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明細書 :カルシニューリン活性化剤

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第4500991号 (P4500991)
登録日 平成22年4月30日(2010.4.30)
発行日 平成22年7月14日(2010.7.14)
発明の名称または考案の名称 カルシニューリン活性化剤
国際特許分類 A61K  38/00        (2006.01)
A61P   3/14        (2006.01)
A61P   9/00        (2006.01)
A61P  25/28        (2006.01)
A61P  35/00        (2006.01)
A61P  37/04        (2006.01)
A61P  37/06        (2006.01)
A61P  43/00        (2006.01)
G01N  33/15        (2006.01)
G01N  33/50        (2006.01)
C07K  14/39        (2006.01)
FI A61K 37/02
A61P 3/14
A61P 9/00
A61P 25/28
A61P 35/00
A61P 37/04
A61P 37/06
A61P 43/00 105
A61P 43/00 111
G01N 33/15 Z
G01N 33/50 Z
C07K 14/39 ZNA
請求項の数または発明の数 10
全頁数 32
出願番号 特願2003-578567 (P2003-578567)
出願日 平成14年6月18日(2002.6.18)
新規性喪失の例外の表示 特許法第30条第1項適用 2002年3月5日社団法人日本農芸化学会発行の「2002年度大会講演要旨集」に発表
国際出願番号 PCT/JP2002/006063
国際公開番号 WO2003/080841
国際公開日 平成15年10月2日(2003.10.2)
優先権出願番号 2002081415
優先日 平成14年3月22日(2002.3.22)
優先権主張国 日本国(JP)
審査請求日 平成16年9月10日(2004.9.10)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
発明者または考案者 【氏名】北本 宏子
【氏名】宮川 都吉
個別代理人の代理人 【識別番号】100091096、【弁理士】、【氏名又は名称】平木 祐輔
【識別番号】100118773、【弁理士】、【氏名又は名称】藤田 節
【識別番号】100111741、【弁理士】、【氏名又は名称】田中 夏夫
審査官 【審査官】中尾 忍
参考文献・文献 Magliani,W. et al.,Yeast killer systems,Clin. Microbiol. Rev.,1997年 7月,Vol.10, No.3,P.369-400
Stark,M.J.R. et al.,Nucleotide sequence and transcription analysis of a linear DNA plasmid associated with the killer character of the yeast Kluyveromyces lactis,Nucleic Acids Res.,1984年 8月10日,Vol.12,No.15,P.6011-6030
日本生物工学会大会講演要旨集,2001年,Vol.2001,p.228
Clin. Microbiol. Rev.,1997年 7月,Vol.10, No.3,p.369-400
調査した分野 A61K 38/00
PubMed
Science Direct
Wiley InterScience
CiNii
医学・薬学予稿集全文データベース
特許請求の範囲 【請求項1】
クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤。
【請求項2】
以下のタンパク質を有効成分とする、請求項1記載の真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるサブユニット、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるサブユニットおよび配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるサブユニットの3つのサブユニットからなるクリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)、または
(b)(a)のタンパク質において3つのサブユニットの少なくとも一つが配列番号2、3または4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるサブユニットであり、かつクリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)活性を有するタンパク質。
【請求項3】
カルシウムイオンと請求項1または2記載のカルシニューリン活性化剤を含む、酵母を除く真核細胞の増殖阻害剤。
【請求項4】
カルシウムイオンと請求項1または2記載のカルシニューリン活性化剤を含み、細胞周期におけるG2期阻害剤。
【請求項5】
KLKP感受性酵母株にクリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤と被験物質を作用させ、被験物質のKLKP感受性酵母の感受性を解除させる能力を指標にカルシニューリン阻害に関与する化合物をスクリーニングする方法。
【請求項6】
クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)とヒト細胞を除く真核細胞とを接触させ、カルシウムイオンの該真核細胞内への流入により細胞内カルシウムイオン濃度を増加させることを含む、ヒト細胞を除く真核細胞のカルシニューリンを活性化する方法。
