について「強力」であるとは、活性の強度が、少なくとも、従来のプロモーター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーター、ノパリン合成酵素のプロモーターなど)に比較して、同等倍以上、好ましくは、2倍以上、より好ましくは、5倍以上、さらにより好ましくは、10倍以上の強度であることをいう。このような強度は、GUS活性測定方法によって測定され得る。
本発明のプロモーターは、異種遺伝子の発現を、植物の生長分裂組織において特異的に促進し得る。本願明細書において、生長分裂組織において異種遺伝子の発現を「特異的に」促進するとは、目的とする遺伝子の発現を、生長分裂組織において、同じ植物体の他の組織または器官の少なくとも1種におけるよりも高く促進することをいう。「生長分裂組織」とは、細胞分裂が盛んであり、そしてタンパク質合成が高い任意の組織をいう。本発明のプロモーターにより、異種遺伝子は、例えば、茎頂、根端などの生長点組織において、強く発現する。通常、植物の最上部の分裂組織は、ある期間まで茎または葉を形成し、茎が伸び葉が展開する。最下部の分裂組織は、その一生で根を形成するのみである。本発明のプロモーターによる異種遺伝子の発現は、特に分裂組織において促進され得る。このような発現の特異性は、本願明細書の下記実施例と同様の条件で形質転換植物を作製することにより評価し得る。
本発明の植物プロモーターはまた、植物の生長および発達段階に関わらず恒常的に、異種遺伝子を発現させる。すなわち、植物の栄養生長期の全体にわたって、異種遺伝子を発現させる。このような発現の恒常性もまた、本願明細書の下記実施例と同様の条件で形質転換植物を作製することにより評価し得る。
なお、本願明細書において、プロモーター活性について「同等」であるとは、活性の強度が、少なくとも、基準となるプロモーター領域の活性の強度と同程度であると共に、活性の特異性も、少なくとも、基準となるプロモーター領域の活性の特異性と同程度であることをいう。用語「同等」は、活性の強度および活性の特異性が、基準となるプロモーター領域と比較して、明らかに高い場合を除外する意図ではないことに留意すべきである。「配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する」とは、例えば、本願明細書の下記実施例と同様の条件でプロトプラストにおいてGUS遺伝子を発現させたとき、そのGUS活性が、配列番号1の配列についてのGUS活性の約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約90%以上であることをいう。
本発明の範囲内に含まれる配列は、OsEF1β1遺伝子のプロモーター領域またはその活性部分とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含み得る。本明細書中で使用する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「ストリンジェンシー」は、標的に対する正確なほとんど正確な相補性を有する標的配列およびプローブの融解温度(T)未満の約5℃~約20℃または25℃の範囲の条件をいう。本明細書中で使用するように融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が半解離して一本鎖になる温度である。核酸のTを計算する方法は当該分野において周知である(例えば、BergerおよびKimmel(1987)METHODS IN ENZYMOLOGY,VOL.152:GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES,San Diego:Academic Press,Inc.およびSambrooksら、(1989)MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,第1-3巻Cold Spring Harbor Laboratory、以後「Sambrook」)(共に本明細書中で参考として援用される)。標準的な文献によって示されるように、T値の簡単な見積もりは、核酸が1M NaClの水溶液中に存在する場合等式:T=81.5+0.41(%G+C)によって計算することができる。(例えば、AndersonおよびYoung,Quantitative Filter Hybridization in NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION(1985)を参照のこと)。他の文献は、Tの計算に構造ならびに配列特徴を考慮するより精巧な計算を含む。ハイブリッドの融解温度(従ってストリンジェントなハイブリダイゼーションについての条件)は、プローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成物)および標的の性質(溶液中に存在するまたは固定化されるDNA、RNA、塩基組成物)、ならびに塩および他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸、ポリエチレングリコールの存在および非存在)のような種々の因子によって影響される。