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明細書 :機能性植物、その機能性植物を生産するために使用されるプロモーター、ならびにその利用法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4113952号 (P4113952)
登録日 平成20年4月25日(2008.4.25)
発行日 平成20年7月9日(2008.7.9)
発明の名称または考案の名称 機能性植物、その機能性植物を生産するために使用されるプロモーター、ならびにその利用法
国際特許分類 C12N  15/09        (2006.01)
A01H   5/00        (2006.01)
C12N   5/10        (2006.01)
C12Q   1/68        (2006.01)
FI C12N 15/00 ZNAA
A01H 5/00 A
C12N 5/00 C
C12Q 1/68 A
請求項の数または発明の数 9
全頁数 38
出願番号 特願2003-577613 (P2003-577613)
出願日 平成14年3月22日(2002.3.22)
国際出願番号 PCT/JP2002/002817
国際公開番号 WO2003/079769
国際公開日 平成15年10月2日(2003.10.2)
審査請求日 平成17年3月11日(2005.3.11)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】大槻 寛
【氏名】大島 正弘
個別代理人の代理人 【識別番号】100078282、【弁理士】、【氏名又は名称】山本 秀策
【識別番号】100062409、【弁理士】、【氏名又は名称】安村 高明
【識別番号】100113413、【弁理士】、【氏名又は名称】森下 夏樹
審査官 【審査官】中村 正展
参考文献・文献 特表平06-510198(JP,A)
GenBank Accession: AC092387 [gi:18369982],2002年 2月27日,OJ1004_F02.2,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez/viewer.fcgi?18369982:OLD09:299204
Curr. Opin. Plant Biol.,2000年,vol. 3,138-141
Plant J.,1998年,vol. 15,469-477
Transgenic Res.,2002年 2月,vol. 11,69-72
Plant J.,2000年,vol. 22,19-27
Plant Mol. Biol.,2000年,vol. 43,537-544
Plant Cell,1990年,vol. 2,163-171
Plant Mol. Biol.,1999年,vol. 41,45-55
Nature Genet.,2000年,vol. 26,403-410
Plant Cell,2001年,vol. 13,61-72
Science,2000年,vol. 290,2110-2113
Plant Mol. Biol.,2001年,vol. 48,99-118
Transgenic Res.,2000年,vol. 9,33-42
GenBank Accession AC091680
調査した分野 C12N 15/00-15/90
C12N 5/00- 5/10
A01H 5/00
C12Q 1/68
JSTPlus(JDream2)
WPIDS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/PDB/Geneseq
特許請求の範囲 【請求項1】
配列番号1に示す配列からなるプロモーターおよび該プロモーターに作動可能に連結された該プロモーターとは異なる由来の遺伝子を含む形質転換植物。
【請求項2】
イネである、請求項1に記載の形質転換植物。
【請求項3】
前記遺伝子は、病害抵抗性遺伝子または虫害抵抗性遺伝子である、請求項1に記載の形質転換植物。
【請求項4】
前記遺伝子は、ビタミン合成遺伝子、糖合成遺伝子、脂質合成遺伝子、ポリケチド合成遺伝子、光合成系遺伝子、機能性成分合成遺伝子および転写因子からなる群より選択される遺伝子である、請求項1に記載の形質転換植物。
【請求項5】
配列番号1に示す配列からなるプロモーター。
【請求項6】
請求項に記載のプロモーターを含む発現カセット。
【請求項7】
カルスにおける前記プロモーターとは異なる由来の遺伝子の発現を特異的に誘導する、請求項に記載の発現カセット。
【請求項8】
配列番号1に示す配列からなるプロモーターおよび該プロモーターに作動可能に連結された該プロモーターとは異なる由来の遺伝子を含む植物から得られる形質転換植物の利用可能部位。
【請求項9】
葉、茎または果実である、請求項に記載の利用可能部位。
発明の詳細な説明 技 術 分 野
本発明は、機能性植物、その機能性植物を生産するために使用されるプロモーター、ならびにその利用法に関する。詳細には、cDNAライブラリーのデータベースを利用して特異的プロモーターを得ることにより機能性植物を作製する方法に関する。
背 景 技 術
遺伝子工学が発展する中、トランスジェニック植物を作製するための種々の方法が開発されている。トランスジェニック植物において特定の遺伝子を特異的に発現させるためには、発現を促進するためのプロモーターのような遺伝エレメントをその特定の遺伝子に作動可能に連結させた混合物を形質転換などにより植物に導入することが必要である。
植物における遺伝子発現を調節するプロモーターは、植物遺伝子工学の必須エレメントである。植物における選択された遺伝子の発現に有用なプロモーターがが種々存在する(BENFEY P N;REN L;CHUA N-H,EMBO J,9(6).1990.1685-1696.,1990)。プロモーター領域の特定は、当該分野で周知の方法に基づいて実施され得る。簡単に述べると、プロモーター領域の候補配列およびレポーター遺伝子(例えば、GUS遺伝子)を作動可能に連結した発現カセットを構築する。構築した発現カセットを用いて適切な植物細胞を形質転換し、形質転換細胞を植物に再分化する。形質転換植物におけるレポーター遺伝子の発現を、適切な検出系(例えば、色素染色)を利用して検出する。検出結果に基づいて、プロモーター領域およびその発現特性を確認し得る。
細胞(例えば、植物細胞)において遺伝子を発現させるためには、その遺伝子は、通常細胞においてある酵素によって認識されるプロモーターに作動可能に連結されなければならない。プロモーターまたは転写調節領域といわれる、通常遺伝子の5’非コード領域(すなわち、コード領域のすぐ5’の領域)に存在する領域は、mRNA転写物を産生するために遺伝子の転写を開始させる。次いで、mRNAは、コードされたポリペプチドを得るために、細胞のリボソームで翻訳される。
プロモーターは、代表的には、約500~1500塩基を含み、そしてその制御下で遺伝子の調節された発現を提供し得る。トランスジェニック植物における異種遺伝子または遺伝子の選択された配列の発現には、代表的には、構成的プロモーター、すなわち、常時かつほとんどの組織に植物全体において産物の発現を誘導するプロモーターが使用されている。
植物において選択された遺伝子を発現するためにウイルス由来のプロモーターが利用されている。そのようなプロモーターを有する既知のウイルス遺伝子の例としては、ウイルスのカリモウイルスファミリー(二本鎖DNAウイルスの1群)で見いだされるものが挙げられ、そしてカリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35S(Balazsら,1982;Guilleyら,1982;Odellら,1985;Odellら,1987;Odellら,1988;TOmmerupら,1990;Jeffersonら,1987a;Jefferson,1987b)およびCaMV 19Sプロモーター(Fraleyら,1994)、およびゴマノハグサモザイクウイルス(FMV)(Rogers,1995)プロモーターが挙げられる。
植物における遺伝子発現を調節するために有用でありそして細菌供給源から得られるプロモーター、例えば、Agrobacterium由来プロモーターもまた同定および単離されている。このようなプロモーターには、Agrobacterium T-DNAオパインシンターゼ遺伝子に由来するものが挙げられ、そしてノパリンシンターゼ(nos)プロモーター(Rogers,1991)、オクトピンシンターゼ(ocs)プロモーター(LeisnerおよびGelvin,1988)、およびマンノピンシンターゼ(mas)プロモーターが挙げられる。
CaMV35Sプロモーターは高発現系でも弊害が多い。構成的に高発現つまりあらゆる組織で常に遺伝子産物を多量に生産しつづけていることから植物個体内部の限りある代謝産物を不必要に無用の組織で浪費する結果となり、生育量の低下や収量性の減少が生じる恐れがある。構成的な高発現により利用可能部位において遺伝子産物が蓄積していることに対する消費者の不信感は大きく、また構成的な高発現は植物体内におけるサイレンシング機構の誘導を招く恐れがある。
その上構成的発現を提供するために効果的な植物プロモーター(植物供給源に由来するプロモーター)でさえ、ほとんど知られていない。わずかな例としては、hsp80、カリフラワーに由来する熱ショックタンパク質80(BrunkeおよびWilson,1993)、およびトマトユビキチンプロモーター(Pictonら,1993)が挙げられる。これらのプロモーターは、形質転換された植物組織において異種核酸配列の構成的発現を導くために使用され得るが、CaMV 35Sプロモーターと同様に、構成的に高発現つまりあらゆる組織で常に遺伝子産物を多量に生産しつづけていることから植物個体内部の限りある代謝産物を不必要に無用の組織で浪費する結果となり、生育量の低下や収量性の減少が生じる恐れがあるという問題がある。構成的な高発現により利用可能部位において遺伝子産物が蓄積していることに対する消費者の不信感は大きく、また構成的な高発現は植物体内におけるサイレンシング機構の誘導を招く恐れがある。
従って、従来のプロモーターでは、所望の機能的発現を実現するトランスジェニック植物を作製することは困難である。
(発明が解決しようとする課題)
従って、本発明は、機能性植物の作製を行うことを課題とし、特に、所望の遺伝子を植物の所望の部位に任意に発現させるための系を構築することを課題とする。
(配列表の説明)
配列番号1は、CG0060_1由来のクローンのプロモーター領域である。
配列番号2は、EB0082_2由来のクローンのプロモーター領域である。