【請求項7】
クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)が以下の3つのサブユニットからなる、請求項6記載の方法。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるサブユニット、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるサブユニットおよび配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるサブユニットの3つのサブユニットからなるクリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)、または
(b)(a)のタンパク質において3つのサブユニットの少なくとも一つが配列番号2、3または4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるサブユニットであり、かつクリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)キラータンパク質(KLKP)活性を有するタンパク質。
【請求項8】
請求項6または7記載の方法によりヒト細胞を除く真核細胞のカルシニューリンを活性化させることによる、ヒト細胞を除く真核細胞の増殖を阻害する方法。
【請求項9】
請求項6または7記載の方法によりヒト細胞を除く真核細胞のカルシニューリンを活性化させることによる、ヒト細胞を除く真核細胞の細胞周期を阻害する方法。
【請求項10】
カルシウムイオンを添加することをさらに含む、請求項6~9のいずれか1項記載の方法。
発明の詳細な説明 技術分野
本発明は、キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)が生産するキラータンパク質(KLKP)の利用に関する。具体的には、キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤に関する。さらに、該カルシニューリン活性化剤を含有する真核細胞の増殖阻害剤および真核細胞周期阻害剤に関する。
背景技術
近年酵母(S.cerevisiae)のキラーシステムに関する種々の研究がされている。Klキラータンパク質はTOKl過剰活性化し細胞膜機能を破壊する(Ahmed,A.et al.,Cell 99,283-291(1999))。また、キチンシンターゼIIIの破壊および非局在化は酵母にK.lactisキラータンパク質(KLKP)に対する耐性を付与する(Jablonowski,D.,et al.,Yeast 18 p.1285(2001))。KLKPはプラスミドpGKL1上の遺伝子でコードされ、αサブユニット、βサブユニットおよびγサブユニットの3つのサブユニットからなることが報告されている(Stark MJ et al.,EMBO J.,Aug,5(8),p.1995-(1986))。
また、本発明者らは、先にKLKPの作用がCa2+で活性化されることを報告した。しかし、そのキラー活性のメカニズムの解明はなされておらず、また、酵母キラータンパク質は、酵母のみに対してキラー活性を有するとされており、その産業への応用も醸造分野等に限られていた。
カルシニューリン(CaN)はCa2+/カルモジュリン複合体で制御される真核生物唯一の脱リン酸化酵素で、細胞増殖・分化や転写制御の調節機構などCa2+が介する情報伝達系の中心的役割を果たしている。酵母で明らかにされたCaNの作用機構は、高等真核生物におけるCaNの機能を解析する上で重要な情報となっている。CaN阻害剤は免疫抑制剤として実用化されているが、CaNは様々な機能を持っており、さらに医療や農業への応用が期待されている。既に明らかにされたCaNの機能と、産業に応用されているものを表1に示した。
JP0004500991B2_000002t.gif出芽酵母を用いてCa2+で活性化されたCaNが細胞周期エンジンの負の調節因子を活性化し、細胞周期を遅らせることが報告されている(NATURE,392,p.303(1998))。
このように、カルシニューリンの活性化、阻害作用を有する物質は、真核細胞の増殖阻害剤、医薬等広く産業への応用が期待されているが、従来容易に入手可能なカルシニューリン活性化剤は多くなかった。
発明の開示
本発明は、キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤の提供を目的とする。さらに、本発明は、該カルシニューリン活性化剤を含有する真核細胞の増殖阻害剤および真核細胞周期阻害剤の提供を目的とする。カルシニューリン活性化剤を含む組成物は、真核細胞の増殖阻害剤、抗がん剤等に広く応用が可能であり、本発明はこのような真核細胞の増殖阻害剤、抗がん剤、免疫抑制剤、免疫活性化剤、記憶に関する疾患の治療剤、循環器の疾患の治療剤の提供をも目的とする。
本発明者らは、キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)が出芽酵母細胞内カルシウム(Ca2+)の細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ、カルシニューリン(CaN)を活性化させて細胞周期G2期遅延を引き起こすことを見い出した。さらに、KLKPは植物培養細胞の増殖抑制も引き起こすことを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、クリュイベロミセス・ラクティスキラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤である。
