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明細書 :栄養成長特異的プロモーターおよびそれにより得られた遺伝子組換え植物

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第3890410号 (P3890410)
登録日 平成18年12月15日(2006.12.15)
発行日 平成19年3月7日(2007.3.7)
発明の名称または考案の名称 栄養成長特異的プロモーターおよびそれにより得られた遺伝子組換え植物
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
C12N 5/00 C
請求項の数または発明の数 15
全頁数 23
出願番号 特願2002-576690 (P2002-576690)
出願日 平成13年3月27日(2001.3.27)
国際出願番号 PCT/JP2001/002512
国際公開番号 WO2002/077248
国際公開日 平成14年10月3日(2002.10.3)
審査請求日 平成15年6月13日(2003.6.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】田中 宥司
【氏名】番 保徳
【氏名】萱野 暁明
【氏名】松岡 信
【氏名】坂本 知昭
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
【識別番号】100062409、【弁理士】、【氏名又は名称】安村 高明
【識別番号】100113413、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 夏樹
審査官 【審査官】六笠 紀子
参考文献・文献 特許第3781622(JP,B2)
特開2001-178468(JP,A)
特開平10-248570(JP,A)
Proc.Natl.Acad.Sci.USA,July,2001,Vol.98,No.15,p.8909-8914
Plant J.,1999,Vol.20,No.1,p.15-24
Plant Physiology,March,2001,Vol.125,p.1508-1516
調査した分野 C12N 15/00-15/90
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
SwissProt/PIR/Geneseq
特許請求の範囲 【請求項1】
植物において異種遺伝子を強力に発現させるためのプロモーター活性を有する核酸分子であって:
i)配列番号1で示される配列、またはその一部を有する配列であって、配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する、核酸分子、あるいは
ii)該配列番号1で示される配列、またはその一部を有する配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子
【請求項2】
前記プロモーターが、前記異種遺伝子の発現を、植物の生長分裂組織において特異的に促進する、請求項1に記載の核酸分子
【請求項3】
請求項1に記載の核酸分子、および該核酸分子と発現可能に接続された異種遺伝子を含む、発現ベクター。
【請求項4】
前記異種遺伝子が、2β水酸化酵素をコードする遺伝子である、請求項に記載の発現ベクター。
【請求項5】
請求項に記載の発現ベクターにより形質転換された植物細胞。
【請求項6】
前記植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項に記載の植物細胞。
【請求項7】
前記植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項に記載の植物細胞。
【請求項8】
請求項に記載の植物細胞により再生された植物体。
【請求項9】
請求項に記載の植物体の子孫。
【請求項10】
請求項に記載の植物体の花粉
【請求項11】
請求項に記載の子孫により得られる種子。
【請求項12】
植物の栄養生長組織における特異的な発現が所望される異種遺伝子を植物に導入する方法であって:
請求項に記載の発現ベクターで植物細胞を形質転換する工程;および
該形質転換された植物細胞を再分化させて、植物体を得る工程、
を包含する、方法。
【請求項13】
前記異種遺伝子が、茎および/または葉の伸長を抑制する機能を持つ、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項12に記載の方法。
発明の詳細な説明 技術分野
本願発明は、植物遺伝子のプロモーターを用いる、有用植物の育種に関する。さらに詳しくは、イネの3β水酸化酵素2遺伝子(以下、OsGA3ox2という)のプロモーター遺伝子を用いる有用植物の育種に関する。
背景技術
草型の人為的改変、特に、伸長生長の抑制によって引き起こされる矮性は、作物育種において極めて重要な目標とされている。矮性は、正常な伸長生長の調節に関わる遺伝子に突然変異が生じた結果もたらされる生長異常である。植物の伸長生長は、細胞分裂と細胞伸長の積み重ねによってもたらされるが、それらは、温度、光などの外的環境要因、および植物ホルモンなどの内的環境要因のような様々な因子による複合的な影響によって調節されている。したがって、矮性に関わる遺伝子には、植物ホルモンの合成やその受容に直接関わるもの、それらの発現調節に関わるものなど様々な種類があることが予測される。なかでも、ジベレリンの生合成経路における異常が、矮性化の原因の1つとしてよく知られている。
高等植物におけるジベレリン生合成は3つの段階に分けられ、それぞれプラスチド、小胞体膜、細胞質に存在する酵素により触媒される。GA12アルデヒド以降の第三段階では、早期13位水酸化酵素と非水酸化酵素の2つの経路が存在する。両経路とも、ジベレリンは3位の炭素が3β水酸化酵素により水酸化されることによって生理的に活性化し、引き続き2位の炭素が2β水酸化酵素により水酸化されることによって不活性化される。
イネにおいて、3β水酸化酵素遺伝子は、少なくとも2種類(OsGA3ox1およびOsGA3ox2)存在することが明らかになっている。そのうちの1つであるOsGA3ox2は、イネ矮性遺伝子として古くから知られるD18(dy)遺伝子座に対応することが示されている。他方、イネの2β水酸化酵素遺伝子OsGA2ox1は、2-オキソグルタル酸依存性酵素遺伝子群に属する新規遺伝子として単離された。ジベレリンの活性型と不活性型との変換に直接的に関わるこれらの酵素の発現を調節することにより、植物の伸長生長を抑制する試みがなされてきた(化学と生物、第38巻、2000年、131~139頁)。この試みの1つにおいて、形質転換植物体内で2β水酸化酵素遺伝子の発現量を調節することにより、内生の活性型ジベレリン含量を変え、その結果として、所望の草丈の形質転換植物を得ようとする試みがなされた。しかし、従来の構成性プロモーターであるアクチンプロモーターを使用してOsGA2ox1を植物体全体に強制発現させる場合、茎および葉に加えて、生殖器官においてジベレリンが常に代謝されてしまうため、極矮性を示すほどに内生ジベレリン含量が激減した形質転換体では、多量のジベレリンを必要とする生殖器官の正常な発育も妨げられてしまう。従って、2β水酸化酵素遺伝子の過剰発現により矮性形質転換植物を開発する場合、栄養生長組織において特異的に働くプロモーターを利用して、生殖器官への影響を抑えることが必要である。
