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明細書 :リン酸カルシウム系骨充填材、及びその製造方法

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5371034号 (P5371034)
公開番号 特開2010-075247 (P2010-075247A)
登録日 平成25年9月27日(2013.9.27)
発行日 平成25年12月18日(2013.12.18)
公開日 平成22年4月8日(2010.4.8)
発明の名称または考案の名称 リン酸カルシウム系骨充填材、及びその製造方法
国際特許分類 A61L  27/00        (2006.01)
FI A61L 27/00 J
A61L 27/00 K
請求項の数または発明の数 5
全頁数 12
出願番号 特願2008-244086 (P2008-244086)
出願日 平成20年9月24日(2008.9.24)
審査請求日 平成23年9月13日(2011.9.13)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】591141784
【氏名又は名称】学校法人大阪産業大学
発明者または考案者 【氏名】坂本 清子
【氏名】山口 俊郎
個別代理人の代理人 【識別番号】100074206、【弁理士】、【氏名又は名称】鎌田 文二
【識別番号】100112575、【弁理士】、【氏名又は名称】田川 孝由
【識別番号】100117400、【弁理士】、【氏名又は名称】北川 政徳
審査官 【審査官】福井 悟
参考文献・文献 特開2000-245822(JP,A)
特開平07-206489(JP,A)
特開2002-058735(JP,A)
特表2001-518359(JP,A)
調査した分野 A61L 15/00-33/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
特許請求の範囲 【請求項1】
リン酸一水素カルシウム、リン酸四カルシウム、及び摩砕処理されたβ-リン酸三カルシウムを含有するリン酸塩系混合物を、水含有の練和液で混練してなる骨充填材であり、
上記β-リン酸三カルシウムは、水及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方を含有する雰囲気下で摩砕処理されたものであり、その平均粒子径は0.1~20μm、かつ、その比表面積は3.0~10m/gであり、
上記リン酸一水素カルシウム1モルに対し、上記リン酸四カルシウムを1.1~3モルを含有すると共に、上記β-リン酸三カルシウムを1.1~5モル含有するリン酸カルシウム系骨充填材。
【請求項2】
上記水含有の練和液は、リン酸アルカリ金属塩の水溶液であり、このリン酸アルカリ金属塩の使用量は、上記リン酸塩系混合物に対し、1.0~5.0重量%である請求項に記載のリン酸カルシウム系骨充填材。
【請求項3】
上記リン酸塩系混合物は、リン酸八カルシウムと、有機酸又はその塩との複合体を含有し、
その含有量は、上記のリン酸一水素カルシウム、リン酸四カルシウム、及びβ-リン酸三カルシウムの合計量に対して、0.5~10.0重量%である請求項1又は2に記載のリン酸カルシウム系骨充填材。
【請求項4】
上記有機酸は、クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、及びヌクレオチドから選ばれる酸である請求項に記載のリン酸カルシウム系骨充填材。
【請求項5】
上記水含有の練和液は、疎水性アミン酸を含有し、この疎水性アミノ酸の使用量は、上記リン酸塩系混合物に対して、0.5~2.0重量%である請求項1乃至のいずれか1項に記載のリン酸カルシウム系骨充填材。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
この発明は、骨折等による骨欠損部の修復用に用いられる、リン酸カルシウム系の骨充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