これらの因子の影響は周知であり、当該分野における標準的な文献で考察されている。例えば、Sambrook(前掲)およびAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York(1997))を参照のこと。典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、pH7.0~8.3の約1.0M未満のナトリウムイオン塩濃度、典型的には、約0.01~1.0Mのナトリウムイオンの塩濃度、ならびに短いプローブ(例えば、10~50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃の温度、長いプローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)については少なくとも約60℃の温度である。前記したように、ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加で達成することもでき、この場合、より低い温度が使用され得る。例えば、2つのポリヌクレオチドは、それらがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で相互に特異的にハイブリダイズし得る場合、実質的配列同一性を有するとして同定される。本明細書中で使用する用語「実質的な同一性」、「実質的な配列同一性」または「実質的な類似性」は、核酸の情況においては、2つのポリヌクレオチドの間の配列類似性の尺度をいう。あるいは、実質的な配列同一性は、2つのヌクレオチド(またはポリペプチド)配列の間のパーセント同一性として記載できる。2つの配列は、それらが少なくとも約60%同一である場合、好ましくは少なくとも約70%同一である場合、または少なくとも約80%同一である場合、または少なくとも約90%同一である場合、または少なくとも約95%もしくは98%~100%同一である場合、実質的に同一であると考えられる。配列同一性の他の程度(例えば、「実質的」未満)は、異なるストリンジェンシーの条件下でのハイブリダイゼーションによって特徴付けることができる。配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸)のパーセント同一性は、典型的には、2つの配列の間の最適アライメントを決定し、そして2つの配列を比較することによって算定される。例えば、タンパク質発現で用いる外因性転写物は、参照配列(例えば、対応する内因性配列)と比較した同一性または類似性の特定のパーセントを有するとして記載され得る。配列の最適アライメントがNeedlemanおよびWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アライメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性方法のためのサーチによって、これらのアルゴリズムのコンピューター実行によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または検分によって、SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所相同性アルゴリズムを用いて行われ得る。種々の方法によって得られた最良のアライメント(すなわち、最高パーセントの同一が得られること)を選択する。典型的には、これらのアルゴリズムは「比較ウィンドウ」(通常は少なくとも18ヌクレオチドの長さ)にわたって2つの配列を比較して、配列類似性の局所的領域を同定および比較し、従って、小さい付加または欠失(すなわち、ギャップ)を可能にする。付加および欠失は、典型的には、付加または欠失を含まない参照配列に対して配列の20パーセント以下の長さである。特定の長さまたは領域を参照して、2つの配列の間の配列同一性を記載することが時々望ましい(例えば、2つの配列は、少なくとも500塩基対の長さにわたって少なくとも95%の同一性を有するとして記載され得る)。通常、長さは少なくとも約50、100、200、300、400、または500塩基対、アミノ酸、または他の残基である。配列同一性のパーセントは、比較の領域にわたって最適にアライメントされた2つの配列を比較する工程、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、GまたはU)が両配列に生じる位置の数を決定して適合された位置の数が得られ、そして参照配列または比較領域における塩基の総数と比較して適合した位置の数(またはパーセント)を決定する工程によって計算される。配列類似性を測定するのに適したさらなるアルゴリズムはBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;およびShpaer(1996)Genomics 38:179-191に記載されている。