TOP > 国内特許検索 > 農業用シート敷設機 > 明細書

明細書 :農業用シート敷設機

発行国 日本国特許庁(JP)
公報種別 特許公報(B2)
特許番号 特許第5453643号 (P5453643)
公開番号 特開2010-193864 (P2010-193864A)
登録日 平成26年1月17日(2014.1.17)
発行日 平成26年3月26日(2014.3.26)
公開日 平成22年9月9日(2010.9.9)
発明の名称または考案の名称 農業用シート敷設機
国際特許分類 A01G  13/02        (2006.01)
A01G  13/00        (2006.01)
FI A01G 13/02 L
A01G 13/00 303
請求項の数または発明の数 4
全頁数 8
出願番号 特願2009-046099 (P2009-046099)
出願日 平成21年2月27日(2009.2.27)
審査請求日 平成23年8月16日(2011.8.16)
特許権者または実用新案権者 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
発明者または考案者 【氏名】寺内 方克
【氏名】久保 光正
【氏名】杉松 力
【氏名】追立 祐治
【氏名】羽生 道明
【氏名】平原 徳明
個別代理人の代理人 【識別番号】110000626、【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
【識別番号】100118898、【弁理士】、【氏名又は名称】小橋 立昌
審査官 【審査官】坂田 誠
参考文献・文献 実開昭63-36251(JP,U)
特開2006-325533(JP,A)
登録実用新案第3125381(JP,U)
調査した分野 A01G 13/02
A01G 13/00
特許請求の範囲 【請求項1】
栽培床上に農業用シートを敷設する農業用シート敷設機であって、
栽培床に沿って走行可能な走行機体の作業時進行方向後側に装着される機体フレームと、
前記機体フレームに支持され、前記作業時進行方向を横切るように農業用シートロールが回転自在に装着されるシートロール装着部と、
前記機体フレームに左右一対に支持され、栽培床上に展開された農業用シートの左右側縁を栽培床の側方に埋設するシート側縁埋設部と、
前記機体フレームに支持され、機体の中央付近で前記農業用シートロールから前記シート側縁埋設部に至る農業用シートの下に配置され、栽培床を被覆する農業用シートにその短辺方向のたるみを形成するたるみ形成部とを備え、
該たるみ形成部は、農業用シートの下に形成される栽培空間の形態を可変調整できることを特徴とする農業用シート敷設機。
【請求項2】
前記たるみ形成部は、左右一対の前記シート側縁埋設部間に作業時進行方向に沿って配置されたシート浮かせ部材を備え、
該シート浮かせ部材は、外径の異なるものと交換可能に装着されていることを特徴とする請求項1記載の農業用シート敷設機。
【請求項3】
前記シート浮かせ部材は、前記機体フレームに対する高さと前後位置の一方又は両方を可変調整できることを特徴とする請求項2記載の農業用シート敷設機。
【請求項4】
前記シート浮かせ部材は円柱状又は半円柱状に形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の農業用シート敷設機。
発明の詳細な説明 【技術分野】
【0001】
本発明は、べた掛け栽培に有効な農業用シート敷設機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
作物栽培或いは園芸における露地栽培では、植えられた作物や栽培床が周辺環境から受ける影響を改善する栽培手法として、トンネル栽培やマルチ栽培が知られている。トンネル栽培は、栽培床を跨ぐようなアーチ状の枠材を栽培床に沿って複数配置し、その枠材上に被覆資材を被せて栽培床上に作物の育成空間を形成する栽培手法である。一方、マルチ栽培は、栽培床の圃場表面を被覆資材で覆う栽培手法であり、土壌が受ける周辺環境の影響を改善して地温調整や土壌の乾燥防止等の効果を得るための手法であって、作物の地上部は被覆資材に穴を開けて周辺環境に露出させる。
【0003】
これらの手法に対して、べた掛けと呼ばれる栽培手法は、栽培床を直接被覆資材で覆い、その被覆資材の下で作物の地上部を生育させる手法である。この手法は、トンネル栽培とマルチ栽培の利点が共に得られ、トンネルにおける枠材の敷設やマルチにおける被覆資材への穴あけといった手間のかかる作業を省くことができる栽培手法である。
【0004】
栽培床に被覆資材(シート材或いはフィルム材)を被せるための機械は、主にトンネル栽培用或いはマルチ栽培用のものが知られている。例えば下記特許文献1には、畦の横断方向に逆U字形の枠を移動しながら所定の間隔で打ち込み、次いで枠上にフィルムをトンネル状に被覆するトンネル状フィルム張架装置が記載されている。下記特許文献2には、畝間へのマルチシート敷設を行えるようにするために、マルチシートをその長さ方向に張力をかけることなく適度なたるみを持たせた状態で連続的に敷設することができるマルチ敷設機が記載されている。
【先行技術文献】
【0005】