骨折等により生じる骨欠損部の修復に用いられる骨充填材として、アクリル系骨充填材や、セラミックス系骨充填材等が知られている。これらのうち、アクリル系骨充填材は、ペースト状物を、修復すべき箇所に充填した後、硬化させて使用するが、未重合モノマーが残存すると、毒性の問題が生じることがある。また、生体内で吸収されず、異物として体内に残存するという問題点を有する。
【0003】
また、上記セラミックス系骨充填材としては、アルミナ、カーボン、酸化ジルコニア等を用いた骨充填材や、ヒドロキシアパタイトやリン酸カルシウム等を用いた骨充填材が知られている。前者の骨充填材は、生体内において化学的に安定であるが、生体内で吸収されず、異物として体内に残存するという問題点を有する。これに対し、後者は、骨を構成する成分と同様の成分であり、生体内で吸収され、骨の修復材としての役割を期待することができる。
【0004】
上記後者の骨充填材としては、所定粒径のリン酸四カルシウムとリン酸水素カルシウムからなるリン酸カルシウム組成物(特許文献1)や、生体吸収性有機材料と、アパタイト類、リン酸三カルシウム、リン酸四カルシウム等とを用いた骨充填材(特許文献2)等が知られている。これらは、水の存在下で徐々に水和反応が生じ、アパタイト類が生成されて硬化されるので、これらがペースト状の状態で骨折等の修復すべき箇所に充填し、水和反応(硬化)させることにより、骨折箇所の固定が可能となる。
【0005】

【特許文献1】特開2007-191420号公報
【特許文献2】特開2000-262608号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、前者のリン酸カルシウム組成物の硬化物は、強度が不十分となる場合がある。また、後者の骨充填材においては、リン酸三カルシウムが用いられるが、水和反応の反応性の高いα体を用いるのが一般的である。ところが、このα-リン酸三カルシウムは、骨細胞との接着性が良くなく、骨折等の患部の骨の再生に影響を与える場合がある。
【0007】
このα-リン酸三カルシウムの代わりに、骨細胞との接着性が良好なβ-リン酸三カルシウムを用いることが考えられる。しかし、このβ-リン酸三カルシウムは、水和反応の反応性に乏しく、骨充填材として用いても、水和反応が生じにくく、硬化しにくいという傾向がある。
【0008】
そこで、この発明は、十分に水和反応が生じて硬化し、硬化物が十分な強度を有し、かつ、骨細胞との接着性が良好な骨充填材を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、リン酸一水素カルシウム、リン酸四カルシウム、及び摩砕処理されたβ-リン酸三カルシウムを含有するリン酸塩系混合物を水含有の練和液で混練してなり、上記のβ-リン酸三カルシウムは、水及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方を含有する雰囲気下で摩砕処理されたものであり、リン酸一水素カルシウム1モルに対し、リン酸四カルシウムを1.1~3モル含有すると共に、上記β-リン酸三カルシウムを1.1~5モル含有するリン酸カルシウム系骨充填材を用いることにより、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0010】
この発明にかかるリン酸カルシウム系骨充填材は、α-リン酸三カルシウムでなく、β-リン酸三カルシウムを用いるので、骨細胞との接着性を良好に保つことができる。
また、β-リン酸三カルシウムは、水及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方を含有する雰囲気下で摩砕処理されたものであり、その表面に水分子や炭酸イオンが取り込まれ、この表面の反応活性を向上させており、水の存在下で水和反応を生じさせて硬化させることが可能となり、骨充填材として使用することができる。