タバコにおいて、3β水酸化酵素をコードする遺伝子(Nty遺伝子)について、植物における発現組織の局在が調べられた(Plant Journal(1999)20(1),15-24)を参照のこと)。この研究では、Nty遺伝子のプロモーター領域をGUS遺伝子に連結させ、植物体中の種々の組織における発現の様子を観察した。この結果、Nty遺伝子のプロモーター領域に連結されたGUS遺伝子は、栄養生長組織を含む、ジベレリン作用が生じている部位に制限されていた。本研究は、3β水酸化酵素をコードする遺伝子の発現とジベレリン作用との関連を見出したに過ぎない。よって、実用的に用いられ得る栄養組織特異的プロモーターは、未だ見出されていない。
従って、イネの遺伝子から、活性が高く、実用的にも使用され得る栄養生長組織発現のためのプロモーターが取得できれば、イネ等の作物を含む有用植物の品種改良に大いに貢献できる。
発明の開示
本願発明は、遺伝子工学的手法による植物の育種に関し、その目的は、栄養生長組織(特に茎および/または葉)で高い活性を有する植物遺伝子プロモーター、およびそれを含有する発現ベクター、ならびにその利用方法を提供することにある。
本願発明者らは、イネの3β水酸化酵素2(OsGA3ox2)遺伝子が栄養生長組織(特に、茎および/または葉)で高いプロモーター活性を示すことを見いだし、この知見に基づいて本願発明を完成したものである。
本願発明は、植物の栄養生長組織において異種遺伝子を特異的に発現させるためのプロモーター活性を有するDNAを提供する。このDNAは、配列番号1(図2A~C)で示される配列、またはその一部を有する配列であって、配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する、DNAである。ここで、配列番号1で示される配列は、イネOsGA3ox2構造遺伝子の5’上流域、第1エキソン、第1イントロン、および第2エキソンの一部を含む配列である。本願発明の1つの実施態様において、このDNAは、ストリンジェントな条件下で、配列番号1に記載の配列またはその一部を有するポリヌクレオチドとハイブリダイズする。
本願発明はまた、栄養生長組織(特に、茎および/または葉)において異種遺伝子を特異的に発現させるための発現ベクターを提供する。この発現ベクターは、配列番号1で示される配列、またはその一部を有する配列であって配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する、イネOsGA3ox2遺伝子プロモーターを含み、さらに、このプロモーターと発現可能に接続された異種遺伝子を含む。1つの実施態様では、上記異種遺伝子は、茎および/または葉の伸長を抑制する機能を持つ遺伝子であり得る。さらに1つの実施態様では、上記異種遺伝子は、2β水酸化酵素をコードする遺伝子である。本願発明はさらに、上記発現ベクターで形質転換された植物細胞(単子葉植物細胞または双子葉植物細胞であり得る)、この植物細胞により再生された植物体、この植物体の子孫および伝播体、およびこの子孫により得られる種子も提供する。
本願発明はさらに、植物の栄養生長組織における特異的な発現が所望される異種遺伝子を植物に導入する方法を提供する。この方法は、上記の発現ベクターで植物細胞を形質転換する工程;およびこの形質転換された植物細胞を再分化させて、植物体を得る工程を包含する。
上記の異種遺伝子は、茎および/または葉の伸長を抑制する機能を持つ遺伝子であり得る。このような遺伝子を上記方法において使用することにより、矮性植物を作製し得る。また、上記方法において、植物細胞は、単子葉植物細胞または双子葉植物細胞のいずれかであり得る。
発明を実施するための最良の形態
本願発明について、以下に、より詳細に説明する。
(イネOsGA3ox2遺伝子プロモーターの単離)
イネOsGA3ox2遺伝子プロモーターは、イネのゲノミックライブラリーからスクリーニングされ得る。米国クローンテック社(CLONTECH Laboratories Inc.,Palo Alto,CA)が市販しているイネのゲノミックDNAライブラリー(Rice Genomic Library)が用いられ得る。
スクリーニング用のプローブとしては、本願発明者らが単離したイネOsGA3ox2 cDNAが用いられ得る。
まず、ファージλを用いて作製されたイネゲノミック遺伝子ライブラリーを大腸菌に感染させてプラークを形成させる。このプラークを常法に従って、ニトロセルロース等のメンブレンに移し、標識したスクリーニング用プローブでハイブリダイズさせる。ハイブリダイズ終了後、洗浄し、オートラジオグラフィーにかけ、ハイブリダイズすることが確認されたファージからDNAを調製する。
調製したファージDNAを、適当な制限酵素を組み合わせて消化し、その消化物をアガロースゲル電気泳動で分離する。分離したDNA断片をナイロンメンブレンに移して、上記のスクリーニング用プローブをハイブリダイズさせ、シグナルの強さとバンドパターンの相違に基づいて、スクリーニングする。
最もシグナルの強いクローンはOsGA3ox2遺伝子を含み、弱いシグナルのクローンはOsGA3ox2に類似しているがOsGA3ox2ではない遺伝子を含んでいると考えられる。また、バンドパターンの比較により、遺伝子の一部を欠損したクローンを識別できる。さらに、バンドパターンに基づく各クローンの物理地図を作製することにより、プロモーターを構成すると推定される、構造遺伝子の5’上流域の長さが約1.6Kbp程度あるクローンを特定できる。
以上の様にして、完全なOsGA3ox2ゲノミック遺伝子が、単離され得る。
OsGA3ox2ゲノミック遺伝子の塩基配列をOsGA3ox2 cDNAの塩基配列と比較することにより、プロモーター領域が特定され得る。プロモーター配列としては、ゲノミック遺伝子がイントロンを有する場合は、構造遺伝子の5’上流域だけではなく、第1イントロン等の領域をも含み得る。本プロモーター配列は、好ましくは、配列番号1に示される配列である(図2A~Cもまた参照のこと)。配列番号に示される配列は、イネOsGA3ox2構造遺伝子の5’上流域、第1エキソン、第1イントロン、および第2エキソンの一部を含む。
(GUS活性の測定によるプロモーター活性部分の特定)
OsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域が特定されると、その配列を切り出して、植物発現用ベクターにつなぎ込み得る。つなぎ込まれたプロモーターの活性を評価するために、そのプロモーターの下流にレポーター遺伝子、例えば、適当な酵素をコードする遺伝子を連結したプラスミドを作製し得る。このプラスミドを植物細胞中に導入し、遺伝子の発現を、例えば、酵素活性を測定して、観察する。植物を宿主とする場合には、例えば、pBI221等のようなプラスミドを用いて、β-グルクロニダーゼ(GUS)の発現を指標として測定するのが一般的であり、本願明細書においても、GUSの発現で測定する方法が適用され得る。
GUS活性は、例えば、植物細胞工学、第4巻、第4号、281~286頁(1992)、同第5巻、第5号、407~413頁(1992)、Plant Mole.Biol.Reporter 5(4)387-405(1987)に記載の手順を用いて測定され得るが、測定方法はこれに限定されない。簡単には、植物体の各組織または切片を、1mM 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、7%(v/v)メタノール、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含有する組織化学基質溶液中に浸漬し、そして反応が進行するのに適当な温度および時間(例えば、CaMVプロモーターなどとGUSの融合遺伝子を導入した場合、37℃で30分~4時間)、インキュベートする。褐変およびGUS不活性化を防止するために、ジチオトレイトール(DTT)などの還元剤が添加され得る。例えば、2mM DTTが、切りとってすぐ;(切片を作製する場合)寒天包埋の段階;切削の過程;または切片の減圧脱気時に添加され得る。また5mMの濃度のDTTが、37℃におけるGUS反応時に添加され得る。次いで、エタノールを添加して反応を停止させ、脱色させ、そして組織または切片を顕微鏡または実体顕微鏡下で観察する。
OsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域の様々な欠失体、例えば、5’上流側から様々な長さに欠損させたOsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域をGUS遺伝子と融合させたプラスミドを用いてプロモーター活性を測定し、その活性に必須な部分等を特定し得る。このような活性部分の特定のための手法は、当業者には公知である。従って、例えば、OsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域に不要な配列を除去して得られる、OsGA3ox2遺伝子のプロモーターと同等の活性を有する配列も本願発明の範囲内にある。
いったんOsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域およびその活性部分が特定されると、さらにその配列を改変して、プロモーター活性を高めたり、発現する組織について特異性を変更させることも可能である。例えば、OsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域またはその活性部分を一部改変して得られる、改変前と同等の活性を有する配列も本願発明の範囲内にある。
配列番号1(図2A~C)の配列を有するプロモーター領域は、栄養生長組織において特異的にその活性を発現する。従って、本願明細書において、プロモーター活性について「同等」であるとは、活性の強度が、少なくとも、基準となるプロモーター領域の活性の強度と同程度であると共に、活性の特異性も、少なくとも、基準となるプロモーター領域の活性の特異性と同程度であることをいう。用語「同等」は、活性の強度および活性の特異性が、基準となるプロモーター領域と比較して、明らかに高い場合を除外する意図ではないことに留意すべきである。「配列番号1の配列と同等のプロモーター活性を有する」とは、例えば、本願明細書の下記実施例と同様の条件でプロトプラストにおいてGUS遺伝子を発現させたとき、そのGUS活性が、配列番号1の配列についてのGUS活性の約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約90%以上であり、かつ、栄養生長組織において特異的にその活性を発現することをいう。
本願発明の範囲内に含まれる配列は、OsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域またはその活性部分とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列を含み得る。本明細書中で使用する「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」または「ストリンジェンシー」は、標的に対する正確なほとんど正確な相補性を有する標的配列およびプローブの融解温度(T)未満の約5℃~約20℃または25℃の範囲の条件をいう。本明細書中で使用するように融解温度は、二本鎖核酸分子の集団が半解離して一本鎖になる温度である。核酸のTを計算する方法は当該分野において周知である(例えば、BergerおよびKimmel(1987)METHODS IN ENZYMOLOGY,VOL.152:GUIDE TO MOLECULAR CLONING TECHNIQUES,San Diego:Academic Press,Inc.およびSambrooksら、(1989)MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL,第2版,第1-3巻 Cold Spring Harbor Laboratory、以後「Sambrook」)(共に本明細書中で参考として援用される)。標準的な文献によって示されるように、T値の簡単な見積もりは、核酸が1M NaClの水溶液中に存在する場合等式:T=81.5+0.41(%G+C)によって計算することができる。(例えば、AndersonおよびYoung,Quantitative Filter Hybridization in NUCLEIC ACID HYBRIDIZATION(1985)を参照のこと)。他の文献は、Tの計算に構造ならびに配列特徴を考慮するより精巧な計算を含む。ハイブリッドの融解温度(従ってストリンジェントなハイブリダイゼーションについての条件)は、プローブの長さおよび性質(DNA、RNA、塩基組成物)および標的の性質(溶液中に存在するまたは固定化されるDNA、RNA、塩基組成物)、ならびに塩および他の成分の濃度(例えば、ホルムアミド、デキストラン硫酸、ポリエチレングリコールの存在および非存在)のような種々の因子によって影響される。これらの因子の影響は周知であり、当該分野における標準的な文献で考察されている。例えば、Sambrook(前掲)およびAusubelら,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York(1997))を参照のこと。