【特許文献1】特許第2626835号公報
【特許文献2】特開2007-189992号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
べた掛け栽培は、発芽促進、欠株の防止、生育の促進・増収効果、寒さによる茎葉,根球の障害防止、防虫,防霜,防風,防鳥等の効果が期待される栽培手法であるが、トンネル栽培のように枠材を設けない、或いはマルチ栽培のように地上部を開放する穴を設けない手法であることから、栽培作物の種類や栽培床の形状によっては被覆資材の下に有効な栽培空間を形成することが必要な場合がある。
【0007】
べた掛け栽培において有効な栽培空間は、栽培床に沿って連続的に形成されることが好ましい。したがって、栽培床に沿った被覆資材の長手方向には適度な張りを保った状態で、栽培床の横断方向すなわち被覆資材の短辺方向にたるみを作ることが必要になる。このようなたるみの形成は前述した特許文献2に記載されるマルチ敷設機では不可能(この従来技術は長手方向に張力をかけることなくゆるみを作っている)であり、現状としては、手作業で、被覆資材の短辺方向に適度なゆるみを作りながら長手方向に沿った左右端を圃場面に固定することが行われている。
【0008】
また、べた掛け栽培において有効な栽培空間は、作物の種類や栽培床の形状によって形態が異なるが、手作業で行うに当たって、作物の種類や栽培床の形状に応じて異なる栽培空間を均一に形成するにはかなりの手間がかかり、作物の種類や栽培床の形状に応じて、栽培空間の形態を可変に調整できる農業用被覆材の敷設機が求められている。
【0009】
本発明は、このような事情に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、農業用被覆資材(以下、農業用シートという)を栽培床に機械被覆するに際して、農業用シートの下にべた掛け栽培に適した栽培空間を形成すること、すなわち、べた掛け栽培用の農業用シートを栽培床上に敷設するための効果的な作業機を提案すること、更に詳しくは、農業用シートの下に有効な栽培空間を形成しながら、連続的に農業用シートを栽培床上に機械敷設することができること、作物の種類や栽培床の形状に応じて栽培空間の形態を可変に調整できる農業用シート敷設機を提供すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、以下の独立請求項に係る構成を少なくとも具備するものである。
[請求項1]栽培床上に農業用シートを敷設する農業用シート敷設機であって、栽培床に沿って走行可能な走行機体の作業時進行方向後側に装着される機体フレームと、前記機体フレームに支持され、前記作業時進行方向を横切るように農業用シートロールが回転自在に装着されるシートロール装着部と、前記機体フレームに左右一対に支持され、栽培床上に展開された農業用シートの左右側縁を栽培床の側方に埋設するシート側縁埋設部と、前記機体フレームに支持され、機体の中央付近で前記農業用シートロールから前記シート側縁埋設部に至る農業用シートの下に配置され、栽培床を被覆する農業用シートにその短辺方向のたるみを形成するたるみ形成部とを備え、該たるみ形成部は、農業用シートの下に形成される栽培空間の形態を可変調整できることを特徴とする農業用シート敷設機。
【発明の効果】
【0011】
このような特徴を有する本発明の農業用シート敷設機は、たるみ形成部によって、栽培床を被覆する農業用シートに短辺方向のたるみを長手方向に沿って連続的に形成することができる。これによって、農業用シートを栽培床に機械被覆するに際して、農業用シートの下にべた掛け栽培に適した栽培空間を形成することができる。そして、農業用シートの下に形成される栽培空間を作物の種類や栽培床の形状に応じて簡易に可変調整でき、作物の種類や栽培床の形状に応じた栽培空間を均一に連続形成できるので、農業用シートの敷設作業の労力を著しく軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機の全体構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機によって敷設された農業用シートの敷設状態を示す説明図である。
【図3】本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機の作業状態を説明する説明図(側面図;同図(a)が歩行型トラクタに装着された状態、同図(b)が乗用トラクタに装着された状態を示している)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図1は、本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機の全体構成図である。本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機1は、栽培床上に農業用シートを敷設するための作業機であって、機体フレーム10、シートロール装着部20、シート側縁埋設部30(30R,30L)、たるみ形成部40を少なくとも備えている。