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同一長さのワードとアラインされる場合に、いくつかの陽性評価された閾値スコアTに適合するかまたはそれを満足するかのいずれかである問題の配列中に長さWの短いワードを同定することによって、最初に高スコアの配列対(HSP)を同定することを含む。Tは隣接するワードスコア閾値といわれる(Altschulら、前掲)。これらの最初の隣接ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPを見い出すためのサーチを開始するための核として作用する。ワードのヒットは、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に拡張される。各方向におけるワードヒットの拡張は:累積アライメントスコアがその最大達成値から未知数Xだけ遠ざかる場合;累積スコアが、1以上の負のスコアリング残基アライメントの累積のために0以下になる場合;またはいずれかの配列の端に到達する場合に停止される。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、T、およびXはアライメントの感度およびスピードを決定する。BLASTプログラムは、デフォールトとして、11のワード長(W)、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919を参照のこと)の50のアライメント(B)、10の予測(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。用語BLASTは、2つの配列の間の類似性の統計的解析を行うBLASTアルゴリズムをいう。Karlin(1993)Proc.Natl.Acd.Sci.USA 90:5873-5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N)であり、これは2つの核酸配列またはアミノ酸配列の間の適合性が偶然に起こる確率の指標を提供する。あるいは、2つの核酸配列が類似するという別の指標は、第1の核酸がコードするポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であるということである。
(発現カセットおよび発現ベクターの構築およびその利用)
活性が確認されたOsEF1β1遺伝子のプロモーター領域またはその活性部分を有する配列は、適当な植物発現ベクターに組み込まれ得る。
本発明における植物発現ベクターは、当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて作製され得る。植物発現ベクターの構築には、例えば、pBI系のベクターが好適に用いられるが、これらに限定されない。
「植物発現ベクター」は、遺伝子の発現を調節するプロモーターなどの種々の調節エレメントが宿主細胞の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。好適には、本発明の植物遺伝子プロモーター、ターミネーター、および薬剤耐性遺伝子を含み得る。発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて代わり得ることは、当業者に周知の事項である。本発明の植物発現ベクターは、さらにT-DNA領域を有し得る。T-DNA領域は、特にアグロバクテリウムを用いて植物を形質転換する場合に遺伝子の導入の効率を高める。この発現カセットは、使用される特定の宿主生物について適切な選択マーカー遺伝子をさらに含み得る。
「ターミネーター」は遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、およびポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に寄与し、そして遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。ターミネーターの例としては、CaMV35Sターミネーター、およびノパリン合成遺伝子のターミネーター(Tnos)が挙げられるがこれらに限定されない。
「薬剤耐性遺伝子」は、形質転換植物の選抜を容易にするものであることが望ましい。カナマイシン耐性を付与するためのネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(NPTII)遺伝子、およびハイグロマイシン耐性を付与するためのハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ遺伝子などが好適に用いられ得るが、これらに限定されない。
上記プロモーターの3’下流、例えばマルチプルクローニングサイトに、発現が意図される異種遺伝子が発現可能に接続されて、発現ベクターを生じる。本願明細書において「異種遺伝子」とは、OsEF1β1遺伝子以外のイネまたは他の植物において内因性の遺伝子、または植物に対して外来の遺伝子であって、その遺伝子産物の発現が、植物において、特に細胞増殖が盛んな組織での遺伝子発現が望まれる任意の遺伝子をいう。