典型的には、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、pH7.0~8.3の約1.0M未満のナトリウムイオン塩濃度、典型的には、約0.01~1.0Mのナトリウムイオンの塩濃度、ならびに短いプローブ(例えば、10~50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃の温度、長いプローブ(例えば、50を超えるヌクレオチド)については少なくとも約60℃の温度である。前記したように、ストリンジェントな条件は、ホルムアミドのような不安定化剤の添加で達成することもでき、この場合、より低い温度が使用され得る。例えば、2つのポリヌクレオチドは、それらがストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で相互に特異的にハイブリダイズし得る場合、実質的配列同一性を有するとして同定される。本明細書中で使用する用語「実質的な同一性」、「実質的な配列同一性」または「実質的な類似性」は、核酸の情況においては、2つのポリヌクレオチドの間の配列類似性の尺度をいう。あるいは、実質的な配列同一性は、2つのヌクレオチド(またはポリペプチド)配列の間のパーセント同一性として記載できる。2つの配列は、それらが少なくとも約60%同一である場合、好ましくは少なくとも約70%同一である場合、または少なくとも約80%同一である場合、または少なくとも約90%同一である場合、または少なくとも約95%もしくは98%~100%同一である場合、実質的に同一であると考えられる。配列同一性の他の程度(例えば、「実質的」未満)は、異なるストリンジェンシーの条件下でのハイブリダイゼーションによって特徴付けることができる。配列(ヌクレオチドまたはアミノ酸)のパーセント同一性は、典型的には、2つの配列の間の最適アライメントを決定し、そして2つの配列を比較することによって算定される。例えば、タンパク質発現で用いる外因性転写物は、参照配列(例えば、対応する内因性配列)と比較した同一性または類似性の特定のパーセントを有するとして記載され得る。配列の最適アライメントがNeedlemanおよびWunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アライメントアルゴリズムによって、PearsonおよびLipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性方法のためのサーチによって、これらのアルゴリズムのコンピューター実行によって(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.、Madison、WIにおけるGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)、または検分によって、SmithおよびWaterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482の局所相同性アルゴリズムを用いて行われ得る。種々の方法によって得られた最良のアライメント(すなわち、最高パーセントの同一が得られること)を選択する。典型的には、これらのアルゴリズムは「比較ウィンドウ」(通常は少なくとも18ヌクレオチドの長さ)にわたって2つの配列を比較して、配列類似性の局所的領域を同定および比較し、従って、小さい付加または欠失(すなわち、ギャップ)を可能にする。付加および欠失は、典型的には、付加または欠失を含まない参照配列に対して配列の20パーセント以下の長さである。特定の長さまたは領域を参照して、2つの配列の間の配列同一性を記載することが時々望ましい(例えば、2つの配列は、少なくとも500塩基対の長さにわたって少なくとも95%の同一性を有するとして記載され得る)。通常、長さは少なくとも約50、100、200、300、400、または500塩基対、アミノ酸、または他の残基である。配列同一性のパーセントは、比較の領域にわたって最適にアライメントされた2つの配列を比較する工程、同一の核酸塩基(例えば、A、T、C、GまたはU)が両配列に生じる位置の数を決定して適合された位置の数が得られ、そして参照配列または比較領域における塩基の総数と比較して適合した位置の数(またはパーセント)を決定する工程によって計算される。配列類似性を測定するのに適したさらなるアルゴリズムはBLASTアルゴリズムであり、これはAltschul(1990)J.Mol.Biol.215:403-410;およびShpaer(1996)Genomics 38:179-191に記載されている。BLAST解析を実行するためのソフトウェアは、National Center for Biotechnology Information(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)で公的に入手可能である。このアルゴリズムは、データベース配列における同一長さのワードとアラインされる場合に、いくつかの陽性評価された閾値スコアTに適合するかまたはそれを満足するかのいずれかである問題の配列中に長さWの短いワードを同定することによって、最初に高スコアの配列対(HSP)を同定することを含む。Tは隣接するワードスコア閾値といわれる(Altschulら、前掲)。これらの最初の隣接ワードのヒットは、それらを含むより長いHSPを見い出すためのサーチを開始するための核として作用する。ワードのヒットは、累積アライメントスコアが増加し得る限り、各配列に沿って両方向に拡張される。各方向におけるワードヒットの拡張は:累積アライメントスコアがその最大達成値から未知数Xだけ遠ざかる場合;累積スコアが、1以上の負のスコアリング残基アライメントの累積のために0以下になる場合;またはいずれかの配列の端に到達する場合に停止される。BLASTアルゴリズムのパラメーターであるW、T、およびXはアライメントの感度およびスピードを決定する。BLASTプログラムは、デフォールトとして、11のワード長(W)、BLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919を参照のこと)の50のアライメント(B)、10の予測(E)、M=5、N=4、および両鎖の比較を使用する。用語BLASTは、2つの配列の間の類似性の統計的解析を行うBLASTアルゴリズムをいう。Karlin(1993)Proc.Natl.Acd.Sci.USA 90:5873-5787を参照のこと。BLASTアルゴリズムによって提供される類似性の1つの尺度は、最小合計確率(P(N))であり、これは2つの核酸配列またはアミノ酸配列の間の適合性が偶然に起こる確率の指標を提供する。あるいは、2つの核酸配列が類似するという別の指標は、第1の核酸がコードするポリペプチドが、第2の核酸によってコードされるポリペプチドと免疫学的に交差反応性であるということである。