本発明は、また以下のタンパク質を有効成分とする、上記真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤である。
(a)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるサブユニット、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなるサブユニットおよび配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるサブユニットの3つのサブユニットからなるクリュイベロミセス・ラクティス キラータンパク質(KLKP)、または
(b)(a)のタンパク質において3つのサブユニットの少なくとも一つが配列番号2、3または4で表されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるサブユニットであり、かつクリュイベロミセス・ラクティス キラータンパク質(KLKP)活性を有するタンパク質。
本発明は、さらにカルシウムイオンと上記カルシニューリン活性化剤を含む真核細胞の増殖阻害剤である。
本発明は、さらにカルシウムイオンと上記カルシニューリン活性化剤を含む真核細胞周期阻害剤である。
本発明は、さらにチーズホエーもしくはチーズホエー由来のカルシウムを高濃度で含む調製物と上記カルシニューリン活性化剤を含む真核細胞周期阻害剤である。
本発明は、さらにカルシウムイオンおよび上記カルシニューリン活性化剤を同時にまたは別々にサイレージに添加する工程を含む、サイレージの好気的変敗を防止する方法である。
本発明は、さらにカルシウムイオンの添加がチーズホエーもしくはチーズホエー由来のカルシウムを高濃度で含む調製物の添加により行われる、上記方法である。
本発明は、さらに上記カルシニューリン活性化剤を含む医薬組成物であって、抗がん剤、免疫抑制剤、免疫活性化剤、記憶に関する障害の治療剤、循環器の疾患の治療剤からなる群から選択される医薬組成物である。
本発明は、さらにKLKP感受性酵母株にクリュイベロミセス・ラクティス キラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤と被験物質を作用させ、被験物質のKLKP感受性細胞の感受性を解除させる能力を指標にカルシニューリン阻害に関与する化合物をスクリーニングする方法である。
本発明は、さらにKLKP感受性酵母株にクリュイベロミセス・ラクティス キラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤と被験物質を作用させ、被験物質のKLKP感受性酵母の感受性を解除させる能力を指標にカルシニューリンが関与する疾患の治療薬をスクリーニングする方法である。
本発明は、さらにカルシニューリンが関与する疾患の治療薬が、抗がん剤、免疫抑制剤、免疫活性化剤、記憶に関する障害の治療剤、循環器の疾患の治療剤からなる群から選択される上記方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
1.キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)の取得
キラー酵母とは、他の酵母の生育を選択的に抑制するタンパク性のキラートキシンを生産する酵母をいう。本発明に用いるキラー酵母が生産するキラータンパク質KLKPは、クリュイベロミセス・ラクティスから得ることができる(Kitamoto,H.K.et al.,(1995)7th European Congress on Biotechnology,Abstract Book,62)。クリュイベロミセス・ラクティスの生産するキラータンパク質KLKPは、3つのサブユニットα、βおよびγからなり、これらをコードするDNAは線状プラスミドpGKL1上に存在する。クリュイベロミセス・ラクティスとしては例えば、IF01267株が挙げられる。クリュイベロミセス・ラクティスIF01267株は、財団法人 発酵研究所(大阪市淀川区十三本町2丁目17番85号)から入手することができる。前記キラー酵母を培養し、培養物からKLKPを単離・精製することができる。ここで、培養物とは培養上清および培養菌体をいう。酵母の培養は、公知の方法により行うことができる。また、培養物からのKLKPの単離・精製も公知の生化学的手法を用いて行うことができ、例えばハイドロキシアパタイトカラムを用いて行うことができる。精製タンパク質がKLKPであることは、酵母キラー活性を有するかどうかを測定することにより決定することができる。
また、クリュイベロミセス・ラクティスからKLKPをコードする遺伝子を単離して、遺伝子工学的手法により組換えKLKPを得ることができる。
組換えKLKPの取得に必要なmRNAの調製、cDNAの作製、RT-PCR法、RACE法、DNAの塩基配列の決定、ノーザンブロットによる発現の検討などの実験は通常の実験書に記載の方法によって行うことができる。例えば、Sambrookらの編集したMolecular Cloning,A laboratory manual,2001,Eds.,Sambrook,J.& Russell,DW.Cold Spring Harbor Laboratory Pressを挙げることができる。
配列番号1にKLKPが存在する線状プラスミドpGKL1のDNA配列を示した。該DNAはアクセッション番号X00762でGenBankに登録されている。このうち、第3229位から6669位がキラータンパク質のラージサブユニットをコードしている。ラージサブユニットのアミノ酸配列のうち、第30位から892位のアミノ酸配列がαサブユニットであり、第895位から第1146位がβサブユニットである。配列番号1の第7939位から第8688位がKLKPのスモールサブユニットすなわちγサブユニットをコードしている。配列番号2、3および4にそれぞれKLKPのαサブユニット、βサブユニットおよびγサブユニットのアミノ酸配列を示した。