このようにして生じた発現ベクターを用いて、植物細胞が形質転換され得る。植物細胞の形質転換は、アグロバクテリウムを用いる方法、プロトプラストへのエレクトロポレーションによる方法など、当業者に公知の任意の方法によって行い得る。例えば、植物細胞のプロトプラストの作成は、Kyozukaら,Mol.Gen.Genet.206:408-413(1987)に記載の方法に従って行い得る。単子葉植物において好ましい、アグロバクテリウムを用いる形質転換方法としては、本発明者らにより開発された、PCT/JP/03920に記載の方法が挙げられる。この方法によって単子葉植物においても、より迅速で、かつ効率の良い形質転換体植物が得られるが、植物の形質転換に用いる方法はこれに限定されない。
形質転換された植物細胞を常法により再分化させて、形質転換された植物組織とし、さらに植物体とすることができる。形質転換のための発現ベクターの作製にあたって、OsEF1β1遺伝子プロモーターは、例えば、細菌と植物の両宿主で発現可能なバイナリーベクターに組み込むことが可能である。このようなバイナリーベクターは当業者に周知である。例えば、アグロバクテリウムの発現系を含む、pBI系などのベクターを用いると、微生物による植物への感染のシステムを利用し得る。適切な発現ベクターを用いることにより、イネ等の単子葉植物およびタバコ等の双子葉植物を含む任意の形質転換可能な植物に目的の異種遺伝子を導入し得る。
植物細胞とは、任意の植物細胞であり得る。植物細胞は、培養細胞、培養組織、培養器官、または植物体のいずれの形態であってもよい。好ましくは、培養細胞、培養組織、または培養器官であり、より好ましくは培養細胞である。本発明の生産方法に使用され得る植物種は、遺伝子導入を行い得る任意の植物種であり得る。
本発明の生産方法に使用され得る植物種の例としては、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科の植物が挙げられる。
ナス科の植物の例としては、Nicotiana、Solanum、Datura、Lycopersion、またはPetuniaに属する植物が挙げられ、例えば、タバコ、ナス、ジャガイモ、トマト、トウガラシ、ペチュニアなどを含む。
イネ科の植物の例としては、Oryza、Hordenum、Secale、Scccharum、Echinochloa、またはZeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシなどを含む。
アブラナ科の植物の例としては、Raphanus、Brassica、Arabidopsis、Wasabia、またはCapsellaに属する植物が挙げられ、例えば、大根、アブラナ、シロイヌナズナ、ワサビ、ナズナなどを含む。
バラ科の植物の例としては、Orunus、Malus、Pynus、Fragaria、またはRosaに属する植物が挙げられ、例えば、ウメ、モモ、リンゴ、ナシ、オランダイチゴ、バラなどを含む。
マメ科の植物の例としては、Glycine、Vigna、Phaseolus、Pisum、Vicia、Arachis、Trifolium、Alphalfa、またはMedicagoに属する植物が挙げられ、例えば、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ、クローバ、ウマゴヤシなどを含む。
ウリ科の植物の例としては、Luffa、Cucurbita、またはCucumisに属する植物が挙げられ、例えば、ヘチマ、カボチャ、キュウリ、メロンなどを含む。
シソ科の植物の例としては、Lavandula、Mentha、またはPerillaに属する植物が挙げられ、例えば、ラベンダー、ハッカ、シソなどを含む。
ユリ科に属する植物の例としては、Allium、Lilium、またはTulipaに属する植物が挙げられ、例えば、ネギ、ニンニク、ユリ、チューリップなどを含む。
アカザ科の植物の例としては、Spinaciaに属する植物が挙げられ、例えば、ホウレンソウを含む。
セリ科の植物の例としては、Angelica、Daucus、Cryptotaenia、またはApitumに属する植物が挙げられ、例えば、シシウド、ニンジン、ミツバ、セロリなどを含む。
本発明のプロモーターが作用し得る「植物」は、遺伝子導入の可能ないずれの植物をも包含する。「植物」は、単子葉植物および双子葉植物の両方を包含する。このような植物には、任意の有用植物、特に作物植物、蔬菜植物、および花卉植物が含まれる。好ましくは、イネ、トウモロコシ、モロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、ヒエ、アワ、アスパラガス/ジャガイモ、ダイコン、ダイズ、エンドウ、ナタネ、ホウレンソウ、トマト、ペチュニアなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法が適用される最も好ましい植物は、イネであり、特に、ジャポニカイネである。