本願明細書において、栄養生長組織において「特異的に」発現するとは、目的とする遺伝子産物を栄養生長組織において、同じ植物体の他の組織または器官の少なくとも1種におけるよりも多く発現することをいう。「栄養生長組織」とは、植物において、有性生殖に直接関係しない組織を意味し、これには、根、茎、および葉のような栄養器官を構成する全組織が含まれる。栄養生長組織において「特異的に」発現するとは、例えば、遺伝子産物を、茎および葉の少なくとも一方において、同じ植物体の任意の部位の花器器官におけるよりも多く発現することをいう。このような発現の特異性は、本願明細書の下記実施例と同様の条件で形質転換植物を作製することにより評価し得る。
(発現カセットおよび組換えプラスミドの構築およびその利用)
活性が確認されたOsGA3ox2遺伝子のプロモーター領域またはその活性部分を有する配列は、適当な植物発現ベクターに組み込まれ得る。この植物発現用ベクターに組み込まれた配列の3’末端側に、適当なリンカー配列、例えばマルチプルクローニングサイトを有するリンカーを導入して、植物宿主に適した発現カセットが作製され得る。従って、本願明細書において「異種遺伝子を挿入するための部位」とは、リンカーまたはリンカーと同様に作用する配列に含まれる部位をいう。この発現カセットには、所望により他の調節エレメントが含まれ得る。例えば、発現効率を向上させるため等の目的で、ターミネーター配列が含まれ得る。このターミネーター配列は、上記マルチプルクローニングサイトを有するリンカー配列を介して、プロモーター配列と結合され得る。この発現カセットは、使用される特定の宿主生物について適切な選択マーカー遺伝子をさらに含み得る。
上記植物発現用カセットのプロモーターの3’下流、例えばマルチプルクローニングサイトに、発現が意図される異種遺伝子が発現可能に接続されて、組換えプラスミドを生じる。本願明細書において「異種遺伝子」とは、OsGA3ox2遺伝子以外のイネまたは他の植物において内因性の遺伝子、または植物に対して外来の遺伝子であって、その遺伝子産物の発現が栄養生長組織(特に、茎および/または葉)において所望される任意の遺伝子をいう。
このようにして生じた組換えプラスミドを用いて、植物細胞が形質転換され得る。植物細胞の形質転換は、アグロバクテリウムを用いる方法、プロトプラストへのエレクトロポレーションによる方法など、当業者に公知の任意の方法によって行い得る。例えば、植物細胞のプロトプラストの作製は、Kyozukaら,Mol.Gen.Genet.206:408-413(1987)に記載の方法に従って行い得る。単子葉植物において好ましい、アグロバクテリウムを用いる形質転換方法としては、本発明者らにより開発された、PCT/JP/03920に記載の方法が挙げられる。この方法によって単子葉植物においても、より迅速で、かつ効率の良い形質転換体植物が得られるが、植物の形質転換に用いる方法はこれに限定されない。
形質転換された植物細胞を常法により再分化させて、形質転換された植物組織とし、さらに植物体とすることができる。形質転換のための組換えプラスミドの作製にあたって、OsGA3ox2遺伝子プロモーターは、例えば、細菌と植物の両宿主で発現可能なバイナリーベクターに組み込むことが可能である。このようなバイナリーベクターは当業者に周知である。例えば、アグロバクテリウムの発現系を含む、pBI系などのベクターを用いると、微生物による植物への感染のシステムを利用し得る。適切な組換えプラスミドを用いることにより、イネ等の単子葉植物およびタバコ等の双子葉植物を含む任意の形質転換可能な植物に目的の異種遺伝子を導入し得る。
植物細胞とは、任意の植物細胞であり得る。植物細胞は、培養細胞、培養組織、培養器官、または植物体のいずれの形態であってもよい。好ましくは、培養細胞、培養組織、または培養器官であり、より好ましくは培養細胞である。本発明の生産方法に使用され得る植物種は、遺伝子導入を行い得る任意の植物種であり得る。
本発明の生産方法に使用され得る植物種の例としては、ナス科、イネ科、アブラナ科、バラ科、マメ科、ウリ科、シソ科、ユリ科、アカザ科、セリ科の植物が挙げられる。
ナス科の植物の例としては、Nicotiana、Solanum、Datura、Lycopersion、またはPetuniaに属する植物が挙げられ、例えば、タバコ、ナス、ジャガイモ、トマト、トウガラシ、ペチュニアなどを含む。
イネ科の植物の例としては、Oryza、Hordenum、Secale、Scccharum、Echinochloa、またはZeaに属する植物が挙げられ、例えば、イネ、オオムギ、ライムギ、ヒエ、モロコシ、トウモロコシなどを含む。
アブラナ科の植物の例としては、Raphanus、Brassica、Arabidopsis、Wasabia、またはCapsellaに属する植物が挙げられ、例えば、大根、アブラナ、シロイヌナズナ、ワサビ、ナズナなどを含む。
バラ科の植物の例としては、Orunus、Malus、Pynus、Fragaria、またはRosaに属する植物が挙げられ、例えば、ウメ、モモ、リンゴ、ナシ、オランダイチゴ、バラなどを含む。
マメ科の植物の例としては、Glycine、Vigna、Phaseolus、Pisum、Vicia、Arachis、Trifolium、Alphalfa、またはMedicagoに属する植物が挙げられ、例えば、ダイズ、アズキ、インゲンマメ、エンドウ、ソラマメ、ラッカセイ、クローバ、ウマゴヤシなどを含む。
ウリ科の植物の例としては、Luffa、Cucurbita、またはCucumisに属する植物が挙げられ、例えば、ヘチマ、カボチャ、キュウリ、メロンなどを含む。
シソ科の植物の例としては、Lavandula、Mentha、またはPerillaに属する植物が挙げられ、例えば、ラベンダー、ハッカ、シソなどを含む。
ユリ科に属する植物の例としては、Allium、Lilium、またはTulipaに属する植物が挙げられ、例えば、ネギ、ニンニク、ユリ、チューリップなどを含む。
アカザ科の植物の例としては、Spinaciaに属する植物が挙げられ、例えば、ホウレンソウを含む。
セリ科の植物の例としては、Angelica、Daucus、Cryptotaenia、またはApitumに属する植物が挙げられ、例えば、シシウド、ニンジン、ミツバ、セロリなどを含む。
本発明のプロモーターが作用し得る「植物」は、遺伝子導入の可能ないずれの植物をも包含する。「植物」は、単子葉植物および双子葉植物の両方を包含する。このような植物には、任意の有用植物、特に作物植物、蔬菜植物、および花卉植物が含まれる。好ましくは、イネ、トウモロコシ、モロコシ、オオムギ、コムギ、ライムギ、ヒエ、アワ、アスパラガス、ジャガイモ、ダイコン、ダイズ、エンドウ、ナタネ、ホウレンソウ、トマト、ペチュニアなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の方法が適用される最も好ましい植物は、イネであり、特に、ジャポニカイネである。