配列番号3は、RA1583_1由来のクローンのプロモーター領域である。
配列番号4は、GenomeWalkerのアダプタープライマーである。
配列番号5は、実施例4のアダプタープライマー配列の一部および制限酵素認識配列を含むプライマーである。
配列番号6は、実施例4の翻訳開始点直前の配列および制限酵素認識配列を含むプライマーである。
配列番号7は、CG0060_1由来のクローンのプロモーター領域を含む両端に制限酵素認識配列を付加したプロモーターカセットである。
配列番号8は、実施例5で使用した、イネゲノム配列の一部および制限酵素認識配列を含むプライマーである。
配列番号9は、実施例5で使用した、翻訳開始点直前の配列および制限酵素認識配列を含むプライマーである。
配列番号10は、EB0082_2由来のクローンのプロモーター領域を含む、両端に制限酵素認識配列を付加したプロモーターカセットである。
配列番号11は、実施例6で使用した、翻訳開始点直前の配列および制限酵素認識配列を含むプライマーである。
配列番号12は、RA1583_1由来のクローンのプロモーター領域を含む、両端に制限酵素認識配列を付加したプロモーターカセットである。
発 明 の 要 旨
本発明は、cDNAライブラリーデータベースにおける発現頻度に着目し、所望の発現頻度を有する遺伝子に含まれるプロモーターを単離し、所望の遺伝子とともにそのプロモーターを利用することで、所望の部位で所望の遺伝子産物を発現する機能性植物を作出することにより上記課題を解決した。
従って本発明は以下を提供する。
1.特異的発現を行う少なくとも1つのプロモーターおよび該プロモーターに作動可能に連結された遺伝子を含む、植物であって、該プロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、植物。
2.前記遺伝子は、構成的に発現される、項目1に記載の植物。
3.前記遺伝子は、葉において特異的に発現される、項目1に記載の植物。
4.前記遺伝子は、カルスにおいて特異的に発現される、項目1に記載の植物。
5.イネである、項目1に記載の植物。
6.前記遺伝子は、病害抵抗性遺伝子または虫害抵抗性遺伝子である、項目1に記載の植物。
7.前記遺伝子は、ビタミン合成遺伝子、糖合成遺伝子、脂質合成遺伝子、ポリケチド合成遺伝子、光合成系遺伝子、機能性成分合成遺伝子および転写因子からなる群より選択される遺伝子である、項目1に記載の植物。
8.特異的発現を行うプロモーターであって、該プロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、プロモーター。
9.果実における遺伝子の発現を駆動しない、項目8に記載のプロモーター。
10.葉における遺伝子の発現を特異的に駆動する、項目8に記載のプロモーター。
11.カルスにおける遺伝子の発現を特異的に駆動する、項目8に記載のプロモーター。
12.特異的発現を行うプロモーターを含む発現カセットであって、該プロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、発現カセット。
13.構成的な遺伝子の発現を駆動する、項目12に記載の発現カセット。
14.葉における遺伝子の発現を特異的に駆動する、項目12に記載の発現カセット。
15.カルスにおける遺伝子の発現を特異的に駆動する、項目12に記載の発現カセット。
16.特異的発現を行う少なくとも1つのプロモーターおよび該プロモーターに作動可能に連結された遺伝子を含む植物から得られる植物の利用可能部位であって、該プロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、植物の利用可能部位。
17.葉、茎または果実である、項目16に記載の利用可能部位。
18.所望の遺伝子産物を生産する方法であって、該方法は、以下:
プロモーターの特異性を決定する工程であって、該プロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、工程;
該プロモーターと該所望の遺伝子産物をコードする核酸分子とを作動可能に連結して連結混合物を作製する工程;
該連結混合物を植物に導入する工程;
該植物を生長させる工程;および
該植物中の該所望の遺伝子産物を収集する工程、
を包含する、方法。
19.所望の遺伝子産物を特異的に発現する植物を生産する方法であって、該方法は、以下:
プロモーターの特異性を決定する工程であって、該プロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、工程;
該プロモーターと該所望の遺伝子産物をコードする核酸分子とを作動可能に連結して連結混合物を作製する工程;
該連結混合物を植物に導入する工程;および
該植物を生長させる工程、
を包含する、方法。
20.前記プロモーターの特異性は、DNAチップによる解析によって決定される、項目19に記載の方法。
21.項目19に記載の方法によって得られる植物から得られる、遺伝子産物。
発 明 の 実 施 の 形 態
以下に本発明を詳説する。本明細書の全体にわたり、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、独語の場合の「ein」、「der」、「das」、「die」などおよびその格変化形、仏語の場合の「un」、「une」、「le」、「la」など、スペイン語における「un」、「una」、「el」、「la」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
本明細書において用いられる「機能性植物」とは、ある植物のある機能が、天然における状態の機能よりも、顕著(好ましくは、統計学的に有意に)変化(例えば、追加、増強、減少、消滅など)した植物をいう。ここで、植物の「機能」とは、植物の生理作用をいう。
本明細書において用いられる「プロモーター」とは、遺伝子の転写の開始部位を決定し、またその頻度を直接的に調節するDNA上の領域をいい、RNAポリメラーゼが結合して転写を始める塩基配列である。
本明細書において、「プロモーター領域」とは、ある構造遺伝子配列付近の領域であって、プロモーター活性を有する領域をいう。「推定プロモーター領域」とは、ある構造遺伝子配列付近の領域であって、プロモーター活性を有すると考えられる領域をいう。推定プロモーター領域は、遺伝子の転写が開始される際にRNAポリメラーゼが結合する遺伝子上流の塩基配列と推定される領域であり、推定タンパク質コード領域の第1エキソンの上流約2kbp以内の領域であることが多いので、DNA解析用ソフトウエアを用いてゲノム塩基配列中のタンパク質コード領域を予測すれば、プロモータ領域を推定することはできる。推定プロモーター領域は、構造遺伝子ごとに変動するが、通常構造遺伝子の上流にあるが、これらに限定されず、構造遺伝子の下流にもあり得る。好ましくは、推定プロモーター領域は、第一エキソン翻訳開始点から上流約2kbp以内に存在する。
本発明のプロモーターの配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子は、本発明のプロモーターと同一または類似の活性を有し得る。そのような活性は、ベータグルクロニダーゼ(GUS)遺伝子、ルシフェラーゼ遺伝子、または緑色蛍光タンパク質(GFP)の遺伝子をレポーター遺伝子として使うアッセイ、生化学的あるいは細胞組織学的な検定により確認することができる。そのようなアッセイは、当該分野における周知慣用技術に属することから(Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995);Jefferson,Plant Molec.Biol.Reporter 5:387(1987);Ow et al.,Science 234:856(1986);Sheen et al.,Plant J.8:777-784(1995))、当業者は何ら困難を伴わずに、本発明の配列の連続する少なくとも10個のヌクレオチド配列を含む核酸分子が本発明のプロモーターと同一または類似のあるいは実質的に同等以上の活性を有することを確認することができる。本明細書では、上記アッセイにおいて、検出誤差範囲内で同じプロモーター活性を有することが判定されたときに実質的に同等以上のプロモーター活性を有するという。
本発明のプロモーターの長さは、通常10ヌクレオチド以上であるが、好ましくは、20ヌクレオチド以上、30ヌクレオチド以上、40ヌクレオチド以上、50ヌクレオチド以上、60ヌクレオチド以上、70ヌクレオチド以上、80ヌクレオチド以上、90ヌクレオチド以上、100ヌクレオチド以上、150ヌクレオチド以上、200ヌクレオチド以上、300ヌクレオチド以上の長さであり得る。
本発明のプロモーターは、従来のプロモーター(例えば、ミニマムプロモーター(35Sプロモーター由来の約80塩基対からなるプロモーター(Hatton et al.,Plant J.,7:859-876(1995);Rouster et al.,Plant J.,15:435-440(1998);Washida et al.,Plant Mol.Biol.,40:1-12(1999))など)につなげて利用することができる。この場合、従来組織特異性を示さないまたは弱い特異性を示す、あるいは別の特異性を示すプロモーターであっても、本発明のプロモーターまたはその断片を付加することによって、根および/または茎頂に組織特異的に強く機能するプロモーターを作製することができる(Hatton et al.,Plant J.,7:859-876(1995);Rouster et al.,Plant J.,15:435-440(1998);Washida et al.,Plant Mol.Biol.,40:1-12(1999))。
本明細書において用いられる「植物」とは、植物界に属する生物の総称であり、代表的には、細胞壁の形成・クロロフィルによる同化作用をもつ顕花植物をいうをいう。「植物」は、単子葉植物および双子葉植物のいずれも含む。好ましい植物としては、例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガムなどのイネ科に属する単子葉植物が挙げられる。好ましい植物のほかの例としては、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、サツマイモ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ニンジン、キウリ、柑橘類、白菜、レタス、モモ、ジャガイモおよびリンゴが挙げられる。好ましい植物は作物に限られず、花、樹木、芝生、雑草なども含まれる。特に他で示さない限り、植物は、植物体、植物器官、植物組織、植物細胞、および種子のいずれをも意味する。植物器官の例としては、根、葉、茎、および花などが挙げられる。植物細胞の例としては、カルスおよび懸濁培養細胞が挙げられる。