配列番号2、3および4で表されるαサブユニット、βサブユニットおよびγサブユニットからなるタンパク質であって、3つのサブユニットのうちの少なくとも1つのサブユニットのアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~10個、さらに好ましくは1~5個)のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号2で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~10個、さらに好ましくは1~5個)のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号2で表されるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1又は数個(例えば1~10個、さらに好ましくは1~5個)のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してアミノ酸配列を有し、かつキラー酵母活性またはカルシニューリン活性化作用を有するタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。
このような配列番号2、3または4で表されるアミノ酸配列において1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換もしくは付加されたアミノ酸配列として、配列番号2、3または4のアミノ酸配列と、BLAST等を用いて計算したときに(例えば、デフォルトすなわち初期設定の条件で計算した場合)、少なくとも80%以上、好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上の相同性を有するものが挙げられ、このような相同性を有する3つのサブユニットからなるタンパク質であって、キラー酵母活性またはカルシニューリン活性化作用を有するタンパク質も本発明のタンパク質に含まれる。
ここで、キラー酵母活性とは、野生酵母類の増殖を抑制する活性をいい、酵母に本発明のタンパク質を添加して培養した場合の酵母の増殖の抑制を指標に測定することができる。例えば、酵母を本発明のタンパク質を含むペーパーディスクを乗せた培地で培養し、阻止円の面積を測定する方法により、キラー酵母活性を測定することができる。
また、カルシニューリン活性化作用とは、細胞内のカルシウムイオンを増加させ、カルシウム情報伝達経路であるカルシニューリンを活性化する作用をいい、該活性化作用は、後述の方法により測定することができる。
該遺伝子を適当なベクターに組込み、該ベクターで適当な宿主を形質転換し、組換えKLKPを発現させ取得することができる。
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミドDNA、ファージDNA等が挙げられる。
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクターDNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、イントロンの5’末端側に存在するスプライス供与部位およびイントロンの3’末端側に存在するスプライス受容部位からなるスプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを含有するものを連結することができる。
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、大腸菌(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌が挙げられ、クリュイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、サッカロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母が挙げられ、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞が挙げられ、あるいはS121等の昆虫細胞が挙げられる。
細菌への組換えベクターの導入方法は、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法[Cohen,S.N.et al.:Proc.Natl.Acad.Sci.,USA,69:2110(1972)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
前記形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより本発明のタンパク質を得ることができる。「形質転換体の培養物」とは、培養上清、あるいは培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。
培養後、本発明のタンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりKLKPを抽出する。また、本発明のタンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のタンパク質を単離精製することができる。キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスからの精製と同様に、ハイドロキシアパタイトゲルを用いたクロマトグラフィーにより精製するのが望ましい。
2.キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)のカルシニューリン活性化剤としての使用