上述のように、OsGA3ox2遺伝子プロモーターは、栄養生長組織(特に、茎および/または葉)において特異的に発現し得る。従って、異種遺伝子として、茎および/または葉の伸長を抑制する機能を持つ遺伝子を利用することにより、矮性植物を作製することができる。本願明細書において「茎および/または葉の伸長を阻害する機能を持つ遺伝子」とは、その遺伝子産物が茎および/または葉の伸長を抑制し得るもの(例えば、ジベレリン分解系に関与する酵素(特に、2β水酸化酵素(この酵素は、活性型ジベレリン(GA1およびGA4)(3β水酸化酵素によって、ジベレリン基本骨格の3位の炭素が活性化されている)を、不活性型ジベレリン(GA8およびGA34)に、ジベレリン基本骨格の2位の炭素を水酸化することによって変換する)、細胞壁の拡大伸長に関与する酵素(例えば、種々の細胞壁多糖類合成酵素(例えば、グルカナーゼ、セルラーゼ、およびヘミセルラナーゼ)等をコードする遺伝子)と、その遺伝子自体が茎および/または葉の伸長を抑制する機能を示すもの(例えば、栄養生長組織(特に、茎および/または葉)の伸長時に発現する内因性遺伝子(例えば、ジベレリンの合成系に関与する遺伝子(例えば、シロイヌナズナGA4遺伝子)およびジベレリンの合成系に関与する酵素(例えば、20酸化酵素、3β水酸化酵素)をコードする遺伝子)のアンチセンスRNA、およびそのような内因性遺伝子を分解し得るリボザイム)とを含んでいう。矮性植物の選抜およびそれを用いる植物の品種改良のための手法は、当業者に周知である。植物の矮化には、上記ジベレリンのシグナル伝達系に関与する遺伝子、ならびにブラシノライド合成系およびシグナル伝達系に関与する遺伝子などもまた関与し得る。
上記の形質転換植物の作製はまた、矮性以外の形質を植物に付与するためにも利用し得る。例えば、毒性タンパク質をコードする異種遺伝子を用いることにより、茎葉を摂食する害虫などの制御を図ることができる。栄養生長組織(特に、茎および/または葉)での特異的な遺伝子発現を利用する、任意の有用植物の作製が、本願発明の範囲内にある。本発明のプロモーターによって発現される遺伝子には、化学物質を分解するタンパク質をコードする遺伝子もまた含まれる。このようなタンパク質として、除草剤分解タンパク質が挙げられる。除草剤分解タンパク質をコードする異種遺伝子を用いることにより、除草剤適用による所望の植物の選抜を図ることができる。
本発明のプロモーターの作用は、形質転換植物当代に加え、その後代植物にも遺伝し得る。形質転換当代植物および次世代植物、その伝播体(例えば、花粉)、およびその伝播体から生成された種子においても、本発明のプロモーターの作用は発揮し得る。後代への導入プロモーターの遺伝は、本プロモーターの配列をプローブとしたサザン分析によって確認され得る。
本願発明により、イネの遺伝子から、栄養生長組織(特に、茎および/または葉)で活性が高い、実用的なプロモーターの使用が提供される。従って、本願発明は、イネの品種改良のみならず、他の種々の植物の品種改良に利用され得る。
(実施例)
以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説明する。この実施例は、本発明を限定するものではない。実施例で使用した、材料、試薬などは、他に特定のない限り、商業的な供給源から入手可能である。
(実施例1:イネOsGA3ox2プロモーターによるGUS遺伝子の発現)
1.イネOsGA3ox2ゲノミック遺伝子の単離:ゲノミックライブラリーからのスクリーニング
(植物材料)
イネ種子(Oryza sativa)、ジャポニカ品種:「日本晴」、「どんとこい」「コシヒカリ」など)を1%次亜塩素酸ナトリウム中で1時間入れて滅菌し、そして滅菌蒸留水で完全にリンスした。土壌上で発芽させ、そして温室内で生長させた。
(手順)
PCRを、報告されたGA3β水酸化酵素配列間の保存領域から設計した鋳型および縮重プライマー(5’プライマー:5’-GTNGTNAARGTNGGNGARRT-3’(配列番号2);3’プライマー:5’-AYYTARTCRTTGGANGTNAC-3’(配列番号3))としてイネゲノムDNAを用いて実施した。これらの産物の1つの推定されたアミノ酸配列プライマーは、報告されたGA3β水酸化酵素の対応する領域に類似であった。報告されたGA3β水酸化酵素配列から予期されたサイズに対応する210bpのDNAフラグメントを得た。このPCR産物をイネゲノムライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして使用した。いくつかのクローンを単離し、そして各ゲノムクローンの制限地図に基づいて2つのグループに分けた。最後に、各グループの1つを配列決定し、そして各クローンをOsGA3ox1およびOsGA3ox2と称した(OsGA3ox1およびOsGA3ox2はそれぞれ、Oryza sativa GA3β水酸化酵素-1およびOryza sativa GA3β水酸化酵素-2をいう)。これは、GA3β水酸化酵素遺伝子全体を含んだクローンOsGA3ox1およびOsGA3ox2の単離を生じた。OsGA3ox1は、本発明者がプローブとして使用したフラグメントと配列を共有したが、OsGA3ox2は、フラグメントから対応する領域で異なる配列を含んだ。GA3β水酸化酵素をコードする全長cDNAクローンを、特異的プライマーを用いてイネ茎頂および開花していない花器から単離された全RNAを使用して逆転写PCR(RT-PCR)によって得た。RNAゲルブロット分析およびDNAゲルブロット分析のために、遺伝子特異的プローブであるOsGA3ox2全cDNA由来のBssHII-PvuII(519bp)フラグメントおよびOsGA3ox1由来のKpnI-PvuII(310bp)フラグメントを使用した。各特異的プローブをプローブとしてゲノムサザンハイブリダイゼーションのために使用したとき、交差ハイブリダイゼーションは検出されなかった(データは示さず)。各cDNA(OsGA3ox1またはOsGA3ox2)はそれぞれ、379アミノ酸または370アミノ酸のポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含有した(データは示さず)。ゲノムOsGA3ox2は、短いサイズ(110bp)を有する1つのイントロンを含んだ。このイントロンは、双子葉植物において以前に報告されたGA3β水酸化酵素と同じ位置に位置した。他のクローンOsGA3ox1は、2つのイントロンを含んだ。一方は、OsGA3ox2の場合と同じ位置に位置した。それはほとんど同等のサイズであった(110bp)。他方は、補因子の結合の位置に位置した。補因子2-オキソグルタル酸(400bp)の結合の位置に位置した(データは示さず)。両クローンの推定アミノ酸配列は、他のGA3β水酸化酵素に対する高度の類似性を共有したが、それらは互いに対して最も高い類似性を示した(56.6%同一度および88.2%類似性)。
2.OsGA3ox2遺伝子プロモーターを有する組換えプラスミドの作製
イネOsGA3ox2遺伝子プロモーターを有するベクターの作製を図1に示す。