本明細書において用いられる植物の「利用可能部位」とは、植物の部分であって、生物がその植物を摂取する場合にその生物が摂取することができる部分をいう。生物がヒトであり、植物がイネである場合、「利用可能部位」は「可食部」ともいい、通常利用可能部位は、米粒を含む。なお、白米として食される米粒における胚乳がイネにおける可食部といえる。米粒は、イネ種子の構成要素である穎・胚・胚乳・種皮のうち、胚および胚乳をさす。生物がウシであり植物がイネである場合、通常利用可能部位は根を除く植物体全体をさす。本明細書において、「果実」とは、子房が発達した器官果実内には受精した胚珠が発達して種子を形成する(イネ科の場合は特に穎果をいう)。本明細書において「種子」とは、胚珠が発達して形成される普遍的な散布体をいい、胚、胚乳および種皮からなる。
本明細書において、「遺伝子」とは、遺伝の機能的単位をいい、通常染色体上の特定の部位(座)を占める。遺伝子は通常、細胞分裂において正確に自分を複製することができ、酵素などの他のタンパク質の合成を支配する。機能単位としての遺伝子は,DNAの巨大分子の不連続的な分節からなっており,このDNA分子は,特定のペプチドのアミノ酸配列をコードする正しい配列の塩基(A、T、GおよびC)を含む。遺伝子は、通常DNAによってその情報が記載されるが、RNAにより記載されることもある。上述のように通常遺伝子は、染色体中に存在し、すべての染色体は、例えば、ヒトの雄の性染色体(XとY)を除いて対になっていることから、遺伝子は通常、配偶子を除くすべての細胞中に対になって存在し、植物でも同様である。遺伝子は、通常、タンパク質をコードする領域(エキソン)のほか、エキソンの間に存在するイントロン、第1エキソン上流の発現制御領域(プロモーター領域)、タンパク質コード領域の下流領域を含む。
本明細書において、遺伝子が「特異的に発現する」とは、その遺伝子が、植物の特定の部位または時期において他の部位または時期とは異なる(好ましくは高い)レベルで発現されることをいう。特異的に発現するとは、ある部位(特異的部位)にのみ発現してもよく、それ以外の部位においても発現していてもよい。好ましくは特異的に発現するとは、ある部位においてのみ発現することをいう。
本明細書において「作動可能に連結された(る)」とは、所望の配列の発現(作動)がある転写翻訳調節配列(例えば、プロモーター)または翻訳調節配列の制御下に配置されることをいう。プロモーターが遺伝子に作動可能に連結されるためには、通常、その遺伝子のすぐ上流にプロモーターが配置されるが、必ずしも隣接して配置される必要はない。従って、この場合、「このプロモーターがその遺伝子に作動可能に連結される」とは、そのプロモーターがその遺伝子の発現を制御し得る限り、どのような相対的位置関係であってもよい。
本明細書において、植物における遺伝子の発現について用いられる場合、一般に、「部位特異性」とは、植物の部位(例えば、根、茎、幹、葉、花、種子、胚芽、胚、果実など)におけるその遺伝子の発現の特異性をいう。「時期特異性」とは、植物の生長段階(例えば、発芽後の芽生えの日数)に応じたその遺伝子の発現の特異性をいう。「ストレス応答性」とは、植物に与えられた少なくとも一種のストレスに対して、その遺伝子の発現が変化することをいう。
本明細書において使用される「cDNAデータベース」は、植物の組織から抽出したmRNAからcDNAを合成し、大規模クローニングを行って配列決定したものをデータベース化したものをいう。イネゲノムプロジェクトにおいては、ベンジルアデニン処理カルス、ジベレリン処理カルス、ヒートショック処理カルス、増殖期カルス、幼根、幼緑葉、幼黄化葉、開花期穂よりそれぞれ抽出したmRNAに由来するcDNAライブラリを作製し、ランダムに塩基配列を決定したものである。cDNAデータベースの発現頻度は、使用したサンプル個数のうち、実際に発現した個数の割合を計算することによって算出される。cDNAデータベースとしては、イネゲノムプロジェクトのようなゲノム計画において公表されたデータベースに基づいて作成したものが挙げられる。
発現頻度に基づいて決定されたプロモーターの特異性は、そのプロモーターを含有する遺伝子を含むcDNAデータベースにおけるそのプロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に依存する。従って、本発明において用いられるプロモーターの特異性は、そのプロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおけるそのプロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定されることになる。
このように、本明細書の記載に基づけば、当業者であれば、所望の遺伝子に所望の発現特性を付与することが可能であり、所望の遺伝子が所望の特異性をもって発現する植物を作出することができる。
本明細書において、導入された遺伝子が「発現されない」とは、その遺伝子がまったく発現されないか、またはその導入された遺伝子の宿主に実質的に影響を与えない程度で発現されることをいう。実質的に影響を与えない程度で発現される代表例としては、例えば、政府機関が定める基準以下で発現されることが挙げられる。
本明細書において、ある因子が遺伝子の発現を「駆動する」(drive)とは、その遺伝子がその因子の制御下に置かれることによりその遺伝子の発現が促進されることをいう。ある因子が遺伝子の発現を「駆動しない」とは、その遺伝子がその因子の制御下に置かれても、その遺伝子の発現がまったく促進されないか、またはその導入された遺伝子の宿主に実質的に影響を与えない程度で発現が促進されることをいう。ある因子が遺伝子の発現を駆動しない場合、その遺伝子は、例えば、政府機関が定める基準以下で発現される。
本発明のプロモーターは、その配列に類似する配列をも使用することができる。そのような配列は、FASTAのような配列比較プログラムにより相同性を決定することによって選択することができ、また、ハイブリダイゼーションにより選択することもできる。
本明細書において、ハイブリダイゼーションのための「ストリンジェントな条件」とは、標的配列に対して相同性を有するヌクレオチド鎖の相補鎖が標的配列に優先的にハイブリダイズし、そして相同性を有さないヌクレオチド鎖の相補鎖が実質的にハイブリダイズしない条件を意味する。ある核酸配列の「相補鎖」とは、核酸の塩基間の水素結合に基づいて対合する核酸配列(例えば、Aに対するT、Gに対するC)をいう。ストリンジェントな条件は配列依存的であり、そして種々の状況で異なる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイズする。一般に、ストリンジェントな条件は、規定されたイオン強度およびpHでの特定の配列についての熱融解温度(T)より約5℃低く選択される。Tは、規定されたイオン強度、pH、および核酸濃度下で、標的配列に相補的なヌクレオチドの50%が平衡状態で標的配列にハイブリダイズする温度である。「ストリンジェントな条件」は配列依存的であり、そして種々の環境パラメーターによって異なる。核酸のハイブリダイゼーションの一般的な指針は、Tijssen(1993)、Laboratory Technniques In Biochemistry And Molecular Biology-Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I、 第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay」、Elsevier,New Yorkに見出される。
一般的な分子生物学的手法としては、Ausubel F.A.ら編(1988)、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley、New York、NY;Sambrook Jら(1987)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NYなどを参酌して当業者であれば容易に実施をすることができる。
代表的には、ストリンジェントな条件は、塩濃度が約1.0M Na未満であり、代表的には、pH7.0~8.3で約0.01~1.0MのNa濃度(または他の塩)であり、そして温度は、短いヌクレオチド(例えば、10~50ヌクレオチド)については少なくとも約30℃、そして長いヌクレオチド(例えば、50ヌクレオチドより長い)については少なくとも約60℃である。ストリンジェントな条件はまた、ホルムアミドのような不安定化剤の添加によって達成され得る。本明細書におけるストリンジェントな条件として、50%のホルムアミド、1MのNaCl、1%のSDS(37℃)の緩衝溶液中でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSCで60℃での洗浄が挙げられる。
「ストレス」とは、植物に対して、物理的、化学的、生物学的に加えられ得る、植物の正常な生長を妨げる因子のことをいう。ストレスには、例えば、物理的ストレス(光、熱、冷却、凍結、紫外線、X線、切断、摩擦など)、化学的ストレス(酸素ストレス、化学物質、生理活性物質など)、生物学的なストレス(ウイルス、病原体(例えば、イモチ病菌)感染など)などが挙げられる。従って、本発明のプロモーターとしては、そのようなストレスに晒されたときに特異的に発現するものも含まれる。
本明細書において、本発明のプロモーターの発現が「構成的」であるとは、植物のすべての組織において、その植物の生長の幼若期または成熟期のいずれにあってもほぼ一定の量で発現される性質をいう。具体的には、本明細書の実施例と同様の条件でノーザンブロット分析したとき、例えば、任意の時点で(例えば、2点以上(5日目および15日目))の同一または対応する部位のいずれにおいても発現がみられるとき、本発明の定義上、発現が構成的であるという。構成的プロモーターは、通常の生育環境にある植物の恒常性維持に役割を果たしていると考えられる。本発明のプロモーターの発現が「ストレス応答性」であるとは、少なくとも1つのストレスが植物体に与えられたとき、その発現量が変化する性質をいう。特に、発現量が増加する性質を「ストレス誘導性」といい、発現量が減少する性質を「ストレス減少性」という。「ストレス減少性」の発現は、正常時において、発現が見られることを前提としているので、「構成的」な発現と重複する概念である。これらの性質は、植物の任意の部分からRNAを抽出してノーザンブロット分析で発現量を分析することまたは発現されたタンパク質をウェスタンブロットにより定量することにより決定することができる。