さらに、リン酸一水素カルシウム、リン酸四カルシウム、及び特定のβ-リン酸三カルシウムの混合比率を所定範囲内とするので、得られる硬化物は十分な強度を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明にかかるリン酸カルシウム系骨充填材は、リン酸一水素カルシウム(以下、「DCPD」と略する。)、リン酸四カルシウム(以下、「TTCP」と略する。)、及び特定のβ-リン酸三カルシウム(以下、リン酸三カルシウムを「TCP」と略する。)を含有するリン酸塩系混合物を、水含有の練和液で練り合わせてなる。
【0012】
上記DCPDは、下記の化学式(1)で示される化合物をいい、上記TTCPは、下記の化学式(2)で示される化合物をいい、上記TCPは、下記の化学式(3)で示される化合物をいう。
CaHPO・2HO 、又は CaHPO … (1)
Ca(POO … (2)
Ca(PO … (3)
【0013】
上記のDCPDやTTCPは、特に限定されたものではなく、市販品を使用することができる。また、その粒径が大きい場合、ボールミル等の粉砕機を用いて粉砕することが好ましい。
【0014】
上記β-TCPは、水及び二酸化炭素から選ばれる少なくとも一方を含有する雰囲気下で摩砕処理されたものである。水、二酸化炭素、又はその両方を含む雰囲気下で摩砕処理することにより、摩砕されたβ-TCPの表面に水分子や炭酸イオンが取り込まれ、摩砕処理で生じた表面の活性状態が保持されるため、水存在下でDCPDやTTCPと共存させたときに、水和反応が生じやすくなり、硬化がおこりやすいからと考えることができる。
【0015】
上記の摩砕処理の方法としては、乳鉢、ボールミル等の粉砕機等を用いて粉砕することができる。摩砕時の雰囲気は、水、二酸化炭素、又はその両方を含む雰囲気であればよく、通常の大気雰囲気下で十分である。
【0016】
なお、上記の摩砕処理は、β-TCP単独で行ってもよく、また、DCPD、TTCP、及びβ-TCPを混合した後に行ってもよい。
【0017】
上記の摩砕処理で得られるβ-TCPの平均粒子径は、0.5~20μmがよく、0.8~15μmが好ましい。また、β-TCPの比表面積は、3.0~10m/gがよく、3.5~7m/gが好ましい。これらの範囲を満たすことにより、水存在下でDCPDやTTCPと共存させたときに、水和反応の反応性が向上して硬化しやすくなり、骨充填材として有用に使用できる。上記平均粒子径が上記範囲より大きい場合や、上記比表面積が上記範囲より小さい場合であっても、上記リン酸塩系混合物を上記練和液で混練したときの水和反応が生じるが、生成したアパタイト類の結晶性が低下するために、硬化しにくくなるおそれがある。一方、上記平均粒子径が上記範囲より小さくてもよいが、ハンドリングが困難となる場合がある。また、上記比表面積が上記範囲より大きい場合、上記リン酸塩系混合物を上記練和液で混練したときの水和反応が十分に生じず、硬化しにくくなるおそれがある。
【0018】
上記のDCPD、TTCP、及びβ-TCPの混合比は、上記DCPD1モルに対し、上記TTCP1.1~3モルが好ましく、1.5~2.5モルがより好ましく、1.8~2.3モルがより好ましい。上記範囲を外れると、得られた骨充填材の硬化物の強度を十分に得られないおそれがある。
【0019】
また、上記DCPD1モルに対し、上記β-TCP1.1~5モルが好ましく、1.5~4.5モルがより好ましく、1.8~4.3モルがより好ましい。上記範囲を外れると、得られた骨充填材の硬化物の強度を十分に得られないおそれがある。
【0020】
さらに、DCPD、TTCP、及びβ-TCPの混合比の特に好ましい範囲は、モル比で、DCPD/TTCP/β-TCP=1/1.9~2.2/1.9~4.2である。この範囲だと、得られた骨充填材の硬化物の強度を、最も十分に得ることができる。
【0021】
上記のDCPD、TTCP、及びβ-TCPを所定割合で含有するリン酸塩系混合物には、必要に応じて、リン酸八カルシウム(Ca(PO)・5HO)(以下、「OCP」と略する。)と有機酸又はその塩との複合体を含有させてもよい。これを加えると、得られた骨充填材に親水性を付与することができ、体内の所定箇所に充填・水和反応(硬化)させた際に、骨充填材が充填・水和反応(硬化)される部分の体内の箇所との親和性を向上させることができる。上記有機酸としては、クエン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、ヌクレオチド等が挙げられる。