【0014】
機体フレーム10は、栽培床に沿って走行可能な走行機体の作業時進行方向後側に装着されるもので、歩行型トラクタや乗用トラクタ等の走行機体に機体フレーム10を連結するための連結部(図示省略)を備えている。機体フレーム10に前述した各部(シートロール装着部20、シート側縁埋設部30(30R,30L)、たるみ形成部40)が支持されている。

【0015】
シートロール装着部20は、作業時進行方向を横切るようにロール(農業用シートロール)21が回転自在に装着される部位である。ロール21は、農業用シートをロール状に巻いた物である。ロール21の左右両端を軸支することでロール21を回転自在に支持している。ロール21に関しては、設置される栽培床の幅などに応じて、適宜のシート幅(ロールの長さ)が選択される。

【0016】
シート側縁埋設部30(30R,30L)は、機体フレーム10に左右一対に支持され、シートロール装着部20に装着されたロール21から展開した農業用シートの左右側縁を栽培床の側方に埋設するものである。これ自体は、周知のマルチ敷設機にも装備されているものであり、圃場の上に展開された農業用シートの左右側縁を押さえ付けるためのシート押さえ車輪31が前段に備えられ、その後方位置に覆土器32が備えられており、このシート押さえ車輪31と覆土器32とがセットになって左右一対の支持アーム33の後端位置にそれぞれ装備されている。

【0017】
たるみ形成部40は、機体の中央付近でロール21からシート側縁埋設部30(30R,30L)に至る農業用シートの下に配置され、栽培床を被覆する農業用シートにその短辺方向のたるみを形成する機能を有する。このたるみ形成部40は、左右一対のシート側縁埋設部30R,30L間に配置されたシート浮かせ部材41を備え、このシート浮かせ部材41は、長手方向が作業機進行方向に沿うように配置されている。また、このシート浮かせ部材41は、外径の異なるものと交換可能に支持枠42に装着されている。

【0018】
また、必要に応じて、シート浮かせ部材41は、機体フレーム10に対する高さh(図1参照)と前後位置g(図1参照)の一方又は両方を可変調整できるようにしている。このシート浮かせ部材41は、図示の例では円柱状に形成しているが半円柱状(上が円弧の半円柱状)にしてもよい。

【0019】
このような特徴を有する農業用シート敷設機1は、機体フレーム10を走行機体に装着し、シートロール装着部20にロール21を装着した状態で作業を行う。作業に先立って、ロール21をシートロール装着部20に装着し、農業用シートの下に形成される栽培空間の形態に応じて選択されるシート浮かせ部材41を支持枠42に装着する。

【0020】
そして、走行機体を作業対象の栽培床の作業開始端に配置し、ロール21に巻かれた農業用シートの後端を栽培床の作業開始端に固定する。その際、ロール21から展開した農業用シートは、たるみ形成部40(シート浮かせ部材41)の上を通過して左右端がシート押さえ車輪31の下を通るようにして後方に引き出される。シート側縁埋設部30を接地させて、栽培床を跨ぐようにして走行機体を作業進行方向に前進させ、栽培床上に農業用シートを被覆する。