本明細書において「病害抵抗性」とは、植物の性質についていい、発病程度を減少させ得る能力をいう。本明細書において「虫害抵抗性」とは、植物の性質についていい、食害程度を減少させ得る能力をいう。本明細書において「病害特異的」とは、あるプロモーターが,病害が発生する場合に特異性を有することをいう。本明細書において、「虫害特異的」とは、あるプロモーターが、虫害が発生する場合に特異性を有することをいう。「薬剤耐性遺伝子」とは、その遺伝子産物が宿主において発現される場合に、宿主に薬剤耐性を付与する遺伝子をいう。薬剤耐性遺伝子は、形質転換植物の選抜を容易にするものであることが望ましく、カナマイシン耐性を付与するためのネオマイシンホスホトランスフェラーゼII(nptII)遺伝子、およびハイグロマイシン耐性を付与するためのハイグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子などが好適に用いられ得る。
本発明のプロモーターは、単子葉植物だけでなく双子葉植物および他の生物の改変にも利用し得る。これは、両植物間で転写調節の基本的な機構が類似していることにより説明される。例えばトウモロコシのzein遺伝子プロモーターがタバコで同じ組織特性で発現すること(Schernthaner et al.,EMBO J.,7:1249-1255(1988))、イネのグルテリン遺伝子プロモーターがタバコで同じ組織特性で発現すること(Leisy et al.,Plant Mol.Biol.,14:41-50(1989))が報告されている。特に好ましい対象植物としては、イネのほか、コムギ、トウモロコシ、オオムギ、ソルガム、カンキツ類、白菜、レタス、タバコ、モモ、ジャガイモ、トマト、およびリンゴなどが挙げられる。
本明細書において遺伝子について言及する場合、「ベクター」とは、目的のポリヌクレオチド配列を目的の細胞へと移入させることができるものをいう。そのようなベクターとしては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞、動物個体および植物個体等の宿主細胞において自立複製が可能、または染色体中への組込みが可能で、本発明のポリヌクレオチドの転写に適した位置にプロモーターを含有しているものが例示される。植物細胞に対する「組み換えベクター」としては、Tiプラスミド、タバコモザイクウイルスベクター等が例示される。発現カセットは、好ましくは、植物発現ベクターの形態が利用される。「植物発現ベクター」は、構造遺伝子およびその発現を調節するプロモーターに加えて種々の調節エレメントが宿主植物の細胞中で作動し得る状態で連結されている核酸配列をいう。調節エレメントは、好ましくは、ターミネーター、薬剤耐性遺伝子および、エンハンサーを含み得る。植物発現ベクターのタイプおよび使用される調節エレメントの種類が、宿主細胞に応じて変わり得ることは、当業者に周知の事項である。本発明に用いる植物発現ベクターはさらにT-DNA領域を有し得る。T-DNA領域は、特にアグロバクテリウムを用いて植物を形質転換する場合に遺伝子の導入の効率を高める。
「ターミネーター」は、遺伝子のタンパク質をコードする領域の下流に位置し、DNAがmRNAに転写される際の転写の終結、ポリA配列の付加に関与する配列である。ターミネーターは、mRNAの安定性に関与して遺伝子の発現量に影響を及ぼすことが知られている。ターミネーターとしては、CaMV35Sターミネーター、ノパリン合成酵素遺伝子のターミネーター(Tnos)、タバコPR1a遺伝子のターミネーターが挙げられるが、これに限定されない。
「エンハンサー」は、目的遺伝子の発現効率を高めるために用いられ得る。エンハンサーとしては、CaMV35Sプロモーター内の上流側の配列を含むエンハンサー領域が好適である。エンハンサーは複数個用いられ得る。
植物発現ベクターの構築に用いるベクターとしては、pBI系のベクター、pUC系のベクターあるいはpTRA系のベクターが好適に用いられ得る。pBI系およびpTRA系のベクターは、アグロバクテリウムを介して植物に目的の遺伝子を導入し得る。pBI系のバイナリーベクターまたは中間ベクター系が好適に用いられ得る。例えば、pBI121、pBI101、pBI101.2、pBI101.3などが挙げられる。これらのベクターは、植物に導入され得る領域(T-領域)の遺伝子と、マーカー遺伝子として植物プロモーターの支配下で発現されるnptII遺伝子(カナマイシン耐性を付与する)とを含む。pUC系のベクターは、植物に遺伝子を直接導入し得る。例えば、pUC18、pUC19、pUC9などが挙げられる。植物発現ベクターは、当業者に周知の遺伝子組換え技術を用いて作製され得る。
植物細胞への植物発現ベクターの導入には、当業者に周知の方法、例えば、アグロバクテリウムを介する方法および直接細胞に導入する方法、が用いられ得る。アグロバクテリウムを介する方法としては、例えば、Nagelらの方法(Nagelら(1990)、Microbiol.Lett.,67,325)が用いられ得る。この方法は、まず、例えば植物発現ベクターでエレクトロポレーションによってアグロバクテリウムを形質転換し、次いで、形質転換されたアグロバクテリウムをGelvinら(Gelvinら編(1994)、Plant Molecular Biology Manual(Kluwer Academic Press Publishers))に記載の方法で植物細胞に導入する方法である。植物発現ベクターを直接細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション法(Shimamotoら(1989)、Nature、338:274-276;およびRhodesら(1989)、Science、240:204-207を参照のこと)、パーティクルガン法(Christouら(1991)、Bio/Technology 9:957-962を参照のこと)ならびにポリエチレングリコール(PEG)法(Dattaら(1990)、Bio/Technology 8:736-740を参照のこと)が挙げられる。これらの方法は、当該分野において周知であり、形質転換する植物に適した方法が、当業者により適宜選択され得る。
植物発現ベクターを導入された細胞は、まずカナマイシン耐性などの薬剤耐性で選択される。次いで、当該分野で周知の方法により、植物組織、植物器官および/または植物体に再分化され得る。さらに、植物体から種子が取得され得る。導入した遺伝子の発現は、ノーザン法またはPCR法により、検出し得る。必要に応じて、遺伝子産物たるタンパク質の発現を、例えば、ウェスタンブロット法により確認し得る。
ベクターの導入方法としては、植物細胞にDNAを導入する方法であればいずれも用いることができ、例えば、トランスフェクション、形質導入、以下を用いた形質転換などが挙げられる:アグロバクテリウム(Agrobacterium)(特開昭59-140885、特開昭60-70080、WO94/00977)、エレクトロポレーション法(特開昭60-251887)、パーティクルガン(遺伝子銃)を用いる方法(特許第2606856、特許第2517813)等が例示される。
本発明のプロモーターによる発現の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法等が例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法等が例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法等が例示される。
「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、本発明のタンパク質またはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンプロット法、免疫組織染色法等の免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンプロット法、ドットプロット法、PCR法等の分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明のポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。発現量の絶対量または相対量を観察することにより、あるプロモーターが特異的に作用しているかどうかを検出することができる。
「形質転換体」とは、形質転換によって作製された細胞などの生命体の全部または一部をいう。形質転換体としては、原核細胞、酵母、動物細胞、植物細胞、昆虫細胞等が例示される。形質転換体は、その対象に依存して、形質転換細胞、形質転換組織、形質転換宿主などともいわれる。
本明細書において「再分化する」とは、個体の一部分から個体全体が復元される現象を意味する。例えば、再分化により、細胞および葉または根などの組織片から植物体が形成される。
形質転換体を植物体へと再分化する方法は当該分野において周知である。そのような方法としては、Rogers et al.,Methods in Enzymology 118:627-640(1986);Tabata et al.,Plant Cell Physiol.,28:73-82(1987);_Shaw,Plant Molecular Biology: A practical approach.IRL press(1988);Shimamoto et al.,Nature 338:274(1989);Maliga et al.,Methods in Plant Molecular Biology:A laboratory course.Cold Spring Harbor Laboratory Press(1995)などが挙げられる。従って、当業者は、上記周知方法を目的とするトランスジェニック植物に応じて適宜使用して、再分化させることができる。
再分化した形質転換体が、所望の改変された特性を有することは、当該特性の種類に応じて適切なアッセイを行うことにより確認し得る。例えば、レポーター遺伝子としてGUS遺伝子とプロモーターとを融合し、植物体に導入して形質転換体を作出し、GUS活性の組織染色で検出することが可能である。ここでは、蛍光タンパク質であるGFPの遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子をレポーター遺伝子として使うことも可能である。これらはいずれも各種プロモーターのアッセイに使われている。詳細は下記実施例に記載される。また、ストレス耐性として病原性細菌に対する耐性の付与が意図される場合、再分化した植物体にモデル菌、例えばタバコ野火病菌(Pseudomonas syringae pv.tabaci)を接種し、コントロールの植物体と比較して接種による変化の有無を観察することで、特性の変化を評価し得る。