【0022】
上記ヌクレオチドとしては、アデノシン一リン酸(AMP)、アデノシン二リン酸(ADP)、アデノシン三リン酸(ATP)、グアノシン一リン酸(GMP)、グアノシン二リン酸(GDP)、グアノシン三リン酸(GTP)、ウリジン一リン酸(UMP)、ウリジン二リン酸(UDP)、ウリジン三リン酸(UTP)、シチジン一リン酸(CMP)、シチジン二リン酸(CDP)、シチジン三リン酸(CTP)、チミジン一リン酸(TMP)、チミジン二リン酸(TDP)、チミジン三リン酸(TTP)等があげられる。
【0023】
上記複合体の含有量は、上記のDCPD、TTCP、及びβ-TCPの合計量に対して、0.5~10.0重量%がよく、1.0~5.0重量%が好ましい。上記の範囲より少なすぎると、上記複合体の添加効果を得られないおそれがある。一方、上記範囲より多すぎると、骨充填材中における上記リン酸塩系混合物の含有割合が低下し、得られる骨充填材の硬化物の強度が低下するおそれがある。
【0024】
上記OCPと有機酸又はその塩との複合体の製造方法としては、α-TCP、DCPD、及び上記の有機酸又はその塩とを水中で混合し、40~60℃の温度条件下で、3~24時間、水和反応する方法があげられる。
【0025】
上記のDCPD、TTCP、及びβ-TCPを所定割合で含有するリン酸塩系混合物は、水含有の練和液で混練されて、ペースト状となり、骨充填材となる。このリン酸塩系混合物は、水の存在下で水和反応を生じ、ヒドロキシアパタイト類の生成反応を生じさせ、硬化させるので、水含有の練和液で混練する段階から、水和反応、すなわち、硬化が起こり始める。このため、骨充填材を、骨折等の骨の修復すべき箇所に充填する際に、上記リン酸塩系混合物に所定量の練和液を加えて練り合わせることによってペースト化し、直ちに、所定箇所に充填するのが好ましい。
【0026】
この練和剤は、水を含有する必要があり、水単独であってもよく、また、リン酸アルカリ塩の水溶液を用いてもよい。このようなリン酸アルカリ塩としては、リン酸一水素二ナトリウム等があげられる。このリン酸アルカリ塩を加えることにより、得られた骨充填材の硬化物の強度を、向上させることができる。
【0027】
上記練和剤中の水の量は、上記リン酸塩系混合物に対し、50~100重量%が好ましく、70~90重量%が好ましい。上記の範囲より少なすぎると、ペースト化することが困難となる場合がある。一方、上記範囲より多すぎると、得られるペーストの粘度が低下し、骨折等の骨の修復すべき箇所に充填する際に流れだしが生ずるおそれがあり、水和反応が完了するまで、所定箇所に骨充填材を保持することが困難となる場合がある。
【0028】
また、上記リン酸アルカリ塩の使用量は、上記リン酸塩系混合物に対し、1.0~5.0重量%が好ましく、2.0~3.0重量%が好ましい。上記の範囲より少なすぎると、リン酸アルカリ塩の添加効果を得られないおそれがある。一方、上記範囲より多すぎると、骨充填材中における上記リン酸塩系混合物の含有割合が低下し、得られる骨充填材の硬化物の強度が低下するおそれがある。
【0029】
さらに、上記練和剤としては、水以外に、リン酸アルカリ塩の代わりに、又はリン酸アルカリ塩と共に、グリシン、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン等の疎水性アミノ酸を加えてもよい。この疎水性アミノ酸を加えることにより、上記リン酸塩系混合物に練和剤を加えた際にダマが生じるのを抑制することができ、骨充填材の成形性を向上させることができる。
【0030】
上記疎水性アミノ酸の使用量は、上記リン酸塩系混合物に対し、0.5~2.0重量%が好ましく、0.8~1.5重量%が好ましい。上記の範囲より少なすぎると、疎水性アミノ酸の添加効果を得られないおそれがある。一方、上記範囲より多すぎると、骨充填材中における上記リン酸塩系混合物の含有割合が低下し、得られる骨充填材の硬化物の強度が低下するおそれがある。