上述のように、OsEF1β1遺伝子プロモーターは、植物組織において異種遺伝子を強力に発現し得る。従って、異種遺伝子として形質転換体選抜用マーカー遺伝子を使用することにより、形質転換植物体の選抜がより容易になる。例えば、異種遺伝子として毒性タンパク質をコードする異種遺伝子を用いることにより、茎葉を摂食する害虫などの制御を図ることができる。異種遺伝子として病害抵抗性遺伝子を使用することにより、耐病性に優れた植物を得ることができる。栄養生長組織での特異的な遺伝子発現を利用する、任意の有用植物の作製もまた、本発明の範囲内にある。本発明のプロモーターによって発現される遺伝子としては、細胞増殖が盛んな組織での遺伝子発現が望まれる全ての遺伝子が挙げられる。
本発明のプロモーターの作用は、形質転換植物当代に加え、その後代植物にも遺伝し得る。形質転換当代植物および次世代植物、その伝播体(例えば、花粉)、およびその伝播体から生成された種子においても、本発明のプロモーターの作用は発揮し得る。後代への導入プロモーターの遺伝は、例えば、本プロモーターの配列をプローブとしたサザン分析またはノーザン分析によって確認され得る。
本発明により、イネの遺伝子から、植物組織(特に、生長分裂組織、細胞分裂が盛んな組織など)で、従来のプロモーターに比較して活性が高いプロモーターの使用が提供される。従って、本発明は、イネの品種改良のみならず、他の種々の植物の品種改良に利用され得る。
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。この実施例は、本発明を限定するものではない。実施例で使用した、材料、試薬などは、他に特定のない限り、商業的な供給源から入手可能である。
実施例1.イネOsEF1β1ゲノミック遺伝子の単離:ゲノミックライブラリーからのスクリーニング
イネEFプロモーターを単離するために、既知のcDNA配列(松本ら、前出)を用いて、1対のプライマーを合成し、イネカルスより抽出したmRNAを鋳型にしてRT-PCRを行い、cDNA断片を得た。このPCR産物をアイソトープ標識してプローブとして用い、日本晴Sam3A部分分解で得られたゲノムライブラリー(EMBL3ファージベクター)をスクリーニングした。ファージ(EMBL3)を常法に従って、大腸菌(XLI Blue)に感染させてプラークを形成させた。このプラークを常法に従って、ナイロンメンブレンに移し、32Pで標識した上記プローブと、常法に従ってハイブリダイズさせた(Molecular Cloning、第2版、本開示内容は、本明細書中に参考として援用される)。ハイブリダイズ終了後、洗浄し、オートラジオグラフィーにかけ、ハイブリダイズすることが確認されたファージからDNAを調製した。
調製したファージDNAを、適当な制限酵素SalI、EcoRI、HindIII、BamHI、XhoIを組み合わせて消化し、その消化物をアガロースゲル電気泳動で分離した。分離したDNA断片をナイロンメンブレンに移して、上記のスクリーニング用プローブを常法に従ってハイブリダイズさせた。常法に従って、メンブレンをオートラジオグラフィーにかけ、プローブとハイブリダイズしたDNA断片を検出した。
シグナルの強さとバンドパターンの相違に基づいて、スクリーニングした。最もシグナルの強いクローンはOsEF1β1遺伝子を含み、弱いシグナルのクローンはOsEF1β1に類似しているがOsEF1β1ではない遺伝子を含んでいると考えられた。また、バンドパターンの比較により、遺伝子の一部を欠損したクローンを識別できる。さらに、バンドパターンに基づく各クローンの物理地図を作製することにより、プロモーターを構成すると推定される、構造遺伝子の5’上流域の長さが約1.6kbp程度あるクローンλOsEF1β1を得た。λOsEF1β1挿入断片の制限地図を図1に示す。これにより、λOsEF1β1インサートにおいて7つのエキソンが存在することが分かった。
詳細なサザン分析、部分塩基配列の解析、OsEF1β1 cDNA塩基配列に基づくPCR解析などから、OsEF1β1 cDNAに対応する遺伝子と、その5’上流にプロモーター領域と推定される約1.6kbpからなる配列を含むクローンλOsEF1β1を得た。この配列を、図2A~Cに示す。
実施例2.OsEF1β1遺伝子プロモーターを有する発現ベクターの作成
実施例1で得られたOsEF1β1遺伝子の5’末端領域を含む発現ベクターとして用いた配列は、2,651bpであった。そして、この配列の1,671番目から1,876番目に第1エキソン、2,639番目から2,651番目に第2エキソンの一部が存在すること、および、それぞれのエキソンの間に、第1イントロンが存在することがわかった(配列番号1および図2A~Cを参照のこと)。
イネOsEF1β1遺伝子プロモーターを有するベクターの作製を図3に示す。