本明細書では、植物の栽培は当該分野において公知の任意の方法により行うことができる。植物の栽培方法は、例えば、モデル植物の実験プロトコール-イネ・シロイヌナズナ編-」:細胞工学別冊植物細胞工学シリーズ4;イネの栽培法(奥野員敏)pp.28-32、およびアラビドプシスの栽培法(丹羽康夫)pp.33-40(監修 島本功、岡田清孝)に例示されており、本明細書では詳述しない。例えば、シロイヌナズナの栽培は土耕、ロックウール耕、水耕いずれでも行うことができる。白色蛍光灯(6000ルクス程度)の下、恒明条件で栽培すれば播種後4週間程度で最初の花が咲き、開花後16日程度で種子が完熟する。1さやで40~50粒の種子が得られ、播種後2~3ケ月で枯死するまでの間に10000粒程度の種子が得られる。種子の休眠期間は短く、完熟種子は1週間程度乾燥させれば吸水後2~3日で発芽する。ただし、吸水・播種後2~4日間4℃で低温処理を行うと発芽が斉一化される。イネの栽培は主に土耕で行い、10000ルクス以上の光条件下で生育させる。播種後40日程度以後に短日条件とすることで出穂が誘導され、出穂誘導後30日程度で開花し、開花後40日程度で完熟種子が得られる。
本発明のプロモーターの発現解析は、DNAアレイを用いた遺伝子解析方法によっても行われ得る。DNAアレイについては、(秀潤社編、細胞工学別冊「DNAマイクロアレイと最新PCR法」)に広く概説されている。また、DNAアレイを用いた植物の解析についても最近行われるようになっている(Schenk PMら(2000)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)97:11655-11660)。以下、DNAアレイおよびそれを使用する遺伝子分析方法を簡単に説明する。
「DNAアレイ」とは、DNAを基板上に整列(array)させて、固定させたデバイスをいう。DNAアレイは、基盤の大きさまたは載せるDNAの密度によって、DNAマクロアレイおよびDNAマイクロアレイなどに分けられる。
マクロとマイクロとの境界は厳密に決まっているわけではないが、一般に、「DNAマクロアレイ」とは、メンブレン上にDNAをスポットした高密度フィルター(high density filter)をいい、「DNAマイクロアレイ」とは、ガラス、シリコンなどの基板表面にDNAを載せたものをいう。載せる種類によって、cDNAアレイ、オリゴDNAアレイなどがある。
高密度オリゴDNAアレイのうち、半導体集積回路製造のための光リソグラフィー(photolithography)技術を応用し、基板上で一度に複数種のオリゴDNAを合成することで作製されたものを、半導体チップになぞらえて、特に「DNAチップ(chip)」という。この方法を用いて作製されたものとしては、GeneChip(登録商標)(Affimetrix、CA)などが挙げられる(Marshall Aら、(1998)Nat.Biotechnol.16:27-31およびRamsay Gら、(1998)Nat.Biotechnol.16 40-44を参照のこと)。好ましくは、本発明におけるマイクロアレイを用いた遺伝子解析においては、このGeneChip(登録商標)が用いられ得る。DNAチップは、狭義には上記のように定義されるが、DNAアレイまたはDNAマイクロアレイ全体をいうこともある。
DNAマイクロアレイは、このように、ガラス基板上に数千~数万またはそれを超える遺伝子DNAを高密度に配列したデバイスであることから、cDNA、cRNAまたはゲノムDNAとのハイブリダイゼーションによって、遺伝子発現のプロファイルまたは遺伝子多型をゲノムスケールで解析することが可能となっている。この手法により、シグナル伝達系および/または転写制御経路の解析(Fambrough Dら(1999),Cell 97,727-741)、組織修復の機構の解析(Iyer VRら、(1999),Science 283:83-87)、医薬品の作用機構(Marton MJ、(1999),Nat.Med.4:1293-1301)、発生・分化の過程における遺伝子発現変動の広汎な解析、病態に伴って発現変動する遺伝子群の同定、またはシグナル伝達系もしくは転写制御に関与する新たな遺伝子の発見などが可能となってきた。また、遺伝子多型についても、多数のSNPを1つのDNAマイクロアレイで解析することが可能となっている(Cargill Mら、(1999),Nat.Genet.22:231-238)。
DNAマイクロアレイを用いたアッセイの原理を説明する。DNAマイクロアレイは、表面を適切に加工したスライドガラスのような固相基板上に多数の異なるDNAプローブを高密度に固定して作製する。その後、標識した核酸(標的)を、適切なハイブリダイゼーション条件下で、ハイブリダイズさせ、各々のプローブからのシグナルを自動検出器で検出する。このデータをコンピュータで大量解析する。例えば、遺伝子モニタリングにおいては、オリゴDNAまたはcDNAをプローブとしたマイクロアレイに、mRNAから逆転写反応により蛍光標識を取り込ませた標的cDNAをハイブリダイズさせて、蛍光イメージアナライザで検出する。この際、T7ポリメラーゼを用いてcRNA合成反応を行ったり、酵素反応を介させたりと、他の種々のシグナル増幅反応も行い得る。
Fodorらは、コンビナトリアルケミストリと半導体製造用光リソグラフィ技術とを合わせて、基板上にポリマーを合成する技術を開発した(Fodor SPら、(1991)Science 251:767-773)。これを、合成型DNAチップという。光リソグラフィでは、極めて微細な表面加工が可能なので、10μm/DNAサンプルといった集積度の高いDNAマイクロアレイを作製し得る。この方法では、一般に、ガラス基板上に25~30程度のDNAが合成され得る。
合成型DNAチップを用いた遺伝子発現は、Lockartらが報告している(Lockart DJら(1996)Nat.Biotechnol.:14:1675-1680)。この方法では、合成され得る長さが短いため特異性が低いという本タイプのチップの欠点が解消された。ここでは、1つの遺伝子発現をみるために、十数か所に対応するパーフェクトマッチ(perfect match;PM)オリゴヌクレオチドプローブと、PMプローブの中央の1塩基に変異を入れたミスマッチ(mismatch;MM)オリゴヌクレオチドプローブとを調製することで、この問題が解決された。MMプローブは、ここでは、ハイブリダイゼーションの特異性の指標として用いられ、そしてPMプローブとMMプローブとのシグナル比から、遺伝子発現レベルが決定され得る。PMプローブとMMプローブとのシグナル比が同等な場合は、クロスハイブリダイゼーションと呼び、有意なシグナルとは解釈されない。
いわゆる貼り付け型DNAマイクロアレイにおいては、スライドグラスにDNAを貼り付けていくタイプのDNAマイクロアレイを作製し、蛍光検出する(http://cmgm.stanford.edu/pbrownもまた参照のこと)。この方法では、大掛かりな半導体製造機は必要ではなく、DNAアレイ機および検出器があれば、研究室内でアッセイすることが可能である。この方法は、貼り付けるDNAを選択することが可能であるという利点を有する。高密度化についても、例えば、直径100μmのスポットを100μm間隔でスポットすれば、計算上1cmに2500のDNAをスポットすることが可能である。したがって、通常スライドグラス(有効面積は、およそ4cm)におよそ1万個のDNAを載せ得る。
合成型DNAアレイにおける標識方法としては、例えば、二蛍光標識法が挙げられる。この方法では、2つの異なるmRNAサンプルをそれぞれ異なる蛍光で標識し、同一マイクロアレイ上で競合的ハイブリダイゼーションを行って、療法の蛍光を測定し、それを比較することで遺伝子発現の相違を検出する。蛍光色素としては、例えば、Cy5およびCy3などが最も用いられているが、それらに限定されない。Cy3およびCy5の利点は、蛍光波長の重なりが殆どないという点である。二蛍光標識法は、遺伝子発現の相違のみならず、変異または多型性を検出するためにも使用され得る。
DNAアレイを用いるアッセイにおいては、アレイ機が使用され得る。アレイ機は、基本的に、高性能サーボモーターと組み合わせて、コンピュータの制御下でピン先またはスライドホルダをXYZ軸方向に作動し、マイクロタイタープレートからスライドグラス表面上にDNAサンプルを運ぶ装置である。ピン先の形状には、種々の加工がなされている。例えば、烏口のように割れたペン先にDNA溶液を溜めて、複数のスライドガラスにスポットする方式である。洗浄・乾燥のサイクルを挟んで、次にDNAサンプルを載せるという工程を繰り返す。ここで、サンプル同士の混入を防ぐためにも、ピン先の洗浄・乾燥を完全に行うことに注意する。このようなアレイ機としては、SPBIO2000(日立ソフトウェアエンジニアリング;1回打ち型)、GMS417Arrayer(宝酒造;ピンリング型)、Gene Tip Stamping(日本レーザ電子;万年筆型)などが挙げられる。
DNAアレイを用いたアッセイに使用されるDNA固定法には種々の方法が存在する。基板の材質として、ガラスは、メンブレンと比較して有効固定面積が小さく、荷電量も少ないことから、種々のコーティングがなされている。実用的には、ポリL-リシンコートまたはシリル化などが行われている(Schena Mら(1995)Science 270:467-470)、Schena Mら(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)93:10614-10619を参照のこと)。また、市販のDNAマイクロアレイ専用コーティング済スライドガラス(例えば、ポリカルボジイミドガラス(日清紡)など)も使用され得る。オリゴDNAの場合は、DNA末端をアミノ化してシラン化ガラスに架橋する方法も利用可能である。
DNAマイクロアレイには、主に、PCRで増幅されたcDNA断片が載せられ得る。cDNAの濃度が充分ではない場合、シグナルを充分に検出し得ない場合が存在する。このように、一度のPCRにおいて充分量のcDNA断片が得られなかった場合には、PCRを何度か繰り返し、得られたPCR産物をまとめて精製・濃縮し得る。プローブcDNAは、一般的には、cDNAをランダムに数多く載せるが、実験の目的によっては、選択された一群の遺伝子(例えば、本発明の遺伝子群またはプロモーター群)またはRDA(representational differential analysis)で得られた発現変化候補遺伝子を載せ得る。クローンの重複は避けることが好ましい。クローンは、手持ちのcDNAライブラリーから調製してもよく、cDNAクローンをまとめて入手してもよい。