上述のキラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスの培養物から精製したKLKPまたは遺伝子工学的手法により得られたKLKPを本発明のカルシニューリン(CaN)活性化剤として用いることができる。
キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスの生産するキラータンパク質は、カルシウムイオンの細胞内への流入による真核細胞内カルシウム濃度を上昇させ、カルシニューリンを活性化させて細胞周期G2期遅延を引き起こす。
ここで、細胞内へのカルシウムイオンの流入とは、細胞外に存在するカルシウムイオンの細胞内部への流入だけでなく、細胞内のオルガネラ中に存在するカルシウムイオンの細胞質内への流入をも含む。従って、細胞内カルシウムイオン濃度の増加とは、細胞質中のカルシウムイオン濃度を増加をいう。
本発明のKLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤は、真核生物の細胞増殖・分化や転写制御の調節機構などのCa2+が介する情報伝達系の研究用試薬として用いることができる。また、カルシニューリンの活性化は細胞周期G2期遅延を引き起こすので、本発明のカルシニューリン活性化剤は、酵母、植物、動物細胞等の真核細胞の細胞周期阻害剤として用いることができ、さらに細胞周期を阻害することから細胞増殖阻害剤としても使用することができる。さらに、カルシニューリンの活性化は、T細胞の増殖、がん細胞の分化誘導、アポトーシス、筋原繊維の再構築をもたらすので、免疫系の活性化、抗がん剤等としても使用することが可能である。
KLKPのカルシニューリン活性化作用は、以下のようにして確認することができる。
カルシウム情報伝達経路がSwe1を活性化することにもとづき、カルシウム情報伝達経路を遮断した場合のキラー感受性の変化により確認できる。
また、Δzds1(Zds1破壊株)においてカルシウム存在下、KLKPを共存させた場合に細胞の細胞周期がG2期で遅れることを指標にしてもカルシウム情報伝達経路であるカルシニューリンが活性化していることを確認することができる。G2期での遅延はFACS解析により確認することができる。
3.キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)の細胞増殖阻害剤としての使用
本発明のキラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)は、細胞の増殖阻害剤として用いることができる。
KLKPを細胞と接触させること、または細胞内で発現させることにより細胞増殖阻害剤として用いることができる。
例えば、KLKPを抗かび剤等として真菌類の増殖抑制に使用し得るし、また細胞増殖を阻害することから植物体等の生物体そのものの増殖阻害剤としても用い得る。細胞または生物体と接触させるKLKPは増殖を阻害させようとする生物種、量により適宜決定することができる。例えば、培養タバコ細胞の場合、生重量で1/40量の細胞を添加した培養液に、KLKPを最終濃度1/100~1/1000となるように添加すればよい。
4.キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)を用いたサイレージ(牛の飼料)の変敗防止
サイレージとは、草を乳酸発酵させ保存性を高めた反芻家畜の飼料である。サイレージが好気的条件に曝されると、酵母の乳酸代謝により好気的変敗が進む。このような好気的変敗を防止するためには、変敗の原因となる乳酸資化性の野生酵母類の増殖を抑制することが必要である。
キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)はカルシウムイオン存在下に酵母等の真菌細胞の増殖を抑制することから、KLKPをサイレージの変敗防止に使用することができる。サイレージ1kg当たり、カルシウムイオン0.1~0.5g、KLKPを0.1~0.5g添加すればよい。また、カルシウムイオンの供給源として、例えばチーズホエーを用いることができる。カルシウムイオンとKLKPは同時にサイレージに添加してもよいし、別々に添加してもよい。
カルシウムイオンもしくはカルシウムイオン供給源とKLKPを含むサイレージ変敗防止用の組成物も本発明の範囲に含まれる。
5.キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)の医薬としての使用
KLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤を医薬として用いることもできる。カルシニューリンは、種々の機能を有することからカルシニューリンを活性化させることにより種々の疾患の予防・治療に用いることが可能である。
本発明のKLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤は、例えば抗がん剤として利用することができる。さらに、本発明のKLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤は、免疫抑制剤、免疫活性化剤、記憶に関する障害の治療剤、循環器の疾患の治療剤としても利用することができる。KLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤を含む医薬組成物も本発明の範囲に包含される。ここで、記憶に関する障害として、例えば記憶減退(hypomnesia)、記憶消失(amnesia)、前向健忘症、情動健忘症が挙げられる。循環器の疾患として、例えば虚血性神経細胞障害が挙げられる。
本発明のKLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤を患者に投与してがん、記憶に関する障害を治療する方法、循環器の疾患を治療する方法、免疫を抑制または活性化する方法も本発明の範囲に包含される。また、本発明のKLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤の抗がん剤、免疫抑制剤、免疫活性化剤、記憶に関する障害の治療剤、循環器の疾患の治療剤の製造への使用も本発明の範囲に包含される。