イネOsEF1β1遺伝子の5’非翻訳領域を含み得る断片として、実施例1により得られたクローンλOsEF1β1を使用した(SalI(5’末端)およびSmaI(3’末端))。本断片は、クローン挿入配列の1番目から2,651番目までの配列を有し、そして5’非翻訳配列、第1エキソン、第1イントロン、および第2エキソンの一部を含んだ。OsEF1β1遺伝子のプロモーターの機能を確認するために、植物細胞用発現ベクターpBI101(CLONTECH Laboratories Inc.,Palo Alto,CA)を使用した。本ベクターは、順に、ノパリン合成酵素プロモーター(NOS-Pro)、カナマイシン耐性を付与するためのネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼIIコーディング領域(NPTII(KON R))、ノパリン合成酵素のターミネーター(NOS-T)、β-グルクロニダーゼ(GUS)コーディング領域およびノパリン合成酵素のターミネーター(NOS-T)を有している。上記断片を、制限消化した上記発現ベクターに連結し、GUSレポーター遺伝子との融合を含むpBI101-Hm3を作製した。本発現ベクターには、ハイグロマイシン耐性を付与するために、GUSコーディング領域の下流に、ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ(HPT)遺伝子(カリフラワーモザイクウイルス35S(35S)とノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)との間に位置する)もまた挿入された。
実施例3.イネ種子への形質転換
イネの代表的品種である日本晴の種子を、籾殻の除去後、無傷の状態で、70%エタノール中に10秒間置いた後、水洗し、その後0.1% Tween20および2.5%次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)の水溶液中に30分置くことにより殺菌した。水での十分な洗浄の後、イネを以下の無菌操作に供した。
(前培養)
種子を、2,4-Dを含むN6D培地(30g/lスクロース、0.3g/lカザミノ酸、2.8g/lプロリン、2mg/l 2,4-D、4g/lゲルライト、pH5.8)に播種し、5日間、27℃~32℃で保温した。この間に種子は発芽した。
(植物発現用ベクター)
上記で生成したpBI101-Hm3で、アグロバクテリウムEHA101を形質転換した(Hoodら、J.Bacteriol.,168:1291-1301(1986))。EHA101は、ヘルパープラスミドのvir領域が強病原性アグロバクテリウムA281由来の菌である。アグロバクテリウムを、ハイグロマイシン(50mg/l)を補充したAB培地(グルコース(5g/L)、KHPO(3g/L)、NaHPO・2HO(1.3g/L)、NHCI(1g/L)、KCI(150mg/L)、CaCl・2HO(10mg/L)、FSO・7HO(2.5mg/L)、pH7.2、bacto agar(1.5%)(3g/200ml)、1M MgSO・7HO(120μl/100ml))中に、2~3日間、25℃で暗所で培養した。
(アグロバクテリウム感染)
アセトシリンゴン2μg/mlを添加したAAM培地(AA-1(×1000)1ml(MnSO・4~6HO(1000mg/100ml)、HBO(300mg/100ml)、ZnSO・7HO(200mg/100ml)、NaMoO・2HO(25mg/100ml)、CuSO・5HO(2.5mg/100ml)、CoCl・6HO(2.5mg/100ml)、KI(75mg/100ml))、AA-2(×1000)1ml(CaCl・2HO(15.0g/100ml))、AA-3(×1000)1ml(MgSO・7HO(25g/100ml))、AA-4(×1000)1ml(Fe-EDTA(4.0g/100ml))、AA-5(×1000)1ml(NaHPO・2HO(15.0g/100ml))、AA-6(×200)5ml(ニコチン酸(20mg/100ml)、チアミンHCl(200mg/100ml)、プリドキシンHCl(20mg/ml)、ミオイノシトール(2000mg/100ml))、AA-Sol(×100)10ml(L-アルギニン(5300mg/300ml)、グリシン(225mg/300ml))、AA-KCl(×50)20ml(KCl(3g/20ml))、カザミノ酸(500mg/L)、スクロース(68.5g/L)、グルコース(36g/L)、L-グルタミン(900mg/L)、L-アスパラギン酸(300mg/L)、pH5.2)中に形質転換されたアグロバクテリウムを懸濁させた。この懸濁液に、前培養した上記種子を90秒間浸漬した後、2N6-AS培地(30g/lスクロース、10g/lグルコース、0.3g/lカザミノ酸、2mg/l 2,4-D、10mg/l アセトシリンゴン、4g/lゲルライト、pH5.2)に移植した。暗黒下で3日間、25℃で保温して共存培養した。
(除菌および選抜)
共存培養の完了後、500mg/lカルベニシリンを含有するN6D培地を用いて、種子から、アグロバクテリウムを洗い流した。次いで、形質転換された種子の選抜を、以下の条件で行った。
第1回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(50mg/l)を補充した、2mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上に、種子を置き、7日間、30℃で保温した。