イネOsGA3ox2遺伝子の5’非翻訳領域を含み得る断片を得るために、1.により得られたクローンをBamHIおよびHindIIIで消化し、アガロース電気泳動により約2.5Kbpの断片を回収した。OsGA3ox2遺伝子のプロモーターの機能を確認するために、植物細胞用発現ベクターpBI101(CLONTECH Laboratories Inc.,Palo Alto,CA)を使用した。本ベクターは、順に、ノパリン合成酵素プロモーター(NOS-Pro)、カナマイシン耐性を付与するためのネオマイシンフォスフォトランスフェラーゼIIコーディング領域(NPTII(KON R))、ノパリン合成酵素のターミネーター(NOS-T)、β-グルクロニダーゼ(GUS)コーディング領域およびノパリン合成酵素のターミネーター(NOS-T)を有している。このpBI101をHindIIIおよびSmaIで消化した。この発現ベクターに挿入するために、上記OsGA3ox2遺伝子断片をさらにSmaIで消化した。得られた断片は、クローン挿入配列の1番目から2,406番目までの配列を有し、そして5’非翻訳配列、第1エキソン、第1イントロン、および第2エキソンの一部を含んだ(図2A~C)。断片の5’末端側は、BamHI部位であり、3’末端はSmaI部位である。この断片を、上記の制限消化した発現ベクターに連結し、GUSレポーター遺伝子との融合を含むpBI101-Hm3を作製した。本発現ベクターには、ハイグロマイシン耐性を付与するために、GUSコーディング領域の下流に、ハイグロマイシンフォスフォトランスフェラーゼ(HPT)遺伝子(カリフラワーモザイクウイルス35S(35S)とノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)との間に位置する)もまた挿入した。
3.イネ種子への形質転換とGUS遺伝子の発現
イネの代表的品種である日本晴の種子を、籾殻の除去後、無傷の状態で、70%エタノール中に10秒間置いた後、水洗し、その後0.1% Tween20および2.5%次亜塩素酸ナトリウム(NaC10)の水溶液中に30分置くことにより殺菌した。水での十分な洗浄の後、イネを以下の無菌操作に供した。
(前培養)
種子を、2,4-Dを含むN6D培地(30g/lスクロース、0.3g/lカザミノ酸、2.8g/lプロリン、2mg/l 2,4-D、4g/lゲルライト、pH5.8)に播種し、5日間、27℃~32℃で保温した。この間に種子は発芽した。
(植物発現用ベクター)
上記で生成したpBI101-Hm3で、アグロバクテリウムEHA101を形質転換した(Hoodら、J.Bacteriol.,168:1291-1301(1986))。EHA101は、ヘルパープラスミドのvir領域が強病原性アグロバクテリウムA281由来の菌である。アグロバクテリウムを、ハイグロマイシン(50mg/l)を補充したAB培地(グルコース(5g/L)、KHPO(3g/L)、NaHPO・2HO(1.3g/L)、NHCI(1g/L)、KCI(150mg/L)、CaCl・2HO(10mg/L)、FSO・7HO(2.5mg/L)、pH7.2、bacto agar(1.5%)(3g/200ml)、1M MgSO・7HO(120μl/100ml))中に、2~3日間、25℃で暗所で培養した。
(アグロバクテリウム感染)
アセトシリンゴン2μg/mlを添加したAAM培地(AA-1(×1000)1ml(MnSO・4~6HO(1000mg/100ml)、HBO(300mg/100ml)、ZnSO・7HO(200mg/100ml)、NaMoO・2HO(25mg/100ml)、CuSO・5HO(2.5mg/100ml)、CoCl・6HO(2.5mg/100ml)、KI(75mg/100ml))、AA-2(×1000)1ml(CaCl・2HO(15.0g/100ml))、AA-3(×1000)1ml(MgSO・7HO(25g/100ml))、AA-4(×1000)1ml(Fe-EDTA(4.0g/100ml))、AA-5(×1000)1ml(NaHPO・2HO(15.0g/100ml))、AA-6(×200)5ml(ニコチン酸(20mg/100ml)、チアミンHCl(200mg/100ml)、プリドキシンHCl(20mg/ml)、ミオイノシトール(2000mg/100ml))、AA-Sol(×100)10ml(L-アルギニン(5300mg/300ml)、グリシン(225mg/300ml))、AA-KCl(×50)20ml(KCl(3g/20ml))、カザミノ酸(500mg/L)、スクロース(68.5g/L)、グルコース(36g/L)、L-グルタミン(900mg/L)、L-アスパラギン酸(300mg/L)、pH5.2)中に形質転換されたアグロバクテリウムを懸濁させた。この懸濁液に、前培養した上記種子を90秒間浸漬した後、2N6-AS培地(30g/lスクロース、10g/lグルコース、0.3g/lカザミノ酸、2mg/l 2,4-D、10mg/lアセトシリンゴン、4g/lゲルライト、pH5.2)に移植した。暗黒下で3日間、25℃で保温して共存培養した。
(除菌および選抜)
共存培養の完了後、500mg/lカルベニシリンを含有するN6D培地を用いて、種子から、アグロバクテリウムを洗い流した。次いで、形質転換された種子の選抜を、以下の条件で行った。
第1回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(50mg/l)を補充した、2mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上に、種子を置き、7日間、30℃で保温した。
第2回目の選抜:カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(50mg/l)を補充した、2~4mg/lの2,4-Dを含むN6D培地上に、種子を置き、さらに7日間、30℃で保温した。
(再分化)
選抜された形質転換種子を、以下の条件で再分化させた。
第1回目の再分化:再分化培地(カルベニシリン(500mg/l)およびハイグロマイシン(25mg/l)を補充したMS培地(30g/lスクロース、30g/lソルビトール、2g/lカサミノ酸、2mg/lカイネチン、0.002mg/l NAA、4g/lゲルライト、pH5.8)上に、選抜した種子を置き、2週間、30℃で保温した。第2回目の再分化:第1回目の再分化において使用したのと同じ再分化培地を使用して、さらに2週間、30℃で保温した。
(鉢上げ)
再分化した形質転換体を、発根培地(ハイグロマイシン(25mg/l)を補充した、ホルモンを含まないMS培地)上に移して、根の発育を確認した後に、鉢上げした。
4.GUS染色の組織特異的発現