本発明の医薬は、種々の形態で投与することができる。このような投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与、あるいは注射剤、点滴剤、座薬などによる非経口投与を挙げることができる。かかる組成物は、公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤を含む。たとえば、錠剤用の担体、賦形剤としては、乳糖、ステアリン酸マグネシウムなどが使用される。注射剤は、KLKPまたはその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性もしくは油性液に溶解、懸濁または乳化することによって調製する。注射用の水性液としては、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液などが使用され、適当な溶解補助剤、たとえばアルコール、プロピレングリコールなどのポリアルコール、非イオン界面活性剤などと併用しても良い。油性液としては、ゴマ油、大豆油などが使用され、溶解補助剤としては安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどを併用しても良い。
その投与量は、症状、年齢、体重などによって異なるが、通常経口投与では、1日約0.001mg~100mgであり、1回または数回に分けて投与される。また、非経口投与では、1回あたり、0.001mg~100mgを皮下注射、筋肉注射、または静脈注射によって投与される。
さらに、本発明のクリュイベロミセス・ラクティスキラータンパク質(KLKP)を有効成分とする、真核細胞のカルシウムイオンの細胞内への流入による細胞内カルシウムイオン濃度増加作用を有するカルシニューリン活性化剤をカルシニューリンが関与する疾患の治療薬のスクリーニングに用いることができる。例えば、以下のようにして行うことができる。
Δzds1(Zds1破壊株)等のKLKP感受性株をマイクロプレートに培地およびカルシウムとともに入れ、KLKPを添加、または組換えKLKPを発現させると通常は増殖阻害が起こる。各種の薬剤を添加したときに、増殖阻害がおきなかった場合、その薬剤はカルシニューリン阻害剤と判断できる。
このスクリーニングは酵母だけではなく、動物細胞を用いても行うことができる。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものではない。
実施例1 キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)の精製
酵母クリュイベロミセス・ラクティスIFO1267株を植菌した100mlのYPD培地(酵母エキス1%、ペプトン2%、グルコース2%)を500ml容フラスコにいれ、28℃、220回転で一夜回転振とう培養した。1.3Lの培養液を遠心した上清を0.2μmフィルター濾過後、限外濾過装置(旭化成ACP-1010およびSLP-0053)で10mlまで濃縮した。10mMリン酸カリウムバッファーpH6.8で置換後、同バッファーで平衡化したハイドロキシアパタイトカラム(ナカライテクス187-37、100-200mesh)に吸着させた。10mMリン酸カリウムバッファーpH6.8で洗浄後、400mMのリン酸カリウムバッファー6.8でキラータンパク質を遊離させた。キラー活性を持つフラクションを集め、50mMクエン酸リン酸バッファーpH6.0で透析後、0.2μmフィルターを用いて濾過滅菌し、最終濃度が10%になるようにグリセロールを加えて10mlとし、-80℃で保存した。
実施例2 キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)による細胞内Ca2+の上昇およびカルシニューリン活性化
9種のキラー酵母培養濾液をCa2+存在下出芽酵母に作用させ、生育阻害を調べた。9種のキラー酵母はSaccharomyces cerevisiae NCYC235株(キラータイプの名称はK1、以下同様)、Saccharomyces cerevisiae NCYC738株(K2)、Saccharomyces cerevisiae NCYC761株(K3)、Candida glabrata NCYC388株(K4)、Pichia anomala NCYC434株(K5)、Kluyveromyces marxianus NCYC587株(K6)、Candida valida NCYC327株(K7)、Kluyveromyces lactis NCYC575株(K10)およびWilliopsis saturnus var.saturnus IFO0117株であった。さらに、キラー酵母培養濾液からハイドロキシアパタイトカラムを用いて精製したKLKPを用いて各種金属塩存在下での細胞周期関連遺伝子変異株の増殖を96穴マイクロプレート上で調べた。同様に50mM Ca2+,1/100 KLKP存在下フラスコ内で振とう培養後、経時的に生菌数を調べた。さらに固定した細胞の細胞周期をフローサイトメトリー装置(FACS)で調べ、形態、核、アクチンとキチンを蛍光顕微鏡観察で解析した。その結果以下のことが判明した。
供試したキラー酵母の内4株(Saccharomyces cerevisiae NCYC738株(K2)、Saccharomyces cerevisiae NCYC761株(K3)、Candida valida NCYC327株(K7)およびKluyveromyces lactis NCYC575株(K10))がCa2+共存下出芽酵母の増殖を阻害したが、本研究で用いたクリュイベロミセス・ラクティス培養液は他のキラー酵母が活性を示さない10倍希釈でも強い増殖阻害活性を示した(図1)。図1中、白いバーはカルシウムありの場合であり、黒いバーがカルシウムなしの場合である。横軸は、増殖の程度を示す。