DNAアレイを用いたアッセイにおいては、DNAマイクロアレイ上でハイブリダイズした蛍光シグナルを蛍光検出器等で検出する。このような検出器は、現在までに種々の検出器が利用可能である。例えば、スタンフォード大学のグループは、オリジナルスキャナを開発しており、このスキャナは、蛍光顕微鏡と稼動ステージとを組み合わせたものである(http://cmgm.stanford.edu/pbrownを参照のこと)。従来型のゲル用蛍光イメージアナライザであるFMBIO(日立ソフトウェアエンジニアリング)、Storm(Molecular Dynamics)などでも、スポットがそれほど高密度でなければ、DNAマイクロアレイの読み取りを行い得る。その他に利用可能な検出器としては、ScanArray 4000、同5000(GeneralScanning;スキャン型(共焦点型))、GMS418 Array Scanner(宝酒造;スキャン型(共焦点型))、Gene Tip Scanner(日本レーザ電子;スキャン型(非共焦点型))、Gene Tac 2000(Genomic Solutions;CCDカメラ型))などが挙げられる。
DNAマイクロアレイから得られるデータは膨大であることから、クローンとスポットとの対応の管理、データ解析などを行うためのデータ解析ソフトウェアが重要である。そのようなソフトウェアとしては、各種検出システムに付属のソフトウェアが利用可能である(Ermolaeva Oら(1998)Nat.Genet.20:19-23)。また、データベースのフォーマットとしては、例えば、Affymetrixが提唱しているGATC(genetic analysis technology consortium)と呼ばれる形式が挙げられる。
本発明のプロモーターおよび機能性植物はまた、ディファレンシャルディスプレイ(differential display)技術を用いた遺伝子解析でも解析することができる。
ディファレンシャルディスプレイ技術とは、発現変動する遺伝子を検出または同定するための方法である。この方法では、2つ以上のサンプルからcDNAをそれぞれ作製し、任意のプライマーセットを用いてPCRにより増幅し、その後、生成された複数のPCR産物をゲル電気泳動により分離し、パターン化した後、各バンドの相対的なシグナル強度変化をもとに、発現変動遺伝子がクローニングされる。
本発明において利用されるデータベースは、DNAチップによって解析された結果を含み得る。また、DNAチップを用いて発現頻度を解析した結果に基づいて本発明のプロモーターの特異性を決定することができる。
好 ま し い 実 施 の 形 態 の 説 明
1つの局面において、本発明は、機能性植物を提供する。この機能性植物は、特異的発現を行う少なくとも1つのプロモーターおよび該プロモーターに作動可能に連結された遺伝子を含む。本発明の機能性植物におけるプロモーターの特異性は、そのプロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおけるそのプロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される。発現頻度の解析方法は当該分野において周知であり上述したとおりである。
1つの実施形態において、本発明の機能性植物において用いられる遺伝子は、果実において発現されない。別の実施形態において、その遺伝子は、葉において特異的に発現される。他の実施形態において、その遺伝子は、カルスにおいて特異的に発現される。
本発明の機能性植物は、単子葉植物または双子葉植物であり得る。1つの実施形態において、本発明の機能性植物は、単子葉植物であり得る。1つの好ましい実施形態において、本発明の機能性植物は、穀物(例えば、コムギ、トウモロコシ、イネ、オオムギ、ソルガム)であり得る。より好ましくは、本発明の機能性植物は、イネである。他の好ましい実施形態において、本発明の機能性植物は、食用または嗜好用の作物(例えば、タバコ、ピーマン、ナス、メロン、トマト、サツマイモ、キャベツ、ネギ、ブロッコリー、ニンジン、キウリ、柑橘類、白菜、レタス、モモ、ジャガイモおよびリンゴ)であり得る。別の実施形態において、本発明の機能性植物は、観賞用の植物(例えば、バラのような花を観賞する植物(ペチュニア、カーネーション、キク、トルコキキョウ、トレニア)、松のような木)であり得る。
他の実施形態において、本発明において利用される遺伝子は、病害抵抗性遺伝子または虫害抵抗性遺伝子(例えば、ディフェンシン、ソマチン、キチナーゼ、Bt、オリザシスタチン)であり得る。
本発明の好ましい実施形態において、本発明において利用される遺伝子は、ビタミン合成遺伝子、糖合成遺伝子、脂質合成遺伝子、ポリケチド合成遺伝子,光合成遺伝子、機能性成分合成遺伝子および転写因子からなる群より選択される遺伝子であり得る。
別の局面において、本発明は、特異的発現を行うプロモーターに関する。このプロモーターの特異性は、そのプロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおけるそのプロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される。
1つの実施形態において、本発明のプロモーターは、果実における遺伝子の発現を駆動しない。別の実施形態において、本発明のプロモーターは、葉における遺伝子の発現を特異的に駆動する。他の実施形態において、本発明のプロモーターは、カルスにおける遺伝子の発現を特異的に駆動する。さらに別の実施形態において、本発明のプロモーターは、利用可能部位においてのみ特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明のプロモーターは、茎に特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明のプロモーターは、花において特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明のプロモーターは、果実において特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明のプロモーターは、種子において特異的に遺伝子の発現を駆動する。
他の局面において、本発明は、特異的発現を行うプロモーターを含む発現カセットを提供する。このプロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される。
1つの実施形態において、本発明の発現カセットは、果実における遺伝子の発現を駆動しない。別の実施形態において、本発明の発現カセットは、葉における遺伝子の発現を特異的に駆動する。他の実施形態において、本発明の発現カセットは、カルスにおける遺伝子の発現を特異的に駆動する。さらに別の実施形態において、本発明の発現カセットは、利用可能部位においてのみ特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明の発現カセットは、根に特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明の発現カセットは、茎に特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明の発現カセットは、花において特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明の発現カセットは、果実において特異的に遺伝子の発現を駆動する。さらに別の実施形態において、本発明の発現カセットは、種子において特異的に遺伝子の発現を駆動する。
他の局面において、本発明は、特異的発現を行う少なくとも1つのプロモーターおよびそのプロモーターに作動可能に連結された遺伝子を含む植物から得られる植物の利用可能部位を提供する。このプロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される。好ましくは、利用可能部位は葉または果実であり得る。好ましい実施形態において、このプロモーターは、利用可能部位での発現をさせない。この場合、その遺伝子は、病害抵抗性遺伝子または虫害抵抗性遺伝子であり得る(例えば、ディフェンシン、ソマチン、キチナーゼ、Bt、オリザシスタチン)。1つの実施形態において、このプロモーターは、利用可能部位で特異的に発現を駆動する。この場合、その遺伝子は、ビタミン合成遺伝子、糖合成遺伝子、脂質合成遺伝子、ポリケチド合成遺伝子、光合成系遺伝子、機能性成分合成遺伝子および転写因子からなる群より選択される遺伝子であり得る。
別の局面において、本発明は、所望の遺伝子産物を特異的に発現する植物を生産する方法を提供する。この方法は、以下:
プロモーターの特異性を決定する工程であって、そのプロモーターの特異性は、そのプロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおけるそのプロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、工程;
そのプロモーターとその所望の遺伝子産物をコードする核酸分子とを作動可能に連結して連結混合物を作製する工程;
その連結混合物を植物に導入する工程;および
その植物を生長させる工程、
を包含する。
本発明はまた、所望の遺伝子産物を生産する方法を提供する。この方法は、以下の工程を包含する:
プロモーターの特異性を決定する工程であって、該プロモーターの特異性は、該プロモーターを含有する遺伝子が含まれるcDNAデータベースにおける該プロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定される、工程;
該プロモーターと該所望の遺伝子産物をコードする核酸分子とを作動可能に連結して連結混合物を作製する工程;
該連結混合物を植物に導入する工程;
該植物を生長させる工程;および
該植物中の該所望の遺伝子産物を収集する工程。
1つの実施形態において、このプロモーターの特異性は、DNAチップによる解析によって決定され得る。
1つの局面において、本発明は、本発明の方法によって得られる、遺伝子産物を提供する。遺伝子産物としては、抗生物質などの医薬品、ポリペプチド、タンパク質などが挙げられる。遺伝子の二次代謝産物もまた、本発明の方法によって得られ得る。
以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、以下の実施例は、例示の目的のみに提供される。従って、本発明の範囲は、上記実施形態にも実施例のみにも限定されるものではなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