第2回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(50mg/l)を補充した、2~4mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上に、種子を置き、さらに7日間、30℃で保温した。
(再分化)
選抜された形質転換種子を、以下の条件で再分化させた。
第1回目の再分化:再分化培地(カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充したMS培地(30g/lスクロース、30g/lソルビトール、2g/lカサミノ酸、2mg/lカイネチン、0.002mg/l NAA、4g/lゲルライト、pH5.8)上に、選抜した種子を置き、2週間、30℃で保温した。
第2回目の再分化:第1回目の再分化において使用したのと同じ再分化培地を使用して、さらに2週間、30℃で保温した。
(鉢上げ)
再分化した形質転換体を、発根培地(ハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、ホルモンを含まないMS培地)上に移して、根の発育を確認した後に、鉢上げした。
実施例4.GUS染色の組織発現
本発明のイネOsEF1β1遺伝子プロモーターを有するベクターで形質転換した植物(播種後約6週間経過したイネ)の各植物組織における、上記プロモーターによる遺伝子発現を検討するために、GUS活性の組織化学的分析を行った。コントロールとして、植物発現用プロモーターとして従来用いられているカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターを含むpBI121で形質転換した植物を用いて、プロモーターによる遺伝子発現を比較した。
植物組織における上記プロモーターによる遺伝子発現を検討するために、GUS活性の組織化学的分析を行った。このような組織化学的分析は、植物細胞工学、第4巻、第4号、281~286頁に記載の手順を用いて実施した。本方法は、Jeffersonらの方法(EMBO J 6:3901-3907(1987))に準拠し、Kosugiらの改良を伴う(Kosugiら,Plant Science 70:133-140(1990))。簡単には、切除した切片を、5%(w/w)寒天中に包埋し、そして寒天ブロックをマイクロスライサーを用いて薄く切った。厚さ100~130μmの組織切片を、1mM 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、7%(v/v)メタノール、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含有する組織化学基質溶液中に浸漬し、そして37℃で2~24時間インキュベートした。2mM DTTを、切りとってすぐ;寒天包埋の段階;切削の過程;または切片の減圧脱気時に添加した。また5mMの濃度のDTTを、37℃におけるGUS反応時に添加した。エタノールを添加して反応を停止させ、脱色させ、そして切片を顕微鏡下で観察した。
これらの結果を図4に示す。左側に本発明のプロモーターで形質転換された植物の種々の組織におけるGUS活性を示し、右側にコントロール植物の種々の組織におけるGUS活性を示す(上から順に、茎、葉、根)。図3は、茎、葉および根のいずれにおいても、本発明の形質転換植物が、コントロール植物に比較して強く発現したことを示した。本発明の形質転換植物のGUS活性は、コントロール植物の35Sプロモーターで発現させたGUS活性の約5倍以上の差であった。さらに、本発明の形質転換植物では、茎の中心に近い部分(維管束領域)、葉の基部、根端部において強く発現されていた。このことは、本発明のプロモーターは、特に分裂組織において強く発現することを示す。
産業上の利用可能性
本発明におけるOsEF1β1遺伝子プロモーターは、植物組織における遺伝子の発現を強力に促進する。従って、本発明は、植物の遺伝子操作による、イネ等の植物の品種改良のために有用である。
【配列表】
JP0003867140B2_000002t.gifJP0003867140B2_000003t.gifJP0003867140B2_000004t.gifJP0003867140B2_000005t.gif
【図面の簡単な説明】
図1は、λOsEF1β1挿入断片の制限地図を示す。
図2A~Cは、OsEF1β1の5’末端領域の配列を示す図である。図中、「n」は、A、T、CまたはGを示す。図中、大文字の塩基は、エキソン部位を示す(1671位~1876位および2639位~2651位)。
図3は、OsEF1β1:GUS融合構築物を示す模式図である。
図4は、本発明の形質転換植物およびプロモーターとして35Sプロモーターを含むベクターで形質転換されたコントロール植物における各組織でのGUS組織染色の結果を示す写真である。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図3】
4
【図4】
5