植物組織における上記プロモーターによる遺伝子発現を検討するために、GUS活性の組織化学的分析を行った。このような組織化学的分析は、植物細胞工学、第4巻、第4号、281~286頁に記載の手順を用いて実施した。本方法は、Jeffersonらの方法(EMBO J 6:3901-3907(1987))に準拠し、Kosugiらの改良を伴う(Kosugiら,Plant Science 70:133-140(1990))。簡単には、切除した切片を、5%(w/w)寒天中に包埋し、そして寒天ブロックをマイクロスライサーを用いて薄く切った。厚さ100~130μmの組織切片を、1mM 5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-β-D-グルクロニド(X-Gluc)、7%(v/v)メタノール、および50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.0)を含有する組織化学基質溶液中に浸漬し、そして37℃で4時間インキュベートした。2mM DTTを、切りとってすぐ;寒天包埋の段階;切削の過程;または切片の減圧脱気時に添加した。また5mMの濃度のDTTを、37℃におけるGUS反応時に添加した。エタノールを添加して反応を停止させ、脱色させ、そして切片を顕微鏡下で観察した。この結果、イネの茎において高いGUS活性がみられた。茎を顕微鏡で観察したところ、茎壁がGUS活性によって青く染色されていた(図3)。
(実施例2:イネOsGA3ox2プロモーターによる2β水酸化酵素遺伝子の発現)
実施例1の第2節において、イネOsGA3ox2遺伝子プロモーター領域として、イネOsGA3ox2遺伝子のBamHI部位からSmaI部位までの領域の代わりにイネOsGA3ox2遺伝子のXbaI部位からSmaI部位までの領域(図2A~Cを参照のこと)を、GUSコーディング領域の代わりに2β水酸化酵素をコードする遺伝子(OsGA2ox1)のコーディング領域を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、イネ種子を形質転換および再生させて、トランスジェニック植物を作製した。
植物発現用ベクターの作製について、以下に説明する。
イネ(Oryza sative L.、品種:日本晴)由来のゲノムDNAを増幅するために、推定Alabidopsis GA 2β-ヒドロキシラーゼ遺伝子、ジオキシゲナーゼのMarah macrocarpa mRNA(受入番号(Accession No.)Y09113;MacMillan、Plant Physiol.113,1369-1377(1997))、イネGA20酸化酵素遺伝子(受入番号U50333;Toyomasuら、Physiol.Plant.99,111-118(1997))、イネGA3β水酸化酵素遺伝子および他の2-オキソグルタル酸依存性ジオキシゲナーゼ酵素の保存領域から設計した2つの縮重オリゴヌクレオチドプライマーを作製した(順方向プライマー、5’-GGNTTYGGNGARCAYWCNGAYCC-3’(配列番号4);および逆方向プライマー5’-GGISHISCRAARTADATIRTISWIA-3’(配列番号5))。増幅フラグメント(約80bp)をpCRII(Invitrogen、Carlsbad、CA)にクローニングし、そしてそれらの配列を確認した。64の独立したクローンの1つが、新規な2-オキソグルタル酸依存性様アミノ酸を含み、そして、これは、イネGA2β水酸化酵素遺伝子をコードすると推定された。この部分アミノ酸配列を使用して、DDBJ Nucleotide Sequence Databaseを検索し、1つのイネESTクローン(受入番号C72618)を得た。このESTクローンの配列に基づいてオリゴヌクレオチドプライマー(順方向プライマー、5’-GCGGCGTTCTTCGCG-3’(配列番号6);および逆方向プライマー5’-CTATTGTGAATGAGTACATT-3’(配列番号7))を設計し、そしてPCRにおいてイネゲノムDNAの鋳型として使用した。増幅されたフラグメントを、pCR II(Invitrogen、Carlsbad、CA)にクローニングし、そしてそれらの配列を確認した。この230bpフラグメントをcDNAクローンおよびゲノムクローンについてスクリーニングするためのプローブとして使用した。
イネ未熟種子から構築したcDNAライブラリーおよびSau3AIで部分消化したイネゲノムDNAから構築したゲノムライブラリーを、上述のように調製したプローブを用いてスクリーニングした。ハイブリダイゼーションを、65℃で14時間、5×SSC(1×SSCは、0.15M NaCl、15mMクエン酸ナトリウムである)、5×デンハート溶液(1×デンハート溶液は、0.02%Ficoll、0.02%PVP(ポリビニルピロリドン)、0.02%BSA(ウシ血清アルブミン)である)、0.5%(w/v)SDS、および20mg/lサケ精子DNA中で行い、そしてフィルターを、室温で2×SSC、0.1%(w/v)SDS中で洗浄した。スクリーニングにより得られたcDNAをOsGA2ox1と称し、これは、382アミノ酸配列を含む1,146bpのオープンリーディングフレームを含んだ(データは示さず)。OsGA2ox1のcDNAを、その5’側を制限酵素EcoRIで、そしてその3’側を制限酵素EcoRVで切り出し、pBI101ベクターにインフレームに連結されるように平滑化し、次いで、このベクターのSmaI部位に連結した。実施例1の2.節で得たイネOsGA3ox2遺伝子のXbaI-HindIII断片を、さらにXbaIおよびSmaIで消化した。上記pBI101ベクターにおいて、OsGA2ox1の上流のXbaI-SmaI部位にこのOsGA3ox2断片を連結した。
成長した植物を図4に示す。図4の右側が、形質転換種子から得られた植物体を示し、左側は未処理のコントロール植物を示す(日本晴)。形質転換植物は、コントロール植物に比較して、明らかに背丈が低く、矮化していた。これは、本発明のプロモーターによって、茎において2β水酸化酵素が発現されたことを示す。
産業上の利用可能性
本願発明におけるOsGA3ox2遺伝子プロモーターは、茎葉で非常に高い活性を有している。従って、本願発明は、栄養生長組織の遺伝子操作による、イネ等の植物の品種改良のために有用である。
【配列表】
JP0003890410B2_000002t.gifJP0003890410B2_000003t.gifJP0003890410B2_000004t.gifJP0003890410B2_000005t.gifJP0003890410B2_000006t.gifJP0003890410B2_000007t.gifJP0003890410B2_000008t.gif
【図面の簡単な説明】
図1は、本実施例で使用した発現ベクターpBI101-Hm3の作製を示す模式図である。
図2A~Cは、OsGA3ox2の5’非翻訳配列、第1エキソン、第1イントロン、および第2エキソンの一部を含む領域の配列を示す図である。図中、大文字の塩基は、エキソン部位を示し(1567位~2039位および2151位~2406位)、下方にコードされたアミノ酸の配列を示す。図2A~Cにおいて、制限酵素認識部位もまた示す。
図3は、茎のGUS組織染色の結果を示す写真である。
図4は、本プロモーターが連結されたOsGA2ox1遺伝子により形質転換された矮性植物を示す写真である。
図面
【図1】
0
【図2A】
1
【図2B】
2
【図2C】
3
【図3】
4
【図4】
5