実 施 例
(実施例1:cDNAライブラリーを利用した特異的プロモーターの同定)
(イネ組織からのRNAの抽出)
以下のイネ組織からRNAを抽出した:ベンジルアデニン処理カルス、ジベレリン処理カルス、ヒートショック処理カルス、増殖期カルス、幼根、幼緑葉、幼黄化葉、開花期穂。簡潔には、摩砕した植物組織をグアニジンチオシアネートおよびフェノール存在下でタンパクを変性させ、水層とともに全RNAを回収する。真核生物のmRNAは3末端にポリA配列を有しているためOligo-dTを固定化した担体に吸着させ溶出させることで特異的に単離することができる。
(抽出したRNAからのcDNAライブラリーの作製)
抽出したmRNAは逆転写酵素を用いて相補DNA鎖(1st Strand)を合成し、RNaseHおよびDNAポリメラーゼを作用させて2ndStrandを合成してcDNAライブラリーを作製した。
(cDNAライブラリーの分析)
作製したcDNAライブラリーをDDBJに登録された既知配列と比較し、同一または類似する遺伝子ごとに出現頻度をまとめた。まず第一に、配列全域にわたり90%を越す非常に高い相同性を有しているクローンを相同性検索の結果から抽出する。第二にそのクローンを相互に比較し、配列中の特定箇所における塩基レベルの相違の有無について検討を行う。特定箇所に明らかに二種以上の塩基の偏りがある場合には同族の異なる遺伝子があるものと判断し、偏りがない場合には、単なる自動塩基配列決定装置による読み間違えと判断する。同一であると判断した一例を図1に示す。その結果を以下の表に表す。
【表1】
JP0004113952B2_000002t.gifJP0004113952B2_000003t.gifJP0004113952B2_000004t.gifここで、CBはベンジルアデニン処理カルスを示し、CGはジベレリン処理カルスを示し、CHはヒートショック処理カルスを示し、CKは増殖期カルスを示し、RAは幼根を示し、SSは幼緑葉を示し、STは幼黄化葉を示し、EBは開花期穂を示し、ECは登熟初期穂を示す。
上記表をもとに、所望の発現パターンを示すプロモーターを選択することができた。ここでは、例えば、脱分化状態(カルス)特異的プロモーター、葉特異的プロモーター、構成的発現プロモーターを選んだ。
脱分化状態(カルス)特異的プロモーターは、CB、CG、CHおよびCKからなる群より選択される少なくとも1つの部位のみまたはその部位で他より多い発現を示す遺伝子のプロモーター領域から得た。ここでは、IDがCG0060_1に属するクローンを以下の実施例において使用した。その配列は、配列番号1に示す。
葉特異的プロモーターは、SSおよびSTからなる群より選択される少なくとも1つの部位のみまたはその部位で他より多い発現を示す遺伝子のプロモーター領域から得た。ここでは、IDがEB0082_2に属するクローンを以下の実施例において使用した。その配列は、配列番号2に示す。
構成的プロモーターは、全部位にわたってほぼ均一の発現を示す遺伝子のプロモーター領域から得た。ここでは、IDがRA1583_1に属するクローンを選択した。その配列は、配列番号3に示す。
(実施例2:選択したプロモーターの特異性の確認)
実施例1で選択した各クローンが目的とする特異性を有するかどうかをこの実施例で確認した。具体的手順は以下のとおりである。
(選択したクローンの塩基配列決定)
まず、選択したクローンが予想される配列と同一であるかどうかを確認した。配列決定は、当業者に周知のジデオキシダイターミネーション法により行った。概説すると、配列決定を行うDNA鎖を熱変性により一本鎖状態としたところで、塩基配列を決定する箇所よりも上流にプライマーを付着させた。塩基毎に異なる蛍光色素を付加したジデオキシリボヌクレオチド3リン酸およびデオキシヌクレオチド3リン酸存在下でDNAポリメラーゼによるDNA合成反応を行った。ジデオキシリボヌクレオチド3リン酸を取り込んだ場合にはDNA合成の伸長が停止させた。この反応産物をアクリルアミドゲルで電気泳動して分子量的に分離し、蛍光色素を機械的に判読することにより塩基配列が明らかとなった。
次に、決定した配列と、DDBJに登録されている配列とを比較して上記各クローンが目的とする配列を有することが確認された。
(実施例3:プロモーター領域の取得)
本実施例では、目的とする配列を有することが確認されたクローンを用いてプロモーター領域を取得した。以下にその手順を簡潔に示す。
まず、DDBJに登録されているデータをもとにプライマーを設計し、市販のPCRベースの技術を用いた既知配列の上流を単離するキット(Genomewalker;Clontech、米国)を用いてクローニングを行い、目的とする遺伝子のプロモーター領域を取得した。そのスキームを図2に示す。
これらの断片は、0.6kb~2.5kbほどの長さを持っていた。
(実施例4:カルス特異的プロモーターを用いた機能性植物の作出)
(緑色蛍光タンパク質での発現ベクターの作製)
緑色蛍光タンパク質と、カルス特異的に発現を駆動するプロモーターであると予測されるCG0060_1由来のクローンのプロモーター領域(配列番号1)とを用いて発現ベクターを作製した。その具体的手順は以下のとおりである。
イネゲノムDNAを制限酵素EcoRVで完全消化し、生成したDNA断片の両端すべてにGenomeWalkerのアダプタープライマー(配列番号4)を付加し、アダプタープライマー内部の配列および既知配列より設計したプライマーペアによるPCR反応を行うことにより、プロモーター領域を取得した。
取得した断片については、使用上の簡便化のため、両端に制限酵素認識配列を付加した。5’末端側はアダプタープライマー配列の一部および制限酵素認識配列を含むプライマー(配列番号5)を設計し、また3’末端側は翻訳開始点直前の配列および制限酵素認識配列を含むプライマー(配列番号6)を設計してPCR反応を行い、両端に制限酵素認識配列を付加したプロモーターカセット(配列番号7)を作製した。
バイナリーベクターpTN1の内部に設計されたマルチクローニングサイトのHindIIIおよびEcoRIの間に、プロモーターカセット化した本発明のプロモーターにより緑色蛍光タンパク質遺伝子を駆動し、アグロバクテリウムのノパリンシンターゼ遺伝子に由来する転写終結シグナル配列により転写終結が行われる構造のDNA断片を挿入したバイナリーベクターを構築した。
(イネへの発現ベクターの導入)
作製したベクターでイネを形質転換した。その具体的手順は以下のとおりである。
作製したベクターは電気穿孔法によりアグロバクテリウムに導入し、形質転換アグロバクテリウムを得た。前培養を行ったイネ種子を形質転換アグロバクテリウム存在下で3日間共存培養することでアグロバクテリウムを感染させた。エタノールおよび次亜塩素酸ナトリウム溶液で殺菌し、2,4-Dを含む培地上で5日間培養を行ったイネの完熟種子をアグロバクテリウムによる形質転換イネ作製に用いた。
(結果)
上記の結果、このプロモーターで形質転換されたイネ細胞が得られた。
(感染細胞の選択)
形質転換イネ細胞はpTNベクター中にコードされるnptII遺伝子によりジェネティシンに対する抵抗性を付与されることから、ジェネティシンを含むN6培地で培養することにより形質転換イネ細胞のみを選抜した。
(形質転換イネの再分化)
次に、形質転換されたイネから再分化させた。その具体的手順は以下のとおりである。
形質転換イネ細胞はサイトカイニンを含む培地上で再分化を誘導し、さらにホルモンを含まない培地上で土耕可能な個体にまで生育させた後に鉢上げした。
(結果)
上記の結果、植物の各組織が得られた。
(特異的発現の確認)
得られたカルス、植物体を各部位(根・葉・茎・胚乳・胚)に分け、発現特性を確認した。
(結果)
結果を示す(図3~5)。図に示すように、CG0060_1由来のプロモーターは、根において特異的発現を駆動しないことが実証された。
また、カルスでの特異的発現を駆動することが実証された。また、葉および米粒では検出限界未満であったことが実証された。
(実施例5:葉特異的プロモーターを用いた機能性植物の作出)
(緑色蛍光タンパク質での発現ベクターの作製)
緑色蛍光タンパク質と、葉特異的に発現を駆動するプロモーターであると予測されるEB0082_2由来のクローンのプロモーター領域(配列番号2)とを用いて発現ベクターを作製した。
イネゲノムDNAを制限酵素DraIで完全消化し、生成したDNA断片の両端すべてにGenomeWalkerのアダプタープライマー(配列番号4)を付加し、アダプタープライマー内部の配列および既知配列より設計したプライマーペアによるPCR反応を行うことにより、プロモーター領域を取得した。
取得した断片については、使用上の簡便化のため、両端に制限酵素認識配列を付加した。5’末端側はイネゲノム配列の一部および制限酵素認識配列を含むプライマー(配列番号8)を設計し、また3’末端側は翻訳開始点直前の配列および制限酵素認識配列を含むプライマー(配列番号9)を設計してPCR反応を行い、両端に制限酵素認識配列を付加したプロモーターカセット(配列番号10)を作製した。
(イネへの発現ベクターの導入)
作製したベクターでイネを形質転換した。手短には、バイナリーベクターpTN1の内部に設計されたマルチクローニングサイトのHindIIIおよびEcoRIの間に、プロモーターカセット化した本発明のプロモーターにより緑色蛍光タンパク質遺伝子を駆動し、アグロバクテリウムのノパリンシンターゼ遺伝子に由来する転写終結シグナル配列により転写終結が行われる構造のDNA断片を挿入したバイナリーベクターを構築した。
(結果)
上記の結果、このプロモーターで形質転換されたイネ細胞が得られた。
(形質転換イネのカルス作製)
次に、形質転換されたイネからカルスを作製した。その具体的手順は実施例7とおりである。
(結果)
上記の結果、植物組織が得られた。
(形質転換イネの再分化作製)
次に、形質転換されたイネを再分化させた。その具体的手順は実施例7のとおりである。
(結果)
上記の結果、植物体が得られた。
(特異的発現の確認)
得られたカルス、植物体を各部位(根・葉・茎・胚乳・胚)に分け、発現特性を確認した。
(結果)
結果を示す(図3~5)。図に示すように、EB0082_2由来のプロモーターは、根において特異的発現を駆動しないことが実証された(図3)。
また、葉での特異的発現を駆動することが実証された(図4)。また、このプロモーターは、米粒においては発現が検出限界未満であった(図5)。
(実施例6:胚乳で発現しないプロモーターを用いた機能性植物の作出)
(緑色蛍光タンパク質での発現ベクターの作製)
緑色蛍光タンパク質と胚乳で発現しない特異性を有するプロモーターであると予測されるRA1583_1由来のクローンのプロモーター領域(配列番号3)とを用いて発現ベクターを作製した。