【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機1によって敷設された農業用シートの敷設状態を示す説明図である。前述した作業を行うことで、シート側縁埋設部30(30R,30L)のシート押さえ車輪31と覆土器32の機能により、農業用シートSの左右側端が栽培床Pの側方に埋設された状態になり、栽培床Pの上面を農業用シートSが覆うことになる。この際、農業用シートSが栽培床Pの上面に被せられる直前に、たるみ形成部40のシート浮かせ部材41が農業用シートSの下方に位置することになり、このシート浮かせ部材41の存在によって農業用シートSが栽培床表面から浮いた状態になり、農業用シートSに短辺方向のたるみが形成されることになる。農業用シート敷設機1を栽培床Pに沿って連続移動させることで、短辺方向のたるみは栽培床Pに沿って連続的に形成され、そのたるみによる空間Mがべた掛け栽培に有効な栽培空間になる。この際、農業用シートSは、その長手方向には緩み無く設置されることになり、設置されたシートは直線状に維持されることから、風による剥がれに強く、また、一部が剥がれた場合にも剥がれが拡大しない利点が得られる。

【0022】
ここで形成される栽培空間Mの形態は、シート浮かせ部材41の外径dを変えることによって任意に設定することができる。栽培空間Mの形態は栽培対象の作物や栽培床の形状によって適する形態が様々であるから、この栽培空間Mの形態を可変にできることはべた掛け栽培を行う上で非常に効果的である。この空間の調整は、外径dの異なるシート浮かせ部材41を複数用意しておけば、支持枠42への装着を異なる外径のシート浮かせ部材41に換えるだけで簡易に行うことができる。

【0023】
また、栽培空間Mの形態調整は、シート浮かせ部材41の機体フレーム10に対する位置調整によっても行うことができる。この位置調整は、支持枠42が機体フレーム10に取り付けられる取り付け位置を上下に可変調整することで高さhの調整を行うことができ、支持枠42の前後延設部分42aの長さ調整又は、支持枠42の前後延設部分42aに対するシート浮かせ部材41の取り付け位置調整によって前後位置gの調整を行うことができる。

【0024】
図3は、本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機1(1A,1B)の作業状態を説明する説明図(側面図;)である。同図(a)に示した農業用シート敷設機1Aは、歩行型トラクタTr1の後部に装着されている。ここでは直接歩行型トラクタTr1の機体に装着している例を示しているが、農業用シート敷設機1Aの前段に耕耘作業部,畝立て作業部,播種作業部などを配置してもよい。同図(b)に示した農業用シート敷設機1Bは、乗用型トラクタTr2の後部に装着されている。ここでは、機体フレーム10に三点リンク連結部11が設けられている。この例においても、農業用シート敷設機1Bの前段に耕耘作業部(ロータリ耕耘部等),畝立て作業部,播種作業部を配置することができる。

【0025】
ここに示した実施形態では、農業用シート敷設機1(1A,1B)は、シートロール装着部20に装着されたロール21とシート側縁埋設部30との間に、農業用シートの展開状態を保持する展開保持手段50を配備している。この展開保持手段50を装備することで、ロール21から引き出された農業用シートSを不必要に窄めることなく安定した展開状態で栽培床上に被覆することができる。

【0026】
以上説明したように、本発明の実施形態に係る農業用シート敷設機1によると、たるみ形成部40によって、栽培床を被覆する農業用シートに短辺方向のたるみを長手方向に沿って連続的に形成することができ、これによって、農業用シートを栽培床に機械被覆するに際して、農業用シートの下にべた掛け栽培に適した栽培空間を形成することができる。そして、農業用シートの下に形成される栽培空間を作物の種類や栽培床の形状に応じて簡易に可変調整でき、作物の種類や栽培床の形状に応じた栽培空間を均一に連続形成できるので、農業用シートの敷設作業の労力を著しく軽減することができる。

【0027】
本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の特徴を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0028】
1:農業用シート敷設機,
10:機体フレーム,
20:シートロール装着部,
21:ロール(農業用シートロール),
30:シート側縁埋設部,
31:シート押さえ車輪,
32:覆土器,
40:たるみ形成部,
41:シート浮かせ部材,
50:展開保持手段,
S:農業用シート,
P:栽培床,
M:栽培空間
図面
【図1】
0
【図2】
1
【図3】
2