【0031】
なお、上記リン酸アルカリ塩と疎水性アミノ酸とを一緒に用いる場合でも、上記したそれぞれの量を用いるのがよい。
【実施例】
【0032】
次に、この発明について、実施例を用いてより詳細に説明する。
<評価方法>
[強度試験(圧縮強度)]
得られたペーストを、内径4.0mm、高さ10.0mmの円筒状の凹部を有するテフロン(登録商標)製の型の凹部に注入し、1時間、室温で放置し、その後、この型からペレットを取り出した。なお、同じペレットを、少なくとも5個作成した。
得られたペレットを、すぐに、蓋付きのガラス瓶に入れた生理食塩水に浸し、蓋をした。そして、38℃に保持した恒温室に放置した。
そして、生理食塩水に浸漬させないペレット(0日経過後のペレット)、浸漬1日経過後のペレット、浸漬3日経過後のペレット、浸漬7日経過後のペレット、浸漬30日経過後のペレットについて、圧縮試験機(イマダ(株)製:デジタルフォースゲージ ZP(Z2)型)を用いて、圧縮強度を測定した。
【0033】
[平均粒子径の測定]
(株)堀場製作所製:LA-920を用いて、平均粒子径を測定した。
[比表面積の測定]
マウンテック社製:NM-Model1210を用いて、BET法で測定した。
【0034】
<使用原材料>
・DCPD…和光純薬工業(株)製:試薬特級
・TTCP…和光純薬工業(株)製:試薬特級
・α-TCP…太平化学産業(株)製
・β-TCP…太平化学産業(株)製
・リン酸一水素二ナトリウム…和光純薬工業(株)製:試薬特級
・グリシン…和光純薬工業(株)製:試薬特級
・クエン酸…和光純薬工業(株)製:試薬特級
・アスパラギン酸…和光純薬工業(株)製:試薬特級
・アデノシン一リン酸…和光純薬工業(株)製:試薬特級
【0035】
[OCPと有機酸又はその塩との複合体の製造]
40~60℃に加温した水40ml中に、α-TCPを10mmol、DCPDを10mmol、並びにクエン酸、アスパラギン酸及びアデノシン一リン酸から選ばれる有機酸10mmolを加え、24時間、温度を保った状態で、撹拌することにより、製造した。
得られたOCPとクエン酸との複合体を「OCP-Cit」と称し、OCPとアスパラギン酸との複合体を「OCP-Asp」と称し、OCPとアデノシン一リン酸との複合体をOCP-AMPと称する。
【0036】
(実施例1)
[β-TCPの摩砕]
β-TCP 4.0gを秤取り、自動乳鉢撹拌機(日陶科学(株)製、ANM-1000、乳鉢はメノウ製)を用いて、室温で、7時間、24時間、72時間撹拌した。
得られた摩砕β-TCPについて、X線回折測定、赤外線吸収測定、示差熱測定(熱重量測定)を行った。また、それらの平均粒子径及び比表面積を測定した。それらの結果を、図1~図3、表1に示す。
【0037】
また、得られた摩砕β-TCP2.0gに水20mlを加えて撹拌し、90℃にてヒドロキシアパタイト(HAp)の生成反応を行った。3時間、6時間、15時間、24時間経過後のHApの生成率(転化率(%))を、X線回折測定の結果から算出した。その結果を図4に示す。また、β-TCPが完全に反応した後(アパタイト類の生成が完了した後)のX線回折ピークを図5に示す。
【0038】
【表1】
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【0039】
(実施例2~16、比較例1~3)
DCPD、TTCP、及び24時間撹拌したβ-TCPを表1に記載の量ずつ混合し、また、必要に応じて、OCP-Cit、OCP-Asp、OCP-AMPを表1に記載の量を添加した。
次いで、表1に示す練和液を加え、練り合わせて、ペーストを得た。
得られたペーストを用いて、上記の強度試験を行った。その結果を表1~3に示す。
【0040】
(比較例4)
骨充填材として、BIOPEX-R(商品名、ペンタックス(株)製、以下、「バイオペックス」と称する。)を用いて上記強度試験を行った。その結果を表1に示す。
【0041】
【表2】