また、出芽酵母W303株は高いCa2+濃度でKLKPによって増殖阻害されたが、Zn2+,Mn2+,Na,K,Mg2+の影響は受けなかった(図2(a),(b))。W303株から分離された高濃度Ca2+に感受性を示すΔzds1株(Zds1破壊株)は、W303株より低濃度のKLKPに感受性を示しただけでなく、Ca2+キレート剤EGTA添加によりKLKPによる生育阻害が抑えられた(図3(b))。Zds1は細胞周期エンジンの負の調節因子であるSwe1の転写抑制を行う。Δzds1ではSwe1が転写され、Cdc28-C1b細胞周期エンジンがリン酸化されるために細胞周期G2期で遅れる。また、Ca2+情報伝達系カルシニューリンとMpk1 MAPキナーゼは各々Ca2+存在下Swe1の転写と活性化をして、細胞周期エンジンを負に制御する(図4)。図4のメカニズムはMizunumaらにより報告された(NATURE,392,p.303(1998))。そこでΔzds1ではCa2+の細胞周期への影響を見ることができる。Δzds1とCa2+情報伝達系の2重遺伝子破壊株Δzds1Δswe1,Δzds1Δcnb1(カルシニューリンサブユニット),Δzds1Δmpk1は、0.1~300mM Ca2+においてΔzds1に比べてKLKP感受性が低くなった(図3(c),(d),(e))。
FACS解析の結果、KLKP添加によりΔzds1株ではG2期の細胞が多くなった(図5)。一方、Δzds1Δcnb1,Δzds1Δswe1はKLKP添加でG1期の細胞が増え、Δzds1Δmpk1ではKLKP無添加と変わらず、いずれもG2期の細胞は増えない(図6)。図5および図6中のFACS解析図中2本のピークのうち第1番目のピークがG1期の細胞の増加を、第2番目のピークがG2期の細胞の増加を示す。
このことから、KLKP添加で出芽酵母の細胞周期G2期で遅れ、この作用はCa2+で活性化されることが明らかになった。この機構には、Ca2+情報伝達経路によるSwe1キナーゼの活性化が関わる。KLKPは出芽酵母細胞周期G1期で停止させることが知られているが、高濃度では他の細胞周期で止まる場合もあると報告されている。そこで、KLKPの細胞周期抑制はG1期とG2期2箇所あり、Ca2+により活性化される機構はG2期を遅延すると結論した。Ca2+情報伝達経路が遮断されると、図6で見られたようにもう一方のG1期での細胞周期抑制が観察される。
この培養条件で、W303株の生菌数にはほとんど影響が出ないが、Δzds1株はKLKP添加で急速に死滅し、KLKP超感受性を示した(図7(a),(b))。図7中灰色線は総菌体数を示す。また、図7(a)は親株W303株の結果を、図7(b)はΔzds株の結果を示す。
この培養条件で、W303株の生菌数にはほとんど影響が出ないが、Δzds1株はKLKP添加で急速に死滅し、KLKP超感受性を示した(図7)。
KLKPはキチンを認識することが知られている。通常キチンは出芽痕に局在するが、W303株、Δzds1株ともにCa2+,KLKP添加でキチンの塊が細胞表層に点在した(図8(a))。また、アクチンは通常出芽の方向にケーブルが走り、出芽位置にパッチが局在するが、Ca2+はアクチン局在に影響を与えることが知られている。W303株、Δzds1株ともにKLKP添加によってアクチン局在が欠損した。KLKPによるキチン、アクチン局在欠損はCa2+共存で強められ、W303株よりもΔzds1株が深刻だった(図8(b))。このようにKLKPは通常静菌的効果を示し、アクチンの局在欠損を引き起こす。さらに、KLKP超感受性株や、Ca2+によるKLKP活性化によってキチン局在欠損も引き起こす。また、細胞を殺すことが観察された。
さらに、KLKPによる細胞内カルシウム濃度上昇を測定した。
発光タンパク質エクオリン前駆体を発現させた酵母であってカルシウムイオンを含まない培地で培養した酵母に基質(セレンタジン)を吸収させた後Ca2+とKLKPを作用させ、フォトンカウンターで発光量を測定した。また、Ca2+流入のコントロールとしてカルシウムイオノフォア(A23187)を用いた。
また、Ca2+で誘導されるタンパク質のプロモーターの下流にβ-ガラクトシダーゼ遺伝子を接続したプラスミドを形質転換した酵母にKLKPを作用させ、5分後に細胞を水で洗浄した。その後液体培地を加えて4時間振とうして、細胞内Ca2+濃度に対応してβ-ガラクトシダーゼを発現させた。細胞をエーテル処理したのち、基質(ONPG)を加えて細胞のβ-ガラクトシダーゼ活性を調べた。結果を図9(a)a~fに示し(エクエリオン測定法)、βガラクトシダーゼ活性を図9(b)に示した(レポーターアッセイ法)。図9(a)中、(a)aは野生型の結果を、(a)bから(a)fはエクオリン前駆体発現細胞での結果を示す。
その結果、エクオリン前駆体を発現させた細胞(図9(a)b~f)はCa2+添加でわずかに発光し(図9(a)c)、Ca2+,カルシウムイオノフォア添加で発光量が2.4倍になった(図9(a)d)。一方、カルシウムイオノフォア同様KLKP単独では発光を誘導しない(図9(a)e)が、Ca2+、KLKP添加によりCa2+添加の発光に比べて2.4倍の発光を生じ(図9(a)f)、KLKP添加後ただちにカルシウムイオノフォアと同等のCa2+が細胞内で増加したことが確認された。
続いて、レポーターアッセイを行った。KLKP処理をした細胞は、β-ガラクトシダーゼ活性が増えたため、細胞内Ca2+濃度が上昇したと考えられる(図9(b))。
以上の2つの方法により、KLKP処理により、細胞内Ca2+濃度が上昇することが確認された。
さらに、45Caを用いてKLKPの作用解析を行った。カルシウム欠乏培地で培養した酵母細胞に45Caを添加した。9分後にカルシウム吸収量が平坦域に達してから、KLKPを添加した。45Ca添加後2分ごとに細胞を取り、細胞中の45Caの量を測定した。その結果、KLKP添加後の細胞中のカルシウムの量がKLKP無添加の場合に比べて1.5倍から2倍に上昇した(図11)。