イネゲノムDNAを制限酵素PvuIIで完全消化し、生成したDNA断片の両端すべてにGenomeWalkerのアダプタープライマー(配列番号4)を付加し、アダプタープライマー内部の配列および既知配列より設計したプライマーペアによるPCR反応を行うことにより、プロモーター領域を取得した。
取得した断片については、使用上の簡便化のため、両端に制限酵素認識配列を付加した。5’末端側はアダプタープライマー配列の一部および制限酵素認識配列を含むプライマー(配列番号5)を設計し、また3’末端側は翻訳開始点直前の配列および制限酵素認識配列を含むプライマー(配列番号11)を設計してPCR反応を行い、両端に制限酵素認識配列を付加したプロモーターカセット(配列番号12)を作製した。
(イネへの発現ベクターの導入)
作製したベクターでイネを形質転換した。手短には、バイナリーベクターpTN1の内部に設計されたマルチクローニングサイトのHindIIIおよびEcoRIの間に、プロモーターカセット化した本発明のプロモーターにより緑色蛍光タンパク質遺伝子を駆動し、アグロバクテリウムのノパリンシンターゼ遺伝子に由来する転写終結シグナル配列により転写終結が行われる構造のDNA断片を挿入したバイナリーベクターを構築した。
(結果)
上記の結果、このプロモーターで形質転換されたイネ細胞が得られた。
(感染細胞の選択)
次に、感染したイネを選択した。その具体的手順は実施例7とおりである。
(形質転換イネの再分化)
次に、形質転換されたイネを再分化させた。その具体的手順は実施例7のとおりである。
(結果)
上記の結果、植物の各組織が得られた。
(特異的発現の確認)
得られたカルス、植物体を各部位(根・葉・茎・胚乳・胚)に分け、発現特性を確認した。
(結果)
結果を示す(図3~5)。図に示すように、RA1583_1由来のクローンのプロモーター領域は、葉において特異的発現を駆動することが実証された(図4)。根ではこのプロモーター領域は、特異的発現を駆動しなかった。。
また、利用可能部位として米粒の胚芽での特異的発現は有意に検出されたことが実証された。
(実施例7:カルス特異的発現を駆動するクローンのプロモーター領域の有用性の実証)
次にカルス特異的に発現を駆動するプロモーターであると予測されるCG0060_1由来のクローンのプロモーター領域のプロモーターとしての発現強度の実用性を確認した。具体的手順を以下に示す。
(プロモーター領域のレポーター遺伝子との連結)
次に、発現ベクターを用いて抗生物質耐性遺伝子であるハイグロマイシンホスホリルトランスフェラーゼ(HPT)と上記クローンのプロモーター領域とを連結し、発現強度の実用性を確認した。その手順を以下に簡潔に示す。
CaMV35SプロモーターによりHPT遺伝子を駆動する構造をもつバイナリーベクターpTH1のCaMV35Sプロモーター部を取り除き、代わりに本発明のプロモーターによりHPT遺伝子を駆動する構造をもつバイナリーベクターを構築した。単子葉植物の超迅速形質転換法(特許第3141084号)に準じた方法でイネ細胞に導入した。
(結果)
結果を図6および7に示す。
図6中の電気泳動図からもあきらかなように、本実施例で作製し生育したイネカルスには、ハイグロマイシンホスホリルトランスフェラーゼが組み込まれていた。また、図7に示すように、本実施例で作製したベクターによる形質転換カルスはハイグロマイシンに対する抵抗性が付与されていた。なお、pTHは、ポジティブコントロールとして使用したCaMV35SプロモーターによりHPT遺伝子を駆動する構造を有するベクターの結果を示す。
本実施例で用いたプロモーターを挿入したものはハイグロマイシン抵抗性を付与するに十分な発現強度を持っていることが実証された。なお、コントロールとして使用した野生型のものは、ハイグロマイシン耐性をが付与されていなかった(図7)。従って、CG0060_1由来のクローンは、カルス特異的プロモーター領域を含んでいたことが実証された。
(実施例8:胚乳で発現しないプロモーター領域の有用性の実証)
次に胚乳で発現しない特異性を有するプロモーターであると予測されるRA1583_1由来のクローンの発現強度の実用性を調べた。具体的手順を以下に示す。
(プロモーター領域のレポーター遺伝子との連結)
発現ベクターを用いて抗生物質耐性遺伝子と上記クローンのプロモーター領域とを連結し、プロモーターとしての発現強度の実用性を確認した。その手順は実施例7に記載のとおりであった。
(結果)
結果を図6および7に示す。
図6中の電気泳動図からもあきらかなように、本実施例で作製し生育したイネカルスには、ハイグロマイシンホスホリルトランスフェラーゼが組み込まれていた。また、図7に示すように、本実施例で作製したベクターによる形質転換カルスはハイグロマイシンに対する抵抗性が付与されていた。
本実施例で用いたプロモーターを挿入したものはハイグロマイシン抵抗性を付与するに十分な発現強度を持っていることが実証された。コントロールとして使用した野生型のものは、ハイグロマイシン耐性をが付与されていなかった。従って、RA1583_1由来のクローンは、ハイグロマイシン抵抗性を付与するに十分な発現強度を持っていることが実証された。
(比較例)
比較として、CaMV 35S由来のプロモーターを用いて実施例7および8と同様の実験を行った。同様にこのプロモーターでもハイグロマイシン抵抗性が付与された。
(結論)
以上のように、cDNAデータベースにおけるプロモーターを含有する遺伝子の発現頻度に基づいて決定された特異性を有するプロモーターを利用して作出された機能性植物が、実際に目的とする機能を有することが実証された。
このような機能性植物の設計・作出を行うことが可能となったことは、従来技術では達成不可能であった画期的な技術であり、産業上での利用価値ははかりしれない。
(発明の効果)
目的とする部位で特異的発現をするかまたはしないように遺伝子発現パターンを改変した機能性植物が提供された。
産 業 上 の 利 用 可 能 性
本発明の機能性植物を構築する方法により、所望の遺伝子を植物の所望の部位に任意に発現させるための系を構築することが達成された。本発明の方法では、任意の所望の部位に遺伝子産物を発現させ、または発現させないような機能性植物が提供される。このように自由自在に機能植物を提供することができたことは産業上大いに有用である。
【配列表】
JP0004113952B2_000005t.gifJP0004113952B2_000006t.gifJP0004113952B2_000007t.gifJP0004113952B2_000008t.gifJP0004113952B2_000009t.gifJP0004113952B2_000010t.gifJP0004113952B2_000011t.gifJP0004113952B2_000012t.gifJP0004113952B2_000013t.gifJP0004113952B2_000014t.gifJP0004113952B2_000015t.gif
【図面の簡単な説明】
図1は、相同性検索の結果同じグループに属するとみなされた配列の一例を示す。EST配列データのほとんどは、DNA配列決定機の生データであった。DNA配列決定機の誤差を除き、相同性検索結果の多くクローンを比較し、そしてプライマーウォーキングのためにプライマーを設計した。ボックスで囲まれた部分および*は、すべてのクローンで同じ配列であったことを示す。-は、ギャップを示す。「original clone」は、データベースの参照クローンを示す。「search result」は、相同性検索結果を示す。「consensus」は、コンセンサス配列を示す。「designed primer」は、設計したプライマーを示す。
図2は、転写調節領域単離方法の概要を示す。
図3は、根におけるGFP遺伝子の発現を示す図である。上段が可視光による写真、下段が励起光照射によるGFPの蛍光発光を示す。WTは野生型、0082はEB0082_2に属するクローンを示し、1583はRA1583_1に属するクローンを示し、50060はCG0060_1に属するクローンを示す。
図4は、葉におけるGFP遺伝子の発現を示す。上段が可視光による写真、下段が励起光照射によるGFPの蛍光発光を示す。WTは野生型、0082はEB0082_2に属するクローンを示し、1583はRA1583_1に属するクローンを示し、50060はCG0060_1に属するクローンを示す。
図5は、米粒におけるGFP遺伝子の発現を示す。上段が可視光による写真、下段が励起光照射によるGFPの蛍光発光を示す。WTは野生型、0082はEB0082_2に属するクローンを示し、1583はRA1583_1に属するクローンを示し、50060はCG0060_1に属するクローンを示す。
図6は、生育したカルスより抽出したDNAをテンプレートにPCRを行って、HPT遺伝子(上の矢印の位置)の有無を検出したものを示す。HPT遺伝子のイネカルスへの導入を示す図である。左端はサイズマーカーを示し、レーン1から3は非遺伝子導入カルスより抽出したDNAをテンプレートとして用い、レーン4から6はCaMV35SプロモーターによりHPT遺伝子が駆動されるベクター、レーン7から9はRA1583_1に属するクローンに由来するRA1583_1由来プロモーターによりHPT遺伝子が駆動されるベクター、レーン10から12はCG0060_1に属するクローンに由来するCG0060_1由来プロモーターによりHPT遺伝子が駆動されるベクターをそれぞれ導入したカルスより抽出したDNAをテンプレートとして用い、1.1kbのHPT遺伝子特異的増幅産物を生成する条件でPCRを行った。13および14:ポジティブコントロールとしてHPT遺伝子断片およびpTH1プラスミドをテンプレートとした。15はネガティブコントロールとしてDNA抽出に用いた抽出バッファーを示し、16は滅菌水をそれぞれテンプレートとしてPCRを行った。上段の矢印は予想されるHPT遺伝子の増幅産物のサイズを示す。15および16では、増幅産物は出現していない。
図7は、ハイグロマイシン添加の前後での各カルスの生長を示す写真である。AおよびBは、RA1583_1由来のクローンのプロモーター領域、CおよびDは、CG0060_1由来のクローンのプロモーター領域、EおよびFは、ポジティブコントロールとして使用したCaMV35SプロモーターによりHPT遺伝子を駆動する構造を有するベクター、ならびにGおよびHは、野生型を使用した結果である。A、C、EおよびGは、ハイグロマイシン存在下で生育させた後の結果を示し、B、D、FおよびHは、生育前の結果を示す。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4
【図6】
5
【図7】
6