JP0005371034B2_000003t.gif

【0042】
【表3】
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【0043】
【表4】
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【0044】
(結果)
[β-TCPの摩砕について]
実施例1において、β-TCPの摩砕について検討した。
図1のX線回折ピークの変化に示されているように、β-TCPの摩砕時間と共に、X線回折ピーク強度の低下が見られた。これは、β-TCPの結晶性の低下を示しており、β-TCP粒子の表面が無定形化しているためと考えられる。
また、図2の赤外線吸収チャートの変化に示されているように、摩砕時間と共に、水及び炭素イオンの吸収が見られるようになった。β-TCPの摩砕により、β-TCPの表面に、水及び炭酸イオンが取り込まれたためと考えられる。
さらに、図3の示差熱測定チャートの変化に示されているように、摩砕時間の増加と共に、加熱による重量減少が多くなる傾向が見られた。これは、摩砕時に、β-TCPの表面に取り込まれた水及び炭酸イオンが、加熱により揮散したためと考えられる。
【0045】
[β-TCPの水和反応によるHApの生成について]
図1に示すX線回折ピークにおいて、摩砕時間と共に、HApピーク(31.8°)が増加し、摩砕β-TCPピーク(29.0°)が減少しているのがわかった。そこで、摩砕β-TCPからHApへの転化率を算出し、その結果を図4に示した。その結果、摩砕時間が長い方が、HApへの反応速度が速いことが明らかとなった。
次いで、図5において、それぞれの摩砕時間の摩砕を行ったβ-TCPを用いて水和反応を行い、得られたHApのX線回折ピークを示した。その結果、摩砕時間が短い(7時間)と、得られるピークがシャープになった。すなわち、結晶性のよいアパタイト類が得られた。一方、摩砕時間が長くなるにつれ、得られるピークがブロード化していった。すなわち、得られたアパタイト類の結晶性が低くなっていくことが明らかとなった。
【0046】
[骨充填材の強度について]
実施例2~16、比較例1~4において、骨充填材の強度を調べた。
表2に示すように、実施例2~4の結果において、この発明における骨充填材の強度は、十分であることが分かった。特に、DCPDに対してβ-TCPが2モル倍~3モル倍の場合(実施例3、4)、浸漬時間3日間以上において、圧縮強度が38MPaとなり、より十分な強度が得られることが分かった。
また、実施例2~4において、特に実施例4においては、従来品であるバイオペックスと同等の圧縮強度が得られることが明らかとなった。
一方、比較例1~3のように、DCPDの含有量が、TTCPの含有量以上の場合、又はβ-TCPの含有量以上の場合においては、十分な圧縮強度が得難いことが明らかとなった。
次に、実施例4,5~13の結果において、リン酸塩系混合物として、OCPと有機酸又はその塩との複合体とを添加した場合、特に、浸漬時間が長い場合において、複合体を添加しない場合と同様の圧縮強度が得られている。このため、からだとの親和性をより向上させ、かつ、十分な圧縮強度を有する骨充填材を得ることが可能であることが分かった。
また、実施例4,14~16において、グリシンを添加しても、添加しない場合に近い圧縮強度が得られている。このため、よりよい成形性、かつ、十分な圧縮強を有する骨充填材を得ることが可能であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】β-TCPの摩砕時間の変化に対するX線回折ピークの変化
【図2】β-TCPの摩砕時間に対する赤外線吸収チャートの変化
【図3】β-TCPの摩砕時間に対する示差熱測定チャートの変化
【図4】摩砕β-TCPからHApへの転化率のグラフ
【図5】所定の摩砕時間の摩砕を行ったβ-TCPを用いて水和反応を行って得られたHApのX線回折ピーク
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2
【図4】
3
【図5】
4