図9および図11に示すように、KLKPによって細胞外からカルシウムイオンが流入することが確認された。
KLKPによるカルシニューリンの活性化は以下の方法で確認した。
カルシウム情報伝達経路は、Swe1を活性化する(図4)ことに基づき、Ca2+情報伝達によるSwe1活性化が観察できるようにΔzds1株を用いた。
カルシウム情報伝達経路を遮断した場合、キラー感受性が低下した。特に、Cnb1との2重破壊では、親株に比べても耐性となっており、カルシニューリンがないと、キラー感受性にならない。
Δzds1株は、カルシウムを添加するとG2期で遅れることが知られているが、FACS解析の結果、カルシウム存在下にKLKPを共存させると、さらにG2期で遅れることから(図5)、図4のカルシウム情報伝達系が活性化していることが確認された。
以上の結果から、KLKPによって細胞内カルシウム濃度が上昇し、カルシウム情報伝達経路カルシニューリンが活性化され、細胞周期G2期で遅れる機構があることがわかった。
実施例3 キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)による植物培養細胞増殖抑制
タバコ培養細胞(BY細胞)28℃7日間増殖させたもの1mlを、3%しょ糖を含むムラシゲ・スクーグ培地20mlに添加した。KLKPを最終濃度1/100~1/100000加え、28℃115回転で5日間培養した。培養液ごと細胞をメモリ付き試験管に移し、静置後、沈殿した細胞の量を測定した。また、KLKP無添加と1/100添加した細胞を蛍光試薬DAPIで染色し、細胞と核の形態を観察した。
その結果、1/100濃度のKLKP存在下では培養細胞の増殖は無添加の半分程度であった、1/1000濃度でも無添加の8割程度の細胞量となり、KLKPによって細胞の増殖が阻害されることが示された。さらにKLKP添加により細胞が通常よりも大きくなっており、このことからも分裂阻害が示された(図11)。図11中、図11(a)は細胞の増加を、図11(b)は細胞の形態の変化を示す。また、KLKPは酵母以外の真核生物にも作用することが明らかになった。
産業上の利用性
実施例2に示すように、キラー酵母クリュイベロミセス・ラクティスが生産するキラータンパク質(KLKP)は真核細胞において、細胞内カルシウムイオン濃度を上昇させ、カルシニューリンを活性化させるので、真核細胞におけるカルシニューリン活性化剤として利用することができる。また、カルシウムイオンの存在下で真核細胞の細胞周期をG2期で止めることができ、細胞周期阻害剤として利用することができる。特に、実施例3に示すように酵母以外の真核細胞の細胞増殖を抑制することが可能であり、広く細胞増殖阻害剤として用いることができる。特に本発明のKLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤をカルシウムイオン供給源とともにサイレージに添加することによりサイレージの変敗を防止することができる。
また、本発明のKLKPを有効成分とするカルシニューリン活性化剤を抗がん剤等の医薬として用いることが可能である。
本明細書に引用されたすべての刊行物は、その内容の全体を本明細書に取り込むものとする。また、添付の請求の範囲に記載される技術思想および発明の範囲を逸脱しない範囲内で本発明の種々の変形および変更が可能であることは当業者には容易に理解されるであろう。本発明はこのような変形および変更をも包含することを意図している。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、カルシウムで活性化されるキラータンパク質の検索の結果を示す図である。
図2は、W303株に対するKLKPのキラー効果を示す図である。(a)はCa2+共存下の結果、(b)はその他のイオン共存下の結果を示す。
図3は、Ca2+情報伝達系変異株に対するキラー効果を示す図である。図3Aは(a)親株W303株および(b)そのzds1遺伝子破壊株(Δzds1)の結果を示し、図3BはΔzds1との二重遣伝子破壊株の結果を示す。(c)がΔzds1Δswe1、(d)がΔzds1Δcnb1および(e)がΔzds1Δmpk1の結果を示す。
図4は、出芽酵母Ca2+情報伝達系に関わる細胞周期G2/M期モデルを示す図である。
図5は、KLKPを作用させたΔzds1株(Zds1破壊株)のFACS解析の結果を示す図である。
図6は、KLKPを作用させたΔzds1とCa2+情報伝達系の二重変異株のFACS解析の結果を示す図である。(a)がΔzds1Δcnb1、(b)がΔzds1Δswe1および(c)がΔzds1Δmpk1の結果を示す。
図7は、KLKPの生菌数への影響を示す図である。(a)が親株W303株について、(b)がΔzds1についての結果を示す。
図8は、KLKPを作用させた細胞の(a)キチン(9時間後)、(b)アクチン(6時間後)の様子を示す写真である。
図9は、野生型およびエクオリンを発現させた細胞における発光量(図9(a))およびKLKPによる細胞内カルシウムの増加(レポーターアッセイ法)(図9(b))を示す図である。
図10は、45Caを用いたKLKPの作用解析の結果を示す図である。
図11は、KLKPを作用させたタバコ培養細胞の生育を示す写真である。
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3A】
2
【図3B】
3
【図4】
4
【図5】
5
【図6】
6
【図7】
7
【図8】
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【図9】
9
【図10】
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【図11】
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